結論
TEIKOKU(旧・帝国電機製作所)は、液体が決して漏れないキャンドモータポンプの専業メーカーだ。ポンプとモーターを溶接で一体に密閉し、毒性や引火性のある液体を化学プラントなどへ送る。売上の 9 割超がこの製品で、世界首位級にある。筆者の結論は、事業の質に比べて今の値段は軽いが、安全域は 1 割強にとどまる、というものだ。
強みは二つある。一つは、防爆規格や顧客の仕様ごとに作る完全受注生産で、新規の参入が難しいこと。もう一つは、納めたポンプの補修・保守が売上の 3 割弱を占め、景気の波を均していることだ。自己資本比率は 78%、純現金は時価総額の 2 割弱ある。
弱みは、売上が化学・石油化学の設備投資と大型案件の波に左右される点だ。直近の営業利益率は 17% と歴史的な高さで、10 年の標準では 15% 台へ落ち着くとみる。脱炭素の新燃料(アンモニア、メタノール、液化 CO2)で出番が増える芽はあるが、まだ利益の柱ではない。
還元は厚い。3 年累計で利益の全額を返す方針で、大株主の持ち分を会社が自己株の公開買付けで引き取る動きも 2 年続いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見たとき、この会社の魅力は「少ない資本で稼ぐ力」にある。ROE は 14% と高いのに、自己資本比率は 78% あり、借金に頼らない。利益の多くがそのまま株主のものになる。しかも納入したポンプの保守が積み上がり、収益に粘りがある。
堀は幅が広いとは言い切れない。世界首位級でも、単一の製品で、顧客は化学業界に偏る。10 年先も同じ地位かを聞かれれば、筆者は「保てる可能性が高いが、保証はない」と答える。
経営の資本の使い方は評価できる。買収で価値を壊さず、現金を貯め込まず、自己株の取得と配当で返している。大株主の売却を会社が引き取った判断も、残る株主の持ち分を増やす行為だった。
安全域は、中立の 10 年で時価総額が今の約 1.5 倍になる計算に支えられる。ただし利益率は歴史的に高い位置にある。その半分が定着するかで、価値は大きく動く。利益率が元の水準に戻る筋書きを、軽く見ない方がよい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、キャンドモータポンプの納入と、その後の保守だ。キャンドモータポンプは、ポンプとモーターを一つの密閉容器に収め、運ぶ液体を外に出さない。爆発性・引火性・毒性のある液体、液化ガス、強い酸やアルカリを扱う化学・石油化学のプラントが主な顧客で、発電所や半導体工場、吸収式冷凍機にも使われる。仕様は顧客ごとに違うため、すべて受注してから作る。主要部品の製造と最終組立は、兵庫県たつの市の本社工場が担う。
売上の内訳は、新しく納めるポンプがおよそ 7 割、納入済みポンプの部品交換や修理などの保守が 3 割弱だ。保守は利益率が高く、納めたポンプが増えるほど積み上がる。電子部品の事業は 2024 年末に止めており、いまは実質的に単一の製品で稼ぐ会社になっている。
地域では日本のほかに米国、中国、インドに製造・販売の子会社を持つ。海外の売上比率は過去最高になった。米国では現地規格に合わせた生産体制を整え、中国・インドでは増産に投資している。インドでは 2017 年に同業の現地メーカーの株式も取得した。
ただし受注は波がある。2026 年 3 月期は、前の年の大型案件の反動と中国の景気低迷で、売上が前期比 4.8% 減った。それでも営業利益率は 17% を保ち、純利益は投資有価証券の売却益で増えた。
優良さと弱いところ
堀の中身は、規格と実績と保守の三つだ。防爆の規格は国ごとに違い、顧客ごとの設計変更も多い。この知識と納入実績が、新規の参入を阻む。一度納めたポンプは保守で縛られ、顧客は同じ仕様で買い続けやすい。
シェアは世界首位級とされる。紹介記事には 4 割前後という数字もあるが、出所は確かでないので、筆者は 3 割弱と割り引いて使う。競合は日機装と、ドイツの HERMETIC が主な顔ぶれだ。日機装は医療や航空宇宙も持つ複合メーカーで、この製品に専念する点で TEIKOKU とは性格が違う。
値決めは強い方だ。取材記事によれば、原材料が上がっても価格に転嫁しやすい。ただ、大型案件は見積もり競争になる。値決め力は「強い」ではなく「ある」と見るのが妥当だ。
財務は堅い。自己資本比率は 78%、有利子負債を引いた純現金は約 98 億円で、過去 10 年に赤字の期はない。弱点は二つだ。単一の製品で、顧客が化学業界に偏ること。もう一つは、利益率が 10 年前の 10% 前後から 17% 前後へ上がった後で、どこまで定着するかがまだ見えないことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要を生むのは、化学・石油化学の設備投資と、既存プラントの更新だ。いま伸びを担うのは中国とインドで、会社も両国で生産能力を増やしている。一方、中国は景気の停滞で案件が落ち込み、日本と欧州の化学は新設よりも維持が中心になっている。
新しい芽は脱炭素の燃料だ。アンモニアやメタノールを燃やす船、液化 CO2 の輸送船、SAF やバイオ燃料の製造設備、CCS の実証では、漏れない構造が最優先になる。会社は燃料船向けに案件を受注済みと報じられ、試験設備向けも積み上げている。ただし金額は開示されておらず、収益の柱になるかはこれからだ。
市場の大きさは、調査会社の推計がばらつく。キャンドモータポンプ全体で 2025 年の世界市場を約 17 億ドル、2030 年に約 23 億ドルとする推計がある。別の推計は 38 億ドルで、暖房用の循環ポンプなども含む。TEIKOKU の領域は、このうち化学・エネルギー向けの無漏洩ポンプで、筆者は新設を実質 800 億円、保守を 330 億円ほどと見積もる。
競争の形は少数だ。日機装、HERMETIC に加え、磁気駆動の無漏洩ポンプを作る各社が周辺にいる。10 年の逆風は、中国の現地メーカーが防爆規格を取り、価格で攻めてくる展開だ。実質の需要は年に 1〜2% 程度とみて、物価の分は価格で取る。
資本政策と M&A
資本政策は株主に厚い。2025 年 3 月期から 2027 年 3 月期の 3 年累計で総還元性向 100%(うち配当性向 50% を目安)を掲げ、2026 年 3 月期は期末配当を増やした。投資有価証券の売却益も出ており、持ち合い株の整理が進んでいる。
特徴的なのは自己株の公開買付けだ。2024 年 11 月に 100 万株、2025 年 11 月に最大 130 万株を、市場価格より約 8〜9% 低い値段で買い付ける公開買付けを実施した。後者は第 3 位株主だった三菱電機モビリティが全株の売却を望んだためで、会社が引き取った。大株主の整理を、会社の現金で消化する形だ。
M&A は小さい。インドの現地メーカーの株式取得が目立つ程度で、大型の買収で価値を壊した履歴はない。電子部品の事業は止めて、本業に絞り込んだ。社名は 2026 年 4 月に TEIKOKU へ変えた。会社は 2035 年に売上 700 億円を目標に掲げる。
現金は厚いが、還元で返す姿勢がはっきりしているので、筆者は余った現金の大半が株主に届くとみている。
還元は方針(3年累計で総還元性向100%、配当性向50%目安)の範囲で、中立は純利益の合計の約8割。余った現金60億円は還元に入れず時価総額に足すので二重にしない。
還元の点検(P3 2026-10-19):中立の還元は純利益の約85%。方針(3年累計で総還元性向100%・配当性向50%目安)の範囲で、直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
キャンドモータポンプは、漏れないことが商品価値のすべてだ。脱炭素の燃料は、アンモニアのように毒性が強いものや、液化 CO2 のように特殊な条件で扱うものが多く、この構造の出番が増える。TEIKOKU はメタノール・アンモニア燃料船の案件を受注済みで、試験設備向けも積み上げている。船は新造のたびに数台のポンプを使い、納めた後は保守も入る。
保守は景気の波に強い。納入したポンプが毎年増える限り、保守の売上は止まらない。いまは売上の 3 割弱だが、10 年で 3 割強へ高まれば、全体の利益率を支える。会社は 2035 年に売上 700 億円を掲げ、中国・インドの増産と米国の現地規格への対応で受け皿を作っている。
資本の面でも優れている。3 年累計で利益の全額を返す方針を掲げ、2 年続けて自己株の公開買付けで大株主の売却を引き取った。純現金は時価総額の 2 割弱あり、配当と自社株取得をまだまだ続けられる。最近 4 期の営業利益率が 17% 前後〜20% で推移した事実は、10 年前の 10% 前後から事業の構造が変わったことを示している。
慎重な見方
利益率は歴史的に高い位置にある。10 年前の営業利益率は 10% 前後で、ROE の中央値は 9%。今の水準は、大型案件が重なった 4 期の姿かもしれない。2027 年 3 月期の会社予想も、営業利益は 50 億円と、中期経営計画の目標(57 億円)に届かない。
需要は化学・石油化学の設備投資に偏る。中国は景気の停滞で案件が落ち込み、欧州と日本の化学は新設より維持が中心だ。中国やインドの現地メーカーが防爆規格を取って価格で攻めれば、世界首位級の地位は守りにくい。日機装やドイツの HERMETIC も値下げで応じるだろう。
新燃料の話は、まだ金額が見えない。燃料船の受注は「案件を受注済み」という報道にとどまり、数字がない。成長の物語としては割り引くべきだ。
株主構成も不安定だ。大株主の売却を会社が現金で引き取る形は、株主には還元になるが、手元の現金を減らし、残る株主の需給の読みを難しくする。単一の製品、案件ごとの波、需給の揺れ。この三つが同時に起これば、いまの収益はあっという間に崩れる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の堅さ、還元の姿勢では、強気の見方に分がある。一方、利益率が歴史的な高さにある点と、新燃料に金額の裏付けがない点は、慎重な見方が当たっている。中立の 10 年は、営業利益率が 15% 台へ戻り、売上は実質ほぼ横ばいで価格の分だけ伸びる姿だ。確率は中立に最も厚く載せ、利益率が下がる側を、上がる側より厚くした。単一の製品と案件の波は、資本コストに足さず、悲観側の確率で表した。結果は、割安だが安全域は 1 割強にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,243 円957 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,458 円377 億円)。 今の値に割り戻すと 4,832 円741 億円、今との差 +41.1%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 11,596 円1,778 億円 | 3,130 円480 億円 | +330.0% | +15.7% | 1,325 円203 億円 |
| やや楽観 | 19% | 9,475 円1,453 億円 | 2,935 円450 億円 | +262.3% | +13.7% | 2,358 円362 億円 |
| 中立 | 33% | 7,492 円1,149 億円 | 2,608 円400 億円 | +194.9% | +11.4% | 3,333 円511 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,015 円462 億円 | 2,230 円342 億円 | +53.2% | +4.4% | 1,416 円217 億円 |
| 悲観 | 12% | 936 円144 億円 | 1,298 円199 億円 | −34.8% | −4.2% | 268 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,243 円957 億円 | 2,458 円377 億円 | +154.0% | +9.8% | 8,701 円1,334 億円 |
今の株価時価総額 3,425 円525 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 9% 新燃料と脱炭素の設備投資が重なり、無漏洩ポンプの首位が一段と固まる 利益 82 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 11,596 円1,778 億円
新設市場は 10 年で 1,100 億円(実質)まで広がる。アンモニア・メタノール燃料船、液化 CO2 輸送船、SAF やバイオ燃料の製造設備、CCS の実証が、化学プラントの更新と同時に動く筋書きだ。TEIKOKU は米国の現地規格対応と中国・インドの増産が間に合い、シェアを 30% に伸ばす。
保守は納入済みポンプの増加に比例して 500 億円規模に育ち、利益率は 29% まで上がる。全体の営業利益率は 17% 台を保ち、会社の掲げる 2035 年の売上 700 億円に近い規模に届く。
余った現金は自己株の取得と増配で返し続け、自己資本はほとんど増えない。少ない資本で稼げる事業の強みが、そのまま利益に出る 10 年になる。
- キャンドモータポンプ(新設・納入):数量 1,100(化学・エネルギー向け無漏洩ポンプの新設市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 40.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 442 億円・営業利益 66 億円。今の値段で測った新設市場 1100 億円 × シェア 30%、営業利益率 15.0%
- メンテナンス・保守:数量 500(納入済みの無漏洩ポンプの保守市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 40.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 201 億円・営業利益 58 億円。今の値段で測った保守市場 500 億円 × シェア 30.0%、営業利益率 29.0%
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 21.17 倍、時価総額 1,778 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:化学と海運の脱炭素投資が同時に立ち上がり、取りこぼしなく首位を保つ必要がある。実現すれば強いが、重なる条件が多く、1 割に届かない確率を置いた。
やや楽観 19% 舶用・脱炭素が柱に育ち、保守の積み上がりで利益率が高止まりする 利益 68 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 9,475 円1,453 億円
新設市場は 1,000 億円まで広がり、TEIKOKU のシェアは 29% に上がる。化学向けは横ばいだが、舶用の新燃料と脱炭素の分野が毎年じわじわ積み上がり、全体を押し上げる。
保守は 440 億円規模になり、シェア 28.5%、利益率 28.5% で、景気の波を均す役を果たす。新設の利益率は 14.5% とやや下がるが、受注の質は崩れない。
営業利益率は 16% 台で高止まりする。配当と自社株取得で利益の 85% を返しても、自己資本は着実に積み上がり、ROE は 20% 近くを保つ。中国や欧州の化学向けは伸びないが、米国の現地生産と中国・インドの増産が稼働し、海外の売上比率はさらに上がる。大株主の売却は会社が引き取り終え、株主構成の不安が薄れる点も、評価を支える。
- キャンドモータポンプ(新設・納入):数量 1,000(化学・エネルギー向け無漏洩ポンプの新設市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 38.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 389 億円・営業利益 56 億円。今の値段で測った新設市場 1000 億円 × シェア 29%、営業利益率 14.5%
- メンテナンス・保守:数量 440(納入済みの無漏洩ポンプの保守市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 38.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 168 億円・営業利益 48 億円。今の値段で測った保守市場 440 億円 × シェア 28.5%、営業利益率 28.5%
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 20.74 倍、時価総額 1,453 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型案件の波はあるものの、納入済みポンプの保守が積み上がり、新燃料向けの受注も出始めている。会社の長期ビジョン(2035 年に売上 700 億円)に近い道筋で、2 割弱とした。
中立 33% 中立:化学向けは横ばい、保守と新分野が支え、利益率は 15% 台へ落ち着く 利益 56 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 7,492 円1,149 億円
新設市場は 900 億円と、実質ではゆるやかに広がる。化学・石油化学向けは横ばいで、増えるのは脱炭素の新分野と、中国・インドの更新需要だ。TEIKOKU のシェアは 28% に上がる。
保守は 400 億円規模で、納入済みポンプの積み上がりにそって伸びる。シェアは 27%、利益率は 27% と今よりやや下がる。新設の利益率も 13.5% に落ち着く。
営業利益率は今の 17% から 15% 台へ戻る。売上は 480 億円ほどで、年率にすると約 5% の伸びだ。物価の分を除けば、実質ではほぼ横ばいに近い。
余った現金は還元で薄まり、ROE は 14% 台に落ち着く。「普通に強い専業メーカー」として評価される 10 年だ。
- キャンドモータポンプ(新設・納入):数量 900(化学・エネルギー向け無漏洩ポンプの新設市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 37.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 338 億円・営業利益 46 億円。今の値段で測った新設市場 900 億円 × シェア 28%、営業利益率 13.5%
- メンテナンス・保守:数量 400(納入済みの無漏洩ポンプの保守市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 36.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 145 億円・営業利益 39 億円。今の値段で測った保守市場 400 億円 × シェア 27.0%、営業利益率 27.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 19.74 倍、時価総額 1,149 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最近 4 期は営業利益率が 17% 前後〜20% で推移した。ただし 10 年前の 10% 前後には戻らないという見立てを中心に、確率を最も厚くした。
やや悲観 27% 中国勢の追い上げと化学投資の停滞で、シェアと利益率がじわり下がる 利益 38 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 3,015 円462 億円
中国の現地ポンプメーカーが規格を整え、中国とアジアの化学向けで TEIKOKU の受注を削る。新設市場は 800 億円と横ばいで、シェアは 25% に下がり、利益率も 11.5% まで縮む。
保守も他社品の置き換えや自前保全の増加で伸びが鈍る。市場 360 億円、シェア 24%、利益率 24% にとどまる。
営業利益率は 13% を割る。それでも財務は堅く、無借金に近い状態が続き、配当は維持される。成長の物語が消え、安定した小型株として扱われる 10 年だ。新燃料の分野では受注が出るものの、金額は小さく、全体の利益率を押し上げるほどにはならない。大型案件の波に合わせて利益も上下し、中期経営計画の目標には届かないまま推移する。
- キャンドモータポンプ(新設・納入):数量 800(化学・エネルギー向け無漏洩ポンプの新設市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 33.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 268 億円・営業利益 31 億円。今の値段で測った新設市場 800 億円 × シェア 25%、営業利益率 11.5%
- メンテナンス・保守:数量 360(納入済みの無漏洩ポンプの保守市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 32.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 116 億円・営業利益 28 億円。今の値段で測った保守市場 360 億円 × シェア 24.0%、営業利益率 24.0%
倍率:事業の ROE 12.2%。RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(12.2 − 7.75)= 10.0%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 16.0 倍。利益率が下がり成長も鈍る筋書きなので、上限の 7 割の 11.2 倍に置いた。
確率:利益率が歴史的な高さにある今は、中国の国産化や化学の設備投資停滞の影響が出やすい位置にある。慎重な見方の方が説得力が強く、悲観側へ確率を寄せた。
悲観 12% 構造的な負け:中国・アジアの国産化と値引き競争で稼ぐ力が半分以下に落ちる 利益 13 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 936 円144 億円
中国とインドの現地メーカーが防爆規格を取り、価格で攻める。日機装やドイツの HERMETIC も値下げで応じ、新設の価格が実質で崩れる。TEIKOKU のシェアは 18% に下がり、新設の利益率は 6% まで落ちる。
化学の設備投資が欧州と日本で縮み、保守の市場も 320 億円にとどまる。保守の利益率も 15% に下がる。営業利益は 15 億円ほどまで細り、「世界首位級」の評価は外れる。
自己資本には手を付けないが、稼ぐ力が落ちるので値段は純現金に近い水準へ寄る。10 年の悲観は、事業が優良でなくなった姿として描く。
- キャンドモータポンプ(新設・納入):数量 700(化学・エネルギー向け無漏洩ポンプの新設市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 24.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 169 億円・営業利益 10 億円。今の値段で測った新設市場 700 億円 × シェア 18%、営業利益率 6.0%
- メンテナンス・保守:数量 320(納入済みの無漏洩ポンプの保守市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 24.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 77 億円・営業利益 12 億円。今の値段で測った保守市場 320 億円 × シェア 18.0%、営業利益率 15.0%
倍率:事業の ROE 3.7%。ROE 3.7% が k 7.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 12.9 倍まで。構造的に利益率が戻らない筋書きで、稼ぐ力(純利益 ÷ k)を上限の 7 割の 9.0 倍に置いた。
確率:無漏洩ポンプは規格と実績が参入障壁だが、中国・アジアで現地メーカーが育てば値段と数量が同時に崩れる。大株主の売却が続く需給の不安定さも含め、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キャンドモータポンプ(新設・納入)
化学・石油化学・発電・半導体向けに、漏れない構造のポンプを仕様ごとに受注生産して納める。
| 数量化学・エネルギー向け無漏洩ポンプの新設市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 26.0% | 208 | 31 |
| 10 年後 中立 | 900 | 37.5% | 338 | 46 |
取り方:売上 290.9 億円のうち保守が 3 割弱(約 83 億円)、残りの約 208 億円を新設とみた。世界首位級だが 4 割とする紹介の出所が不確かなので、新設のシェアは 26% に割り引き、市場規模は約 800 億円(実質)と置いた。調査会社の推計(2025 年の世界で約 17 億ドル)は暖房用ポンプ等を含み定義が広いため、化学・エネルギー向けだけを抜き出した推定。今の価格はシェア 26%。
メンテナンス・保守
納入済みポンプの部品交換・修理・状態監視。ポンプの納入台数に比例して積み上がり、利益率が高い。
| 数量納入済みの無漏洩ポンプの保守市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 332 | 25.0% | 83 | 25 |
| 10 年後 中立 | 400 | 36.2% | 145 | 39 |
取り方:会社の説明で保守は売上の 3 割弱(約 83 億円)。自社品の保守が中心で、競合品の保守や顧客自身による保全も市場に含めると、シェアは新設よりやや低い 25% とみて、市場を約 332 億円と置いた。今の価格はシェア 25%。
リスクと懸念
利益率の反転
営業利益率は最近 4 期で 17% 前後〜20% だが、10 年前は 10% 前後だった。大型案件が一巡し、競合の値下げや人件費の上昇が重なれば、利益率は 10% 台前半へ戻りうる。売上が横ばいでも利益は 3 割ほど減る計算で、中立の見立てがまず崩れる点がいちばん大きい。
案件の波と顧客の偏り
完全受注生産で、売上は化学・石油化学の大型案件に左右される。2026 年 3 月期は前の年の大型案件の反動と中国の低迷で売上が 4.8% 減った。顧客業界が偏るので、化学の設備投資が長く止まれば、保守では穴を埋めきれない。
中国・アジアの現地メーカー
中国やインドの現地メーカーが防爆規格を取り、価格で攻めてくれば、TEIKOKU は成長地域でシェアと利益率の両方を失う。会社が増産する中国・インドこそ、競争が最も厳しくなる場所でもある。
新燃料の収益化が遅れる
アンモニア・メタノール燃料船や液化 CO2 輸送船の案件は受注済みと報じられたが、金額は開示がない。船の新造は数が限られ、規格づくりに時間がかかる。成長の柱になるのが 10 年の後半にずれ込めば、強気の筋書きは遠のく。
株主構成の不安定さ
2 年続けて、大株主の売却を会社が自己株の公開買付けで引き取った。株主には還元になる一方、手元の現金は減る。残る大株主の動きが読みにくく、需給や TOB の材料になりうる。三菱電機本体の持ち分の今は、筆者は確認できていない。
単一製品への依存
売上の 9 割超がキャンドモータポンプで、電子部品は止めた。技術や規格が別の方式に置き換われば、代わりの柱がない。いまの強さは、この一点の堀の深さに集中している。
今後の分かれ目
- アンモニア・メタノール燃料船や液化 CO2 輸送船向けの受注が、金額つきで開示されたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。新設市場のシェアを 1〜2 ポイント上げて見直す。
- 営業利益率が 2 期続けて 15% を割ったら
- やや悲観・悲観側へ確率を移す。大型案件の反動か、構造的な値下がりかを、保守の売上比率で見分ける。
- 中国・インドで現地メーカーの防爆規格取得や、価格での受注が確認されたら
- 悲観側の確率を上げ、新設のシェア前提を引き下げる。
- 三菱電機グループなど大株主の売却が続くか、新たな公開買付けが出たら
- 現金の減りと需給の変化を確かめ、余った現金の戻り方の前提を点検する。
- 2027 年 3 月期の会社予想(営業利益 50 億円)を上回って着地したら
- 中期経営計画の未達が一時的だったとみて、中立の利益率の前提をやや上げる。
- 総還元性向 100% の方針が、次の中期経営計画でも維持されたら
- 余った現金が株主に届く前提を保ち、時価総額の現金分の評価を維持する。
見ておくもの
- 営業利益率と、保守の売上比率(現在は 3 割弱)
- アンモニア・メタノール燃料船、液化 CO2 輸送船向けの受注額
- 中国・インドの現地メーカーとの価格競争の様子
- 次の中期経営計画の目標と総還元性向
- 三菱電機グループなど大株主の持ち分の動きと自己株の公開買付け
倍率と資本コストの決め方
新設と保守の 2 つの市場を、実質の市場規模 × シェア(価格の欄は物価 1.34 倍をかけたシェア)で積み上げた。倍率は正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)(k 7.25%、g 4%、残る割合 1/2)を上限に、中立は 8 割、楽観は 9 割、やや楽観は 8.5 割、やや悲観と悲観は 7 割に置いた。余った現金 60 億円は時価総額に別に足し、戻り方は 1.0。今の PER や過去の倍率には寄せていない。最後に今の時価総額と比べた。事業の売上と営業利益は、家賃や使用権資産を含まない今の形のまま置き、新リース会計基準による形の変化は 10 年の数字に混ぜていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.48→21.17 倍・やや楽観 PER 16.16→20.74 倍・中立 PER 14.44→19.74 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.25% = 7.75%。大株主の売却や案件の波などの個別のリスクは k に足さず、筋書きの確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。