結論
兼松エンジニアリングは、高知に本社を置く特装車のメーカーだ。トラックの荷台に強力な真空ポンプを積み、下水管や工場の汚泥を吸い上げる「強力吸引作業車」で国内首位に立つ。筆者の結論は「やや割安」だ。成長はほとんど無いが、首位の地位と部品・修理の稼ぎが利益を支え、今の値段はその稼ぐ力を十分に映していない。
売上の7割弱が吸引作業車で、残りは高圧洗浄車と部品・修理だ。顧客は清掃や下水の維持管理を請け負う会社で、その先には自治体と工場がある。景気が悪くても下水は詰まるので、需要の底は固い。
弱みは伸びしろだ。会社自身が、国内では既に高いシェアを持ち大きな伸びは見込めないと認めている。海外と電動の車台への対応が次の一手だが、まだ数字にはなっていない。
それでも、営業利益率は8〜9%台で安定し、ROEは過去10年の中央値で12%ある。借金はほぼ無く、配当性向35%の方針で還元もする。2025年に埼玉県八潮市で起きた下水管の破損による道路陥没は、全国で下水管の点検を急がせた。この点検と更新の仕事は、吸引車と洗浄車の出番そのものだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、兼松エンジニアリングは「伸びないが、確かに稼ぐ小さな首位企業」だ。10年後も下水管は古くなり続け、汚泥は吸い取らなければならない。この事業が消える姿は想像しにくい。
オーナー利益、つまり株主のものになる現金は、純利益に近い。工場は1か所で、設備の更新は年数億円で足りる。利益の35%を配当に回し、残りは事業と手元資金に積む。
問題は、残した利益の使い道だ。国内で伸びない以上、積んだ自己資本は資本コストほどは稼がない。10年たてばROEは今の13%から資本コスト並みに下がるだろう。だから筆者は、高い倍率を払う会社ではないと見る。
それでも、今の値段は純利益の7倍台にすぎない。首位の地位と修理の稼ぎを持つ会社としては、安全域がある。大事なのは、経営が溜まった利益を配当や自社株買いで戻し続けるかどうかだ。
何で稼ぐ会社か
事業は特装車の製造・販売と、その部品・修理の1本だ。2026年3月期の売上は141億円で、強力吸引作業車が96億円、高圧洗浄車が19億円、部品が12億円、修理・改造などが11億円だった。
強力吸引作業車は、汚泥や砂、粉じんを空気の力で吸い取り、タンクに溜めて運ぶ。下水管や側溝の清掃、製鉄所や化学工場の槽の清掃、災害後の泥の除去に使う。高圧洗浄車は、高い圧力の水で管の内側を洗い流す。現場では2台を組にして使うことが多い。
車台はいすゞや日野などのトラックを買い、そこに自社のポンプ、タンク、配管を架装する。つまり、価値の中心は荷台の上にある。1台の値段は大きさと仕様で数千万円から1億円を超える。
買い手は清掃・下水道維持の専門業者と、製鉄・化学などの工場、自治体だ。売った車は10年以上使われるので、その間の部品と修理が安定した稼ぎになる。部品と修理を合わせると売上の17%ある。
従業員は272名で、高知の工場で設計から組立まで行う。粉体を吸って圧送する車も手がけるが、まだ年に数台の規模だ。受注から納車までは数か月から1年かかり、受注残が翌期の売上を左右する。
優良さと弱いところ
強みは、狭い市場で首位を守ってきた実績と、売った後も続く部品・修理の関係にある。吸引車は止まれば現場の仕事が止まるので、買い手は修理の速さと部品の手当てを重く見る。全国に納めた車の数が、そのまま次の受注と修理の土台になる。
営業利益率は2015年以降の12年で6〜9.5%の幅に収まり、赤字は2010年3月期の1度だけだ。小さな会社としては振れが小さい。ROEは過去10年の中央値で12%と、資本コストを上回ってきた。
弱みは3つある。第1に、国内の台数はほぼ伸びない。第2に、車台をトラックメーカーから買うので、車台の値上げや納期の遅れをそのまま受ける。第3に、規模が小さく、海外の大手や国内の同業と価格で正面からぶつかれば体力で劣る。
経営は堅実で、借金はほぼ無い。創業家と個人株主が上位に並び、親会社はいない。2021年には自己株の公開買付けで発行済株式の1割強を買い戻した。資本の使い方は、少なくとも無駄遣いではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
吸引作業車と高圧洗浄車の需要は、下水道や工場の設備が古くなるほど増える。日本の下水管は総延長が約49万kmあり、法定耐用年数の50年を超えた管が年々増えている。管を点検し、詰まりを取り、更新の前に中を洗う。その全部の工程で、吸引車と洗浄車が要る。
2025年1月の八潮市の道路陥没は、流れを変えた出来事だ。国は全国の大口径の下水管の緊急点検を指示し、自治体は点検と清掃の予算を増やしている。筆者は、これが数年の特需で終わらず、更新の時代の常態になると見る。ただ、自治体の財政と人手の不足が、その速さを縛る。
一方で、買い手の業者の数は細っている。清掃業の現場は人手不足が深刻で、1台でこなせる仕事を増やす大型化と省力化が進む。台数は増えにくいが、1台の値段は上がりやすい。
競合は、モリタホールディングス傘下のモリタ環境テック、極東開発工業、東邦車輛などの特装車メーカーだ。消防車やごみ収集車を主力にする大手が多く、吸引車を専業に近い形で手がけるのは兼松エンジニアリングの特徴だ。海外にはドイツやアメリカの専業メーカーがあるが、日本の狭い道に合う小型・中型の車では国内勢が強い。
もう1つの変化は車台の電動化だ。排ガス規制と脱炭素で、架装の側もポンプの動力を見直す必要がある。対応が遅れれば首位でも置いていかれる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は配当性向35%で、1株あたりの普通配当に下限を設ける。2026年3月期は特別配当を加えて総額3.6億円を払い、純利益の35%を戻した。
自社株買いは2021年の公開買付けが大きい。約75万株を買い戻し、発行済株式の1割強を減らした。その後は目立った買い戻しはない。純現金はほぼゼロで、現金を溜め込む会社ではない。
買収の歴史は無く、M&Aで価値を壊す心配は小さい。逆に、時価総額80億円弱と小さく、親会社もいないので、同業の特装車メーカーや投資ファンドに買われる可能性は残る。大株主の創業家と個人株主がどう動くかが鍵になる。
政策保有株は地元の四国銀行などで2.4億円と小さい。株主優待は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
下水管の老朽化は、この会社に10年続く追い風だ。八潮市の陥没のあと、国は全国の下水管の点検を急がせ、自治体は清掃と更新の予算を増やしている。吸引車と洗浄車は、その仕事に欠かせない道具で、首位の兼松エンジニアリングが一番の受け手になる。
台数が増えなくても、1台の値段は上がる。人手不足の業者は、大型で省力化した高い車を選ぶ。電動化への対応も、単価を押し上げる材料だ。部品と修理は納めた台数とともに積み上がり、景気で振れにくい。
財務は無借金に近く、配当性向35%の還元も約束されている。営業利益率は過去12年で最高の9.5%に達し、値上げが通る力を示した。
時価総額は純利益の7倍台で、小さな首位企業として安すぎる。親会社がいないので、同業やファンドが買いに来る余地もある。
地方の小さな会社で、市場の目が届いていないこと自体が値段の安さの理由だ。稼ぐ力が崩れない限り、時間が味方をする。配当性向35%の方針は利益が増えれば配当も増える約束で、待つ間の取り分も確かだ。
慎重な見方
国内の台数は伸びない。会社自身がそう認めている。下水の点検の特需は数年で一巡し、自治体の財政が細れば、業者の車の更新は先送りされる。2027年3月期の会社予想は減収減益で、直近の第1四半期も減益だった。
車台はトラックメーカーから買うので、車台の値上げと納期の遅れはそのまま響く。電動の車台に合わせた架装の開発は、小さな会社には重い負担だ。対応が遅れれば、モリタ環境テックや極東開発工業のような大手に置いていかれる。
利益の大半を占める吸引車は単一製品に近く、買い手の業者の数も減っている。海外は欧米の専業メーカーが強く、簡単には取れない。
利益の65%を内部に残すのに、国内で使い道は乏しい。自己資本が積み上がり、ROEは資本コスト並みに沈む。
首位といっても、市場そのものが小さい。どれほど上手に経営しても、利益は物価並みにしか増えない会社に、高い値段は払えない。小さな会社ゆえに、経営陣や技術者の世代交代が1度つまずくだけで、首位の地位が揺らぐ危うさもある。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分も筋が通るが、決め手は需要の底の固さだ。下水管の老朽化は止まらず、点検の特需が一巡しても清掃と更新の仕事は残る。一方、台数が伸びないことも確かで、大きく伸びる筋書きには確率を厚く置かない。中立を厚くし、やや楽観とやや悲観をほぼ同じ重さにした。首位の地位と修理の稼ぎが崩れる悲観は、電動化への対応が決定的に遅れた時に限られ、その確率は低いと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,506 円172 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 711 円35 億円)。 今の値に割り戻すと 2,337 円114 億円、今との差 +48.8%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,257 円306 億円 | 960 円47 億円 | +359.4% | +16.5% | 577 円28 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,641 円227 億円 | 817 円40 億円 | +247.4% | +13.3% | 1,201 円59 億円 |
| 中立 | 42% | 3,757 円184 億円 | 735 円36 億円 | +185.9% | +11.1% | 1,887 円92 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,839 円90 億円 | 572 円28 億円 | +53.4% | +4.4% | 482 円24 億円 |
| 悲観 | 8% | 490 円24 億円 | 388 円19 億円 | −44.1% | −5.7% | 70 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,506 円172 億円 | 711 円35 億円 | +168.4% | +10.4% | 4,217 円207 億円 |
今の株価時価総額 1,571 円77 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:下水の更新が本格化し、海外と電動車で台数も伸びる 利益 17 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 6,257 円306 億円
八潮市の陥没をきっかけに、下水管の点検と更新が全国で一段と進む。国の補助が続き、業者は吸引車と洗浄車を増やす。電動の車台に合わせた新型が評価され、東南アジアなどへの輸出も年に数十台の規模に育つ。台数は10年で2割5分増える。
人手不足の業者は大型で省力化した車を選び、単価は物価を少し上回って上がる。部品と修理は稼働台数とともに増える。営業利益率は10%に届く。
配当性向35%は守られ、特別配当も続く。自己資本は170億円近くまで積み上がる。それでもROEは10%を保ち、首位の会社として資本コストを上回る稼ぎを続ける。
- 特装車(強力吸引作業車・高圧洗浄車ほか):数量 322(販売台数(台。推定))× 価格 0.63(1 台の平均単価(億円・名目))→ 売上 203 億円・営業利益 20 億円。322 台 × 0.63 億円(単価は物価をやや上回る 1.40 倍)、営業利益率 10%
- 部品・修理・改造:数量 3,450(稼働している自社車の台数(台。推定))× 価格 0.01(1 台あたり年間の部品・修理の額(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 4 億円。稼働 3,450 台 × 年 109 万円、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.69 倍、時価総額 306 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:八潮の陥没後の点検が更新の波につながり、海外も数字になる筋書き。国内の台数が伸びない会社なので 1 割未満にした。
やや楽観 22% やや楽観:点検の需要が根づき、台数が1割増える 利益 13 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 4,641 円227 億円
下水管の点検と清掃は、陥没のあとの特需が落ち着いても、更新の時代の常態として残る。業者は古い車を計画的に入れ替え、台数は10年で1割増える。電動の車台への対応も間に合い、首位の地位は保たれる。
単価は物価並みに上がり、営業利益率は直近の山に近い9%を保つ。部品と修理の稼ぎも稼働台数とともに増える。
配当性向35%の還元が続き、自己資本は150億円台に積み上がる。ROEは9%弱と資本コストを少し上回る。積んだ利益の一部を自社株買いに回せば、ROEはもう少し高く保てる。首位の会社が小さな市場で着実に稼ぐ、いちばん素直な上振れの形だ。
- 特装車(強力吸引作業車・高圧洗浄車ほか):数量 284(販売台数(台。推定))× 価格 0.60(1 台の平均単価(億円・名目))→ 売上 171 億円・営業利益 15 億円。284 台 × 0.603 億円(物価 1.34 倍)、営業利益率 9%
- 部品・修理・改造:数量 3,300(稼働している自社車の台数(台。推定))× 価格 0.01(1 台あたり年間の部品・修理の額(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。稼働 3,300 台 × 年 104.5 万円(物価 1.34 倍)、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.76 倍、時価総額 223 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:下水の点検と清掃の増加が一過性で終わらず、台数が少し増える筋書き。需要の底が固いので中立に次ぐ重さ。
中立 42% 中立:台数は横ばい、値上げと修理で利益は物価並みに増える 利益 11 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 3,757 円184 億円
国内の台数は10年でほぼ横ばいだ。下水管の点検と更新は続くが、業者の数は減り、自治体の予算にも限りがある。首位の地位は保たれ、電動の車台への対応も大手に遅れずに済む。
単価は物価並みに上がり、売上は10年で190億円前後になる。営業利益率は8%で、過去12年の真ん中より少し上だ。値上げが通る力は直近で示したが、車台の値上げを吸収しきれない年もある。
配当性向35%の方針どおり利益の3分の1強を戻し、残りは自己資本に積む。国内で使い道が乏しいので、ROEは資本コスト並みの7.5%まで下がる。溜まった現金をどう戻すかが、株主の取り分を分ける。
- 特装車(強力吸引作業車・高圧洗浄車ほか):数量 258(販売台数(台。推定))× 価格 0.60(1 台の平均単価(億円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 12 億円。258 台 × 0.603 億円(物価 1.34 倍)、営業利益率 8%
- 部品・修理・改造:数量 3,150(稼働している自社車の台数(台。推定))× 価格 0.01(1 台あたり年間の部品・修理の額(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。稼働 3,150 台 × 年 104.5 万円、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.15 倍、時価総額 175 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の台数は伸びないが、下水の維持需要で崩れもしないという、もっとも起こりやすい形。
やや悲観 20% やや悲観:業者の更新が先送りされ、値下げ競争で利益率6% 利益 7 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,839 円90 億円
下水の点検の特需は数年で一巡する。自治体の財政が細り、清掃業者は人手不足で廃業が相次ぐ。車の更新は先送りされ、台数は10年で1割5分減る。
同業の大手が吸引車に力を入れ、入札で値下げが続く。単価は物価に届かず10年で1.25倍にとどまる。車台の値上げを吸収しきれず、営業利益率は6%に下がる。
配当は方針どおり利益の35%だが、額は減る。ROEは5%と資本コストを下回り、積み上がった自己資本は十分に稼がない。首位ではあるが、優良な会社とは言えなくなる。部品と修理の稼ぎが下支えになり、赤字には落ちない。
- 特装車(強力吸引作業車・高圧洗浄車ほか):数量 219(販売台数(台。推定))× 価格 0.56(1 台の平均単価(億円・名目))→ 売上 123 億円・営業利益 7 億円。219 台 × 0.5625 億円(物価に届かず 1.25 倍)、営業利益率 6%
- 部品・修理・改造:数量 3,000(稼働している自社車の台数(台。推定))× 価格 0.01(1 台あたり年間の部品・修理の額(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。稼働 3,000 台 × 年 97.5 万円、営業利益率 6%
倍率:ROE 約 5% で k を下回るので PER の上限は 1÷k の 13.3 倍。縮む事業で稼ぐ力が落ちた筋書きとして、中立の 12 倍より下の 11 倍。
確率:特需が一巡し、自治体と業者の財政が細る筋書き。直近の会社予想が減益なのでやや楽観とほぼ同じ重さ。
悲観 8% 悲観:電動化で後れを取り、大手に首位を奪われる 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 490 円24 億円
車台の電動化に架装の開発が追いつかず、大手の特装車メーカーに首位を奪われる。業者の数は減り続け、台数は10年で3分の2に縮む。
入札の値下げが続き、単価は10年で1.15倍にとどまる。固定費の重い工場の稼働が落ち、営業利益率は3%まで下がる。稼ぎは部品と修理が中心の、細々とした会社になる。
特別配当は止まり、配当は普通配当の下限近くまで細る。価値は事業の稼ぐ力しか残らず、時価総額は今の半分を割る。下水の維持の需要そのものは残るので、会社が消えることはないが、優良な会社ではなくなる。工場と土地は残るが、地方の工場は高くは売れない。
- 特装車(強力吸引作業車・高圧洗浄車ほか):数量 168(販売台数(台。推定))× 価格 0.52(1 台の平均単価(億円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 3 億円。168 台 × 0.5175 億円(1.15 倍)、営業利益率 3%
- 部品・修理・改造:数量 2,700(稼働している自社車の台数(台。推定))× 価格 0.01(1 台あたり年間の部品・修理の額(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。稼働 2,700 台 × 年 90 万円、営業利益率 3%
倍率:ROE は約 2% で k を大きく下回る。上限は稼ぐ力の床(純利益÷k、PER 13.3 倍相当)だが、縮み続ける事業なのでやや悲観の 11 倍より下の 10 倍。
確率:電動化と大手の攻勢で首位を失う構造的な負け。下水の維持需要は残るので 1 割未満にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
特装車(強力吸引作業車・高圧洗浄車ほか)
トラックの車台に真空ポンプ・高圧ポンプとタンクを架装した作業車の製造販売。
| 数量販売台数(台。推定) | 価格1 台の平均単価(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 258 | 0.45 | 116 | 11 |
| 10 年後 中立 | 258 | 0.60 | 156 | 12 |
取り方:有報の製品別売上(吸引 95.7 億・高圧洗浄 18.9 億・粉粒体 2.8 億)の計 116.4 億を、1 台の平均単価 0.45 億円(大型吸引車は 1 億円前後、高圧洗浄車・小型は数千万円の推定)で割り 258 台相当と推定。台数の開示は無い。営業利益は単一セグメントの全社 13.4 億を売上比で按分した推定。
部品・修理・改造
納めた車の部品販売と修理・改造。
| 数量稼働している自社車の台数(台。推定) | 価格1 台あたり年間の部品・修理の額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.01 | 23 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,150 | 0.01 | 33 | 3 |
取り方:部品 12.4 億+その他(修理・改造)11.1 億=23.5 億。年 250 台前後を 12 年使う前提で稼働台数を約 3,000 台と推定し、1 台あたり年 78 万円とした。営業利益は按分の推定。
リスクと懸念
点検の特需の一巡
八潮市の陥没のあとの下水管の点検と清掃の需要は、数年で落ち着く可能性がある。2027年3月期の会社予想は減収減益で、第1四半期も減益だった。特需が常態に変わらなければ、台数は横ばいから減少に向かう。
車台の値上げと納期
車台はトラックメーカーから買う。車台の値上げや納期の遅れは、そのまま原価と売上の時期に響く。架装の価値を価格に転嫁しきれない年は、利益率が下がる。
電動化への対応
排ガス規制と脱炭素で、車台の電動化が進む。ポンプの動力や架装の設計を作り直す必要があり、小さな会社には開発の負担が重い。対応が遅れれば首位を失う。
買い手の業者の減少
清掃・下水道維持の業者は人手不足で数が減っている。1台あたりの仕事は増えるが、台数の需要は伸びにくい。業者の廃業が加速すれば、更新の需要も細る。
大手との競争
モリタ環境テックや極東開発工業など、消防車やごみ収集車の大手も作業車を手がける。大手が吸引車に力を入れ入札で値下げを仕掛ければ、規模で劣る兼松エンジニアリングは不利だ。
溜まる利益の使い道
配当性向35%の方針では、利益の3分の2が社内に残る。国内で投資の先が乏しく、自己資本が積み上がればROEは資本コスト並みに下がる。還元を厚くしなければ株主の取り分は薄まる。
今後の分かれ目
- 国が下水管の更新に複数年の予算を付け、自治体の清掃・点検の発注が増え続けたら
- 台数が横ばいから増加に転じ、やや楽観の筋書きに近づく。
- 電動の車台に対応した吸引車を先に出し、受注を取ったら
- 首位の地位が固まり、単価も上がる。悲観の確率を下げる材料になる。
- 営業利益率が2年続けて7%を割ったら
- 車台の値上げや値下げ競争を吸収できていない証拠で、やや悲観に寄せる。
- 自社株買いや配当性向の引き上げで還元を厚くしたら
- 溜まる利益が株主に戻り、ROEの低下が和らぐ。価値は中立より上に寄る。
- 同業や投資ファンドが株式の取得に動いたら
- 親会社がいないので買収の対象になりうる。プレミアムが付く可能性がある。
見ておくもの
- 受注残と受注の前年比
- 営業利益率(8%の維持)
- 部品・修理の売上の伸び
- 下水管の点検・更新の国と自治体の予算
- 電動車台への対応の新製品
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(k 6.75%・g 4%・残る割合 1/2)と、10 年後の ROE が k 並みに下がる時の上限 1÷k から置いた。今の PER 7 倍台や同業の値付けは根拠にしていない。営業利益率は過去 12 年の山 9.5% より下の 8% を中立とした。純現金はほぼゼロで余った現金は分けない。リースは小さく新基準の影響は軽微。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.4→17.69 倍・やや楽観 PER 12.2→16.76 倍・中立 PER 12→16.15 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。