結論
TVEは、原子力・火力発電所向けのバルブを作り、定期検査で直す会社である。筆者の結論は「資産は厚いが、稼ぐ力に波があり、今の値段はほぼ適正」だ。
利益の源は、国内の原発の定期検査だ。電力会社の原発が止まって点検に入るたびに、バルブの交換と修繕の仕事が出る。再稼働が進むほど仕事が増え、直近は営業利益が前年の2倍に伸びた。
一方で、新しいバルブの売上は細い。原発の新設が止まった十数年で、新製弁の仕事は減り、検査と修繕の稼ぎに頼る形になった。顧客は電力会社に偏り、工事の受注損失も出る。
財産は厚い。現金は24億円、含み益のある投資有価証券も23億円あり、時価総額の約半分を占める。ただし、福井と神戸の新工場に使う予定で、全部が株主の取り分とは限らない。
筆者は、利益の波を平らにならすと、資本コストに届かない会社と見る。事業の評価は低いが、資産が下を支える。
判断の分かれ目は、再稼働のペースと、新工場への投資が稼ぎに変わる速さだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は分厚いが、本業の稼ぎが安定しない」案件に近い。原発の定期検査という強い需要はあるが、稼ぎの波が荒く、顧客が偏る。予測が難しい事業は、確信度を下げて見るべきだ。
評価できるのは、財務が堅い点である。自己資本比率は75%を超え、借入はほぼない。含み益のある投資有価証券もある。経営は派手な買収に走らず、地道に工場を建てている。
気になるのは、資本の使い方だ。稼ぎが資本コストに届かない会社が、新工場に多額の資金を投じると、価値は薄まる。リファインメタルが実を結ぶまでは、投資は賭けに近い。
配当が低いのも、少数株主には厳しい。持ち続けて価値が増える会社ではなく、資産の下支えに頼る会社である。上振れの条件は、再稼働の加速と新工場の早い黒字化だ。
買い手として確認したいのは、受注損失の発生が一巡しているか、新工場の投資額が見合う稼ぎを生むか、の二点である。
何で稼ぐ会社か
事業は三本柱と一つの芽でできている。中核はバルブ事業で、原子力・火力発電所向けの高温高圧のバルブを作り、定期検査で分解・修繕・交換する。売上は新製弁、取替補修部品、原発の定期検査工事、その他の保守の役務に分かれる。
直近の四半期では、バルブ事業の売上が約18億円と全体の3分の2を占めた。定期検査工事が複数の原発で完了した影響で、前年同期の4割近く増えた。新製弁は逆に3割以上減り、補修部品と検査工事が全体を押し上げた。
二つ目は製鋼事業で、バルブの素材にもなる鋳鋼製品を作る。売上は3億円台と小さく、赤字が続く。
三つ目は電気設備関連事業で、原発の電気設備の保守や工事を受け持つ。売上は4億円台で、利益率は2割前後と高い。
芽はリファインメタルだ。原発の廃止措置で出るクリアランス金属、つまり放射能が基準以下の金属を再生して売る事業で、福井県おおい町の用地を2024年に取得した。神戸のポートアイランドにも2025年に土地を買い、研究開発とBCPの拠点を作る。
従業員の確保も事業の課題だ。現場の資格を持つ人員は数が限られ、採用と育成の費用が先に出る。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の強みを「原発の現場に入れる許認可と実績」と見る。原子力のバルブは、品質保証と人の資格、顧客の信頼が揃わないと扱えない。若狭地区に拠点を持ち、関西電力などの定期検査を長く受け持つ。新規参入のハードルは高い。
ただし堀は狭い。顧客が電力会社に限られ、値決めは電力会社の購買に強く縛られる。仕事は定期検査の時期と原発の再稼働のペースで増減し、利益が読みにくい。
過去10年の営業利益率は、赤字から14%まで振れた。中央値は5%台で、安定した稼ぎ手とは言えない。自己資本利益率も5%前後にとどまる。
受注損失引当金が6億円近くあり、見積もりを誤った工事の損失が先に積まれている。工事型の事業の宿命で、採算管理の巧拙が利益を左右する。
製鋼事業は赤字が続き、バルブの素材を自前で持つ意味が問われている。撤退か立て直しかの判断は、まだ示されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の原発は、福島の事故後に厳しい時期を過ぎ、再稼働と運転延長の局面に入った。2025年2月の第7次エネルギー基本計画は、2040年度の電源構成で原子力を2割程度とした。廃炉を決めた原発の敷地内で建て替える方針も明記された。
2025年11月には関西電力が美浜原発で後継機の現地調査に入り、北海道電力の泊3号機も2027年の再稼働を目指す。再稼働が増えるほど、定期検査の件数が増え、バルブの交換と修繕の仕事が増える。
一方、原発が止まっている間は検査の仕事そのものが出ない。再稼働の遅れや安全審査の長期化は、会社にとって直接の逆風になる。新設の話は具体化しておらず、新製弁の売上は細いままだ。
火力発電所向けも事業の一部だが、国内の火力は老朽化と脱炭素で長期的に縮む。人手不足も深刻で、資格を持つ現場の人員が足りなければ、仕事を受けきれない。
筆者は、検査件数が10年で2割ほど増えると中立に見る。ただし電力会社の発注は少数の相手に偏り、競争の形は限られた専門メーカーの間に収まる。
海外の原発市場には、現時点で足場がない。国内の再稼働が遅れた時に、売上を補う手段は少ない。
資本政策と M&A
配当は今期、前期から4割近く引き上げる計画だが、利益に対する割合は2割前後と低い。自社株買いは目立たない。利益の大半は、福井と神戸の新工場や研究開発の投資に回る見込みだ。
現金は24億円、投資有価証券は23億円で含み益が大きい。土地は36億円と、取得したばかりの用地が含まれる。これらは第1工場やBCP拠点の建設に使うため、全部が株主の取り分とは言えない。
3月には光通信が保有を減らした大量保有報告が出た。大株主の入れ替わりは続いている。TOBや再編の話は出ていない。M&Aは小粒で、成長は自社の工場投資が中心だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原子力は国策として復権した。第7次エネルギー基本計画は2040年度に原子力2割を掲げ、運転延長と建て替えが動き出した。再稼働する原発が増えるほど、定期検査の件数が増え、バルブの交換と修繕の需要は積み上がる。
直近の四半期は営業利益が黒字に転じ、第3四半期までの累計で営業利益が前年の2倍に伸びた。通期の経常利益予想は12.9億円に引き上げられ、配当も増やす。この勢いが続けば、営業利益は10億円台が定着する。
福井県おおい町の新工場は、安全弁の供給を若狭地区で完結させる。顧客の目の前で作り、直す体制は、競合に対する大きな武器になる。リファインメタルも廃炉の増加とともに市場が育つ。
財務は無借金で、現金と含み益のある株式が時価総額の約半分ある。事業の評価が低くても、資産が下を支える。
さらに、電力需要はデータセンターの増設などで伸びるとされ、安定電源の保守は長く続く。TVEの検査は他社に置き換えにくい。
慎重な見方
利益の波が荒すぎる。過去10年で営業赤字の期が3回あり、直近2025年9月期も営業利益は4割減った。今期の好調は、定期検査の工事が複数のプラントで重なった一時的な面が強い。
新製弁は減り、検査と修繕に偏る構造は、再稼働の遅れや審査の長期化に弱い。顧客は電力会社に限られ、発注の条件は買い手が決める。受注損失引当金が6億円近くあり、工事の採算管理にも不安がある。
新工場への投資は大きい。福井と神戸の土地に36億円を投じ、建設費はこれからかかる。稼ぎが資本コストを下回るうちは、投資するほど価値が薄まる。製鋼事業は赤字が続き、撤退も遅れている。
配当性向は2割前後で、少数株主に戻る額は小さい。時価総額の半分を占める資産は、新工場と提携に使われ、株主には届きにくい。
火力は脱炭素で縮み、原発の新設も具体的な着工はまだない。足元の好調は、定期検査の日程が重なった結果に近い。さらに、検査工事の人員を確保するための人件費も上がり続けている。物価が上がっても、電力会社の発注単価は簡単には上がらない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は原子力の復権という大きな流れに根拠があり、弱気の言い分は利益の波と投資の重さに根拠がある。筆者は、検査件数の増加は認めつつ、利益率の安定は認めなかった。そのため中立を最大に置き、やや悲観にも厚く確率を割いた。悲観は資産が下を支えるため、1割強にとどめた。
強気の言い分が当たれば価値は今の値段の2倍を超えるが、弱気の言い分が当たっても、売れる資産が今の値段の半分近くを支える。上下の幅が荒いが、下は固い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 5,756 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,154 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 3,381 円79 億円、今との差 −15.4%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,896 円303 億円 | 2,132 円50 億円 | +276.2% | +14.2% | 1,202 円28 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,701 円204 億円 | 1,705 円40 億円 | +160.5% | +10.0% | 2,081 円49 億円 |
| 中立 | 34% | 6,484 円152 億円 | 1,279 円30 億円 | +94.3% | +6.9% | 2,639 円62 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,132 円50 億円 | 639 円15 億円 | −30.6% | −3.6% | 720 円17 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,876 円44 億円 | 341 円8 億円 | −44.5% | −5.7% | 266 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,756 円135 億円 | 1,154 円27 億円 | +73.0% | +5.6% | 6,909 円162 億円 |
今の株価時価総額 3,995 円94 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:再稼働と新設で検査が6割増え、新工場が稼ぐ 利益 21 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 12,896 円303 億円
国内の再稼働が進み、定期検査の件数が10年で1.6倍になる。美浜などで後継機の建設が始まり、新製弁の仕事も戻る。
バルブ事業は売上が160億円に迫り、利益率は19%に上がる。福井の新工場で安全弁を地元に供給する体制が整い、納期と品質で競合を引き離す。
電気設備は1.3倍、リファインメタルは廃炉の増加で売上が10億円を超える。製鋼も赤字から黒字に変わる。
リファインメタルの第2工場も建設に入り、廃炉の増加を取り込む体制が整う。
営業利益は25億円で、自己資本利益率は10%近くに上がる。配当は純利益の3割に引き上げる。
- バルブ事業(新製弁・補修部品・定期検査工事・保守):数量 1,136(年間の工事・納入件数(件、推定))× 価格 0.14(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 159 億円・営業利益 30 億円。営業利益率19.0%
- 製鋼事業(鋳鋼製品):数量 2,200(出荷量(トン、推定))× 価格 0.01(1トンあたり平均価格(億円、推定。名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
- 電気設備関連事業:数量 189(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.14(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 26 億円・営業利益 5 億円。営業利益率19.0%
- その他(リファインメタルなど):数量 100(年間の取扱い件数(件、推定))× 価格 0.14(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)16 億円。全体の PER 13.69 倍、時価総額 302 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再稼働の加速と後継機の建設が重なり、リファインメタルも育つ筋書き。過去10年の最良期(営業利益率14.5%)は超えない水準だが、実現には政策の継続が要り、確率は低く置いた。
やや楽観 20% やや楽観:再稼働が進み、利益率が12%台で定着 利益 16 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 8,701 円204 億円
再稼働が進み、定期検査が10年で1.4倍に増える。新製弁は横ばいだが、補修部品と検査工事が伸び、バルブ事業の利益率は18%に上がる。
電気設備は1.2倍、リファインメタルは売上が10億円強。製鋼は赤字を脱し、わずかな黒字になる。
営業利益は18億円強で、自己資本利益率は8%近くに上がる。新工場の償却が重く、利益率は伸びきらない。
配当は純利益の3割に近づく。ただし、新工場や研究への投資を優先する姿勢は変わらない。
検査工事で受注損失が出る年は減るが、ゼロにはならず、利益には小さな波が残る。電気設備とリファインメタルが小さく伸び、全社の利益の偏りも少し和らぐ。
- バルブ事業(新製弁・補修部品・定期検査工事・保守):数量 994(年間の工事・納入件数(件、推定))× 価格 0.14(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 136 億円・営業利益 25 億円。営業利益率18.0%
- 製鋼事業(鋳鋼製品):数量 2,000(出荷量(トン、推定))× 価格 0.01(1トンあたり平均価格(億円、推定。名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。営業利益率2.0%
- 電気設備関連事業:数量 174(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.14(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。営業利益率18.5%
- その他(リファインメタルなど):数量 85.0(年間の取扱い件数(件、推定))× 価格 0.14(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)16 億円。全体の PER 12.35 倍、時価総額 204 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の好調(今期の経常利益12.9億円)が定着し、物価並みに伸びる形。過去の山に届かない範囲で、確率は2割。
中立 34% 中立:検査が2割増えるが、利益率は8%で波も残る 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 6,484 円152 億円
国内の再稼働が緩やかに進み、定期検査の件数は10年で2割ほど増える。新製弁は細いままで、補修部品と検査工事が売上を支える。
バルブ事業の売上は119億円で、利益率は17%と今とほぼ同じ。製鋼は赤字を脱して小さな黒字になり、電気設備は売上21億円で利益率は18%。リファインメタルは売上9億円で小さく黒字になる。
全社費用は物価で増え、福井と神戸の新工場の償却が加わる。償却は取得時の値段のままで増えず、新工場の分だけ年1.5〜2億円ほど足される。営業利益は13億円強で、利益率は8%。
配当は純利益の3割に引き上げ、残りは工場の投資に回る。
- バルブ事業(新製弁・補修部品・定期検査工事・保守):数量 888(年間の工事・納入件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 119 億円・営業利益 20 億円。営業利益率17.0%
- 製鋼事業(鋳鋼製品):数量 2,000(出荷量(トン、推定))× 価格 0.01(1トンあたり平均価格(億円、推定。名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。営業利益率1.8%
- 電気設備関連事業:数量 160(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 21 億円・営業利益 4 億円。営業利益率18.0%
- その他(リファインメタルなど):数量 70.0(年間の取扱い件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)16 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通し(再稼働が緩やかに進む、価格は物価並み)に沿った中心。営業利益率は過去10年の最良期(14.5%)に届かず、直近の好調より低い水準に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:再稼働が足踏みし、利益率が3%台に戻る 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,132 円50 億円
再稼働が足踏みし、定期検査の件数は10年で5%増にとどまる。値上げも物価に届かず、バルブ事業の利益率は15%に下がる。
製鋼は赤字が残り、電気設備も利益率が15%に低下する。リファインメタルは立ち上がりが遅れ、わずかな黒字がやっとだ。
全社費用と新工場の償却は固定的で、営業利益は5億円台に落ちる。今より1割ほど低い水準で、物価で目減りする。
自己資本利益率は3%に落ち、配当は純利益の3割を保つが、金額は伸びない。
新工場の稼働は遅れ、リファインメタルの立ち上がりも進まない。電力会社の発注条件は厳しくなり、値上げは物価に届かない。
- バルブ事業(新製弁・補修部品・定期検査工事・保守):数量 746(年間の工事・納入件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 97 億円・営業利益 15 億円。営業利益率15.0%
- 製鋼事業(鋳鋼製品):数量 1,700(出荷量(トン、推定))× 価格 0.01(1トンあたり平均価格(億円、推定。名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-2.0%
- 電気設備関連事業:数量 145(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。営業利益率15.0%
- その他(リファインメタルなど):数量 45.0(年間の取扱い件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。営業利益率3.0%
倍率:稼ぐ力は純利益5億円弱に正当化PERの8割の5.6倍を掛けても約33億円で、売れる資産の税後約50億円を下回る。床は売れる資産で測り、今の自己資本119億円に対するPBR0.42倍(時価総額50億円)に置いた。自己資本利益率は約3%で資本コストに届かない。
確率:安全審査の長期化と地元の同意の遅れで再稼働が足踏みし、工事の受注損失が重なる筋書き。過去10年で3回赤字の期があり、現実味がある。確率は2割台半ばを置いた。
悲観 12% 悲観:再稼働の停滞と顧客離れで本業が赤字に沈む 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,876 円44 億円
原子力政策が後退し、再稼働が止まる。定期検査の件数は10年で4割減り、バルブ事業の利益率は5%まで落ちる。
製鋼は撤退に追い込まれ、リファインメタルも市場が育たない。電気設備も売上が減り、全社費用が重くのしかかる。
営業利益は赤字に沈み、福井と神戸の新工場への投資は減損となる。自己資本は減るが、無借金のため倒産の心配はない。
取引先の電力会社は検査の発注を他社に分散し、若狭地区での拠点の意味も薄れる。減損と構造改革の費用が先に出て、配当も減らさざるを得ない。
時価総額は、稼ぐ力ではなく、現金・投資有価証券・土地と運転資本を中心にした売れる資産で測る。
- バルブ事業(新製弁・補修部品・定期検査工事・保守):数量 426(年間の工事・納入件数(件、推定))× 価格 0.12(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5.0%
- 製鋼事業(鋳鋼製品):数量 1,200(出荷量(トン、推定))× 価格 0.01(1トンあたり平均価格(億円、推定。名目))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-8.0%
- 電気設備関連事業:数量 112(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.12(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。営業利益率8.0%
- その他(リファインメタルなど):数量 25.0(年間の取扱い件数(件、推定))× 価格 0.12(1件あたり平均金額(億円、推定。名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:営業赤字で稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本119億円に対するPBR0.37倍(時価総額44億円)に置いた。
確率:原子力政策の後退や事故による稼働停止が重なり、本業が赤字に落ちる筋書き。売れる資産と現金が下を支えるため、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
バルブ事業(新製弁・補修部品・定期検査工事・保守)
原子力・火力発電所向けバルブの製造と、定期検査での分解・修繕・交換。売上の約70%と推定。
| 数量年間の工事・納入件数(件、推定) | 価格1件あたり平均金額(億円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 710 | 0.10 | 71 | 12 |
| 10 年後 中立 | 888 | 0.13 | 119 | 20 |
取り方:直近の四半期の開示では、バルブ事業が全体の約67%を占めた。2025年9月期の売上102億円のうち約71億円と推定し、1件あたり平均1,000万円の工事・納入が年710件あると置いた(推定)。数量は国内原発の再稼働で定期検査が増え、中立は10年で1.25倍。価格は物価並み(10年1.34倍)。セグメント利益は非開示で、全社費用を逆算して推定した。
製鋼事業(鋳鋼製品)
バルブの素材などになる鋳鋼製品。売上の約13%と推定。赤字が続く。
| 数量出荷量(トン、推定) | 価格1トンあたり平均価格(億円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,000 | 0.01 | 13 | −1 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.01 | 17 | 0 |
取り方:直近の四半期の鋳鋼製品の売上3.5億円から、年13億円弱と推定。1トンあたり64万円前後の品が年2千トン出ると置いた(推定)。数量は主要顧客向けが減っており、中立は横ばい。価格は物価並み。
電気設備関連事業
原発の電気設備の保守・工事。売上の約14%と推定。
| 数量年間の工事件数(件、推定) | 価格1件あたり平均金額(億円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 145 | 0.10 | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 160 | 0.13 | 21 | 4 |
取り方:直近の四半期の売上4.6億円から、年14.5億円と推定。1件あたり1,000万円の工事が年145件あると置いた(推定)。数量は原発の運転と補修の増加で、中立は10年で1.1倍。価格は物価並み。
その他(リファインメタルなど)
廃止措置で出るクリアランス金属の再生など。売上の約3%と推定。
| 数量年間の取扱い件数(件、推定) | 価格1件あたり平均金額(億円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 35.0 | 0.10 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.13 | 9 | 1 |
取り方:直近の四半期の売上1億円強から、年3.5億円と推定。立ち上がり期の事業で、廃炉の増加とともに数量は2倍に増えると置いた(推定)。価格は物価並み。
リスクと懸念
原発の再稼働の遅れ
定期検査の件数は、再稼働と運転計画に直結する。安全審査の長期化や地元の同意の遅れで、検査が先送りされれば、バルブの交換と修繕の売上が丸ごとずれる。
工事の受注損失
受注損失引当金が6億円近くあり、見積もりを誤った工事の損失が積まれている。想定を超える損失が出れば、営業利益が簡単に消える。
電力会社への偏り
顧客が少数の電力会社に偏り、発注条件は買い手が決める。1社の方針転換で売上が大きく動く構造だ。
新工場投資の回収
おおい町と神戸の用地に36億円を投じ、建設はこれからだ。リファインメタルは市場が育つまで時間がかかり、投資が稼ぎに結びつかない恐れがある。
人手と資格の確保
原発の現場には資格を持つ人員が必要で、人手不足が深刻だ。人員が足りなければ、仕事があっても受けきれず、売上を逃す。
今後の分かれ目
- 泊3号機などの再稼働が予定どおり進む
- 定期検査の件数が増え、営業利益は10億円台が定着する。楽観の確率が上がる。
- 美浜で新設の本格的な計画が具体化する
- 新製弁の売上が久しぶりに伸び、事業の寿命への不安が薄れる。
- 原発の再稼働が大きく遅れ、定期検査が先送りされる
- 売上が1割以上減り、営業利益は赤字近くに落ちる。悲観に確率が移る。
- リファインメタルで大口の契約が決まる
- 第2工場の建設が前に進み、新たな柱が育つ。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが示される
- 少数株主への還元が増え、資産の戻り方の評価が上がる。
見ておくもの
- 国内原発の再稼働と定期検査の日程
- 営業利益と受注損失引当金の推移
- おおい町・神戸の新工場の建設の進み方
- 電力会社別の売上の偏り
- 配当方針と投資有価証券の扱い
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。10年後の自己資本利益率は6%前後で資本コスト8.25%に届かず、正当化PERの8割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。利益の波が荒いため、10年後の利益率は直近の好調ではなく、中央値と直近の山の間に置いた。余った現金は戻り方0.5で、新工場の投資に使う分を差し引いている。新リース会計基準の影響は小さく、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→13.69 倍・やや楽観 PER 10→12.35 倍・中立 PER 8.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。