結論
やまびこは、チェンソー・刈払機・ブロワなどの小型屋外作業機械を「ECHO」ブランドで世界に売る会社だ。売上の 4 分の 3 が小型屋外作業機械で、米国のホームセンターが最大の販路になっている。筆者の結論は、今の値段は 10 年の中立で見てほぼ妥当、割安とも割高とも言い切れない、というものだ。
稼ぐ力は確かに上がった。2025 年 12 月期の営業利益は 197 億円、営業利益率は 11.3% で、10 年前の倍近い。北米の天候とホームセンター向けの伸び、欧州のロボット芝刈機の回復が効いた。2026 年の上期は関税の還付や為替差益も加わった。こうした一回限りの追い風を、長く続く利益と混ぜないことが肝心だ。
10 年の筋書きを分けるのは、北米で電池式の工具へ移る流れに乗れるかどうかだ。エンジン式の強さは、電池式では通用しにくい。一方、欧州のロボット事業と発電機・溶接機の伸びが、その穴を埋める余地もある。
最大の顧客が売上の 4 分の 1 近くを占める点も軽くない。中立では利益率が今より少し下がり、10 年後の時価総額は今の 1.6 倍ほどになる。還元を加えても、資本コストで割り引くと今の値段とほぼ同じになる。慎重な側の筋書きを少し厚く見積もったぶん、総合では「適正」の内側にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、やまびこは「良い小さな会社」だ。財務は堅く、プロ向けのブランドがあり、経営の資本の使い方も大きな失敗がない。ただ、10 年先も強い会社でいられるか、見通しが立ちにくい点が気にかかる。
株主のものになる利益、つまり事業の維持と成長に必要な再投資を引いた利益は、純利益の 7〜8 割ほどだ。工場の更新と研究開発は要るが、巨額の投資は要らない。自己資本が積み上がるわりに、還元が薄いのは弱点だ。
筆者がいちばん重く見るのは、電池式への移行が堀を削るかどうかだ。エンジンの軽さと耐久性で築いた信頼は、電池では別の物差しで測られる。逆に、欧州のロボットや発電機がこの穴を埋めれば、利益の質は上がる。
安全域の面では、今の値段は十分に安いとは言えない。今の利益には、一回限りの追い風が混じる。中立で今と釣り合う水準にとどまる以上、買い手に厚い安全域はない。10 年の幅(悲観は半分以下、楽観は 3 倍近く)を考えると、確信を持てる価格ではない。
何で稼ぐ会社か
売上の約 76% は小型屋外作業機械(OPE)だ。チェンソー、刈払機、ヘッジトリマー、背負式ブロワといった手持ちの機械で、造園業者や林業、一般家庭が使う。共立(林業機械)と新ダイワ工業が 2008 年に統合して生まれ、「ECHO」「SHINDAIWA」のブランドを持つ。生産の中心は国内の工場だ。
稼ぎの源は北米にある。2024 年の OPE 売上のうち北米が約 870 億円、欧州は約 130 億円だった。米国ではホームセンターの店頭で売れるほか、造園業者向けの専門店網を持つ。最大の顧客は大手ホームセンターで、連結売上の 23.4% を占めるとされる(有価証券報告書ベースの企業概要による)。
残りは 2 つの事業だ。農業用管理機械は、動力噴霧機や刈払機など農家向けの機械で、売上は 240 億円ほど。国内が中心で、穀物価格の低迷で海外は弱い。一般産業用機械は、建設・レンタル向けの発電機や溶接機、電子機器の受託製造(EMS)で、156 億円ほどだ。2026 年の上期は大手レンタル会社向けの発電機が北米で伸びた。
成長の柱として、会社は欧州のロボット芝刈機を押している。ベルギーのベルロボティクスを 2014 年に子会社にし、業務用の大型地向けで技術を持つ。電池式の製品も北米で広げている。ただ、エンジン式の主力は、電池式への移行が進むほど縮む。これが事業の最大の論点だ。
優良さと弱いところ
堀は「プロ向けの信頼」と「販路」だ。造園業者は、機械が止まれば仕事が止まる。だから軽さ、始動のしやすさ、壊れにくさで ECHO を選ぶ人が多い。ホームセンターの棚と専門店の網は、新規の参入者にはすぐに作れない。ただし、世界の手持ち工具は STIHL とハスクバーナという大きな競合がいて、やまびこはそれに次ぐ位置にとどまる。筆者は、強い堀ではなく普通の堀と見る。
値決めの力は中くらいだ。物価で上がる原材料費と人件費を、ほぼ値上げで回収できてきた。ただ、最大顧客の購買力は大きく、価格交渉では不利になりやすい。
資本効率は改善した。ROE は 2020 年に 11% を付けたあと 8% 台まで下がったが、2024 年に 14.8% まで戻した。過去 10 年の中央値は 9.9% で、10 年後も 12% を超えて続くとは見ていない。今の 12% は、追い風のなかの数字だと考えるのが安全だ。
財務は堅い。自己資本比率は 70% を超え、借金はほぼゼロ。利払いの心配はない。弱点は 2 つある。電池式への移行で、ECHO の強みが薄れる可能性。そして為替だ。売上の 7 割が海外のため、円高は利益を直接削る。2025 年上期は円高で純利益が減った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の小型屋外作業機械(手持ちの機械とロボット芝刈機)の市場は、筆者の推定で 110 億ドル前後ある。ほぼ成熟した市場で、実質では年 2〜3% 伸びる程度だ。伸びの中身は 2 つある。造園業や林業の人手不足が、機械の更新を促す。そして電池式の普及で、単価が上がる。
いちばん大きな構造変化は電池式への移行だ。騒音と排ガスの規制、住宅地での使いやすさから、家庭用と軽い業務用で電池式が増えている。中国の電池メーカー系(EGO を持つ Chervon など)や、電動工具の大手が、この領域に入ってきた。エンジンで強かった会社は、電池で同じ強さを保てるとは限らない。
ロボット芝刈機は、欧州で伸びている。人手不足と、芝刈りの自動化が追い風だ。やまびこは業務用の大型地で技術を持つが、家庭用では大手が多い。欧州の販売は 2024 年に代理店の在庫調整で落ち、2025 年に戻した。2026 年の夏は熱波で一部が鈍っている。
北米の需要は、天候と住宅の動きで揺れる。ハスクバーナは 2026 年に北米の弱い需要と関税で苦しんでいる。やまびこは、関税の還付が出るなど、同じ環境でも結果は分かれた。
農業用管理機械は、国内の農家が減るなかで、横ばいから小さな縮みが普通だ。一般産業用機械は、大手レンタル向けの発電機など、足元の需要が強い。ただ、レンタル向けの色が濃く、景気の波を受けやすい。
資本政策と M&A
還元は控えめから変わりつつある。2025 年の配当性向は 25% ほどで、2026 年は増配の予想だ。2024 年には 30 万株の自社株買いもした。会社は安定配当を基本とし、中期経営計画 2028 では ROE 14% を掲げる。自己資本が積み上がるなか、還元を厚くしないと ROE は目標に届かない。
財務には余力がある。純現金は小さいが、借金はほぼゼロで、自己資本比率は 70% を超える。大型の買収に使える体力はある。ただ、これまでの買収は小さい(ベルロボティクスなど)。中国の子会社を清算した例は、不採算の事業を整理する姿勢を示す。
株主は信託銀行(約 11%)と取引先持株会、金融機関の政策保有が中心で、支配株主はいない。アクティビストの保有も見当たらない。国内の同業・商社による買収の話は表に出ていないが、時価総額が 2,000 億円に届かない規模で、10 年以内に TOB を受ける確率は 20% 台と試算されている。筆者は、買収の上乗せを価値には入れていない。
中期経営計画 2028 は、2028 年度に売上 2,100 億円、営業利益率 13% 以上、ROE 14% 以上が目標だ。北米は自力の成長、欧州は OPE とロボットの拡大、国内は構造改革で収益を上げる。目標は強気だが、筋書きの中立は、これより低い利益率に置いている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
欧州のロボット芝刈機と電池式の製品が、エンジン式の穴を埋めて余りある。人手不足の欧州で、造園・自治体向けのロボットは、一度入れると部品とサービスの収益が続く。やまびこは業務用の大型地に強みがあり、ここで世界の上位に入る。
北米では、プロ用の信頼を電池式にも移せる。ECHO のプロ向けの電池式は、軽さと持続時間で評価を固め、ホームセンターの棚を守りながら、造園業者向けの専門店でも伸ばす。シェアは 8% から 9.5% に上がる。
一般産業用機械も追い風だ。建設現場やイベント、非常用の発電機が、北米でレンタル会社の定番の需要になる。レンタル会社との関係が深まり、EMS も量を増やす。営業利益率は 2 割を超え、会社の中期計画の 13% を上回る。
財務は厚い。借金がなく、利益の 4 割強を還元しても、自己資本は積み上がる。ROE は 16% まで上がり、倍率も平均より高く評価される。10 年後の時価総額は今の 3 倍近くになりうる。ホームセンターの購買力が、価格を締めすぎない限り、この絵は成り立つ。
慎重な見方
今の利益は追い風の頂点に近い。2025 年の営業利益率 11.3% は、北米の天候、円安、関税の還付、欧州の回復が重なった数字だ。2026 年上期の営業利益率 15.5% は、一回限りの要因が大きい。これを標準と置くのは危うい。
電池式への移行は、主力の強みを削る。EGO を持つ Chervon や TTI(ミルウォーキー、ライオビ)は、電池の技術と価格で攻める。ホームセンターは棚を自社ブランドと電池式の大手に回すことができる。最大顧客が売上の 23% を占める以上、棚の割り当てが 1 つ動くだけで利益が大きく崩れる。
関税と為替も重い。生産の一部を海外に持つとはいえ、米国向けの原価はドルと関税に左右される。円高になれば、売上の 7 割が海外のため、利益は直接削られる。
農業用管理機械と一般産業用機械は、足元の増益を支える力が弱い。国内の農家は減り続け、一般産業用機械はレンタルの景気にさらされる。中立でも利益率は今より下がる。10 年で見れば、今の 11% を保てる確証は薄い。筆者は、確率を慎重な側に寄せるのが妥当と考える。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、欧州のロボットと北米の発電機という具体的な伸びしろがある。一方、慎重な主張は、今の利益率が追い風込みであること、最大顧客への依存、電池式への移行という 3 つの構造的な弱点を突く。筆者は慎重な側をやや強いと見る。ただし、財務は堅く、悲観でも大きな赤字にはならないため、悲観の確率は 14% にとどめた。楽観と悲観のどちらも、10 年で十分に起きうる筋書きだ。確率は楽観側 28%、悲観側 40%、中立 32% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,926 円3,261 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,869 円769 億円)。 今の値に割り戻すと 5,253 円2,161 億円、今との差 +21.3%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 17,788 円7,318 億円 | 3,525 円1,450 億円 | +392.2% | +17.3% | 1,705 円701 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,740 円5,241 億円 | 2,722 円1,120 億円 | +257.1% | +13.6% | 3,093 円1,272 億円 |
| 中立 | 32% | 9,168 円3,772 億円 | 2,129 円876 億円 | +160.9% | +10.1% | 3,615 円1,487 億円 |
| やや悲観 | 26% | 3,064 円1,261 億円 | 1,191 円490 億円 | −1.7% | −0.2% | 1,106 円455 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,604 円660 億円 | 365 円150 億円 | −54.5% | −7.6% | 276 円113 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,926 円3,261 億円 | 1,869 円769 億円 | +126.2% | +8.5% | 9,795 円4,030 億円 |
今の株価時価総額 4,330 円1,781 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 電池式とロボットで主力の穴を埋め、利益率が 2 割に乗る 利益 378 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 17,788 円7,318 億円
電池式のプロ向け製品がホームセンターと造園業者の双方で評価を固め、エンジン式の縮みを補って余りある。北米のシェアは 8% から 9.5% に上がる。欧州では業務用ロボット芝刈機が人手不足の追い風を受け、部品とサービスの収益が積み上がる。
一般産業用機械は、大手レンタル会社向けの発電機と EMS が北米で根を張り、市場の 7.5% を占める。農業用管理機械は、国内の縮みを海外の伸びが埋めて横ばいを保つ。
全社の営業利益率は 14% 近くまで上がり、会社の中計が掲げる 13% を超える。自己資本は借金なしで積み上がり、還元を厚くしても ROE は 16% に届く。ホームセンターの購買力が価格を締めすぎないことが、この筋書きの前提だ。
- 小型屋外作業機械(OPE):数量 14.6(世界の手持ち屋外作業機械+ロボット芝刈機の市場(億ドル、実質)× シェア)× 価格 201(150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,941 億円・営業利益 647 億円。市場 154 億ドル×シェア 9.5%、営業利益率 22.0%
- 農業用管理機械:数量 50.4(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 6.70(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 338 億円・営業利益 29 億円。市場 1800 億円×シェア 14.0%、営業利益率 8.5%
- 一般産業用機械・その他:数量 16.9(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 27(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 452 億円・営業利益 41 億円。市場 4500 億円×シェア 7.5%、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 378 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍。全体の PER 19.36 倍、時価総額 7,318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電池式・ロボット・発電機の 3 つが同時にうまくいく必要があり、会社の中計の目標を超える筋書きなので 1 割を切る確率にした。
やや楽観 20% 北米の地盤を守り、欧州と発電機が上積みする 利益 292 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 12,740 円5,241 億円
北米の地盤は崩れず、電池式の製品が棚を保つ。シェアは 9% まで上がる。欧州の OPE とロボットは、会社の計画どおりに拡大し、欧州は売上の 2 割に近づく。
一般産業用機械は、発電機の需要が定着し、市場の 7% を占める。農業用管理機械は国内の縮みが続くが、海外の小さな伸びで売上は横ばいに近く、利益率は 7% 台を保つ。
営業利益率は 12% 前後で、今とほぼ同じ水準を保つ。欧州とロボットの上積みが、北米の一回限りの追い風が抜ける分を埋める形だ。還元の割合は 45% に高まり、ROE は 13% に近づく。強い堀とは言えないが、普通の堀の範囲で、資本コストを上回る稼ぎが続く姿だ。
- 小型屋外作業機械(OPE):数量 13.1(世界の手持ち屋外作業機械+ロボット芝刈機の市場(億ドル、実質)× シェア)× 価格 201(150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,627 億円・営業利益 539 億円。市場 145.2 億ドル×シェア 9.0%、営業利益率 20.5%
- 農業用管理機械:数量 48.6(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 6.70(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 326 億円・営業利益 24 億円。市場 1800 億円×シェア 13.5%、営業利益率 7.5%
- 一般産業用機械・その他:数量 14.7(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 27(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 394 億円・営業利益 32 億円。市場 4200 億円×シェア 7.0%、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 292 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.95 倍、時価総額 5,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:欧州のロボットと北米の発電機は足元で実績があり、中計の目標に近い。確度は中立より少し低い。
中立 32% 中立:北米は横ばいの地位、欧州と産機が伸びを支える 利益 229 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 9,168 円3,772 億円
北米の OPE 市場は、実質でほぼ 1.25 倍に伸び、やまびこのシェアは 8.5% まで微増する。電池式への移行は進むが、プロ向けのエンジン式が根強く残り、主力の売上は物価の分だけ伸びる。欧州は着実に伸びるが、売上の 1 割台にとどまる。
今の営業利益率には、関税の還付や為替の追い風が混じる。10 年後は OPE の利益率が 19% に下がり、全社の営業利益率は 10〜11% で落ち着く。農業用管理機械は国内の縮みを海外が相殺し、一般産業用機械はレンタル向けの需要が伸びる。
還元は純利益の 45% ほどに高まるが、自己資本はそれでも積み上がる。ROE は 10% 台半ばで、資本コストを少し上回る程度。中計の目標(営業利益率 13%、ROE 14%)には届かない。
- 小型屋外作業機械(OPE):数量 11.7(世界の手持ち屋外作業機械+ロボット芝刈機の市場(億ドル、実質)× シェア)× 価格 201(150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,349 億円・営業利益 446 億円。市場 137.5 億ドル×シェア 8.5%、営業利益率 19.0%
- 農業用管理機械:数量 46.9(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 6.70(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 314 億円・営業利益 22 億円。市場 1750 億円×シェア 13.4%、営業利益率 7.0%
- 一般産業用機械・その他:数量 12.7(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 27(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 340 億円・営業利益 24 億円。市場 3900 億円×シェア 6.5%、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 229 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.47 倍、時価総額 3,772 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:地盤の北米を守り、利益率は今より少し下がるという、いちばん起きやすい姿。幅が広い事業なので 3 割強にとどめた。
やや悲観 26% 電池式への移行で北米の棚が痩せ、利益率が戻る 利益 115 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,064 円1,261 億円
電池式への移行で、北米の棚が痩せる。プロ用のエンジン式は残るが、家庭用の軽い製品で、中国の電池勢と電動工具の大手に棚を取られる。シェアは 7.5% まで下がり、市場の伸びも 15% 程度にとどまる。
ホームセンターの購買力が強まり、値引きの要求が続く。OPE の利益率は 15% まで下がる。農業用管理機械は国内の縮みで利益が薄く、一般産業用機械はレンタルの景気が冷えて利益率が 5% 台になる。
全社の営業利益率は 7% 近くに落ち、ROE は 6% 前後で資本コストを下回る。会社は還元を保つが、投資の稼ぎは伸びず、倍率は 10 倍ほどに縮む。
- 小型屋外作業機械(OPE):数量 9.5(世界の手持ち屋外作業機械+ロボット芝刈機の市場(億ドル、実質)× シェア)× 価格 201(150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,907 億円・営業利益 286 億円。市場 126.5 億ドル×シェア 7.5%、営業利益率 15.0%
- 農業用管理機械:数量 41.3(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 6.70(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 276 億円・営業利益 11 億円。市場 1650 億円×シェア 12.5%、営業利益率 4.0%
- 一般産業用機械・その他:数量 9.6(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 27(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 257 億円・営業利益 14 億円。市場 3300 億円×シェア 5.8%、営業利益率 5.5%
倍率:ROE 5.7% が k 7.25% を下回り、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 12.5 倍まで。稼ぐ力(純利益÷k)から上限の 8.0 割の 10.00 倍に置いた。
確率:今の利益率が追い風込みで、最大顧客が売上の 23% を占める。電池式への移行で棚が動く可能性は、強気の筋書きより起きやすいと見て厚くした。
悲観 14% 最大顧客の棚を失い、中国・電池勢に押される 利益 26 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,604 円660 億円
最大顧客が棚の配分を変え、ECHO の北米の売上が大きく落ちる。シェアは 6% に下がり、市場も伸びない。中国の電池勢に価格で負け、プロ用でも信頼だけでは値段を保てなくなる。
OPE の利益率は 8% まで落ち、農業用管理機械は損益がゼロに近づく。一般産業用機械も、レンタルの値引きで利益がほとんど出ない。会社は国内の工場を減らし、本社費を削るが、全社の営業利益率は 2% 台にとどまる。
借金がなく、赤字には落ちないが、稼ぐ力は大きく削られる。値は純現金と売れる資産(工場の土地建物、在庫、売掛金)の税後の価値で測るしかない。
- 小型屋外作業機械(OPE):数量 6.6(世界の手持ち屋外作業機械+ロボット芝刈機の市場(億ドル、実質)× シェア)× 価格 201(150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,327 億円・営業利益 106 億円。市場 110 億ドル×シェア 6.0%、営業利益率 8.0%
- 農業用管理機械:数量 33.0(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 6.70(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 221 億円・営業利益 0 億円。市場 1500 億円×シェア 11.0%、営業利益率 0.0%
- 一般産業用機械・その他:数量 7.0(販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定))× 価格 27(1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍)→ 売上 188 億円・営業利益 4 億円。市場 2800 億円×シェア 5.0%、営業利益率 2.0%
倍率:構造悲観:稼ぐ力は小さく(純利益 26 億円)、値は純現金+売れる資産の税後を床にした。約 660 億円とみて、今の自己資本 1,200 億円に対する比率が PBR。
確率:最大顧客の棚替えと電池勢の攻勢が重なれば、堀は想定以上に薄い。財務は堅いが、構造的な負けは 1 割強で起きうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小型屋外作業機械(OPE)
チェンソー・刈払機・ブロワ・ロボット芝刈機。ECHO・SHINDAIWA ブランド。北米のホームセンターと専門店が主な販路。
| 数量世界の手持ち屋外作業機械+ロボット芝刈機の市場(億ドル、実質)× シェア | 価格150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.8 | 150 | 1,320 | 282 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 201 | 2,349 | 446 |
取り方:売上 1,320 億円、セグメント利益 282 億円(開示)。市場は筆者の推定で約 110 億ドル(実質)、シェア約 8%。市場規模の出典は無く、競合(STIHL・ハスクバーナ・TTI・Chervon・マキタ)の規模から見積もった。数量は実質、物価は価格に入れた。
農業用管理機械
動力噴霧機・刈払機など農家向け。国内中心。
| 数量販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定) | 価格1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 48.2 | 5.00 | 241 | 18 |
| 10 年後 中立 | 46.9 | 6.70 | 314 | 22 |
取り方:売上は約 241 億円(開示)。市場は約 1,800 億円、シェア 13.4% と推定し、1 台 5 万円の平均で台数に直した。セグメント利益は開示を確認できず、減益との記述から約 7.5% と見積もり、全社の営業利益 197 億円に合う形で調整額を置いた。
一般産業用機械・その他
発電機・溶接機・EMS(電子機器の受託製造)。レンタル会社向けが北米で伸びる。
| 数量販売台数換算(万台、市場×シェアからの推定) | 価格1 台あたり売上(万円)。10 年で物価の 1.34 倍 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.0 | 20 | 179 | 12 |
| 10 年後 中立 | 12.7 | 27 | 340 | 24 |
取り方:売上は一般産業用機械 156 億円(開示)にその他約 23 億円を足した 179 億円。市場は約 3,000 億円、シェア約 6% と推定し、1 台 20 万円の平均で台数に直した。利益は約 6.7% と見積もった。
リスクと懸念
最大顧客への依存
大手ホームセンターが連結売上の 23.4% を占める。棚の配分や仕入れ条件が変わるだけで、売上と利益が大きく動く。値決めの力も、この顧客の前では限られる。
電池式への移行
騒音・排ガスの規制と使いやすさから、家庭用と軽い業務用で電池式が広がる。エンジンで築いた強みが電池で通用するとは限らず、Chervon や TTI など電池に強い会社が棚を取る恐れがある。
追い風込みの利益水準
2025 年の営業利益率 11.3%、2026 年上期の 15.5% には、北米の天候、関税の還付、為替差益が混じる。これらが抜けた後の利益を標準と見ないと、価値を高く見すぎる。
為替と関税
売上の 7 割が海外で、円高は利益を直接削る。米国向けの関税が再び強まれば、原価が上がる。2025 年の上期は円高で純利益が減った。
欧州のロボット事業の立ち上がり
会社は欧州のロボット芝刈機を成長の柱にするが、販売は代理店の在庫調整や天候で振れる。家庭用では大手が多く、業務用の技術が家庭用の競争力につながるとは限らない。
国内農業の縮み
農業用管理機械は国内の農家減少で、横ばいから小さな縮みが続く。海外は穀物価格の低迷で弱く、全社の利益を支える力は小さい。
今後の分かれ目
- 最大顧客の売上比率が 3 割に近づく、または 2 割を切ったら
- 3 割に近づけば依存の悪化として慎重な側の確率を上げる。2 割を切って専門店や欧州が補えば、悪い筋書きの確率を下げてよい。
- 北米で電池式のプロ向け製品が棚を取り、売上に占める電池式の比率が上がり続けたら
- 強気の筋書き(電池式で穴を埋める)の確率を上げる。比率が伸びずエンジンだけが縮むなら、慎重な側に寄せる。
- 関税の還付や為替差益を除いた営業利益率が 12% を超えて定着したら
- 今の利益率が追い風だけではなかったことになり、中立の利益率を引き上げてよい。
- 欧州のロボット事業の売上が 2 年連続で 2 桁成長したら
- 中計の欧州拡大が実を結んだと見て、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- ドル円が今の前提より 2 割超の円高に進んだら
- 海外売上の円換算が減り、利益が直接削られる。為替は筋書きでは固定しているので、一時的な要因として扱う。
見ておくもの
- 最大顧客の売上比率と、電池式製品の売上比率
- 北米・欧州の地域別売上と OPE の営業利益率
- 関税の還付や為替差益を除いた営業利益
- ロボット芝刈機の売上と欧州の代理店在庫
- 中期経営計画 2028 の進み具合(営業利益率 13%・ROE 14%)
- 配当性向と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
筋書きは、OPE の市場×シェア×物価並みの価格、農業用・産業用は市場×シェア×物価で積み、倍率は正当化 PER(k 7.25%=基本 7.5% に quality +0.5%、g 4%、残る割合 1/2)の 8〜9 割で置いた。今の株価や過去・同業の倍率は使っていない。今の利益には関税の還付と為替差益が混じるので、中立の OPE の利益率は今より下げた。同じ領域の竹内製作所・マキタと比べ、確率は慎重な側に寄せ、k は quality +0.5% で両社の間に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.17→19.36 倍・やや楽観 PER 13.12→17.95 倍・中立 PER 12.75→16.47 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。電池式への移行や最大顧客の棚替えは k に足さず、悲観側の筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。