結論
中北製作所は、船舶と発電プラントに使うバルブと、その遠隔操作装置を作る大阪の会社だ。船のタンクや配管の流れを切り替える大型のバタフライ弁で、国内ではほぼ独占とされ、中国・韓国でも半分ほどのシェアを持つと伝えられる。
結論から言う。今の値段は、やや高いと見る。事業の質は悪くない。ただ、稼ぐ力に対して資産が厚すぎる。自己資本は281億円あるのに、純利益は17億円ほどだ。この資本効率では、資産の帳簿どおりの価値は付かない。
足元の追い風は強い。造船の更新需要で受注残は約286億円と、1年分の売上を超えた。2026年5月期の売上は23%増えた。だが利益の質には注意がいる。営業利益は16億円で、経常利益との差が7億円もあり、その中身を確かめられていない。会社は次期、営業利益を7%減らすと見る。
これから大きな投資が待つ。大阪の交野市に用地を取得し、創業100周年の2030年に本社工場を移す。減価償却が増え、現金は減る。
10年の中立では、売上は物価の分だけ伸び、利益率は6%に近づく。それでも純利益は物価に追いつく程度で、倍率は低いままにとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、中北製作所は「事業は良いが、資本の使い方が重い会社」だ。
事業の本質は、船や発電所に不可欠な弁を、実績で選ばれて納める仕事だ。部品としての値段は小さいが、故障した時の代償が大きく、客は実績のある会社を選ぶ。この点は評価できる。
堀は中程度だ。新規の参入は難しいが、客が強く、値段を決める力は弱い。造船の波にも利益が左右される。
資本の使い方には疑問が残る。自己資本の1.7倍の時価総額に対して、利益は小さい。配当性向が低いまま、利益を資産に積み上げれば、積み上げた資産は、帳簿より低い価値しか生まない。ROEが資本コストに届かない限り、ためた利益は額面の価値に届かない。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、純利益より小さい。工場の移転と更新に、まとまった現金が出ていくためだ。
安全域は薄い。中立で今の値段を下回り、楽観でようやく上回る。大きな割安がないので、持つ理由は乏しい。ただし、PBRが低く、大株主が動く可能性もある。この点は、悲観の確率を厚くしない理由として読んでいる。
何で稼ぐ会社か
中北製作所は、流体を制御するバルブと、その遠隔操作装置のメーカーだ。事業は1つにまとまっている。
商品は3つ。自動調節弁、バタフライ弁、遠隔操作装置だ。2025年5月期の売上の比率は、バタフライ弁が約4割、自動調節弁が約3.6割、遠隔操作装置が約2割だった。
船舶用は、タンカーの貨物を送る配管、バラスト水の配管、機関室に使われる。大きな弁を、船室から遠隔で動かす装置とセットで納める。客は造船所だ。陸用は、発電所やガス会社、化学プラント向けで、納めた後の保守も収入になる。
主な顧客には、三菱重工業(売上の11%)、IHI、東芝エネルギーシステムズ、日立製作所、電力3社、ガス3社が並ぶ。国内の工場は大阪府大東市にあり、韓国にACE VALVEという子会社を持つ。
従業員は連結で511人。研究開発に年4億円を使い、液体水素用の大口径バタフライ弁の開発を終えた。
弁の寿命は長く、更新と保守の需要が積み上がる。一方で、船舶用は新造船の波に収入が左右される。
本社工場は大阪府大東市にある。老朽化を理由に、創業100周年の事業として、交野市の新しい用地へ移す計画が動いている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、船舶用の大型バタフライ弁と遠隔操作装置で築いた実績にある。
船のバルブは、一度採用されると、同じ型の船に使い続けられやすい。配管の設計、検査、船級協会の承認がセットで、新規の参入には時間がかかる。国内ではほぼ独占とされ、中国・韓国でも半分ほどを持つと伝えられる。
ただし、客は造船所と大手の機械メーカーで、価格交渉は強い。堀は広くても、値段を引き上げる力は強くない。三菱重工業への売上が11%あるのも、気になる点だ。
資本効率は低い。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は10年の中央値が4.2%で、2026年5月期でも6.1%だ。営業利益率は過去10年で3〜7%台にとどまる。2009年の10.6%は、造船の山の水準だった。
財務は健全だ。自己資本比率は71%で、借入は軽い。ただし、現金に近い資産は、新しい工場用地(約43億円)や政策保有株(約36億円)に変わっている。
経営の資本配分は、配当性向が2割台と控えめで、資産を積み上げる姿勢が強い。PBRが1倍を割る状態が長く続いてきた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
船舶用バルブの需要は、新造船の発注で動く。船は20〜25年で替えられ、その波が数年おきに来る。
いまは更新の山にある。環境規制で船の入れ替えが促され、LNG船、アンモニア船、水素の運搬船など、新しい燃料に合わせた船が増える。舶用の受注残が伸び、売上の1年分を超えているのは、その表れだ。
ただし、造船は波が大きい。2018年から2023年にかけて、会社の売上は218億円から158億円に3割近く落ち、営業利益は5億円まで細った。いまの受注は強いが、10年先の需要が同じ水準とは限らない。
陸用は、発電所とガス会社の保守と更新が中心で、波が小さい。電力需要の増加で、発電所の新設や更新が増える見通しだ。データセンター向けの電力需要も話題に上がる。
競争では、国内の同業にイーグル工業、キッツ、栗本鉄工所などがいる。船舶用の大型バタフライ弁では、中北製作所が先頭にいる。新造船の中心は中国と韓国で、日本の造船所向けの比率は下がっている。会社は、韓国の子会社と海外の売上で、この流れに対応している。
価格は物価で上がる。ただし、造船所と大手メーカーの発言力は強く、値上げは交渉で決まる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は増配の予定だが、配当性向は2割台にとどまる。自社株買いは小さく、自己株式は発行済み株式の9%近くにたまっている。
資本政策の最大の論点は、資産の使い方だ。自己資本は281億円で、時価総額の1.7倍ある。会社は大阪の交野市に用地(簿価約43億円)を持ち、創業100周年の2030年に本社工場を移す予定で、投資額は開示されていない。
政策保有株は、名村造船所、PILLAR、木村化工機など19銘柄で約34億円。配当が営業外の収益に入っているため、価値には二重に足していない。
大株主は、ミヤキタコーポレーション(約12%)、中北健一氏(約8%)のほか、宮田姓と中北姓の個人が並び、社長の宮田彰久氏も名を連ねる。2026年10月には、宮田宏章氏が共同保有を含む保有割合を20.7%から23.4%へ高めたとの報告があった。目的は確かめられていない。
kabufuの試算で、10年以内のTOB(公開買い付け)の確率は約25%だ。株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
環境規制と船の更新が重なり、造船は長い好況に入る。LNG船、アンモニア船、液化水素運搬船と、新しい燃料の船はバルブの数も、大きさも、価格も上がる。中北製作所は、この分野で実績がある。液体水素用の大口径バタフライ弁の開発を終え、技術でも先行している。
受注残は約286億円で、売上の1年分を超え、足元の売上は今後数年、安定して伸びる。1四半期の営業利益は減ったが、受注の質は上がっている。
陸用は、電力需要の増加が追い風だ。発電所とガス会社の保守と更新は、波が小さく、利益率が高い。データセンターの電力需要は、発電所の新設を促す。
交野市の新工場は、生産の自動化で効率を上げる。減価償却は増えるが、数量の伸びがそれを吸収する。営業利益率が8%に近づけば、純利益は今の1.8倍になる。
財務の余力も大きい。自己資本は281億円で、借入は軽い。PBRが1倍を割る状態が続くなか、会社が自社株買いと増配に動けば、資本効率の改善が評価される。
慎重な見方
2027年5月期の会社計画は、売上が増えるのに営業利益が7%減る。直近の4半期も営業利益は34%減った。受注が積み上がっても、利益に結びついていない。
利益の中身にも疑問がある。営業利益は16億円なのに、経常利益は23億円ある。差の7億円は、受取配当の約1億円では説明がつかない。この収益が続く保証はない。
造船は波が大きい。2018年から2023年にかけて、売上は3割近く落ち、営業利益は5億円まで細った。いまの受注は強いが、新造船の発注は、運賃と金利で急に止まる。中国と韓国の造船所は、価格で攻めてくる。日本の造船所向けは減り続けており、国内の独占は市場が縮む中での独占にすぎない。
資本効率は低いままだ。ROEの10年の中央値は4.2%で、資本コストの半分ほどだ。利益を資産にためても、価値は増えない。
交野市の新工場は、2030年に向けて大きな投資になる。投資額は開示されていない。稼働しても、償却だけが先に増え、数量が追いつかなければ、利益率は下がる。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠がある。強気の見方は受注と技術に、慎重な見方は利益の質と資本効率に支えられている。
筆者は、慎重な見方をやや強いと見た。ROEが資本コストに届かない会社に、高い倍率は付けられない。確率はやや悲観に23%、悲観に12%を置いた。楽観は7%にとどめる。結果として、中立でも今の値段を下回り、やや割高と出た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 7,031 円245 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,609 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 4,626 円161 億円、今との差 +0.7%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 12,782 円446 億円 | 2,607 円91 億円 | +234.9% | +12.8% | 1,077 円38 億円 |
| やや楽観 | 20% | 10,035 円350 億円 | 2,120 円74 億円 | +164.5% | +10.2% | 2,431 円85 億円 |
| 中立 | 38% | 8,012 円280 億円 | 1,747 円61 億円 | +112.4% | +7.8% | 3,708 円129 億円 |
| やや悲観 | 23% | 4,058 円142 億円 | 1,175 円41 億円 | +13.9% | +1.3% | 1,204 円42 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,263 円44 億円 | 573 円20 億円 | −60.0% | −8.8% | 220 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,031 円245 億円 | 1,609 円56 億円 | +88.0% | +6.5% | 8,641 円302 億円 |
今の株価時価総額 4,595 円160 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 船の更新と新燃料船で好況が長く続き、利益率が8%に 利益 32 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 12,782 円446 億円
環境規制による船の更新で、造船は長い好況に入る。LNG船、アンモニア船、液化水素運搬船と、新しい燃料の船が増え、バタフライ弁の数量は今より2割増える。陸用は電力需要の増加で、自動調節弁が2割台半ばで伸びる。価格は物価を少し上回る。
交野市の新工場が2030年に稼働し、生産の自動化で効率が上がる。減価償却は増えるが、数量の伸びがそれを吸収する。営業利益率は8%に近づく。過去のピーク(2009年の10.6%)には届かない。
配当性向は4割に上がり、自社株買いも増える。それでも、ROEは資本コストの8%に届かない水準にとどまり、倍率は式の上限の9割強にとどめた。
- バタフライ弁:数量 32.6(出荷台数(千台、推定))× 価格 69(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 225 億円・営業利益 18 億円。営業利益率8.0%
- 自動調節弁:数量 5.8(出荷台数(千台、推定))× 価格 276(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 159 億円・営業利益 13 億円。営業利益率8.0%
- 遠隔操作装置:数量 7.4(出荷台数(千台、推定))× 価格 138(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 103 億円・営業利益 8 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.12 倍、時価総額 446 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:造船の好況、液体水素などの新しい需要、新工場の効率化が、すべてそろう必要がある。営業利益率がピークに近づく姿で、確度は高くない。
やや楽観 20% 受注残と保守で利益率7%に近づく 利益 25 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 10,035 円350 億円
船の更新需要が続き、バタフライ弁は今より1割弱増える。陸用の自動調節弁は1割強増える。価格は物価並みに少し上乗せがつく。営業利益率は7%になり、2018年の山の水準(7.7%)に近づく。受注残が売上を支え、数年にわたって利益の見通しが立てやすい。
新工場が2030年に稼働し、減価償却が増えるが、数量の増加と効率化で吸収する。配当性向は4割に近づき、資本効率は少し改善する。ただ、ROEは6%台にとどまり、資本コストの8%には届かない。
客が強く、価格を決める力が弱い点は変わらない。
陸用では、発電所とガス会社の更新が着実に積み上がり、保守の収入が全体の波をならす。船舶用の好況が少し長引く程度で、構造が変わるわけではない。
- バタフライ弁:数量 29.4(出荷台数(千台、推定))× 価格 68(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 200 億円・営業利益 14 億円。営業利益率7.0%
- 自動調節弁:数量 5.2(出荷台数(千台、推定))× 価格 272(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 140 億円・営業利益 10 億円。営業利益率7.0%
- 遠隔操作装置:数量 6.8(出荷台数(千台、推定))× 価格 136(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 92 億円・営業利益 7 億円。営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 350 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が厚く、新燃料の船の需要は当面続く。ただし会社自身が2027年5月期の減益を見込み、跳ね上がるほどではない。
中立 38% 中立:船は落ち着き、陸用がわずかに伸びる 利益 20 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 8,012 円280 億円
船舶用は、新造船の発注が山を越えて落ち着き、バタフライ弁の数量は今より5%減る。陸用は発電所とガス会社の保守と更新で、自動調節弁が5%増える。価格は物価並みの1.34倍で、売上は385億円ほどになる。
営業利益率は5.9%に落ち着く。足元の5.3%から少し上がるのは、新工場の自動化による効率化を見込むためだ。減価償却は今の約4億円から、新工場の分で10年後に約8億円へ増える。工場の建設費は物価で膨らみ、償却を超える分は現金が出ていく。借入に頼れば利払い3.5%が増え、自己資本で賄えば還元が減る。
営業外の収益は、今の7億円から4〜5億円へ落ち着くと見る。純利益は20億円弱になる。配当性向は3割台半ばで、自己資本はゆっくり積み上がる。ROEは5%前後にとどまる。
- バタフライ弁:数量 25.8(出荷台数(千台、推定))× 価格 67(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 173 億円・営業利益 10 億円。営業利益率5.9%
- 自動調節弁:数量 4.8(出荷台数(千台、推定))× 価格 268(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 129 億円・営業利益 8 億円。営業利益率5.9%
- 遠隔操作装置:数量 6.1(出荷台数(千台、推定))× 価格 134(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 82 億円・営業利益 5 億円。営業利益率5.9%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 269 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:船舶用は山を越えて落ち着き、陸用がわずかに伸び、価格は物価並み。利益率は足元より少し高い水準が最も自然。
やや悲観 23% 造船の山越えと中韓との価格競争で利益率が4%台に 利益 12 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 4,058 円142 億円
造船の発注が山を越えて下がり、中国と韓国の造船所が価格で攻める。バタフライ弁の数量は今より2割減り、遠隔操作装置も同じように減る。自動調節弁も1割減る。価格は物価に届かず、10年で1.28倍にとどまる。
新工場の償却が先に重くなり、営業利益率は4%台前半まで下がる。陸用の保守は底堅いが、船舶用の落ち込みを補うほどではない。赤字には落ちないが、純利益は12億円ほどに細る。配当は利益に合わせて縮み、ROEは3%前後に沈む。自己資本は積み上がるが、稼ぎが追いつかず、ためた利益の価値は目減りする。
営業外の収益も細り、純利益の下支えは小さくなる。
会社は配当を守りつつ、新工場の規模を見直す。投資の先送りで財務は保たれるが、成長の絵は描きにくくなる。
- バタフライ弁:数量 21.7(出荷台数(千台、推定))× 価格 64(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 139 億円・営業利益 6 億円。営業利益率4.3%
- 自動調節弁:数量 4.1(出荷台数(千台、推定))× 価格 256(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 106 億円・営業利益 5 億円。営業利益率4.3%
- 遠隔操作装置:数量 5.2(出荷台数(千台、推定))× 価格 128(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。営業利益率4.3%
倍率:ROE約3%でk7.25%を大きく下回る。稼ぐ力(純利益12億円÷k=約150億円)の約7割にあたる9.0倍に置いた。
確率:造船は波が大きく、2018年から2023年に売上が3割近く落ちた前例がある。ROEが資本コストに届かない構造と合わせ、慎重な見方が強いため、やや悲観に厚めに置いた。
悲観 12% 造船が大きく落ち、新工場が遊んで減損が出る 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,263 円44 億円
造船の発注が大きく落ち込み、日本の造船所向けは縮み、中国と韓国との価格競争が激しくなる。バタフライ弁と遠隔操作装置は4割減り、自動調節弁も25%減る。価格は物価に追いつかず、10年で1.20倍にとどまる。
交野市の新工場は、稼働しても数量が追いつかず、償却と固定費が重くのしかかる。営業利益率は1%台まで下がる。工場の一部で減損が出て、自己資本が30億円ほど減る。純利益は3億円まで細り、配当も大きく削られる。
財務は崩れないが、構造的に縮む会社と見なされる。政策保有株や土地の売却が選択肢に上がるが、事業の稼ぐ力は戻らない。
- バタフライ弁:数量 16.3(出荷台数(千台、推定))× 価格 60(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.5%
- 自動調節弁:数量 3.5(出荷台数(千台、推定))× 価格 240(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 83 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.5%
- 遠隔操作装置:数量 3.9(出荷台数(千台、推定))× 価格 120(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.5%
倍率:ROE約1%でk7.25%を大きく下回り、稼ぐ力(純利益3億円÷k=約40億円)は小さい。この筋書きでは売れる資産(政策保有株と交野市の用地の税後、純負債控除後で約44億円)のほうが大きいので、今の自己資本281億円に0.157倍を掛けて置いた。事業の価値は資産の価値に近づく。
確率:造船の落ち込み、中国・韓国の価格競争、新工場の遊びが同時に重なる姿は、確率が高くない。ただ、一度崩れると深いため、12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
バタフライ弁
船のタンクや配管の流れを切り替える大型の弁と、陸上プラント向け。国内の船舶用でほぼ独占とされる主力。
| 数量出荷台数(千台、推定) | 価格1台あたりの平均納入額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 27.2 | 50 | 136 | 7 |
| 10 年後 中立 | 25.8 | 67 | 173 | 10 |
取り方:2025年5月期の売上比率(バタフライ弁41.5%、約98.7億円)に2026年5月期の売上の伸び(+37.7%)を掛け、約135.9億円とした(推定)。平均納入額を50(万円)、台数を27.18千台とした。小さな弁から大型の弁まで混ざるため、台数は換算の目安。営業利益は品種別の開示がなく、全社の営業利益率5.3%を仮置きした。市場の大きさ:世界の新造船は中国と韓国の造船所が大半を占め、日本の造船所向けは減っている。数量は造船の更新需要を見て、中立で0.95倍、価格は物価並みの1.34倍。競合はイーグル工業、キッツ、栗本鉄工所など。
自動調節弁
流量や圧力を自動で調整する弁。発電所、ガス、化学プラント、船舶に使われ、保守の収入もある。
| 数量出荷台数(千台、推定) | 価格1台あたりの平均納入額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 4.6 | 200 | 92 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4.8 | 268 | 129 | 8 |
取り方:2025年5月期の売上比率(自動調節弁36.4%)から、全体の売上292.5億円から他の2品種を引いた残りとして約92.0億円と置いた(推定)。平均納入額を200(万円)、台数を4.6千台とした。電力需要の増加と、発電所とガス会社の更新・保守で、数量は中立で1.05倍、価格は物価並みの1.34倍。営業利益は全社の営業利益率5.3%を仮置き。
遠隔操作装置
船室から大型の弁を遠隔で動かす装置。船舶用のバタフライ弁とセットで納める。
| 数量出荷台数(千台、推定) | 価格1台あたりの平均納入額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 6.5 | 100 | 65 | 3 |
| 10 年後 中立 | 6.1 | 134 | 82 | 5 |
取り方:2025年5月期の売上比率(遠隔操作装置22.1%、約52.5億円)が、バタフライ弁の動きとほぼ同じ向きに増えたとして、約64.6億円と置いた(推定)。平均納入額を100(万円)、台数を6.46千台とした。船舶用の更新需要と連動し、数量は中立で0.95倍、価格は物価並みの1.34倍。営業利益は全社の営業利益率5.3%を仮置き。
リスクと懸念
造船の波
船舶用は新造船の発注に左右される。2018年から2023年には売上が3割近く落ち、営業利益は5億円まで細った。いまの受注残は厚いが、10年先まで続く保証はない。
中国・韓国の造船所との競争
新造船の中心は中国と韓国で、日本の造船所向けは減っている。海外の造船所は価格交渉で強く、中北製作所のシェアが保たれても、値段は押される。
利益の質(営業外の収益)
経常利益が営業利益を7億円上回り、次期の会社計画でも6億円強が続く前提になっている。中身を確かめられていない。営業利益だけで見ると、利益は今の7割ほどになる。
新工場の投資
交野市の用地(簿価約43億円)に、2030年に本社工場を移す。建設の投資額は開示されていない。数量が追いつかなければ、償却と固定費が先に利益を削る。
大口客への依存
三菱重工業が売上の11%を占める。造船所と大手機械メーカーが主な客で、価格の発言力が強い。
資本効率が資本コストに届かない
ROEの10年の中央値は4.2%で、資本コスト8%の半分ほどだ。配当性向が2割台と低く、利益が資産にたまるため、ためた利益は額面の価値に届かない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて7%を超えたら
- やや楽観・楽観に重みを移す。ただし、造船の山の水準であり、波を割り引いて確かめる。
- 受注残が売上の1年分を下回り、受注高が売上を下回る状態が続いたら
- やや悲観・悲観の確率を引き上げ、本質価値を下方に見直す。
- 営業外の収益の中身が、続く性質のものと分かったら
- 純利益の前提を上方に見直す。逆に一時的なら、中立の利益を下げる。
- 新工場の投資額と時期が開示されたら
- 償却と現金の流出を見直し、還元の前提を調整する。
- 会社が配当性向を大きく引き上げる、または大規模な自社株買いに動いたら
- 資本効率の改善として、還元の前提を上方に見直す。
- 宮田家・中北家に連なる大株主が、TOBや非上場化に動いたら
- 買い取り価格が本質価値を上回るかを別に確かめる。
見ておくもの
- 受注高と受注残高の推移(売上との比)
- 営業利益と経常利益の差の中身
- 新工場の投資額と完成時期
- 造船所向けと陸用の売上の比率
- 大株主の保有割合の動き
倍率と資本コストの決め方
売上は出荷台数×1台あたりの平均納入額で、品種別(バタフライ弁・自動調節弁・遠隔操作装置)に積んだ。品種別の売上は、2025年5月期の構成比に2026年5月期の伸びを当てはめた推定で、単価と台数も推定になる。価格は物価並みの1.34倍を基本にした。倍率は式から決め、ROEがk7.25%に届かないので上限1÷kの約8割台に置いた。今の株価は見ずに決め、最後に比べて、やや割高と出た。営業外の収益は、次期の会社計画に6億円強が入っているが、中身が確かめられないため、10年後は4〜5億円に落ち着く前提にした。リースは年0.35億円と小さく、新リース会計基準(2028年5月期から)の影響は軽いが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.12 倍・やや楽観 PER 10.8→13.79 倍・中立 PER 10.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足して8.0%。事業は傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。