結論
サノヤスホールディングスは、機械式駐車装置、工事用エレベーター、配電盤、観覧車などを作る機械メーカーだ。かつては造船会社だったが、2021年に造船を手放し、今は産業機械と建設設備が中心になっている。
筆者の結論は割高だ。2026年3月期は営業利益が17億円と、前期から5割以上伸びた。しかし会社は今期の営業利益を10億円と、4割減で見ている。利益が山を越えた後の値段としては高い。
事業の質は悪くない。駐車装置の更新、データセンター向けの配電盤、国内シェアの高いワイヤーハーネス加工機という芽がある。受注残は188億円と厚い。
弱みは財務と資本の効率だ。純有利子負債は83億円と時価総額に近く、自己資本比率は37%にとどまる。2025年に買収した2社ののれんも抱える。
分かれ目は、利益率が4%台に定着するかと、借入を返しながら成長できるかだ。
筆者は、受注残の厚さという足元の強さと、借入と買収の重さという中期の弱さが、拮抗していると見る。今の値段は、前者を織り込みすぎている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「借入が重く、利益の質が読みにくい」会社だ。
本質価値は、借入を返したあとに株主に残る利益で決まる。営業利益17億円は、今期10億円の予想へ4割下がる。純有利子負債は83億円で、時価総額110億円とほぼ並ぶ。値段は、借入を含めた全体(約190億円)で見る必要がある。
事業が10年後も続くことは確かだ。駐車装置や配電盤、遊戯機械には、更新の需要が続く。ただし、案件ごとの受注と入札で、価格を自分で決める力は弱い。
買収を重ねる経営は、資本を成長に回す姿勢として評価できる。しかしのれんと借入が増え、失敗した場合の傷は大きい。
安全域は、受注残の厚みと政策保有株に頼る範囲に限られる。値段は余裕を与えていない。
オーナーとして持ちたいかと問われれば、借入が減り、利益率が4%台に定着するまでは、様子を見たい。事業は悪くないが、財務の重さが安全域を削っている。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分かれる。2026年3月期の売上268億円のうち、建設業向けが125億円、製造業向けが109億円、レジャーが34億円だ。
建設業向けは、機械式駐車装置と工事用エレベーター、分電盤・配電盤の製造・工事だ。駐車装置は新設よりも、古い装置のリニューアルが伸びている。配電盤は、データセンター向けの大型案件が入った。利益率は14%台と、3事業で2番目に高い。
製造業向けは、ショットブラストマシン、乳化・撹拌装置、精密機械部品を作る。2025年に買収した小寺電子製作所は、電線を切って皮をむくワイヤーハーネス加工機のメーカーで、国内シェアは約7割だ。利益率は9%前後。
レジャーは、観覧車やジェットコースターなど遊園地の遊戯機械の製造・保守・運営受託だ。利益率は16%台と最も高い。大口の受注が4件入り、受注残が膨らんだ。
本社費などの全社費用は年に16億円ほどあり、利益を押し下げている。
グループは持株会社の下に、みづほ工業(乳化・撹拌装置)、松栄電機(配電盤)、ハピネスデンキなどが並ぶ。東京、山形、岐阜、成田、広島に工場を持つ。
優良さと弱いところ
優良とは言い切れない。堀、つまり他社がまねできない強みは、事業ごとにばらつきがある。
強みは、ニッチな製品が多いことだ。ワイヤーハーネス加工機は国内シェア7割、遊戯機械は国内の大手、工事用エレベーターと駐車装置は更新需要が続く。保守・運営の収益も一定ある。
弱みは、案件ごとに受注が決まり、入札で価格が決まりやすいことだ。大口案件の完工で利益が振れる。会社の2027年3月期の予想が4割減益なのは、その表れだ。
数字がそれを示す。造船を手放して以降の営業利益率は0.5〜6.2%で、振れが大きい。ROEは直近で11%台だが、過去10年の中央値は5%台にすぎない。
財務は弱い。純有利子負債は83億円で、営業利益の約5倍だ。M&A資金の30億円のシンジケートローンも抱える。
経営は「守りから攻めへ」を掲げ、買収で事業の幅を広げた。方向は理解できるが、その成果はまだ数字に表れ切っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、建設投資と製造業の設備投資、遊園地の更新で決まる。
建設業向けは、人手不足と建物の老朽化が追い風だ。機械式駐車装置は新設が減る一方、古い装置のリニューアル工事が伸びる。データセンターの新設は、配電盤の大型案件をもたらす。ただし配電盤は競合が多く、大手電機メーカーも参入している。
製造業向けは、自動車メーカーの設備投資に左右される。ショットブラストマシンは、関税の影響で自動車向けの投資が抑えられ、苦戦した。ワイヤーハーネス加工機は、自動車と電子機器の生産に連動する。
レジャーは、遊園地の老朽機種の入れ替えと運営受託が主で、人口減の国内では伸びにくい。
循環は、受注から売上まで時間がかかる分、後ろにずれて効く。いまは受注残が厚く、2027年3月期の増収を支える。
10年の中立は、更新需要が支える一方、価格競争で利益率は4%台にとどまる姿だ。
悲観の筋書きは、データセンター向けが一巡し、駐車装置が先細りになる姿だ。分かれ目は、配電盤の大型案件が継続的に出るかと、更新工事の価格を守れるかにある。
資本政策と M&A
配当性向は18%で、中期経営計画では30%以上を目指す。最低限の配当は保つ方針だ。2026年3月期は前期から増配し、今期も同額の予想だ。
資本の使い方は積極的だ。2020年にハピネスデンキ、2022年に松栄電機、2025年に小寺電子製作所とヤマガタ共同と、小さな買収を重ねてきた。中計の3年間でM&Aに50億円を充てる。買収資金の借入で、純有利子負債は増えた。
筆頭株主は日本駐車場開発で、約13%を持つ。三井住友銀行や住友不動産など、持ち合いの株主も多い。政策保有株は上場8銘柄ある。
株主優待は、1,000株以上の株主から抽選で遊園地の入園券を贈るだけで、費用は小さい。
買収する側にも、される側にもなりうる。ただし純借入が重く、買う側にとって魅力は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残は188億円と、前期末から61億円増えた。データセンター向けの配電盤は、全量を受注すれば10億円を超える大型案件で、同社が扱う3社が協力して作る。
小寺電子製作所は国内シェア7割のニッチで、収益性が高い。ヤマガタ共同の工場能力と合わせ、データセンター向けの拡大に備えた買収だ。買収は計画どおりに進んでいる。ワイヤーハーネス加工機は電装化が進む自動車や電子機器で需要が増え、海外への販売も広げられる。
今期の4割減益予想は、前期の高い利益率の反動と、賃上げ約4億円という一時的な要因が大きい。中期経営計画の2030年度の目標である営業利益25億円は、更新需要と買収の効果で届く。
PBRは1倍を下回り、資産の面でも安全域がある。会社が配当性向30%以上を目指す方針も、株主還元の改善を示している。更新需要は人手不足と老朽化という構造的な理由で、景気に左右されにくい。受注残188億円は、約8カ月分の売上にあたる。配電盤は山形の3工場の能力拡充で、大型案件に対応できる体制が整った。
慎重な見方
今期の営業利益が4割減の予想なのは、前期が山だったからにすぎない。造船を手放して以降の営業利益率は0.5%から6.2%と振れが大きく、今の水準が続く保証はない。
純有利子負債は83億円と時価総額に並び、自己資本比率は37%だ。M&Aの50億円計画が進めば、借入はさらに増える。買収した2社ののれんの減損リスクもある。
データセンター向けは競合が多く、大型案件は一過性になりやすい。受注残が厚いのも、レジャーの大口案件による積み上がりだ。
ROEは過去10年の中央値で5%台と、資本コストに届かない。配当性向18%は低く、株主への還元は弱い。10年の中立でも、利益率は4%台に戻り、借入の利払いが利益を削る。さらに自動車向けの設備投資は、関税で冷え込んでいる。利益率の低い機械販売が増えると、売上が伸びても利益は伸びない。会社の中期計画の2030年度の目標(営業利益25億円)は、売上500億円という大きな伸びを前提にしており、達成の確度は高くない。買収の成果を急げば、無理な値引きで受注を取る誘因にもなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと見て、確率を悲観側へ寄せた。強気の根拠である受注残は、いずれ売上に変わるが、利益率が上がる保証はない。
中立を38%、やや悲観を27%、悲観を8%に置いた。強気の根拠であるデータセンターと買収の効果は、やや楽観の20%で拾った。借入の重さは、資本コストの上乗せ(+0.75%)で織り込んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 394 円133 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 113 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 245 円82 億円、今との差 −22.3%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 647 円218 億円 | 178 円60 億円 | +161.9% | +10.1% | 58 円19 億円 |
| やや楽観 | 20% | 538 円181 億円 | 148 円50 億円 | +117.8% | +8.1% | 137 円46 億円 |
| 中立 | 38% | 499 円168 億円 | 119 円40 億円 | +96.1% | +7.0% | 235 円79 億円 |
| やや悲観 | 27% | 170 円57 億円 | 89 円30 億円 | −17.8% | −1.9% | 70 円24 億円 |
| 悲観 | 8% | 74 円25 億円 | 24 円8 億円 | −68.9% | −11.0% | 8 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 394 円133 億円 | 113 円38 億円 | +61.1% | +4.9% | 507 円171 億円 |
今の株価時価総額 315 円106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% データセンターと買収の効果が重なり、利益率が6%を超える 利益 18 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 647 円218 億円
データセンター向けの配電盤の需要が長く続き、製造業向けと建設業向けの両方を押し上げる。小寺電子製作所のワイヤーハーネス加工機は、国内シェア7割の強みを生かして海外にも広がる。
建設業向けは、駐車装置のリニューアルと工事用エレベーターの需要で、件数が1.3倍に伸びる。単価は物価を上回る1.40倍。営業利益率は12%台を保つ。
レジャーも大型の観覧車の更新で堅調だ。配当性向も30%に引き上げられ、財務に余裕が出る。全体の営業利益率は6%台に達し、直近の山である6.2%に並ぶ。これには、買収による製品構成の変化という裏づけが要る。
- 製造業向け:数量 655(納入件数(台・件))× 価格 0.28(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 183 億円・営業利益 16 億円。製造業向け
- 建設業向け:数量 543(納入・工事件数(件))× 価格 0.42(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 228 億円・営業利益 27 億円。建設業向け
- レジャー:数量 11.3(大型案件の件数(件))× 価格 4.20(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 7 億円。レジャー
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 207 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター向けの配電盤が定着し、買収した2社が収益の柱に育つ。さらに駐車装置の更新が加速する必要があり、10年続く確率は低い。会社の2030年度の目標は営業利益25億円で、この筋書きはそれを大きく上回る。
やや楽観 20% 配電盤と更新工事が伸び、買収が収益に結びつく 利益 14 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 538 円181 億円
建設業向けはデータセンター向け配電盤と駐車装置の更新で、件数が1.15倍になる。製造業向けも小寺電子製作所の加工機で1.15倍に伸びる。
価格は物価をやや上回る1.38倍。営業利益率は5%台に乗り、会社が掲げる2030年度の5%の目標に近い。
レジャーは大型案件の受注残が積み上がり、横ばいを保つ。関東の観覧車の実績が、次の商談の足がかりになる。純利益は15億円を超える。賃上げも価格に転嫁でき、利益率は守られる。配当も30%を超える水準へ増え、借入の返済も進む。買収した2社が計画どおりの収益を生み、のれんの負担も軽くなる。
- 製造業向け:数量 628(納入件数(台・件))× 価格 0.28(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 173 億円・営業利益 15 億円。製造業向け
- 建設業向け:数量 480(納入・工事件数(件))× 価格 0.41(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 199 億円・営業利益 23 億円。建設業向け
- レジャー:数量 11.0(大型案件の件数(件))× 価格 4.08(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 6 億円。レジャー
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 162 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が188億円と高水準で、データセンターと更新工事の需要は当面続く。中期経営計画の2030年度の目標(営業利益25億円)に近づく姿。
中立 38% 更新需要は続くが、利益率は4%台にとどまる 利益 12 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 499 円168 億円
建設業向けは更新需要と人手不足の省力化投資に支えられ、件数が1.15倍に増える。製造業向けは1.1倍、レジャーは0.95倍。価格は物価並みの1.34倍に上がる。
営業利益率は4%台後半。会社の2030年度の目標(5%)にやや届かない。本社費などの全社費用は賃上げで物価並みに増え、削減の余地は小さい。
純利益は営業利益に対して6割台にとどまる。純借入の利払いが3.5%へ上がり、税の軽い年が終わるためだ。減価償却は取得時の値段のままで、新しい設備と買収した工場の分だけが増える。更新投資は建築費の上昇で膨らむ。
筆者は、これが最も確からしいと見る。
- 製造業向け:数量 601(納入件数(台・件))× 価格 0.27(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 161 億円・営業利益 13 億円。製造業向け
- 建設業向け:数量 480(納入・工事件数(件))× 価格 0.40(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 193 億円・営業利益 22 億円。建設業向け
- レジャー:数量 10.7(大型案件の件数(件))× 価格 4.02(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 6 億円。レジャー
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 141 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期は営業利益10億円(前期比4割減)と会社が予想している。この落ち込みは、前期の高い利益率の反動、賃上げ約4億円、中東情勢の資材高が理由。10年では中計の目標に届かない水準に落ち着く。
やや悲観 27% 受注が一巡し、価格競争で利益率が3%に沈む 利益 5 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 170 円57 億円
データセンター向けの大型案件が一巡し、更新工事も入札で値が下がる。大手電機メーカーも参入し、価格交渉力が落ちる。建設業向けの件数は横ばい、製造業向けは0.95倍、レジャーは0.9倍に落ちる。
価格は物価に届かない1.28倍。営業利益率は2%に下がる。買収した2社の効果は期待に届かず、のれんの負担も残る。
純借入の利払いが利益を削り、ROEは3%台にとどまる。配当は最低限の水準に抑えられる。遊園地の老朽機種の更新も後ろにずれ、レジャーの大口案件が細る。受注残が厚くても、完工が遅れ、利益に結びつかない年が続く。人件費の上昇も重くのしかかる。
- 製造業向け:数量 519(納入件数(台・件))× 価格 0.26(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 9 億円。製造業向け
- 建設業向け:数量 418(納入・工事件数(件))× 価格 0.38(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 160 億円・営業利益 15 億円。建設業向け
- レジャー:数量 10.1(大型案件の件数(件))× 価格 3.84(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。レジャー
倍率:事業のROEは3%台。PERの上限は11.1倍だが、利益が薄く純借入が重いので、約68%の7.5倍に置いた。EV(時価総額+純借入)÷営業利益でも見たが、利益が薄い分だけ高く出るため、PERを抑えて置いた。稼ぐ力の値は、売れる資産の床(約25億円)を上回ることを確かめた。PBRが低く見えるのは、自己資本にのれん・売掛金・在庫が多く、利益が薄いままでは帳簿の額が値打ちを持たないため。
確率:受注残が高いのは大口案件の積み上がりで、一過性の面がある。件名ごとの入札で価格競争にさらされ、買収の効果も計画に届かない筋書きは軽くない。
悲観 8% 大口案件が途絶え、買収が重荷となる 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 74 円25 億円
建設投資が冷え込み、受注が3割落ちる。データセンター向けも大手電機メーカーに奪われる。単価も1.15倍と物価に大きく届かない。買収した2社は期待した収益を生まず、のれんの減損が出る。
営業利益はほぼ消える。純借入が重く、利払いが利益を食う。配当は最低限にまで削られ、のれんの減損も重なり、財務の余裕がなくなる。人材の確保も難しくなる。銀行との関係が悪化し、買収に使った借入の借り換えにも条件がつく。
買収の失敗ののれんの減損も重なる。評価は稼ぐ力ではなく、受注残や保守収益、政策保有株の売却で返せる借入の範囲で決まる。
- 製造業向け:数量 437(納入件数(台・件))× 価格 0.23(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 100 億円・営業利益 3 億円。製造業向け
- 建設業向け:数量 292(納入・工事件数(件))× 価格 0.35(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 101 億円・営業利益 4 億円。建設業向け
- レジャー:数量 7.9(大型案件の件数(件))× 価格 3.45(1件当たり平均単価(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。レジャー
倍率:事業の稼ぐ力が弱く、純借入が重い。売れる資産から借入を返した後に株主に残る価値まで下がる。内訳は floor_assets_why に書いた。
確率:駐車装置の需要が先細り、データセンター向けが一巡し、買収した2社ののれんの減損も重なる構造的な負けの姿。純借入が重く、利益が小さいと財務が窮屈になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製造業向け
ショットブラストマシン、乳化・撹拌装置、精密機械部品、ワイヤーハーネス加工機(小寺電子製作所)など。
| 数量納入件数(台・件) | 価格1件当たり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 546 | 0.20 | 109 | 10 |
| 10 年後 中立 | 601 | 0.27 | 161 | 13 |
取り方:セグメント売上は決算説明の開示(109.2億円)。件数と単価は開示がなく、1件平均0.2億円と仮定して約546件とした(推定)。セグメント利益は開示の9.8億円。
建設業向け
機械式駐車装置(新設・リニューアル)、工事用エレベーター、分電盤・配電盤(データセンター向けを含む)、電気設備工事。
| 数量納入・工事件数(件) | 価格1件当たり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 418 | 0.30 | 125 | 18 |
| 10 年後 中立 | 480 | 0.40 | 193 | 22 |
取り方:セグメント売上は開示の125.3億円。件数と単価は開示がなく、1件平均0.3億円と仮定して約418件とした(推定)。セグメント利益は開示の17.6億円。
レジャー
遊園地の観覧車・ジェットコースターなど遊戯機械の製造、保守、運営受託。
| 数量大型案件の件数(件) | 価格1件当たり平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.3 | 3.00 | 34 | 6 |
| 10 年後 中立 | 10.7 | 4.02 | 43 | 6 |
取り方:セグメント売上は開示の33.8億円。大型の工事・納入1件を平均3億円と仮定して約11件とした(推定。保守・運営の売上を含む)。セグメント利益は開示の5.5億円。
リスクと懸念
純有利子負債の重さ
純有利子負債は83億円で、営業利益の約5倍。M&A資金のシンジケートローンも抱える。利払いが3.5%に上がると、利益を削る。
2027年3月期の4割減益
会社は営業利益を17億円から10億円へ4割減と予想する。前期の反動と賃上げ約4億円が理由だが、受注の質が下がれば、さらに落ちる。
買収ののれん
2025年に小寺電子製作所とヤマガタ共同を買収した。計画どおり収益が出なければ、のれんの減損につながる。
案件ごとの受注の波
データセンター向けの配電盤や、レジャーの観覧車は大口案件で決まる。完工のずれで四半期ごとの利益が大きく振れる。
自動車の設備投資の抑制
ショットブラストマシンは自動車向けの比重が高い。関税の影響で顧客の投資が冷えると、製造業向けが苦戦する。
全社費用の重さ
本社費などの全社費用が年16億円あり、セグメント利益の約5割を食う。賃上げで増えやすい。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が10億円を大きく上回る
- 利益率の高止まりと見て、やや楽観の確率を上げる。
- データセンター向けの大型案件を全量受注する
- 建設業向けの数量を上方に見直す。ただし単発かどうかを確かめる。
- 純有利子負債が100億円を超える
- 追加の買収か運転資金の悪化と見て、やや悲観の確率を上げる。
- 買収した2社でのれんの減損が出る
- 悲観の確率を上げ、資本の使い方への評価を下げる。
- 配当性向を30%に引き上げる
- 還元の改善と見る。ただし借入の返済が先で、倍率の上限には影響しない。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)
- 受注残と大口案件の件数
- 純有利子負債と利払い
- データセンター向け配電盤の受注
- 買収2社の収益貢献
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROEが資本コストを下回るので、PERの上限は1÷k=11.1倍で、その7〜9.5割に置いた。今の株価や同業の倍率には寄せていない。数量は更新需要で1割前後の増加、価格は物価並みの1.34倍を基本とした。営業利益率は直近の山(6.2%)を下回る4.8%。件数・単価は開示がなく推定。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.43 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。