結論
東京自働機械製作所は、菓子や食品を包む機械と、コンタクトレンズの製造装置を作る会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。利益の大半を、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンのビジョン事業という1社の設備投資に頼っているからだ。
2026年3月期は売上97億円、営業利益7億円だった。前の期の利益16億円から大きく減った。その1社向けの大型案件が一巡したためだ。包装機械はようやく黒字が戻ったが、利益率は6%にとどまる。会社は次の期も減益を見込む。
手元には55億円の現金と、時価で33億円の取引先などの株がある。ただし現金の半分は、受注した機械の前受金だ。株は配当を生むが、売る方針は数字で示されていない。事業に要らない現金は13億円ほどと見る。
10年で見ると、コンタクトレンズの需要は世界で伸び、装置の更新も続くだろう。ただ、発注の山と谷は1社の都合で決まり、取引が細れば利益の柱が消える。包装機械の稼ぐ力は、まだ資本コストに届かない。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を1割半ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は判断が難しい。稼ぎの半分以上を生む事業が、1社の顧客の気持ち次第だからだ。
コンタクトレンズの製造装置は、長年の取引で磨いた技術で、利益率も高い。相手が今の関係を続ける限り、10年先も稼ぐだろう。だが、その「限り」を外から確かめる方法は無い。相手が内製に切り替えれば、利益の柱は消える。予測できない事業に高い値は払えない。
包装機械は、人手不足の追い風を受けても、まだ資本コストを稼げていない。値上げが通り始めたのは良い兆しだが、6%の利益率で満足はできない。
資本の使い方も物足りない。現金と持ち合いの株を厚く抱え、還元は配当性向30%にとどまる。帳簿の純資産は時価総額を大きく上回るが、それが株主に戻る道筋は見えない。筆者は、今の値段でオーナーになる安全域は薄いと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は2本ある。1本目は包装機械だ。チョコレートや焼き菓子、米菓などを1個ずつフィルムで包む横型の包装機を中心に、箱詰めや袋詰めまでつないだラインを菓子・食品メーカーに納める。2026年3月期の売上は65億円で、営業利益は4億円だった。前の期は売上58億円で、利益はほぼゼロだった。
2本目は生産機械だ。中身はほぼ、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンのビジョン事業に納めるコンタクトレンズの製造装置である。この1社が全社の売上の半分を占めた年もある。使い捨てのレンズを大量に作るラインで、1件の規模が大きく、利益率も高い。2025年3月期は売上71億円・利益23億円、2026年3月期は売上32億円・利益9億円と、相手の投資の波がそのまま数字に出る。
本社の管理部門の費用は年6億円ほどで、2つの事業の利益から引かれる。受注生産なので、顧客から前受金を受け取ってから機械を納める。2026年3月末の前受金は28億円あり、手元の現金55億円の半分はこの預かりだ。
工場は柏市にあり、設備投資は小さい。減価償却費は年1億円ほどで、利益はほぼそのまま現金になる。
優良さと弱いところ
優良さで見ると、2つの事業の質はまるで違う。
コンタクトレンズの製造装置は、強い事業だ。何十年も取引が続き、精密な装置を相手の工場に合わせて作り込む。相手にとって乗り換えは手間がかかり、利益率は2割台後半から3割に達する。ただし、相手は世界の巨大企業1社だ。値段も発注の時期も相手が決める。相手が装置を内製したり、別の会社に替えたりすれば、柱は一度に細る。
包装機械は、堀、つまり他社がまねできない強みが薄い。菓子の個包装には実績があるが、国内には同じ横型の包装機を作る会社が多い。会社自身が価格競争の厳しさを認めている。利益率は長く数%以下で、前の期はほぼゼロだった。2026年3月期の6%は、値上げと効率化がようやく効いた結果だ。
資本効率は低い。純資産102億円のうち、時価33億円の株と前受金を除いた現金が大きく、ROEは過去10年の中央値で11%、直近は8%だ。現金と株を抱えたままでは、資本コストを安定して超えるのは難しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
包装機械の市場は成熟している。国内の包装・荷造機械の生産高は4,500億円前後で、数量は人口とともに大きくは伸びない。追い風は人手不足だ。菓子の工場では、包む・詰める・箱に入れる工程にまだ人手が多い。賃金が上がるほど、機械に替える損得は良くなる。省人化の投資は景気が悪くても止めにくい。
競争は激しい。横型の包装機では国内に中堅の専門メーカーが多く、大手の食品会社は見積もりを競わせる。海外ではイタリアやドイツの大手が高級機で強く、中国のメーカーが安さで迫る。プラスチックを減らす素材への切り替えは、機械の更新を生むが、どの会社にも同じ機会になる。
コンタクトレンズの市場は世界で伸びている。使い捨ての1日用への移行と、子どもの近視の増加が数量を押し上げる。大手はジョンソン・エンド・ジョンソン、クーパービジョン、アルコン、ボシュロムの4社で、どこも自社の工場で大量に作る。製造装置の需要は、レンズの数量の伸びと、新しい素材への切り替えのたびに起きる。ただし発注は数年おきの大型案件で、波が大きい。
筆者は、包装機械の国内の数量は10年で1割増、コンタクトレンズの装置は波を均して見れば緩やかに伸びると見る。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、方針は配当性向30%を目安とする。2026年3月期の配当は総額2.2億円で、次の期は利益の減少に合わせて減らす予定だ。自社株買いはほとんどしていない。
現金は積み上がってきた。前受金と借入を除いても十数億円が余り、取引先などの株を時価で33億円持つ。2026年3月期には持ち合いの株の一部を売り、2億円余りの売却益を出した。ただ、株をどこまで減らすかの数字は示していない。
買収の歴史は乏しく、親会社もいない。時価総額は70億円に届かず、現金と株の厚さに比べて小さい。そうした発表は無いが、同業や投資ファンドから見て再編の対象になる余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コンタクトレンズは世界で伸び続ける商品だ。1日使い捨てへの移行と子どもの近視の増加で、レンズの数量は10年で大きく増える。この会社は大手の1社と何十年も取引を続け、レンズを大量に作る装置を任されてきた。精密な装置は相手の工場に深く入り込み、簡単には替えられない。新しい素材や新しい工場のたびに、大型の案件が来る。
包装機械も底を打った。2026年3月期は値上げと効率化で利益率が6%まで戻った。菓子の工場の省人化は始まったばかりで、包む工程から箱詰めまでのラインで売れる。
しかも財務は厚い。前受金を除いても十数億円の現金があり、持ち合いの株も33億円ある。生産機械が中期経営計画の年60億円の売上に戻れば、営業利益は過去最高の16億円を超えうる。そうなれば、今の時価総額は安すぎる。
設備は小さく、稼いだ利益はほぼそのまま現金になる。持ち合いの株を売る動きも始まった。売った代金が還元に回れば、眠っていた資本が株主に戻る。
慎重な見方
利益の柱が1社の設備投資に乗っている。2025年3月期に23億円あった生産機械の利益は、翌年に9億円まで落ちた。相手の投資が一巡すれば、それだけで利益が3分の1になる。相手が装置を内製したり、中国やアジアの装置会社に替えたりすれば、もう戻らない。巨大企業1社に対して、この会社に値段を決める力は無い。
包装機械は長く稼げていない。前の期の利益はほぼゼロで、同業は多く、大手の顧客は見積もりを競わせる。6%の利益率が続く保証は無い。会社自身も次の期は減益を見込む。
現金と株も、株主のものとは言い切れない。還元は配当性向30%だけで、持ち合いの株を売る数字は無い。純資産が厚いぶんROEは低く、資本コストを超えられない。
小さな会社が巨大企業と付き合う形は、相手の都合で終わることが多い。何十年続いた取引も、相手の調達の方針が変われば数年で細る。その時に残るのは、稼げない包装機械と眠った現金だ。ほかのレンズ大手も、それぞれ自前の装置の調達先を持っており、代わりの顧客は簡単には見つからない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。コンタクトレンズの需要が伸びるのは確かだが、それがこの会社の受注になるかは1社の判断に握られている。中立は生産機械の売上を中期経営計画の年60億円より低く置き、やや悲観と悲観に合わせて3割強の重みを置いた。包装機械の値上げが効き始めたことは認め、中立の利益率は直近の6%を保つとした。現金と持ち合いの株の厚さは床を支えるが、株主に戻る道筋が見えないため、価値には一部しか数えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,409 円118 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,492 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 4,809 円67 億円、今との差 +0.5%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 18,347 円258 億円 | 2,608 円37 億円 | +337.9% | +15.9% | 2,096 円29 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,491 円175 億円 | 1,931 円27 億円 | +201.4% | +11.7% | 2,884 円40 億円 |
| 中立 | 38% | 8,857 円124 億円 | 1,518 円21 億円 | +116.8% | +8.0% | 3,942 円55 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,698 円38 億円 | 998 円14 億円 | −22.8% | −2.6% | 739 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,425 円20 億円 | 570 円8 億円 | −58.3% | −8.4% | 239 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,409 円118 億円 | 1,492 円21 億円 | +106.9% | +7.5% | 9,901 円139 億円 |
今の株価時価総額 4,785 円67 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% レンズの新工場と包装の値上げが重なる 利益 18 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 18,347 円258 億円
コンタクトレンズの1日使い捨てへの移行が世界で進み、相手は新しい工場とラインを次々に建てる。この会社は装置の主な納め先であり続け、生産機械の売上は中期経営計画の年60億円を上回る水準が続く。新しい素材のレンズへの切り替えも、改造の案件を生む。
包装機械では、菓子の工場の省人化が本格化し、包む工程から箱詰めまでのラインがまとめて売れる。値上げが定着し、利益率は9%まで上がる。
営業利益は過去最高の16億円を大きく超える。現金はさらに積み上がるが、経営は配当を増やす。ROEは資本コストを上回り、持ち合いの株の売却も進む。
- 包装機械:数量 270(包装機械の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.42(1 台あたりの売上(億円、周辺装置・保守を含む))→ 売上 112 億円・営業利益 10 億円。台数 1.24 倍・単価 1.38 倍・利益率 9%
- 生産機械(コンタクトレンズ製造装置):数量 18.0(製造ラインの納入数(ライン・年、推定))× 価格 4.10(1 ラインあたりの売上(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 22 億円。ライン 1.7 倍・単価 1.37 倍・利益率 30%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 13.69 倍、時価総額 258 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:相手の大型投資が続き、包装機械も利益率が過去にない水準へ上がる筋書き。両方がそろう確度は低い。
やや楽観 20% レンズの装置が計画並みに戻る 利益 13 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 12,491 円175 億円
相手の設備投資は数年おきの波を描きながらも、均せば計画の年60億円の近くで続く。この会社は装置の作り込みの深さで、主な納め先の地位を保つ。
包装機械は、菓子・食品の工場の省人化で台数が2割近く増える。値上げが通り、利益率は7%台半ばを保つ。海外は小さいままだ。
営業利益は今の2倍を超え、過去の山に近づく。ただし純資産が厚く、ROEはおおむね資本コストの近くにとどまる。還元は配当性向30%のままで、現金は積み上がる。持ち合いの株は少しずつ売るが、売った代金は手元に残る。
1社への依存は変わらないが、取引の深さが増し、改造や部品の仕事も安定した稼ぎになる。
- 包装機械:数量 255(包装機械の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.41(1 台あたりの売上(億円、周辺装置・保守を含む))→ 売上 105 億円・営業利益 8 億円。台数 1.17 倍・単価 1.37 倍・利益率 7.5%
- 生産機械(コンタクトレンズ製造装置):数量 16.0(製造ラインの納入数(ライン・年、推定))× 価格 4.05(1 ラインあたりの売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 18 億円。ライン 1.5 倍・単価 1.35 倍・利益率 27%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 12.46 倍、時価総額 175 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:生産機械が中期経営計画の年60億円の近くに戻り、包装機械も値上げを保つ筋書き。過去3年の実績に近い。
中立 38% 装置の波は続き、包装は6%台 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,857 円124 億円
コンタクトレンズの需要は伸びるが、相手は工場の効率を上げ、装置の発注は数年おきの波になる。生産機械の売上は、均せば今の実質で年40億円ほどにとどまる。利益率は2割台半ばだ。
包装機械は、菓子の工場の省人化で台数が1割増える。値段は物価並みに上がるが、それ以上は大手の顧客が許さない。利益率は6%前後と、直近の水準に落ち着く。本社の管理費は物価とともに増える。
営業利益は12億円ほどで、過去の良い年に近い。純資産が厚いままなので、ROEは資本コストに届かない。還元は配当性向30%で、現金と持ち合いの株は残り続ける。地味だが、1社に頼る形は変わらない。
- 包装機械:数量 240(包装機械の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.40(1 台あたりの売上(億円、周辺装置・保守を含む))→ 売上 97 億円・営業利益 6 億円。台数 1.1 倍・単価 1.34 倍・利益率 6%
- 生産機械(コンタクトレンズ製造装置):数量 14.0(製造ラインの納入数(ライン・年、推定))× 価格 4.02(1 ラインあたりの売上(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 14 億円。ライン 1.33 倍・単価 1.34 倍・利益率 25%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:生産機械は計画より低い水準で波を描き、包装機械は直近の利益率を保つ筋書き。過去10年の平均と会社の見通しにいちばん合う。
やや悲観 20% 相手が発注を絞り、包装も伸びない 利益 3 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,698 円38 億円
相手はコストを下げるため、装置の一部を内製に切り替え、アジアの装置会社にも発注を分ける。この会社の生産機械の売上は、実質で今より少し少ない水準に沈み、利益率も2割に下がる。
包装機械では、大手の食品会社が見積もりを競わせ、値上げが物価に追いつかない。台数はほぼ横ばいで、利益率は4%台に戻る。本社の管理費は物価で増え、利益を削る。
営業利益は今の半分以下になる。配当は守るが、厚い現金は眠ったままだ。ROEは資本コストを大きく下回り、純資産の厚さは株主の価値にならない。
経営は新しい顧客を探すが、ほかのレンズ大手も自社の装置の調達先を持っている。
- 包装機械:数量 225(包装機械の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.39(1 台あたりの売上(億円、周辺装置・保守を含む))→ 売上 87 億円・営業利益 4 億円。台数 1.03 倍・単価 1.28 倍・利益率 4.5%
- 生産機械(コンタクトレンズ製造装置):数量 9.0(製造ラインの納入数(ライン・年、推定))× 価格 3.90(1 ラインあたりの売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 7 億円。ライン 0.86 倍・単価 1.30 倍・利益率 20%
倍率:事業の ROE は 3% 以下で k を大きく下回る。価値はこの筋書きの稼ぐ力(純利益 3.4 億÷k≒37 億)まで。上限 1÷k の 8 割の 9.0 倍に置き、余った現金は谷で食う分を見て 0.75 倍。
確率:相手が装置の一部を内製や他社に回し、包装機械も価格競争で利益率が下がる筋書き。1社への依存の重さから2割とした。
悲観 12% 1社の取引を失い、包装も赤字 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,425 円20 億円
相手は新しい工場の装置を、内製と別の装置会社に任せる。この会社に残るのは、既存のラインの部品と小さな改造だけだ。生産機械の売上は今の3分の1に縮み、利益はほぼ消える。
包装機械は中国や国内の同業との値下げ競争に巻き込まれ、利益率は1%まで落ちる。本社の管理費を賄えず、会社は赤字が続く。
経営は人員を絞り、工場の一部を閉じて生き残りを図る。前受金を除いた現金は、赤字と配当に少しずつ食われる。少数株主は、その現金や持ち合いの株を自分に戻すよう求められない。価値は、割り引いた現金と株の売却の価値にとどまる。
- 包装機械:数量 200(包装機械の販売台数(台・年、推定))× 価格 0.36(1 台あたりの売上(億円、周辺装置・保守を含む))→ 売上 72 億円・営業利益 1 億円。台数 0.92 倍・単価 1.20 倍・利益率 1%
- 生産機械(コンタクトレンズ製造装置):数量 3.0(製造ラインの納入数(ライン・年、推定))× 価格 3.50(1 ラインあたりの売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。ライン 0.29 倍・単価 1.17 倍・利益率 5%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置き、今の自己資本 101.6 億に掛けた。稼ぐ力の床は無く、床は売れる資産(floor_assets)の約 21 億。時価総額は床と同じ 20 億(PBR 0.20 倍)。
確率:相手が装置の調達先を替え、生産機械の柱が消える構造的な負け。何十年も続いた取引なので1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
包装機械
菓子・食品を1個ずつ包む横型の包装機と、箱詰め・袋詰めをつないだライン。保守と部品も含む。
| 数量包装機械の販売台数(台・年、推定) | 価格1 台あたりの売上(億円、周辺装置・保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 218 | 0.30 | 65 | 4 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.40 | 97 | 6 |
取り方:台数の開示は無いので推定。包装機械の売上 65.4 億を、1 台あたり平均 3,000 万円(ラインの周辺装置・保守・部品を含む)で割り、年 218 台とした。物価 3% は単価に入れ、台数は実質。
生産機械(コンタクトレンズ製造装置)
米国ジョンソン・エンド・ジョンソンのビジョン事業向けを中心とする、コンタクトレンズの製造装置と改造・部品。
| 数量製造ラインの納入数(ライン・年、推定) | 価格1 ラインあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.5 | 3.00 | 32 | 9 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 4.02 | 56 | 14 |
取り方:ライン数の開示は無いので推定。生産機械の売上 31.5 億を、1 ラインあたり 3 億円(改造・部品を含む)で割り、年 10.5 ラインとした。2025/03 期は 71 億(約 24 ライン相当)で、相手の投資の波で大きく動く。中期経営計画は年平均 60 億。物価 3% は単価に入れた。
リスクと懸念
1社の顧客への依存
生産機械はジョンソン・エンド・ジョンソンのビジョン事業向けが中心で、その1社が全社の売上の半分を占めた年もある。相手が装置を内製したり調達先を替えたりすれば、利益の柱が一度に細る。値段も発注の時期も相手が決める。
大型案件の波
生産機械の利益は2025年3月期の23億円から翌年9億円に落ちた。相手の工場の投資の一巡で、数年おきに利益が大きく揺れる。会社は2027年3月期も減益を見込む。
包装機械の価格競争
横型の包装機は国内に同業が多く、大手の食品会社は見積もりを競わせる。包装機械の利益は前の期にほぼゼロだった。値上げが物価に追いつかなければ、利益率は数%に戻る。
現金と持ち合いの株が眠る
前受金を除いた現金と時価33億円の株を抱え、還元は配当性向30%だけだ。株を売る数字の方針は無い。資本が眠るほどROEは下がり、株主の価値にならない。
為替と海外の顧客
生産機械の顧客は海外の企業で、案件の採算は為替と相手の地域の投資計画に左右される。米国の通商政策で相手が工場の場所を変えれば、案件の規模も変わる。
今後の分かれ目
- 相手の新しい工場やラインの大型案件を受注したと開示される
- 生産機械の波が上に向くと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 主要販売先の売上比率が2期続けて2割を下回る
- 取引が細る兆しと見て、悲観とやや悲観の確率を上げる。
- 包装機械の利益率が3期続けて8%を超える
- 値上げが定着したと見て、中立の包装機械の利益率を上げる。
- 持ち合いの株を売る額や期限を数字で示し、売った代金を自社株買いに回す
- 株の価値を余った資産として足し、戻り方を 1.0 に上げる。
- 同業や投資ファンドから買収の提案が出る
- 現金と株の厚さに値段が付く。本質価値とは別の上振れとして扱う。
見ておくもの
- 生産機械の売上と受注残
- 主要販売先の売上比率(有報)
- 包装機械の営業利益率
- 持ち合いの株の売却額と還元の方針
- 次の中期経営計画の数値目標
倍率と資本コストの決め方
包装機械は年 218 台(推定)× 1 台の単価、生産機械は年 10.5 ライン(推定)× 1 ラインの単価で積み、物価 3% は単価に入れた。k は 7.5% に quality +1.5% で 9.0%。中立は事業の ROE が k を下回るので PER の上限 1÷k の 9 割に置いた。持ち合いの株(時価 32.9 億)は配当を利益に残すので価値に足していない。余った現金は前受金を除いた分だけ。今の PER・PBR は使っていない。非連結の会社で、少数株主の取り分は無い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.69 倍・やや楽観 PER 10.5→12.46 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+1.5%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。