結論
日阪製作所は、プレート式熱交換器と、食品・医薬向けの殺菌・滅菌装置を二本柱とする大阪の機械メーカーだ。売上の4割が熱交換器、5割が殺菌装置や染色機などのプロセス装置、1割強がバルブである。水処理の会社ではない。熱を扱う装置と、食品や薬を安全に加熱処理する装置の会社だ。
筆者の結論は、事業は手堅いが、今の値段は割安とは言えない、というものだ。自己資本は630億円と厚く、時価総額の約1.5倍ある。ところがその資本が生む利益は、売却益を除くと25億円前後だ。ROEは4%台にとどまり、資本コストを下回る。帳簿の厚みは、価値には変わらない。
2026年3月期は、売上も営業利益も過去最高になった。ただし殺菌装置の大型プラントが重なった山で、会社自身が翌期の減益を見込む。新しい中期経営計画は、2029年3月期に営業利益50億円を掲げる。筆者は、熱交換器の利益率が5.7%から10.9%へ跳ねる前提を、そのまま信じない。
強みは、国内の殺菌装置・染色機の高いシェアと、熱交換器の保守収入だ。弱みは、利益率の低さと、受注生産ゆえの波の大きさである。資本をもっと稼ぐ形に変えられるかが、評価の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、堅い事業と、使われない資本が同居した形に見える。殺菌装置・染色機は、顧客の工程に組み込まれた継続的な需要を持つ。熱交換器の保守も、安定した収入だ。この部分は、持ち続けても怖くない。
ただし、オーナーとして問うのは、稼いだお金がどう使われるかだ。自己資本630億円に対して、一過性を除く利益は25億円前後しかない。資本が生む利益は4%ほどで、資本コストの8%に遠く及ばない。再投資しても資本コストを超えにくく、配当や自社株買いで返したほうが株主の価値は高まる。
会社は、還元を強め、ROE8%を目指すと言っている。筆者は、この方向を評価する。しかし、中計の営業利益50億円は、熱交換器の利益率を倍に上げる前提で、実績の裏づけが乏しい。前の計画でも、利益目標は外れた。
安全域は、時価総額が自己資本を大きく下回る点にある。だがそれは、資本が利益を生まない理由の裏返しでもある。10年後の価値を、稼ぐ力から測ると、今の値段に余裕は少ない。わかりやすい事業なので、確信度は高い。
何で稼ぐ会社か
収益は3つの事業から成る。熱交換器事業は、金属板を重ねて熱を移すプレート式熱交換器を、化学・電力・船舶・LNGなどに売る。売上は2026年3月期で172億円、全体の4割弱だ。本体のほかに、部品と保守が収入の柱になる。
プロセスエンジニアリング事業は、売上の約5割を占める最大の柱で、224億円を売った。食品を袋ごと加熱殺菌するレトルト殺菌装置、飲料の液体殺菌装置、輸液などの医薬品滅菌装置、繊維の液流染色機を持つ。会社は採用資料で、レトルト殺菌の国内シェアを7割、液流染色機と輸液滅菌を9割と述べている。第三者の裏づけは取れていない。
バルブ事業は52億円で、ふっ素樹脂を内側に貼ったボールバルブなど、化学・医薬・食品向けの専用品が中心だ。
利益はプロセスエンジニアリングが偏って稼いでいる。2026年3月期のセグメント利益は、全社の約6割を同事業が占めた。熱交換器の利益率は5.7%にとどまる。会社は、複数の大型プラントの納入が重なったことを好業績の理由に挙げている。
拠点は大阪の鴻池と奈良の生駒が中心で、生駒は新設した事業所だ。グループには、飲料向けの日阪プロダクツ、培養プラントの小松川化工機がある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、事業ごとに濃さが違う。いちばん濃いのは殺菌装置と染色機だ。食品メーカーや製薬会社は、一度認められた殺菌条件を変えたがらない。装置を入れ替える時も、実績のある相手に頼みやすい。会社の説明では、国内の主力製品でシェアが7〜9割に達する。
熱交換器は、堀が浅い。世界市場は、アルファ・ラバルが16.5%を持ち、上位5社で45%を占めるとされる。日阪はその一角だが、汎用品では価格で争う。筆者は、超大型のCO2回収向けのような特殊品と保守が、日阪の取りどころだと見る。
弱いのは、稼ぐ力の水準だ。営業利益率は、過去12年で5〜7.6%の間にとどまった。ROEは過去10年の中央値で4%に満たない。強いシェアがあるのに利益率が低いのは、大型案件の受注生産に頼り、原材料や人件費の上昇を価格に移しきれていないからだ。前の中計は、想定を超えるコスト上昇で利益目標を外した。
財務は極めて堅い。自己資本比率は76%で、純現金がある。堅さは安全域になるが、使われない資本は、ROEを押し下げる重しにもなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
熱交換器は、脱炭素の追い風を受ける。CO2を吸収液で回収する設備は、液の加熱と冷却を繰り返すため、熱交換器を大量に使う。LNGプラントや高効率の火力発電、原子力の再稼働も同じだ。データセンターの冷却も新しい需要になった。調査会社は、世界市場が年7〜8%で伸びると見るが、これは名目で、実質では2〜3%だろう。
船舶は別の流れだ。造船の主力は中国・韓国に移り、日阪も両国での供給力を高めている。国内の船主向けは保守の収入になる。
食品・医薬の殺菌装置は、成熟した市場だ。国内の食品需要は人口とともに細る。液体殺菌ではTetra Pak、SPX、Krones、国内の岩井機械工業やイズミフードマシナリが競合になる。海外は日阪にとって未開拓で、伸びしろがある。
染色機は、繊維産業の海外移転と縮小で、構造的に厳しい。中計はこの分野を新市場開拓に位置づけるが、数量の大きな伸びは見込みにくい。
市場全体の需要は、実質で年2%前後の伸びという見立てだ。物価の分は価格に乗るので、売上は名目で年4〜5%ほど伸びる計算になる。
資本政策と M&A
配当は、連結純資産配当率2%以上が目安だ。配当性向でなく資産に対する率なので、利益が減っても配当は下がりにくい。2026年3月期は、配当と自社株買いを合わせた総還元が利益の約8割に達した。自社株は発行済みの5%を目安に持ち、超えたら消却する。
政策保有株式の縮減も進み、2026年3月期には投資有価証券の売却益が8億円台あった。これは一過性で、純利益を押し上げた。翌期の純利益予想が24億円と大きく減るのは、その反動が主因だ。
株主には、因幡電機産業やタクマといった事業会社、日本生命、MUFJ銀行が並ぶ。事業会社の株主が一定程度いて、敵対的な買収は起きにくい。それでも、PBRが1倍を大きく割る状態が続けば、TOBや再編の対象になる可能性は消えない。
中計は、2031年3月期にROE8%以上、早期のPBR1倍を掲げる。ROE8%は、利益を倍近くに増やすか、自己資本を大きく減らすかしないと届かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
事業の質を、財務の厚みと脱炭素の波がさらに底上げする。CO2回収向けの超大型熱交換器は、納入実績がある会社が少なく、受注の優位は大きい。LNG、高効率火力、原子力の再稼働、データセンター冷却と、需要が重なる。新型の汎用機ZEXと保守収入が育てば、熱交換器の利益率は5.7%から10%台に上がる。
殺菌装置は、国内でほぼ独占的な地位を持つ。飲料大手や製薬会社との協業を海外に広げれば、成長の余地は大きい。2026年3月期の利益は、大型プラントを完遂できる実行力の証拠だ。
資本の使い方も変わる。会社は、資本コストや株価を意識した経営を掲げ、総還元性向は8割に達した。厚い自己資本を、還元や成長投資で使い始めた今が、最も変わりやすい時期だ。PBRが0.7倍の今から、ROE8%を達成して早期に1倍を取り戻せば、値段は5割上がる。
見落とされているのは、保守・部品の収入が積み上がる速さだ。納入済みの装置は、その後20年以上、部品と点検の需要を生む。船舶や発電所の国内保守を取りに行く動きは、利益の底を持ち上げる。売上が景気で振れても、保守が下を支える。
慎重な見方
数字が示すのは、低いままの利益率と、4%に満たないROEだ。営業利益率は、過去12年で一度も8%に届かない。中計の目標は、熱交換器の利益率を5.7%から10.9%へ、ほぼ倍にする前提だ。前の中計でも、想定を超えるコスト上昇で利益目標を外した。
2026年3月期の好業績は、殺菌装置の大型プラントが重なった山だ。会社自身が翌期の純利益を24億円と見込む。中計は、そのプロセスエンジニアリングの利益を、むしろ減らす計画になっている。
熱交換器は、アルファ・ラバルなど欧州の大手と争い、中韓の安価な品も押し寄せる。染色機は、需要そのものが縮む。厚い自己資本は、安全域でなく、使い道のない眠った資本だ。還元を厚くしても、資本の稼ぐ力は上がらない。
株価の下値も、見かけほど堅くない。自己資本の中身は、現金と持ち合い株、工場、仕掛品だ。事業が傷めば、工場や仕掛品は帳簿の値で売れない。稼ぐ力が細った会社は、帳簿の価値で評価されない。大型案件の山が剥げ、コスト高が続けば、利益は半分近くまで下がりうる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方に説得力があるが、利益率と資本の使い方は慎重な見方が強い。中計の利益率は、前回の実績が裏づけになっていない。確率は、中立を最も厚い36%に置き、やや悲観を24%、やや楽観を20%とした。悲観は12%と、楽観の8%より厚くした。厚い自己資本は悲観の下値を支えるが、使われないままでは評価に結びつかない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,623 円427 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 837 円221 億円)。 今の値に割り戻すと 1,346 円354 億円、今との差 −14.9%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,246 円855 億円 | 1,105 円291 億円 | +175.2% | +10.7% | 348 円92 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,425 円639 億円 | 984 円259 億円 | +115.6% | +8.0% | 682 円180 億円 |
| 中立 | 36% | 1,852 円488 億円 | 889 円234 億円 | +73.3% | +5.7% | 986 円260 億円 |
| やや悲観 | 24% | 754 円199 億円 | 706 円186 億円 | −7.6% | −0.8% | 351 円92 億円 |
| 悲観 | 12% | 254 円67 億円 | 524 円138 億円 | −50.8% | −6.8% | 93 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,623 円427 億円 | 837 円221 億円 | +55.6% | +4.5% | 2,460 円648 億円 |
今の株価時価総額 1,581 円416 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:脱炭素の大型案件が熱交換器の利益率を押し上げる 利益 65 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,246 円855 億円
会社の中計が描いた姿が、ほぼそのまま実現する。CO2 回収向けの超大型案件、LNG プラント、高効率火力、原子力の再稼働が続き、熱交換器の受注は厚い山になる。汎用機の新型 ZEX が市場に根づき、保守・部品の収入も積み上がる。熱交換器の利益率は 11% に届く。
殺菌装置は、飲料向けの日阪プロダクツ、培養プラントの小松川化工機との協業が進む。海外の食品殺菌・医薬滅菌が伸び、利益率は 10% を保つ。バルブは産業ガスと新エネルギー向けの専用品が当たり、1 割の利益率に戻る。
全社の営業利益率は 10% を超える。ただし自己資本が厚いままなので、ROE は資本コストの手前にとどまる。値段は利益の伸びほどには上がらない。
- 熱交換器事業:数量 11,600(世界のプレート式を中心とする熱交換器市場(本体・部品・保守、億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 404 億円・営業利益 45 億円。市場11,600億円(実質)× シェア2.6%、利益率11.0%
- プロセスエンジニアリング事業:数量 6,600(同社が狙う食品・医薬の殺菌滅菌、染色仕上機、培養設備の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 5.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 354 億円・営業利益 35 億円。市場6,600億円(実質)× シェア4.0%、利益率10.0%
- バルブ事業:数量 4,200(同社が狙うファインケミカル・医薬・食品・産業ガス向けの特殊バルブ市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 101 億円・営業利益 10 億円。市場4,200億円(実質)× シェア1.80%、利益率10.0%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.07 倍、時価総額 855 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型の CO2 回収・LNG 案件を取り込み、中計の利益率をそのまま達成する筋書き。前の中計 G-23 は利益率の目標に届いておらず、実績を見ると 1 割には届きにくい。楽観は 8% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:中計の利益率にあと一歩まで届く 利益 50 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,425 円639 億円
熱交換器の保守・部品収入が育ち、新型 ZEX の汎用機も一定の販売を得る。CO2 回収と船舶の案件は取れるが、超大型案件をすべて受注するほどではない。熱交換器の利益率は 9% まで上がる。
殺菌装置は、国内の高いシェアを守りながら海外の売上を積む。大型プラントの山は繰り返さないが、更新・保守の需要で 9% の利益率を保つ。バルブは用途限定品で採算を戻し、8.5% に届く。
全社の営業利益率は 8.6% 前後になる。中計の 9.1% には届かないが、過去 12 年の山(7.6%)は超える。その裏づけは、保守収入の積み上がりだ。
- 熱交換器事業:数量 10,800(世界のプレート式を中心とする熱交換器市場(本体・部品・保守、億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 347 億円・営業利益 31 億円。市場10,800億円(実質)× シェア2.4%、利益率9.0%
- プロセスエンジニアリング事業:数量 6,325(同社が狙う食品・医薬の殺菌滅菌、染色仕上機、培養設備の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 5.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 322 億円・営業利益 29 億円。市場6,325億円(実質)× シェア3.8%、利益率9.0%
- バルブ事業:数量 3,990(同社が狙うファインケミカル・医薬・食品・産業ガス向けの特殊バルブ市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 88 億円・営業利益 8 億円。市場3,990億円(実質)× シェア1.65%、利益率8.5%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 639 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:熱交換器の保守収入と新型機が育ち、殺菌装置の海外も伸びる。利益率は中計に届かないが、いまより明らかに良い。会社の実行力の実績から 2 割とした。
中立 36% 中立:事業は伸びるが、利益率は一桁にとどまる 利益 38 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,852 円488 億円
市場は物価並みに伸び、同社はシェアをほぼ保つ。熱交換器は、世界市場の拡大と保守収入に支えられて売上が 3 割ほど増えるが、汎用機で欧州勢と価格を争う構図は変わらない。利益率は 7.5% にとどまる。
殺菌装置は、2026年3月期に重なった大型プラントの山が剥げる。国内の殺菌・滅菌・染色機は高いシェアを保つが、市場そのものは実質ではほぼ横ばいだ。利益率は 8% で落ち着く。バルブは小さな事業のまま、7.5% の利益率で続く。
全社の営業利益率は 7.3% で、過去 12 年の山の手前だ。ためた現金と持ち合い株の配当が利益を支えるが、ROE は 5% 前後にとどまる。
- 熱交換器事業:数量 10,160(世界のプレート式を中心とする熱交換器市場(本体・部品・保守、億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 300 億円・営業利益 23 億円。市場10,160億円(実質)× シェア2.2%、利益率7.5%
- プロセスエンジニアリング事業:数量 6,105(同社が狙う食品・医薬の殺菌滅菌、染色仕上機、培養設備の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 4.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 295 億円・営業利益 24 億円。市場6,105億円(実質)× シェア3.6%、利益率8.0%
- バルブ事業:数量 3,810(同社が狙うファインケミカル・医薬・食品・産業ガス向けの特殊バルブ市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 79 億円・営業利益 6 億円。市場3,810億円(実質)× シェア1.55%、利益率7.5%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 488 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場は物価並みに伸び、シェアはほぼ保ち、利益率は過去 12 年の山(7.6%)をわずかに下回る。大型プラントの山が剥げる分を織り込んだ、最も起こりやすい筋書きとして 36%。
やや悲観 24% やや悲観:コスト高と受注の谷で利益が痩せる 利益 22 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 754 円199 億円
原材料と人件費の上昇を価格に移しきれず、熱交換器の利益率は 5.5% に沈む。前の中計でも、想定を超えたコスト上昇が利益率の目標を押し下げた。同じことが繰り返される。
殺菌装置では、飲料・食品の設備投資が一服し、大型プラントの受注が途切れる。染色機は繊維産業の縮小で数量が減り、全体の利益率は 6% まで落ちる。バルブは海外の安い品に押され、5% の利益率にとどまる。
営業利益率は 5% 台に下がり、ROE は 3% 前後になる。厚い自己資本は利益を生まず、還元を増やしても評価は戻らない。
進出した海外では、現地の競合が価格で食い込み、受注の採算が悪い案件が混じる。中計が掲げた事業ポートフォリオの見直しは、効果が出るまでに時間がかかる。
- 熱交換器事業:数量 9,200(世界のプレート式を中心とする熱交換器市場(本体・部品・保守、億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 247 億円・営業利益 14 億円。市場9,200億円(実質)× シェア2.0%、利益率5.5%
- プロセスエンジニアリング事業:数量 5,500(同社が狙う食品・医薬の殺菌滅菌、染色仕上機、培養設備の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 4.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 236 億円・営業利益 14 億円。市場5,500億円(実質)× シェア3.2%、利益率6.0%
- バルブ事業:数量 3,450(同社が狙うファインケミカル・医薬・食品・産業ガス向けの特殊バルブ市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 62 億円・営業利益 3 億円。市場3,450億円(実質)× シェア1.35%、利益率5.0%
倍率:ROE は 3% 台で k を大きく下回る。利益が細り、受注の波も大きいので、上限 12.5 倍の 72% の 9.0 倍に置く。構造的に負けた筋書きで、中立より低い。
確率:想定を超えたコスト上昇で利益率の目標を外した前例(G-23)があり、価格転嫁の弱さが続く可能性がある。受注の谷とも重なりうるため、やや悲観を最も厚い側とした 24%。
悲観 12% 悲観:汎用品を海外勢に奪われ、バルブも行き詰まる 利益 8 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 254 円67 億円
汎用熱交換器の分野で、中国・韓国のメーカーと欧州大手が価格を下げて攻める。同社のシェアは 1.6% まで落ち、利益率は 3.5% に低下する。大型の CO2 回収案件は海外の大手に流れる。
殺菌装置では、中国勢の追い上げと染色機の需要消滅で、利益率が 3.5% まで落ちる。バルブは採算割れが続き、事業の見直しや縮小に追い込まれる。
営業利益は 10 億円を切る。厚い自己資本は残るが、稼ぐ力は細り、その場合の価値は、稼ぐ力と純現金・売れる資産のどちらか大きい方に近づく。
会社はコスト削減と事業の見直しに動くが、遅れが響く。国内の食品や医薬は守れても、海外の売上は思うように伸びない。厚い現金は、買収の失敗や赤字の穴埋めで目減りする。
- 熱交換器事業:数量 8,160(世界のプレート式を中心とする熱交換器市場(本体・部品・保守、億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 175 億円・営業利益 6 億円。市場8,160億円(実質)× シェア1.6%、利益率3.5%
- プロセスエンジニアリング事業:数量 5,280(同社が狙う食品・医薬の殺菌滅菌、染色仕上機、培養設備の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 170 億円・営業利益 6 億円。市場5,280億円(実質)× シェア2.4%、利益率3.5%
- バルブ事業:数量 3,000(同社が狙うファインケミカル・医薬・食品・産業ガス向けの特殊バルブ市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。市場3,000億円(実質)× シェア1.00%、利益率1.0%
倍率:ROE が 1% 台で k を大きく下回り、構造的な負けの筋書き。稼ぐ力は 8 倍で測り、純現金と売れる資産(床)はそれより小さく、稼ぐ力の側で置く。
確率:汎用熱交換器での中韓・欧州勢の攻勢、染色機の需要縮小、バルブの採算悪化が重なる構造的な負け。確率は低いが、利益率の低さと受注生産の波を考え 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
熱交換器事業
プレート式熱交換器の製造・販売と、部品・保守サービス。化学・電力・船舶・CO2 回収・LNG・データセンター冷却などが顧客。
| 数量世界のプレート式を中心とする熱交換器市場(本体・部品・保守、億円、今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 2.2% | 172 | 10 |
| 10 年後 中立 | 10,160 | 2.9% | 300 | 23 |
取り方:世界のプレート式熱交換器市場は 2025 年に 51〜65 億ドル(調査会社の推計)で、円では 8 千億円前後。上位 5 社(アルファ・ラバル、ザイレム、ダンフォス、ケルビオン、日阪)で 45% を持つとされる。同社売上は 172 億円で、市場に対するシェアは 2.2% と置いた。市場規模は開示でなく推計。
プロセスエンジニアリング事業
食品・飲料の殺菌装置、医薬の滅菌装置、繊維の液流染色機、培養プラントなどの装置と、アフターサービス。
| 数量同社が狙う食品・医薬の殺菌滅菌、染色仕上機、培養設備の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,500 | 4.1% | 224 | 21 |
| 10 年後 中立 | 6,105 | 4.8% | 295 | 24 |
取り方:開示は無く、分野ごとの需要を足して 5.5 千億円と推計した。同社は採用資料で、レトルト殺菌の国内シェアを 7 割、液流染色機を 9 割とするが、第三者の裏づけは取れていない。2026年3月期の売上 224 億円は、複数の大型プラント納入が重なった山で、シェア 4.1% は山の値。
バルブ事業
ボールバルブ・ダイヤフラムバルブ。ふっ素樹脂ライニングなどの用途限定品と、汎用品。ファインケミカル・医薬・食品・産業ガス・上下水道向け。
| 数量同社が狙うファインケミカル・医薬・食品・産業ガス向けの特殊バルブ市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 1.7% | 52 | 4 |
| 10 年後 中立 | 3,810 | 2.1% | 79 | 6 |
取り方:世界の産業用バルブは年間 11 兆円規模(調査会社の推計)だが、同社が戦う範囲は限られるため 3 千億円と推計した。売上 52 億円で、シェアは 1.7%。市場規模は推計で、根拠は薄い。
リスクと懸念
利益率の目標が実現しない
中計は、2029年3月期に営業利益率を7.4%から9.1%へ上げる。熱交換器の利益率は5.7%から10.9%への跳ね上がりだ。前の中計は、想定を超えるコスト上昇で利益目標を外している。同じことが起きれば、利益は4割ほど下振れする。
大型案件の波
プロセスエンジニアリングの2026年3月期は、複数の大型プラントが重なった山だった。受注生産で、大型案件の有無が四半期の業績を大きく振る。中計はこの事業の利益を減らす計画だが、さらに谷が深くなれば、全社の利益が落ち込む。
熱交換器の価格競争
汎用のプレート式熱交換器は、アルファ・ラバル、ケルビオン、ダンフォスなどの欧州勢と、中国・韓国勢が争う。価格を守れなければ、シェアか利益率のどちらかを落とす。超大型のCO2回収は受注が少数で、1件を逃すと響く。
染色機・国内食品の縮小
液流染色機は繊維産業の縮小で、数量が増えにくい。国内のレトルト食品や飲料の市場も、人口とともに細る。海外の殺菌装置・染色機の開拓が思うように進まなければ、プロセスエンジニアリングの成長が止まる。
資本が使われないまま残る
自己資本は630億円で、利益に対して大きすぎる。政策保有株の売却と還元は進むが、成長投資が資本コストを超えなければ、ROEは上がらない。M&Aで買収する場合は、買いすぎて価値を壊す可能性がある。
バルブ事業の採算
バルブは売上52億円で利益率7%だ。中計は事業展開の見直しに触れており、不採算な品を整理する可能性がある。海外の安価なバルブに押されれば、赤字に近づく。ただし全社の利益への影響は小さい。
今後の分かれ目
- CO2回収・LNG向けの超大型熱交換器の受注が、続けて取れたら
- 熱交換器の利益率の見通しを上げ、楽観・やや楽観の確率を厚くする。受注残の利益率が上がるかも見る。
- 2027年3月期の決算で、営業利益が会社予想の33億円を下回ったら
- コスト転嫁の弱さが続くとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。中計の50億円は遠のく。
- 政策保有株の売却代金を、自社株買いや成長投資に回す方針が数字で示されたら
- 資本の使い方が変わる兆しとして、中立〜やや楽観に重みを移す。ROE8%の道筋が見える。
- 海外の食品殺菌・医薬滅菌の受注が、中計どおり伸びたら
- プロセスエンジニアリングの成長の裏づけになる。国内の縮小を補えるか、利益率とあわせて確かめる。
- PBR1倍割れが続き、事業会社の株主が持ち株を動かしたら
- TOBや再編の可能性が高まる。その時の値段は、事業の稼ぐ力でなく、資本の厚みを織り込んだものになりうる。
見ておくもの
- 熱交換器の受注残と利益率(四半期)
- プロセスエンジニアリングの受注高(大型プラントの有無)
- 営業利益の会社予想の修正
- 政策保有株式の売却額と還元の方針
- 海外の殺菌・滅菌装置の売上
倍率と資本コストの決め方
市場規模×シェア×物価並みの価格で売上を積み、利益率は過去12年の山(7.6%)を超えないように置いた。倍率は、ROEが資本コスト以下なので上限1÷kを基準に、利益の質で上限の7〜10割に置いた。今の株価・PER・PBRは見ていない。新リース会計基準の影響は、同社が主に自社製品を売る会社で小さく、10年後の数字は今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.07 倍・やや楽観 PER 11.5→12.9 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。コスト転嫁の弱さは k に足さず、筋書きの利益率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。