結論
TONEは、ボルトとナットを締める工具をつくる大阪の老舗だ。ソケットレンチなどの作業工具、橋や鉄骨に使う高力ボルトを締めるシヤーレンチ、トルク(締め付けの力)を管理する機器が柱になる。売上は79億円で、営業利益率は17%に達する。
筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当というものだ。事業の質は高いが、先の投資がそれを割り引く。小さな会社ながら、10年以上にわたって営業利益率が13%を下回ったことがない。工具の世界で利益率が高いのは、ブランドと現場の信頼があるからだ。
会社は今、岐路にある。大阪・河内長野に42億円の新工場を建てる。2028年8月に完成する予定で、資金は現金と借入で賄う。売上79億円の会社には大きな賭けだ。減価償却が増え、純現金は純負債に変わる。
販売先の偏りも気になる。トラスコ中山、アマゾン、山善の3社で売上の5割を占める。価格交渉で押される恐れがある。
それでも事業の質は高い。10年後の営業利益率を16%、純利益を13億円とみる。それに見合う値段は、今の時価総額とほぼ同じだ。大株主にスパイラル・キャピタルが13.7%を持つ点も、資本効率の改善を後押しする。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、TONEは「小さいが、よい商売」だ。
よい商売の条件を、順に見る。10年後も存在するか。ボルトは世界中で使われ続けるので、答えは「はい」だ。堀は広がるか。ブランドと現場の信頼は、続く限り強まる。ただし通販への依存で、堀の一部は流通側に移りつつある。経営は資本を上手に使うか。ここに宿題がある。42億円の新工場は、売上の伸びに見合うかが読めない。
オーナー利益、つまり設備投資を引いて自由に使える利益は、今は年10億円弱だ。ただし新工場の期間は、投資が利益を大きく上回り、自由に使える現金はマイナスになる。
安全域はどうか。時価総額96億円は、今期の純利益の9倍弱。利益率が過去の平均なみに戻っても、倍率の安さが下値を支える。純現金は新工場の支払いで消える。
筆者がいちばん気にするのは、新工場が生む利益だ。完成後、生産効率が上がり、利益率が17%を超えて保てるなら、今の値段は割安に映る。そうならず、償却だけが重くのしかかれば、割安さは消える。
結論として、事業の質は高く、値段はほぼ妥当。資本の使い方を見極める必要がある。
何で稼ぐ会社か
TONEは1938年、前田金属工業として大阪で創業した。2013年に現社名に変えた。本社と工場は大阪府河内長野市にあり、子会社はベトナムと米国にある。
事業の中核は「ボルト締結」だ。ボルトとナットをいかに速く、確実に、規定の力で締めるかを、道具で解決する。製品は大きく2つに分かれる。
1つ目は作業工具類。ソケットレンチやスパナなど、自動車整備や工場の保全で使う手工具だ。プロ向けのブランド「TONE」を掲げる。
2つ目は機器類。高力ボルトを規定の力で締めるシヤーレンチ、電動やコードレスの締付工具、トルクレンチなどのトルク管理機器だ。シヤーレンチは世界トップシェアと会社は説明している。
売上の約8割は国内、約2割が海外だ。海外はアジアと北米が中心で、ベトナムで製造し、米国で販売する。
売り先は機械工具商が中心で、トラスコ中山が27%、アマゾンジャパンが13%、山善が11%を占める。いずれも、ものづくりの現場に部品や工具を届ける通販・商社だ。
研究開発費は年6千万円ほどと小さい。ただし、薄型のモンキレンチ、データを記録するコードレス工具など、現場の要望に合わせた改良を続けている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドと現場の信頼だ。
プロの整備士や施工者は、工具が壊れたり、締め付けの力がずれたりすることを嫌う。一度信頼した工具は、安い代替品に乗り換えにくい。TONEは長年の改良で、この信頼を築いた。シヤーレンチは橋や鉄骨の施工にかかわり、品質管理の記録が求められる。
数字がそれを裏づける。営業利益率は過去10年で13%から24%の幅にあり、直近は17%だ。工具という成熟した市場で、この水準は珍しい。ROE(自己資本に対する純利益の割合)も10年の中央値で9%台を保つ。
弱点は3つある。1つは販売先の集中。上位3社で売上の5割を占め、通販事業者の価格交渉力が強まれば、利益率が削られる。2つ目は規模。売上79億円で、海外の大手工具メーカーに比べ小さく、研究開発に使える金額も限られる。3つ目は模倣品だ。有価証券報告書でも、模倣品の出現が事業のリスクに挙がっている。
財務は堅い。自己資本比率は70%だが、新工場のため借入を増やした。配当性向は25%前後と低い。政策保有株が31億円あり、そのうち販売先でもある中央自動車工業の株が17億円を占める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
作業工具の市場は、大きく伸びない成熟市場だ。自動車整備、工場の保全、建設現場で使われ、数量は景気と人口にゆるやかに連動する。
国内では、整備士や工員の数が減っていく。ただし、人手が足りなくなれば、一人あたりの作業を速める工具の価値は上がる。電動やコードレスの締付工具、締め付けの記録を残す機器は、この流れに乗る。
競争は2つの層に分かれる。プロ向けの高級品ではKTC(京都機械工具)などの国内ブランドと、海外の大手が競う。低価格帯では、通販で売られる海外製の安い品が増えている。同社が通販事業者を主要な販路にしたことは、販売量を増やした一方、価格競争に巻き込まれる恐れも生んだ。
高力ボルトの市場は、橋、鉄骨造の建物、鉄塔、風力発電の設備などの工事に支えられる。国内の公共工事は人口減で伸びにくいが、老朽化した橋の補修と、都市の再開発は続く。
海外は伸びしろが大きい。ベトナムで作り、アジアと米国で売る体制を整えた。海外売上は2割ほどで、年に4%前後伸びている。
物価が上がる環境では、工具の値上げが通りやすい。原材料の鋼材や人件費が上がっても、ブランド品なら価格転嫁ができる。2026年5月期の営業利益率の改善は、その流れを映している。
資本政策と M&A
資本政策は、これまでは控えめだった。配当性向は25%前後で、2026年5月期に配当を大きく増やしたが、それでも性向は変わらない。自社株買いは、2025年7月に取引所外の買付で一部を実施した。
大きな動きが新工場だ。河内長野市の産業用地に、総額42億円をかけて建てる。着工は2024年12月、完成は2028年8月の予定だ。資金は自己資金と借入で、2026年5月期に長期借入25億円を実行した。新工場は生産の効率化を狙うが、売上79億円の会社にとって、投資額は年間売上の半分を超える。
減価償却が増える点は見落とせない。新しい建物と設備の償却が、完成後に年2億円規模で足される。利益率を引き下げる要因だ。借入の利息も、金利上昇で3.5%前後になる。
株主構成には特徴がある。スパイラル・キャピタル・パートナーズが13.7%を持つ。2021年から保有を増やした純投資の資金で、資本効率の改善を求めやすい立場だ。ほかに中央自動車工業が8.8%、日本生命が5%、山善が4%を持つ。TOBや買収の確率は、市場の推計で3割弱ある。
政策保有株は31億円で、売却より維持の姿勢だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、工具の世界でも珍しい高収益企業だ。営業利益率は直近で17%、今期も17%台を見込む。会社は6月に利益予想を上げ、期末配当を4割強増やした。
理由は構造的だ。ブランドと現場の信頼で、値上げが通る。物価が上がる時代には、この力が効く。コストの削減も実行され、高付加価値製品の販売が増えている。
新工場は成長への投資だ。老朽化した設備を入れ替え、自動化と生産能力の増強で、需要の増加に応える。減価償却は増えるが、売上の増加で吸収できる。海外はベトナムの工場を拠点に、アジアと北米の売上が年に4%以上伸びている。
シヤーレンチは世界一で、風力発電や鉄塔、橋の更新に使われる。国内でも橋の補修が続く。
株主の面でも追い風がある。スパイラル・キャピタルが13.7%を持ち、資本効率の改善を求める。配当性向は25%と低く、引き上げる余地が大きい。自社株買いも始まっている。
時価総額96億円は、純利益11億円の9倍弱。10年後に利益が1.5倍になれば、今の値段は大きく割安だった、と言える。
慎重な見方
この会社は、割安に見える理由がある。
まず販売先だ。トラスコ中山、アマゾン、山善の3社で売上の5割を占める。いずれも通販・商社で、仕入れ価格の引き下げを求める力が強い。ブランドの力が弱まれば、利益率は一気に下がる。通販では、海外製の安い品が並んで比べられる。
次に新工場だ。42億円は売上の半分を超える。自己資金と借入で賄い、純現金は純負債に変わる。完成は2028年。需要が思ったように伸びなければ、償却と利息だけが重くのしかかる。金利が上がれば、利息は増える。
市場そのものも伸びない。国内の整備士や工員は減り、自動車の電動化でエンジン周りの整備工具は減る。電気自動車は部品点数が少なく、工具の出番も減る。
規模の小ささも弱点だ。売上79億円で、海外の大手に比べ小さい。研究開発費は年6千万円ほどにとどまる。
利益率の17%は、過去の山の上のほうだ。最近の改善は、値上げと一過性のコスト削減によるものかもしれない。平常に戻れば、15%を割る。
資本効率も平凡だ。ROEは9%前後で、資本コストをやや上回るに過ぎない。倍率が低くて当然である。
どちらに重みを置いたか
強いのは、ブランドと現場の信頼が作る高い利益率と、シヤーレンチの世界一の地位だ。弱いのは、通販への集中と、42億円の新工場の投資に見合う利益が読みにくい点である。
筆者は、10年後の営業利益率を16%に置いた。直近の17%と過去の平均の間で、ブランドの力を認めつつ、償却の増加を織り込んだ形だ。
確率は、中立の38%を中心にした。通販の価格圧力と投資の失敗という具体的な悪材料があるため、悲観側(やや悲観24%、悲観10%)を、楽観側(やや楽観20%、楽観8%)より少し厚くしている。堅い事業の下支えがあるので、悲観の確率は小さめにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 686 円156 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 188 円43 億円)。 今の値に割り戻すと 473 円107 億円、今との差 +12.1%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,087 円247 億円 | 273 円62 億円 | +222.4% | +12.4% | 109 円25 億円 |
| やや楽観 | 20% | 889 円202 億円 | 234 円53 億円 | +166.1% | +10.3% | 225 円51 億円 |
| 中立 | 38% | 809 円183 億円 | 198 円45 億円 | +138.7% | +9.1% | 383 円87 億円 |
| やや悲観 | 24% | 408 円92 億円 | 146 円33 億円 | +31.1% | +2.7% | 133 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 163 円37 億円 | 88 円20 億円 | −40.4% | −5.0% | 25 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 686 円156 億円 | 188 円43 億円 | +107.1% | +7.6% | 874 円198 億円 |
今の株価時価総額 422 円96 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 新工場が生産性を上げ、海外が倍増する 利益 17 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 1,087 円247 億円
新工場が2028年に稼働し、自動化で生産効率が大きく上がる。国内の点数は横ばいを保ち、価格は物価並みの1.34倍まで上がる。ブランドの力が通販でも崩れない。
海外はベトナムの拠点を軸に、アジアと北米で2倍以上に伸びる。シヤーレンチは風力発電や鉄塔の更新で世界的に需要が出る。
営業利益率は国内で22%、海外で14%、全社で19%。過去12年の最高(24%)には届かない。
還元は増配と自社株買いが進み、10年で62億円。株主のスパイラルの働きかけも、後押しになる。
この筋書きでは、新工場への42億円の投資が成長への布石として働く。老朽化した設備の入れ替えで、不良や手戻りが減り、人手不足の中でも生産量を保てる。減価償却は増えるが、売上の伸びで吸収できる。販売先の通販事業者との関係も、ブランドの力で対等に保たれる。
- 国内:数量 224(出荷点数(万点))× 価格 3,752(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 84 億円・営業利益 19 億円。営業利益率 22.0%
- 海外:数量 122(出荷点数(万点))× 価格 4,020(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 49 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.94 倍、時価総額 246 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の立ち上げが順調で、通販の価格圧力も限定的、海外も倍以上に伸びる必要がある。営業利益率が過去最高に近づく姿で、確度は高くない。
やや楽観 20% 高付加価値化が続き、海外が着実に伸びる 利益 15 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 889 円202 億円
国内の点数は人口と整備士の減少で2%減にとどまり、価格は1.32倍。高付加価値の締付機器とトルク管理機器が、数量の減りを補う。
海外は点数が2倍近くに増える。ベトナムの拠点を生かし、アジアの工場向けに伸びる。
営業利益率は国内で20.5%、海外で12.5%。新工場の償却が増えても、生産効率の向上で相殺する。全社で17%を保つ。
還元は性向を35%に上げ、10年で53億円。
新工場は予定どおり2028年に完成し、償却は増えるが、自動化の効果が利益率を支える。通販事業者との取引は拡大しつつ、価格は大きく崩れない。ブランドが現場で定着している限り、値上げは通る。
- 国内:数量 220(出荷点数(万点))× 価格 3,696(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 81 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 20.5%
- 海外:数量 106(出荷点数(万点))× 価格 4,020(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 43 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.81 倍、時価総額 202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年5月期の営業利益率の改善(高付加価値製品の販売強化・コスト削減)は実行済みの事実。通販の圧力はあるが、値上げの実績がある。
中立 38% ブランドは保たれ、利益は物価に乗って伸びる 利益 13 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 809 円183 億円
国内の点数は、人口と整備士の減少で5%減る。価格は物価の1.34倍に届かず1.30倍。通販の価格圧力を割り引いた。それでも、ブランド品の値上げは通る。
海外は点数が1.7倍。年に5%強の伸びで、アジアと北米が中心になる。
新工場は2028年に稼働し、償却が年2億円ほど足される。取得時の値段のままの既存設備の償却は物価で増えない。ただし、新設分と更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入の利息も増える。会計の利益は物価で膨らんで見えるが、現金は投資に消える。
営業利益率は国内で19.5%、海外で11%、全社で16%。過去の平均なみだ。純利益は13億円。
還元は性向を35%に引き上げ、10年で45億円。
- 国内:数量 213(出荷点数(万点))× 価格 3,640(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 78 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 19.5%
- 海外:数量 90.1(出荷点数(万点))× 価格 4,020(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 183 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年以上13%超の営業利益率を保った実績がある。新工場の償却と通販の圧力を差し引いた落としどころとして、最も自然な姿。
やや悲観 24% 通販の価格圧力で、利益率が13%台に下がる 利益 8 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 408 円92 億円
通販事業者の価格交渉が強まり、国内の価格は1.18倍にとどまる。安価な海外製品に比べられ、点数も12%減る。
海外は伸びが鈍り、点数は1.3倍。価格競争もある。
新工場の償却が年2億円足され、利益率を押し下げる。営業利益率は国内で16%、海外で8%、全社で13.5%。2025年5月期の13.2%に戻る。
純利益は8億円。配当は性向を保って維持し、10年で33億円を還元する。
売上は伸びても、利益が付いてこない。上位3社の販売先が価格決定の主導権を握り、ブランドの値上げは通りにくくなる。それでも赤字には落ちず、堅い事業の底力は残る。
- 国内:数量 197(出荷点数(万点))× 価格 3,304(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 65 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 16.0%
- 海外:数量 68.9(出荷点数(万点))× 価格 3,600(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 8.0%
倍率:ROEは約4.5%でkを大きく下回る。上限の1÷k(約13.3倍)の約71%の9.5倍に置いた。販売先に値決めを握られる構造的に弱い姿。
確率:上位3社が売上の5割を占める構造は、価格交渉で不利になる。新工場の償却が重なり、利益率の低下は現実的。
悲観 10% 価格競争と新工場の稼働率低下が重なる 利益 4 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 163 円37 億円
通販での価格競争が激化し、国内価格は5%しか上がらない。自動車の電動化と整備士の減少で、国内の点数は25%減る。
海外は伸びず、点数は1割減。新工場は需要の見込み違いで稼働率が低く、償却と利息だけが重い。
営業利益率は国内で11%、海外で3%、全社で9%。純利益は4億円まで減る。
借入が膨らみ、配当は維持するのがやっと。還元は10年で20億円。それでもブランドと特許の下支えで、赤字にはならない。
この筋書きでは、投資の失敗が重なる。通販事業者に価格決定の主導権を握られ、ブランド品でも値上げが通らない。新工場の稼働率が低く、減価償却が重い負担になる。借入の金利も上がる。
- 国内:数量 168(出荷点数(万点))× 価格 2,940(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 49 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 11.0%
- 海外:数量 47.7(出荷点数(万点))× 価格 3,000(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 3.0%
倍率:ROEは約2%でkを大きく下回る。上限の1÷k(約13.3倍)の約71%の9.5倍に置いた。赤字には落ちず、稼ぐ力で値付けした。
確率:通販・安価な海外製品・電動化による整備需要の縮小・新工場の稼働率低下が重なる構造的な負け。ブランドの下支えがあるため確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内
ソケットレンチなどの作業工具と、シヤーレンチ・締付機器・トルク管理機器。トラスコ中山・アマゾン・山善などの通販・商社が主な販路。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1点あたりの平均販売価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 224 | 2,800 | 63 | 13 |
| 10 年後 中立 | 213 | 3,640 | 78 | 15 |
取り方:2026年5月期の国内セグメント売上62.71億円(開示)を、平均単価を2千円台後半として点数に直した推定(約224万点)。国内セグメントの営業利益は短信本文に無く、全社の営業利益13.64億円を国内12.7億円(利益率20%)、海外1.4億円、調整-0.5億円に配分した推定。
海外
ベトナムで製造し、アジアと北米で販売。シヤーレンチや作業工具を現地の代理店や商社へ売る。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1点あたりの平均販売価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 53.0 | 3,000 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 90.1 | 4,020 | 36 | 4 |
取り方:2026年5月期の海外セグメント売上15.88億円(開示、前期比4.0%増)を、平均単価を3千円として点数に直した推定(約53万点)。営業利益は配分した推定(利益率約9%)。
リスクと懸念
販売先の集中
トラスコ中山27%、アマゾン13%、山善11%で売上の5割を占める。価格交渉で押されると、利益率が10%台前半まで下がりうる。
新工場の投資負担
総額42億円は年間売上の半分を超える。完成は2028年8月。需要が伸びなければ、償却年2億円と借入の利息が利益を圧迫する。
自動車の電動化と整備士の減少
電気自動車は部品点数が少なく、エンジン周りの整備工具の需要が減る。国内の整備士や工員も減り、数量が縮む。
安価な海外製品と模倣品
通販では海外製の低価格品が並んで比べられる。有価証券報告書も模倣品の出現をリスクに挙げる。ブランドの値決めの力が試される。
鋼材・人件費の上昇
主材料の鋼材と人件費が上がる局面で、価格転嫁が遅れると利益率が下がる。
金利上昇
新工場のための借入が増え、金利の上昇で利息が増える。借り換えは3.5%前後を想定する。
政策保有株の評価変動
政策保有株31億円は自己資本の約2割。うち中央自動車工業の株が17億円を占め、株価の変動が自己資本に響く。
今後の分かれ目
- 新工場が完成し、営業利益率が17%以上を保ったまま償却を吸収したら
- 楽観・やや楽観の確率を厚くする。強い堀の判断を裏づける。
- 上位3社の販売先のうち、1社でも売上比率が3割を超え、値下げ要求が表面化したら
- 悲観側の確率を厚くする。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが方針として示されたら
- 資本効率の改善とみて、倍率の上限に近づける。
- 海外売上が2期続けて1割を超えて伸びたら
- 海外の数量を引き上げ、楽観の確率を上げる。
- 新工場の費用が計画を大きく超えるか、稼働が遅れたら
- 投資負担の悪化とみて、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 営業利益率(17%台を保てるか)
- 上位3社の販売先の売上比率
- 新工場の進捗と総投資額
- 海外売上の伸び
- 配当性向と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、国内と海外の出荷点数×平均単価で10年後の利益を積んだ。国内の点数は人口と整備士の減少から0.95倍、単価は物価の1.34倍を通販の価格圧力で少し割り引いて1.30倍。海外は点数1.7倍、単価1.34倍。営業利益率は16%と、直近の17%を下回り、過去12年の山(24%)を大きく下回る。新工場の償却と借入の利息を織り込み、純利益÷営業利益は過去の中央値0.74に近い0.72にした。倍率は、ROEが資本コストを下回るため、1÷k(約13倍)の約86%に置いた。堀は強いと判断した。今の時価総額と比べたのは最後。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→14.94 倍・やや楽観 PER 12→13.81 倍・中立 PER 11.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。