結論
KVK は、台所・洗面・浴室の水栓金具(蛇口)をつくる岐阜の専業メーカーだ。売上は約 309 億円。主力はお湯と水を混ぜる混合水栓で、売上の 7 割強を占める。
筆者の結論は、事業は堅実だが、10 年先まで見ても稼ぐ力はあまり伸びず、今の値段はやや高め、というものだ。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を 1 割ほど下回る。
強みは、無借金に近い財務と、17 期続けて減らしていない配当だ。自己資本比率は 85% で、純現金は 34 億円ある。住宅設備メーカー、ホームセンター、管工機材商と、販路が幅広い。
弱みは利益率の低さだ。営業利益率は過去 12 年、7% から 12% の帯から出ていない。銅など原材料が上がると、すぐ利益を削る。新築住宅の減少も重い。2026 年 8 月に全品目の価格改定に踏み切るが、通るかどうかが分かれ目になる。
もう一つ気になるのは資本の使い方だ。配当性向は 3 割ほどで、残りは会社にたまる。ROE(自己資本の稼ぐ率)は 7% 前後と資本コストにぎりぎり届かない。筆者はここに、この会社の価値が伸びにくい理由を見る。
数字で言うと、10 年後の中立の営業利益は 35 億円ほど、今の 27 億円から 3 割の増加だ。売上の伸びは物価の分がほとんどで、水栓の数は横ばいか微減と見る。値上げが通る間は利益が守られるが、人件費も同じだけ上がるので、利益率は広がらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、KVK は「堅実だが、手放しで持ちたい会社ではない」と見る。無借金で、暮らしに欠かせない蛇口を売る。需要が消える心配はない。
問題は、稼いだお金の行き先だ。利益の 7 割が会社に残り、自己資本は毎年 1 割近く増える。その資本は事業に回らず、現金や有価証券にたまる。新しい投資で ROE が上がらない限り、ためた資金は額面未満の値打ちになる。
もう一つは、堀の浅さだ。水栓は規格品に近く、他社に切り替えられても顧客は困らない。値上げを通せる力は限られる。原材料の上げ下げを自力で吸収できる会社ではない。
安全域は十分とは言えない。純現金は時価総額の 2 割、自己資本は時価総額の 1.8 倍ある。割安の印に見えるが、ROE が資本コストに届かない以上、帳簿の厚みがそのまま価値にはならない。筆者は、今の値段は少し高いと見る。
オーナーとして見たとき、KVK は経営者が資本を配分する腕を見せる場面がまだ少ない。工場への投資は進んだが、利益率の改善には結びついていない。自社株買いや大きな増配が発表されれば、評価は大きく変わりうる。今は、変化の兆しを待つ段階だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。浴室、台所、洗面所の蛇口を作り、全国に売る。2026 年 3 月期の売上は、湯水混合水栓が 131 億円、シャワー付きの混合水栓が 98 億円、単独水栓(水かお湯のどちらかだけの蛇口)が 35 億円、その他の部品・配管材が 44 億円だった。
売り先は幅広い。住宅設備メーカーへの納入、ホームセンター、ハウスメーカー、管工機材商(配管資材の問屋)、そして水道工事店だ。全国の特約店でつくる「全国 KVK 会」を通じて、問屋ルートを大事にしている。
生産は岐阜県富加町の本社工場が中心だ。2023 年に新工場棟を 2 棟建て、コージェネレーション(発電と排熱の併用)と太陽光発電を入れた。単独水栓は、中国・大連の 100% 子会社が主に作り、大半を親会社に納める。フィリピンの子会社は部品の組み付けを受け持つ。
原価の中心は真ちゅう(銅と亜鉛の合金)だ。銅の国際価格は 2025 年 10 月から 2026 年 3 月にかけて、2 割ほど上がった。会社は 2026 年 8 月受注分から、全品目のメーカー希望小売価格を引き上げる。
従業員は約 1,200 人。創業家の資本会社とみられる北村興産が約 14% を持つ筆頭株主で、取引先の持株会が約 7% で続く。
事業の構造を一言で言えば、重い固定費を持つ装置産業に近い。鋳造、加工、組み立て、検査と、工程のほとんどを自社の工場で持つ。稼働率が上がれば利益率が伸び、下がれば急に落ちる。新棟 2 棟の建設で減価償却費が増えたため、足元の利益率はその分だけ重い。
海外の売上は、地域別の開示で見ると中国が 66 億円、フィリピンが 3 億円あるが、大半は親会社への供給で内部取引にあたる。海外で自社ブランドの水栓を売る力は、まだ小さい。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、堅実さにある。派手な技術や独占ではない。水栓の品ぞろえを広く持ち、問屋と特約店の網で全国に届ける。この流通の太さが、稼ぎを支えている。
財務は極めて堅い。自己資本比率は 85%、流動比率は 400% を超える。純現金は 34 億円ある。配当は 17 期にわたって減らしておらず、2027 年 3 月期は増配を予定する。
ただ、利益率が低い。営業利益率は 2015 年 3 月期の 7% から 2021 年 3 月期の 12% まで動き、直近は 9% ほどだ。売上は 10 年で 237 億円から 309 億円まで伸びたが、営業利益は 17 億円から 27 億円で、伸びは物価に追いつく程度だった。
弱点は三つ。第一に値決めの力が限られる。水栓は規格品に近く、巨大な住設メーカーや海外の安い品と競う。第二に原価の転嫁が遅れる。銅の上昇を売値に乗せるまで時間がかかる。第三に中国事業の伸び悩みだ。前の中期計画は売上 360 億円を掲げたが、中国市況の悪化で下方修正した。
ROE は過去 10 年の中央値で 7.4%。資本コストの 7.5% をわずかに下回る。筆者は、これが「悪くないが、増やす会社ではない」という評価の根っこだと見る。
経営の姿勢は保守的だ。借金を増やして攻めることはなく、配当は着実に積み上げる。この点は評価できる。一方で、利益率を引き上げるための大きな手は、まだ見えない。前の中計は、営業利益率 10% を掲げて届かなかった。新しい中計も、国内基盤の維持と高付加価値品の拡大という方針で、攻めの色は薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の水栓は、成熟した市場だ。給排水栓類の生産数量は 2023 年に 2,963 万個で、前年より 4.2% 減った。2025 年の秋も、前年同月を 6% ほど下回る月がある。新築住宅の着工が減り続けているためだ。
一方、リフォームは堅調だ。水栓は住宅の設備のうち、取り替えが多い部位である。台所や浴室の更新、節水型や温度調整つきへの買い替え、築古住宅の改修が、新築の減少を一部補う。筆者は、国内の数量は 10 年で 1〜4% 減る程度と置く。
市場の大きさは、公的な金額統計が見つからない。筆者の推定で、混合水栓が約 3,000 億円、単独水栓が約 600 億円、部品・配管材が約 1,500 億円ほどだ。競合の頂点は TOTO と LIXIL。専業ではカクダイが単独水栓で強く、三栄水栓などが続く。KVK は専業として上位に入るが、シェアは 1 割に届かないと筆者は見る。
価格の面では、原材料の真ちゅうが銅と亜鉛の値で動く。人件費と物流費も上がる。2026 年 8 月に会社は全品目の値上げを発表した。同業も同じ時期に動く見通しなので、転嫁は通りやすい局面と言える。
業種の前提との違いにも触れておく。機械業種の水処理の節は半導体工場の超純水が主役で、水栓とは関係がない。ここでは国内の住宅の数量と、物価並みの価格から積み上げた。
流通の力関係も見ておきたい。水栓は、メーカーから問屋、工事店、施主へと流れる。問屋は取り扱いの品を絞りたがり、メーカーは在庫と物流を抱える。KVK は全国 KVK 会という特約店の組織で、この問屋のルートに深く入り込んでいる。一方でネット通販の増加は、このルートの価値を少しずつ削る。
10 年の見通しとして、筆者は国内の水栓の実質の市場が 4% ほど縮み、価格は物価並みに上がると置く。楽観は数量の横ばい、悲観は 2 割近い縮小と価格競争による値下がりだ。
資本政策と M&A
配当は「配当性向を意識した安定的で継続的な配当」が方針だ。2026 年 3 月期の性向は 29%、2027 年 3 月期は 31% を予定し、増配となる。自社株買いの実績は目立たない。利益の約 7 割は会社に残る。
投資の中心は工場だ。2023 年に新棟 2 棟を建て、その土地建物の補助金が 2026 年 3 月期の純利益を押し上げた。今期の予想純利益 22 億円にも、4 月に行った投資有価証券の一部売却益が入る。政策保有株は縮める方向とみられるが、銘柄ごとの額は確認できていない。
M&A は目立たない。買収で規模を広げる戦略は取っていない。10 年以内の TOB(株式公開買い付け)の確率は、統計の目安で 3 割ほどとされる。筆頭株主と持株会を合わせた安定株主が厚いため、友好的な形になりやすい。
株主優待は、100 株以上で自社製品の優待価格販売、500 株以上で入浴用品の贈呈だ。費用は年 1 億円を大きく下回るとみられ、還元の評価には入れない。2026 年 6 月に対象製品を 4 つから 6 つに増やした。
筆者がいちばん注目するのは、自己資本の厚さだ。自己資本比率は 85% で、配当性向 3 割の方針を続けると、10 年で自己資本は 5 割ほど増える。この資金が事業の拡大や自社株買いに回らなければ、ROE はさらに下がる。資本政策の転換が、この会社の価値を動かす最大の論点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
水栓は、住まいがある限り必ず売れる。蛇口は壊れ、古くなり、取り替えられる。新築が減っても、リフォームの市場は底堅い。節水型や温度調整つきなど、高付加価値の商品に買い替えが進めば、単価も上がる。KVK は中高級のサーモスタット水栓を出し、その流れに乗っている。
価格改定も追い風だ。2026 年 8 月の全品目の値上げは、原材料高の転嫁にとどまらず、利益率を戻す機会になる。前の中計で届かなかった営業利益率 10% は、値上げと生産の改善(KPS 活動)が噛み合えば、現実味を帯びる。
財務は盤石だ。自己資本比率は 85% で、純現金は 34 億円ある。配当は 17 期連続で減らしておらず、2027 年 3 月期は増配を予定する。持株会と筆頭株主が安定株主として厚く、経営は長期の視点で動ける。大連の自社工場で作る単独水栓は、コストの面で同業に対する強みになる。
住宅のリフォームは、築年数の進んだ住宅が増えるほど母数が増える。水栓は 10〜20 年で取り替える部材で、更新の周期は短い。悲観の見方は、利益率が 12 年のあいだ帯に閉じ込められていると言うが、帯の上のほうは 2021 年 3 月期の 12% まで行った実績がある。値上げと工場の効率化が重なれば、そこへ戻る道はある。
慎重な見方
水栓は差のつきにくい商品だ。利益率は 12 年のあいだ 7〜12% の帯に閉じ込められ、売上は 10 年で 3 割しか伸びていない。物価の上昇を引くと、実質ではほぼ横ばいだ。新築住宅は減り続け、ハウスメーカーや住設メーカー向けの出荷は先細る。
値上げが通るとは限らない。TOTO や LIXIL が先に動けば別だが、価格を下げて数量を取りに来る同業も多い。海外の安い品が、ホームセンターやネット通販で存在感を増している。真ちゅうの原料高が続けば、価格転嫁の遅れが毎期の利益を削る。
最大の問題は資本の使い方だ。利益の 7 割をためこみ、ROE は資本コストに届かない。10 年でためた資金は 160 億円ほどに達する計算で、事業に使い道がなければ、株主にとっては割り引かれた資産でしかない。安定株主が厚いので、外から還元を迫る力も弱い。中国事業は計画を下方修正する失敗をすでに経験している。
強気の見方は価格改定に期待するが、同業が足並みをそろえて値上げするとは限らない。ホームセンターは仕入れ値の上昇を嫌い、プライベートブランドに切り替えることもできる。値上げを通した代償に、数量を失う例は水栓の世界でも珍しくない。
どちらに重みを置いたか
需要の底堅さと財務の厚みには、強気の見方に説得力がある。ただ、堀の浅さと、ためこむ資本の使い方は、価値の伸びを抑える。筆者は、中立で利益率は今とほぼ同じ 8% 台後半と置いた。確率は中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観側より厚くした。値上げが通る確証はなく、新築の減少と海外品の攻勢は実現しやすいと見るからだ。悲観の確率は 1 割にとどめた。水栓の需要が消えることはなく、財務も固いので、会社が崩れる確率は小さい。資産の厚さは悲観の床として効く。ただし、ためた資金が事業で生きない限り、床は価値の伸びにつながらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,537 円284 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 916 円74 億円)。 今の値に割り戻すと 2,354 円189 億円、今との差 +8.1%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,275 円504 億円 | 1,183 円95 億円 | +242.4% | +13.1% | 448 円36 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,279 円424 億円 | 1,046 円84 億円 | +190.4% | +11.3% | 1,265 円102 億円 |
| 中立 | 38% | 4,434 円356 億円 | 946 円76 億円 | +147.1% | +9.5% | 2,045 円164 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,304 円105 億円 | 847 円68 億円 | −1.3% | −0.1% | 559 円45 億円 |
| 悲観 | 10% | 806 円65 億円 | 560 円45 億円 | −37.3% | −4.6% | 137 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,537 円284 億円 | 916 円74 億円 | +104.5% | +7.4% | 4,453 円358 億円 |
今の株価時価総額 2,178 円175 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 高付加価値の水栓が定着し、値上げも通って利益率が戻る 利益 38 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,275 円504 億円
節水型と温度調整つきの中高級品への買い替えが進み、混合水栓の単価が物価を上回って上がる。2026 年 8 月の価格改定が定着し、原材料の上昇も転嫁できる。リフォームは堅調で、新築の減少を補う。KPS 活動で工場の効率が上がり、営業利益率は 11% 近くまで戻る。過去の山である 12% には届かない。
アジアの代理店網が育ち、大連とフィリピンの拠点が輸出の足場になる。単独水栓の自社生産のコスト優位も生きる。
配当は性向 3 割台を保ち、増配が続く。ためた資金の一部は、自社株買いや新工場の投資に使われ、資本の効率は少し上がる。ROE は資本コストのすぐ下まで戻るが、超える水準ではない。
この筋書きでも、水栓が独占に近づくわけではない。値決めの力は限られ、住設メーカーとの力関係も変わらない。それでも、営業利益は 48 億円ほどと今の 8 割増えるのは、数量の減少が小さく、価格と利益率が同時に動くからだ。
- 混合水栓(シャワー付を含む):数量 3,090(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 10.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 336 億円・営業利益 64 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 7.7% 前後を基準に増減
- 単独水栓:数量 600(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 48 億円・営業利益 6 億円。市場(実質)× シェア。単独水栓は中国の自社工場で作る
- 部品・配管材・その他:数量 1,500(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 60 億円・営業利益 9 億円。部品・配管材。水栓の出荷に連動
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 504 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中高級品の定着、値上げの浸透、アジアの代理店開拓がそろって実を結ぶ筋書き。過去の利益率の山を超えない範囲でも、すべてがうまく行く必要があり、1 割を切る確率にとどめた。
やや楽観 20% リフォームが新築の減少を補い、値上げが一定程度通って利益が伸びる 利益 32 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,279 円424 億円
新築住宅は減り続けるが、リフォーム需要が数量を支える。混合水栓の出荷は 10 年で 1 割弱の減にとどまる。2026 年 8 月の価格改定は大筋で通り、単価は物価をわずかに上回る。
銅の高止まりは売値で吸収できる。営業利益率は 10% 前後で安定し、過去 12 年の帯の上のほうに入る。前の中計が掲げた 10% に、遅れて届く形だ。
配当は増配が続き、性向は 3 割台前半。ためた資金は少しずつ事業と投資有価証券に回る。ROE は資本コストに近づくが、まだ届かない。
純利益は 30 億円台前半で、今より 4 割ほど増える。ただし、ためた資金の運用先が見つからなければ、ROE は 6% 台にとどまる。株主への還元が増えない点は、この筋書きでも変わらない。
- 混合水栓(シャワー付を含む):数量 2,980(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 10.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 312 億円・営業利益 56 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 7.7% 前後を基準に増減
- 単独水栓:数量 585(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。市場(実質)× シェア。単独水栓は中国の自社工場で作る
- 部品・配管材・その他:数量 1,470(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 58 億円・営業利益 8 億円。部品・配管材。水栓の出荷に連動
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 424 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:リフォームの底堅さと価格改定は、すでに足元で見えている。国内の数量が横ばいに近く、利益率が 10% 近くに戻る形を、中立の次に起こりやすい筋書きとして厚めに置いた。
中立 38% 国内は微減、価格は物価並みで、利益率は今とほぼ同じ 利益 27 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,434 円356 億円
国内の水栓市場は、実質で 4% ほど縮む。新築の減少が効く一方、リフォームが支える。当社のシェアは今のまま。価格は物価並みに上がるが、人件費や本社費も同じだけ増える。
営業利益率は 8% 台後半で、今とほぼ同じ。純利益は 26 億円台に落ち着く。2026 年 8 月の値上げは通るが、その後の原材料高で効果が薄まる。海外は伸びず、中国事業は供給拠点のまま。
配当は性向 3 割台で、自社株買いは大きくない。利益の 7 割弱が会社に残り、自己資本は 10 年で 5 割ほど増える。事業の ROE は資本コストを下回り、特別な事件はなく、安定しているが伸びない会社として 10 年が過ぎる。
営業利益は 35 億円ほどで、今より 3 割増える。増えるのは物価の分が中心で、実質の利益はほぼ横ばいだ。
- 混合水栓(シャワー付を含む):数量 2,880(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 10.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 295 億円・営業利益 50 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 7.7% 前後を基準に増減
- 単独水栓:数量 570(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。市場(実質)× シェア。単独水栓は中国の自社工場で作る
- 部品・配管材・その他:数量 1,440(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 57 億円・営業利益 8 億円。部品・配管材。水栓の出荷に連動
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 355 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅の着工は減り続けるが、リフォームが穴を埋める。10 年の実績でも営業利益率は 7〜12% の帯に収まっており、帯の中ほどに居続ける形を最も起こりやすいとして、最大の確率を置いた。
やや悲観 26% 値上げが転嫁しきれず、海外の安い品に押されて利益率が下がる 利益 13 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,304 円105 億円
新築の減少が速く、リフォームも家計の節約で伸びない。混合水栓の出荷は 1 割近く縮む。価格改定は一部しか通らず、アジア製の安い水栓に押されて、値引きや販促費が増える。
銅の上昇を売値に乗せ切れない期が続き、営業利益率は 5% 前後まで下がる。本社費と人件費は物価で増え続けるため、全社の営業利益は 18 億円ほどと、今の 3 分の 2 になる。
配当は今の水準を守るが、増配は止まる。ためた資金の投資先は見つからず、利益は縮み、ROE は 3% まで落ちる。株主への戻しが増えず、安定株主が厚いので、外からの圧力もかからない。
自己資本は 400 億円台に積み上がるが、稼ぐ力は伸びない。株式の評価は、現金と有価証券を含めた資産の側に近づく。
- 混合水栓(シャワー付を含む):数量 2,760(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 9.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 275 億円・営業利益 38 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 7.7% 前後を基準に増減
- 単独水栓:数量 540(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。市場(実質)× シェア。単独水栓は中国の自社工場で作る
- 部品・配管材・その他:数量 1,380(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 53 億円・営業利益 5 億円。部品・配管材。水栓の出荷に連動
倍率:悲観に近い構造的な負けの筋書きで、ROE は 3% と k を大きく下回り、事業の稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 70 億円に届かない。床は純現金と、10 年の利益から配当と更新投資を引いた残りの合計に当たる約 105 億円で、今の自己資本 308 億円に 0.34 倍を掛けて置いた(中立の PBR より低い)。
確率:原材料高の転嫁の遅れは過去にも繰り返されており、ホームセンターやネット通販での安価品の増加も進んでいる。強気の筋書きより起こりやすいとみて、やや厚めに置いた。
悲観 10% 中国・アジア勢と住設メーカーに押され、水栓の値段が崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 806 円65 億円
住設メーカーが調達先を絞り、ホームセンターとネット通販ではアジア製の安い水栓が主流になる。KVK の混合水栓は値段でも数量でも押され、市場の縮みを超えてシェアを失う。
大連の自社工場の優位は、他社の海外調達に追いつかれる。営業利益は赤字すれすれまで落ち、固定費の重い工場の稼働率が下がる。配当は減らさざるをえない。
減損が出るが、財務は無借金のまま変わらず、会社そのものは続く。現金と投資有価証券が価値の床になる。非上場化や再編の提案が出る可能性もある。
こうなれば、水栓という事業は縮小を迫られるが、現金が残るため、少数株主への影響は限られる。再編や TOB の可能性は、この筋書きで最も高まる。住宅の水栓という必需品の需要は消えない。ただ、売り先と値段を決める力を失った事業は、資産の価値でしか測れない。
- 混合水栓(シャワー付を含む):数量 2,500(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 9.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 236 億円・営業利益 21 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 7.7% 前後を基準に増減
- 単独水栓:数量 480(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。市場(実質)× シェア。単独水栓は中国の自社工場で作る
- 部品・配管材・その他:数量 1,200(国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。部品・配管材。水栓の出荷に連動
倍率:事業の利益がほぼゼロで、PER では床の資産を割る。今の自己資本 308 億円に掛ける形で、純現金と更新投資後の残りの合計に当たる約 65 億円まで評価し、0.21 倍に置いた(中立の PBR より低い)。
確率:住設メーカーの調達先の切り替えと、アジア製の流入が同時に進む形で、構造的な負けにあたる。水栓の需要は消えず、財務も固いので、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
混合水栓(シャワー付を含む)
湯水を混ぜて出す蛇口。台所・洗面・浴室用で、シャワー付きを含む。主力。
| 数量国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 7.7% | 230 | 39 |
| 10 年後 中立 | 2,880 | 10.3% | 295 | 50 |
取り方:混合水栓の国内市場を約 3,000 億円と推定し、当社売上 229.6 億円(湯水混合 131.2+シャワー付 98.4)からシェアは約 7.7%。公的な金額統計がなく推定。事業ごとの利益は非開示で、営業利益率 17% は筆者の推定。
単独水栓
水かお湯のどちらかだけを出す蛇口。中国の自社工場で主に作る。
| 数量国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 5.9% | 35 | 4 |
| 10 年後 中立 | 570 | 7.9% | 45 | 5 |
取り方:単独水栓の国内市場を約 600 億円と推定し、売上 35.5 億円からシェア約 5.9%。カクダイなど専業が強い領域。利益率 12% は推定。
部品・配管材・その他
水栓の補修部品、配管材、洗い場の周辺部材。
| 数量国内の該当市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 2.9% | 44 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,440 | 3.9% | 57 | 8 |
取り方:部品・配管材の市場を約 1,500 億円と推定し、売上 43.9 億円からシェア約 2.9%。利益率 14% は推定。
リスクと懸念
新築住宅の減少
新設住宅着工は直近で前年を 1 割ほど下回る。ハウスメーカーや住設メーカー向けの出荷は、人口減とともに細る。リフォームが穴を埋められなければ、国内の数量は筆者の想定より速く縮み、固定費の重い工場の稼働が下がる。地域の工務店やハウスメーカーの再編が進めば、納入先の絞り込みも起きる。
原材料と価格転嫁
真ちゅうの原料の銅は 2025 年秋から 2026 年春にかけて 2 割ほど上がった。2026 年 8 月の値上げが通らず、同業が価格を抑えれば、利益率は 1 ポイント単位で削られる。売値を上げるほど数量が逃げる局面もありうる。為替が円安に振れる局面では、輸入原料の負担も重い。
大手の住設メーカーとの力関係
TOTO や LIXIL は水栓を自社の浴室・台所の商品に組み込める。KVK はそこへ納める側でもあり、競合でもある。組み込み品の仕様や調達先が変われば、納入の数量と値段は大きく動く。販路の弱い領域では、競合の価格攻勢の影響を受けやすい。
海外の安価な水栓の流入
ホームセンターやネット通販では、アジア製の安い水栓が存在感を増している。規格品に近い単独水栓は、品質で差をつけにくく、価格競争に巻き込まれやすい。単独水栓の売上は 35 億円と小さいが、混合水栓へ波及する余地がある。品質や保証の面で日本の水栓は優位だが、住宅設備として規格を満たす安価品が増えると、その差は縮む。
中国事業とフィリピン
前の中期計画は、中国市況の悪化で売上目標 360 億円を下方修正した。大連の工場は単独水栓を作る供給拠点で、人件費の上昇と現地の景気に左右される。海外での代理店開拓が実を結ぶ見通しは、まだ薄い。現地通貨や関税の変動も、利益を揺らす。
資本の使い方
利益の約 7 割が会社に残り、自己資本は毎年増える。使い道が見つからなければ、ROE は資本コストを下回り続ける。大株主は筆頭株主と取引先持株会で、外から還元を迫る力が弱い。持株会の持ち分は取引先との関係であり、売買が少なく、経営への監視が弱まりやすい。
今後の分かれ目
- 2026 年 8 月の価格改定が定着し、営業利益率が 10% に近づいたら
- 利益率の前提を引き上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 新築住宅の着工がさらに落ち込み、リフォームも頭打ちになったら
- 国内の数量の前提を下げ、やや悲観側の確率を上げる。
- TOTO・LIXIL が大幅な値上げや仕様変更で調達先を変えたら
- 納入の数量と値段が動くので、利益率の前提を見直す。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、ためた資金の大型の還元が発表されたら
- 資本効率が上がると見て、倍率の前提を引き上げる。
- 中国・アジアの代理店網が拡大し、海外の売上が伸び始めたら
- 海外の数量を上方修正し、楽観の確率を上げる。
- 大株主による非上場化・TOB の提案が出たら
- 資産の厚さと安定株主の存在が評価され、買い手との交渉が価値を決める。
見ておくもの
- 混合水栓の売上と営業利益率(四半期)
- 新設住宅着工戸数とリフォームの動き
- 銅価格と価格改定の浸透
- 配当・自社株買いの実施
- 投資有価証券の売却と純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
混合水栓・単独水栓・部品の 3 つに分け、国内市場(実質)× 当社のシェア × 物価並みの価格で売上を積んだ。利益率は今の水準(営業利益率 8.8%)を土台に、過去の山(12%)を超えない範囲で置いた。倍率は式(1÷k に ROE÷k を掛けた目減り)から出し、今の株価や過去の倍率には寄せていない。減価償却は取得済みの設備ぶんを物価で増やさず、本社費は物価で増やした。新リース会計基準の影響は、賃借の小さい当社では小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→13.33 倍・やや楽観 PER 10.3→13.33 倍・中立 PER 9→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。安定株主が厚いことや、中国事業の失敗は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.50%。