結論
三共はパチンコ機で国内首位の遊技機メーカーだ。ホールに新台を売って稼ぎ、売上の7割強をパチンコ機が占める。パチスロも近年シェアを伸ばした。筆者の結論は、今の値段はおおむね適正だが、割安とは言えない、というものだ。事業は強いが、市場が縮む前提を外せないからである。
強みは三つある。パチンコ機のシェアは30%を超え、4期続けて首位に立った。営業利益率は3割台と高い。自己資本比率は86%で、時価総額の4割強にあたる純現金を持つ。
弱みは、稼ぎの源である遊技人口とホール数が長い目で細ることだ。新台のヒットは水物で、利益は年ごとに大きく振れる。2017年3月期の営業利益率は6%まで落ちた。2027年3月期の会社計画も減収減益で、販売単価を下げる新方針が重い。
10年の見立てでは、台数は市場とともに緩やかに減り、単価は物価ほど上がらない。中立の 10 年後の時価総額は今を 1 割弱上回る。悪い筋書きの厚みを加えると、本質価値は今の値段を 1 割弱下回る。
見るべきは現金の使い方だ。自社株買いと配当を厚くし、大型のM&Aには手を出していない。この姿勢が続く限り、現金は安全域として働く。
バリュー投資の観点から
筆者は三共を、守りの堅い一本足の会社だと見る。事業の本質は、ホールが毎年買い替える消耗品としての新台だ。買い替えが続く限り稼げるが、10年先にホールの数も遊技人口も今より細っていることは織り込むしかない。
堀は広くない。首位という位置と開発力は強みだが、版権機のヒットは毎年やり直しで、規制ひとつで前提が変わる。だから筆者は、長く続く超過利益に高い値段を払わない。今の利益率は山の上にあり、ならした利益はもっと低いと考える。
資本の使い方は評価できる。買収で自己資本を傷めず、余った現金を自社株買いと配当で返している。株主のものになる利益、つまり再投資の要らない利益の割合が高いのは、この事業の美点だ。
安全域は現金が与える。純現金の分を引いた事業の値段は低く、悪い筋書きでも現金が下値を支える。逆に言えば、強気の筋書きに頼らなくても、今の値段で大きく損をしにくい。ただし縮む市場の会社に割安を期待しすぎるのも禁物だ。安く見えて当然の理由が、市場の側にある。
何で稼ぐ会社か
三共の稼ぎは、遊技機メーカーとして新台をホールに売ることに尽きる。パチンコ機とパチスロ機を作り、ホールが機械を入れ替えるたびに売上が立つ。ほかに玉やメダルを運ぶ補給機器も手がける。2026年3月期の売上は約1,800億円、営業利益は600億円台だった。
パチンコ機が中核だ。フィーバーの名で知られる老舗ブランドに加え、近年はBistyのブランドで人気アニメの版権機を出している。2025年度は『e東京喰種』などがヒットし、上期だけで約16万台を売った。台数と単価の積が売上で、ヒットが出ると増産が重なって利益が跳ねる。
パチスロ機は成長事業と位置づけている。2025年3月期にはシェア首位に立ち、売上は過去5期平均の3倍超になった。ただ2026年3月期は新規タイトルが4つにとどまり、台数は大きく減った。年間のタイトル数がそのまま業績の振れ幅になる。
補給機器と、漫画制作・アニメ製作委員会への出資などの新規事業は、利益の面ではまだ小さい。三共の価値は、パチンコ機で首位を守る力と、ホールが新台を買う余力がどこまで続くかにかかっている。
優良さと弱いところ
三共の強みは、ホールが選んで買ってくれる開発力と、無理をしない財布だ。パチンコ機の販売台数シェアは30%を超えて4期続けて首位、矢野経済の調べでは2番手に倍以上の差をつけた。パチスロでも2025年3月期に初の首位に立った。営業利益率が3割を超えるのは、ホールが欲しがる機械を出せている証拠だ。
ただし堀は深くない。ヒット機種の寿命は短く、毎年当たりを出し続ける保証はない。出玉の規制や型式試験の基準が変われば、新台そのものが減りうる。利益率も2017年3月期の6%から2025年3月期の38%まで大きく動いた。筆者は、いまの高い利益率がそのまま続くとは見ていない。
資本の使い方は良い。大型の買収をせず、自己資本比率86%の堅い財務を保ったまま、2025年には600億円を上限とする自社株買いに踏み切った。配当も業績に連動させ、ROEの目標15%を実際に超えている。
弱点は一本足だ。ほぼ全部がホール向けの遊技機で、ほかに稼ぎ頭がない。この点で、ゲームIPや海外ゲーミングを持つセガサミーより、市場縮小への耐性は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
遊技機の市場は、短期の持ち直しと長期の縮小が重なっている。2024年のパチンコ・パチスロ市場は16兆円台に戻り、遊技人口も増えた。スマート遊技機が若い層と戻ってきた層を呼んだためだ。ただ遊技人口の高齢化とホール数の減少という底流は変わらず、10年では市場が年2〜4%ずつ縮むと見るのが自然だ。
三共の直近の事情は二つある。一つはパチンコ市場の苦しさだ。機械の値段が上がってホールの投資負担が重くなり、稼働が落ち、さらに投資を絞る悪循環が起きている。三共はこれに「YELLプライス」と呼ぶ値下げの方針で応じた。ホールに優しいが、会社の単価と利益率は下がる。
もう一つはパチスロの回復だ。稼働が堅調で、ホールの投資がパチンコからパチスロへ移ると三共は見ている。2027年3月期は新規タイトルをパチスロで8本、パチンコで11本出す計画だ。
競争の形は少数の寡占で、セガサミー、平和、ユニバーサル系などが争う。勝負を分けるのは版権の選び方と新台のヒット率、それにホールとの関係だ。縮む市場では、弱い会社から退場し、強い会社のシェアが上がる。三共は首位の側にいる。
新台の入替は数年で平常に戻り、台数は横ばいから緩やかな減少に向かう。10年では規制と人口で縮む、というのが筆者の標準の見立てだ。
資本政策と M&A
三共の資本政策は、現金をためて、使い道がなければ返すという素直なものだ。配当は連結配当性向40%を目安に業績へ連動させ、自社株買いは機動的に行う。2026年3月期は自社株買いで純資産が約350億円減った。2025年5月には、600億円を上限とする自社株買いを決めている。2027年3月期の配当は前の期より減る予定だ。
買収や資本提携はこれまで目立たない。新しい取り組みは、コムシードとの提携、漫画制作、アニメ製作委員会への出資にとどまり、金額は小さい。大型のM&Aで価値を壊した同業の例と比べ、資本配分の規律は保たれている。
論点は、純現金が時価総額の4割強に達していることだ。会社自身もPERが1桁にとどまると認めている。現金が積み上がるほど、返すか使うかの判断が重くなる。もう一つ、PBRが1倍台で現金の厚い会社は、買収の標的にもなりうる。事業が縮む会社が現金を抱え込み続けるなら、市場は割り引いて評価し続けるだろう。
還元は方針(配当性向40%目安に機動的な自社株買いを足す)に沿い、中立は純利益の合計の約86%。余った現金1,300億円は還元に入れず時価総額に足すので二重にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
パチンコ機の首位は固い。シェア30%超を4期続け、2位以下との差が広がっている。市場が縮むほど、ヒットを出せる会社へ注文が集まり、首位のシェアは上がる。三共は版権機の選び方がうまく、ホールとの関係も厚い。
パチスロはまだ伸びしろが大きい。シェア首位に立ったばかりで、2027年3月期は新規タイトルを8本に増やす。稼働が堅調でホールの投資がパチスロへ移るなら、会社の台数は計画を超えて増えうる。
利益率の高さも続けやすい。研究開発費を増やしても、ヒットが出れば単価と台数の両方が効く。さらに純現金は時価総額の4割強あり、事業が多少傷んでも、自社株買いと配当で株主に返し続けられる。会社自身がPER1桁を認め、買い戻しに積極的な今、値段は先に悲観を織り込みすぎている。大型のM&Aで資本を傷めた同業と違い、三共は財布が汚れていない。この差は、縮む市場では何より大きい。パチンコ機の首位が崩れる兆しは、今のところ決算にも販売台数にも見えていない。
慎重な見方
稼ぎの源である遊技人口とホール数は、長い目で細る。2024年に市場が持ち直したのはスマート遊技機の一時的な効果で、10年の傾きは変わらない。市場が年に数%縮めば、首位でも台数は減り、固定費の重みが増す。
2027年3月期の会社計画は減収減益だ。中期経営計画の数値目標も市場の悪化を理由に下回る。新しい価格方針で単価が下がり、研究開発費や販売費も増える。利益率の38%という山は、すでに過ぎた可能性が高い。
ヒット依存も重い。パチスロは新規タイトル4本の年に台数が大きく減り、上期の売上が前年の半分以下に落ちた。次の当たりを出せなかった年の傷は深い。規制や型式試験の基準が厳しくなれば、新台そのものが出にくくなる。
現金は確かに厚いが、本業が縮む会社が現金を持つのは、使い道がないことの裏返しでもある。返しきれなければ、市場は現金を割り引いて見るだろう。ほかに稼ぎ頭がない一本足の会社に、高い倍率を払う理由は見当たらない。
どちらに重みを置いたか
事業の地力では強気の見方に分がある。首位の位置、堅い財務、規律ある資本配分は本物だ。ただ値段を決めるのは、数年先の利益より10年先の市場の傾きで、ここでは慎重な見方が重い。市場は縮み、利益率は山を越えている。
そこで中立を最も厚くしつつ、やや悲観と悲観の合計を 4 割弱に置いた。楽観とやや楽観の合計は 3 割にとどめた。市場の縮みは資本コストの寿命にも入れたので、確率では重ねて悲観側へ寄せていない。現金が下値を支えるので悲観の落ち方は浅いが、結果として本質価値は今の値段を 1 割弱下回り、適正の範囲でやや高めになった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,117 円6,157 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,691 円3,339 億円)。 今の値に割り戻すと 2,594 円5,124 億円、今との差 +17.3%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,798 円1.15 兆円 | 2,531 円5,000 億円 | +276.5% | +14.2% | 666 円1,316 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,401 円8,693 億円 | 2,126 円4,200 億円 | +195.0% | +11.4% | 1,436 円2,837 億円 |
| 中立 | 32% | 3,848 円7,600 億円 | 1,772 円3,500 億円 | +154.0% | +9.8% | 1,798 円3,552 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,542 円3,046 億円 | 1,418 円2,800 億円 | +33.8% | +3.0% | 740 円1,462 億円 |
| 悲観 | 13% | 523 円1,034 億円 | 759 円1,500 億円 | −42.0% | −5.3% | 167 円329 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,117 円6,157 億円 | 1,691 円3,339 億円 | +117.3% | +8.1% | 4,808 円9,496 億円 |
今の株価時価総額 2,213 円4,370 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 市場は縮んでも首位が総取りに近づく10年 利益 526 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 5,798 円1.15 兆円
市場は縮むが、新台を作れる会社が減り、三共のシェアはパチンコで36%、パチスロで18%まで上がる。台数の減りは小さく、単価も物価の7割ほどは通る。ヒット機種の版権の選び方がさらに磨かれ、利益率は高い水準を保つ。補給機器も、残ったホールの設備更新を取り込む。大型の買収はせず、現金は自社株買いと配当で返し続け、自己資本は膨らまない。「縮む市場の勝者」として評価される10年である。ただし、その前提にはホールの減少が緩やかであることと、同業の脱落が重なる必要があり、起こる確率は高くない。パチスロでも2位集団との差が広がり、新規事業の漫画・アニメの出資は版権の目利きにも役立つ。利益の質が高く、10年先でも優良な会社として残る姿である。
- パチンコ機:数量 245(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 61(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 1,482 億円・営業利益 519 億円。市場は縮むがシェア36%で24.5万台、単価1.24倍、営業利益率35%
- パチスロ機:数量 110(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 49(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 539 億円・営業利益 162 億円。シェア18%で11万台、単価1.35倍、営業利益率30%
- 補給機器・その他:数量 45.0(補給機器の販売台数(千台/年、実質))× 価格 45(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 203 億円・営業利益 20 億円。4.5万台、営業利益率10%
倍率:事業の純利益 508 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 43.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 20.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,300 億円。全体の PER 19.99 倍、時価総額 11,451 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:弱い競合の退場で首位のシェアが大きく上がり、パチスロでも2位集団に食い込む筋書き。理由はあるが、市場の縮小に勝つ必要があるので8%にとどめた。
やや楽観 22% 首位を守り、利益率も高めに残る10年 利益 412 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 4,401 円8,693 億円
市場は年に2%ほどの縮みで済み、三共はシェア33%で22万台を維持する。ホールの数は減るが、残ったホールの稼働は高く、新台の入替は続く。単価は物価に少し届かないが、1.18倍まで上がる。パチスロは新規タイトルの安定供給でシェアを守り、9万台台になる。営業利益率は30%台前半を保ち、現金は返しつつ積み増さない。ホールの淘汰が進んでも、残ったホールが高い稼働を保てば、新台の買い替え需要はなくならない。この筋書きは、その余地の範囲である。パチスロは稼働の堅調なうちにシェアを固め、パチンコ機の縮みを一部補う。会社の中計が掲げた方向に近い、穏当な好ましい筋書きだ。
- パチンコ機:数量 225(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 58(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 1,294 億円・営業利益 401 億円。シェア33%で22.5万台、単価1.18倍、営業利益率31%
- パチスロ機:数量 95.0(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 48(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 456 億円・営業利益 123 億円。9.5万台、単価1.32倍、営業利益率27%
- 補給機器・その他:数量 40.0(補給機器の販売台数(千台/年、実質))× 価格 44(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 176 億円・営業利益 15 億円。4万台、営業利益率8.5%
倍率:事業の純利益 394 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 30.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 15.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,300 億円。全体の PER 18.57 倍、時価総額 8,613 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の縮みが業種ノートの穏やかな側に収まり、首位のシェアでかなり補う筋書き。パチンコの市場が年2%前後の縮みで済むなら十分起こりうるので22% を置いた。
中立 32% 市場は年2〜3%縮み、首位でも台数は4分の3に 利益 345 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 3,848 円7,600 億円
遊技人口とホール数が緩やかに減り、パチンコ市場は年2〜3%縮む。三共はシェアを30%台前半に保っても、台数は21万台まで減る。単価は新価格方針と競争で、物価ほどは上がらず1.15倍にとどまる。パチスロは市場の縮みを首位のシェアで補い、8.5万台。利益率は高い山を過ぎて、20%台後半に落ち着く。大型の買収はせず、稼いだ利益のほぼ全額を配当と自社株買いで返す。現金は積み増しも取り崩しもしない。利益率は2017年3月期や2021年3月期の谷ほどは落ちず、2025年3月期の山にも戻らない。10年を通した、ならした姿である。
- パチンコ機:数量 210(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 56(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 1,180 億円・営業利益 331 億円。市場は年2〜3%縮み、シェア31%で21万台、単価1.15倍、営業利益率28%
- パチスロ機:数量 85.0(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 47(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 400 億円・営業利益 100 億円。8.5万台、単価1.30倍、営業利益率25%
- 補給機器・その他:数量 38.0(補給機器の販売台数(千台/年、実質))× 価格 44(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 168 億円・営業利益 12 億円。3.8万台、営業利益率7%
倍率:事業の純利益 327 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,300 億円。全体の PER 17.99 倍、時価総額 7,179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中心の見立て(10年で年2〜4%の縮小)を、三共のシェアの伸びで少しだけ緩めた最も重い筋書き。市場の縮小は事実として確かだが、首位は縮みの中でも取り分を保てる。 確率は 32%。
やや悲観 25% 市場の縮みが速く、利益の山は遠い記憶になる10年 利益 172 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 1,542 円3,046 億円
遊技人口の減少が速まり、ホール数も大きく減る。三共はシェアを守っても、台数は16万台まで落ち、単価も物価に届かず1.06倍にとどまる。パチスロは稼働が堅調でも市場の縮みに押され、6.5万台。営業利益率は10%台に下がり、研究開発費の負担が重くなる。配当は守るが自社株買いは小さくなり、現金は事業の縮小に合わせて少しずつ取り崩される。配当を守るために有価証券の売却や現金の取り崩しが一部で必要になり、10年の還元の合計は純利益の合計を上回る。それでも純現金が厚いので、財務の傷は浅い。競争は厳しくなり、同業との値引き合戦も起きる。それでも首位の位置は守られ、事業が消えるわけではない。
- パチンコ機:数量 160(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 52(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 832 億円・営業利益 150 億円。市場は年4%超縮み16万台、単価1.06倍、営業利益率18%
- パチスロ機:数量 65.0(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 44(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 286 億円・営業利益 43 億円。6.5万台、営業利益率15%
- 補給機器・その他:数量 28.0(補給機器の販売台数(千台/年、実質))× 価格 40(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。2.8万台、営業利益率3%
倍率:ROE 8.3% が k 8% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 11.1 倍まで。ヒットが減り利益率が低くなる筋書き。ROE が k を下回るので、稼ぐ力(純利益 ÷ k)を上限に、上限の 9.0 割の 11.5 倍に置いた。 余った現金 975 億円(戻り方 1.0)を別に足した。
確率:規制や若年層の離れで市場が年4%を超えて縮み、利益率が谷の水準に近づく筋書き。三共の過去の谷(営業利益率6〜11%)を踏まえ、10年で十分起こりうる。市場の縮みそのものは資本コストの寿命にも入れてあるので、確率は標準より少し厚い程度の 25% にとどめた。
悲観 13% 市場が半分以下に縮み、優良さを失う10年 利益 54 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 523 円1,034 億円
ホール数が急減し、パチンコ市場は今の半分以下になる。三共の台数は10万台まで減り、ホールの値引き要求で単価は今より下がる。営業利益はほぼ消え、研究開発費を賄うのがやっとになる。それでも純現金は残り、会社は配当を最低限守りながら現金で事業を縮める。市場は三共をかつての首位メーカーではなく、現金の価値で評価する会社として扱うようになる。配当を守るために有価証券の売却や現金の取り崩しを使うため、還元の合計は純利益の合計を大きく超える。倒産の恐れはないが、事業としての魅力は大きく落ちる。ホールの経営破綻が相次ぎ、遊技機の中古市場にも機械があふれて新台の需要を食う。三共の売上は今の3分の1ほどにまで細り、研究開発も縮小せざるをえない。
- パチンコ機:数量 100(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 44(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 440 億円・営業利益 22 億円。市場が半分以下になり10万台、値引きで単価は0.9倍、営業利益率5%
- パチスロ機:数量 40.0(自社の販売台数(千台/年、実質))× 価格 37(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 148 億円・営業利益 4 億円。4万台、営業利益率3%
- 補給機器・その他:数量 18.0(補給機器の販売台数(千台/年、実質))× 価格 30(1台あたり平均販売額(万円、名目))→ 売上 54 億円・営業利益 0 億円。1.8万台、損益ゼロ
倍率:ROE 2.3% が k 8% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 11.1 倍まで。規制と市場の縮小でヒットが出ず、利益がほぼ消える筋書き。稼ぐ力は小さいので、稼ぐ力に余った現金を足した額を上限に、上限の 9.0 割の 8.6 倍に置いた。 余った現金 650 億円(戻り方 1.0)を別に足した。
確率:規制の強化と遊技人口の急減で、市場が今の半分以下になる構造的な負け筋。業種ノートが示す最大のリスクで、頻度は低いが、10年では無視できない確率として13% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
パチンコ機
フィーバーの名で知られるパチンコの新台をホールに売る本業。三共の稼ぎのほとんどがここから出る。
| 数量自社の販売台数(千台/年、実質) | 価格1台あたり平均販売額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 270 | 49 | 1,320 | 530 |
| 10 年後 中立 | 210 | 56 | 1,180 | 331 |
取り方:2026年3月期の販売台数は開示が見つからず、市場のパチンコ販売台数(2025年度の見通し約85万台)にシェア30%超を掛け、上期の約16万台も踏まえて約27万台と推定した。売上は上期748億円の比率から通期1,320億円と置き、1台あたり約49万円を逆算。営業利益は上期353億円の実績比率から約530億円と推定した。
パチスロ機
新台のパチスロを売る成長事業。直近でシェア首位に立ったが、タイトル数が少なく年ごとの振れが大きい。
| 数量自社の販売台数(千台/年、実質) | 価格1台あたり平均販売額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 36 | 290 | 80 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 47 | 400 | 100 |
取り方:市場のパチスロ販売台数(約70万台)にシェア約11%を掛け、上期約4万台・新規4タイトルの実績から通期約8万台と推定した。売上は上期173億円の比率から約290億円、営業利益は上期67億円を踏まえ約80億円とした。
補給機器・その他
ホール向けの玉・メダルの補給機器(島設備)など。ホールの設備投資とホール数に連動する。
| 数量補給機器の販売台数(千台/年、実質) | 価格1台あたり平均販売額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 33 | 182 | 15 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 44 | 168 | 12 |
取り方:補給機器とその他の売上は、全社の売上1,792億円から上の二つを引いた約182億円。販売台数は開示がなく、1台あたり約33万円として約5.5万台と推定した。営業利益は上期の6億円の水準から約15億円と置いた。
リスクと懸念
遊技人口とホール数の構造的な減少
市場が持ち直したのは、スマート遊技機が若い層と戻ってきた層を呼んだ一時的な効果だ。遊技人口の高齢化とホール数の減少という底流は変わらず、10年では市場が年2〜4%縮むと見る。市場が縮めば、首位でも台数は減り、固定費の重みが増す。この点は筆者が最も重く見る不確実性の一つで、確率と利益率の両方に反映した。
出玉規制・型式試験の変更
出玉の規制や型式試験の基準が変わると、新台の企画から売上までの前提が崩れる。基準が厳しくなれば、新台が通らず発売が遅れ、ホールの投資意欲も落ちる。規制は業界全体の需要を動かし、首位の三共でも逃れられない。新台の発売時期がずれるだけでも、年度の台数が大きく動く。
ヒット依存と年ごとの利益の振れ
パチンコ機もパチスロ機も、売れ行きは機種ごとの当たり外れが大きい。パチスロは2026年3月期に新規タイトルが4本にとどまり、台数が大きく減った。営業利益率は6%から38%まで動いてきた。高い利益率が続くとは限らない。筆者は、山の利益率を前提にした値付けを避けている。
ホールの投資負担と価格方針
機械の値段が上がり、ホールの投資負担が重くなって稼働が落ちる悪循環がある。三共は値下げ方針で応じたが、単価と利益率は下がる。ホールの経営が傾けば、購入を絞る動きが一気に広がり、新台の注文が細る恐れがある。新台の価格と稼働のバランスが取れなければ、首位でもシェアでは救えない。
一本足の事業構造
稼ぎのほぼ全部がホール向けの遊技機で、ほかに支える事業がない。補給機器や漫画・アニメへの出資は小さい。遊技機の逆風が強まった時、補う柱がない点は、多角化を進める同業との大きな差になる。売上の大半がホール向けなので、市場の縮小が決算にそのまま出る。
現金の使い道と資本効率
純現金は時価総額の4割強に及ぶ。返し方が足りなければ市場は現金を割り引いて評価し続け、逆に使い方を誤れば価値を壊す。これまでは自社株買いと配当で返してきたが、縮む事業に新規投資を広げた時の規律が試される。現金が多いほど、使い方への市場の目は厳しくなる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の通期決算で、パチンコ機・パチスロ機の台数が会社計画を大きく上回った
- 市場の悪化が一服し、首位の取り分が増えている証拠だ。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし単価の下がり方と利益率を合わせて見る。
- パチンコ機のヒットが2期続けて出ず、シェアが30%を割った
- 首位の堀が思ったより浅いことになる。利益率の山が終わった前提で、やや悲観の確率を厚くする。
- 出玉規制・型式試験の基準が厳しくなり、新台の発売が遅れた
- 悲観の確率を上げ、10年の構造的な縮小の前提も見直す。ホールの購入意欲への影響を確かめる。
- ホール数の減少ペースが年3%を超えて加速した
- 10年のやや悲観・悲観の確率を上げる。補給機器の台数も一段と減る見込みになる。
- 現金を使った大型の買収や、遊技機以外の事業への大きな出資を発表した
- 資本配分の規律が崩れたかを確かめ、悲観側へ確率を寄せる。買収額と見込む利益の関係を読む。
- 自社株買いや配当が、純現金に見合う規模で一段と増えた
- 余った現金の価値が株主に届く道筋が見える。下値の安全域がさらに高まったと考えてよい。
見ておくもの
- パチンコ機・パチスロ機の販売台数とシェア(決算説明資料)
- 新台の稼働と、新規タイトルの数・ヒットの状況
- パチンコ機の単価(新価格方針の影響)と営業利益率
- ホール数・遊技人口の動き(警察庁・レジャー白書)
- 出玉規制・型式試験の基準の変更
- 自社株買い・配当の方針と純現金の水準
倍率と資本コストの決め方
台数は市場の販売台数(約85万台・70万台)にシェアを掛けた推定で、市場の縮小は業種ノートの年2〜4%に従った。価格は、パチンコ機だけ新価格方針と競争を理由に物価より低く置き(10年1.15倍)、ほかは物価並みを基本にした。倍率はkが8%(基本7.5%に quality +1.5%)、gは4%で、弱い堀(残る割合1/3)の正当化PERの上限の 8 割(楽観 8.5 割、ROEがkを下回るやや悲観・悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の 9 割)に置いた。余った現金は稼ぐ力に足して時価総額に入れた。純現金は時価総額の4割強あり、事業に要る約600億円を残して1,300億円を余った現金として足した。自社株買い・配当の還元は別に置いている。今の株価に合わせて決めたものではない。店舗を持たない製造業なので、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.32→19.99 倍・やや楽観 PER 11.2→18.57 倍・中立 PER 10.05→17.99 倍・やや悲観 PER 9.38→11.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.5% = 9.0%。ヒット依存や規制のリスクのうち、市場の縮小は寿命で k に入れ、年ごとの振れは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。