結論
カワタは、プラスチックの成形機のまわりで使う機械の専門メーカーだ。樹脂を乾かす乾燥機、運ぶオートローダー、混ぜるミキサーを作り、成形の工場に据え付ける。筆者の結論はやや割高である。国内の地盤は固いが、稼ぎの力が資本コストに届かず、今の時価総額を支えるほどの利益が見込めない。
2026 年 3 月期の営業利益は 4.5 億円で、前の期の半分に落ちた。自動車向けの射出成形と、EV の電池向けの投資が冷えた。中国では値下げ競争に巻き込まれ、東アジアの事業は 5 億円近い赤字になった。会社は中国の体制を作り直している。
筆者は 10 年後の営業利益を 13 億円ほどと見る。国内の省人化と、食品や粉体など樹脂以外への広がりが支えになる。それでも自己資本利益率(ROE)は 5% 前後で、資本コストの 9% を下回る。会社が掲げる ROE 8% には、構造の変化がないと届かない。配当は自己資本の 2% を出す方針で厚いが、稼ぎが追いつかなければ、それは資本の取り崩しに近い。PBR の低さに目を奪われず、資本がいくら稼ぐかで値段を見るべき会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、カワタは「よく知られた脇役」だが、オーナーとして持ち続けたい事業とまでは言えない。国内の据え付けの厚みは本物で、保守の稼ぎも安定している。ただ、その上に積んだ資本が、資本コストを稼いでいない。
いちばん気になるのは、配当の出し方だ。DOE 2% という方針は、利益が少ない年でも自己資本から配当を払う仕組みである。株主への還元としては厚いが、ROE が 2% を下回る年が続けば、自己資本は少しずつ減る。稼ぎを上げる手立てが伴わない配当は、帳簿の価値を前倒しで返しているのに近い。配当を受け取る株主には悪くないが、会社の価値が育つわけではない。
安全域は、今の時価総額では取れない。PBR は 0.4 倍ほどだが、ROE が 5% 前後の会社にとって、それは安すぎる値段ではない。中国の立て直しが実を結び、国内で省人化と新しい分野の稼ぎが上積みされる姿を見てから、評価を上げても遅くはない。
何で稼ぐ会社か
カワタの機械は、成形機の「脇役」である。射出成形機や押出機が樹脂を形にする前に、原料のペレットを乾かし、色や添加剤と混ぜ、必要な量だけ運ぶ。成形品の品質は、この前工程で大きく決まる。カワタは 1951 年の創業から、この分野を専門にしてきた。
事業は地域で 4 つに分かれる。日本が売上の 6 割強を占め、利益のほぼすべてを稼ぐ。東アジアは中国と台湾、東南アジアはタイやインドネシア、北中米は米国とメキシコだ。海外の多くは、日本の自動車や電機のメーカーが現地に建てた工場への納入である。
顧客の業界は自動車、電機、OA 機器、容器、医療、フィルムと広い。最近は樹脂以外にも手を広げ、リチウムイオン電池の材料、食品、化粧品の粉を扱う装置を売り込んでいる。受注してから作る形で、受注残は 76 億円ほどある。
機械を売ったあとの部品と保守も、安定した稼ぎの源だ。据え付けた乾燥機やローダーは 10 年以上使われ、そのあいだ部品の交換と修理が続く。国内に多くの機械が入っていることが、日本の事業の利益率を支えている。生産の拠点は日本、中国、東南アジアにあり、営業とサービスの拠点は台湾と北中米にも置く。
優良さと弱いところ
カワタの強みは、国内の成形工場に深く入り込んでいることだ。乾燥機やローダーは工場の配管や制御と一体で据え付けられ、一度入ると簡単には替えられない。保守と部品で長く付き合う関係が、日本の事業の安定した利益を生む。
弱さは 3 つある。第 1 に、成形機そのものの需要に左右されることだ。射出成形機の受注台数は 2021 年をピークに減り続けている。第 2 に、海外で値段の勝負に巻き込まれていることだ。中国では地元のメーカーが安い汎用品を出し、東アジアの粗利率は 1 年で 7 ポイント落ちた。第 3 に、資本の稼ぐ力の低さだ。過去 10 年の ROE の中央値は 4.6% で、会社自身が掲げる 8% に届いた年は 3 回しかない。
経営は資本コストを意識すると言い、配当の方針を厚くした。ただ、稼ぎを上げる手立ては、新しい分野の開拓という長い道のりに頼っている。堀、つまり他社がまねできない強みは、国内の据え付けの厚みに限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プラスチックの成形の周辺機器は、成形機の需要に連れて動く小さな業界だ。国内ではカワタと非上場の松井製作所が二大手で、成形機メーカーの系列や海外勢が加わる。成形機の世界市場では、日本の日精樹脂工業、住友重機械工業、ファナックと、中国の海天などが競う。
需要の芯は自動車と電機の部品だ。自動車の生産台数は世界でほぼ横ばいで、EV 化で部品の数は減る。中国では成形機と周辺機器の国産化が進み、値段が下がっている。一方で、日本と東南アジアでは人手が足りず、樹脂の運搬や乾燥を自動にする省人化の投資が続く。容器のリサイクルや再生材の利用も、乾燥と異物の除去の機械の需要を生む。
10 年の流れでは、筆者は国内の台数は横ばい、海外は中国の立て直しと東南アジアの伸びで 1 割ほど増えると見る。値段は物価並みに上がるが、中国の汎用品は物価に届かない。業界の機械受注は景気で 2〜3 割振れ、2009 年には営業赤字も経験した。
人手の面では、据え付けと保守の技術者が足りなくなっている。機械の値段より、現場に人を出せるかどうかが受注を左右する場面も増えた。保守の網を持つ国内の老舗には、それが小さな追い風になる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。会社は連結の配当性向 30% 以上と、自己資本に対する配当の比率(DOE)2% 台を掲げる。2026 年 3 月期は利益が落ちても配当を保ち、総額は 2.7 億円、配当性向は 700% を超えた。株主優待は 2022 年に廃止し、配当に集めた。
財務は穏当だ。現預金は 74 億円、借入金は 53 億円で、差し引き 21 億円の純現金がある。会社は現預金を月商の 3 か月、借入を月商の 4 か月を目安に持つ方針で、いまの現金は運転資金の備えと位置づける。前受金も 8 億円ある。
M&A は大きな動きがない。会社は大型の投資や M&A では増資も選択肢と述べている。国内の成形工場に深く入った小さな会社なので、成形機メーカーや商社からの買収の的にもなりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の地盤は固い。乾燥機やローダーは成形工場の配管と制御に組み込まれ、10 年以上使われる。その間の部品と保守で稼ぎが続く。2026 年 3 月期も、日本の事業は 9 億円の営業利益を出した。赤字は中国の立て直しの途中の数字で、構造改革が終われば海外の損失は消える。
追い風もある。日本と東南アジアでは人手が足りず、樹脂の運搬と乾燥を自動にする投資が続く。容器のリサイクルと再生材の利用は、乾燥と異物の除去の機械を必要とする。食品や電池材料、化粧品の粉を扱う装置は、成形機の波から離れた新しい市場だ。
会社は当期利益 10 億円、ROE 8% を目標に掲げ、配当で株主に応える姿勢も見せた。中国の赤字 5 億円が消えるだけで、利益は今の倍以上になる。PBR 0.4 倍の値段は、この回復をほとんど見ていない。
財務の余裕もある。純現金があり、借入は月商の 4 か月分に収まる。不況が来ても配当を保ちながら、中国の立て直しと新分野への投資を続けられる。
慎重な見方
成形機の需要そのものが細っている。射出成形機の受注台数は 2021 年から減り続け、自動車は EV 化で樹脂の部品が減る。脇役のカワタは、主役の需要が戻らなければ伸びようがない。
中国の問題は一時的ではない。地元のメーカーが安い汎用品で市場を取り、東アジアの粗利率は 1 年で 7 ポイント落ちた。構造改革で赤字は減っても、利益の出る事業に戻る保証はない。北中米では納めた機械の手直しで費用がかさんだ。
資本の稼ぎも弱い。過去 10 年の ROE の中央値は 4.6% で、目標の 8% に届いたのは 3 回だけだ。DOE 2% の配当は、稼ぎが追いつかなければ自己資本を削る。新しい分野は大手の粉体機器メーカーとの競争で、まだ小さい。PBR の低さは、資本が稼がないことへの値付けだ。
人手不足は追い風にもなるが、据え付けと保守の技術者が足りなければ、受注を取りこぼす。北中米の手直しの失敗は、その弱さの表れでもある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。国内の地盤と保守の稼ぎは認めるが、成形機の需要の縮みと中国の値下げ競争は構造の話で、一時の不振ではない。中国の立て直しの効果を中立に半分ほど入れ、確率は中立を厚く、楽観は 1 割未満に置いた。PBR の低さは確率を上に寄せる理由にしていない。国内の保守の稼ぎは悲観の筋書きでも残るので、悲観の確率は 1 割強にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,200 円84 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 397 円28 億円)。 今の値に割り戻すと 765 円53 億円、今との差 −5.0%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,489 円174 億円 | 501 円35 億円 | +271.5% | +14.0% | 239 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,862 円130 億円 | 458 円32 億円 | +188.3% | +11.2% | 464 円32 億円 |
| 中立 | 38% | 1,337 円93 億円 | 429 円30 億円 | +119.4% | +8.2% | 671 円47 億円 |
| やや悲観 | 22% | 374 円26 億円 | 387 円27 億円 | −5.6% | −0.6% | 167 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 321 円22 億円 | 143 円10 億円 | −42.4% | −5.4% | 56 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,200 円84 億円 | 397 円28 億円 | +98.4% | +7.1% | 1,597 円112 億円 |
今の株価時価総額 805 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 中国の立て直しと新分野で、目標の利益 10 億円を超える 利益 16 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,489 円174 億円
中国の立て直しが実を結び、新しい分野が育つ筋書きだ。中国は汎用品の安売りから手を引き、日系や欧州系の工場向けの高い機械に絞る。東南アジアとインドでは日系の工場の新設が続き、海外の台数は 4 割増える。
国内では人手不足が深まり、樹脂の運搬と乾燥を自動にする投資が広がる。食品や電池材料の粉を扱う装置が柱の 1 つに育ち、国内の台数も 15% 増える。営業利益は 24 億円ほどになり、会社の目標の当期利益 10 億円を大きく超える。それでも ROE は 8% ほどで、資本コストにわずかに届かない。配当は利益とともに増える。
- 日本:数量 4,600(装置の台数(台、推定))× 価格 415(1 台あたりの売上(万円。保守・部品・システムの按分と物価を含む))→ 売上 191 億円・営業利益 16 億円。4,600 台(1.15 倍)× 415 万円(1.38 倍)、営業利益率 8.5%
- 海外(東アジア・東南アジア・北中米):数量 4,200(装置の台数(台、推定))× 価格 350(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 147 億円・営業利益 7 億円。4,200 台(1.45 倍)× 350 万円(1.37 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 174 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 7% 超は 2019 年 3 月期の 1 度だけで、中国の回復と新分野の成功が重なる必要がある。8% とした。
やや楽観 20% 国内の省人化と海外の立て直しがほどほどに進む 利益 12 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,862 円130 億円
国内の省人化と海外の立て直しが、ほどほどに進む筋書きだ。中国の赤字は構造改革で消え、東南アジアは日系の工場向けで着実に伸びる。北中米の手直しの問題も片づく。
国内の台数は 8% ほど増え、非プラの装置が成形機の波を少しならす。値段は物価並みに上がる。営業利益は 18 億円ほどで、会社の目標の当期利益 10 億円を超える年が出てくる。ROE は 6% 台に上がるが、資本コストにはまだ届かない。配当は性向 30% と DOE 2% の高い方で続き、自己資本はゆっくり積み上がる。北中米と東南アジアの保守の網も厚くなり、海外でも機械を売ったあとの稼ぎが育つ。
- 日本:数量 4,300(装置の台数(台、推定))× 価格 408(1 台あたりの売上(万円。保守・部品・システムの按分と物価を含む))→ 売上 175 億円・営業利益 13 億円。4,300 台(1.08 倍)× 408 万円(1.36 倍)、営業利益率 7.5%
- 海外(東アジア・東南アジア・北中米):数量 3,700(装置の台数(台、推定))× 価格 345(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 128 億円・営業利益 4 億円。3,700 台(1.28 倍)× 345 万円(1.35 倍)、営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の構造改革はすでに始まっており、赤字が消える可能性は十分ある。国内の省人化の投資も続くので 2 割とした。
中立 38% 国内は横ばい、海外は赤字が消えて少し伸びる 利益 8 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,337 円93 億円
国内は横ばい、海外は赤字が消えて少し伸びる筋書きだ。成形機の需要は底を打つが、昔の勢いには戻らない。国内では省人化と非プラの装置が、自動車向けの減少をちょうど埋める。
中国の立て直しで東アジアの赤字はなくなるが、値下げ競争の中で利益はわずかしか出ない。東南アジアと北中米は日系の工場とともに少し伸び、海外の台数は 1 割増える。営業利益は 13 億円ほどで、ROE は 5% 前後にとどまる。配当は DOE 2% を守るので、ためた利益の多くは配当で出ていく。自己資本は大きくは増えず、株主の価値もゆっくりとしか増えない。
- 日本:数量 4,000(装置の台数(台、推定))× 価格 402(1 台あたりの売上(万円。保守・部品・システムの按分と物価を含む))→ 売上 161 億円・営業利益 10 億円。4,000 台(横ばい)× 402 万円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 6.5%
- 海外(東アジア・東南アジア・北中米):数量 3,200(装置の台数(台、推定))× 価格 342(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 2 億円。3,200 台(1.10 倍)× 342 万円(1.34 倍)、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の地盤と成形機の縮み、中国の立て直しと値下げ競争が打ち消し合う落としどころで、最も起こりやすい。38% とした。
やや悲観 22% 成形機の需要が縮み、利益を上回る配当が続く 利益 3 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 374 円26 億円
成形機の需要の縮みが続き、海外の立て直しも空回りする筋書きだ。自動車の EV 化で樹脂の部品が減り、国内の成形工場は統合と閉鎖が進む。国内の台数は 1 割減り、値段も物価に届かない。
中国では地元のメーカーにシェアを奪われ、東アジアは赤字すれすれが続く。営業利益は 5 億円ほどに沈む。それでも会社は DOE 2% の配当を守り、利益を上回る額を払い続ける。自己資本はほとんど増えず、ROE は 2% 台だ。株主の価値は、配当で受け取る分と、残った純現金に支えられる。新分野の装置も、大手の粉体機器メーカーとの競争で伸び悩む。
- 日本:数量 3,600(装置の台数(台、推定))× 価格 385(1 台あたりの売上(万円。保守・部品・システムの按分と物価を含む))→ 売上 139 億円・営業利益 6 億円。3,600 台(0.90 倍)× 385 万円(1.28 倍、物価に届かない)、営業利益率 4.5%
- 海外(東アジア・東南アジア・北中米):数量 2,700(装置の台数(台、推定))× 価格 320(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 86 億円・営業利益 −1 億円。2,700 台(0.93 倍)× 320 万円(1.25 倍)、営業利益率 −1.0%
倍率:ROE 2.4% は k 9.0% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷k の 11.1 倍の 7 割の 7.8 倍。
確率:射出成形機の受注はすでに 4 年減り続け、中国の値下げ競争も続いている。その流れが止まらない筋書きとして 22% とした。
悲観 12% 脇役の地位が揺らぎ、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 321 円22 億円
脇役の地位そのものが揺らぐ筋書きだ。成形機メーカーが周辺機器を自前で組み込み、まとめて売るようになる。中国や台湾のメーカーが安い乾燥機とローダーで日本と東南アジアにも入り込む。国内の台数は 25% 減り、海外は中国から事実上撤退する。
営業赤字が続き、配当は数年で減配に追い込まれる。新しい分野の装置も、大手の粉体機器メーカーに先を越される。株主の価値は、純現金と、運転資金を回収した時に残る額に近づく。国内の据え付けの基盤を目当てに、同業に安く買われる道も現実味を帯びる。保守の網だけが、最後まで価値を保つ。
- 日本:数量 3,000(装置の台数(台、推定))× 価格 370(1 台あたりの売上(万円。保守・部品・システムの按分と物価を含む))→ 売上 111 億円・営業利益 1 億円。3,000 台(0.75 倍)× 370 万円(1.23 倍)、営業利益率 1.0%
- 海外(東アジア・東南アジア・北中米):数量 2,000(装置の台数(台、推定))× 価格 300(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 −3 億円。2,000 台(0.69 倍、中国から撤退)× 300 万円、営業利益率 −5.0%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は純現金 21 億円に有価証券の税後と運転資金の回収分を足し、構造改革と撤退の費用を引いた額で、今の自己資本 132 億円の 0.17 倍の約 22 億円。
確率:過去にも 2009 年の営業赤字があり、成形機の需要の縮みは進んでいる。成形機メーカーと海外勢に挟まれて構造的に負ける筋書きとして 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内の成形工場向けの乾燥機・オートローダー・ミキサー・システムと保守部品。非プラ(食品・電池材料・医療)も含む。
| 数量装置の台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(万円。保守・部品・システムの按分と物価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 300 | 120 | 9 |
| 10 年後 中立 | 4,000 | 402 | 161 | 10 |
取り方:台数の開示がないため推定。外部売上 119.8 億円を、単体の乾燥機・ローダーとシステム案件を合わせた 1 台あたり約 300 万円で割った約 4,000 台。利益は日本セグメントの営業利益 8.97 億円(本社の費用を含む)。
海外(東アジア・東南アジア・北中米)
中国・台湾、タイ・インドネシア、米国・メキシコの子会社。主に日系の自動車・電機・OA 機器の現地工場向け。
| 数量装置の台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,900 | 255 | 74 | −5 |
| 10 年後 中立 | 3,200 | 342 | 109 | 2 |
取り方:台数の開示がないため推定。外部売上 73.9 億円(東アジア 43.2 億・東南アジア 24.1 億・北中米 6.5 億)を、汎用品の比率が高い 1 台あたり約 255 万円で割った約 2,900 台。利益は 3 地域の経常ベースの合計 −4.6 億円から営業ベースに −4.8 億円と推定。
リスクと懸念
成形機の需要の縮み
射出成形機の受注台数は 2021 年をピークに減り続けている。自動車の EV 化で樹脂の部品が減り、使い捨てのプラスチックを減らす動きも広がる。脇役のカワタは、成形機の需要が戻らなければ台数を伸ばせない。
中国の値下げ競争
中国では地元のメーカーが安い汎用品で市場を取り、東アジアの粗利率は 1 年で 27.8% から 20.9% に落ちた。構造改革で赤字は減っても、利益の出る事業に戻るかはわからない。撤退となれば、さらに費用がかかる。
配当が稼ぎを上回る
会社は DOE 2% 台を掲げ、利益が落ちた 2026 年 3 月期も配当を保った。ROE が 2% を下回る年が続けば、配当は自己資本を削る。株主への還元としては厚いが、資本の稼ぐ力が戻らないまま続けば、帳簿の価値が細る。
納入後の手直しと品質
北中米では、納めた機械の不具合の手直しで費用がかさみ、粗利率が 10 ポイント落ちた。システムの大型案件では、1 件の失敗が年の利益を大きく削る。海外で品質を保つ人手と仕組みが追いつくかが問われる。
新分野の競争
食品、電池材料、化粧品の粉を扱う装置は、成形機の波から離れた市場だ。ただ、この分野には大手の粉体機器メーカーがすでにいる。EV 向けの電池材料の投資は冷えており、新分野が柱に育つまでには時間がかかる。
今後の分かれ目
- 東アジアのセグメントが 2 期続けて黒字に戻ったら
- 中国の立て直しが効いた証拠として、やや楽観の筋書きの確率を上げる。海外の利益率の見通しを引き上げる。
- 射出成形機の受注台数が増加に転じ、カワタの受注が 2 期続けて 1 割以上伸びたら
- 国内の台数の見通しを上に直し、中立の利益率を見直す。
- ROE が 2% を下回るのに DOE 2% の配当が 3 期以上続いたら
- 自己資本の取り崩しが進むので、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 成形機メーカーや商社から資本提携や買収の提案があったら
- 国内の据え付けの基盤に値段が付く。帳簿の価値に近い値段での再編がありうる。
- 食品・粉体・電池材料など非プラの装置の売上が全体の 2 割を超えたら
- 成形機の波から離れた稼ぎが育った証拠として、数量の伸びと倍率の質を見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残(特に自動車向けの射出成形関連)
- 東アジアのセグメントの損益と粗利率
- 射出成形機の業界の受注台数
- ROE と DOE の関係(配当が利益を上回り続けるか)
- 非プラの装置の売上の比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR を見ずに、ROE と k 9.0% から決めた。中立の ROE は 5% 前後で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.1 倍になり、その 8 割を使った。利益率は過去 12 年の山(9.4%)より下の 4.7% に置き、中国の赤字が消える分を半分ほど入れた。PBR 0.4 倍は割安の根拠にしていない。純現金は会社の方針で運転資金とみなし、別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.4→11.11 倍・中立 PER 8.9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。