結論
昭和真空は、真空の中で薄い膜をつける装置を作る。水晶振動子、スマートフォンのレンズ、電子部品の3つが主な納め先だ。売上は93億円、自己資本比率は80%で、借金はない。純現金は55億円ある。
筆者の結論は、足元の値段は事業の稼ぐ力に対しておおむね妥当で、現金の分だけ下値が堅い、というものだ。営業利益は11億円、ROEは7%で資本コストに届かない。時価総額107億円に対し、純現金が半分を占める。
この会社の稼ぎは波が大きい。受注は2026年3月期に前期比41%減り、営業利益率は過去12年で2.6%から15.3%まで動いた。納め先の上位3社で売上の5割を占め、1社が動くだけで数字が変わる。
10年後の中立は、営業利益13億円、純利益10億円ほど。数量は横ばいで、物価の分だけ売上が増える。ROEは7%台と資本コストに届かず、倍率は式の上限の8割に置いた。余った現金は、アルバックが21%を持つ関係もあり、戻り方を0.75に置いた。
見るべきは、顧客3社の発注、光学の受注の戻り、現金の使い道だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、昭和真空は事業としては普通、財布としては固い会社だ。
事業は、顧客の設備投資に左右される。3年先の受注が見えにくく、利益の予測が難しい。わかりにくい事業には確信度を下げて見る。
財布は厚い。純現金55億円は時価総額の半分で、事業に要る分を引いても30億円ほどが余る。ただし、その現金が株主のものになるかは、経営の資本配分次第だ。10年で純現金が増え続けた実績は、戻り方に0.75を掛けて見る根拠になる。
オーナーが持ち続けたい会社かと問われれば、ROEが資本コストを下回る限り、答えは待ちになる。利益が10億円で、現金が30億円余る会社に、10年で払う値段が高いことはない。しかし、今の値段が大きな安全域を与えるとも言えない。
安全域は、現金と事業の二つで測る。事業が谷に入っても、現金の分は残る。逆に、装置が山に入れば利益は2倍になる。
何で稼ぐ会社か
昭和真空は真空成膜装置のメーカーである。真空の容器の中で金属や酸化物を蒸発させ、基板に薄い膜をつける装置が主力だ。
2026年3月期の売上93億円は、水晶デバイス装置が32億円、光学装置が23億円、電子部品・その他装置が16億円、サービスが23億円。水晶向けは前期の2.1倍になり、光学は11%減った。
納め先は偏っている。台湾のLargan Precisionが売上の22%、水晶メーカーの大真空が16%、三生電子が15%。この3社で5割を超える。海外比率は48%。
サービスは、納めた装置の部品、改造、修理だ。売上の4分の1を占め、利益率は装置より安定している。従業員は連結で215人と小さな会社だ。
水晶デバイス装置は、水晶振動子の電極をつけ、出荷前に周波数を合わせる工程に使われる。光学装置は、レンズの表面に反射を抑える膜を重ねる。電子部品・その他は、センサーやパワーデバイスなど用途が広い。どの装置も、顧客ごとの仕様に合わせた受注生産で、見込みで作る台数は少ない。
親会社に近い存在がアルバックで、議決権の21%を持つ。1981年に資本参加し、会社を持分法の対象にしている。アルバックとは電子部品向けの薄膜装置の分野が重なるが、納める先が違うので競合は少ないと会社は説明する。
優良さと弱いところ
優良さは、財務の堅さと、特定の用途での実績にある。ただし、稼ぎの水準と安定性には欠ける。
強みは三つある。第一に、自己資本比率80%で純現金が55億円ある。装置の谷でも倒れない。第二に、水晶デバイスの周波数調整や、レンズ向けの膜付けなど、顧客の工程に深く入った装置を持つ。第三に、サービスが売上の4分の1を占め、谷の年に利益を下支えする。
弱みも三つある。第一に、上位3社で売上の5割を超え、価格の交渉力が弱い。第二に、受注が1年で4割動く資本財で、営業利益率が2.6%から15.3%まで振れた。第三に、中国の装置メーカーが、技術を上げて低価格で入ってくる。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は8.6%、直近は4〜7%。会社はROE10%以上を掲げるが、数値の計画は示していない。
筆者は、財務と技術は本物だが、稼ぎの安定性が値段を重くすると見る。堀は普通と置いた。配当は性向30〜40%を目安とし、買い戻しはしていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、電子部品の製造設備投資の循環に乗る。スマートフォン、車載、通信、AIサーバーの需要が、水晶やレンズ、センサーの工場の投資を左右する。
足元は谷から回復の途中にある。受注は2026年3月期に41%減ったが、2027年3月期の第1四半期は水晶の受注が大幅に増え、光学も増えた。売上はまだ全セグメントで前年を割り、顧客の設備投資は慎重だ。
構造の変化は二つある。一つは、水晶デバイスの需要が車載とAIサーバーで長く伸びること。もう一つは、中国の電子部品メーカーが装置を国産に切り替える動きだ。昭和真空が納めるLarganや水晶メーカーは台湾・日本の会社だが、中国の装置メーカーが追う。
競合は、同じ真空成膜のアルバック、オプトラン、そして海外の装置メーカー。顧客の工程に入った装置は切り替えにくいが、新しい投資の案件では価格で競る。
10年では、水晶向けは名目で年3%台の伸び(台数は横ばい、価格は物価並み)、光学はスマートフォンの成熟で横ばい、電子部品は用途の広がりで小さく伸びる、と筆者は置く。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅いが動きが遅い。現金は2015年3月期の純現金2億円から、2026年3月期の55億円まで積み上がった。
還元は、配当が中心だ。性向は30〜40%を目安とし、2026年3月期は年間の総額4.4億円(純利益の5割)。自社株買いはしていない。余った現金を使う計画も示していない。
アルバックが議決権の21%を持つ。経営を握る比率ではないが、現金の使い方に口を出す株主でもない。10年以内に買収される確率は、一般の統計で2割台。筆者は、アルバックによる完全子会社化の可能性を、中立の筋書きには入れていない。
設備投資は年3億円台で、新しい大型投資の計画はない。M&Aの実績もない。
筆者は、現金を株主に戻す力が弱いと見て、余った現金の戻り方を0.75とした。資本コスト・株価を意識した開示(2025年6月)で、会社はROEとPBRの低さを認めている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
水晶デバイスは、車載、AIサーバー、通信で長く伸びる。5GやIoTで使う水晶の数は増え続け、大真空などの水晶メーカーの設備更新が続く。昭和真空の装置は周波数を合わせる工程に入っており、切り替えが難しい。
光学は、スマートフォンのカメラが多眼化して高性能になるほど、レンズの膜の品質が競争力になる。Largan向けの納入実績は、技術が認められている証拠だ。
受注は足元で底を打った。電子部品向けは前期比4割増、水晶は1Qで大幅増。売上の回復はこれからだ。営業利益率は2018年3月期に15%まで上がった実績がある。
財務は堅く、純現金が時価総額の半分を占める。事業が山に入れば利益は2倍になり、現金は戻り方次第で上乗せになる。会社はROE10%を掲げており、資本政策が動く余地もある。
サービスは、納めた装置が増えるほど積み上がる。谷の年にも売上が落ちにくく、利益の下支えになる。顧客3社への依存も、見方を変えれば長い取引関係の表れで、新しい装置の仕様を一緒に作る立場にある。
慎重な見方
装置メーカーは、受注が1年で4割動く。2026年3月期の受注は41%減り、光学は9割減った。山の利益に高い倍率を払うのは危うい。
納め先の上位3社で売上の5割を超える。1社が内製や他社に切り替えるだけで、数量が大きく動く。Largan向けは22%を占め、スマートフォン市場の成熟とともに伸びにくい。
中国の装置メーカーは、技術を上げて低価格で入ってくる。水晶や電子部品の工場がある中国・台湾で、装置が現地製に置き換わる流れは止めにくい。
ROEは10年中立でも7%台で、資本コストに届かない。現金が厚くても、使い道を示さず、自社株買いもしていない。ためた利益は額面を下回る価値しか持たない。アルバックが2割を持つ構造では、少数株主の声も届きにくい。
水晶向けの強い受注も、前期の水晶売上が2.1倍になった反動で、今期は売上が減る。受注残は前年の半分で、売上の見通しは前期より弱い。装置メーカーの利益は、受注の先行きで決まる。足元の受注の強さを、10年の利益に引き延ばすことはできない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、足元の受注の回復と現金の厚さで強い。ただし、顧客3社への依存と、受注の山谷が10年続くことは、弱気の言い分が重い。確率は中立を4割弱に置き、やや悲観を3割近くに寄せた。悲観は、中国勢による顧客の喪失と赤字を1割にとどめた。現金とサービスが下を支える。
最終的には、台数が横ばいで利益率が山と谷の中間に落ち着く姿を、いちばん確からしいと見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,283 円141 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 747 円46 億円)。 今の値に割り戻すと 1,536 円95 億円、今との差 −7.4%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,329 円330 億円 | 1,213 円75 億円 | +294.3% | +14.7% | 523 円32 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,709 円229 億円 | 1,002 円62 億円 | +184.0% | +11.0% | 801 円50 億円 |
| 中立 | 38% | 2,373 円147 億円 | 776 円48 億円 | +89.8% | +6.6% | 1,197 円74 億円 |
| やや悲観 | 27% | 910 円56 億円 | 566 円35 億円 | −11.0% | −1.2% | 399 円25 億円 |
| 悲観 | 10% | 789 円49 億円 | 323 円20 億円 | −33.0% | −3.9% | 111 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,283 円141 億円 | 747 円46 億円 | +82.7% | +6.2% | 3,031 円187 億円 |
今の株価時価総額 1,659 円103 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% AI・車載の需要が水晶と光学を押し上げ、装置が好循環に入る 利益 21 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 5,329 円330 億円
水晶デバイスの需要が車載・AIサーバー・通信基地局で厚くなり、水晶メーカーの設備更新が続く。光学では、スマートフォンのカメラが多眼化して高性能化し、レンズ向けの成膜装置が増える。電子部品向けはパワー半導体やセンサーの成膜で受注が広がる。
納入先が増えて顧客3社への依存も薄まり、サービス売上は納めた装置の増加と並んで伸びる。営業利益率は過去の山と同じ15%まで上がる。
営業利益は26億円、純利益は20億円ほど。山の利益が10年続くとは言えないが、数量が実質で4割増える姿である。
余った現金は50億円まで積み上がり、配当と買い戻しで株主にも厚く返る。アルバックとの関係が深まる可能性もあるが、この筋書きでは独立を保つ。自己資本は200億円、10年の還元は75億円。
- 水晶デバイス装置:数量 33.6(納入台数(台、推定))× 価格 17,588(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 59 億円・営業利益 17 億円。車載・AI向けの更新が続く
- 光学装置:数量 27.3(納入台数(台、推定))× 価格 14,851(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 8 億円。多眼化でレンズ向けが増える
- 電子部品・その他装置:数量 25.5(納入台数(台、推定))× 価格 12,367(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 6 億円。パワー半導体・センサー向けが拡大
- サービス(部品・改造・修理):数量 840(保守対象の装置(基、推定))× 価格 509(1基あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 43 億円・営業利益 10 億円。納入基数の増加で伸びる
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.75 倍、時価総額 330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:水晶は5G・車載・AIサーバーで長期に伸びるが、装置は受注の山谷が激しく、10年続けて上振れる保証は無い。山の利益率(15.3%、2018年3月期)に届く水準を1割弱の確率にした。
やや楽観 17% 水晶と電子部品が堅調で、光学は横ばいを保つ 利益 15 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 3,709 円229 億円
水晶の受注増が数年続き、電子部品向けは新しい顧客が加わる。光学は、スマートフォンのレンズ需要が横ばいのまま、Largan向けの更新を取り込む。
装置の台数は実質で2割前後増え、サービスは据え付けの増加につれて伸びる。営業利益率は13%台と、過去の良い年に近い。
営業利益は19億円、純利益は15億円。余った現金は45億円まで積み上がるが、還元は配当が中心で、買い戻しは小さい。
会社が掲げるROE10%には、自己資本の積み上がりで届かない。倍率は式の上限の8〜9割にとどまる。
水晶の更新と電子部品の広がりは続くが、光学は主要顧客の動き次第で、ここでは大きく伸ばさない。台数の増加は実質で2割前後にとどまり、価格は物価並みに上がる。
- 水晶デバイス装置:数量 28.8(納入台数(台、推定))× 価格 17,588(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 14 億円。水晶の更新需要
- 光学装置:数量 24.2(納入台数(台、推定))× 価格 14,851(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 36 億円・営業利益 7 億円。レンズ向けは堅調
- 電子部品・その他装置:数量 21.3(納入台数(台、推定))× 価格 12,367(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 5 億円。新規顧客を取り込む
- サービス(部品・改造・修理):数量 750(保守対象の装置(基、推定))× 価格 509(1基あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 38 億円・営業利益 9 億円。据え付け基数の増加
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 13.52 倍、時価総額 229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子部品向けの受注は足元で前期比4割増、水晶も1Q受注が大幅増と、需要は底を打った。ただし売上はまだ前年を割り、顧客の投資姿勢は慎重なので、楽観の手前を2割弱にした。
中立 38% 数量は横ばいで、物価分だけ売上が増える。利益率は山と谷の中間 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,373 円147 億円
水晶・光学・電子部品の台数は、10年でほぼ横ばいから1割増。人口でなく、スマートフォン・車載・通信の電子部品の数が支えるが、顧客の内製化と中国装置メーカーの追い上げが伸びを削る。
価格は物価並みに上がり、売上は130億円と今の1.4倍になる。本社費・研究費も物価で増えるので、営業利益率は10%、営業利益は13億円。
純利益は10億円。利益の半分を配当し、残りで余った現金が少しずつ積み上がる。会社が掲げるROE10%には届かず、7%前後にとどまる。
この筋書きは、10年を通して大きな事件が起きないことを前提にする。受注の山谷は途中にあるが、平均で見れば営業利益率は10%に落ち着く。顧客3社の関係は続き、中国の装置メーカーは汎用の用途で一部を奪うにとどまる。
- 水晶デバイス装置:数量 24.0(納入台数(台、推定))× 価格 17,588(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 11 億円。台数は横ばい、物価分だけ上がる
- 光学装置:数量 21.0(納入台数(台、推定))× 価格 14,851(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 5 億円。レンズ向けは横ばい
- 電子部品・その他装置:数量 18.7(納入台数(台、推定))× 価格 12,367(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。用途の広がりでわずかに増える
- サービス(部品・改造・修理):数量 660(保守対象の装置(基、推定))× 価格 509(1基あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 7 億円。基数の増加で小幅に増える
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は2.6〜15.3%で中央値は約11%。10年後の中立は10%と、この中央値の少し下に置いた。受注が前期比4割減った足元の弱さと、水晶の回復の強さが釣り合う。
やや悲観 27% 光学が顧客の内製化で細り、装置の利益率が薄くなる 利益 5 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 910 円56 億円
光学は、レンズメーカーが装置の内製や中国製への切り替えを進め、台数が4割減る。水晶は横ばいから1割減で、電子部品もほぼ横ばい。
装置の値引き競争で利益率が下がり、本社費は物価で増えるので、営業利益率は5%台まで落ちる。サービスは相対的に堅い。
営業利益は6億円、純利益は5億円。配当は利益に合わせて減り、余った現金の一部は事業の穴埋めに回って減る。
サービスは納入済みの装置を持つ限り残るが、新規装置の売上が細れば、その伸びも止まる。アルバックとの関係に変化はなく、現金の戻り方も弱いままだ。\この筋書きでも、会社は黒字を保つ。ただし、光学の落ち込みが大きく、水晶の回復も弱いため、ROEは3〜4%にとどまり、倍率は式の上限を大きく下回る。
- 水晶デバイス装置:数量 20.4(納入台数(台、推定))× 価格 17,588(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 36 億円・営業利益 9 億円。更新の先送り
- 光学装置:数量 12.6(納入台数(台、推定))× 価格 14,851(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。顧客の内製化と値引き
- 電子部品・その他装置:数量 15.3(納入台数(台、推定))× 価格 12,367(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。競争で利益率が低下
- サービス(部品・改造・修理):数量 570(保守対象の装置(基、推定))× 価格 509(1基あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 6 億円。基数は減らず堅い
倍率:事業の稼ぎ率は資本コスト8.25%を大きく下回るので、PERの上限は1÷k=11.4倍。その約75%(8.6倍)に置いた。余った現金は今の額の0.75倍(22.5億円)に減るとして足した。
確率:2023〜24年3月期に営業利益率が2.6%まで落ちた実績が近く、光学の受注は1年で9割減った。この1回きりと見ず、顧客の投資が慎重なままの筋書きを3割弱に置いた。
悲観 10% 中国勢に顧客を奪われ、装置の需要が半分に縮む 利益 −6 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 789 円49 億円
水晶・光学・電子部品のいずれでも、中国の装置メーカーが価格を崩して顧客を取る。主要3社の発注が減り、台数は4〜6割減る。受注はまとまらず、固定費が重く、赤字が続く。
人員を減らして本社費を削るが、営業利益は赤字となる。サービスは納入済みの装置の保守で黒字を保つ。
稼ぐ力が消えるので、価値は現金と売れる資産の税後で測る。少数株主は現金の使い方を決められず、戻り方は5割とみる。
谷が深くても会社が倒れないのは、現金が借金を大きく上回るためだ。ただし、その現金を事業の立て直しに使い切る可能性もあり、床の値は帳簿の現金を下回る。
- 水晶デバイス装置:数量 14.4(納入台数(台、推定))× 価格 15,750(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。価格が崩れ台数も減る
- 光学装置:数量 7.4(納入台数(台、推定))× 価格 13,300(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。主要顧客を失う
- 電子部品・その他装置:数量 10.2(納入台数(台、推定))× 価格 11,075(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。競争で採算割れ
- サービス(部品・改造・修理):数量 480(保守対象の装置(基、推定))× 価格 456(1基あたりの年間売上(万円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。保守は残る
倍率:稼ぐ力は消え、現金と売れる資産の税後が床になる。今の自己資本122億円に0.40倍を掛けた約49億円。内訳は床の資産の欄に書いた。
確率:電子部品の製造設備は中国の国産化が進んでおり、光学の主要顧客1社が22%を占める。顧客を失う構造的な負けは起こりうるが、サービスと現金が残るので、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水晶デバイス装置
水晶振動子・発振器の電極をつけ、周波数を合わせる真空成膜装置。大真空などの水晶メーカー向け。
| 数量納入台数(台、推定) | 価格1台あたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.0 | 13,125 | 32 | 9 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 17,588 | 42 | 11 |
取り方:開示は売上31.5億円(前期比2.1倍)。1台1.3億円前後と置き年24台と推定した(台数は開示なし)。営業利益は装置の事業利益16.6億円を、水晶28%・光学20%・電子部品19%の利益率で分けた推定。台数は水晶の需要で動き、価格は物価並みに上がる。
光学装置
レンズや光学部品に反射防止などの膜をつける装置。スマートフォンのカメラレンズ向けが中心で、Largan Precision向けが大きい。
| 数量納入台数(台、推定) | 価格1台あたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 11,083 | 23 | 5 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 14,851 | 31 | 5 |
取り方:開示は売上23.3億円(前期比-11%)、受注は2.7億円と前期比-90%。1台1.1億円前後、年21台と推定。利益率20%は装置全体の利益から割り振った推定で、台数がぶれると利益率も大きくぶれる。
電子部品・その他装置
電子部品、センサー、パワーデバイスなどの成膜装置。用途が広く、受注は前期比4割増。
| 数量納入台数(台、推定) | 価格1台あたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 9,229 | 16 | 3 |
| 10 年後 中立 | 18.7 | 12,367 | 23 | 4 |
取り方:開示は売上15.7億円、受注22.2億円(前期比+41%)、受注残14.3億円。1台0.9億円前後、年17台と推定。利益率19%は推定。
サービス(部品・改造・修理)
納めた装置の部品販売、改造工事、修理。景気の谷でも装置より落ちにくい。
| 数量保守対象の装置(基、推定) | 価格1基あたりの年間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 380 | 23 | 5 |
| 10 年後 中立 | 660 | 509 | 34 | 7 |
取り方:開示は売上22.8億円(セグメント利益5.3億円、利益率23%)。納入済みの装置を年600基前後と推定し、1基あたり年380万円とした。台数は据え付け装置の増加に連動し、価格は物価並み。
リスクと懸念
顧客3社への依存
Largan Precisionが売上の22%、大真空が16%、三生電子が15%で、3社で5割を超える。1社が装置の発注を内製や他社に切り替えれば、数量が一気に動く。
受注の山谷
受注は2026年3月期に前期比41%減り、光学は90%減った。営業利益率は2.6〜15.3%の間で動く。谷の年は固定費が重く、利益が2億円まで落ちた年(2024年3月期)がある。
中国の装置メーカーの追い上げ
電子部品や光学の製造拠点が集まる中国・台湾で、現地メーカーが低価格の成膜装置を伸ばす。主力の水晶・光学で価格を崩されれば、利益率と台数が同時に落ちる。
現金の使い道
純現金は55億円で時価総額の半分を占めるが、自社株買いはなく、10年でほぼ一貫して積み上がった。戻らなければ、現金の価値は額面を下回る。
アルバックとの関係
アルバックが議決権の21%を持つ。完全子会社化されれば買収価格に収れんし、重い資本政策が続けば少数株主の声は届きにくい。どちらの動きも読めない。
為替と海外
海外売上比率は48%。為替の影響は筋書きでは固定して扱うが、円高で台湾・中国向けの価格競争力が落ちる局面がある。
今後の分かれ目
- 光学の受注が前期並みに戻り、水晶と合わせた受注残が60億円を超えたら
- 装置の山入りとして、やや楽観の確率を厚くする。
- 上位3社への売上比率が6割を超え、または1社が発注を止めたら
- 数量の構造的な負けとして、悲観の確率を上げる。
- 自社株買いや特別配当で、余った現金を戻し始めたら
- 戻り方を1.0に引き上げ、中立の値を上げる。
- アルバックが株式の追加取得や公開買付けを発表したら
- 買収価格に収れんするため、筋書きを置き直す。
- 営業利益率が2期続けて6%を下回ったら
- やや悲観の確率を上げ、余った現金の額を下げる。
見ておくもの
- 水晶・光学・電子部品別の受注高と受注残
- 上位3社の売上比率
- 純現金と配当・自社株買い
- アルバックの持株比率の変化
- サービス売上の伸び
- 営業利益率(四半期ごと)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後のROEと資本コスト8.25%から、利益ベースで置いた。事業のROEは中立で7.6%と資本コストを下回るため、PERの上限は1÷k=11.4倍で、その8割(9.1倍)にした。今の株価や自己資本に対する倍率には寄せていない。営業利益率は過去12年の中央値(約11%)の少し下の10%。本社費は物価で増やした。減価償却は今の設備の取得原価のままで、新しい設備は年3億円台の投資にとどまる。余った現金は純現金55億円から事業に要る約25億円を引いた30億円で、戻り方は0.75。リースは小さく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.75 倍・やや楽観 PER 10.5→13.52 倍・中立 PER 9.1→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いている会社ではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。