結論
サムコは京都の半導体装置メーカーで、化合物半導体や光デバイス向けのエッチング(削る)と成膜の装置が主力だ。AI のデータセンターで使うレーザーが増え、受注残は 1 年で倍以上になった。営業利益率は 25% に乗り、無借金で財務も強い。
筆者の結論は、今の値段は割高だというものだ。事業は良い。だが売上は 100 億円規模の専業で、競合は Oxford Instruments や ULVAC など大きな会社だ。10 年後の中立の利益に妥当な倍率を掛け、割り引くと、今の時価総額の 5 割弱にとどまる。確率を掛けた価値では 4 割ほどになる。
成長の源は、光通信向けレーザー、SiC・GaN のパワー半導体、マイクロ LED、量子デバイスだ。どれも量産に入りつつあり、サムコは顧客と条件を詰める柔軟さで食い込んできた。会社は 2028/07 期に売上 180 億円を計画する。
ただ、この会社の強みは独占ではなく小回りである。シェアは 1 割に遠く、顧客の投資の波に利益が左右される。2017/07 期には赤字も出した。今の値段は、受注の勢いが長く続く前提まで買っている。安全域は見当たらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サムコは良い会社だが、払っていい値段の上限は低い。
オーナー利益は、営業利益の 7 割ほどが純利益になり、その大半を配当と研究開発・設備に回せる。新本社の投資が終われば、再投資の負担は軽い。利益の質は悪くない。
堀は、顧客と作り込んだ工程と、納入後の部品・保守だ。これは評価できる。だが他社がまねできない技術や、規制・ブランドの堀ではない。10 年後も今の利益率を守れると言い切れる根拠は弱い。わかりやすい事業とは言えず、確信は高くできない。
資本の使い方は堅実だ。借金をせず、買収で失敗する危険も小さい。経営者の判断を信頼してよい点は多い。
そのうえで値段が問題になる。中立の筋書きでも、10 年後の価値を今の値段まで戻すのに足りない。楽観の筋書きなら届くが、その確率は 1 割だ。安全域がない株を、筆者は持ち続けたいとは思わない。
何で稼ぐ会社か
サムコの稼ぎは、半導体チップの製造で使う装置を作って売ることだ。製品は 4 つに分かれる。エッチング装置が売上の約 6 割で、CVD(薄い膜をつける)装置が約 2 割、洗浄装置が 1 割弱。残りは納めた装置の部品と保守である。単一セグメントで、製造は協力会社に任せるファブライト型だ。
特徴は、前工程の大手が手がけないニッチを取っていることだ。化合物半導体、つまりシリコン以外の材料で作る半導体のエッチングが得意で、データセンター向けの半導体レーザー、パワー半導体、マイクロ LED、量子デバイスに使われる。用途別では化合物半導体と電子部品が各 3 割強で、シリコン半導体は 1 割に満たない。
営業は直販が基本で、顧客は大学や研究機関から量産の電子部品メーカーまで幅広い。1 社が売上の 1 割を超えることはない。海外は 4 割弱で、中期経営計画では 5 割以上を目指す。研究開発費は年 3 億円ほどで、2025/09 に先端技術開発棟ができた。新本社兼工場も 2029/07 に完成する予定で、増える需要に備えて建物と人を厚くしている最中だ。
優良さと弱いところ
サムコの強みは、新しい用途に素早く合わせる力だ。研究機関で試された条件が、そのまま量産機の標準になることが多い。顧客と一緒に工程を作るので、いったん採用されると入れ替えは簡単ではない。装置を納めたあとの部品・保守も、利益率の高い継続収益として積み上がる。
数字は良い。営業利益率は 25% で、10 年前は 1 割台だった。純現金があり、自己資本比率は 76%。借金に頼らずに成長している。
弱さもはっきりしている。まず規模だ。従業員は 191 名で、競合の Oxford Instruments や Plasma-Therm の売上は数倍ある。次に堀の浅さだ。ニッチな用途で強いだけで、シェアで他社を圧倒しているわけではない。量産が大きくなるほど、大手が同じ市場に降りてくる。
利益の振れも大きい。2017/07 期は赤字、2019/07 期は営業利益率が 6% に落ちた。今の高い利益率は、AI 光通信という追い風の中での値である。筆者が堀を普通とみる理由は、ここにある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は強い。AI のデータセンターは、サーバーをつなぐ光通信を 800G、1.6T と速くしている。この光を作るのが InP や GaAs のレーザーで、サムコのエッチング装置が使われる。SiC と GaN のパワー半導体は、電気自動車と電源の効率化で需要が続く。
市場の規模は、前工程の大手が相手にする量産のエッチング市場よりずっと小さい。筆者は、サムコが戦う化合物半導体・光・MEMS 向けのエッチングを 8 億ドルほどと見積もる。業界全体の半導体装置市場は 10 年で年 5〜7%、後工程や先端実装は年 8〜10% で伸びるという見方が標準で、この小さな市場はそれと同等以上に伸びると見る。
競争は厳しくなる。Oxford Instruments、Plasma-Therm、ULVAC がすでにいる。中国の装置メーカーも、国産化の流れの中で化合物半導体に降りてくる。半導体の投資は波があり、AI 向けの先読みが過ぎれば在庫調整の谷が来る。10 年を見るなら、波の山の利益をそのまま延ばしてはいけない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。25/7 期の配当性向は 28%、26/7 期は 27% と、3 割に届かない水準で増配を続けてきた。27/7 期の予想も増配基調だ。自社株買いはほとんどしない。
稼いだお金の使い道は、研究開発と設備だ。新本社兼工場に 15 億円、先端技術開発棟に 9 億円ほどをかける。生産は協力会社に任せ、組立は最大で今の 2 倍まで広げられるという。身軽な体制で、200 億円規模の売上までの目処が立ったと会社は話す。
M&A はほとんどしない。買収で成長を買う会社ではなく、技術を自分で積み上げる会社だ。時価総額が 600 億円規模なので、大手装置メーカーや投資ファンドの買収対象になる可能性は小さくない。ただ、確かめられる材料はない。株主構成の詳細は確かめられていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残は 1 年で倍になり、化合物半導体が最大の分野になった。会社は 2028/07 期に売上 180 億円、営業利益 48.8 億円を掲げ、その計画をすでに上方修正している。AI のデータセンター向け光通信は、速度が上がるたびにレーザーの数と加工の難度が増える。SiC・GaN のパワー半導体、マイクロ LED、量子デバイスも量産に入りつつあり、サムコの装置が使われる用途は増える一方だ。
強みは、顧客と一緒に条件を作り込む力だ。大手が見向きもしないニッチを取り、そこで標準機の地位を得ている。納入した装置が増えれば、部品・保守の継続収益も積み上がる。無借金で、生産は協力会社に任せる身軽な体制だから、需要が増えても大きな投資を要さない。
市場は小さい分、シェアが少し上がるだけで売上が大きく変わる。海外比率は 4 割弱から 6 割へ上がる計画で、まだ海外の開拓余地は大きい。10 年後に売上が 400 億円に届く筋書きは、十分に考えられる。
慎重な見方
今の値段は、AI 光通信の追い風が長く続く前提まで織り込んでいる。時価総額は 600 億円を超えるが、売上は 100 億円ほどで、営業利益は 23 億円だ。この利益が 10 年で 3 倍になっても、妥当な倍率を掛けると今の値段に届かない。
事業の弱さは小ささにある。競合の Oxford Instruments や Plasma-Therm は売上が数倍あり、ULVAC も参入している。中国の装置メーカーが化合物半導体に降りてくれば、価格で押される。シェアは 1 割に遠く、値決めの力は弱い。
利益の波も大きい。2017/07 期は赤字で、2019/07 期の営業利益率は 6% まで落ちた。今の 25% は、データセンター向けの特需の中での値だ。AI の投資が一服すれば、受注残は急にしぼみうる。新本社の減価償却と研究開発の固定費も、谷では重くなる。顧客の設備投資が止まれば、受注残の見かけの厚みは短い間に薄れる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と成長では強気の見方に分がある。しかし値段の議論では、慎重な見方が勝つ。中立でも 10 年後の価値は今の 5 割弱にとどまり、楽観の筋書きでも今の値段に並ぶ程度だ。確率は中立に最も重みを置き、需要の波と競合の厳しさを見て、やや悲観と悲観を合わせて 4 割弱にした。強気の筋書きは 3 割を超えるが、それでも結論は動かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/07 期)
確率で加重した株価時価総額 7,462 円599 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,188 円95 億円)。 今の値に割り戻すと 4,355 円350 億円、今との差 −38.7%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 15,691 円1,260 億円 | 1,855 円149 億円 | +147.1% | +9.5% | 1,755 円141 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,107 円972 億円 | 1,507 円121 億円 | +91.7% | +6.7% | 2,723 円219 億円 |
| 中立 | 32% | 9,037 円726 億円 | 1,307 円105 億円 | +45.7% | +3.8% | 3,310 円266 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,932 円155 億円 | 896 円72 億円 | −60.2% | −8.8% | 707 円57 億円 |
| 悲観 | 13% | 745 円60 億円 | 448 円36 億円 | −83.2% | −16.3% | 155 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,462 円599 億円 | 1,188 円95 億円 | +21.8% | +2.0% | 8,650 円695 億円 |
今の株価時価総額 7,100 円570 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 光通信とパワー半導体の波を取り切る 利益 71 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 15,691 円1,260 億円
データセンターの光通信は 800G から 1.6T へ進み、レーザー用 InP・GaAs の加工枚数が長く増える。SiC と GaN のパワー半導体、マイクロ LED、量子デバイスも量産に入り、化合物半導体向けのエッチング市場は実質で 2.2 倍に育つ。サムコは大口の量産ラインで標準機として選ばれ、シェアを 4.6% から 6% へ引き上げる。
海外比率は 6 割を超え、欧米・アジアの装置メーカーとも対等に戦う。装置が増えれば部品・メンテナンスも積み上がり、稼働台数は 3 倍超になる。生産は外部の協力会社に任せる身軽な体制のまま 400 億円規模まで回り、営業利益率は 27% に乗る。経営は配当を軸に安定した還元を続け、ためた現金も厚みを増す。
- エッチング装置(ICP・深掘り):数量 17.6(化合物半導体・光・MEMS・研究開発向け ICP エッチング市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 12(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 212 億円・営業利益 66 億円。市場 17.6 億ドル(実質)× シェア 6%
- CVD・洗浄装置:数量 19.8(特殊用途向けの成膜・ドライ洗浄装置市場(億ドル、実質))× 価格 4.42(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 87 億円・営業利益 21 億円。市場 19.75 億ドル(実質) × シェア 2.2%
- 部品・メンテナンス:数量 6.5(稼働している当社装置の台数(千台、推定))× 価格 91(1 台あたりの年間の部品・保守の購入額(万円、推定))→ 売上 59 億円・営業利益 25 億円。稼働 6,500 台
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.75 倍、時価総額 1,260 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI のデータセンター向けレーザーと SiC・GaN の需要が 10 年続き、しかも大手が入りにくい細かな用途でシェアを上げる必要がある。連続で当たる確率は高くないので 1 割。
やや楽観 20% 化合物半導体が主力として定着 利益 57 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 12,107 円972 億円
受注残は 26/7 期に倍増しており、中期経営計画の売上 180 億円は射程に入る。その後は化合物半導体と電子部品が主力として定着し、市場は実質で 2 倍に広がる。シェアは 5.5% まで上がるが、大手の追随で上昇は止まる。
営業利益率は 26% 台で安定する。装置の単価は物価並みに上がり、部品・メンテナンスは稼働台数の増加に連れて堅実に伸びる。海外比率は 5 割台に乗る。新本社工場が稼働し減価償却は増えるが、増収で吸収できる。大口の量産顧客が数社でき、サムコの名前が標準機として通るようになる。ただ、その先の上積みは大手との競争で限られる。
- エッチング装置(ICP・深掘り):数量 15.8(化合物半導体・光・MEMS・研究開発向け ICP エッチング市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 11(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 175 億円・営業利益 52 億円。市場 15.8 億ドル(実質) × シェア 5.5%
- CVD・洗浄装置:数量 17.5(特殊用途向けの成膜・ドライ洗浄装置市場(億ドル、実質))× 価格 4.02(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 70 億円・営業利益 16 億円。市場 17.5 億ドル(実質) × シェア 2.0%
- 部品・メンテナンス:数量 5.8(稼働している当社装置の台数(千台、推定))× 価格 91(1 台あたりの年間の部品・保守の購入額(万円、推定))→ 売上 53 億円・営業利益 22 億円。稼働 5,800 台
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.06 倍、時価総額 972 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画(2028/07 期 売上 180 億円)に近い成長が数年続き、その後は市場並みに落ち着くという、受注残と増産投資から見て筋の通った上振れ。
中立 32% 需要は伸びるが競争で利益率は 25% 前後に落ち着く 利益 45 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 9,037 円726 億円
化合物半導体・光・電子部品の市場は実質で 1.75 倍に広がる。サムコのシェアは 5% 前後で、大きくは動かない。ニッチな用途で顧客と一緒に条件を詰める強みは残るが、量産が大きくなるほど Oxford Instruments や ULVAC、中国の新興メーカーも本気で取りに来る。
営業利益率は中期計画の下限である 25% 前後に落ち着く。研究開発と新本社の減価償却が重くなり、規模が増えても利益率は上がらない。受注は波を打つが、AI 光通信と電子部品の底堅さで谷は浅い。還元は利益の 3 割前後で、残りは設備と研究に回る。
- エッチング装置(ICP・深掘り):数量 14.0(化合物半導体・光・MEMS・研究開発向け ICP エッチング市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 10(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 141 億円・営業利益 39 億円。市場 14.0 億ドル(実質) × シェア 5%
- CVD・洗浄装置:数量 16.0(特殊用途向けの成膜・ドライ洗浄装置市場(億ドル、実質))× 価格 3.62(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 58 億円・営業利益 12 億円。市場 16.0 億ドル(実質) × シェア 1.8%
- 部品・メンテナンス:数量 5.0(稼働している当社装置の台数(千台、推定))× 価格 91(1 台あたりの年間の部品・保守の購入額(万円、推定))→ 売上 45 億円・営業利益 18 億円。稼働 5,000 台
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.13 倍、時価総額 726 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の拡大は確かだが、大手や海外勢との競争もあり、サムコの強みがニッチに限られることから、中心の筋書きに最も重みを置いた。
やや悲観 25% 光の需要が一巡し競合に押される 利益 18 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 1,932 円155 億円
AI 向けの光デバイス投資が一巡し、受注の勢いが止まる。データセンターの投資が減速すれば、レーザー向け装置の受注は 2 年ほど落ち込む。そこへ海外の競合が値引きで入り、サムコのシェアは 3.8% に下がる。
市場そのものは実質で 1.4 倍にとどまる。営業利益率は 16% まで下がり、新本社の減価償却が重荷になる。稼働台数は増えるので部品・メンテナンスは底堅いが、利益の成長は止まる。配当は維持されるが、利益の伸びがない 10 年になる。今の高い利益率は一時の特需だったと市場が気づき、会社は次の成長の柱を探し続けることになる。
- エッチング装置(ICP・深掘り):数量 11.0(化合物半導体・光・MEMS・研究開発向け ICP エッチング市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 7.64(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 84 億円・営業利益 15 億円。市場 11.0 億ドル(実質) × シェア 3.8%
- CVD・洗浄装置:数量 13.0(特殊用途向けの成膜・ドライ洗浄装置市場(億ドル、実質))× 価格 2.81(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。市場 13.0 億ドル(実質) × シェア 1.4%
- 部品・メンテナンス:数量 3.6(稼働している当社装置の台数(千台、推定))× 価格 91(1 台あたりの年間の部品・保守の購入額(万円、推定))→ 売上 33 億円・営業利益 11 億円。稼働 3,600 台
倍率:ROE 7.1% が k 7.75% を下回り、ためた利益は額面未満。稼ぐ力(純利益 ÷ k)を上限とし、構造的に競争力が落ちた筋書きなので上限の約 7.5 割の 8.2 倍。
確率:ニッチ装置の会社で、需要の山のあとの谷と競合の追い上げは現実的に起こりやすい。2017/07 期には赤字の実績もあるので 2 割台半ばに置いた。
悲観 13% 技術と価格で負け、普通の小さな装置会社になる 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 745 円60 億円
中国の装置メーカーが化合物半導体のエッチングにも広がり、価格で押される。主要顧客の一社が自社内製や他社に切り替え、受注が急減する。サムコのシェアは 2.5% に下がる。
新本社と研究開発の固定費はすぐには減らせず、営業利益率は 4% まで落ちる。装置の更新が止まり、部品・メンテナンスも縮む。研究機関向けの小口が残るだけの、普通の小さな装置会社になる。米中の輸出管理が強まり、海外で売れる先が狭まることも重なる。化合物半導体のニッチで築いた顧客との関係も、価格で選ばれる市場では守りきれない。配当は減らされ、ためた現金が緩衝材になる。新本社の投資も回収できず、会社は規模を縮めて生き残りを図る。従業員の数も減り、技術の蓄積が細っていく。
- エッチング装置(ICP・深掘り):数量 9.2(化合物半導体・光・MEMS・研究開発向け ICP エッチング市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 5.03(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。市場 9.2 億ドル(実質) × シェア 2.5%
- CVD・洗浄装置:数量 10.8(特殊用途向けの成膜・ドライ洗浄装置市場(億ドル、実質))× 価格 2.01(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。市場 10.75 億ドル(実質) × シェア 1%
- 部品・メンテナンス:数量 2.8(稼働している当社装置の台数(千台、推定))× 価格 91(1 台あたりの年間の部品・保守の購入額(万円、推定))→ 売上 25 億円・営業利益 6 億円。稼働 2,800 台
倍率:ROE が 1% 台で稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 35 億円ほど。床は純現金+売れる資産の税後 60 億円とし、今の自己資本 136 億円に 0.44 を掛けた。市場の倍率からは置いていない。
確率:中国勢の国産化が化合物半導体の装置まで及び、大口顧客を失うと小さな専業は打撃が大きい。同時に新本社の固定費が残る複合の筋書きとして 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エッチング装置(ICP・深掘り)
化合物半導体・MEMS・光デバイス向けのドライエッチング装置。売上の約 6 割を占める主力。
| 数量化合物半導体・光・MEMS・研究開発向け ICP エッチング市場(億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 8.0 | 6.88 | 55 | 15 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 10 | 141 | 39 |
取り方:有報の製品別売上(エッチング 55.0 億円)を、ニッチ市場を 8 億ドルと推定して割り、シェア約 4.6% とした(市場は競合の Oxford Instruments・Plasma-Therm・ULVAC の売上規模と、大手前工程の量産エッチを除いた範囲から筆者が推定)。数量は実質の市場、物価の分は価格に入れた。 10 年の数量(中立は 8→14 億ドル)は物価を除いた実質で、名目では年 8.9%(後工程・先端の業界の見立て 8〜10% の範囲)。名目の伸びを数量に置いて価格にも物価を重ねてはいない。
CVD・洗浄装置
プラズマ CVD・ALD などの成膜装置と、ドライ洗浄装置。化合物半導体・電子部品向け。
| 数量特殊用途向けの成膜・ドライ洗浄装置市場(億ドル、実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 10.0 | 2.49 | 25 | 5 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 3.62 | 58 | 12 |
取り方:CVD 18.0 億円と洗浄 6.9 億円の合計 24.9 億円を、特殊用途の成膜・洗浄市場 10 億ドルと推定して割り、シェア約 1.7% とした。推定市場は筆者の見積もりで、開示はない。 10 年の数量(中立は 10→16 億ドル)は物価を除いた実質で、名目では年約 8%。
部品・メンテナンス
納入した装置の消耗部品・保守・改造。装置の稼働台数に連れて積み上がる継続収益。
| 数量稼働している当社装置の台数(千台、推定) | 価格1 台あたりの年間の部品・保守の購入額(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 2.0 | 68 | 14 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 91 | 45 | 18 |
取り方:1980 年に国産初のプラズマ CVD を出して以来の累計出荷と使用年数から稼働台数を約 2,000 台と推定。部品・メンテナンス 13.5 億円を割ると 1 台あたり年 68 万円。価格は物価並みに上がる。 10 年の稼働台数(中立は 2,000→5,000 台)は納めた装置の累計という実物の増加で、名目の市場の伸びではない。物価の分は年間の購入額に別に掛けている。
リスクと懸念
半導体投資の波
化合物半導体と光デバイスの需要は強いが、顧客の投資は波を打つ。AI のデータセンター投資が一服すれば、受注残は急にしぼみ、固定費が重くなる。2017/07 期は赤字、2019/07 期は営業利益率 6% まで落ちた実績がある。
大手・海外勢との競争
Oxford Instruments、Plasma-Therm、ULVAC などはサムコより規模が大きく、量産が大きくなるほど同じ市場に降りてくる。中国の装置メーカーも国産化の流れで化合物半導体に広がる。値引き競争になれば、25% の利益率は守りにくい。
顧客と用途の偏り
1 社が売上の 1 割を超えることはないが、売上は光通信向けのレーザーと電子部品に偏り始めている。この用途で技術の転換や在庫の調整が起きると、受注が同時に落ちる。
新本社と設備の固定費
新本社兼工場に 15 億円、先端技術開発棟に 9 億円ほどをかける。減価償却は完成後の数年で利益率を押し下げる。需要が谷に入った時に重荷になる。
海外展開の難しさ
海外比率を 4 割弱から 6 割へ上げる計画で、米中対立や輸出管理、関税の影響を受けやすくなる。装置は技術管理の対象になりやすく、販売先が制限される可能性がある。
倍率の縮み
利益が計画どおり伸びても、10 年後に倍率が高いままとは限らない。成長が普通の速さに戻れば、利益に付く倍率は下がり、株価の伸びは利益の伸びより小さくなる。
今後の分かれ目
- AI のデータセンター向け光通信の投資が、1.6T の次へ順調に続き、レーザー向け装置の受注が増え続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし今の値段は、その大半をすでに織り込んでいる。
- 受注高が前年を割り込み、受注残が縮み始めたら
- やや悲観側へ重みを移す。装置の売上は受注の 2〜3 期後に出るので、早めに見直す。
- 中国の装置メーカーが化合物半導体のエッチングで、サムコの主要顧客に採用されたら
- シェアの前提を下げ、悲観の確率を上げる。
- 海外比率が中期計画どおり 5 割を超え、欧米の量産顧客が増えたら
- シェアと利益率の上振れ余地が広がる。やや楽観の筋書きに近づく。
- 新本社の稼働後も営業利益率が 25% を保てたら
- 固定費の負担を吸収できているとみて、中立の利益率の前提を見直してよい。
- 大手装置メーカーや投資ファンドが買収を提案したら
- 事業価値と提示額を比べる。小さな専業で技術の買い手がつきやすい点は、悲観側の床を支える。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残
- 化合物半導体・電子部品の用途別売上
- 海外売上比率(計画 2028/07 期に 60%)
- 営業利益率と装置製造原価率
- 競合(Oxford Instruments・ULVAC・中国勢)の受注動向
倍率と資本コストの決め方
事業を製品別に市場規模(実質)× シェアと、納めた装置の台数 × 1 台あたりの部品・保守に分けて 10 年を積み、利益に式の正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g))の 8 割前後を当てた。k は 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%、堀は普通で残る割合 1/2、g は 4%。倍率は今の株価や過去・同業の PER・PBR から置いていない。悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力と、純現金+売れる資産の税後の床で置いた。純現金は時価総額の 6% で分けていない。リースは重要な契約なしで、新リース会計の影響は小さい。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない作りにした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→17.75 倍・やや楽観 PER 12.3→17.06 倍・中立 PER 11→16.13 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.0% = 8.5%。個別の懸念は k に足さず、筋書きと確率に入れた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。