結論
NITTOKU はコイルとモータをつくる機械の専業だ。銅線を巻く機械と、その前後の組み立て・検査をつなぐ生産ラインを、顧客の注文ごとにつくって売る。筆者の結論は「割高」である。直近の利益は、米国の防犯装備向けという一度きりの大口案件で押し上げられている。
足元の数字は輝いて見える。2026 年 3 月期の売上は 424 億円、営業利益は 54 億円で、どちらも過去最高だ。だが増収の大半は、米国向けの防犯グッズの巻線・組立ラインだ。顧客は実質 1 社で、翌期の会社計画では北中南米の売上が大きく減る。特需が始まる前の売上は、2018 年 3 月期から 2024 年 3 月期までほぼ横ばいだった。
本業の足腰は悪くない。巻線機は日本の 2 社が世界の過半を握るとされ、NITTOKU はその一角だ。ヒューマノイドやデータセンター向けのモータなど、新しい用途も見えてきた。ただ受注生産の設備は需要の波が大きく、中国勢が安い機械で迫っている。10 年後の中立でも、売上は物価の分だけ伸びる程度、と筆者は見る。
純現金は時価総額の 4 分の 1 ほどあり、財務は堅い。しかし顧客からの前受け金が現金の多くを占め、資本は十分には生かされていない。ROE は長く資本コストを下回ってきた。特需の山を見て高い値札をつけるのは危うい。
バリュー投資の観点から
筆者がこの会社を見る軸は三つだ。事業を理解できるか、資本の使い方は上手か、払う値段に安全域があるか。
事業は理解しやすい。巻線という一つの技術を半世紀磨き、世界で二強の一角まで来た。顧客の工場の中に入り込む提案型の営業も評価できる。ただ受注生産の設備は、顧客が投資を止めると売上が止まる。10 年後の利益を確信を持って言える事業ではなく、確信度は低めに置く。
資本の使い方は課題が多い。自己資本の厚みに対して稼ぎが小さく、ROE は長く資本コストを下回った。直近の利益の山は、1 社の大口顧客という幸運に近い。バリュー投資家は、こうした山の利益を永続するものとは見ない。
安全域は、純現金の厚みで一部は確保されている。しかし契約負債が現金の多くを占め、見かけほど自由に使えるお金ではない。今の値段は、特需後の利益が本業の延長で伸びることを前提にしており、その安全域は薄い、と筆者は見ている。
何で稼ぐ会社か
NITTOKU の稼ぎ方は「ラインビルダー」だ。モータやコイルをつくる顧客に、巻線の機械だけでなく、前後の搬送・組み立て・検査まで一本の生産ラインにして納める。1 ラインは数億円から、大きいもので 20 億円ほどになり、完全な受注生産だ。顧客ごとに仕様が違うため、競合にまねされにくい。
売上の 95% は巻線のライン(ワインディングシステム)と、巻線を含まない組立ライン(メカトロニクス)だ。残りは非接触 IC カードや FA 用タグの事業で、売上は 19 億円と小さいが利益率は高い。事業部は用途別に分かれ、モータ、スマートフォン向けコイル、応用技術(電池・太陽電池・カテーテルなど)、FA、半導体、保守サービスが並ぶ。
用途で最大なのは自動車で、機械売上の約 4 割を占める。次に目立つのが「その他」で、中身は米国向けの防犯グッズだ。米国のテーザー(電撃による非致死性の護身具)メーカー Axon の電極針カートリッジを、巻線から組み立てまで自動でつくる設備である。会社の資料に顧客名と製品名が出ている。
地域別では海外が約 6 割で、中国、米国、ベトナムに現地の法人を持つ。2026 年 4 月には子会社の日特コイデを吸収合併し、2025 年 12 月にはインドに合弁会社をつくった。保守・部品の売上は 44 億円あり、設備を納めたあとの継続収入にもなっている。
優良さと弱いところ
NITTOKU の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、細い銅線を傷めずに高精度で巻く技術と、顧客の工場の中に入り込む提案力にある。創業から半世紀、巻線機の専業として磨いてきた。防犯グッズの案件でも、競合や顧客の内製設備が基準に届かなかった巻線品質を、独自の整列巻線の工法で満たしたと会社は説明している。
世界の巻線機では、国内の小田原エンジニアリングと並んで二強とされる。ただ小田原エンジニアリングは車載の大型案件に強く、NITTOKU は小型精密と多用途に強い、という住み分けになっている。欧州のグローブ、中国の新興メーカーも競合だ。
弱みは三つある。一つ目は顧客の偏りで、防犯グッズは実質 1 社への依存だ。二つ目は利益の波で、大型案件の検収が一つずれるだけで利益が大きく動く。2025 年 3 月期の営業利益率は 3.4% まで落ち、翌期に 12.8% へ戻った。三つ目は資本効率で、ROE は過去 10 年の中央値が 7% ほどと、資本コストに届かない。
財務は堅い。自己資本比率は 64% で、純現金が 108 億円ある。ただ資本の厚さは強みであると同時に、資本を使いこなせていない証拠でもある、と筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
巻線機の世界市場は、日本経済新聞の推計で 2023 年に約 13 億ドル(約 2,000 億円)、2032 年に 25 億ドル規模へ広がる見通しだ。電動化でモータの数が増えるのが追い風になる。国内の二強で世界の過半を押さえるとされるが、中国勢が低価格で攻勢をかけている。
足元の需要は用途で明暗が分かれる。中国では車載のトラクションモータ向けが伸び、インドでは家電用モータのラインが増えた。一方で欧州は車の電動化投資が冷え込み、NITTOKU の欧州売上は 2026 年 3 月期に約半分になった。
次の芽として会社が挙げるのは、ヒューマノイドロボット用の小型モータ、AI データセンターの冷却用モータ、セラミックモータ、ペロブスカイト太陽電池向けの装置だ。どれも売上としてはまだ小さい。ヒューマノイドの市場が 2033 年までに 10 倍になるという予測を会社は示すが、量産がいつ立ち上がるかは読めない。
この業界は大型案件の波が大きい。小田原エンジニアリングの社長は、巻線機は 1 件 30 億円の案件もあり、売上になるまで長いと 3 年かかると語っている。受注残 205 億円は積み上がっているが、12 か月でみた受注÷売上は 0.91 まで下がっている。足元の受注はまだ強いとは言えない、と筆者は見る。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向 40% 以上だ。2026 年 3 月期は配当を前の期の 2 倍近くに増やし、期末配当の総額は 8.8 億円だった。2025 年 3 月期には自社株買いで株数を 18.07M 株から 16.87M 株へ約 7% 減らしており、資本が積み上がる体質を正す意思は見える。
中期経営計画は 2028 年 3 月期に売上 500 億円、営業利益 55 億円、ROE 9.3% を掲げる。会社の将来像は売上 1,000 億円で、きらりと光る技術を持つ会社を買収して統合する構想だ。ただ巻線機のような受注生産の専業が、買収で売上を倍にするのは難しい。直近 2 期の計画も、片方は未達だった。
2023 年 3 月末の大株主は信託口が上位で、SMC、安川電機、大黒電線も数%ずつ持つ。親会社は見当たらず、支配株主もいない。時価総額が小さく純現金が厚いので、買われる側になる可能性も残る。時価総額が小さく、純現金が厚いからだ。
還元の置き方:10 年の中立は純利益の合計の約 7 割を返す。配当性向 40% に、PBR が低い時の自社株買いを足した水準で、直近 2 期の実績の平均を下回る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
巻線機の世界で二強の一角という地位は、10 年で消えるものではない。電動化でモータの数は増え続け、巻線機の市場は 2032 年までに倍近くになるという予測がある。NITTOKU はその市場の中心にいる。
新しい需要の芽も具体的だ。ヒューマノイドロボット用の小型精密モータ、AI データセンターの冷却用モータ、セラミックモータは、どれも細い銅線を高い占積率で巻く技術が決め手になる。NITTOKU が最も得意な領域だ。中計はこれらでモータ事業の売上を 106 億円から 160 億円へ増やす計画だ。
防犯グッズの案件は、巻線品質で競合が基準を満たせなかった領域を、独自の工法で取った。顧客の信頼を得れば補充や増強、さらに別の製品へと広がる。Axon が掲げる銃の死亡事故を半減させる目標が続く限り、投資は続く可能性がある。
財務の面でも余裕がある。純現金 108 億円は、不況で受注が止まる期間も研究開発と人材を維持する力になる。PBR の低さを意識した株主還元の強化が進めば、ROE の改善で評価が見直される余地もある。
慎重な見方
今の利益の山は、1 社の大口案件でつくられている。防犯グッズの売上は約 90 億円と推定され、特需が始まる前の売上は、2018 年 3 月期の 307 億円から 2024 年 3 月期の 308 億円まで、6 年間動かなかった。物価が上がった分、実質では縮んでいる。
翌期の会社計画も、北中南米の売上は 118 億円から 81 億円へ減る。大口顧客は自社で設備を内製する力を持つ。巻線品質で今は優位でも、顧客が技術を吸収すれば発注は止まる。
中国の巻線機メーカーは、低価格で車載用モータの汎用ラインを取り始めた。日経も中国勢の価格攻勢を報じている。欧州の売上が 1 年で半減したことが示すように、車の電動化投資は一本調子ではない。
資本効率も悪い。ROE は過去 10 年の中央値で 7% 台と、資本コストを大きく下回る。純現金は厚いが、その大半は顧客からの前受け金で、本当の余剰ではない。ヒューマノイドやデータセンターの売上は、まだ計画の段階にすぎず、実績が伴っていない。中計の売上 1,000 億円という将来像も、買収が当たらなければ絵に終わる。
どちらに重みを置いたか
特需を除いた本業は、地位の固い優良な専業だと筆者は見る。だが今の値段は、防犯グッズという一度きりの山の利益が続くことを前提にしている。強気は新しい用途の立ち上がりを、慎重は顧客の偏りと中国勢の追い上げを突く。どちらの論拠も一部は事実だが、新用途にはまだ売上の実績がなく、本業の売上は特需の前に 6 年動かなかった。そこで確率は慎重な側にやや厚く置いた。中立でも利益は今とほぼ同じで、ROE は資本コストに届かない。本質価値は今の時価総額の 6 割強で、結論は割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,581 円436 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,318 円222 億円)。 今の値に割り戻すと 2,054 円347 億円、今との差 −21.3%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,553 円937 億円 | 2,168 円366 億円 | +195.7% | +11.5% | 772 円130 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,751 円633 億円 | 1,724 円291 億円 | +109.7% | +7.7% | 1,205 円203 億円 |
| 中立 | 34% | 2,591 円437 億円 | 1,398 円236 億円 | +52.8% | +4.3% | 1,356 円229 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,095 円185 億円 | 924 円156 億円 | −22.7% | −2.5% | 444 円75 億円 |
| 悲観 | 12% | 652 円110 億円 | 355 円60 億円 | −61.4% | −9.1% | 121 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,581 円436 億円 | 1,318 円222 億円 | +49.3% | +4.1% | 3,898 円658 億円 |
今の株価時価総額 2,611 円441 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% ヒューマノイドとデータセンターが開花し、売上が倍近くになる 利益 65 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 5,553 円937 億円
ヒューマノイドロボット用の小型精密モータ、AI データセンターの冷却ファン用モータ、セラミックモータの巻線・組立ラインが、10 年かけて次々に立ち上がる。中計が掲げる売上 500 億円を早めに超え、モータ事業が会社の柱になる。巻線は細い銅線の張力と整列の精度で品質が決まり、新しい小型モータでもこの技術は流用できる。同業の小田原エンジニアリングとは、車載で小田原、小型精密で NITTOKU という住み分けが進む。Axon 向けに続く大口案件が、別の顧客から出てくる。買収も一つ二つ当たり、売上は 700 億円台に乗る。自己資本は膨らまず、還元が厚いので資本効率は資本コストを上回る。
- 巻線・組立ライン(防犯除く):数量 457(巻線機と周辺ラインの世界市場(実質、億円)× シェア=当社の実質の取り分(今の値段基準))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 639 億円・営業利益 96 億円。実質年 3.8% 増、価格指数 140
- 防犯グッズ向けライン(Axon 社):数量 55.0(Axon 社向け設備の実質の受注額(億円、今の値段基準))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 77 億円・営業利益 15 億円。防犯は新規顧客で補充が続く
- RFID(IC カード・FA タグ・ペット用チップ):数量 28.5(当社の販売量(実質、億円。今の値段基準))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 40 億円・営業利益 9 億円。タグ・ペット向けが伸びる
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.42 倍、時価総額 937 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:複数の新市場(ヒューマノイド用モータ・データセンター用モータ・セラミックモータ)が同時に立ち上がり、買収も当たる必要がある。条件が多いので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 中計はおおむね実現し、巻線の専業として着実に伸びる 利益 49 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,751 円633 億円
中計の方向どおり、モータ・コイル向けの巻線ラインが着実に伸びる。ヒューマノイド用モータやデータセンター用モータは一部で売上になるが、会社が描くほど急ではない。スマートフォン向けコイルの装置は、受注の回復が続く。防犯グッズは大きな山を越えたあと、補充と新機種の投資で年 50 億円台に落ち着く。中国勢の安い巻線機は汎用品で勢いを増すが、高精度の巻線では差が残る。小田原エンジニアリングとの二強の構図も変わらない。営業利益率は 11% 前後で安定し、ROE は資本コストをわずかに上回る。売上は 600 億円台に乗るが、買収は小粒にとどまり、売上 1,000 億円の将来像は遠いままだ。
- 巻線・組立ライン(防犯除く):数量 394(巻線機と周辺ラインの世界市場(実質、億円)× シェア=当社の実質の取り分(今の値段基準))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 539 億円・営業利益 76 億円。実質年 2.3% 増、価格指数 137
- 防犯グッズ向けライン(Axon 社):数量 40.0(Axon 社向け設備の実質の受注額(億円、今の値段基準))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 55 億円・営業利益 10 億円。防犯は年 50 億円台
- RFID(IC カード・FA タグ・ペット用チップ):数量 24.7(当社の販売量(実質、億円。今の値段基準))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 34 億円・営業利益 7 億円。FA タグが伸びる
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.92 倍、時価総額 633 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の方向(モータ事業の拡大)に近い筋書き。ただし中計は直近 2 期のうち 1 期は未達で、防犯を除くと過去 8 年の本業の売上は横ばいだった。強気の根拠は薄く 2 割強にした。
中立 34% 防犯の特需が落ち着き、本業は物価並みに伸びる 利益 35 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,591 円437 億円
防犯グッズの特需は一巡し、Axon 向けは補充と増強の小さな案件になる。本業のモータ・コイル巻線ラインは、電動化と自動化の需要に支えられ、実質でゆるやかに伸びる。ただし中国勢の追い上げで、価格は物価並みに上げるのがやっとだ。営業利益率は 10% ほどで、近年の山である 13% 台には届かない。RFID は小さな利益源のままだ。自己資本が積み上がりやすい体質は残るが、配当性向 40% 以上の方針と自社株買いで、一定の圧縮は続く。ROE は 7% 前後で、資本コストには届かない。売上は 500 億円台に乗る程度で、中計の売上 1,000 億円という将来像には遠い。
- 巻線・組立ライン(防犯除く):数量 331(巻線機と周辺ラインの世界市場(実質、億円)× シェア=当社の実質の取り分(今の値段基準))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 443 億円・営業利益 58 億円。実質年 0.5% 増、価格指数 134
- 防犯グッズ向けライン(Axon 社):数量 30.0(Axon 社向け設備の実質の受注額(億円、今の値段基準))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。防犯は補充と増強のみ
- RFID(IC カード・FA タグ・ペット用チップ):数量 22.8(当社の販売量(実質、億円。今の値段基準))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 31 億円・営業利益 5 億円。物価並みに伸びる
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 424 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化・自動化の需要は続くが、中国勢の低価格と大型案件の波で伸びは物価並み。強気と慎重のどちらにも決め手がなく、最も厚く置いた。
やや悲観 22% 中国勢の低価格と大型案件の谷で、利益が薄くなる 利益 16 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,095 円185 億円
中国の巻線機メーカーが車載用モータの汎用ラインで受注を取り始め、日本勢の外需が痩せる。欧州の車の電動化投資は低迷が長引き、2026 年 3 月期に半減した欧州向けは戻らない。防犯グッズは補充だけになり、年 10 億円ほどに落ちる。ヒューマノイドやデータセンター向けのモータは、量産の立ち上がりが遅れて売上に届かない。大型案件は 1 件の検収が遅れるだけで利益が大きく振れ、固定費の重さが利益を削る。営業利益率は 6% 近くまで下がるが、赤字にはならない。ROE は 3% 台と資本コストを大きく下回り、純現金があっても資本は生かされない。還元は配当が中心で、自社株買いは減る。
- 巻線・組立ライン(防犯除く):数量 277(巻線機と周辺ラインの世界市場(実質、億円)× シェア=当社の実質の取り分(今の値段基準))× 価格 128(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 355 億円・営業利益 35 億円。実質年 −1.3% 減、価格指数 128
- 防犯グッズ向けライン(Axon 社):数量 12.0(Axon 社向け設備の実質の受注額(億円、今の値段基準))× 価格 128(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。防犯は補充のみ
- RFID(IC カード・FA タグ・ペット用チップ):数量 19.0(当社の販売量(実質、億円。今の値段基準))× 価格 128(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。ICカードの縮小が重い
倍率:ROE 3.3% が k 8.25% を大きく下回り、PER の上限は 1÷k = 11.1 倍。価格競争で稼ぐ力が落ちる筋書きなので、上限の 7 割強の 8.0 倍に置いた。
確率:中国勢の巻線機が価格で追い上げ、欧州の車向けの低迷が長引く筋書き。2018 年から 2024 年まで本業の売上が伸びなかった実績があり、起こりやすさは中立に近い。
悲観 12% 顧客が離れ、中国勢との値下げ競争に巻き込まれる 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 652 円110 億円
防犯グッズの顧客が巻線・組立ラインを内製化し、これまでの特需が消える。同時に中国のモータ製造会社が自国の装置メーカーに切り替え、NITTOKU の中国向けが崩れる。巻線は技術で守れていた領域だが、競合が作法を覚えて値段で戦うようになり、価格は物価に届かない。受注は先行きが読めず、固定費だけが残って営業赤字になる。新しい用途で補う前に、本業の顧客基盤が痩せていく。事業は残るが、もはや優良企業とは言えない。会社の価値は稼ぐ力ではなく、積み上げた純現金と売れる資産で測る局面になる。それでも蓄えが厚いので、存続に不安はない。
- 巻線・組立ライン(防犯除く):数量 205(巻線機と周辺ラインの世界市場(実質、億円)× シェア=当社の実質の取り分(今の値段基準))× 価格 115(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 235 億円・営業利益 9 億円。実質で 3 割強縮む、価格指数 115
- 防犯グッズ向けライン(Axon 社):数量 3.0(Axon 社向け設備の実質の受注額(億円、今の値段基準))× 価格 115(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。特需が消える
- RFID(IC カード・FA タグ・ペット用チップ):数量 15.2(当社の販売量(実質、億円。今の値段基準))× 価格 115(名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。縮小
倍率:稼ぐ力はほぼ消えるので、純現金と売れる資産の税後を床にした。約 110 億円で、今の自己資本 402.6 億円に対する倍率に直すと 0.27 倍。
確率:防犯の大口顧客が内製化し、同時に電動化投資の中国向けが崩れる構造的な負け。受注生産の専業で顧客が偏るので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
巻線・組立ライン(防犯除く)
モータ・コイル・電池・半導体向けの巻線機と、その前後の搬送・組み立て・検査を一本にした生産ラインの設計・製造・販売。保守・部品を含む。
| 数量巻線機と周辺ラインの世界市場(実質、億円)× シェア=当社の実質の取り分(今の値段基準) | 価格名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 315 | 100 | 315 | 41 |
| 10 年後 中立 | 331 | 134 | 443 | 58 |
取り方:連結売上 424 億円から防犯グッズ約 90 億円と RFID 19 億円を除いた約 315 億円。日経が示す世界の巻線機市場約 2,000 億円に組立・検査ラインを足して約 2,200 億円とみると、シェアは 14% ほどになる。営業利益は事業の利益 61.2 億円から防犯の推定約 20 億円を引いた約 41 億円(利益率 13%)。数量の伸びは業種ノートの受注(名目 3〜5%)を物価で割った実質で置いた。
防犯グッズ向けライン(Axon 社)
米国の電撃式護身具メーカー Axon 社のカートリッジ用電極針の巻線・組立設備。実質 1 社向けの大型案件。
| 数量Axon 社向け設備の実質の受注額(億円、今の値段基準) | 価格名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 100 | 90 | 20 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 134 | 40 | 7 |
取り方:開示がないため推定。個別の機械売上のうち「その他」(主に防犯グッズ)が 103 億円で、前期の 23 億円から 80 億円増えたこと、北中南米の売上の増加 88 億円から、約 90 億円とみた。利益率は、米国向けで価格転嫁とコスト削減が効いたと会社が説明していることから、22% とみた(推定)。会社の第 3 四半期時点の説明は、この特需が今期をピークとする見通し。
RFID(IC カード・FA タグ・ペット用チップ)
非接触 IC カード、FA 用タグ、ペット用マイクロチップとリーダーの製造販売。
| 数量当社の販売量(実質、億円。今の値段基準) | 価格名目の価格指数(今=100。物価 3% で 10 年 134) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.0 | 100 | 19 | 6 |
| 10 年後 中立 | 22.8 | 134 | 31 | 5 |
取り方:RFID 事業の売上 19.0 億円、営業利益 5.9 億円。IC カードは前期比 3.6% 減、FA タグは 139.6% 増(決算説明資料)。会社の 2027 年 3 月期見通しは営業利益 2.9 億円まで下がる。
リスクと懸念
1 社への依存と特需の反動
防犯グッズの売上は約 90 億円と推定され、顧客は実質 1 社だ。この案件は 2026 年 3 月期が山という報道があり、翌期の会社計画でも北中南米の売上は大きく減る。顧客が補充を止めたり内製化したりすれば、利益の柱が一度に抜ける。
受注生産の利益の波
1 ラインは数億円から 20 億円ほどで、検収が 1 件ずれるだけで四半期の利益が大きく振れる。2025 年 3 月期は営業利益率が 3.4% に落ち、翌期に 12.8% へ戻った。固定費が重く、売上が減ると利益はそれ以上に減る。
中国勢の価格攻勢
中国の巻線機メーカーは、低価格で車載用モータの汎用ラインを取り始めた。日本の二強は高精度で差を保つが、汎用に近い領域では値段で負けやすい。NITTOKU の中国売上は 75 億円で、現地の自国完結志向も強まっている。
車の電動化投資の減速
モビリティは機械売上の約 4 割を占める。欧州の売上は 2026 年 3 月期に約半分になり、車の電動化投資が鈍れば、モータ巻線の設備需要も細る。電動化から別の用途への切り替えが間に合わないリスクがある。
新市場が育たない
ヒューマノイド用モータ、データセンター用モータ、セラミックモータは、中計の成長の柱だが、量産の時期は読めない。モータ事業の売上を 106 億円から 160 億円へ増やす計画は、実績のない市場に大きく頼っている。
買収の失敗
会社は売上 1,000 億円の将来像に向けて、技術のある会社の買収を描く。受注生産の専業が異質な事業を買えば、統合に手間取り、のれんの減損が出る恐れがある。純現金が厚いぶん、判断が緩みやすい点にも注意が要る。
資本効率の低さ
ROE は過去 10 年の中央値で 7% ほどと、資本コストに届かない。契約負債を除けば本当の余剰は多くなく、自社株買いを増やす余地は見かけより小さい。中計の ROE 9.3% の達成は利益の増加に頼る部分が大きい。
今後の分かれ目
- 防犯グッズ向けの補充・増強の受注が、特需の山を越えても年 50 億円規模で続く
- 本業とは別の安定した利益源になり、中立の営業利益が 1 割ほど上振れる
- Axon 社が巻線・組立設備を内製化する、または別の装置メーカーに切り替える
- 防犯グッズの売上が消え、営業利益は 2026 年 3 月期の 4 割以下に落ちうる
- ヒューマノイド用モータやデータセンター用モータの量産が 2028 年までに立ち上がる
- モータ事業が中計どおり 160 億円に近づき、営業利益率は 12% を超えて定着しうる
- 中国勢が車載用モータの高精度ラインでも受注を取り、価格を引き下げる
- 外需のシェアが縮み、営業利益率は 6% 台まで下がる
- 買収に踏み出し、巻線と無関係な事業を買う
- のれんと統合の負担で資本効率が悪化する。技術が近い会社なら受注の厚みが増す
- 自社株買いと配当を総還元性向 100% 近くまで引き上げる
- 自己資本が膨らまず ROE が上がり、評価の見直しにつながりうる
見ておくもの
- 受注高と受注残(12 か月でみた受注÷売上の推移)
- 北中南米の売上と、防犯グッズ向けの追加受注の有無
- モータ事業部の売上(中計 160 億円に向けた進み具合)
- 欧州と中国の売上(車の電動化投資の戻り)
- 総還元性向と自社株買いの発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに、各筋書きの ROE と資本コスト 8.25%(基本 7.5% に品質 +1.5%)から式で置いた。楽観〜中立は上限の 8〜10 割、ROE が資本コスト以下の中立とやや悲観は 1÷k の 7〜8 割だ。数量は業種ノートの名目の受注の伸びを物価で割った実質で置き、防犯は推定で別の欄に分けた。純現金 108 億円は時価総額の 24% あるが、契約負債と受注残を支える運転資金で使われるとみて余った現金には分けず、理由は excess_cash_none_why に書いた。悲観は純現金と売れる資産の税後を床にした。今の PER・PBR や過去・同業の倍率は使っていない。リースの影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→14.42 倍・やや楽観 PER 11.2→12.92 倍・中立 PER 8.9→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.5% = 9.0%。防犯の大口顧客への偏りは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。