結論
マルマエは、半導体や液晶パネルの製造装置に使う真空部品を、金属やセラミックから削り出す会社だ。2025 年春に超高純度アルミの KM アルミニウムを買い、装置の部材から素材までを持つ二本立てになった。
筆者の結論は、今の値段は好況の利益を先まで引き延ばしたもので、10 年の本質価値は今の時価総額を大きく下回る、というものだ。足元の業績は確かに強い。2026 年 8 月期は、売上 200 億円、営業利益 41 億円の予想で、2 度上方修正された。だがその利益には、10 億円の補助金と、半導体の設備投資の上昇が乗っている。
過去 10 年の営業利益率は 3% から 27% まで振れた。赤字の期も 4 期ある。外注の加工会社は、好況でも値段を自分で決めにくい。買収で借入が増え、自己資本比率は 32% に下がった。
10 年の中立は、利益率が平常に戻る形で見る。事業は伸びるが、時価総額は今を下回る。会社が掲げる 2028 年 8 月期の営業利益 82 億円の計画が長く続く筋書きでも、それは楽観に近い。今の値段は、好況が続く前提をほぼ買っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは、10 年後もこの事業が今より強いかどうかだ。マルマエの事業は残る。半導体の装置は 10 年後も作られ、大型で高精度の部品は求められる。だが堀は深くない。設計と価格の主導権は顧客にある。
次に、株主のものになる利益を見る。外注の加工会社は、設備投資がいつも要る。減価償却は利益の半分近くに達する年もあり、見かけの営業利益より、手元に残る利益は小さい。好況の利益は特に割り引いて見るべきだ。
資本の使い方では、82 億円の買収が評価の分かれ目になる。素材から部材までを持つのは筋が通る。だが、のれんの重さと借入を抱えたまま、顧客の投資の谷を迎えるのは危うい。
安全域は薄い。中立でも 10 年後の時価総額は今に届かず、楽観に近い筋書きでようやく今の値段に並ぶ。今の値段は、好況が長く続く前提で成り立っている。筆者は、この値段に安全域を見いだせない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。一つは精密部品事業(マルマエ本体)で、半導体・FPD 製造装置の真空容器や電極など、大型で精度の高い部品を削り出す。2025 年 8 月期の売上は 77 億円で、利益の大半はここから出ている。技術の出発点はオートバイの部品加工だ。
もう一つは機能材料事業で、2025 年 4 月に買った KM アルミニウム(KMAC)が担う。エッチング装置向けの真空チャンバー、超高純度アルミのスパッタリングターゲット、電解コンデンサや HDD に使う高純度アルミ素材を作っている。買収の対価は約 82 億円、のれんは約 47 億円だった。2025 年 8 月期は 5 か月分だけ連結され、売上は 37 億円。2026 年 8 月期は通年で、売上 91 億円の予想だ。
この二つは、同じ顧客の同じ製造装置につながっている。マルマエは部品を削り、KMAC は素材から部材まで作る。2026 年 8 月期の予想は精密部品 109 億円、機能材料 91 億円で、半導体製造装置の回復を受け、顧客から増産の要請が来ている。会社は設備投資を前倒しする。
中期計画は Fusion2028。2028 年 8 月期の目標は、売上 250 億円・営業利益 56 億円で始まり、2026 年 8 月に売上 320 億円・営業利益 82 億円・ROIC(投下資本の収益率)25% へ引き上げた。
優良さと弱いところ
筆者は、マルマエを優良な加工会社と見るが、堀は深くないと考える。強みは、大型で精度の高い真空部品を削り出す加工の実績と、KMAC の素材から部材までの一貫体制だ。超高純度アルミは作れる会社が限られる。
弱みは、価格の主導権が顧客にあることだ。部品の設計は装置メーカーが決め、外注の加工は、調達先を替えられる。営業利益率は過去 10 年で 3% から 27% まで動いた。2024 年 8 月期は 3% まで落ち、2025 年 8 月期は 18% に戻った。外注先の利益率は、顧客の投資の波にそのまま揺られる。
財務は、買収で形が変わった。純有利子負債は 92 億円、自己資本比率は 32% だ。営業利益で支払利息を 19 倍まかなえる点は安心できるが、のれんの償却が毎年 3 億円ほど利益を削る。
資本効率は、過去 10 年の ROE の中央値が 15% で、悪くない。ただし好況の年に 25% まで上がり、不況の年は 0% まで落ちる。平均を見て評価すべき会社だ。人についての話は、確かめられたものがないので書かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
マルマエの需要は、半導体製造装置の市場の波にそのまま連動する。製造装置の市場は、AI 向けの投資を軸に拡大が続き、SEMI は 2026 年を前年比 9% 増の 1,352 億ドルと見ている。10 年の中立は、名目で年 5〜7% の成長だ。微細化の限界を、3D 化や先端パッケージングが補うので、数量は 10 年より先も伸びるとみる。
マルマエはその市場の、ごく小さな一部を担う。製造装置の売上のうち、真空部品の外注にあたる部分が取り分だ。2026 年 8 月期は、半導体工場の高稼働と製造装置の回復で、精密部品の受注が四半期で過去最高になった。KMAC のエッチング装置向けチャンバーも、顧客の在庫調整が終わって大増産に転じた。
ただし、波は消えていない。半導体の設備投資は、2009 年・2019 年・2023 年のように、前年比 4〜6 割減る谷が何度も来た。外注の加工会社は、谷で最初に値段を叩かれ、数量が落ちる。
構造の変化も気になる。中国の装置国産化が進めば、部品の調達も現地に移る。装置メーカーが主要部品を内製に戻す動きも、10 年の間に起こりうる。一方で、装置の大型化・複雑化は、高精度の加工品の価値を押し上げる。この綱引きが 10 年の分かれ目だ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。中期計画で、配当の下限と、性向 35% 以上の目標を示している。2026 年 8 月期の配当性向は 35.6%の予想で、前の期から大きく増やした。2026 年 4 月に 1 株を 2 株に分け、株主優待(QUO カード)も新設した。自社株買いは目立たない。
資本の使い方で大きな出来事は、2025 年 4 月の KM アルミニウムの買収だ。約 82 億円を借入中心でまかない、純有利子負債は 92 億円になった。買収で素材から部材までの一貫体制を得たが、のれん 47 億円は、顧客の需要が冷えれば減損の火種になる。
10 年の間に、同業の中小の加工会社をさらに買う可能性はある。一方で、時価総額が 600 億円弱と小さく、大手の部品会社や装置メーカーに買われる側になる可能性もある(kabufu の推計で、10 年以内の TOB・買収は 19% ほど)。筆者は、借入を返してからの次の買収判断を注意して見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体の設備投資は、AI を軸に長い上昇に入った。製造装置の市場は 10 年で実質 1.5 倍に広がる余地がある。マルマエは、顧客の増産要請に応えて設備を前倒しで増やせる数少ない外注先だ。大型で精度の高い真空部品の加工実績は、一朝一夕には作れない。
KMAC の買収も効く。エッチング装置向けのチャンバーは、素材から加工まで一貫で作れるので、顧客は調達先を一本化できる。超高純度アルミのターゲットは、先端ロジックとメモリで使う量が増える。中計の目標は、売上 320 億円・営業利益 82 億円・ROIC 25% まで引き上がった。会社自身が、需要が想定以上に急拡大していると見ている。
借入は、営業のキャッシュで早く返せる。配当性向 35% 以上の方針もあり、還元は積み上がる。小型株なので、一度でも顧客の大型案件を取れば、利益が跳ねる余地は大きい。
半導体の工場は、一度立ち上がると数年は部品を買い続ける。装置メーカーが増産を急ぐ局面では、納期と品質を守れる外注先に注文が集まる。マルマエはその局面にいる。買収した素材の側も、顧客の在庫調整が終われば量が一気に戻る。需要の勢いが続くなら、2 つの事業が同時に伸びる。
慎重な見方
利益の質が悪い。2026 年 8 月期の純利益 33 億円には、補助金 10 億円が乗っている。償却方法の変更で、営業利益も 0.7 億円押し上げられた。営業利益率は、過去 10 年で 3% から 27% まで動き、赤字の期が 4 期あった。好況の利益を、10 年先まで引き延ばして評価するのは危うい。
外注の加工会社は、値段を自分で決められない。装置メーカーが調達先を増やせば、単価は下がる。主要部品の内製化や、海外の加工会社の台頭も、10 年の間に起こりうる。
買収で借入が増え、自己資本比率は 32% に下がった。のれん 47 億円は、需要が冷えれば減損になる。半導体の設備投資は、2009 年・2019 年・2023 年に前年比 4〜6 割減った。谷が来れば、受注損失の引当も、在庫の評価損も一度に出る。
今の時価総額は、すでに会社の最も強い年の利益を前提にしている。10 年先を見れば、割引いても今の値段に届かない。
どちらに重みを置いたか
事業の強さと市場の追い風は、強気の見方に分がある。だが、利益率の振れ幅、顧客への依存、買収で増えた借入は、慎重な見方の指摘どおりだ。中立の 10 年後は今の時価総額の 8 割に届かず、楽観に近い筋書きでようやく並ぶ。確率は、楽観と悲観をほぼ対称に置いたうえで、顧客が価格を決める外注の構造と、のれんの重さから、悲観側をやや厚く(やや悲観 25%・悲観 13%)置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,809 円523 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 452 円131 億円)。 今の値に割り戻すと 997 円288 億円、今との差 −41.0%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,896 円1,126 億円 | 796 円230 億円 | +177.6% | +10.8% | 469 円136 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,869 円829 億円 | 657 円190 億円 | +108.6% | +7.6% | 776 円224 億円 |
| 中立 | 30% | 1,994 円576 億円 | 519 円150 億円 | +48.7% | +4.0% | 754 円218 億円 |
| やや悲観 | 25% | 670 円194 億円 | 242 円70 億円 | −46.0% | −6.0% | 228 円66 億円 |
| 悲観 | 13% | 173 円50 億円 | 86 円25 億円 | −84.6% | −17.1% | 34 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,809 円523 億円 | 452 円131 億円 | +33.8% | +3.0% | 2,261 円654 億円 |
今の株価時価総額 1,690 円489 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 好況が長引き、大型の真空部品と高純度素材で取り切る 利益 76 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,896 円1,126 億円
半導体の設備投資が AI 向けを軸に長い上昇局面に入り、製造装置の市場は 10 年で実質 1.5 倍を超える。マルマエは大型で高精度の真空部品の調達先として顧客の信頼を積み、装置メーカーの外注の中で取り分を 3 割増やす。
エッチング装置向けの真空チャンバーは、グループの素材から加工までの一貫体制が評価されて受注が広がる。超高純度アルミのターゲットも先端ロジック・メモリ向けで伸びる。営業利益率は精密部品で 30%、機能材料で 2 割に乗る。
買収で積んだのれんは償却しながら利益に吸収され、借入は早い段階で返し終わる。配当は純利益の 4 割近くを続け、増配を重ねる。10 年を通して好況の山が高く、谷が浅い、最もうまくいく筋書きだ。
- 精密部品(半導体・FPD 製造装置向けの真空部品):数量 1,815(世界の WFE(半導体製造装置)市場(億ドル、実質))× 価格 11.5%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 208 億円・営業利益 63 億円。WFE 実質 1.55 倍、調達シェア 3 割増、営業利益率 30%
- 機能材料:装置部材・ターゲット(KMAC):数量 1,815(世界の WFE 市場(億ドル、実質))× 価格 12.1%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 220 億円・営業利益 44 億円。シェア 5 割増、のれん償却後の利益率 20%
- 機能材料:基礎素材(高純度アルミ):数量 1,500(出荷量(トン、推定))× 価格 161(1 トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。出荷 1,500 トン横ばい、利益率 10%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.5% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.19 倍、時価総額 1,078 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の引き上げ(2028/08 期に売上 320 億円・営業利益 82 億円)を 10 年先まで保てるには、顧客の投資の波と買収の統合の両方がうまくいく必要がある。小型の外注加工会社で連続して成功する確度は高くないので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 市場の拡大にのって、取り分も少しずつ増える 利益 56 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 2,869 円829 億円
製造装置の市場は 10 年で実質 1.4 倍ほど伸びる。マルマエは顧客からの増産要請に応えて設備を前倒しで増やし、装置メーカーの外注の取り分を 2 割ほど広げる。
機能材料は、エッチング装置向けの真空チャンバーとターゲットの量が増える。営業利益率は精密部品で 27%、機能材料で 17% 台と、中計が描く水準に近づく。
途中に一度は在庫調整の谷が来るが、赤字には落ちない。借入は返済が進み、配当性向 35% 以上の方針も守られる。安定して伸びる、いちばん現実的な上振れだ。
素材の側も、エッチング装置の増産に合わせて部材の量が増える。のれんの償却は続くが、利益の伸びがそれを吸収する。10 年の終わりには、借入はほぼなくなり、財務は買収前の身軽さに戻る。
- 精密部品(半導体・FPD 製造装置向けの真空部品):数量 1,660(世界の WFE(半導体製造装置)市場(億ドル、実質))× 価格 10.6%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 176 億円・営業利益 48 億円。WFE 実質 1.42 倍、調達シェア 2 割増、利益率 27%
- 機能材料:装置部材・ターゲット(KMAC):数量 1,660(世界の WFE 市場(億ドル、実質))× 価格 10.9%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 181 億円・営業利益 32 億円。シェア 35% 増、利益率 17.5%
- 機能材料:基礎素材(高純度アルミ):数量 1,450(出荷量(トン、推定))× 価格 161(1 トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。出荷 1,450 トン、利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.2% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.15 倍、時価総額 792 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体投資の上昇が数年続き、設備投資が増えた分だけ受注が伸びる想定。会社の中計(2028/08 期に営業利益 82 億円)に近い道筋で、確度はそれなりにある。
中立 30% 中立:市場の成長に沿って伸び、利益率は平常に戻る 利益 42 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,994 円576 億円
製造装置の市場は実質 1.34 倍、物価を入れて名目 1.8 倍ほどになる。マルマエは大型品の加工で取り分を 1 割増やす。部材の機能材料は、チャンバーの量が市場並みに増え、のれんの償却を引いた後の利益率が 15% に落ち着く。
過去 10 年の営業利益率は 3% から 27% まで振れた。10 年の平均として置くのは、精密部品で 24%、全社で 18% ほどだ。好況の年の利益は残らない。
高純度アルミの基礎素材は、電解コンデンサと HDD 向けの数量がゆるやかに減り、値上げでそれを補う。借入は 5 年ほどで返し終わり、還元は純利益の 4 割弱になる。
- 精密部品(半導体・FPD 製造装置向けの真空部品):数量 1,570(世界の WFE(半導体製造装置)市場(億ドル、実質))× 価格 9.7%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 153 億円・営業利益 37 億円。WFE 実質 1.34 倍、調達シェア 1 割増、利益率 24%
- 機能材料:装置部材・ターゲット(KMAC):数量 1,570(世界の WFE 市場(億ドル、実質))× 価格 10.1%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 159 億円・営業利益 24 億円。シェア 25% 増、のれん償却後の利益率 15%
- 機能材料:基礎素材(高純度アルミ):数量 1,425(出荷量(トン、推定))× 価格 161(1 トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。出荷 1,425 トン(微減)、利益率 9%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.1% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.88 倍、時価総額 541 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:製造装置の市場が 10 年で名目 6% 前後の成長(業種ノートの中立)に沿い、マルマエが少しだけ取り分を増やす想定。好況の山の利益率は 10 年の平均には残らない。
やや悲観 25% 顧客の内製と値下げ圧力で、取り分と利益率が削られる 利益 16 億円 · PER 10.1 倍 · 株価時価総額 670 円194 億円
製造装置の市場は伸びるが、顧客が調達先を分散し、海外の加工会社も価格で攻める。マルマエの取り分は 5% 減り、値上げを通しにくくなる。
半導体の谷が 2 回来て、そのたびに受注損失引当金や在庫の評価損が出る。営業利益率は精密部品で 15%、機能材料で 8% まで下がる。
借入の返済は遅れ、新しい設備投資が追加で要る。配当は性向の方針を守るが、額は小さい。
事業は残るが、稼ぐ力は今の好況の半分以下に戻る。優良な外注先という評価は薄れ、利益は設備の入れ替えと人件費の上昇に食われる。のれんの償却も重いまま残り、増益に転じるきっかけが見つからない 10 年になる。
- 精密部品(半導体・FPD 製造装置向けの真空部品):数量 1,290(世界の WFE(半導体製造装置)市場(億ドル、実質))× 価格 8.4%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 108 億円・営業利益 16 億円。WFE 実質 1.1 倍、シェア 5% 減、利益率 15%
- 機能材料:装置部材・ターゲット(KMAC):数量 1,290(世界の WFE 市場(億ドル、実質))× 価格 7.7%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 99 億円・営業利益 8 億円。シェア 5% 減、利益率 8%
- 機能材料:基礎素材(高純度アルミ):数量 1,300(出荷量(トン、推定))× 価格 161(1 トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。出荷 1,300 トン、利益率 6%
倍率:ROE 8.2% が k 9.75% を下回るので PER の上限は 1÷k = 10.5 倍。稼ぐ力が細り、新しく投じるお金の稼ぎが k に届かない筋書きで、10.1 倍に置いた。
確率:大型の外注加工は、顧客が調達先を増やせば値段を決められる側に回りやすい。買収で背負った借入と、のれんの重さも利益を細らせる。上振れよりこちらの方がありそうだとみて、やや厚く置いた。
悲観 13% 構造的に負ける:顧客の内製と価格競争で赤字に沈み、のれんも減損する 利益 −8 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 173 円50 億円
顧客が大型の真空部品を内製化し、海外の加工会社が価格で攻める。マルマエの取り分は 25% 落ち、受注の単価も下がって、精密部品の営業利益率は 3% まで細る。
エッチング装置向けのチャンバーも調達先を替えられ、機能材料は赤字になる。買収ののれん 47 億円は減損に回る。
借入の返済のために投資を絞り、配当は最低限に落ちる。好況の初期に出した配当と返済は、その間にためた利益と手元の資金から払い、後半の赤字は資産の売却と借入の延長でしのぐ。残るのは設備と、すでにある高純度アルミの素材事業だけ。優良な外注先から、ただの加工会社へ評価が落ちる 10 年だ。
売上は今の水準にとどまり、人件費と設備の更新費だけが物価で増える。利益は出たり消えたりし、配当は細る。株主の取り分が、帳簿の資産を下回る評価で見られる局面だ。
- 精密部品(半導体・FPD 製造装置向けの真空部品):数量 1,170(世界の WFE(半導体製造装置)市場(億ドル、実質))× 価格 6.6%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 78 億円・営業利益 2 億円。WFE 実質横ばい、シェア 25% 減、利益率 3%
- 機能材料:装置部材・ターゲット(KMAC):数量 1,170(世界の WFE 市場(億ドル、実質))× 価格 5.7%(WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率)→ 売上 66 億円・営業利益 −1 億円。シェア 3 割減、赤字
- 機能材料:基礎素材(高純度アルミ):数量 1,100(出荷量(トン、推定))× 価格 161(1 トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。出荷 1,100 トン、利益率 3%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。のれんの減損を差し引いた後の床(floor_assets_oku)を、今の自己資本 82 億円 × 0.61 倍で表した。床は有形の資産の売却価値から置いた。
確率:顧客が主要部品を内製・海外移管し、同時に半導体の谷が深く長い時の筋書き。小型の外注加工会社は、一度取り分を失うと戻りにくい。起きる確率は低いが無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
精密部品(半導体・FPD 製造装置向けの真空部品)
製造装置の真空容器・電極など、大型で精度の高い部品を金属やセラミックから削り出す。マルマエ本体の事業。
| 数量世界の WFE(半導体製造装置)市場(億ドル、実質) | 価格WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1,170 | 6.6% | 77 | 18 |
| 10 年後 中立 | 1,570 | 9.7% | 153 | 37 |
取り方:2025 年 8 月期の精密部品の売上 77 億円(セグメント利益 18 億円)を、2025 年の WFE 市場 1,170 億ドル(業種ノート)で割り、当社の取り分とした。数量は WFE 市場(実質)、価格は取り分 × 150 円 × 物価の倍率の指数で、10 年の中立は取り分 1 割増 × 物価 1.34 倍。開示が無いので推定。
機能材料:装置部材・ターゲット(KMAC)
エッチング装置向けの真空チャンバー、超高純度アルミのスパッタリングターゲットなど、素材から加工まで一貫で供給する。
| 数量世界の WFE 市場(億ドル、実質) | 価格WFE 1 億ドルあたりの当社売上(億円)= 調達シェア × 150 円 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1,170 | 6.0% | 71 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,570 | 10.1% | 159 | 24 |
取り方:KMAC の 2025 年 8 月期(5 か月)の売上 37 億円を 12 か月に直すと約 89 億円。そのうち基礎素材を約 18 億円と推定し、残りの約 71 億円を装置部材・ターゲットとした。利益は 12 か月換算のセグメント利益(のれん償却を含む)約 9.4 億円を素材と分け、8.0 億円。内訳は開示が無く推定。
機能材料:基礎素材(高純度アルミ)
電解コンデンサ・HDD に使う高純度アルミ。数量はゆるやかに減る成熟した素材。
| 数量出荷量(トン、推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1,500 | 120 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,425 | 161 | 23 | 2 |
取り方:基礎素材の売上を約 18 億円と推定し、1 トン 120 万円として出荷量を約 1,500 トンとした(どちらも開示が無く推定)。数量は電解コンデンサ・HDD の需要減で 10 年に微減、価格は物価並みに上がる。
リスクと懸念
顧客の投資の波
半導体の設備投資は 2009 年・2019 年・2023 年のように、前年比 4〜6 割減る谷が何度も来た。外注の加工会社は谷で最初に数量と値段を削られる。2026 年 8 月期の予想は、その波の上り坂にある。
顧客の内製化・調達先の分散
部品の設計と価格の主導権は装置メーカーにある。主要部品の内製化や、海外の加工会社への切り替えが進めば、取り分と単価が同時に落ちる。顧客ごとの売上比率は確かめられなかった。
買収の重さ(借入とのれん)
KMAC の買収で純有利子負債は 92 億円、自己資本比率は 32% になった。のれん約 47 億円は毎年 3 億円ほど利益を削り、需要が冷えれば減損にもなる。
利益の質
2026 年 8 月期の純利益予想には、補助金 10 億円が入っている。償却方法の変更も営業利益を押し上げた。好況の利益と一過性を分けて見る必要がある。
中国の装置国産化
中国で製造装置の国産化が進めば、部品の調達も現地に移る。日本の外注先は、価格で攻められるか、受注そのものを失う。
設備投資と人手
顧客の増産に応えるため、設備投資を前倒しする。需要が想定を下回れば、償却と人件費の固定費が重くのしかかる。KMAC は人員確保も急いでいる。
今後の分かれ目
- 製造装置の市場の拡大が数年続き、中計の営業利益 82 億円に近づく
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。ただし利益率が 25% を超えて続くかは別に確かめる。
- 顧客の設備投資が前年を割り、受注が 2 四半期続けて落ちる
- やや悲観の筋書きに近づく。受注損失引当金と在庫の評価損の増え方を決算で確かめる。
- 顧客が大型部品の内製化や調達先の分散を打ち出す
- 取り分の前提を下げ、悲観の確率を上げる。
- KMAC の素材から部材までの一貫体制が、特定の顧客の新規の大型案件を取る
- 機能材料の利益率が 20% に近づく筋書きが現実味を帯びる。
- 借入が早く減り、自己資本比率が 40% を超える
- 財務の重さが和らぎ、debt の上乗せを見直せる。
- 同業の中小の加工会社をさらに買う、または大手に買われる
- 筋書きの数量と資本政策を見直す。買収のたびにのれんと借入の増え方を確かめる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高(精密部品・機能材料)と営業利益率
- 主要顧客の設備投資計画と製造装置の市場の動き
- 純有利子負債と自己資本比率、のれんの償却
- Fusion2028 の進捗と数値目標の改定
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに、製造装置の市場(実質)× 取り分で 10 年後の売上を積み、利益率は好況の山でなく 10 年の平均で置いた。k は基本 7.5% に quality 2.0% を足した 9.5%、g は 4.5%、残る割合は 1/2 で、中立は上限の 8.5 割(1÷k の下限をわずかに上回る)に置いた。今の株価や過去の PER・PBR を倍率の根拠にせず、今の株価に寄せて動かした所はない。悲観の床は有形の自己資本から出した。リース会計の影響は小さいとみて、形はそのまま。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14.19 倍・やや楽観 PER 11.7→14.15 倍・中立 PER 10.6→12.88 倍・やや悲観 PER 9.5→10.1 倍)。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 2.0% = 9.5%。顧客の主要部品の内製化や、のれんの減損は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.75%。