結論
ヒーハイストは、機械の部品をまっすぐ滑らかに動かす直動部品の専業メーカーだ。主力はリニアボールブッシュと、関節に使う球面軸受である。売上は16億円と小さい。
筆者の結論は、今の値段は大きく割高というものだ。会社は3期続けて赤字で、2026年3月期は減損を出して7億円の最終赤字になった。自己資本は21億円まで減った。それなのに時価総額は64億円ある。人型ロボット、つまりヒューマノイドの関節に球面軸受が使われるという期待が、値段を先に押し上げた。
期待そのものは否定しない。ただ、人型ロボットの部品は、THKや日本トムソンといった大手も狙う。売上の多くを2社の販売先に頼る小さな会社が、その市場の大きな部分を取るとは考えにくい。
10年後の売上は30億円前後、営業利益率は7%とみる。過去12年の最高の利益率9%に届かない水準だ。人型ロボットが大きく育つ筋書きを加えても、稼ぐ力から測った値段は今の時価総額を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヒーハイストは「物語が先に値段を付けた会社」だ。
10年後も存在するか。直動部品は工場とロボットに要り続けるので、おそらく残る。堀は広がるか。大手と同じ製品で戦い、販売先も2社に偏る。広がる根拠は乏しい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いて自由に使える利益は、今はマイナスだ。会社の予想どおり黒字に戻っても、年に1億円に届かない。
安全域はどうか。時価総額は自己資本の3倍だ。赤字の会社にこの値段を払うには、人型ロボットの部品で大きく勝つことが前提になる。その前提が外れた時の下値の支えは、帳簿の自己資本の一部しかない。
筆者は、物語の大きさと、会社が取れる分を分けて考える。市場が大きく育っても、取り分が小さければ株主の稼ぎは小さい。今の値段は、その取り分を大きく見すぎている。
何で稼ぐ会社か
ヒーハイストは、直動部品を軸にした小さな部品メーカーだ。直動機器、精密部品の加工、ユニット製品の3つで稼ぐ。
売上の6割強が直動機器だ。リニアボールブッシュは、軸の上を小さな玉が転がり、部品を軽い力で正確に滑らせる。半導体の製造装置、医療機器、工作機械の中で、ものを運び位置を決める所に使われる。球面軸受は、どの向きにも首を振れる関節の部品で、ロボットの腕や足に入る。
精密部品の加工は、顧客の図面どおりに金属を削る受託の仕事だ。ユニット製品は、直動部品を組み合わせた位置決め装置になる。
売り先は、装置メーカーや部品商社が中心で、主力の2社の注文の波が業績を大きく動かす。2026年3月期は、その2社の売上が減り、直動機器の注文の時期もずれた。
会社は今期、売上を21億円に戻し、小さな黒字を見込む。減損で償却が減ることと、人件費を抑えることが効く。
人型ロボットでは、京都の研究団体KyoHAに加わった。災害対応の大きなロボットは油圧で動き、特殊な軸受が要ると会社は説明する。ただ、その需要の大きさを示す数字はまだ出ていない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、まだ小さい。リニアボールブッシュも球面軸受も、THK、日本トムソン、ミスミといった大手が同じ製品を作る。ヒーハイストは小さな寸法や特注の品で生き残ってきた会社だ。
数字がそれを示す。営業利益率は過去12年で最高でも9%に届かず、3期続けて赤字だ。過去10年のROE(自己資本に対する純利益の割合)の中央は1%にも満たない。
弱点ははっきりしている。1つは販売先の集中で、主力2社の注文が減ると売上が3割落ちる。2つ目は規模で、売上16億円では原材料と物流の値上がりを吸収しきれない。3つ目は財務で、赤字と借入の増加で純負債は7億円になった。
中期経営計画の売上28億円の目標は大きく届かなかった。会社自身もそれを認めている。計画を立てる力と、それを実行する力の両方に疑問が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
直動部品の市場は、工場の自動化と半導体の投資に連動して伸びる。人手が足りない時代に、機械に正確な動きを持たせる部品は欠かせない。ただし景気の波が大きく、半導体の装置の投資が止まると注文は一気に減る。
世界の市場は大手が押さえる。直動案内ではTHKが世界の首位で、日本トムソンやドイツ・台湾の会社が続く。リニアボールブッシュは日本トムソンやミスミも作り、値段の比べられやすい部品だ。
新しい需要が人型ロボットだ。関節を動かす減速機、ねじ、軸受が1台に何十個も入る。テスラや中国の新興勢が量産を掲げ、部品の市場は大きく育つかもしれない。ただ、量産の部品は値段が厳しく、大手が規模で取りにいく。中国の部品メーカーも安い品を出す。
筆者は、人型ロボットの市場の伸び自体は認めつつ、小さな専業が取れる分は限られるとみる。数量は、今の谷から過去の水準へ戻り、そこから少し上積みする程度だ。
値段は物価並みに上がるとみる。ただし大手と比べられる汎用の品は、原材料の値上がりを転嫁しにくい。特注の品と小さな寸法の品で、どこまで値段を取れるかが利益率を決める。半導体の装置の投資は、AI向けのデータセンターで当面は強い。それが一巡した後の谷を、小さな会社がどう耐えるかも問われる。
資本政策と M&A
還元はほぼ止まっている。2026年3月期は無配で、今期は小さな配当を予定する。株主優待として、1,000株以上の株主にQUOカードPayを贈るが、費用は年に数百万円と小さい。
赤字が続き、借入で運転資金を賄った。純負債は7億円で、自己資本は21億円まで減った。成長のための投資を大きく増やす余力は乏しい。
中期経営計画「Hephaist Vision65」は今期が最終年度だが、目標は届かない。次の計画の公表は未定だ。
小さな技術の会社なので、大手の部品メーカーに買われる道はありうる。市場の推計では、10年でTOBや買収の確率が2割弱ある。ただし今の時価総額は、買い手にとっても高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ヒーハイストの球面軸受は、すでに人型ロボットの関節に使われている。人型ロボットは1台に何十個もの関節を持ち、量産が始まれば部品の数は桁が変わる。テスラや中国の新興勢が量産を掲げ、市場は10年で大きく育つ。
会社はKyoHAに加わり、災害対応の大きなロボットに向けた特殊な軸受も狙う。大手が手を出しにくい特注の品で、値段も取れる。
足元の赤字は一時的だ。主力2社の注文の時期がずれただけで、会社は今期の売上を3割近く戻すと見込む。減損で償却が減り、人件費も抑えた。半導体の製造装置向けの出荷も増えている。
売上16億円の会社にとって、人型ロボットの部品が年に数十億円になれば、利益は何倍にもなる。小さな会社だからこそ、大きな市場のわずかな取り分で姿が変わる。財務も、黒字に戻れば借入は減っていく。株価がすでに先を見ているのは、その変化の大きさを映したものだ。半導体の装置向けの出荷も増えており、人型ロボットだけに頼る話ではない。
慎重な見方
期待と実績の差が大きすぎる。会社は3期続けて赤字で、売上28億円の中期目標は大きく届かなかった。過去12年で営業利益率が9%を超えた年はない。
人型ロボットの部品は、大手が狙う市場だ。THKは直動部品の世界の首位で、日本トムソンやハーモニック・ドライブ・システムズも関節の部品を出す。中国の部品メーカーは安い品を量産する。量産が始まれば値段は厳しくなり、規模の小さな会社は不利だ。
販売先の偏りも重い。主力2社の注文が減っただけで、売上は3割落ちた。財務も細り、純負債7億円に対し自己資本は21億円だ。大きな設備投資をする余力はない。
時価総額64億円は、自己資本の3倍に当たる。黒字に戻っても純利益は1億円に届かない見込みで、その数十倍の値段を払う理由は乏しい。年初の高値から株価が大きく下げたのは、期待のはげ落ちの始まりにすぎない。物語の値段と、事業の値段は分けて考えるべきだ。人型ロボットの量産の時期も、まだ誰にも読めない。
どちらに重みを置いたか
人型ロボットの市場が育つという言い分は、筆者も否定しない。だが、その市場で小さな専業が大きな分け前を取るという言い分は弱い。12年の利益率の実績と、大手がいる競争の形が、慎重な見方を強くする。
確率は、中立の32%を中心に、販売先の偏りと財務の細さから悲観側をやや厚くした。人型ロボットの上振れの余地は認め、楽観にも1割を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 275 円17 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 45 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 142 円9 億円、今との差 −85.7%、 期待の年率 −10.7%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 991 円62 億円 | 144 円9 億円 | +14.2% | +1.3% | 113 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 415 円26 億円 | 80 円5 億円 | −50.2% | −6.7% | 99 円6 億円 |
| 中立 | 32% | 208 円13 億円 | 32 円2 億円 | −75.8% | −13.2% | 77 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 80 円5 億円 | 16 円1 億円 | −90.3% | −20.8% | 24 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 50 円3 億円 | 0 円0 億円 | −95.0% | −25.9% | 6 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 275 円17 億円 | 45 円3 億円 | −67.8% | −10.7% | 320 円20 億円 |
今の株価時価総額 994 円62 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 人型ロボットの関節で球面軸受が量産に乗る 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 991 円62 億円
人型ロボットの量産が始まり、関節の球面軸受の注文が桁違いに増える。特注の品で大手と差を付け、直動機器の個数は3倍を超える。単価は物価並みの1.35倍だ。
加工とユニットも、ロボットの部品の加工で1.5倍に伸びる。営業利益率は直動で14%、全社で13%に届く。過去の最高を大きく超える姿だ。
純利益は5億円を超える。財務は立ち直り、配当も戻る。10年で9億円ほどを配る。
それでも、量産の部品は値段が厳しい。大手と中国勢が並ぶ中で、ヒーハイストは特注と小さな寸法の品で生き残る。物語が当たっても、会社の規模は今の数倍にとどまる。
- 直動機器:数量 170(出荷個数(万個))× 価格 2,700(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。個数3.2倍・単価1.35倍・利益率14%
- 精密部品加工・ユニット:数量 1,700(受注件数(件))× 価格 67(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。件数1.47倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人型ロボットの量産が10年で本格化し、球面軸受が特注の品として選ばれ続ける必要がある。量産部品で大手に勝った実績はなく、1割にとどめた。
やや楽観 20% 半導体と人型ロボットで売上が倍に 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 415 円26 億円
半導体の製造装置の投資が続き、人型ロボットの部品も少しずつ増える。直動機器の個数は2倍、単価は1.34倍になる。
主力2社以外の販売先が育ち、注文の波は小さくなる。加工とユニットは1.3倍に伸びる。営業利益率は直動で10%、全社で9%強だ。過去の最高をわずかに超える。
純利益は2億円台。配当は性向3割で戻り、10年で優待を含め5億円ほどを配る。
人型ロボットは会社の看板になるが、売上の柱にはまだならない。規模の小ささは変わらず、原材料の値上がりには引き続き弱い。それでも、赤字の続いた時代からは抜け出す。
- 直動機器:数量 110(出荷個数(万個))× 価格 2,680(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。個数2.1倍・単価1.34倍・利益率10%
- 精密部品加工・ユニット:数量 1,500(受注件数(件))× 価格 67(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。件数1.3倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の製造装置と人型ロボットの両方で注文が増え、売上が過去の最高を超える必要がある。会社の今期予想は回復を示すが、中期目標は届かなかった。
中立 32% 谷から戻るが、小さな専業のまま 利益 1 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 208 円13 億円
主力2社の注文は戻り、半導体と医療の装置の部品が少しずつ増える。直動機器の個数は1.4倍、単価は物価並みの1.34倍だ。人型ロボットは試作と少量の注文にとどまる。
加工とユニットは1.2倍に伸びる。営業利益率は直動で7%、全社で6%台だ。過去12年の最高に届かない。減損で償却は一度軽くなるが、設備の更新は新しい値段で戻ってくる。
純利益は1億円強。配当は小さく、10年で優待を含め3億円ほどを配る。
ROEは4%台で、資本コストに届かない。会社は残るが、規模も稼ぎも今と大きくは変わらない。人型ロボットの物語は、看板として残るだけだ。
- 直動機器:数量 75.0(出荷個数(万個))× 価格 2,680(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。個数1.4倍・単価1.34倍・利益率7%
- 精密部品加工・ユニット:数量 1,350(受注件数(件))× 価格 67(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。件数1.17倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 13 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の利益率は-16%〜9%で、売上は20億円台が中心。谷から過去の水準へ戻り、少し上積みする姿が最も自然。
やや悲観 25% 黒字は細く、大手と中国勢に押される 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 80 円5 億円
主力2社の注文は戻りきらず、直動機器の個数は今とほぼ同じだ。人型ロボットの部品は、THKや中国の部品メーカーが量産で取る。単価は1.25倍にとどまる。
加工とユニットも横ばいだ。営業利益率は全社で2%に届かず、利益はほぼ残らない。原材料と人件費の値上がりを、値上げで取り戻せない。
配当はほとんど出せず、10年で優待を含め1億円ほどだ。
会社は小さな黒字と赤字を行き来する。借入は減らず、自己資本も伸びない。帳簿の自己資本の一部が、値段の支えになる。株主の稼ぎは、ほとんど生まれない。人型ロボットの部品は大手の量産品に置き換わり、ヒーハイストの名前は特注の小さな注文に残るだけになる。
- 直動機器:数量 55.0(出荷個数(万個))× 価格 2,500(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。個数1.04倍・単価1.25倍・利益率2%
- 精密部品加工・ユニット:数量 1,150(受注件数(件))× 価格 62(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。件数横ばい・単価1.24倍
倍率:ROEはほぼ0%で稼ぐ力では値が付かない。工場と在庫など売れる資産から借入を引いた床(約5億円)を、今の自己資本21億円に対する0.24倍で書いた。EV(時価総額+純負債7億円)÷営業利益は40倍を超え、利益の倍率では値が付かないことを裏づける。
確率:3期続けて赤字で、主力2社の注文の波は変わらない。人型ロボットの量産部品は大手と中国勢が取り、会社の取り分は小さい。起きやすい姿。
悲観 13% 赤字が続き、財務が立ち行かなくなる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 50 円3 億円
主力の販売先の1社が、内製や他社への切り替えに動く。直動機器の個数は2割減り、単価は1.15倍しか上がらない。人型ロボットの部品は取れない。
赤字が続き、借入はさらに増える。工場の設備も減損で削られる。会社は増資か資産の売却を迫られ、既存の株主の取り分は薄まる。
配当は出せず、還元は優待の分だけになる。
値段の床は、工場の土地と建物から借入を引いた残りになる。技術は大手の部品メーカーに安く買われるかもしれない。人型ロボットの物語は、株価から消える。既存の株主に残るのは、借入を返した後の工場の価値のわずかな分だけだ。
- 直動機器:数量 42.0(出荷個数(万個))× 価格 2,300(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。個数0.8倍・単価1.15倍・赤字
- 精密部品加工・ユニット:数量 1,000(受注件数(件))× 価格 58(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。件数0.87倍・単価1.16倍
倍率:赤字が続く筋書きで稼ぐ力では値が付かない。工場の土地・建物の税後から借入を引いた床(約3億円)を、今の自己資本21億円に対する0.15倍で書いた。
確率:主力2社の離反と量産部品の値下がりが重なる構造的な負け。すでに3期赤字で財務は細っており、悲観を同領域の会社より厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直動機器
リニアボールブッシュと球面軸受。半導体の製造装置、医療機器、工作機械、ロボットの関節に使う。
| 数量出荷個数(万個) | 価格1個あたりの平均価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53.0 | 2,000 | 11 | −2 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 2,680 | 20 | 1 |
取り方:2026年3月期の売上16.36億円から、精密部品加工3.45億円とユニット2.32億円(決算説明)を引いた10.6億円を、平均単価2千円で個数に直した推定(約53万個)。営業損失-2.6億円の配分は売上比の推定。
精密部品加工・ユニット
顧客の図面どおりに金属を削る受託加工と、直動部品を組み合わせた位置決め装置。
| 数量受注件数(件) | 価格1件あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,154 | 50 | 6 | −1 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 67 | 9 | 0 |
取り方:精密部品加工3.45億円とユニット2.32億円の合計5.77億円を、1件50万円で件数に直した推定。
リスクと懸念
販売先の集中
主力2社の注文が減っただけで、2026年3月期の売上は3割落ちた。どちらかが内製や他社への切り替えに動けば、黒字に戻る道筋が崩れる。
人型ロボットの部品で大手に負ける
THK、日本トムソン、中国の部品メーカーが量産の部品を狙う。量産が始まれば値段は厳しくなり、小さな専業の取り分は限られる。
財務の細り
3期の赤字と減損で自己資本は21億円に減り、純負債は7億円になった。赤字がもう1期続けば、借入の条件が厳しくなる。
半導体の投資の波
直動部品は半導体の製造装置に多く入る。装置の投資が止まると注文は一気に減り、固定費の重い小さな工場は赤字に落ちやすい。
原材料と物流の値上がり
鋼材と物流の費用が上がっても、大手と比べられる部品では値上げが通りにくい。2026年3月期の赤字の一因になった。
今後の分かれ目
- 人型ロボット向けの球面軸受が、年に数億円の売上として開示されたら
- 楽観・やや楽観の確率を厚くする。
- 2027年3月期に会社予想どおり黒字に戻り、翌期も続いたら
- 中立の利益率に近づくとみて、悲観の確率を下げる。
- 主力2社以外の販売先が売上の半分を超えたら
- 販売先の偏りが和らいだとみて、寿命の上乗せを下げる。
- 赤字が4期目に入り、増資や資産の売却に動いたら
- 悲観を厚くする。
- 大手部品メーカーによる買収の提案が出たら
- 技術の値段が付くとみて、楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- 人型ロボット向けの売上の開示
- 主力2社の注文の動き
- 営業利益率(黒字に戻るか)
- 純負債と自己資本の動き
- 次の中期経営計画の目標
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、直動機器の個数×単価と、加工・ユニットの件数×単価で10年後の利益を積んだ。中立は数量が今の谷から過去の水準へ戻る1.3〜1.4倍、単価は物価の1.34倍。営業利益率7%は過去12年の山8.6%の下。ROEが資本コストに届かないので、PERは1÷k(約10.5倍)を上限に、販売先の偏りと赤字の続く利益の質から約7割に置いた。人型ロボットの上振れは楽観で数量3倍に入れた。今の時価総額と比べたのは最後。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.12 倍・やや楽観 PER 8.4→10.81 倍・中立 PER 7.4→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。