結論
ヤマダコーポレーションは、圧縮空気で動くダイアフラムポンプの専業メーカーだ。売上は約 162 億円で、6 割強が海外。化学品、塗料、食品、半導体など、液体を送る現場で使われる。国内ではグリースガンなど自動車整備の機器も持つ。
筆者の結論は、事業の質は良いが、今の値段はほぼ妥当、というものだ。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を 1 割ほど下回る範囲に収まる。割高と言い切るほどではない。
強みは三つある。海外に広がる販売網、無借金に近い財務、そして増配を続ける姿勢だ。2026 年 3 月期は営業利益率が 16% と、過去の山に並んだ。自己資本比率は 86%、純現金は 40 億円ある。
気になる点も三つある。第一に、利益率が山の近くにあり、会社自身が今期の営業利益を 14% の水準へ下げる予想を出している。第二に、米国向けの比重が大きく、関税や景気の影響を受ける。第三に、国内の自動車整備機器が EV 化で細る。
10 年先の中立の営業利益は 36 億円ほどと、今より 3 割増える。数量の伸びはゆるやかで、物価の分が大きい。利益率は今より 1 ポイントほど低い 15% 台に置いた。
足元には、地味だが重要な点がある。2026 年 3 月期は、サイバー攻撃で基幹システムが 3 か月ほど止まったのに、売上も営業利益も過去最高だった。現場の粘り強さと、製品への根強い需要を示す。ただ、会社の今期予想は営業利益 23 億円と、今より 1 割以上低い。筆者は、この慎重な予想を、利益率が山にある証拠として重く見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヤマダコーポレーションは「良い中堅で、値段は妥当」の会社だと見る。世界で売れる製品、保守で積み上がる収益、堅い財務。この三つがそろう。
ただ、堀は大手に及ばない。同じ製品を持つ巨大企業が複数あり、価格や技術で上回られる可能性は常にある。利益率が山の近くにある点も、買う値段に安全域を求める理由になる。
資本の使い方は悪くない。利益の 3 割を配当に回し、残りは工場や在庫に使って、ROE は 10% 近くを保ってきた。事業に使い道がある限り、内部に置くのは理にかなう。純現金が増えていない点は、資金が眠っていない証拠だ。
一方、需要は工場の設備投資に左右され、米国の比重が大きい。為替は 150 円で固定して見ているが、関税が上がれば米国向けの利益は削られる。筆者は、事業は買えるが、今の値段で安全域は厚くないと見る。
長く持ちたいかと問われれば、ポンプ事業は持ちたい。ただ、利益率が山にある今の値段では、安全域が薄い。会社が利益率の山を超えて保てるという確証を示すまで、筆者は慎重に見る。経営者が資本をどう配分するかは、Phase II で確かめたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ダイアフラムポンプだ。膜(ダイアフラム)を空気の力で往復させ、液体を吸って押し出す仕組みで、電気を使わず、空運転や粘り気のある液、薬品にも強い。発売から 50 年を超えるロングセラーで、同社の中核製品になっている。
売上の内訳は、インダストリアル部門が 107 億円、オートモティブ部門が 36 億円、残りの 19 億円がサービス部品と修理だ。インダストリアルにはポンプのほか、局所排気装置や排気ガスの排出設備、ハイバキュームといった環境機器も含まれる。オートモティブは、グリースガン、潤滑機器、カーサービス機器などで、国内の整備工場向けが中心だ。
海外が売上の 63% を占める。米国が約 65 億円で最大、オランダが 18 億円、中国が 10 億円。米国は前期比 13% 増、オランダは 25% 増、中国は 31% 増と、どこも伸びた。拠点は日本、米国、欧州、上海、タイにあり、100 か国以上に製品を出している。
生産は神奈川県の相模原が中心だ。2021 年に新工場を完成させ、主力製品の生産能力を 1.5 倍にした。年に約 7 万台のポンプを作る。クリーンルームでは、半導体の製造に使う高性能なフッ素樹脂製ポンプも組み立てている。
2025 年度は、サイバー攻撃で基幹システムが約 3 か月止まった。それでも業務を続け、売上と営業利益は過去最高になった。中期経営計画の Phase I は 2027 年 3 月期が最終年度で、次の Phase II に移る。
収益のしくみも整理しておく。ポンプ本体を売る収益と、納入後の消耗部品や修理の収益がある。膜、ボール、シールなどは使えば減るので、納入台数が積み上がるほど、サービス部品の売上も積み上がる。本体は景気で波が出るが、サービス部品は台数に比例するため、波が小さい。同社の売上のうち約 12% が、この安定した部分にあたる。
研究開発では、2024 年にステンレス製の NDP-500BS を出した。効率を 18% 改善したと報じられており、化学や食品向けの需要を狙う製品だ。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、世界で使われる製品を持つ点にある。ダイアフラムポンプは、化学工場や塗装ラインなどで、止まらず確実に液体を送るという地味な仕事を担う。壊れやすい消耗部品があるため、サービス部品と修理の売上が積み上がる。
利益率は高い。営業利益率は 2015 年 3 月期の 14% から、2019 年 3 月期に 16%、2026 年 3 月期に 16% まで届いた。10 年の ROE の中央値は 9.8% で、機械メーカーとしては悪くない。
財務は堅い。自己資本比率は 86%、純現金は 40 億円、借金はほぼない。稼いだ利益の約 3 割を配当に回し、残りは事業に再投資している。純現金は 7 年前から 40 億円前後で増えておらず、利益は在庫、売掛金、工場に使われている。
弱点は、まず競合の強さだ。この市場は上位 5 社で世界の 55% 前後を占める集中市場で、グレイコ、ウィルデン(ドーバー傘下)、ARO(インガソール・ランド系)が大手だ。次に、為替と関税の影響を受ける。海外比率が高いので、ドルの動きと米国の通商政策が利益を揺らす。最後に、国内の自動車整備機器は EV 化で縮む。
利益率が山の近くにあることも、評価では割り引く。会社の今期予想は営業利益率 14%。今の水準を保つ前提は置かない。
経営の姿勢は着実だ。借金で拡大せず、利益を配当と設備、在庫に配分してきた。10 年の ROE は 7〜14% の幅で、平均して 10% 近い。創業家に近い株主が厚く、長い目で経営できる点は、強みにも弱みにもなる。短期の株価に流されないが、外からの規律も働きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
エア駆動ダイアフラムポンプの世界市場は、2025 年に 20 億ドル前後とされる。調査会社の推計では、年 5% ほどの名目成長が続く。ドルの値で、物価の上昇を含む数字だ。筆者は、物価の分を除いた実質の数量は 10 年で 1 割台半ばの伸びと見る。
需要の中心は化学、塗料、食品、医薬、鉱山、水処理だ。工場が増えるほど、また古い設備の更新が進むほど、ポンプは売れる。半導体では、薬液をきれいに送る樹脂製のポンプが育っている。同社が相模原のクリーンルームで組み立てているのが、この製品だ。
競合は大手が多い。米国のグレイコは 2025 年 3 月に、サンドパイパーと共同開発と共同販売で提携した。ウィルデンはドーバー傘下、ARO はインガソール・ランド系、ほかにウォーレン・ラップ、IDEX、ヴェルダーがある。同社は、日本発の専業という立場で、中堅の地位を保っている。
市場規模は調査会社で数億ドルの幅があり、地域別の数字も割れている。筆者の推定で、周辺の機器を含めた世界の市場を約 3,300 億円(22 億ドルを 150 円で換算)とした。同社のインダストリアル部門のシェアは約 3% だ。
業種の前提との違いにも触れておく。機械業種の水処理・ポンプの節は、栗田工業とオルガノの半導体向け超純水が主役で、当社の事業とは別物だ。使えるのは「半導体や化学の設備投資が景気で動く」という部分だけで、数量は世界の市場とシェアから積み上げた。国内の自動車整備機器は、EV 化で縮む前提を別に置いた。
国内の自動車整備の機器には、別の事情がある。国内の自動車の保有台数は横ばいだが、電気自動車はエンジンオイルを使わず、グリースを入れる箇所も少ない。整備の頻度が減れば、グリースガンや潤滑機器の需要も減る。筆者は、国内のオートモティブの数量が 10 年で 1 割ほど縮むと置く。
価格の面では、人件費と鋼材、樹脂が上がる。ポンプは専門品で、値上げが通りやすい面があるが、大手との競争で、全額は転嫁しにくい。
資本政策と M&A
資本政策は、増配を続ける穏当な形だ。配当性向は約 3 割で、増配を続けている。自社株買いの実績は大きくなく、利益の 7 割は会社に残る。ただ、残った資金は在庫・売掛金・工場に使われており、純現金は 40 億円前後で増えていない。現金がたまり続ける会社とは違う。
設備では、2021 年に相模原の新工場を完成させ、主力製品の生産能力を 1.5 倍にした。今後は、デジタルを使った生産性の向上を進める。次の中期経営計画 Phase II で、新しい投資の中身が示される見込みだ。
株主は、シャロン・ファイナンスが約 9%、創業家とみられる山田氏が個人で 8% と 5%、豊和が 7% と分散している。創業家に近い持ち分は合計で 2 割に迫るとみられるが、続柄などは確認できていないので書かない。
M&A は目立たない。10 年以内の TOB(株式公開買い付け)の確率は、統計の目安で 3 割ほどとされる。創業家と近い株主が厚く、時価総額も 170 億円と小さいので、友好的な形が考えやすい。
配当政策は、増配を続けることを重視している。2026 年 3 月期も増配を続けた。次の Phase II で、配当性向の目標や投資の枠が示されれば、資本の使い方の評価が変わる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ポンプは、世界の工場が増える限り売れる。化学、塗料、半導体と、液体を安全に送る現場は広がっている。同社は 2021 年に相模原の新工場を完成させ、主力製品の生産能力を 1.5 倍にした。その能力が、米国・欧州・中国の伸びを取り込む準備になる。
2026 年 3 月期は、米国が 13%、オランダが 25%、中国が 31% と、すべての海外地域が伸びた。サイバー攻撃で 3 か月システムが止まったのに、売上と営業利益は過去最高だった。これは、需要の強さと現場の力を示す。
利益の積み上がり方も良い。ポンプは納めたあと、膜やボールなどの消耗部品が繰り返し売れる。サービス部品の売上は 19 億円あり、景気の谷でも落ちにくい。増配を続けられるのも、この収益があるからだ。国内のオートモティブ事業が縮んでも、海外のポンプが穴を埋め、世界のトップブランドに近づく。
半導体向けの樹脂ポンプは、同社にとって新しい成長の芽だ。薬液を汚さず送る要求が高く、品質で選ばれる。クリーンルームの生産体制は整っている。世界の設備投資が続けば、数量が伸びる。
財務の余力も大きい。純現金は 40 億円で、借金はほぼない。必要なら新しい工場や買収に使える。小さな会社でも、投資を機動的に決められる強みがある。
慎重な見方
今の利益率は山の近くにある。2026 年 3 月期の営業利益率は 16% で、過去の最高圏だ。会社自身も、今期は 14% へ下げる予想を出した。米国の通商政策の変化や、円高が進めば、利益は簡単に落ちる。
競合は大手ばかりだ。グレイコは提携で製品群を広げ、ウィルデンやアローは世界の販売網で上回る。中国の安価なポンプも育っている。同社は 3% のシェアしかなく、価格を決める側ではない。
国内のオートモティブは EV 化で縮む。グリースを入れる箇所が減る電動車が増えれば、整備機器の需要も細る。売上の 2 割強を占める事業が、10 年で 1 割以上縮む可能性は高い。
最後に、為替と関税だ。海外が売上の 6 割強で、米国が最大の市場だ。関税の引き上げや、顧客の設備投資の先送りが重なれば、売上と利益は同時に落ちる。サイバー攻撃で見えたように、システムの弱さも課題だ。
システムの停止は、顧客に迷惑をかけただけではない。基幹システムの再構築には費用がかかり、取引先の信頼にも響く。再発の恐れが残る限り、評価は上がりにくい。
小さな時価総額と近い株主の厚さは、買収の期待にもなるが、流動性の低さにもなる。売買が薄く、外部から規律も働きにくい。
どちらに重みを置いたか
需要の底堅さと、保守が積み上がる収益には、強気の見方に説得力がある。ただ、利益率が山の近くにあり、競合が大手ぞろいで、国内の事業は縮む。筆者は、中立で利益率を 15% 台に置き、今の 16% からは下げた。確率は中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観側より厚くした。会社自身が今期の減益を見込んでいること、関税と為替の不確実さが残ることがその理由だ。悲観の確率は 1 割とした。需要が消えることはなく、財務も固いからだ。資産の厚さが悲観の床になるため、確率は慎重にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 13,598 円325 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,714 円65 億円)。 今の値に割り戻すと 8,315 円199 億円、今との差 +18.6%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 23,262 円557 億円 | 3,677 円88 億円 | +284.3% | +14.4% | 1,886 円45 億円 |
| やや楽観 | 20% | 19,186 円459 億円 | 3,259 円78 億円 | +220.2% | +12.3% | 4,489 円107 億円 |
| 中立 | 37% | 16,875 円404 億円 | 2,924 円70 億円 | +182.4% | +10.9% | 7,326 円175 億円 |
| やや悲観 | 26% | 6,160 円147 億円 | 2,298 円55 億円 | +20.7% | +1.9% | 2,199 円53 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,874 円69 億円 | 1,253 円30 億円 | −41.1% | −5.2% | 413 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 13,598 円325 億円 | 2,714 円65 億円 | +132.7% | +8.8% | 16,312 円390 億円 |
今の株価時価総額 7,010 円168 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 半導体・化学で受注が伸び、米国・欧州でシェアを上げて利益率が山を超える 利益 36 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 23,262 円557 億円
半導体と化学の工場投資が長く続き、ポンプの世界市場は実質で 3 割近く広がる。同社は相模原の増強した生産能力を生かし、米国と欧州でシェアを 3.5% 近くまで上げる。半導体向けのフッ素樹脂ポンプが育ち、単価の高い製品の比率が上がる。
サービス部品の売上も、納入台数に応じて増える。営業利益率は 17% 近くまで上がり、過去の山をわずかに超える。関税は一部を価格に転嫁できる。
配当は性向 3 割台前半で増え続け、中期経営計画 Phase II では、海外の生産拠点や買収にも資金を回す。ROE は 10% に届く。国内のオートモティブは縮むが、全体への影響は小さくなる。
配当の増加が続き、株主還元は厚くなる。この筋書きでも、大手との競争は続き、価格の主導権は握れない。数量と利益率が同時に伸びる点が、確率を低くする理由だ。
- ダイアフラムポンプ・産業機器(インダストリアル部門):数量 4,200(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 4.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 201 億円・営業利益 39 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 3.2% を基準に増減
- オートモティブ(グリース・整備機器):数量 480(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 9.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 47 億円・営業利益 4 億円。市場(実質)× シェア。EV 化で整備の需要が細る
- サービス部品・修理など:数量 450(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 6.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 29 億円・営業利益 5 億円。サービス部品・修理。納入した製品の台数に連動
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.14 倍、時価総額 540 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の設備投資の追い風、シェアの上積み、関税の影響の小ささが、そろって起きる筋書き。過去の利益率の山を超える必要があり、1 割を切る確率にとどめた。
やや楽観 20% 海外のポンプが着実に伸び、国内の縮みを補う 利益 30 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 19,186 円459 億円
世界のポンプ市場は、実質で 2 割ほど広がる。同社は米国と欧州で少しずつシェアを上げ、価格は物価を少し上回る。サービス部品は納入台数の増加とともに伸びる。
国内のオートモティブは、EV 化で 1 割弱縮むが、保守と更新の需要が下支えする。営業利益率は 15% 台後半で、今の山より少し低い。
配当は増配が続き、ROE は 9% に近い水準を保つ。関税の影響は一時的で、大きな反落にはならない。
半導体向けの樹脂ポンプは、少しずつ売上に貢献する。国内の自動車整備機器の縮みは続くが、サービス部品の売上が安定した下支えになる。関税の一部は価格に転嫁できる。純利益は 30 億円で、今の 1.7 倍になる。
- ダイアフラムポンプ・産業機器(インダストリアル部門):数量 4,000(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 4.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 181 億円・営業利益 33 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 3.2% を基準に増減
- オートモティブ(グリース・整備機器):数量 460(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 9.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。市場(実質)× シェア。EV 化で整備の需要が細る
- サービス部品・修理など:数量 435(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 6.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 28 億円・営業利益 5 億円。サービス部品・修理。納入した製品の台数に連動
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.55 倍、時価総額 436 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期は、米国・オランダ・中国のすべてが伸びた。この勢いが一部続く形は、すでに見えている。中立の次に起こりやすい筋書きとして厚めに置いた。
中立 37% ポンプは世界の成長にそって伸び、利益率は今より少し低い 15% 台 利益 26 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 16,875 円404 億円
世界のポンプ市場は実質で 15% ほど広がり、同社のシェアは今のまま。価格は物価並みに上がるが、人件費と原材料も同じだけ増える。国内のオートモティブは EV 化で 1 割縮む。
営業利益率は 15% 台。会社の今期予想(14%)と今の 16% の間だ。相模原の工場の償却費は今のまま続き、新しい投資の分だけ増える。純利益は 26 億円ほどで、今の 1.5 倍になる。
配当は性向 3 割程度で増え、自社株買いは大きくない。残った資金は在庫や設備に使われ、自己資本は 10 年でほぼ倍になる。事業の ROE は 8% 前後で、資本コストの近くに落ち着く。
サービス部品と修理の売上は、納入台数に応じて着実に増える。半導体向けの樹脂ポンプは伸びるが、全体を変えるほどではない。特別な事件はなく、「堅実な中堅」として 10 年が過ぎる。
- ダイアフラムポンプ・産業機器(インダストリアル部門):数量 3,800(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 4.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 165 億円・営業利益 30 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 3.2% を基準に増減
- オートモティブ(グリース・整備機器):数量 450(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 9.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。市場(実質)× シェア。EV 化で整備の需要が細る
- サービス部品・修理など:数量 420(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 6.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 27 億円・営業利益 4 億円。サービス部品・修理。納入した製品の台数に連動
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.16 倍、時価総額 374 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外のポンプは世界の成長に沿って伸び、国内の整備機器は細る。10 年の実績でも営業利益率は 9〜17% の帯にあり、帯の上のほうで安定する形を、最も起こりやすいとして最大の確率を置いた。
やや悲観 26% 関税と大手との競争で、利益率が 10% 台前半まで下がる 利益 15 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 6,160 円147 億円
米国の関税が上がり、同社は価格転嫁を一部しかできない。大手が価格を下げて対抗し、中国の安価なポンプも増える。世界の市場は伸びるが、同社の実質の売上は小さな伸びにとどまる。
国内のオートモティブは、EV 化で 2 割近く縮む。固定費が重く、営業利益率は 10% 台前半まで下がる。配当は据え置きに近いが、増配は止まる。
半導体向けは期待ほど伸びず、新しい投資の回収が遅れる。利益は今の 9 割ほどで、成長の物語はいったん途切れる。
海外の売上は、為替を 150 円で固定しても、価格の下押しで伸び悩む。サービス部品の売上は下支えになるが、全体を支えるには足りない。会社は黒字を保ち、無借金で続く。
- ダイアフラムポンプ・産業機器(インダストリアル部門):数量 3,450(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 4.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 142 億円・営業利益 19 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 3.2% を基準に増減
- オートモティブ(グリース・整備機器):数量 400(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 9.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。市場(実質)× シェア。EV 化で整備の需要が細る
- サービス部品・修理など:数量 380(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。サービス部品・修理。納入した製品の台数に連動
倍率:事業の ROE 5.2% が k 7.75% を下回り、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。関税と大手の価格攻勢で構造的に負けた筋書きで、利益の伸びも止まるため、上限の 64% に当たる 8.0 倍に置いた(中立の PER より低い)。
確率:会社自身が今期の減益を予想している。関税、円高、大手の価格攻勢、国内の縮小という複数の逆風は、いずれも起こりやすい。強気の筋書きより厚めに置いた。
悲観 10% 大手と中国勢に挟まれ、米国の需要も縮み、ポンプの値段が崩れる 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,874 円69 億円
米国向けが関税と景気後退で大きく落ち込む。大手が提携で製品群を広げ、価格を下げて対抗する。中国の安価なポンプが新興国で主流になり、同社のシェアは落ちる。
国内のオートモティブも 3 割近く縮み、固定費が重くのしかかる。営業利益は 6 億円ほどに落ち、減損も出る。配当は縮小する。
それでも財務は無借金に近く、会社は続く。純現金が価値の床になる。小さな時価総額と近い株主の厚さから、再編や非上場化の提案が出る可能性もある。
財務の厚みが、会社を守る。純現金は残り、配当は減るが続く。ただ、成長の物語は終わり、再編の対象として見られる可能性が高まる。創業家に近い株主が持ち続けるか、売るかが、価値を決める。
- ダイアフラムポンプ・産業機器(インダストリアル部門):数量 3,000(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 3.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 111 億円・営業利益 8 億円。市場(実質)× シェア。シェアは 3.2% を基準に増減
- オートモティブ(グリース・整備機器):数量 330(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 8.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 27 億円・営業利益 −1 億円。市場(実質)× シェア。EV 化で整備の需要が細る
- サービス部品・修理など:数量 330(該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質))× 価格 5.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。サービス部品・修理。納入した製品の台数に連動
倍率:悲観は床を稼ぐ力ではなく資産で測る。事業の純利益は 5 億円と小さく、PER では純現金を割る。今の自己資本 181 億円に掛ける形で、純現金と更新投資後の残りの評価に当たる 0.38 倍に置いた(中立の PBR より低い)。
確率:米国の関税、大手の値下げ、中国勢の台頭が重なる構造的な負けにあたる。需要が消えることはなく、財務も固いので、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ダイアフラムポンプ・産業機器(インダストリアル部門)
空気で動くダイアフラムポンプとピストンポンプ、排気・集じんなどの環境機器。化学・塗料・半導体向け。
| 数量該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,300 | 3.2% | 107 | 21 |
| 10 年後 中立 | 3,800 | 4.3% | 165 | 30 |
取り方:世界のエア駆動ダイアフラムポンプと周辺機器の市場を約 3,300 億円(22 億ドル × 150 円)と推定し、インダストリアル部門 107 億円からシェア約 3.2%。市場は調査会社で 19〜23 億ドルと幅があり、推定。事業ごとの利益は非開示で、利益率 20% は推定。
オートモティブ(グリース・整備機器)
グリースガン、潤滑機器、カーサービス機器。国内の整備工場向けが中心。
| 数量該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 7.3% | 36 | 3 |
| 10 年後 中立 | 450 | 9.7% | 44 | 3 |
取り方:自動車整備用のグリース・潤滑・カーサービス機器の市場を約 500 億円と推定し、売上 36.4 億円からシェア約 7%。推定。利益率 8% は推定。
サービス部品・修理など
納めたポンプの消耗部品、修理、保守。
| 数量該当市場(億円、今の値段・1 ドル 150 円で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 4.7% | 19 | 3 |
| 10 年後 中立 | 420 | 6.3% | 27 | 4 |
取り方:サービス部品・修理の市場を約 400 億円と推定し、売上 18.9 億円(総売上からの差)からシェア約 4.7%。推定。利益率 18% は推定。
リスクと懸念
米国の関税と景気
米国は売上の約 4 割を占める最大の市場だ。関税の引き上げや、顧客の設備投資の先送りが起きれば、売上と利益が同時に落ちる。米国で生産する選択肢は限られ、価格転嫁も一部にとどまりうる。米国の工場の設備投資の動きが、そのまま受注に出る。
大手との競争
グレイコ、ウィルデン、ARO など、同じ製品を持つ大手が世界の販売網で上回る。グレイコとサンドパイパーの提携のように、製品群を広げる動きも続く。中国の安価なポンプも、価格の下押しになる。価格交渉でも、大手は値下げで対抗できる体力がある。技術の面でも、省エネ型の電動ポンプとの競争が続く。
利益率の反落
営業利益率は 16% と過去の山に並ぶ。会社の今期予想は 14% だ。円高、原材料の上昇、人件費の増加が重なれば、利益率はさらに下がる。固定費の重い工場の稼働が落ちれば、下がり方は大きくなる。為替が円高に振れても、為替は 150 円と置いたため筋書きには入れていないが、実際の利益には効く。
自動車整備機器の縮小
国内のオートモティブ部門は、グリースを入れる箇所が少ない EV の普及で、需要が細る。売上の 2 割強を占め、会社の収益の安定に寄与してきた事業だけに、縮小の影響は小さくない。国内の整備工場の数も、人手不足で減っている。代替の製品に切り替える顧客も出る。
システムと事業継続
サイバー攻撃で基幹システムが約 3 か月止まった。業務は続けたが、再発すれば出荷の遅れや信用の低下につながる。再構築の費用も重い。取引先に対する信頼の回復には時間がかかる。取引先のシステムとつながる受発注の部分は、とくに影響が大きい。
半導体向けなど新規領域の不確実さ
クリーンルームで組み立てるフッ素樹脂ポンプなど、半導体向けは成長の期待が高い一方、競合は多く、顧客の設備投資の波も大きい。計画どおりに伸びなければ、投資の回収は遅れる。計画の遅れは、固定費の負担になる。需要の波は工場の稼働に直結する。
今後の分かれ目
- 米国向けの売上が関税の影響を受けても伸びを保ち、営業利益率が 16% を超えて続いたら
- 中立の利益率を引き上げ、楽観・やや楽観の確率を厚くする。
- 米国で関税が大幅に上がり、価格転嫁が進まなかったら
- 数量と利益率の前提を下げ、やや悲観側の確率を上げる。
- 中期経営計画 Phase II で、大型投資や買収が示されたら
- 資本の使い方を評価し直す。効率が高ければ倍率の前提を上げる。
- 半導体向けのポンプが大型の受注を獲得したら
- 数量の前提を上げる。クリーンルームの生産能力も確認する。
- 国内オートモティブの売上が 2 桁で減り始めたら
- 国内の数量の前提を下げ、固定費の負担を利益率に反映する。
- 創業家や近い株主、第三者による買収提案が出たら
- 小さな時価総額と安定株主の厚さが評価され、価格の交渉が価値を決める。
見ておくもの
- 米国・欧州・中国の地域別売上(四半期)
- 営業利益率と会社予想の修正
- 関税と為替の動き
- 中期経営計画 Phase II の中身
- オートモティブ部門の売上の推移
倍率と資本コストの決め方
ポンプ・オートモティブ・サービス部品の 3 つに分け、市場(実質)× 当社のシェア × 物価並みの価格で売上を積んだ。為替は 150 円で固定した。中立の営業利益率は直近の 16% より低い 15% 台に置き、過去 12 年の山(17%)を超えない。倍率は式(ROE が k のすぐ下なので上限は 1÷k)から、上限の 9 割前後で置き、今の株価や過去の倍率には寄せていない。減価償却は取得済みの設備ぶんを物価で増やさず、本社費は物価で増やした。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.76→15.14 倍・やや楽観 PER 12.06→14.55 倍・中立 PER 11.25→14.16 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。米国の関税や為替の不確実さ、サイバー攻撃の経験は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。