結論
日東工器は、空気や水、油の配管を工具なしでつなぐ「迅速流体継手」の会社だ。売上の 46% を占める主力で、そのほか電動工具、リニア駆動ポンプ、建築機器を持つ。売上は 273 億円。
筆者の結論は、事業の堅さと財務の厚さは評価できるが、稼ぐ力に比べて資本が大きすぎ、今の値段は割高に近い、というものだ。10 年後の中立の時価総額は今を下回り、確率で重みを付けた価値は今を 5 割ほど下回る。
足元は苦しい。2026 年 3 月期の営業利益は 12 億円と、前の期の半分になった。営業利益率は 4.3% で、2018 年 3 月期の 19% から大きく落ちた。新工場の立ち上げ費用と、赤字の 3 事業が重なったためだ。純利益は 21 億円だが、新工場の補助金 23 億円が入った一過性の増益である。ならした力は 15 億円ほどだ。
強みは二つある。主力の継手は営業利益率が 15% を超える。自己資本比率は 89%、純現金は時価総額の 4 割近い 118 億円。弱みは、その厚い資本が稼ぎを生まず、ROE が 3% 台にとどまることだ。
10 年の中立の営業利益率は 9% 台前半。主力が戻り、赤字事業が損益とんとんになる形で、過去の山の 19% には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い部品を持つが、資本を持て余す会社」だ。
主力の継手は、ワンタッチで外せる便利さと互換性を武器に、長く定番の地位を保つ。無借金で、環境が悪くても潰れにくい。この点は評価できる。
問題は資本の使い方だ。事業が必要とする資本は、会社が持つ自己資本の半分ほどに見える。残りは現金と上場株、新工場で、稼ぎを生みにくい。事業の ROE は 3〜4% で、資本コストの 7.75% に遠く及ばない。ためた利益は額面を下回る価値しか持たない。
経営は 4 事業のうち 3 つが赤字で、立て直しの実績が見えない。新工場に 60 億円を投じたのは、主力の継手の供給力のためか、赤字事業を残すためか、判断がつかない。
安全域は純現金と上場株で、時価総額の約 4 割ある。事業が崩れても、資産が価値を支える。ただ、稼ぐ力が上がらなければ、この資産は株主に戻ってこない。筆者は、割安というより、資産の安全域が厚いだけの会社と見る。
何で稼ぐ会社か
主力は迅速流体継手、通称「カプラ」だ。配管やホースを、工具を使わずワンタッチでつなぎ、外す部品である。空気・水・油の配管がある工場の設備、半導体の製造装置、自動車の生産ラインなどで使う。売上は 124 億円で、全体の約 46%、営業利益はこの事業だけで 20 億円を稼ぐ。
二つ目は機械工具で、売上 83 億円。建設・建築向けの電動工具が中心だ。足元では 6 億円の営業赤字に沈む。三つ目はリニア駆動ポンプで、売上 45 億円。欧州向けが伸びるが、タイバーツ高の仕入れ増で赤字だ。四つ目は建築機器で、売上 21 億円。資材高と人手不足で工事が遅れ、小さな赤字になっている。
海外売上は 35% で、製造の一部はタイにある。主な販売先は専門商社の山善で、売上の約 17% を占める。従業員は連結で約 1,030 人だ。
2025 年 7 月に、福島市に新工場(東北日東工器)が稼働した。白河の工場と医療機器の子会社を統合したもので、投資は約 60 億円。国の補助金を 23 億円受け取った。稼働の立ち上げで原価率が上がり、減価償却も増えた。
開発費は年 9 億円ほどで、ロボットやFA分野に使う工具の開発に力を入れている。
優良さと弱いところ
主力の継手は、日本では定番といえる地位を持つ。機器の設計段階で採用されると、配管の規格ごとに互換性があるため、取り替えが難しい。工場や装置メーカーとの付き合いも長い。この事業の営業利益率は、足元でも 15% を超える。
財務は極めて堅い。自己資本比率は 89%、現金同等物は 117 億円、借金はほとんどない。破綻の心配はなく、不況で受注が落ちても耐えられる。
ただし、資本の使い方は良くない。自己資本 609 億円に対して、純利益は 15〜20 億円しか稼げず、ROE は 3% 台にとどまる。現金は資産の約 2 割を占め、新工場に 60 億円を投じたが、赤字の 3 事業の立て直しには手が届いていない。
営業利益率は、2018 年 3 月期の 19% から 2026 年 3 月期の 4% まで 8 年続けて下がった。売上は 270〜290 億円の帯で動かず、成長は止まっている。
配当は連結配当性向 40% が目安で、2027 年 3 月期は減配の予定だ。自社株買いは開示されていない。市場の PBR が 0.5 倍の理由は、資本を持て余している点にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
迅速流体継手は、世界の製造業が自動化と省人化を進めるほど使われる部品だ。人手不足が続く日本では、設備の稼働を止めずに配管をつなぎ替える需要が増える。半導体の製造装置と自動車向けは低調だが、産業機械向けは堅調である。海外の大手や中国・韓国メーカーが競合に挙がり、汎用の低価格帯では価格競争が激しい。
業種のノートの前提とは違う点を確認しておきたい。機械の「機械要素部品・FA機器」の節は、軸受、減速機、空気圧機器が中心で、ロボットと自動車が主な需要先だ。当社の継手は空気圧機器に近いが、売上の 5 割強は電動工具、ポンプ、建築機器で、別の市場だ。使えるのは製造業の自動化投資の見通しだけで、数量は 4 事業ごとに分けて置いた。
電動工具は、建設・建築の需要と競合の多さで苦しい。リニア駆動ポンプは浄化槽や水槽向けの小型ポンプが中心で、欧州で伸びている。建築機器は住宅・ビル向けで、新築の減少が逆風だ。
原材料は鉄、ステンレス、真鍮、アルミ。タイの製造拠点があるため、バーツ高が仕入れ原価を押し上げる。
新用途として、データセンターの冷却など配管の脱着が増える分野が育てば、主力の継手に追い風になる。ただ、当社の売上にまだ現れていない。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向 40% が目安だ。2026 年 3 月期の連結配当性向は約 35%。2027 年 3 月期は利益の減少に合わせ、配当を減らす予定だ。自社株買いは開示がない。
中期経営計画 2026(2024 年 4 月〜2027 年 3 月)は、最終年度に売上 292 億円、営業利益 17.5 億円を目標にする。重点は、水素・新エネルギー関連、自動省力化、海外戦略。2026 年度中に中計 2029 を公表する予定だ。直近の営業利益 12 億円は、期初の目標 15 億円にも届かなかった。
新工場は福島市で、2025 年 7 月に稼働した。補助金の 23 億円は 2026 年 3 月期の利益に入った。この補助金は一過性で、10 年の力には含めない。
政策保有株は、上場分で約 33 億円と見られ、当期の売却はなかった。M&A は目立たず、新工場の統合が最近の大きな動きだ。
10 年以内の TOB の確率は、統計的な目安で 2 割強。純現金が時価総額の 4 割近くあり、買い手には資産の厚い会社に映る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
主力の継手は、工場の自動化と人手不足を背景に、需要が長く続く部品だ。当社は日本の定番で、機器に組み込まれると取り替えにくい。足元の営業利益の落ち込みは、新工場の立ち上げ費用という一過性が大きい。償却が一巡し、稼働率が上がれば、利益率は大きく戻る。過去には営業利益率が 17〜19% の時期が 5 年続いた。
赤字の 3 事業も、建築や建設の景気が戻れば損益とんとんに近づく。会社の中期計画では、2027 年 3 月期に営業利益 17.5 億円、2028 年 3 月期に 22 億円を目指している。
財務は無借金で、純現金と上場株が時価総額の 4 割ある。自己資本比率は 89% で、不況にも強い。PBR が 0.5 倍と低く、資産の厚さだけで値段が支えられる。配当性向 40% と自社株買いの余地もあり、資本の使い方が改まれば、見直される余地が大きい。主力の継手は、半導体や自動車が戻る局面で最初に数量が回復する部品でもある。
慎重な見方
利益が戻らない会社に、資産の厚さは意味がない。営業利益率は 2018 年 3 月期の 19% から 4% まで 8 年続けて下がった。これは一時的な不調ではなく、構造の問題である。売上は 270〜290 億円で動かず、成長は止まっている。
機械工具・ポンプ・建築機器の 3 事業は、そろって赤字だ。立て直しの実績はなく、新工場の 60 億円の投資は、むしろ負担を増やした。補助金の 23 億円で純利益が増えて見えるが、一過性にすぎない。期初の営業利益目標 15 億円にも届いていない。
自己資本の約半分は現金、上場株、新工場など、稼ぎを生みにくい資産だ。ROE は 3% 台で、資本コストにほど遠い。利益の 6 割を内部にためても、ためた資金の稼ぎは資本コストに届かず、時間がたつほど価値が薄まる。
主力の継手でも、中国・韓国勢の価格攻勢とバーツ高の仕入れ増が続く。物価上昇の分を売値に乗せ切れなければ、利益率はさらに下がる。
どちらに重みを置いたか
主力の継手の堅さと無借金には強気の見方に説得力がある。ただ、赤字事業を整理した実績がなく、資本を持て余す点は慎重な見方が強い。筆者は、10 年の中立の営業利益率を 9% 台に置いた。確率は中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観よりわずかに厚くした。悲観は 1 割にとどめるが、これは純現金と上場株が価値の床になるためだ。ROE が資本コストに届かないため、中立でも今の時価総額を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,928 円362 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 422 円79 億円)。 今の値に割り戻すと 1,255 円235 億円、今との差 −23.3%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,507 円658 億円 | 629 円118 億円 | +152.7% | +9.7% | 331 円62 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,765 円519 億円 | 522 円98 億円 | +100.8% | +7.2% | 657 円123 億円 |
| 中立 | 38% | 2,228 円418 億円 | 442 円83 億円 | +63.1% | +5.0% | 1,015 円190 億円 |
| やや悲観 | 24% | 747 円140 億円 | 325 円61 億円 | −34.5% | −4.1% | 257 円48 億円 |
| 悲観 | 10% | 682 円128 億円 | 213 円40 億円 | −45.3% | −5.9% | 90 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,928 円362 億円 | 422 円79 億円 | +43.5% | +3.7% | 2,350 円441 億円 |
今の株価時価総額 1,637 円307 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 液冷や半導体向けの継手が伸び、新工場の償却を吸収して利益率が 14% に届く 利益 44 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,507 円658 億円
半導体製造装置や自動車の工場設備、データセンターの冷却など、配管を素早くつなぐ需要が世界で広がる。主力の継手は市場が実質で 3 割広がり、当社のシェアも 1 割ほど上がる。新工場が軌道に乗り、減価償却を吸収して継手の利益率は 21% に戻る。機械工具・ポンプ・建築機器は赤字を脱して黒字を確保する。営業利益率は 14% 近くまで上がり、過去の山である 19% の手前に迫る。補助金の受け取りで築いた新工場の稼働率の高さが利益を押し上げる。売上は物価と数量の両方で伸び、全社の売上は 450 億円に近づく。補助金で整えた新工場の生産能力を使い切れる局面だ。現金が厚く、余った資金で自社株買いに踏み切る余地も生まれる。
- 迅速流体継手(カプラ):数量 3,120(工業用の小口径継手の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 238 億円・営業利益 50 億円。市場(実質)× シェア。迅速流体継手(カプラ)
- 機械工具:数量 1,500(国内の建設・建築向け電動工具の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 111 億円・営業利益 7 億円。市場(実質)× シェア。電動工具・機械工具
- リニア駆動ポンプ:数量 960(小型ポンプの国内外の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。市場(実質)× シェア。リニア駆動ポンプ
- 建築機器:数量 500(関連する建築機器の国内市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。市場(実質)× シェア。建築機器
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 658 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体と自動車向けの継手が低調な足元から、新用途が育って一気に伸びる筋書き。過去の山(営業利益率 19%)の手前でも実現には複数の追い風が重なる必要があり、1 割を切る確率にとどめた。
やや楽観 20% 主力の継手が着実に伸び、赤字の 3 事業の傷も浅くなる 利益 34 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,765 円519 億円
継手の市場は実質で 2 割強広がり、シェアは 4% ほど上がる。価格改定が定着して仕入れ価格の上昇を吸収し、継手の利益率は 19% に回復する。機械工具は固定費の整理で損益を黒字にし、ポンプと建築機器も小さな黒字に戻る。営業利益率は 11% 台まで上がる。会社の計画する 2028 年 3 月期の営業利益 22 億円を、10 年で大きく上回る形だ。赤字だった事業が黒字に戻ることで、全社の営業利益の足を引っ張る要因が消える。売上は 410 億円ほどに伸びる。現金の厚さを背景に、配当性向 40% の方針は守られる。
- 迅速流体継手(カプラ):数量 2,928(工業用の小口径継手の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 212 億円・営業利益 40 億円。市場(実質)× シェア。迅速流体継手(カプラ)
- 機械工具:数量 1,470(国内の建設・建築向け電動工具の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 107 億円・営業利益 4 億円。市場(実質)× シェア。電動工具・機械工具
- リニア駆動ポンプ:数量 920(小型ポンプの国内外の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 70 億円・営業利益 3 億円。市場(実質)× シェア。リニア駆動ポンプ
- 建築機器:数量 485(関連する建築機器の国内市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。市場(実質)× シェア。建築機器
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 519 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:主力の継手が市場の伸びを取り込み、新工場の立ち上げ費用が剥がれる筋書き。会社の中計の営業利益 17.5 億円や 2028 年 3 月期の予想 22 億円を超える水準で、強気寄りの 2 割とした。
中立 38% 継手は堅調、ほかの 3 事業は損益とんとんで、利益率は 9% 台に戻る 利益 27 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,228 円418 億円
継手の市場は人手不足と自動化投資で実質 15% ほど広がり、シェアは今のまま。価格は物価並みに上がる。継手の利益率は 17.5% に戻り、過去の 17〜19% の帯に近づく。機械工具は建設・建築向けの苦戦が続くが、固定費の整理で赤字は止まる。ポンプと建築機器も損益は小幅の黒字にとどまる。新工場の償却は 10 年の間に重さが薄れる。営業利益率は 9% 台前半で、全社の営業利益は 37 億円ほどになる。売上は物価の伸びを主に、390 億円ほどに増える。人件費と原材料の上昇は売値で吸収できる範囲にとどまる。特別な事件は起きず、現金は積み上がり、株主への還元は性向 4 割にとどまる。「堅実だが資本を生かし切れない会社」として 10 年が過ぎる。
- 迅速流体継手(カプラ):数量 2,760(工業用の小口径継手の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 192 億円・営業利益 34 億円。市場(実質)× シェア。迅速流体継手(カプラ)
- 機械工具:数量 1,455(国内の建設・建築向け電動工具の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 104 億円・営業利益 2 億円。市場(実質)× シェア。電動工具・機械工具
- リニア駆動ポンプ:数量 880(小型ポンプの国内外の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 67 億円・営業利益 1 億円。市場(実質)× シェア。リニア駆動ポンプ
- 建築機器:数量 475(関連する建築機器の国内市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。市場(実質)× シェア。建築機器
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 418 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:継手が堅調で、赤字の 3 事業が損益とんとんまで戻る筋書き。10 年の営業利益率は 9〜19% の帯で動いてきたが、足元が 4% 台まで下がった事実を踏まえ、中心を 9% 台に置いて最大の確率とした。
やや悲観 24% 赤字事業の整理が遅れ、新工場の償却が重くのしかかる 利益 15 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 747 円140 億円
機械工具は建設・建築向けの需要が戻らず、赤字が続く。ポンプは欧州向けが伸びても、タイバーツ高の仕入れ増で利益が出ない。建築機器も縮み、3 事業の赤字が主力の継手の利益を食う。継手の市場は実質で 8% 伸びるが、中国勢の価格攻勢でシェアは少し落ちる。営業利益率は 6% 台で、足元の 4% より少し高い程度にとどまる。新工場の償却が重く、減損の議論も出る。売上は物価の分だけ増えても、利益は伸びない。現金は厚いまま、使い道の乏しい状態が続く。経営は赤字事業の撤退を決めきれず、新工場の稼働率も思うように上がらない。結局、継手の稼ぎを他の事業が相殺する構図が10年続く。配当は維持されるが、現金の積み上がりを使う道が見えない。
- 迅速流体継手(カプラ):数量 2,592(工業用の小口径継手の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 168 億円・営業利益 24 億円。市場(実質)× シェア。迅速流体継手(カプラ)
- 機械工具:数量 1,380(国内の建設・建築向け電動工具の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 92 億円・営業利益 −2 億円。市場(実質)× シェア。電動工具・機械工具
- リニア駆動ポンプ:数量 800(小型ポンプの国内外の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 57 億円・営業利益 0 億円。市場(実質)× シェア。リニア駆動ポンプ
- 建築機器:数量 450(関連する建築機器の国内市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。市場(実質)× シェア。建築機器
倍率:ROE が k を大きく下回り、事業の稼ぐ力から置いた価値は小さい。悲観側の床は、手元の純現金 118 億円と上場株の税引き後に当たる売れる資産の合計で、これを今の自己資本 609 億円に対する 0.23 倍として置いた(新工場や赤字事業の減損を見込み、自己資本は今の水準に据える)。中立の PBR より低い。
確率:機械工具・ポンプ・建築機器の 3 事業が 3 期続けて赤字に沈み、立て直しの実績がない。新工場の償却が重い。強気の筋書きよりやや厚く置いた。
悲観 10% 継手でもシェアを削られ、新工場が重荷になって減損に追い込まれる 利益 5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 682 円128 億円
継手でも中国・韓国のメーカーが価格を下げて攻め、シェアが 1 割ほど落ちる。仕入れ価格の上昇と人件費も売値に乗せ切れず、継手の利益率は 9% に下がる。機械工具・ポンプ・建築機器の赤字は広がり、事業の整理と新工場の減損に追い込まれる。営業利益率は 2% 台まで下がり、配当は性向の目安を下回る。それでも現金は厚く、財務は傷まない。売上は 280 億円ほどに伸び悩み、規模の面でも事業の縮小が避けられない。事業ごとの撤退や統合が相次ぐ。新工場の固定費が重く、稼働を維持するための値引き受注が増えて、利益をさらに削る悪循環に入る。無借金と現金の厚さが、事業が崩れた場合の最後の支えになる。
- 迅速流体継手(カプラ):数量 2,400(工業用の小口径継手の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 137 億円・営業利益 12 億円。市場(実質)× シェア。迅速流体継手(カプラ)
- 機械工具:数量 1,275(国内の建設・建築向け電動工具の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 77 億円・営業利益 −4 億円。市場(実質)× シェア。電動工具・機械工具
- リニア駆動ポンプ:数量 760(小型ポンプの国内外の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年の中立は 1.34 倍))→ 売上 48 億円・営業利益 −1 億円。市場(実質)× シェア。リニア駆動ポンプ
- 建築機器:数量 425(関連する建築機器の国内市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。市場(実質)× シェア。建築機器
倍率:ROE が k を大きく下回り、事業の稼ぐ力から置いた価値は小さい。悲観側の床は、手元の純現金 118 億円と上場株の税引き後に当たる売れる資産の合計で、これを今の自己資本 609 億円に対する 0.21 倍として置いた(新工場や赤字事業の減損を見込み、自己資本は今の水準に据える)。中立の PBR より低い。
確率:継手の競合が価格攻勢をかけ、タイバーツ高の原価増も続く複合の筋書き。主力が崩れるのは起こりにくいが、無借金で現金が厚いため会社は残る。1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
迅速流体継手(カプラ)
空気・水・油の配管を工具なしでつなぐ継手。工場設備、半導体装置、自動車の生産ラインに使う。
| 数量工業用の小口径継手の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,400 | 5.2% | 124 | 20 |
| 10 年後 中立 | 2,760 | 6.9% | 192 | 34 |
取り方:売上と営業利益はセグメント開示。市場規模は開示がなく、工業用の小口径継手の国内外の市場を約 2,400 億円と推定し、当社のシェアは約 5.2%。推定値で幅は大きい。数量は実質、価格は物価の指数。
機械工具
建設・建築向けの電動工具、消耗品。
| 数量国内の建設・建築向け電動工具の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 5.5% | 83 | −6 |
| 10 年後 中立 | 1,455 | 7.2% | 104 | 2 |
取り方:売上と営業損益はセグメント開示。市場規模は開示がなく約 1,500 億円と推定し、当社のシェアは約 5.5%。競合が多く、価格は物価並みには上げにくいとして中立で 1.30 倍。
リニア駆動ポンプ
浄化槽や水槽向けの小型エアポンプ、医療用など。欧州向けが伸びる。
| 数量小型ポンプの国内外の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 物価の倍率。10 年の中立は 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 5.6% | 45 | −1 |
| 10 年後 中立 | 880 | 7.6% | 67 | 1 |
取り方:売上と営業損益はセグメント開示。市場規模は推定で約 800 億円、当社のシェアは約 5.6%。
建築機器
住宅・ビル向けの建築関連機器。
| 数量関連する建築機器の国内市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(シェア × 価格の指数。10 年の中立は 1.30 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 4.2% | 21 | −1 |
| 10 年後 中立 | 475 | 5.4% | 26 | 1 |
取り方:売上と営業損益はセグメント開示。市場規模は推定で約 500 億円、当社のシェアは約 4.2%。新築の減少で市場は縮む。
リスクと懸念
新工場の稼働と償却
福島市の新工場は投資 60 億円で、稼働の立ち上げ費用と減価償却が営業利益を圧迫した。稼働率が上がらなければ、減損の可能性もある。
赤字の 3 事業
機械工具、リニア駆動ポンプ、建築機器の 3 事業が赤字。建設・建築の需要が戻らなければ、立て直しの道筋が見えず、主力の継手の利益を食い続ける。
タイバーツ高と原材料
製造の一部はタイにあり、バーツ高は仕入れ原価を押し上げる。鉄、ステンレス、真鍮、アルミの高騰も売値に乗せ切れない期がある。
継手の競争
中国・韓国メーカーなどが低価格帯を攻める。標準品で価格を下げられると、主力の利益率が落ちる。
資本効率の低さ
自己資本の約半分が稼ぎを生まず、ROE は 3% 台。現金を使う道が見えなければ、価値は積み上がらず、割り引かれる。
販売先の偏り
山善が売上の約 17% を占める。商社の在庫調整や取引条件の変更が、売上に響く。
今後の分かれ目
- データセンターの冷却用など、新しい用途で継手の売上が目に見えて伸びたら
- 主力の数量を上方修正し、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 新工場の稼働率が上がり、営業利益率が 10% を超えたら
- 中計の目標に現実味が出る。中立の利益率を引き上げる。
- 赤字の 3 事業のうち、撤退や統合が決まったら
- 固定費の整理で利益率が改善する。やや悲観の確率を下げる。
- 新工場の減損が出たら
- 資本の使い方への懸念が強まり、悲観側の確率を上げる。
- 大規模な自社株買いや配当性向の引き上げが発表されたら
- 余った現金が株主に戻ると見て、余った現金の戻り方を 1.0 に近づける。
- 第三者による買収提案が出たら
- 純現金と上場株が評価されるため、買い手の条件次第で価値が大きく動く。
見ておくもの
- 迅速流体継手の売上と営業利益率(四半期)
- 機械工具・ポンプ・建築機器の営業損益
- 新工場の稼働率と減価償却費
- タイバーツと原材料価格
- 自社株買い・配当性向の方針(中計 2029)
倍率と資本コストの決め方
4 事業それぞれを、実質の市場規模 × シェアと物価並みの価格で売上に積み、利益率は主力の継手が過去の 17〜19% の帯、ほかの 3 事業は損益とんとんと置いた。市場とシェアは開示がなく推定。倍率は ROE が k を下回るので、1÷k に ROE÷k を掛けて目減りさせた。余った現金 65 億円は戻り方 0.5 で別に足した。今の株価や過去の倍率には寄せていない。賃借の影響は小さく、新リース会計基準による数字の形の変化は限られる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.13→13.79 倍・やや楽観 PER 7.14→13.79 倍・中立 PER 5.73→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。新工場の償却や赤字事業は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。