結論
木村化工機は、化学プラント向けの蒸発・蒸留装置を作り、原子力施設の専用機器も手がける会社だ。工場や発電所に納める機械を、注文を受けてから設計して作る。
筆者の結論は、事業は堅いが受注の山が過ぎつつあり、今の値段はほぼ適正、というものだ。確率で重みを付けた10年後の価値は、今の時価総額を1割ほど上回るにとどまる。
2026年3月期は、営業利益が30億円と高水準を保った。稼ぎ頭はエネルギー・環境事業(原子力関連)で、売上は2割近く伸び、利益は5割増えた。全体の利益の半分以上をここで稼いでいる。
ただし、先行きは慎重だ。2026年3月期の受注は13%減り、受注残も13%減った。会社は2027年3月期を、売上11%減、営業利益13%減と見る。中期経営計画の最終年度の目標(売上300億円)は届かない見通しだ。
救いは財務である。現金は93億円、有利子負債は約14億円で、純現金は時価総額の3割強に当たる。還元も、DOEと配当性向の下限を決め、自社株買いも始めた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味で堅い受注型の会社が、純現金を抱えて淡々と稼ぐ」姿に見える。借金はなく、赤字もなく、利益率は上がってきた。
気になるのは、利益の持続性だ。利益の半分を稼ぐ原子力関連は、大型案件が山をつくる。山のあとの谷でどこまで下がるかが、評価の核になる。中立の筋書きでは、利益率を10%弱に抑えた。
もう1つは、現金の使い道である。純現金は時価総額の3割強で、運転資金を引いても30億円ほどは余ると筆者は見る。会社は還元の下限を決め、自社株買いも始めた。この姿勢が続くなら、現金を割り引く理由は小さい。
安全域は、現金と堅い財務にある。悲観の筋書きでも、会社が傷むのは利益であって、財務ではない。ただ、今の値段は純現金込みで見ても、受注の山を織り込んでいる。
筆者は、安心して持てる会社だが、安く買えるわけではない、と考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は3つの事業である。2026年3月期の売上は、化工機事業が124億円、エネルギー・環境事業が84億円、エンジニアリング事業が72億円だった。
エンジニアリング事業は、蒸発・蒸留・晶析の装置や圧力容器、タンクを設計して作る。化学や食品、医薬のプラントが顧客で、省エネ型の蒸留・蒸発装置を売り込んでいる。利益率は低く、案件の採算に左右される。
化工機事業は、プラント設備の関連工事とメンテナンスの請負施工である。製作、撤去、据付、配管、保温、試運転までを受ける。住友金属鉱山など非鉄・化学の設備の保全が中心で、安定した収益源だ。
エネルギー・環境事業は、核燃料の輸送容器、核燃料の濃縮関連機器、放射性廃棄物の処理装置、放射線の遮蔽設備を扱う。福島第一原発の廃炉に伴う燃料デブリの分析施設や処理水関連機器、青森県六ヶ所村の再処理工場とMOX燃料加工工場の見直し設計・改造がその例である。製造と工事は子会社のフォレコが担う。
顧客の偏りは大きい。住友金属鉱山が売上の13.8%、富士電機が12.1%を占める。連結の対象は子会社1社だけで、規模は中堅である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、原子力という特殊分野の設計と製作の実績にある。放射性物質を扱う機器は、品質保証や許認可の壁が高く、実績のない会社は入りにくい。福島第一の廃炉は数十年続く仕事で、遠隔操作や遮へいの技術を積める。
しかし、原子力の仕事は案件ごとだ。受注は大型で、期をまたいで売上に出る。再処理工場の竣工が延びれば工事も延び、完成すれば仕事が減る。2026年3月期のエネルギー・環境事業の売上と利益が急に伸びたのは、その波の一部である。
収益性は、この10年で改善した。営業利益率は2017年3月期の5.5%から、2025年3月期の11.4%へ上がった。10年のROEの中央値は10.6%と、資本コストを上回る。赤字の期はない。
弱みは、エンジニアリング事業の低い利益率と、顧客の偏りである。2026年3月期のエンジニアリングの利益は2.6億円と、前期比で4割近く減った。中期経営計画の「売上300億円、経常利益30億円」は、現状の見通し(売上248億円、経常利益27億円)では届かない。
経営は慎重で、財務は健全だ。純現金が厚く、配当性向35%かDOE3%の高い方という下限を決めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は2つの源から来る。1つは化学・非鉄・食品の設備投資で、省エネや脱炭素に向けた蒸留・蒸発装置の更新が追い風になる。もう1つは原子力のバックエンド、つまり使用済み燃料の処理と廃炉だ。
原子力のバックエンドは、国の方針で長く続く。第7次エネルギー基本計画は原子力を最大限活用するとしており、再処理、廃炉、放射性廃棄物の処理は避けられない仕事だ。ただし六ヶ所再処理工場の竣工目標は2026年度中だが、審査は半年以上遅れ、これまで24回延期されている。MOX燃料加工工場は2027年度中の目標だ。
短期の需給は弱い。2026年3月期の受注は244億円と13%減り、受注残も239億円と13%減った。会社の2027年3月期の予想は、売上が11%減る。化学の設備投資が慎重なこと、原子力の大型案件が一巡することが背景にあるとみられる。
競争は、分野ごとに違う。蒸発・蒸留装置は国内の数社が競う。原子力は、大手重工や電機メーカーが元請けになり、当社は専門機器や施工で入る形が多いと筆者は推定する。市場の大きさは公的な統計がなく、筆者の推定になる。
資本政策と M&A
還元は、下限を決めて引き上げてきた。配当は性向35%かDOE3%の高い方を基準とし、2026年3月期は配当性向35.6%だった。同期には自社株買いも約7億円行い、配当と合わせて純利益の約7割を株主に返した。
手元は厚い。現金93億円に対し、有利子負債は約14億円だ。投資は年20億円ほどで、営業キャッシュフローの範囲に収まる。投資有価証券28億円は、取引先の株が中心とみる。
株主には、東京共同会計事務所(6.2%)、光通信(4.7%)の投資家がいる。奥村組が4.7%を持ち、安定株主もいる。還元の圧力は続く可能性が高い。
M&Aは近年見当たらない。規模の小ささと原子力の専門性を考えれば、同業や大手重工に取り込まれる可能性もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原子力のバックエンドは国策で、長期の仕事が確実に続く、と強気の見方は見る。福島第一の廃炉は数十年、再処理工場とMOX工場の竣工は遅れても必ず来る。当社はその設計と施工の実績を持つ。エネルギー・環境事業の利益は2026年3月期に5割増え、利益率は19%に達した。
さらに、化工機事業のメンテナンスは景気に左右されにくく、住友金属鉱山のような安定顧客がいる。エンジニアリング事業も、省エネの蒸留装置の更新需要で利益率が改善する余地がある。
還元の面でも、DOE3%と配当性向35%の下限があり、自社株買いも始まった。純現金は93億円と厚く、株主還元をさらに引き上げる余力がある。投資家の目が入っている分、資本効率の改善圧力も続く。中期経営計画の残る期間で、受注が持ち直せば、その流れは10年へつながる。
強気の見立てでは、10年後の売上は520億円、営業利益は61億円に達し、時価総額は640億円を超える。国が原子力を最大限活用する方針に転じたことも、長期の追い風になる。
慎重な見方
利益が原子力の大型案件に偏っている点を、慎重な見方は重く見る。エネルギー・環境事業は営業利益の半分以上を稼ぐ。再処理工場の竣工が延び続けているのは、それだけ見直し設計が増えているからで、完成すれば仕事は減る。
受注の勢いも弱い。2026年3月期の受注は13%減り、会社は2027年3月期の売上を11%減と見る。中期経営計画の目標(売上300億円)には届かない。エンジニアリング事業の利益は2.6億円と低く、化学の設備投資が冷え込めば赤字もありうる。
顧客は2社で売上の4分の1を占める。どちらかが投資を絞れば、大きな穴が開く。原子力は国策の変更や世論の影響を受ける。ひとたび方針が揺れれば、化学の設備投資の不振と同時に来るおそれもある。
物価の上昇で人件費や資材費が増える中、値上げが通らなければ利益率はさらに削られる。
慎重な見立てでは、原子力関連が3割縮み、利益率は7%に落ち、時価総額は160億円ほどになる。純現金が厚い分、傷むのは利益であって、会社の存続ではない。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと国策という点で、強気の見方に説得力がある。一方で、利益の偏りと受注の減少は、慎重な見方が正しい。筆者は、利益率を10%弱に抑えた中立を最も厚い確率とし、やや悲観に2割、悲観に1割を割り当てた。強気側は合わせて3割とし、国策による長期の仕事を評価した。現金が厚い分、悲観でも崩れ方は浅い。強気と慎重のどちらの見方が当たるかは、受注高の持ち直しの有無でまず見分けがつくと筆者は考える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,121 円409 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 535 円103 億円)。 今の値に割り戻すと 1,430 円276 億円、今との差 +30.6%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,119 円794 億円 | 779 円150 億円 | +347.3% | +16.2% | 490 円94 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,088 円595 億円 | 644 円124 億円 | +240.8% | +13.0% | 746 円144 億円 |
| 中立 | 38% | 2,295 円442 億円 | 550 円106 億円 | +159.9% | +10.0% | 1,081 円208 億円 |
| やや悲観 | 22% | 843 円162 億円 | 400 円77 億円 | +13.5% | +1.3% | 273 円53 億円 |
| 悲観 | 10% | 339 円65 億円 | 311 円60 億円 | −40.6% | −5.1% | 65 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,121 円409 億円 | 535 円103 億円 | +142.5% | +9.3% | 2,656 円512 億円 |
今の株価時価総額 1,095 円211 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 廃炉・再処理・新型炉の仕事が重なり、原子力の稼ぎが太る 利益 44 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 4,119 円794 億円
原子力のバックエンドの市場が今の1.6倍に広がり、当社のシェアも9%へ上がる。エネルギー・環境事業の利益率は18%を保ち、売上は190億円を超える。
化工機事業は、非鉄・化学プラントの保全需要が1.15倍に伸びる。エンジニアリング事業も、省エネ蒸留装置の更新で市場が1.2倍に増え、利益率は6%まで上がる。
全体の営業利益率は12%と、過去の最高(11.4%)を少し上回る。原子力の比率が高まり、利益率の高い仕事が厚みを増す構造が理由だ。配当と自社株買いは利益の45%に引き上がる。10年後の自己資本は390億円ほどになる。
- エンジニアリング事業:数量 3,600(国内のプロセス機器(蒸発・蒸留・タンクなど)で当社が狙える市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 3.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 125 億円・営業利益 8 億円。プロセス機器市場3600億円(実質)× シェア2.6%、営業利益率6.0%
- 化工機事業:数量 4,600(国内の化学・非鉄プラント向け保全・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 4.3%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 197 億円・営業利益 20 億円。保全・工事市場4600億円(実質)× シェア3.2%、営業利益率10.0%
- エネルギー・環境事業:数量 1,600(国内の原子力バックエンド・環境関連機器・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 12.1%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 193 億円・営業利益 35 億円。原子力バックエンド・環境市場1600億円(実質)× シェア9.0%、営業利益率18.0%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 17.52 倍、時価総額 794 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:福島第一の廃炉、再処理・MOXの竣工、新しい核燃料サイクル機器の発注が10年間途切れない必要がある。原子力の国策に変更がないことが前提で、条件が多いので1割にとどめた。
やや楽観 20% 原子力の仕事が続き、利益率10%台を保つ 利益 35 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 3,088 円595 億円
原子力のバックエンドの市場が1.4倍に広がり、シェアは8.6%を保つ。エネルギー・環境事業の利益率は17%で、売上は160億円ほどになる。
化工機事業は1.1倍、エンジニアリング事業も1.1倍に伸び、利益率は化工機が9%、エンジニアリングが5%になる。
全体の営業利益率は10.8%で、2026年3月期とほぼ並ぶ。配当と自社株買いは利益の4割強になる。10年後の自己資本は370億円ほどになる。
純現金は運転資金を引いても厚く、還元を増やす余地が残る。受注が持ち直せば、中期経営計画の目標に近い水準まで戻る。
- エンジニアリング事業:数量 3,300(国内のプロセス機器(蒸発・蒸留・タンクなど)で当社が狙える市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 3.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 111 億円・営業利益 6 億円。プロセス機器市場3300億円(実質)× シェア2.5%、営業利益率5.0%
- 化工機事業:数量 4,400(国内の化学・非鉄プラント向け保全・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 4.2%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 183 億円・営業利益 16 億円。保全・工事市場4400億円(実質)× シェア3.1%、営業利益率9.0%
- エネルギー・環境事業:数量 1,400(国内の原子力バックエンド・環境関連機器・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 11.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 161 億円・営業利益 27 億円。原子力バックエンド・環境市場1400億円(実質)× シェア8.6%、営業利益率17.0%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 16.29 倍、時価総額 595 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再処理の遅れが仕事の積み上がりに働き、廃炉も続く形。2026年3月期の水準が維持される筋書きで、受注の減少を考えて中立を超える確率にはしない。
中立 38% 原子力の山が過ぎ、利益率は10%弱で落ち着く 利益 28 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,295 円442 億円
再処理工場の竣工後に原子力の大型案件が一巡するが、廃炉と廃棄物の処理が続き、市場は今の1.2倍にとどまる。エネルギー・環境事業の売上は135億円、利益率は15%になる。
化工機事業は市場が1.05倍、エンジニアリング事業は横ばいで、物価の分だけ売上が増える。利益率は化工機が8.5%、エンジニアリングが4.5%。
全体の営業利益率は9.6%で、2026年3月期の10.8%を少し下回る。配当と自社株買いは利益の42%で、10年後の自己資本は350億円ほどになる。
純現金のうち運転資金を超える30億円は株主に戻り、残りは受注生産の立替えに回る。ERPや人材への投資で、販管費も物価並みに増える。
- エンジニアリング事業:数量 3,000(国内のプロセス機器(蒸発・蒸留・タンクなど)で当社が狙える市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 3.2%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 97 億円・営業利益 4 億円。プロセス機器市場3000億円(実質)× シェア2.4%、営業利益率4.5%
- 化工機事業:数量 4,200(国内の化学・非鉄プラント向け保全・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 4.2%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 175 億円・営業利益 15 億円。保全・工事市場4200億円(実質)× シェア3.1%、営業利益率8.5%
- エネルギー・環境事業:数量 1,200(国内の原子力バックエンド・環境関連機器・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 11.3%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 135 億円・営業利益 20 億円。原子力バックエンド・環境市場1200億円(実質)× シェア8.4%、営業利益率15.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 15 倍、時価総額 442 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が減り始めた事実と、国策による長期の仕事の両方を重く見て、確率を最も厚くした。
やや悲観 22% 原子力の仕事が先細り、化学も冷える 利益 14 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 843 円162 億円
再処理工場とMOX工場の工事が山を越え、原子力のバックエンドの市場は今の0.85倍に縮む。シェアも7.5%に下がり、エネルギー・環境事業の売上は85億円、利益率は11%になる。
化学の設備投資が慎重で、エンジニアリング事業は市場が縮み、利益率は2.5%にとどまる。化工機事業も7%に下がる。
全体の営業利益率は6.8%に落ちる。配当は利益の42%を保つが、10年後の自己資本は310億円ほどにとどまる。
顧客の2社は投資を絞り、新しい大型案件が出るまで受注残は細り続ける。固定費の重い工場と人員を抱えるため、売上の減少が利益に大きく響く。
- エンジニアリング事業:数量 2,700(国内のプロセス機器(蒸発・蒸留・タンクなど)で当社が狙える市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 2.9%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。プロセス機器市場2700億円(実質)× シェア2.2%、営業利益率2.5%
- 化工機事業:数量 3,800(国内の化学・非鉄プラント向け保全・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 3.9%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 148 億円・営業利益 10 億円。保全・工事市場3800億円(実質)× シェア2.9%、営業利益率7.0%
- エネルギー・環境事業:数量 850(国内の原子力バックエンド・環境関連機器・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 10.1%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 85 億円・営業利益 9 億円。原子力バックエンド・環境市場850億円(実質)× シェア7.5%、営業利益率11.0%
倍率:ROE 4.6% は k の 7.5% を下回り、PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。利益が薄く不安定で、上限の約75%の 10 倍とした。
確率:再処理工場が完成して工事が減る、化学の設備投資が冷える、という両方が重なる形は、受注の減少が示す現実的な範囲にある。
悲観 10% 原子力の国策が後退し、受注が細る 利益 6 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 339 円65 億円
原子力の政策が後退し、再処理や廃炉の発注が絞られる。原子力関連の市場は今の0.7倍に縮み、シェアも6.5%へ下がる。エネルギー・環境事業の利益率は6%に落ちる。
化学の設備投資が長く止まり、エンジニアリング事業は利益が出なくなり、化工機事業も4.5%にとどまる。
全体の営業利益率は3.5%に落ちる。純現金は使われるが、事業の稼ぐ力が弱く、10年後の自己資本は290億円ほどにとどまる。
それでも借金はなく、事業を畳む必要はないが、株主にとっては長く収益の薄い会社になる。物価の分だけ人件費や資材費も上がり、値上げが通らなければ、利益率はさらに削られる。
- エンジニアリング事業:数量 2,400(国内のプロセス機器(蒸発・蒸留・タンクなど)で当社が狙える市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 2.7%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 64 億円・営業利益 0 億円。プロセス機器市場2400億円(実質)× シェア2.0%、営業利益率0.0%
- 化工機事業:数量 3,400(国内の化学・非鉄プラント向け保全・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 3.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 119 億円・営業利益 5 億円。保全・工事市場3400億円(実質)× シェア2.6%、営業利益率4.5%
- エネルギー・環境事業:数量 700(国内の原子力バックエンド・環境関連機器・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 8.7%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。原子力バックエンド・環境市場700億円(実質)× シェア6.5%、営業利益率6.0%
倍率:事業の利益が薄く、ROE は k を大きく下回る。構造的に負けた会社として、やや悲観よりさらに低い 9 倍とした。
確率:原子力の政策や世論が変わる、あるいは主要2社の投資が止まるなど、起きれば深いが頻度は低い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エンジニアリング事業
蒸発・蒸留・晶析装置、圧力容器、タンクなどの設計・製作と設置工事。
| 数量国内のプロセス機器(蒸発・蒸留・タンクなど)で当社が狙える市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 2.4% | 72 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 3.2% | 97 | 4 |
取り方:売上71.96億円・セグメント利益2.60億円は開示(2026年3月期)。国内の化学・食品・医薬向けプロセス機器で当社が狙える範囲を約3,000億円と筆者が推定し、シェア2.4%を逆算した。
化工機事業
プラントの関連工事とメンテナンス工事の請負施工(製作・撤去・据付・配管・保温・試運転)。
| 数量国内の化学・非鉄プラント向け保全・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 3.1% | 124 | 12 |
| 10 年後 中立 | 4,200 | 4.2% | 175 | 15 |
取り方:売上123.77億円・セグメント利益11.50億円は開示。当社が受けられる範囲の市場を約4,000億円と推定し、シェア3.1%を逆算した。
エネルギー・環境事業
核燃料輸送容器、濃縮関連機器、放射性廃棄物処理装置、遮蔽設備、廃炉・再処理関連機器。
| 数量国内の原子力バックエンド・環境関連機器・工事で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 8.4% | 84 | 16 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 11.3% | 135 | 20 |
取り方:売上83.98億円・セグメント利益16.13億円は開示。福島第一の廃炉、六ヶ所の再処理・MOX、廃棄物処理で当社が受ける範囲を約1,000億円と推定し、シェア8.4%を逆算した。
リスクと懸念
原子力関連への利益の偏り
エネルギー・環境事業が営業利益の半分以上を稼ぐ。大型案件は期をまたいで売上に出るため、一巡すると利益が急に細る。再処理工場の竣工が延びている間は仕事が続くが、完成後の姿は読みにくい。
受注残の減少
2026年3月期の受注は13%減の244億円で、受注残も239億円に減った。会社は2027年3月期の売上を11%減と見ており、中期経営計画の最終年度の目標(売上300億円)には届かない見通しだ。
主要顧客2社への依存
住友金属鉱山が13.8%、富士電機が12.1%を占める。いずれかが投資を絞れば、化工機事業やエネルギー・環境事業の売上に直接響く。
大型案件の採算
受注生産の大規模・長期案件は、納期の遅れやコスト増加で採算が崩れうる。エンジニアリング事業の利益は2026年3月期に4割近く減り、2.6億円まで下がった。
原子力政策と世論
原子力は国策の変更や世論の影響を受ける。福島第一の廃炉や再処理は長期の仕事だが、政策が後退すれば発注が絞られる。有報も主なリスクに挙げている。
現金の使い方
純現金は74億円と厚いが、使い道が成長投資に偏ると資本効率が落ちる。還元の下限(DOE3%、配当性向35%)はあるが、運転資金の水準が読めない。
今後の分かれ目
- 再処理工場・MOX工場の竣工が再び延び、見直し設計の発注が増えたら
- エネルギー・環境事業の売上が続く。中立より上の筋書きに確率を移してよい。
- 受注高が2期連続で売上を下回り、受注残が200億円を割ったら
- やや悲観側に重みを移す。原子力と化学のどちらが弱いかを、セグメント別に確認する。
- 主要顧客のどちらかが投資計画を見直したら
- 売上の4分の1に影響するため、悲観寄りの確率を上げる。
- DOEを引き上げる、または自社株買いを追加したら
- 現金の戻り方がさらに確かになり、価値を押し上げる。
- 同業や重工大手から統合や買収の提案が届いたら
- TOBの確率は上げてよい。ただし提案価格が10年の稼ぐ力に見合うかは別に確かめる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残高
- エネルギー・環境事業のセグメント利益
- 六ヶ所再処理工場・MOX工場の竣工時期
- 中期経営計画(売上300億円)の進み具合
- 配当性向・DOE・自社株買い
倍率と資本コストの決め方
3つのセグメント(いずれも開示された売上)に市場×シェアを置き、10年後の利益と倍率を式から決めた。今の株価は見ていない。2026年3月期の営業利益率10.8%は過去の最高に近いので、中立では9.6%に抑えた。強気は原子力の比率が高まる構造を理由に12%とした。倍率は、ROEがkを上回る前提で、式の上限の約85〜87%に置いた。余った現金は運転資金を引いた30億円のみ数えた。今の時価総額(218億円)を基準にした調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.52 倍・やや楽観 PER 13→16.29 倍・中立 PER 12→15 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。原子力の国策や大型案件のずれは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。