結論
YUASAは、1666年創業の老舗の総合専門商社だ。工事店や町工場へ、空調・水まわり設備、工作機械、ベアリング、建材などを届ける。2026年4月に社名をユアサ商事から変えた。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正で、割安とまでは言えないというものだ。事業は堅いが、卸の粗利は薄い。10年たっても、利益は物価の上昇に沿って伸びるだけだと見る。
稼ぎの柱は住設・管材・空調で、売上の4割を占める。空調の入れ替えや省エネ改修が追い風になり、工作機械の不振を補ってきた。工作機械は2年続けて減収で、会社も依存を減らそうとしている。
財務は強い。純現金は437億円、時価総額の3分の1に当たる。ただ、これは買掛金と運転資金の裏返しの面が大きく、全部を余った現金とは見ない。
新しい中期計画は、2031年3月期に経常利益200億円を掲げる。筆者は届いても、利益の質は変わらないと見る。売上の3%台の利益率で、10年後のROEは8%台にとどまる。配当は手厚くなるが、価値を大きく押し上げるものではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、YUASAをどう見るか。オーナー利益、つまり事業を維持するために使う分を除いた、株主のものになる利益は、年に120億円ほどだ。
事業は10年後も続く。工事店や町工場がある限り、YUASAのような卸の役割は残る。ただ、堀が広がるとは思えない。粗利が薄く、値段を決める力も弱い卸は、物価が上がれば売上は膨らむが、利益率は変わらない。
経営者の資本の使い方は誠実で、安全域は厚い。純現金437億円と自己資本比率39.5%があり、不況でも事業は傾かない。リーマン後の2010年3月期に赤字になったが、それも1期だけだ。
ただし、安全域は払う値段の安さではなく、事業の頑丈さから来ている。利益が物価並みにしか伸びない会社に払える倍率は、資本コストから決まる。
筆者が気になるのは、現金が積み上がり、ROEが薄まる点だ。10年後に配当と自社株買いを増やしても、積み上がりを止められなければ、価値は伸びない。経営がこれをどう扱うかが、いちばんの見どころになる。
何で稼ぐ会社か
YUASAは、モノづくり、すまいづくり・環境づくり、まちづくりの3つの市場に商品を流す専門商社だ。売上は2026年3月期で5,450億円、営業利益は167億円である。
最大の事業は住設・管材・空調で、売上の41%を占める。工事店、設備業者、住宅メーカーに、空調機、給排水の管材、キッチンや浴室の機器を納める。営業利益率は5%で、会社でいちばん高い。
次が工業機械(工場設備)で、売上は1,054億円。工作機械、鍛圧板金機械、ロボットを製造業に売る。受注から売上まで数か月かかり、設備投資の波をまともに受ける。産業機器は777億円。ベアリング、工具、FA機器を扱い、物流倉庫向けも伸びている。
建築・エクステリアは638億円で、再開発案件が増えている。建設機械は371億円。石油製品や食品などの小さな事業が、残りの375億円を占める。
海外はタイとインドが中心で、タイでは2024年に新本社を建てた。中計は海外売上を2031年3月期に400億円以上、2036年3月期に1,000億円以上とする。ただ、前の中計で掲げた海外の目標は未達だった。
商社の本質は、仕入れて売る間の運転資金を持ち、在庫と物流と与信を引き受けることにある。粗利は売上の約11%で、そこから人件費と物流費を引くと、3%ほどが残る。
優良さと弱いところ
YUASAの強みは、顧客の数と付き合いの長さだ。全国の工事店や町工場との取引は、350年を超える歴史の中で積み上がった。ただ、堀、つまり他社がまねできない強みとして数えられるほどではない。
筆者が評価するのは、事業の多様さだ。住設・空調、工作機械、産業機器、建築資材と、景気の波が違う事業を持つ。工作機械が2年続けて落ちても、会社全体の営業利益は伸びた。10年の業績を見ても、営業利益率は2%台から3%台で安定している。
弱みは粗利の薄さと、値段を自分で決められないことだ。メーカーの値上げを客先に転嫁できるかどうかで、利益が決まる。MonotaROのようなEC専業者や、メーカーの直販が広がれば、卸の役割は削られる。
資本効率も飛び抜けてはいない。ROEは10%前後で、ここ10年の中央値は10.9%だ。純現金が積み上がるほど、ROEは薄まる。
経営の資本配分は堅実で、無理な買収はしていない。還元率35%以上と配当下限の水準(株主資本配当率3.5%)を約束し、2023年には40億円の自社株買いも実行した。一方で、前の中計で掲げた海外・食品・シェアリングの伸びは、思うように進まなかった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
YUASAが戦う場は、国内の製造業、工事、住宅に結びついた「間接の流通」だ。人口が減る中でも、人手不足がこれを下支えしている。省力化のためのロボット、省エネの空調、水まわりの更新に、工事店や工場は金をかけざるをえない。
工作機械は景気の影響が大きい。2024年から中国向けの落ち込みと国内の中小企業の投資待ちで、受注が弱い。大手や中堅の投資は動き始めたが、台数の多い中小企業はまだ動いていない。回復するとしても、台数の水準は今より慎重に見ておくべきだ。
一方、空調は猛暑と省エネ規制の追い風が続く。住設は新設住宅が減るため、リフォームと非住宅の更新に重心が移る。建築・エクステリアは各地の再開発が支える。
競争は分散している。工具や機械では山善、電設資材では因幡電機産業、FA部品ではミスミグループ本社やトラスコ中山が、それぞれ別の型で戦う。YUASAは「何でも揃えて、現場まで届ける」型で、特定の分野で他社を圧倒する立場にはない。
構造的な圧力は2つある。EC専業者による中抜きと、人件費・物流費の上昇だ。値上げで吸収できる会社と、できない会社の差が、10年で開く。
資本政策と M&A
資本政策は、保守的で手堅い。新しい中計「Reborn 2031」は、5年で約400億円の投資を営業キャッシュフローの範囲で行うとする。内訳は事業基盤200億円、経営基盤170億円、人財30億円だ。大型の買収は計画に入っていない。
還元は、連結の還元率35%以上と、株主資本配当率3.5%以上が下限である。配当は累進、つまり原則として下げない。足元の配当性向は33%で、自社株買いは2023年に40億円を実施した。
投資の中心は、新本社ビル(2027年完成予定)と情報システム、海外拠点だ。成長への投資と還元のバランスは悪くない。ただ、純現金がさらに積み上がる設計で、自己資本は厚くなっていく。
2026年6月には、主要株主の異動に関する以前の開示を取り消した。理由は開示から読み取れず、確認できていない。大株主にはフィデリティ(7.6%)が名を連ねる。親会社や支配株主は確認できなかった。
買収される可能性は、もちろんある。時価総額が1,310億円と小さく、純現金も厚い。ただ、見込みを筋書きに織り込むほどの材料はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
住設・管材・空調は、営業利益率5%で、10年かけて着実に伸びてきた。猛暑で空調は好調が続き、省エネ規制が厳しくなるほど、工事店は機器の入れ替えを迫られる。リフォームと非住宅の更新は、新設住宅の減少を補って余りある。
工作機械は2年連続の減収だが、これは循環の谷にすぎない。大手と中堅の設備投資はすでに動き始めた。中小企業の投資が戻れば、工業機械の売上は1,500億円を超える。ロボットや板金のDXへの出資も、取引先の幅を広げる。
中計の目標は、2031年3月期に経常利益200億円、2036年3月期に300億円だ。足元の経常利益172億円から見れば、年率5%ほどの伸びで届く。タイとインドの海外拠点が育てば、海外売上は1,000億円に近づく。
純現金437億円と、還元率35%以上、DOE3.5%以上という約束がある。累進配当と自社株買いで、株主への還元は着実に増える。
10年かけて物価が3割上がれば、売上は自然に膨らむ。そこに、省力化提案と海外の上積みが乗る。利益率が3%台前半から3.6%に上がるだけで、営業利益は2割以上増える。会社の足場は固い。
慎重な見方
YUASAの強みは顧客の数で、これは堀ではない。粗利率は約11%で、メーカーの値上げを客先に転嫁できなければ、利益が消える。営業利益率はここ10年で2%台から3%台と、ほとんど動いていない。
工作機械は2年連続の減収で、2024年3月期の1,187億円から1,054億円に縮んだ。中国向けの不振に加え、国内の中小企業の投資は戻っていない。製造業の海外移転が進めば、国内の設備投資の絶対量が縮む。
EC専業者とメーカーの直販は、卸の中間を狙っている。工事店や町工場の購買がネットに移れば、YUASAの営業網の価値は下がる。前の中計で掲げた海外・食品の目標は未達だった。新しい中計の海外1,000億円も、同じ道をたどりかねない。
純現金は強みに見えるが、買掛金や運転資金の裏返しでもある。全部が株主のものではない。
住設の利益の多くは、新設住宅に頼らない更新需要だが、これは工事店の高齢化と廃業という別のリスクを抱える。人手が足りなくなれば、機器を売っても工事ができない。数量の天井は、売り手ではなく施工側にある。
どちらに重みを置いたか
強気の論拠のうち、実現しやすいのは住設・空調の底堅さと工作機械の回復だ。海外1,000億円や経常利益300億円は、前の中計の実績から見て、確率を厚く置けない。
慎重な見方の論拠は、数字に出ている。工作機械の2年連続の減収と、薄い粗利は事実だ。EC専業者による中抜きの進み方は読みにくい。
そこで、確率は中立に38%を置き、上下に22%ずつ、両端に9%ずつとした。純現金と自己資本比率が厚いため、悲観の確率は9%にとどめる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 12,683 円2,671 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,658 円560 億円)。 今の値に割り戻すと 8,239 円1,735 億円、今との差 +31.0%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.1%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 18,811 円3,961 億円 | 3,429 円722 億円 | +253.6% | +13.5% | 2,002 円421 億円 |
| やや楽観 | 22% | 16,742 円3,525 億円 | 3,129 円659 億円 | +215.9% | +12.2% | 4,372 円921 億円 |
| 中立 | 38% | 14,446 円3,042 億円 | 2,778 円585 億円 | +173.8% | +10.6% | 6,545 円1,378 億円 |
| やや悲観 | 22% | 7,045 円1,484 億円 | 2,175 円458 億円 | +46.6% | +3.9% | 2,028 円427 億円 |
| 悲観 | 9% | 2,971 円626 億円 | 1,406 円296 億円 | −30.4% | −3.6% | 394 円83 億円 |
| 加重平均 | 100% | 12,683 円2,671 億円 | 2,658 円560 億円 | +143.9% | +9.3% | 15,341 円3,230 億円 |
今の株価時価総額 6,290 円1,325 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.1% を下回るほど割高。
楽観 9% 海外と省力化提案が育ち、計画の経常300億に届く 利益 224 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 18,811 円3,961 億円
住設・空調の工事店向けに、省エネ改修や空調の入れ替え需要を深く取る。工作機械は中小企業の設備投資が戻り、ロボットや板金のDXで取引先が広がる。タイやインドの現地法人も育ち、海外売上は中計の1,000億円目標に近づく。
販管費の増加を粗利の伸びが上回り、経常利益は300億円の計画に届く。それでも卸の粗利は薄いままで、営業利益率は3.6%どまりだ。
稼いだ現金は買収と還元に回り、自己資本の積み上がりは抑えられる。ROEは10%台に戻り、中計の「ROIC10%」にも手が届く。会社が約束してきた累進配当と自社株買いも、そのまま続く。
- 住設・管材・空調:数量 3.0(取引先(万社))× 価格 1,078(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 3,235 億円・営業利益 175 億円。営業利益率5.4%
- 工業機械(工場設備):数量 1.6(取引先(万社))× 価格 1,236(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,928 億円・営業利益 81 億円。営業利益率4.2%
- 産業機器:数量 2.7(取引先(万社))× 価格 450(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,214 億円・営業利益 51 億円。営業利益率4.2%
- 建築・エクステリア:数量 0.9(取引先(万社))× 価格 1,069(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 962 億円・営業利益 37 億円。営業利益率3.8%
- 建設機械(都市基盤):数量 0.4(取引先(万社))× 価格 1,420(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 543 億円・営業利益 23 億円。営業利益率4.2%
- エネルギー・食品ほか:数量 1.7(取引先(万社))× 価格 335(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 568 億円・営業利益 9 億円。営業利益率1.5%
倍率:事業の純利益 224 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.15% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.6% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.86 倍、時価総額 3,773 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(経常300億円)がほぼ満額で実現する筋書き。省力化と海外の両方が当たる必要があり、10%にとどめた。
やや楽観 22% 住設と空調が牽引し、工作機械も戻る 利益 200 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 16,742 円3,525 億円
空調と水まわり設備の更新が続き、住設・管材・空調が会社の稼ぎを引っ張る。工作機械は2〜3年の谷を抜けて戻るが、過去のピークまでは届かない。海外は着実に伸びるものの、国内を補うほどの大きさにはならない。
新本社と情報システムの投資で販管費は重いままだが、粗利の改善がそれを吸収し、営業利益率は3.3%台に乗る。経常利益は中計の2031年3月期の目標200億円をおおむね達成し、そのあとも年率4%ほどで伸びる。
還元は累進配当と自社株買いで進み、自己資本は緩やかに厚くなる。ROEは9%台にとどまる。
工作機械の戻りは遅く、台数の多い中小企業が動くのは数年後になる。それでも、2024年3月期の水準(売上1,187億円)には近づき、工業機械の利益も持ち直す。住設の空調では価格転嫁が通り、粗利率はわずかに上がる。
- 住設・管材・空調:数量 3.0(取引先(万社))× 価格 1,058(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 3,127 億円・営業利益 163 億円。営業利益率5.2%
- 工業機械(工場設備):数量 1.5(取引先(万社))× 価格 1,206(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,810 億円・営業利益 71 億円。営業利益率3.9%
- 産業機器:数量 2.6(取引先(万社))× 価格 441(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,148 億円・営業利益 45 億円。営業利益率4.0%
- 建築・エクステリア:数量 0.9(取引先(万社))× 価格 1,069(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 932 億円・営業利益 34 億円。営業利益率3.6%
- 建設機械(都市基盤):数量 0.4(取引先(万社))× 価格 1,420(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 520 億円・営業利益 21 億円。営業利益率4.0%
- エネルギー・食品ほか:数量 1.6(取引先(万社))× 価格 335(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 535 億円・営業利益 6 億円。営業利益率1.1%
倍率:事業の純利益 200 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.15% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.6% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.41 倍、時価総額 3,289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住設・空調の底堅さと工作機械の回復が重なる、十分ありうる上振れ。強気の論拠のうち実現しやすい部分だけを取った。
中立 38% 国内の底堅さは続くが、薄い利益率は変わらない 利益 171 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 14,446 円3,042 億円
国内の製造業と住宅・工事の需要は、数量で見ればほぼ横ばいで推移する。人口減で工事店や町工場の数は減るが、残る取引先への売り込みが深くなる。物価が上がる分は売値に乗り、売上は10年で4割ほど増える。
粗利率は11%前後で動かず、人件費や物流費の上昇を値上げで吸収するのがやっとだ。営業利益率は今と同じ3%台の前半にとどまる。
利益は物価並みに伸びるだけで、新しく投じる資金の稼ぎは資本コストをわずかに上回る程度になる。純現金は積み上がるが、還元と新本社・システム投資で、自己資本の伸びは緩やかに抑えられる。中計の経常利益200億円は2031年ごろ、300億円には届かない。
- 住設・管材・空調:数量 2.9(取引先(万社))× 価格 1,038(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 3,012 億円・営業利益 151 億円。営業利益率5.0%
- 工業機械(工場設備):数量 1.2(取引先(万社))× 価格 1,177(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,412 億円・営業利益 51 億円。営業利益率3.6%
- 産業機器:数量 2.5(取引先(万社))× 価格 433(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,083 億円・営業利益 40 億円。営業利益率3.7%
- 建築・エクステリア:数量 0.9(取引先(万社))× 価格 1,069(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 908 億円・営業利益 31 億円。営業利益率3.4%
- 建設機械(都市基盤):数量 0.4(取引先(万社))× 価格 1,420(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 497 億円・営業利益 19 億円。営業利益率3.8%
- エネルギー・食品ほか:数量 1.5(取引先(万社))× 価格 335(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 503 億円・営業利益 4 億円。営業利益率0.7%
倍率:事業の純利益171億円・事業 ROE 8.2%。k 7.15% をわずかに上回るので、PER の下限 1÷k=15.89倍が効く(RONIC はほぼ k で、正当化 PER も12.3倍)。薄い利益率と中抜きの圧力はあるが、下限を割らせず15.89倍に置いた。
確率:人口減と物価上昇が相殺する国内需要に、薄い利益率の卸という構造をそのまま当てはめた、いちばん素直な筋書き。
やや悲観 22% 工作機械が戻らず、住宅も細って利益率が2%台に沈む 利益 121 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 7,045 円1,484 億円
工作機械の需要が戻らず、中国や米国の関税の影響で国内の設備投資が細る。住設は新設住宅の減少と工事店の廃業で数量が落ち、空調の好調だけでは穴を埋められない。
取引先の数が1割ほど減るうえ、値上げを通せずに粗利が削られる。営業利益率は2%台半ばまで下がる。販管費は人件費の上昇で下がらず、利益は今の4分の3ほどになる。
配当は維持するが、自社株買いは止まる。中計の経常利益200億円は届かず、海外の1,000億円も遠のく。新本社と情報システムの投資だけが重く残り、資本効率は資本コストを下回る。
この筋書きでは、住設の営業利益率は4%台に下がり、会社の利益の柱がやせる。工事店の廃業が続けば、機器を売る相手そのものが減る。10年たっても、会社は黒字を保つが、成長の物語はなくなる。
- 住設・管材・空調:数量 2.8(取引先(万社))× 価格 998(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 2,794 億円・営業利益 123 億円。営業利益率4.4%
- 工業機械(工場設備):数量 1.1(取引先(万社))× 価格 1,118(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,174 億円・営業利益 31 億円。営業利益率2.6%
- 産業機器:数量 2.3(取引先(万社))× 価格 416(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 958 億円・営業利益 31 億円。営業利益率3.2%
- 建築・エクステリア:数量 0.8(取引先(万社))× 価格 1,069(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 802 億円・営業利益 24 億円。営業利益率3.0%
- 建設機械(都市基盤):数量 0.3(取引先(万社))× 価格 1,420(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 469 億円・営業利益 16 億円。営業利益率3.3%
- エネルギー・食品ほか:数量 1.4(取引先(万社))× 価格 335(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 469 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.3%
倍率:事業の純利益121億円・事業 ROE 6.2% は k 以下なので、上限は 1÷k=12.2倍。新しく投じる資金の稼ぎが資本コストを下回る筋書きのため、上限の約7割の9.0倍に置いた。
確率:工作機械の不振の長期化と住宅の細りは、足元で実際に起きている動き。慎重な見方の論拠が強いので、強気側と同じ重みを置いた。
悲観 9% 中抜きと製造業の空洞化で、商社の薄い利益を守れない 利益 58 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 2,971 円626 億円
メーカーの直販とMonotaROのようなEC専業者が、工事店と町工場の購買を奪っていく。製造業の海外移転で国内の工作機械の需要は縮み、住設でもメーカーが工事店と直接つながる。
取引先は2割減り、残った顧客にも値引きを迫られる。営業利益率は1%台まで落ち、新本社と情報システムの固定費が重くのしかかる。海外の展開も採算に乗らず、減損が出る。
純現金は守れるが、稼ぐ力は今の半分以下になる。配当は削られ、経営は縮小均衡に入る。会社の優良さは、もう失われている。
人口減と工事店の廃業が重なる点も痛い。住設は営業利益率が3%台前半まで下がり、工作機械は赤字に近づく。時価総額は、純現金を少し上回る水準まで下がる。
- 住設・管材・空調:数量 2.5(取引先(万社))× 価格 928(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 2,320 億円・営業利益 77 億円。営業利益率3.3%
- 工業機械(工場設備):数量 0.9(取引先(万社))× 価格 1,059(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 953 億円・営業利益 17 億円。営業利益率1.8%
- 産業機器:数量 2.0(取引先(万社))× 価格 396(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 791 億円・営業利益 20 億円。営業利益率2.5%
- 建築・エクステリア:数量 0.7(取引先(万社))× 価格 1,015(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 660 億円・営業利益 15 億円。営業利益率2.2%
- 建設機械(都市基盤):数量 0.3(取引先(万社))× 価格 1,349(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 378 億円・営業利益 9 億円。営業利益率2.5%
- エネルギー・食品ほか:数量 1.2(取引先(万社))× 価格 302(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 362 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-0.5%
倍率:事業の純利益58億円・事業 ROE 3.7% は k を大きく下回り、上限 1÷k=12.2倍の約7割を下回る8.3倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)は約710億円だが、そこまでは評価しない。減損150億円を引いた自己資本1,574億円に対し0.3倍相当で、純現金(今は437億円)を守れる範囲の価値になる。
確率:中抜きと空洞化が同時に進む構造的な負け。純現金と自己資本比率が厚く、事業が傾くところまでは行きにくいため9%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住設・管材・空調
空調・給排水設備・水まわり機器・管材を、工事店・設備業者・住宅メーカーへ。
| 数量取引先(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 745 | 2,235 | 111 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 1,038 | 3,012 | 151 |
取り方:売上2,235億円(全社の41%)、セグメント利益111億円(利益率5.0%)。工事店・設備業者・ゼネコン・住宅メーカーなど取引先を約3万社と推定し(開示なし。卸の取引口座の規模感から)、1社あたり年間売上745万円を逆算した。売上には物価と実質の両方が入る。
工業機械(工場設備)
工作機械・鍛圧板金機械・産業用ロボットなどを製造業へ。受注から売上まで数か月かかる。
| 数量取引先(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 878 | 1,054 | 37 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 1,177 | 1,412 | 51 |
取り方:売上1,054億円(前期比 −1.8%、2024年3月期の1,187億円から2年で1割減)、セグメント利益37億円(利益率3.5%)。機械を買う国内外の製造業を約1.2万社と推定し(開示なし)、1社あたり878万円を逆算した。
産業機器
ベアリング・工具・FA機器・物流機器などを製造業・物流倉庫へ。
| 数量取引先(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 311 | 777 | 28 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 433 | 1,083 | 40 |
取り方:売上777億円、セグメント利益28億円(利益率3.6%)。製造業と物流の取引先を約2.5万社と推定し(開示なし)、1社あたり311万円を逆算した。
建築・エクステリア
建材・外構・エクステリア製品を、工務店・施工会社・再開発案件へ。
| 数量取引先(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 798 | 638 | 21 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1,069 | 908 | 31 |
取り方:売上638億円(前期比 +11%。各地の再開発が追い風)、セグメント利益21億円(利益率3.3%)。取引先を約0.8万社と推定し(開示なし)、1社あたり798万円を逆算した。
建設機械(都市基盤)
建設機械・産業車両の販売と整備を、建設会社・レンタル会社へ。
| 数量取引先(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1,060 | 371 | 14 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 1,420 | 497 | 19 |
取り方:売上371億円、セグメント利益14億円(利益率3.7%)。取引先を約3,500社と推定し(開示なし)、1社あたり1,060万円を逆算した。
エネルギー・食品ほか
石油製品・消費財・木材・食品などの小さな事業の寄せ集め。
| 数量取引先(万社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 250 | 375 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 335 | 503 | 4 |
取り方:エネルギー売上175億円(利益率1.4%)と、食品・消費財・木材などの「その他」約200億円を合わせた375億円。利益はエネルギーの2.4億円のみ(その他は調整に含まれる)。取引先を約1.5万社と推定し(開示なし)、1社あたり250万円を逆算した。
リスクと懸念
工作機械の不振が長引く
工業機械は2年続けて減収で、2024年3月期の1,187億円から1,054億円に縮んだ。中国向けの落ち込みと、国内の中小企業の投資待ちが続く。回復が遅れれば、全社の営業利益の2割を占めるこの事業が足を引っ張り続ける。
EC専業者とメーカー直販による中抜き
MonotaROのようなEC専業者が、工具や間接資材で急速に伸びている。メーカーが工事店や町工場と直接つながる動きも出ている。卸としての営業網の価値が下がり、粗利と取引先の数に響く。
薄い粗利と人件費・物流費の上昇
粗利率は約11%と薄く、販管費の増加が粗利の伸びを上回る年もある。人件費と物流費の上昇を、値上げで客先に転嫁できなければ、営業利益率は3%台を割り込みかねない。
新リース会計と新本社投資で固定費が増える
新本社ビル(2027年完成予定)と情報システムの投資で、減価償却が増える。2028年3月期から新リース会計基準が適用されると、営業利益の形は少し変わり、純有利子負債も増えて見える。実態は変わらないが、比べる時に注意が要る。
海外展開が計画どおり進まない
前の中計で掲げた海外の売上目標は未達だった。新しい中計は、海外売上を2036年3月期に1,000億円とする。タイやインドの拠点が育たなければ、国内の人口減を補う手段がなくなる。
積み上がる現金とROEの低下
純現金は437億円と時価総額の3分の1に達する。還元を増やさなければ、自己資本が厚くなり、ROEは薄まる。買収に使えば、失敗のリスクが生まれる。資本の使い方が価値を左右する。
今後の分かれ目
- 工作機械の受注が2期続けて前年を上回る
- 工業機械の売上は1,300億円台に戻る。強気の筋書きの確率を上げてよい。
- 住設・管材・空調の営業利益率が5%を超えて定着する
- 空調と省エネ更新で価格決定力が高まったと読める。上振れ側の確率を上げる。
- EC専業者やメーカー直販が、YUASAの主力商品の領域に入り込む
- 取引先の数と粗利が同時に下がる。やや悲観・悲観側の確率を上げる。
- 海外売上が中計の途中経過(2031年3月期400億円)を上回って進む
- 国内の人口減を補える。海外の筋書きを引き上げる。
- 自社株買いや増配で、還元率が35%を大きく上回る
- 自己資本の積み上がりが止まり、ROEが改善する。倍率の上限が上がる。
- 大型の買収を発表し、買収額が純現金の半分を超える
- 失敗のリスクが生じる。買収先の収益性を見て、確率を見直す。
見ておくもの
- 工業機械・住設・管材・空調の部門別の売上と営業利益
- 工作機械の受注と、中小企業向けの動き
- 海外売上(タイ・インド)と、中計の進み具合
- 販管費と粗利益率の差
- 純現金の水準と、自社株買い・配当の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、利益ベースの正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g) から置いた。k は基本7.5%に quality +0.7% を足した8.2%。中立の ROE(8.2%)は k をわずかに上回るので、PER の下限 1÷k=12.2倍を中立に置いた(正当化 PER は12.3倍)。今の株価や過去の PBR・PER は、倍率の根拠に使っていない。10年の売上は今の1.4倍弱だが、これは物価上昇(1.34倍)の分が大半で、数量はほぼ横ばいに置いた。純現金437億円は、買掛金・運転資金・投資枠を理由に余った現金として分けていない。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益や純負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→16.86 倍・やや楽観 PER 12.6→16.41 倍・中立 PER 12.2→15.89 倍)。
資本コスト 7.1% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.20% → 7.15%。