結論
因幡電機産業は、電線や配線器具を電気工事会社に卸す独立系の電設資材商社である。エアコンの配管部材を自社で作るメーカーの顔も持つ。売上の約7割は商社、約2割が自社製品だが、利益は自社製品のほうが大きい。
結論から言う。筆者は、今の値段は10年の本質価値とほぼ釣り合うと見る。会社は強い。ただ、堀が飛び抜けて厚いとまでは言えず、足元の営業利益率7%台はすでに過去最高だ。これ以上の上積みを中立には置けない。
強みは二つある。電設資材で首位の販売網と、空調部材で国内トップを自任する自社ブランドだ。無借金で、純現金は時価総額の2割ある。還元も総還元性向60%を掲げて実行している。
弱みもはっきりしている。商社部分の利益率は4%前後と薄く、銅の値段と建設投資に左右される。自社製品は空調への偏りが大きい。直近の好調には前倒し需要も混じる。
10年を数量と価格で積むと、中立の売上は6,300億円ほど、営業利益は450億円弱になる。数量はほぼ横ばいで、伸びの大半は物価だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は三つだ。
第一に、稼ぎの質。電設資材の利益率は4%前後と薄く、堀は厚くない。ただ、自社製品が全体の利益の半分強を稼ぎ、商社の販路がそこに安く乗る。この組み合わせは、純粋な商社より強い。
第二に、オーナー利益。商社は在庫と売掛金に資金を取られがちだが、この会社は純現金を保ちながら総還元性向6割を払っている。事業を維持するのに要る資本が小さいということだ。株主に残る利益は、純利益に近い。
第三に、安全域。無借金で、純現金は時価総額の2割ある。悲観の筋書きでも会社は傷まない。ただ、これは財務の安全であって、払う値段の安全ではない。足元の利益率は過去最高で、いちばん良い時の数字に近い。
長く持ちたい会社かと問われれば、持ってよいと筆者は答える。ただ、10年の利益は物価でふくらむ部分が大きく、実力の伸びは年1%ほどだ。物価を超える成長を期待して高い値段を払う会社ではない。
何で稼ぐ会社か
因幡電機産業は大阪に本社を置き、三つの事業を持つ。
中心は電設資材事業で、売上の約7割を占める。電線・ケーブル、照明器具、配線器具、受配電設備、空調設備など、ビルや工場の電気工事に要る資材を、特定のメーカーに縛られずに幅広く卸す。客先は電気工事会社だ。売上の約6割は西日本で、首都圏の開拓が長年の課題である。会社は首都圏の市場を関西の約2.5倍と見ており、大型の物流拠点や東京本社の移転で攻めてきた。
二つ目は自社製品事業で、売上の約2割。空調では「INABA DENKO」の名で、エアコンをつなぐ被覆銅管や、配管の化粧カバー「スリムダクト」を作る。産業分野は子会社のパトライト(工場の信号灯)、住宅分野は情報配線の「アバニアクト」だ。商社の販路に乗せて売れる点が強い。
三つ目は産業機器事業で、売上の約1割。制御機器やロボット、電子部品を製造業に卸す。この分野での当社のシェアは低く、会社自身も開拓の余地が大きいと言っている。
利益の柱は自社製品である。商社は利益率が薄く、自社製品は高い。筆者の推定では、全社の営業利益の半分強を自社製品が稼ぐ(セグメント利益は筆者の推定)。
優良さと弱いところ
優良さは「まずまず強い」と評価する。飛び抜けてはいない。
堀は二層に分かれる。第一は販売網だ。電設資材は多くの品目を少量ずつ、工事の納期に合わせて届ける仕事で、全国の電気工事会社との付き合いと物流が武器になる。ただ、扱う電線や配線器具は他社と同じ商品が多く、値段で守れる堀ではない。第二は自社ブランドだ。「INABA DENKO」は空調配管の化粧カバーで長年トップブランドを自任し、設計や施工の現場で指名されやすい。ここは堀と言ってよい。
資本の使い方は良い。自己資本比率は6割を超え、ROEは近年11〜12%まで上がった。営業利益率は10年で5%台から7%台へ上がり、自社製品の拡大と販売条件の改善が効いている。
弱点は三つある。第一に、利益の半分強を自社製品に頼り、その多くが空調に偏る。第二に、商社部分は利益率が薄く、値上げの力が限られる。第三に、銅電線は銅の値段で売上が動き、数量の実力が見えにくい。
経営は堅実だ。2025年に社長が交代したが、首都圏の拡大と自社製品の厚みを増す方針は変わっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、建物と工場の電気設備への投資で決まる。景気には敏感だが、深くは落ちにくい。
電設資材卸の国内市場は、業界団体の会員の年商で約2.7兆円、推計の取り方によっては3兆円台後半とされる。人口が減るので新築は細るが、大都市の再開発、データセンター、工場、老朽設備の更新が支える。当社はこの4つに乗れる位置にいる。競争は多くの電材商社が担い、ユアサ商事や立花エレテックなど上場企業のほか、地域の専門商社も厚い。
空調部材は別の需要で動く。国内のルームエアコンの出荷は2025年度に約1,000万台と、5年ぶりに1,000万台を超えた。省エネ基準の見直し前の駆け込みが混じるので、反動は覚悟しておく。10年で見れば、台数は横ばいから微増だ。猛暑による普及の深まりが支える一方、人口は減る。
産業機器は、世界の工場自動化市場が調査会社の予測で年率1割前後伸びるとされ、人手不足の日本では省人化投資が続く。ただ、当社のシェアは低く、半導体関連の在庫調整で電子部品は伸び悩んだ。
共通の脅威は中抜きだ。メーカー直販やネット通販が、商社を飛ばして工事会社に届く。通販大手のモノタロウでも、因幡電工の配管部材が売られている。
資本政策と M&A
資本政策は株主向きで、筆者は好感を持っている。
還元は、配当と自社株買いを合わせた総還元性向60%を中期の目安にしている。2024年度は配当が約79億円、自社株買いが27億円だった。2026年3月期の期末には特別配当を足し、2025年11月からは上限44億円の自社株買いを進めている。2025年12月には1株を2株に分割した。
手元は厚い。無借金で、純現金は760億円ある。会社は運転資金を確保したあと、物流・開発・DX・エンジニアリングに3年で最大300億円の投資枠を置く。東大阪の研究開発施設「イノベーションセンター」は約100億円で、2027年夏の完成を予定する。
M&Aは「事業領域の拡大」の一環として探っているが、大型案件の実績は少ない。候補は情報通信と管工機材だ。買収で価値を壊さないかは、これからの見どころになる。
政策保有株は少しずつ売っている。大株主は信託銀行の信託口が上位で、特定の親会社も創業家の支配も確認できない。買収される側になる確率は、別の推計で10年16%ほどとされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自社製品と首都圏の二つが、利益を押し上げる。
自社製品の空調部材は、国内トップの地位を持ち、売上の約2割で利益の半分強を稼ぐ。会社はこれを米国と欧州に広げ、東大阪のイノベーションセンターで新製品の開発を加速する。省施工の管材「ホールドワン」のような製品が当たれば、空調以外にも稼ぎの柱が立つ。
電設資材は、売上の約6割が西日本で、首都圏の市場は関西の約2.5倍ある。大型の物流拠点と東京本社を整えた今、再開発やデータセンターの大型物件で取れる量が増える。大阪のIRも2030年に開業する。全国の市場に対するシェアが1ポイント上がれば、売上は300億円を超えて増える。
財務は無借金で純現金が厚く、総還元性向60%を続ける。2026年3月期まで5期連続で最高益を更新し、営業利益率は10年で5%台から7%台に上がった。この上昇は一時の市況ではなく、自社製品の厚みと販売条件の改善という構造の変化だ。人手不足で工事会社が物流と在庫を商社に任せる流れも、商社機能の価値を高める。
慎重な見方
利益率が高いうちにこそ疑うべきだ。
足元の営業利益率7%台は過去最高で、2026年3月期の利益の伸びは銅価格と堅い需要に助けられた。2026年4〜6月期の急増にも、中東情勢を背景にした在庫確保と、エアコンの省エネ基準変更前の駆け込みが入っていると報じられている。反動が来れば、利益は元の水準に戻る。
商社部分は、利益率が4%前後と薄い。中抜きの圧力は強まる。メーカー直販やネット通販が工事会社に届き、電線などの標準品から商社を飛ばす。通販大手のモノタロウでも因幡電工の部材が売られていて、販路は自社だけのものではない。
自社製品は空調に偏る。人口が減る国内で、エアコンの設置台数は伸びない。競合の未来工業も同種の配管カバーを売る。海外は米国で始めたばかりで、成果はまだ見えない。
総還元性向60%を掲げても、事業がしぼめば還元は細る。電設資材は景気に敏感で、建設投資が縮めば数量が落ちる。10年で見れば、数量は横ばいで、増えるのは物価の分だけだ。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠がある。自社製品と首都圏は実力として評価した。だが利益率はすでに過去最高圏にあり、中立では今の水準を保つところまでしか置かなかった。上振れは首都圏と海外の成功、下振れは中抜きと反動に当たる。確率は中立に厚く、上と下をほぼ並べた。悲観側をわずかに厚めにしたのは、好調に前倒しが混じり、頂点に近いと見たためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,607 円6,303 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,428 円1,606 億円)。 今の値に割り戻すと 4,029 円4,530 億円、今との差 +32.2%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 6.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,658 円9,734 億円 | 1,823 円2,050 億円 | +244.0% | +13.1% | 1,048 円1,178 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,419 円8,341 億円 | 1,668 円1,875 億円 | +198.2% | +11.5% | 1,999 円2,248 億円 |
| 中立 | 35% | 6,540 円7,352 億円 | 1,549 円1,742 億円 | +165.5% | +10.3% | 2,831 円3,183 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,053 円3,433 億円 | 1,145 円1,287 億円 | +37.8% | +3.3% | 966 円1,086 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,174 円1,320 億円 | 736 円827 億円 | −37.3% | −4.6% | 191 円215 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,607 円6,303 億円 | 1,428 円1,606 億円 | +130.9% | +8.7% | 7,035 円7,909 億円 |
今の株価時価総額 3,047 円3,426 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 首都圏とデータセンターで取り込みが進み、自社製品が海外で育つ 利益 451 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 8,658 円9,734 億円
再開発とデータセンター、工場の大型物件が10年続く。因幡電機産業は首都圏の物流と営業を厚くし、電設資材の国内シェアを約9%から約11%へ引き上げる。自社製品では、空調部材を米国と欧州に広げ、省施工の管材が空調以外の柱になる。パトライトも海外で伸びる。商社の利益率は4.7%、空調部材の利益率は25%まで上がる。営業利益率は8%に届き、営業利益は600億円近くになる。無借金のまま総還元性向6割を続け、自己資本は着実に積み上がる。会社の中計が描く道を、10年間ほとんど外さずに進む筋書きだ。数量では、全国の市場が横ばいでも、首都圏の取り込みでシェアが伸びる分だけ増える。大型物件の値引きを、自社製品の厚い利益が補う。
- 電設資材事業:数量 37.0(国内の電設資材卸の市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 4,962 億円・営業利益 233 億円。利益率4.7%
- 空調部材(INABA DENKO):数量 1,302(国内エアコン出荷+海外販売の台数換算(万台))× 価格 7,656(1台あたりの部材売上(円))→ 売上 997 億円・営業利益 249 億円。利益率25.0%
- パトライト・アバニアクト:数量 152(取扱数量(万点))× 価格 26,800(1点あたりの売上(円))→ 売上 406 億円・営業利益 57 億円。利益率14.0%
- 産業機器事業:数量 7.3(国内のFA・制御機器・電子部品の商社流通市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 972 億円・営業利益 47 億円。利益率4.8%
倍率:事業の純利益 446 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)350 億円。全体の PER 20.81 倍、時価総額 9,635 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再開発・データセンターの大型物件が10年続き、首都圏と海外の開拓が両方成功する必要がある。実現すれば強いが、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 首都圏のシェアが緩やかに上がり、自社製品が堅調に伸びる 利益 389 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 7,419 円8,341 億円
首都圏の取り込みが緩やかに進み、国内シェアは約10%まで上がる。大阪のIRと都心の再開発が追い風になる。自社製品は、空調の部材が堅調で、パトライトと住宅の情報配線が少しずつ育つ。商社の利益率は4.4%、空調部材は23.5%まで上がり、営業利益率は7.5%になる。数量は国内の人口減をシェアの伸びが補う形で、わずかに増える。中抜きの圧力は標準品に限られ、指名で選ばれる自社製品と、納期に強い商社機能は守られる。無借金のまま総還元性向6割を続ける、会社の計画に近い10年である。物価の転嫁も、納期と在庫の面倒を見る商社機能の価値が支え、おおむね物価並みに通る。海外は米国での立ち上げが軌道に乗る程度で、全社の利益を動かすほどにはならない。
- 電設資材事業:数量 34.3(国内の電設資材卸の市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 4,599 億円・営業利益 202 億円。利益率4.4%
- 空調部材(INABA DENKO):数量 1,215(国内エアコン出荷+海外販売の台数換算(万台))× 価格 7,545(1台あたりの部材売上(円))→ 売上 917 億円・営業利益 216 億円。利益率23.5%
- パトライト・アバニアクト:数量 136(取扱数量(万点))× 価格 26,800(1点あたりの売上(円))→ 売上 366 億円・営業利益 48 億円。利益率13.0%
- 産業機器事業:数量 6.5(国内のFA・制御機器・電子部品の商社流通市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 868 億円・営業利益 39 億円。利益率4.5%
倍率:事業の純利益 384 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)350 億円。全体の PER 20.39 倍、時価総額 8,172 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計が描く首都圏の拡大と自社製品の拡充が、おおむね計画どおり進む筋書き。利益率は今より少し上がる。
中立 35% 中立:数量はほぼ横ばいで、物価の分だけ伸びる 利益 343 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 6,540 円7,352 億円
国内の電設資材の市場は、実質で見て10年でわずかに縮む。人口が減る一方、再開発とデータセンターが支える。首都圏の取り込みで、当社のシェアは約9%から約10%へ上がる程度だ。空調部材は、国内の台数が横ばいで、海外と新製品が数量を少し押し上げる。産業機器は、省人化投資で市場が伸びるが、当社のシェアはほとんど動かない。価格は、物価並みに10年で1.34倍になる。利益率は今の過去最高圏、7%強をそのまま保つ。売上は6,300億円ほど、営業利益は450億円弱だ。この会社の実力どおりの10年である。伸びの大半は物価で、実質の成長は年1%ほどにとどまる。派手さはないが、無借金で総還元性向6割を払い続け、自己資本利益率は11%ほどを保つ。
- 電設資材事業:数量 32.0(国内の電設資材卸の市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 4,291 億円・営業利益 176 億円。利益率4.1%
- 空調部材(INABA DENKO):数量 1,161(国内エアコン出荷+海外販売の台数換算(万台))× 価格 7,434(1台あたりの部材売上(円))→ 売上 863 億円・営業利益 194 億円。利益率22.5%
- パトライト・アバニアクト:数量 126(取扱数量(万点))× 価格 26,800(1点あたりの売上(円))→ 売上 338 億円・営業利益 42 億円。利益率12.5%
- 産業機器事業:数量 5.8(国内のFA・制御機器・電子部品の商社流通市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 771 億円・営業利益 32 億円。利益率4.2%
倍率:事業の純利益 338 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)350 億円。全体の PER 20.04 倍、時価総額 7,116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばい、価格は物価並み、利益率は今の過去最高圏を保つ。事業の実力と、利益率が頂点に近いという見方の落としどころ。
やや悲観 23% 中抜きと反動で商社の利益率が元に戻る 利益 234 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 3,053 円3,433 億円
2026年の好調の一部が前倒しだったことがはっきりし、国内の建設投資は人口減で緩やかに細る。電設資材は、標準品の中抜きが進み、商社が転嫁できる値上げが物価に届かない。因幡電機産業のシェアは首都圏で伸びず、むしろ地方で削られる。自社製品は、空調の台数が減り、競合の同種製品との値下げ競争で利益率が下がる。営業利益率は6%台まで戻り、営業利益は今を上回れない。会社は大きく傷まず、総還元性向も5割台を保つが、成長の物語は消える。優良さが少し薄れる10年だ。首都圏拡大の投資の回収も遅れ、物流や人件費の上昇を価格に載せきれない。それでも赤字には遠く、現金も厚い。
- 電設資材事業:数量 27.0(国内の電設資材卸の市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 3,513 億円・営業利益 127 億円。利益率3.6%
- 空調部材(INABA DENKO):数量 1,053(国内エアコン出荷+海外販売の台数換算(万台))× 価格 7,212(1台あたりの部材売上(円))→ 売上 759 億円・営業利益 144 億円。利益率19.0%
- パトライト・アバニアクト:数量 101(取扱数量(万点))× 価格 25,600(1点あたりの売上(円))→ 売上 259 億円・営業利益 26 億円。利益率10.0%
- 産業機器事業:数量 4.5(国内のFA・制御機器・電子部品の商社流通市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.28(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 577 億円・営業利益 20 億円。利益率3.5%
倍率:事業の純利益230億円・事業 ROE 8.3%。RONIC=k 6.5%+1/2×(ROE−k)=7.8%、g 3.75% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.8倍。利益率が元に戻る筋書きで、質は中立より落ちるため上限の8割に置いた。(11.9倍)
確率:足元の好調に前倒しが混じり、中抜きの圧力も強まる。商社の利益率が元の水準に戻る筋書きで、頂点に近い利益率の反動として無視できない。
悲観 10% 中抜きと空調の失速で、優良さを失う 利益 121 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 1,174 円1,320 億円
国内の建設投資が構造的に縮み、電設資材の標準品は通販とメーカー直販に流れる。因幡電機産業は首都圏の開拓に失敗し、地方のシェアも失う。空調部材は、エアコンの設置台数が減る中で、競合の価格攻勢と施工の簡素化に押され、トップの座を守れない。海外の開拓も実らない。物価の分すら価格に転嫁できず、営業利益率は4%台に沈む。営業利益は今の6割ほどだ。無借金なので会社は残るが、現金を使って買収した事業が期待に届かず、還元も細る。優良な会社だった面影は薄れる10年である。人手不足による物流費と人件費の上昇も価格に転嫁できず、利益率をさらに押し下げる。電設資材の首位という看板は残るが、稼ぐ力は大きく落ちる。
- 電設資材事業:数量 22.4(国内の電設資材卸の市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 2,805 億円・営業利益 79 億円。利益率2.8%
- 空調部材(INABA DENKO):数量 922(国内エアコン出荷+海外販売の台数換算(万台))× 価格 6,658(1台あたりの部材売上(円))→ 売上 614 億円・営業利益 74 億円。利益率12.0%
- パトライト・アバニアクト:数量 90.9(取扱数量(万点))× 価格 24,000(1点あたりの売上(円))→ 売上 218 億円・営業利益 15 億円。利益率7.0%
- 産業機器事業:数量 3.2(国内のFA・制御機器・電子部品の商社流通市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 394 億円・営業利益 10 億円。利益率2.5%
倍率:事業の純利益118億円・事業 ROE 4.5% は k 6.5% 以下なので、上限は 1÷k=13.8倍。新しく投じる資本の稼ぎが資本コストに届かない筋書きで、構造的な負けのため上限の約7割の9.7倍に置いた。余った現金は谷で食う前提で今の半分とした。
確率:国内の建設投資の縮小、通販やメーカー直販による中抜き、空調の失速が重なる複合の筋書き。会社に傷みの少ない財務を考え、10%に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電設資材事業
電線・ケーブル、照明、配線器具、受配電設備、空調設備などを電気工事会社に卸す商社。売上の約6割は西日本。
| 数量国内の電設資材卸の市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.3 | 1.00 | 2,933 | 117 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 1.34 | 4,291 | 176 |
取り方:市場規模は業界団体の会員年商2.7兆円と推計の3.6兆円の間を取り3.3兆円と置き、売上2,933億円から当社シェアを約8.9%と逆算した。市場は実質(今の値段)、物価の上昇は価格の指数に入れる。セグメント利益は非開示のため、商社の利益率を4%と推定して117億円。
空調部材(INABA DENKO)
エアコンの被覆銅管と配管化粧カバー「スリムダクト」などの自社製品。国内のエアコン設置工事に使われる。
| 数量国内エアコン出荷+海外販売の台数換算(万台) | 価格1台あたりの部材売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,085 | 5,548 | 602 | 138 |
| 10 年後 中立 | 1,161 | 7,434 | 863 | 194 |
取り方:2025年度の国内出荷はルームエアコン約1,000万台と業務用約85万台の計約1,085万台。2026年3月期の空調部材の売上は、2025年3月期の556億円と2026年3月期上期の動きから約602億円と推定し、1台あたりの部材売上を逆算した。海外分は台数換算に含める。利益率は23%と推定して138億円(非開示)。
パトライト・アバニアクト
自社製品のうち、工場の信号灯(パトライト)と住宅の情報配線(アバニアクト)。空調以外の柱。
| 数量取扱数量(万点) | 価格1点あたりの売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 101 | 20,000 | 202 | 24 |
| 10 年後 中立 | 126 | 26,800 | 338 | 42 |
取り方:産業分野約105億円と住宅分野約97億円の計約202億円(2025年3月期の98億円・93億円と2026年3月期上期の伸びから推定)。1点あたり平均2万円と置いて約101万点と逆算した推定値。利益率は12%と推定して24億円(非開示)。
産業機器事業
制御機器、ロボット、電子部品を製造業に卸す商社。会社自身がシェアは低いと認める。
| 数量国内のFA・制御機器・電子部品の商社流通市場(兆円・今の値段)× 当社シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.3 | 1.00 | 434 | 17 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 1.34 | 771 | 32 |
取り方:国内の流通市場を約10兆円と推定(世界のFA市場約5,776億ドルのうち日本向けを1割強とみる)。売上434億円から当社シェアを約0.43%と逆算。利益率は4%と推定して17億円(非開示)。
リスクと懸念
前倒し需要の反動
2026年4〜6月期の急増には、中東情勢を背景にした在庫確保と、エアコンの省エネ基準変更前の駆け込みが入っていると報じられている。需要の先食いは、その後の数量を押し下げる。足元の利益率は、いちばん良い時の数字に近い。
銅価格の変動
電線は銅の建値に連動して売上が動く。銅が上がれば売上は膨らみ、下がれば数量が伸びても売上は減る。2025年3月期は国内の銅電線の出荷量が減ったのに、当社の電線売上は値上がりで約1割増えた。この上振れが逆回転する恐れがある。
空調への偏り
自社製品の利益は、空調の配管部材に偏る。国内のエアコン設置台数は人口減で伸びにくく、競合の未来工業も同種の配管カバーを売る。設置工事が簡素になる製品が出れば、化粧カバーの需要が細ることもありうる。
中抜き・ネット通販
メーカー直販やネット通販が、商社を飛ばして工事会社に届く流れは止まらない。通販大手のモノタロウでも、因幡電工の部材が売られている。標準品から先に商社の利益が削られ、電設資材の薄い利益率はさらに薄くなりうる。
首都圏拡大の難しさ
売上の約6割は西日本で、首都圏は競合が厚い。再開発やデータセンターの大型物件は、取れても値引きの圧力が強く、利益率の低い売上が増えるだけになる恐れがある。物流拠点と本社移転の投資が回収できるかは、まだ見えない。
投資とM&Aの実行
3年で最大300億円の投資枠と、約100億円のイノベーションセンターは、まだ成果が出ていない。M&Aは情報通信や管工機材を候補にするが、大型案件の実績が少なく、買収で価値を壊す恐れが残る。現金が厚いほど、使い方の巧拙が株主の利益を左右する。
人手不足と物流費
建設業と物流業の人手不足は、工事の遅れと配送費の上昇を招く。電設資材は多品種を少量ずつ納める仕事で、物流費の上昇を価格に転嫁できないと、商社部分の薄い利益が先に削られる。
今後の分かれ目
- 電設資材の首都圏の売上が、西日本より速く伸び続けたら
- シェアの上昇が数量の実力として確認できる。やや楽観・楽観側に確率を寄せてよい。
- 2027年度のエアコン出荷が反動で大きく落ち、自社製品の空調が減益になったら
- 好調に前倒しが混じっていたことが確定する。やや悲観側に確率を寄せ、利益率の水準を見直す。
- パトライトや省施工の管材など、空調以外の自社製品が全体の利益の1割を超えて育ったら
- 空調への偏りが薄まり、自社製品の堀を厚く見直せる。強気側の筋書きの確率を上げる。
- 通販やメーカー直販が、電線・配線器具の標準品で工事会社への直販を広げたら
- 商社部分の利益率が先に削られる。やや悲観・悲観側に確率を寄せる。
- 大型のM&Aを、現金を使って割高に実行したら
- 資本配分への評価を下げる。余った現金の戻り方を0.5へ下げて見直す。
- 銅価格が急落し、電線の売上と在庫評価が同時に落ちたら
- 商社部分の利益は一時的に落ちる。事業の実力が変わったかを見分け、一時の落ち込みなら筋書きは動かさない。
見ておくもの
- 電設資材の首都圏の売上の伸びと全国シェア
- 自社製品(空調・パトライト・アバニアクト)の売上と利益率
- 国内のルームエアコン出荷台数と、省エネ基準変更後の反動
- 銅建値と電線の売上・粗利益率
- 総還元性向60%の実行(自社株買い・特別配当)と投資枠の使い方
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と ROE から式で出した上限の7〜9割に置き、今の値段・過去の倍率・同業の倍率は根拠にしていない。商社部分の利益率が薄く堀が厚くないので、中立は上限の9割に届かせなかった。営業利益率は今の過去最高圏のまま上げず、確率は上と下をほぼ並べた。新リース会計基準(2028年3月期から貸借対照表に載る)で営業利益と負債の形が変わるが、10年後の数字は今の形(家賃を営業費用に入れる形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17→20.81 倍・やや楽観 PER 16→20.39 倍・中立 PER 14.9→20.04 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 6.50%。