結論
スクロールは、生協向けのカタログ通販の会社から、他社の通販を裏方で支える物流・決済の会社へ軸足を移している。筆者の結論は、総合でやや割高。稼ぎ頭の通販が縮み、後継のソリューションは薄利で、成長の見返りが今の値段に見合わないと見るからだ。
利益の7割は今も通販が生む。ところが売り先の生協は、宅配の利用人数が年2%ほど減っている。前期の通販は売上が6%、利益が2割落ちた。穴を埋めるのがソリューションで、前期は売上が2割、利益が8割近く伸びた。ただ、利益率は4%にとどまる。
10年中立では、通販がゆるやかに縮み、ソリューションが穴を埋めて、利益は4割ほど増える。それでもROEは11%台で、資本コスト(8.5%)を大きく超えない。10年後の時価総額は、今を1割ほど上回る程度だ。
下値は固い。純現金が厚く、配当も手厚い。ただ、純現金の大半は決済代行の立替に使う運転資金で、自由に使える余剰とは言えない。悲観の筋書きでも会社は倒れないが、営業利益は今の6分の1ほどまで細る。
確率で加重して資本コストで割り戻すと、本質価値は今の時価総額を1.5割ほど下回る。配当の厚さを加えても、割安とまでは言えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業が10年後も続くかを問う。スクロールは続く。ただ、中身は入れ替わる。稼ぎ頭の通販は、生協の組合員という縮む客層に頼っている。成長を担うソリューションは、利益率4%の薄い商売だ。堀の薄い事業を、割安でもないのに買う理由は見当たらない。
持ち続けたいと思える点もある。純現金を持ち、借金に頼らない。経営は優待をやめて配当に集約し、赤字の事業から手を引いた。資本の使い方を変えた経営を、筆者は評価する。
問題は払う値段との釣り合いである。10年中立で利益は4割ほど増えるが、ROEは11%台にとどまり、資本コストを大きく上回らない。配当は厚いが、それは利益の多くを外に出しているからで、成長の余地が小さい裏返しでもある。安全域は、悲観の筋書きでも純現金が下値を支える点に求めるのが妥当だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。最大は通販事業で、売上は約370億円。生協(コープ)の組合員向けに、衣料を中心とした生活用品をカタログで売る。商品の企画、仕入れ、カタログ制作、物流までを自前で回し、生協ごとの専用カタログで売る。一般の消費者を相手にした広告競争とは距離を置いた商売だ。
もう1つの柱がソリューション事業で、売上は約376億円。他社の通販会社から、物流(倉庫での保管・梱包・出荷。子会社のスクロール360が全国19拠点で運営)、決済代行(後払いの立替)、コールセンターなどを請け負う。決済代行は毎月80〜100億円を立て替えるので、手元の現金は運転資金として働いている。利益率は4%ほどと薄いが、物量が積み上がるほど拠点の稼働が上がる。
3つ目はeコマース事業で、売上は約153億円。防災用品などをネットで売る。並行輸入と旅行から撤退を決め、止血の最中にある。
売上の構成はソリューションと通販がほぼ並び、利益は今も通販が7割を稼ぐ。社長は「通販会社ではなくなった」と語り、個人向けの売上は全体の2割を切った。丸紅が8%ほどを持つ大株主だが、親会社はなく、創業家の支配もない。
優良さと弱いところ
堀は薄いと筆者は見る。通販は生協との長い取引が土台だが、売り先の生協は買い手として強い。商品の企画から物流までを丸ごと請け負うので乗り換えの手間は小さくないものの、組合員が減れば数量は減る。生協の宅配は利用人数が年2%ほど減っており、スクロールの通販事業も2026年3月期は売上が6%減った。
ソリューション事業は、価格で勝負が決まる世界だ。物流代行にはオープンロジや関通ホールディングスなど専業が多く、決済代行は貸倒れの管理が利益を左右する。前期は不採算の契約で値上げや条件の見直しを進め、利益が大きく増えた。規律が利き始めたことは評価できる。ただ、薄利の事業が積み上がっても、堀が深くなるわけではない。
資本効率は並みである。過去10年のROEの中央値は9%。2021年に19%まで上がったが、その後は下がり、2026年3月期は特別損失で7%だった。2015年から2020年は営業利益率が2%台で、赤字の期もあった。
経営は資本の使い方を改めつつある。株主優待を終え、配当性向60%かDOE8.5%の高い方を下限とする累進配当に切り替えた。自社株買いも20億円を実施した。一方で、のれんの全額減損と事業撤退の損失があり、過去の新規事業や買収の目利きには傷がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
通販の本拠である生協の宅配は、金額を保ちながら中身が細っている。2025年度の宅配の供給高は2兆1,253億円で、前年比0.2%増だった。ところが利用人数は1.9%減、利用点数は3.5%減である。値上げで金額を支え、買う人と買う量は減る構図だ。カタログが紙からスマホに移る流れも重なる。
ネット通販全体はなお伸びる。物販のEC化率は9.78%(2024年)で、衣類は23%を超えた。ただ、これはスクロールのカタログ通販の追い風にならない。伸びるのはアマゾンや楽天、各社の自社サイトだ。生協の組合員には紙のカタログに慣れた層が多く、その層が減る分を新しい客で埋めにくい。
ソリューションの市場は、これから伸びる側にある。宅配便は年50億個を超え、通販各社は人手不足と運賃の上昇で、物流を自前で抱えにくくなっている。外に出す需要は増える。一方で参入は多く、倉庫の稼働率と価格で勝負が決まる。賃上げが年3〜5%続く中、人件費の増加を料金に転嫁できるかが分かれ目になる。
決済代行は、後払いを求める通販が増えるほど市場が広がる。ただし立替を伴うため、貸倒れが出れば利益が飛ぶ。スクロールも前期までに不良債権の処理を済ませたと説明している。10年の見通しは、通販の縮小をソリューションの成長がどこまで埋めるかにかかっている。
資本政策と M&A
還元の姿勢は変わった。配当性向60%かDOE(純資産に対する配当の比率)8.5%の高い方を下限にする累進配当を掲げ、今期の配当は純利益の8割に近い。株主優待は2026年3月末で終えた。2026年8月には20億円(約108万株)の自社株買いを終え、60万株超を消却する。
資金の使い道は、2029年度までの5年間で営業キャッシュフロー約330億円を見込み、還元に約160億円、物流センターなどの再投資に約100億円、M&Aに約150億円を充てる計画だ。M&Aの年30億円ほどは時価総額の5%にあたる。買収でソリューションの規模を買う狙いだが、過去にはのれんの全額減損もあり、実行力は試される。
大株主は信託銀行(約12%)と丸紅(約8%)で、親会社はいない。時価総額が小さく純現金も厚いので、買収の対象になりうる位置にもあるが、具体的な動きは確認できていない。
2026 年 8 月に終えた自社株買い 20 億円は株数と自己資本の起点に反映したため、10 年の還元からは除いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
通販が思ったほど落ちない。生協の宅配は利用人数こそ減るが、1人あたりの単価は上がっており、スクロールは企画から物流まで任される数少ない取引先だ。前期の減益は猛暑と暖冬という天候の要因が大きく、物価高が一巡すれば受注は戻る。カタログからアプリへの移行も進めている。
ソリューションは、会社の計画どおり売上の過半になる。物流代行は新設のつくば拠点が稼働し始め、新しい顧客が増えている。不採算の契約を値上げで直した効果で、利益は前期に8割近く伸びた。決済代行も不良債権の処理を終え、今期から利益に貢献する。人手不足でどの会社も物流を外に出したがる中、全国19拠点の網は武器になる。
利益が増える割に、株価は今期予想の純利益の14倍ほどにすぎない。配当だけで利回りは7%台に乗る。純現金も厚く、業績が崩れても下値は固い。会社の目標は2029年度に純利益60億円、ROE15%以上だ。目標を達成すれば、今の値段は安い。
慎重な見方
通販は構造的に細る。生協の宅配は利用人数も点数も毎年減り、単価の上昇で金額を保っているだけだ。スクロールの通販は前期に6%減り、利益は2割減った。天候のせいにしても、顧客基盤が縮んでいる事実は変わらない。生協という買い手は強く、値下げ要求や取引の見直しが来れば利益率は一気に下がる。
ソリューションは利益率4%の薄利で、拡大してもたいして稼げない。物流は競争が激しく、人件費の上昇を料金に乗せ切れない。決済代行は立替が月に80〜100億円あり、貸倒れが1度出れば年間の利益が消える。前期の利益増には、過去の不良債権の処理が終わった反動の面もある。
配当は純利益の8割で、自社株買いも重なる。これは成長の投資先がないことの裏返しだ。会社の中期計画は、M&Aに5年で150億円を使うとする。のれんの全額減損を出した会社が、買収で価値を積み上げられるか。累進配当の約束は、利益が落ちた時に自らの首を絞める。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強いと筆者は見る。通販の縮小は統計が裏づける事実で、ソリューションの成長は計画と実行力の話にとどまる。利益の7割を占める通販が縮む以上、強気の見方が頼る「ソリューションの成長」は穴埋めの意味合いが濃い。
一方、強気の見方の指摘にも重みがある。純現金が厚く、配当が下値を支える。このため確率は悲観側にやや寄せつつ、悲観の筋書きでも事業を畳むほどの崩れ方にはしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,458 円809 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 965 円318 億円)。 今の値に割り戻すと 1,795 円591 億円、今との差 +2.2%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,569 円1,504 億円 | 1,191 円392 億円 | +228.0% | +12.6% | 461 円152 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,747 円1,233 億円 | 1,164 円383 億円 | +179.6% | +10.8% | 982 円323 億円 |
| 中立 | 34% | 2,896 円953 億円 | 1,066 円351 億円 | +125.6% | +8.5% | 1,347 円443 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,297 円427 億円 | 908 円299 億円 | +25.6% | +2.3% | 551 円182 億円 |
| 悲観 | 13% | 265 円87 億円 | 365 円120 億円 | −64.2% | −9.8% | 82 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,458 円809 億円 | 965 円318 億円 | +95.0% | +6.9% | 3,423 円1,127 億円 |
今の株価時価総額 1,756 円578 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% ソリューションが主役になり、通販の落ち込みも止まる 利益 91 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 4,569 円1,504 億円
ソリューション事業が会社の計画どおりに売上の過半を占め、通販の落ち込みも止まる。生協の利用人数は減るが、スクロールは企画から物流まで任される取引先として地位を守り、ネット注文を取り込んで点数の減りを1割に抑える。
ソリューションは新設のつくば拠点など物流網の稼働が上がり、新しい顧客が増える。BPOや決済代行のM&Aも成功し、受託の件数は10年で倍近くになる。薄利の事業でも、物量が積み上がれば利益率は7%に届く。
eコマースは撤退で身軽になり、防災用品など得意な分野に絞って小さな黒字を保つ。会社の2029年度の目標(純利益60億円)を前倒しで超え、10年後は利益が今の倍になる。配当と自社株買いで、利益の6割強を返し続ける。
- 通販事業(生協向け):数量 1,319(出荷点数(万点))× 価格 0.34(1点あたり売上(万円))→ 売上 442 億円・営業利益 51 億円。点数-10%・単価+34%(ネット注文が下支え)
- ソリューション事業:数量 14,292(受託処理件数(万件。物流の出荷・決済・コール対応の合算の推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(万円))→ 売上 958 億円・営業利益 67 億円。件数+90%・単価+34%(M&A込み)
- eコマース事業:数量 714(出荷点数(万点))× 価格 0.20(1点あたり売上(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 6 億円。点数-30%・単価+34%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.2 倍、時価総額 1,473 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画(2029年度に純利益60億円・ROE15%以上)を上回り、M&Aも成功する筋書き。通販の縮小が止まる前提が重いので8%にとどめた。
やや楽観 20% ソリューションの拡大が通販の縮小を上回る 利益 76 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 3,747 円1,233 億円
ソリューションが計画に近いペースで伸び、通販の縮小は緩やかにとどまる。通販は生協の利用点数が減る中でも、15%の減少に抑える。単価は物価並みに上げられ、売上は10年でわずかに増える。
物流代行は新しい顧客を積み重ね、受託件数は7割増える。人件費の上昇は料金に転嫁でき、利益率は6%台に上がる。決済代行は貸倒れを抑え、安定した収益源になる。M&Aは小粒のものがいくつか成功する。
eコマースは縮小しつつ黒字を保つ。全体の利益は10年で7割ほど増え、ROEは13%台に乗る。還元は利益の7割弱を保ち、自己資本もゆっくり積み上がる。会社が掲げる2029年度の純利益60億円は、数年遅れで届く計算になる。
- 通販事業(生協向け):数量 1,246(出荷点数(万点))× 価格 0.34(1点あたり売上(万円))→ 売上 417 億円・営業利益 45 億円。点数-15%・単価+34%
- ソリューション事業:数量 12,787(受託処理件数(万件。物流の出荷・決済・コール対応の合算の推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(万円))→ 売上 857 億円・営業利益 54 億円。件数+70%・単価+34%
- eコマース事業:数量 612(出荷点数(万点))× 価格 0.20(1点あたり売上(万円))→ 売上 123 億円・営業利益 4 億円。点数-40%・単価+34%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.78 倍、時価総額 1,206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画に近いペースでソリューションが伸び、通販の縮小も緩やかにとどまる。前期のソリューションの増益という実績が根拠。
中立 34% 通販はゆるやかに縮み、ソリューションが穴を埋める 利益 61 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,896 円953 億円
通販は生協の利用点数の減少と同じペースで縮み、ソリューションがその穴を埋める。通販の点数は10年で2割減る一方、単価は物価並みに上がるので売上はわずかに増える。利益率は10%を割る。物流センターの再投資と人件費の上昇が重い。
ソリューションは宅配便とEC物流の拡大の中で、受託件数が5割増える。価格は物価並みに転嫁でき、利益率は4%から5.5%まで上がる。決済代行は貸倒れを抑える。M&Aは年30億円規模を投じるが、利益への寄与は計画より小さくなる。
eコマースは撤退後の規模に落ち着き、3%の利益率で小さく続く。全体では売上が4割増え、営業利益は5割ほど増える。配当性向は7割を超えて維持し、自己資本は少しずつ積み上がる。
- 通販事業(生協向け):数量 1,173(出荷点数(万点))× 価格 0.34(1点あたり売上(万円))→ 売上 393 億円・営業利益 37 億円。点数-20%・単価+34%(物価並み)
- ソリューション事業:数量 11,283(受託処理件数(万件。物流の出荷・決済・コール対応の合算の推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(万円))→ 売上 756 億円・営業利益 42 億円。件数+50%・単価+34%(物価並み)
- eコマース事業:数量 561(出荷点数(万点))× 価格 0.20(1点あたり売上(万円))→ 売上 113 億円・営業利益 3 億円。点数-45%・単価+34%
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 917 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通販は生協の利用点数の減少と同じペースで縮み、ソリューションは宅配便・EC物流の伸びと市場の取り込みで着実に伸びる。最も起こりやすい筋書き。
やや悲観 25% 通販の縮小が速まり、物流は価格競争に巻き込まれる 利益 40 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,297 円427 億円
通販の縮小が速まり、ソリューションは価格競争で伸び悩む。生協の利用点数が毎年3%超減り、スクロールの通販は10年で点数が3割落ちる。値上げは通りにくく、単価の上昇は物価を下回る。固定費が重く、利益率は7%台まで下がる。
物流代行は競争が激しく、人件費の上昇を転嫁しきれない。受託件数は25%しか増えず、利益率は4%台にとどまる。決済代行で貸倒れが小さく出て、利益を削る。
eコマースは規模を縮め、ほぼ収支とんとんになる。全体の利益は今の水準を割り込む。累進配当の約束があり、還元は利益の8割近くに達し、自己資本は積み上がらない。
- 通販事業(生協向け):数量 1,026(出荷点数(万点))× 価格 0.31(1点あたり売上(万円))→ 売上 321 億円・営業利益 24 億円。点数-30%・単価+25%(転嫁し切れない)
- ソリューション事業:数量 9,403(受託処理件数(万件。物流の出荷・決済・コール対応の合算の推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(万円))→ 売上 611 億円・営業利益 28 億円。件数+25%・単価+30%(価格競争)
- eコマース事業:数量 459(出荷点数(万点))× 価格 0.20(1点あたり売上(万円))→ 売上 92 億円・営業利益 1 億円。点数-55%・単価+34%
倍率:事業ROE約8.5%でkと同じ水準。ためた利益は額面を下回る価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。縮む事業を抱え、上限の約76%の9.0倍に置いた。
確率:通販の縮小が統計より速く、物流は賃上げの転嫁が遅れて利益率が上がらない。縮む市場に依存する事業なので確率は厚めの25%。
悲観 13% 大口の離反と貸倒れが重なり、薄利の事業が残る 利益 9 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 265 円87 億円
大口の離反と貸倒れが重なり、薄利の事業が残る。生協が取引を見直し、通販の点数は半分に減る。物流センターなどの固定費は残るので、利益率は3%まで落ちる。
ソリューションでは大口の物流顧客が自社物流に戻り、受託件数は減る。価格競争も続く。決済代行の貸倒れが再び出て、利益は吹き飛ぶ。M&Aで買った事業ののれんも減損する。
eコマースは小さな赤字が続く。全体の営業利益は10億円に届かない。累進配当は維持できず、還元を大きく絞る。それでも借金に頼らない財務と厚い純現金が下値を支え、会社が倒れることはない。ただ、優良な通販・物流の会社としての評価は失われ、営業利益は今の6分の1ほどまで細る。
- 通販事業(生協向け):数量 733(出荷点数(万点))× 価格 0.29(1点あたり売上(万円))→ 売上 211 億円・営業利益 6 億円。点数-50%・単価+15%(固定費が残る)
- ソリューション事業:数量 7,146(受託処理件数(万件。物流の出荷・決済・コール対応の合算の推定))× 価格 0.06(1件あたり売上(万円))→ 売上 429 億円・営業利益 6 億円。件数-5%・単価+20%(大口の離反と貸倒)
- eコマース事業:数量 306(出荷点数(万点))× 価格 0.18(1点あたり売上(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 −1 億円。点数-70%・単価+20%
倍率:悲観の床は今の自己資本 377 億円に掛ける。稼ぐ力(純利益約 9 億円 ÷ k)は 100 億円ほどで、純現金(自社株買い 20 億円の後で約 87 億円)の方がわずかに小さい。値は床の純現金(floor_assets_oku)に置き、今の自己資本の 0.231 倍とした。
確率:生協の取引見直しや大口顧客の離反、決済代行の貸倒れが重なる構造的な負け。前期までに貸倒れの処理を要した実績があり、5%を超えて見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
通販事業(生協向け)
生協の組合員向けに、衣料を中心とした生活用品を専用カタログで売る通販。企画・仕入れ・カタログ制作・物流を一貫して担う。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1点あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,466 | 0.25 | 367 | 39 |
| 10 年後 中立 | 1,173 | 0.34 | 393 | 37 |
取り方:2026年3月期の通販事業の売上366.6億円。出荷点数は開示がなく、1点あたり約0.25万円と仮置きして1,466万点と推定。営業利益はセグメント利益41.8億円(経常ベース)から、金融収益の配分3億円ほどを引いて38.8億円とした。
ソリューション事業
他社の通販会社から物流代行(スクロール360)、決済代行(後払いの立替)、コールセンター・BPOを請け負う事業。
| 数量受託処理件数(万件。物流の出荷・決済・コール対応の合算の推定) | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,522 | 0.05 | 376 | 15 |
| 10 年後 中立 | 11,283 | 0.07 | 756 | 42 |
取り方:売上376.1億円。物流の出荷・決済の取扱・コール対応を合算した受託処理件数は開示がなく、1件あたり約0.05万円と仮置きして7,522万件と推定。営業利益はセグメント利益15.7億円から金融収益の配分1.2億円を引いて14.5億円。 数量は実物(処理件数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
eコマース事業
防災用品などをネットで売る事業。並行輸入と旅行からは撤退を決めた。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1点あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,020 | 0.15 | 153 | 4 |
| 10 年後 中立 | 561 | 0.20 | 113 | 3 |
取り方:売上153.1億円。出荷点数は開示がなく、1点あたり約0.15万円と仮置きして1,020万点と推定。営業利益はセグメント利益3.85億円から0.2億円を引いた。セグメント売上の合計は連結より約10億円多く、差は内部取引の消去。連結の営業利益57.3億円に合わせ、調整は+0.3億円。
リスクと懸念
通販の客層が縮む
通販の売り先は生協の組合員で、宅配の利用人数は年2%ほど、点数は3%ほど減っている。単価の値上げで金額を保っているだけで、前期は売上が6%減り、利益は2割落ちた。縮小が速まれば、利益の7割を稼ぐ事業が崩れる。
生協という買い手の強さ
通販事業の取引先は生協で、一括して買い付ける強い買い手である。値下げや条件の見直しを求められる、取引を自社の仕組みに切り替えられるといった事態は、利益率に直撃する。取引先ごとの売上比率は開示がなく確かめられない。
決済代行の貸倒れ
決済代行は毎月80〜100億円を立て替える。取引先の通販会社が行き詰まれば立替金が回収できず、利益が吹き飛ぶ。会社は前期までに不良債権の処理を済ませたと説明するが、事業の構造上、再発の可能性は残る。
物流の人件費と固定費
物流代行は人手が要り、賃上げは年3〜5%続く。料金に転嫁できなければ、利益率4%の薄い事業はすぐ赤字に近づく。本社物流センターは築50年超で、再投資に約100億円の成長投資枠の一部を使う。
M&Aの実行
計画では5年で約150億円をM&Aに充てる。2026年3月期には、のれんの全額(約5億円)を減損した。ソリューションの規模を買う狙いでも、割高な買収や統合の失敗があれば、配当の原資を失う。
累進配当の重さ
配当性向60%かDOE8.5%の高い方を下限とする累進配当は、利益が落ちた時に重くなる。今期の配当は純利益の8割に近い。利益が落ちれば配当の維持と投資の両立が難しくなり、自己資本が痩せる。
今後の分かれ目
- 生協の宅配の利用人数が年2%を超えて減り続けた場合
- 通販の縮小が速まり、やや悲観の筋書きに近づく。
- ソリューションの利益が、会社計画どおり経常21億円に届いた場合
- 受託事業の収益力が確かになり、やや楽観の筋書きに近づく。
- 決済代行で再び大きな貸倒れが出た場合
- 薄利の事業が一気に赤字に近づき、悲観の筋書きに近づく。
- 大型のM&Aで規模を買った場合
- 成否は買値と統合の出来で決まる。割高ならのれんの減損で、悲観側に近づく。
- 生協が取引条件の見直しを求めてきた場合
- 通販の利益率が下がり、やや悲観の筋書きに近づく。
- 株式の買い集めやTOBが現れた場合
- 純現金と配当の厚さが評価され、提示価格は筆者の算定する本質価値との比較になる。
見ておくもの
- 生協の宅配の利用人数・利用点数
- ソリューション事業の売上と利益率(経常21億円の計画)
- 決済代行の貸倒引当金の動き
- 物流拠点の稼働率と新規顧客数
- 配当性向・DOEの水準と自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
今の株価や過去の倍率を見ずに、セグメントごとに数量と価格の10年を置き、その時点のROE・成長・資本コストから正当化PERを出して、上限の約8割に置いた。純現金は決済代行の立替という運転資金なので、分けて足していない。店舗の賃借はないが、物流拠点の一部は賃借の可能性がある。賃借の約束額は有報の未経過リース料で確認できておらず、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。2028年3月期から新リース会計基準で形が変わる点に留意する。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→16.2 倍・やや楽観 PER 11.5→15.78 倍・中立 PER 10.7→15.04 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。