結論
明電舎は、電力会社・鉄道・上下水道に電機設備を納め、その保守でも稼ぐ重電の中堅だ。実力は高く評価できる。ただし筆者の結論は、今の株価は先の成功を織り込みすぎた「割高」というものだ。
稼ぎの柱は二本ある。送配電・受変電機器の電力インフラと、納めた設備を点検・延命する保守サービス(FE)だ。前期の営業利益271億円のうち、この二つで250億円を超えた。米国とインドの変電需要が強く、今期の見通しも7月に引き上げられた。
弱いのは、EV向けモーター・インバーターを含む産業電子モビリティだ。前期は33億円の減損を出し、利益はほぼゼロだった。電力インフラの受注高が前の年を下回った点も気になる。売上が最大の社会システムは、利益率が4%に届かない。
中立の筋書きでも、10年後の利益は今の1.5倍ほどだ。今のPERは22倍に乗っている。利益が成長しても、中立の倍率(PER15倍弱)に落ち着けば株価は報われない。年率の収益は、楽観の筋書きでも資本コストの7.5%を少し上回る程度にとどまる。
会社は中期計画の目標をすでに超えた。これからは、超えた先でどこまで伸ばせるかが問われる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い事業を、安全な値段で持てるかが問いになる。
事業の質は悪くない。保守は積み上がる収益で、電力機器の需要も10年は続く。10年後も存在し、今より強いと言える事業だ。
ただ、オーナーの手元に残る利益は、見かけより小さい。成長のために工場へ巨額を投じており、稼ぎのほとんどを設備に回す計画だ。利益の山も、景気と海外の受注に乗った面が大きい。
資本配分は、これから試される。大きな投資の回収が見える前に、買収に走らないことを願う。EV事業の見切りの判断も重要になる。
最後は値段だ。今の22倍という倍率は、利益が長く高成長で伸び続けることを前提にする。中立でも利益は今の1.5倍止まりで、倍率は10倍台前半に戻ると見る。10年後に現在の時価総額を超えるのは、楽観の一部の筋書きだけだ。安全域は無い。
事業は好ましい。しかし、この値段では持ちたくない。
10年先を見て、事業の火は消えないが、株主が得る果実は倍率の戻りで削られる。それが本質価値の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに分かれる。
電力インフラは、変圧器・開閉装置・真空遮断器など、発電所から工場までの電気の通り道をつくる。顧客は電力会社と大口の工場、そして最近はデータセンターだ。SF6という温室効果の強いガスを使わない真空遮断器が、海外の規制強化と相性がよい。米国の真空遮断器、インドの変圧器、ドイツの避雷器に投資を進めている。前期の売上は約1,000億円、利益率は12%台と過去最高だった。
社会システムは、上下水道の電気・監視設備、鉄道の変電設備、官公庁向けのシステムを担う。売上は最大の約1,050億円だが、利益率は4%に届かない。官需が中心で、案件ごとの採算の差が大きい。
FEは、納めた設備の保守・点検・延命を請け負う。売上は570億円と小さいが、利益率は22%ある。設備が増えるほど仕事が積み上がる、景気に左右されにくい事業だ。
産業電子モビリティは、EV・ハイブリッド車用の駆動モーターとインバーター、半導体製造装置向けの電源部品などだ。売上は約700億円。顧客の車種が売れないと数量がすぐ落ちる。会社は、新しい採用車種を3〜6年で取れなければ「プランB」を考えると語っている。
このほか、大崎の不動産賃貸が利益を14億円ほど足す。
事業の構成を見ると、売上は社会システムと電力インフラで6割を占める。一方、利益ではFEと電力インフラで9割を占める。売上の大きさと稼ぎの大きさが一致しない会社だ。筆者は、利益の源泉がどこにあるかを見ることが、この会社を読む近道だと考える。
優良さと弱いところ
優良さは「保守が支える電力機器メーカー」というところにある。
最も強いのは、納めた設備に付く保守の収益だ。受変電設備や水処理設備は何十年も動き続ける。更新時も、設計を知る納入元が有利になる。FEの利益率が20%を超えるのは、この構造のためだ。
電力インフラでは、真空遮断器の技術が堀になる。国内で真空コンデンサを手がけられるのは自社だけ、と会社は説明している。ただし、変圧器・HVDC(高圧直流送電)は世界の大手が支配する市場だ。明電舎のシェアは1%に届かない。値段を決める力は大手より弱い。
資本の効率は改善した。ROEは6〜9%台から13%台に上がった。ただし、需要の追い風と固定資産の売却益に助けられた面がある。景気の山で測った利益だ。
弱点は三つある。EV事業の赤字、社会システムの低い利益率、そして規模の小ささだ。売上は三菱電機の十分の一ほどで、調達や研究費でも劣る。
経営は、利益が出た年に増配を続け、配当性向を3割に置く。自社株買いはこの10年一度もしていない。資本の使い方としては、まだ控えめだ。
保守で稼ぐ会社は、売った設備の数が収益の元になる。明電舎の納入実績は戦前からの長さがあり、電力会社・鉄道・水道局という息の長い顧客を持つ。この顧客基盤は、新規参入者が一朝一夕にまねできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は構造的だが、明電舎が受ける分け前は限られる。
AIデータセンターの電力需要と、北米・欧州の送配電網の更新が、変圧器・開閉装置の需要を押し上げている。変圧器の世界市場は年8〜9%で伸びるとの見通しがあり、納期は長くなった。大手のシーメンス・エナジー、GE Vernova、日立エナジー、三菱電機は大型投資を進めている。
中堅の明電舎は、この大手がさばききれない中小型の受変電設備、SF6不使用の機器、特定の用途に強みを持つ。米国とインドで受注が伸びたのはそのためだ。
国内は、老朽設備の更新と国土強靱化が需要を支える。人口が減るので、数量は横ばいと見るのが自然だ。上下水道・鉄道は予算の範囲で動く。
リスクは二つある。一つは、データセンター投資が止まる局面だ。重電の受注は2008〜2009年に3〜4割落ちた。もう一つは、中国・韓国の重電メーカーによるインフラ輸出の拡大だ。価格を崩す力がある。
EV向け部品は別の業界だ。車の販売の波と、中国・欧州の部品メーカーとの競争を受ける。電力の好調が、この赤字を覆い隠している面もある。
なお、国内の防災・老朽インフラ対策は、政策の後押しで当面続く。予算の増減が需要の山谷を作る点は、押さえておきたい。
資本政策と M&A
資本政策は「堅実だが、まだ攻めてはいない」。
中期経営計画2027は、3年間の投資を700億円と置く。前の3年の倍以上だ。沼津事業所で変圧器・真空コンデンサ・鉄道機器を増産し、米・印・独の海外拠点にも投じる。工場や人員が売上3,000億円の規模に追いついていないという認識からだ。M&Aは、この枠とは別に検討するとされる。
還元は配当性向30%が基本だ。前期の配当は増配が続いたが、自社株買いはしていない。純有利子負債は自己資本に比べて小さく、余力はある。投資の効率を見ながら、還元の水準を上げる余地があるとみる。
M&Aの買う側としては、規模が小さく大型案件は難しい。買われる側では、中堅で技術に特徴があり、可能性はゼロでない。kabufuの推計で、10年以内のTOB・買収の確率は12〜13%だ。政策保有株の規模は確かめられなかったので、ここでは評価に入れていない。
筆者がいちばん見たいのは、増産投資の回収と、EV事業の見切りの時期だ。ここで資本を粗末にしなければ、還元の厚みも後からついてくる。
点検済み:中立の営業利益率9.4%が会社予想(27・28年3月期8.2%)と過去最高(8.3%)を超え、EV(今ほぼゼロ)と社会システム(今3.9%)を上げていたため、EV1.5%・社会システム4.5%に置き直した(全社8.8%)。同じ文章の「EVは損益ほぼゼロ」に合わせた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
明電舎は、重電の追い風に乗れる数少ない中堅だ。まず需要の質が違う。データセンターと送配電網の更新は、数年単位の投資計画に基づく。納期が延びる中で、大手が手を回せない中小型の受変電設備は、明電舎のような中堅に回ってくる。米国とインドの受注はすでに利益に出ている。
次に、保守の収益がある。納めた設備が増えるほど、利益率20%超のFEが太る。電力インフラの利益率が12%台まで上がったのは、値上げが通っている証拠だ。
投資の効果はこれから出る。3年で700億円を投じる増産が立ち上がれば、受注残を売上に変えられる。EV事業は、収支均衡に届けば全社の重荷が消える。
会社は期中に今期の利益を引き上げた。中計の最終年度の目標も、前倒しで超えた。目標を低めに置く会社だと分かった以上、さらに上があると見るのが自然だ。株価の上昇は、この変化を市場が先に読んだ結果にすぎない。
さらに、SF6を使わない機器への切り替えは規制で後戻りしない。真空遮断器の技術を持つ明電舎には、10年単位の追い風になる。
慎重な見方
利益は景気の山で測った数字だ。重電の受注は2008〜2009年に3〜4割落ちた。データセンター向けの需要に陰りが出れば、同じことが起きうる。今の営業利益率8%台は、過去の3〜5%台から見れば異常に高い。
電力インフラの受注高は前の年より減っている。売上は過去の受注で伸びているが、先行きの指標は弱い。
EV事業は、前期に減損を出した。新しい車種が取れなければ、会社自身が「プランB」と言う状況だ。社会システムは売上が最大なのに、利益率は4%に届かない。利益の質に問題がある。
規模の小ささも弱点になる。変圧器の世界市場は大手の寡占で、明電舎のシェアは1%に届かない。中国・韓国メーカーが輸出を広げれば、価格で押される。
そして値段だ。PERは22倍。重電が10倍台前半で取引されるのが普通だった。利益が伸びても、倍率が戻るだけで株価は半分近くになる。10年後に今の時価総額を超える筋書きは、楽観の一部にしかない。
どちらに重みを置いたか
事業の力は強気の言う通りだが、値段は慎重な見方が正しい。利益が今の1.5倍になる中立でも、今の時価総額に届かない。確率は、需要の追い風を認めて楽観側にも厚めに置いた。一方で受注の減少とEVの不確かさから、悲観側にも同じくらい置いた。結果として中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観よりわずかに多くしている。利益の質を見れば、倍率が式の値に収まる力の方が、需要の上振れより確かだと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 11,612 円5,267 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,146 円1,427 億円)。 今の値に割り戻すと 7,983 円3,622 億円、今との差 −19.4%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 22,142 円1.00 兆円 | 4,146 円1,881 億円 | +165.3% | +10.2% | 2,366 円1,073 億円 |
| やや楽観 | 21% | 17,608 円7,988 億円 | 3,739 円1,696 億円 | +115.4% | +8.0% | 4,483 円2,034 億円 |
| 中立 | 36% | 12,482 円5,662 億円 | 3,221 円1,461 億円 | +58.4% | +4.7% | 5,653 円2,564 億円 |
| やや悲観 | 23% | 5,277 円2,394 億円 | 2,767 円1,255 億円 | −18.8% | −2.1% | 1,850 円839 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,943 円882 億円 | 1,741 円790 億円 | −62.8% | −9.4% | 405 円184 億円 |
| 加重平均 | 100% | 11,612 円5,267 億円 | 3,146 円1,427 億円 | +48.9% | +4.1% | 14,757 円6,694 億円 |
今の株価時価総額 9,910 円4,496 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:中堅から世界の第2集団へ 利益 534 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 22,142 円1.00 兆円
10年かけて、受変電の世界市場でのシェアが今の0.6%弱から0.8%まで上がる。真空遮断器のSF6不使用機が規制で標準になり、米国・インドの拠点が育つ。
FEは設備の増加とともに、利益率22%で伸びる。EV事業は新車種の採用に成功し、黒字が定着する。社会システムの利益率も7%に直る。
大型のM&Aは行わず、現金は増配と自社株買いに回る。利益は今の2倍を超える。ただしROEは15%ほどで、倍率は12倍台にとどまる。
本質価値は上がるが、10年という長さで見ると、今の株価を正当化する水準には届かない。利益が今の2倍になっても、割り引いた現在価値は今の時価総額に及ばない。
- 電力インフラ:数量 13.9(受変電・配電機器の世界市場(億ドル、実質)× 明電舎のシェア)× 価格 1.34(値段の指数(今 1.0。物価で3年1.09倍・10年1.34倍)。円換算は 150 円)→ 売上 2,798 億円・営業利益 392 億円。市場 1740 億ドル(実質)× シェア 0.80%、利益率 14.0%
- 社会システム:数量 0.3(従事人員(万人、推定))× 価格 4,701(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,513 億円・営業利益 106 億円。人員 1.08 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 7.0%
- フィールドエンジニアリング(FE):数量 0.2(保守・サービス人員(万人、推定))× 価格 4,493(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 993 億円・営業利益 218 億円。人員 1.30 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 22.0%
- 産業電子モビリティ:数量 0.3(従事人員(万人、推定))× 価格 4,644(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,161 億円・営業利益 81 億円。人員 1.25 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 7.0%
- 不動産:数量 4.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 9.62(1㎡あたり年間賃料(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 19 億円。賃料のみ物価並みに上昇
倍率:事業の純利益 534 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.81 倍、時価総額 10,044 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェアが倍近くに伸びる筋書きは、中堅にとって難しい。1割弱に置いた。
やや楽観 21% やや楽観:電力と保守の二本足が育つ 利益 445 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 17,608 円7,988 億円
受変電のシェアは0.74%まで上がり、電力インフラの利益率は13%を保つ。市場の数量は実質で4割近く増える。
FEは設備の老朽化に乗って、保守が伸びる。社会システムの採算は6%台に直る。EVは小さな黒字になり、事業の格好がつく。
利益は今の1.9倍ほどになる。株主還元は利益の半分まで高まる。それでも、成長は物価の分を少し超える程度で、倍率は11〜12倍に落ち着く。
電力の追い風は、2030年代の前半まで続くと見る。後半は、物価の分だけを伸ばす成熟した姿に戻る。FEの積み上げが、全体の下支えになる。
- 電力インフラ:数量 12.3(受変電・配電機器の世界市場(億ドル、実質)× 明電舎のシェア)× 価格 1.34(値段の指数(今 1.0。物価で3年1.09倍・10年1.34倍)。円換算は 150 円)→ 売上 2,462 億円・営業利益 320 億円。市場 1656 億ドル(実質)× シェア 0.74%、利益率 13.0%
- 社会システム:数量 0.3(従事人員(万人、推定))× 価格 4,701(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,485 億円・営業利益 92 億円。人員 1.06 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 6.2%
- フィールドエンジニアリング(FE):数量 0.2(保守・サービス人員(万人、推定))× 価格 4,493(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 955 億円・営業利益 201 億円。人員 1.25 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 21.0%
- 産業電子モビリティ:数量 0.2(従事人員(万人、推定))× 価格 4,644(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,022 億円・営業利益 56 億円。人員 1.10 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 5.5%
- 不動産:数量 4.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 9.62(1㎡あたり年間賃料(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 19 億円。賃料のみ物価並みに上昇
倍率:事業の純利益 445 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.95 倍、時価総額 7,988 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力と保守は強いが、中堅がこれ以上に勝ち続けるのは難しいので、2割強に置いた。
中立 36% 中立:優良な中堅として成熟する 利益 341 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 12,482 円5,662 億円
電力インフラは2030年代前半まで高水準を保ち、後半に平常化する。シェアは少し上がるが、大手との差は埋まらない。
FEは保守の積み増しで、安定して伸びる。社会システムは人口減で数量が伸びず、利益率が4%台に改善する程度だ。EVは損益ほぼゼロのまま、規模を縮める。
売上は今の1.6倍、利益は1.5倍になり、還元は利益の半分に上がる。ROEは10%台に落ち着き、倍率は11倍台になる。優良な中堅として、普通に評価される10年だ。
社会システムでは、人口減の中で数量は微増にとどまる。それでも、水処理や鉄道の制御設備で、DXと保守の高度化により1人あたり売上は物価を少し上回る。これらを合わせても、利益の伸びは年4%弱にとどまる。
- 電力インフラ:数量 10.6(受変電・配電機器の世界市場(億ドル、実質)× 明電舎のシェア)× 価格 1.34(値段の指数(今 1.0。物価で3年1.09倍・10年1.34倍)。円換算は 150 円)→ 売上 2,133 億円・営業利益 256 億円。市場 1560 億ドル(実質)× シェア 0.68%、利益率 12.0%
- 社会システム:数量 0.3(従事人員(万人、推定))× 価格 4,701(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,457 億円・営業利益 66 億円。人員 1.04 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 4.5%
- フィールドエンジニアリング(FE):数量 0.2(保守・サービス人員(万人、推定))× 価格 4,493(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 917 億円・営業利益 183 億円。人員 1.20 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 20.0%
- 産業電子モビリティ:数量 0.2(従事人員(万人、推定))× 価格 4,644(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 929 億円・営業利益 14 億円。人員 1.00 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 1.5%
- 不動産:数量 4.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 9.62(1㎡あたり年間賃料(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 19 億円。賃料のみ物価並みに上昇
倍率:事業の純利益 341 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.59 倍、時価総額 5,662 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力の需要は続くが、10年先まで特別な超過成長は続かないとみて、中立に最も厚い確率を置いた。
やや悲観 23% やや悲観:大手と海外勢に押される 利益 252 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 5,277 円2,394 億円
データセンター投資の過熱が冷め、送配電の更新も平常化する。中国・韓国の重電メーカーが輸出で価格を下げ、電力インフラの利益率は10%に下がる。
FEは堅調だが、新設が減れば伸びは鈍る。EVは赤字を出し続け、結局は撤退か縮小になる。利益は今を上回るものの、伸びは物価の分を超えない。
資本を投じても稼ぎが追いつかず、ROEは資本コストを下回る。倍率は9倍台まで下がる。
社会システムは官需の安定が救いだが、大きな伸びは望めない。会社の中身は、保守と官需の守りの会社へ戻っていく。株主への還元は続けるが、配当性向は3割台にとどまる。
- 電力インフラ:数量 8.6(受変電・配電機器の世界市場(億ドル、実質)× 明電舎のシェア)× 価格 1.34(値段の指数(今 1.0。物価で3年1.09倍・10年1.34倍)。円換算は 150 円)→ 売上 1,737 億円・営業利益 174 億円。市場 1440 億ドル(実質)× シェア 0.60%、利益率 10.0%
- 社会システム:数量 0.3(従事人員(万人、推定))× 価格 4,701(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,401 億円・営業利益 63 億円。人員 1.00 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 4.5%
- フィールドエンジニアリング(FE):数量 0.2(保守・サービス人員(万人、推定))× 価格 4,493(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 855 億円・営業利益 154 億円。人員 1.12 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 18.0%
- 産業電子モビリティ:数量 0.2(従事人員(万人、推定))× 価格 4,644(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 790 億円・営業利益 0 億円。人員 0.85 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 0.0%
- 不動産:数量 4.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 9.62(1㎡あたり年間賃料(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 19 億円。賃料のみ物価並みに上昇
倍率:ROE 8.4%・資本コスト 7.25% から正当化 PER 14.2 倍(g 4.0%・残る割合 0.50)を計算し、その 67% をやや悲観の倍率に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 2,394 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:規模の小さい中堅が10年で市場の寡占に押される可能性は低くない。やや悲観は楽観より厚い2割強に置いた。
悲観 11% 悲観:構造的に負ける 利益 116 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 1,943 円882 億円
品質問題やEV事業の失敗が重なり、優良な会社ではなくなる。海外では価格競争に負けてシェアを失い、電力インフラの利益率は6%に沈む。
EV事業は減損と撤退費用で自己資本を削る。国内の官需と保守だけが残り、利益は今の半分ほどになる。ROEは5%に届かない。
成長投資を回収できなかった会社として、自己資本に対する倍率で評価され、0.5倍まで下がる。
財務は傷むが、国内の官需と保守があるので、会社は潰れない。ただ、成長を期待した投資家は去る。これは、規模の小さな中堅が重電の寡占に飲まれた時の、最も現実的な姿だ。
- 電力インフラ:数量 5.4(受変電・配電機器の世界市場(億ドル、実質)× 明電舎のシェア)× 価格 1.34(値段の指数(今 1.0。物価で3年1.09倍・10年1.34倍)。円換算は 150 円)→ 売上 1,085 億円・営業利益 65 億円。市場 1200 億ドル(実質)× シェア 0.45%、利益率 6.0%
- 社会システム:数量 0.3(従事人員(万人、推定))× 価格 4,701(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,289 億円・営業利益 39 億円。人員 0.92 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 3.0%
- フィールドエンジニアリング(FE):数量 0.2(保守・サービス人員(万人、推定))× 価格 4,493(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 764 億円・営業利益 115 億円。人員 1.00 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 15.0%
- 産業電子モビリティ:数量 0.1(従事人員(万人、推定))× 価格 4,644(1人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 557 億円・営業利益 −17 億円。人員 0.60 倍 × 1人あたり売上 1.34 倍、利益率 -3.0%
- 不動産:数量 4.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 9.62(1㎡あたり年間賃料(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 19 億円。賃料のみ物価並みに上昇
倍率:悲観の純利益 116 億円は ROE 4.6% で k 7.25% を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、稼ぐ力(純利益÷k、PER は 1÷k=13.3 倍が上限)の 57% を置いた。優良でなくなった後の利益で、自己資本の厚さや市場の倍率は根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.6 倍・時価総額 882 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:10年のうちに、構造的な失敗が起きる確率は1割と見る。過去のEV事業の減損も、その兆しの一つだ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力インフラ
変圧器・開閉装置・真空遮断器など、送配電と受変電の機器。電力会社・工場・データセンター向け。
| 数量受変電・配電機器の世界市場(億ドル、実質)× 明電舎のシェア | 価格値段の指数(今 1.0。物価で3年1.09倍・10年1.34倍)。円換算は 150 円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.7 | 1.00 | 1,008 | 126 |
| 10 年後 中立 | 10.6 | 1.34 | 2,133 | 256 |
取り方:明電舎が参入する受変電・配電機器の世界市場を約1,200億ドル(変圧器だけで700億ドル規模という業種ノートから、開閉装置などを足した推定)とし、売上約1,008億円(約6.7億ドル)はシェア約0.56%に当たる。数量は市場×シェアを実質のドルで測り、物価は価格の指数に入れる。
社会システム
上下水道・鉄道・官公庁向けの電機・監視制御設備。
| 数量従事人員(万人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 3,508 | 1,046 | 41 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 4,701 | 1,457 | 66 |
取り方:開示が無いため、売上1,045.5億円を、同業の1人あたり売上(3,500万円台)で割って人員を約3千人と推定した。人は実質の数量、物価と案件の高度化は1人あたり売上に入れる。
フィールドエンジニアリング(FE)
納めた設備の保守・点検・延命・更新提案。
| 数量保守・サービス人員(万人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 3,353 | 570 | 127 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 4,493 | 917 | 183 |
取り方:売上570.1億円を1人あたり約3,350万円で割り、人員を約1,700人と推定した。保守は人が動く仕事で、数量は人員、料金の値上げは1人あたり売上に入れる。
産業電子モビリティ
EV・ハイブリッド車の駆動モーター・インバーター、半導体製造装置向け電源部品など。
| 数量従事人員(万人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 3,466 | 693 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 4,644 | 929 | 14 |
取り方:売上693.1億円を1人あたり約3,470万円で割り、人員を約2千人と推定した。車の生産台数に連動する事業だが、台数の開示が無いため人員で置く。前期の営業利益は減損33億円を含んでほぼゼロ。
不動産
大崎などの賃貸。
| 数量賃貸面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり年間賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 7.18 | 32 | 14 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 9.62 | 43 | 19 |
取り方:賃貸収入32.3億円を、都心の賃料水準から面積約4.5万㎡と推定した。賃料は物価並みに上げる。
リスクと懸念
データセンター投資の巻き戻し
電力機器の需要は、AIの設備投資に支えられている面がある。投資が止まれば、重電の受注は2008〜2009年のように3〜4割落ちうる。明電舎は増産投資を始めたばかりで、需要が落ちると固定費が重くなる。中堅は大手より受注の振れが大きい。需要の波に合わせて、生産を調整しにくい点が痛い。
EV事業の赤字の長期化
産業電子モビリティは前期、33億円の減損を出し、利益はほぼゼロだった。採用車種が売れないと、数量がすぐ落ちる。会社自身が、3〜6年で新車種を取れなければ別の道を考えると述べている。見切りが遅れれば、損失が積み上がる。撤退にも減損と整理の費用がかかる。
受注高の減少
電力インフラの前期の受注は、前の年を下回った。売上は過去の受注を消化して伸びているが、受注が戻らなければ、数年後の売上が細る。今期の見通しは、受注の回復を前提にしている。受注の確認には、四半期ごとの開示が欠かせない。逆に受注が戻れば、このリスクは小さくなる。
中国・韓国メーカーとの価格競争
変圧器や開閉装置は、中国・韓国のメーカーが輸出を広げている。中堅の明電舎は、規模で劣る。価格で押されれば、利益率が下がり、海外受注の伸びも止まる。大手より値決めの力が弱いのが弱点だ。価格を決める力の差は、利益率に直接出る。逆に受注が戻れば、このリスクは小さくなる。
社会システムの低い利益率
売上が最大の事業なのに、利益率は4%に届かない。官需は入札が中心で、案件ごとの採算の差も大きい。不採算案件が出れば、全社の利益を押し下げる。人口が減る国内では、数量の伸びも望めない。ここが改善しない限り、全社の利益率は伸びにくい。逆に受注が戻れば、このリスクは小さくなる。
増産投資の回収
3年で700億円と、前の3年の倍以上を投じる。需要が見込みどおりなら効くが、外れれば償却だけが残る。M&Aを別枠で検討するとしている点も、資本の使い方のリスクだ。投資の判断は、数年後の稼ぎで答えが出る。逆に受注が戻れば、このリスクは小さくなる。
景気の山で測った利益
営業利益率は過去の3〜5%台から8%台に上がった。固定資産の売却益も前期の純利益を押し上げた。この水準が続くとみなして倍率を付けると、見誤る恐れがある。景気が冷えたとき、数字の落ちは大きくなる。逆に受注が戻れば、このリスクは小さくなる。
今後の分かれ目
- 電力インフラの受注が、今期見通しを上回って回復したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。受注残が積み上がるので、3年後の利益が上振れる。ただし倍率が先に上がっているかも確認する。
- 産業電子モビリティが黒字化し、新しい車種の採用が決まったら
- 全社の重荷が消えるので、中立の利益率を上方修正する。逆に採用が取れず会社が「プランB」を具体化したら、減損とやや悲観の確率を見直す。
- データセンター向けの投資計画が延期され、電力会社の発注が遅れたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。特に受注の落ちの深さと、増産投資の回収を見る。
- 自社株買いを始め、配当性向を引き上げたら
- 資本の使い方への評価が上がる。中立の還元の割合を上げ、本質価値を見直す。
- 国内で大型の買収を発表したら
- 買収の価格と相乗効果の根拠を確認する。高値づかみなら、資本の使い方の評価を下げる。
- 中国・韓国メーカーが海外の受注で価格を下げ始めたら
- 電力インフラの利益率の前提を引き下げ、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 電力インフラの四半期の受注高と受注残
- 産業電子モビリティの損益と新車種の採用
- FEの利益率と保守契約の数
- 社会システムの利益率
- 自社株買い・配当性向の方針と、増産投資の進み具合
倍率と資本コストの決め方
電力インフラは世界市場×シェア、他は人員×1人あたり売上で、物価3%の名目で積んだ。倍率は資本コスト7.25%(基本のまま。循環+0.25%と寿命−0.25%が相殺)、長期成長4%、ROE11%台から、利益ベースの正当化PER16倍ほどを出し、その9割弱の14.9倍を中立に置いた。今の22倍には寄せていない。悲観は構造的に負けた後の純利益を稼ぐ力(純利益÷k)の57%で置き、過去の倍率は使っていない。新リース会計は2028/03期から形が変わるが、数字は今と同じ形でそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.45→18.81 倍・やや楽観 PER 15.47→17.95 倍・中立 PER 14.5→16.59 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。事業で決める:基本 7.5% に quality 0(循環 +0.25 と寿命 -0.25 が相殺)。純有利子負債は軽く extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。