結論
オリジンは、通信用の電源やEV向けの充放電器、自動車部品に塗る塗料、事務機の一方向クラッチを作る、埼玉の老舗の部品・材料メーカーだ。筆者の結論は適正の範囲である。値段は帳簿の3割に満たないが、本業の稼ぎが資本コストに遠く届かない以上、それは安さの証拠にならない。
稼ぎの柱は塗料とクラッチの2つで、どちらも売上の1割近い利益を出している。足を引っ張っているのは、中国のパワー半導体向けに賭けた真空リフロー炉と、半導体装置向けの電源だ。本社の費用も重く、営業利益はこの3期赤字が続いた。会社は中期計画の自己資本利益率(ROE)7%を諦め、営業黒字化を最優先にする緊急の改革に切り替えた。
値打ちの半分近くは、取引先などの上場株にある。時価で90億円を超え、今の時価総額を上回る。ただ、売って株主に戻すという約束はなく、筆者はその半分しか数えない。改革で本業が年に数億円を稼ぐようになれば値段は上に動くが、10年先でもROEは数%にとどまるとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オリジンは「事業より持ち物に値打ちがある会社」だ。帳簿の3割の値段は一見安い。だが、帳簿に積んだ資本が1%も稼がないなら、その資本に帳簿どおりの値段は付かない。
筆者が評価するのは、塗料とクラッチの2つの事業だ。顧客の部品に組み込まれ、年に十数億円の利益を出している。一方で、本社の費用と赤字の事業がその利益をほぼ食べてしまう。オーナーとして持つなら、まず赤字の事業を閉じ、本社を軽くしてほしい。緊急の改革はその方向に進んでいるが、実績はまだ1四半期分しかない。
持っている株の90億円超は、株主にとって本物の価値になりうる。ただ、会社がそれを売って株主に戻すかはわからない。売らなければ、配当を年に数億円生むだけの資産だ。安全域は、持ち株の売却と還元の約束が数字で出るか、改革で営業利益が年10億円を超えて定着した時に生まれる。
何で稼ぐ会社か
オリジンは1938年創業の電機メーカーで、今は4つの事業を持つ。売上は約270億円、従業員は連結で千人規模だ。
いちばん大きいのはケミトロニクス、つまり塗料の事業で、売上の4割近くを占める。自動車の内装や外装の樹脂部品、化粧品の容器、スマートフォンの外装に塗る特殊な塗料を作る。中国、タイ、インド、米国などに子会社を持ち、海外の日系の部品メーカーに供給する。
2番目はコンポーネント、つまり機構部品の事業で、売上の3割を占める。プリンターや複合機の紙送りに使う一方向クラッチ、自動車の電動のバックドアに使うトルクリミッタ、金融機器の部品を作る。小さな部品だが、同じ形で何年も作り続ける量産品で、利益率は1割前後ある。
3番目はエレクトロニクス、つまり電源の事業だ。NTTなど通信会社の局舎に置く整流器、半導体の製造装置や医療機器に入る電源、EVの電池から別のEVへ電気を移す可搬式の充放電器「POCHA」を作る。半導体デバイスの小さな事業も持つが、一部は生産を終えた。
4番目のメカトロニクスは、部品をはんだで接合する真空リフロー炉と、ディスプレイの貼り合わせの装置を作る。中国のパワー半導体の工場向けに力を入れたが、市況が冷えて売上は年に10億円を割り、大きな赤字を出している。2025年に朝霞の開発拠点を閉じた。
優良さと弱いところ
強みは、塗料とクラッチの2つの量産の事業にある。どちらも顧客の部品の設計に組み込まれ、一度採用されると型や色が変わるまで何年も同じものを納める。塗料では日系の自動車部品メーカーとの長い取引、クラッチでは事務機メーカーとの長い取引が堀、つまり他社がまねしにくい強みになっている。
弱さは3つある。第1に、会社全体としての稼ぐ力が弱い。過去10年のROEの中央値は0.3%で、資本コストに届いた年はほとんどない。第2に、本社の費用が重い。4つの事業の利益を足しても、調整の費用が年に20億円近くあり、それを吸い取ってしまう。第3に、成長のための賭けが当たっていない。真空リフロー炉もPOCHAも、期待した売上に届かなかった。
経営は改革を口にしてきたが、結果は出ていない。2024年に掲げたROE 7%の目標は2026年に取り下げた。一方で、赤字の中でも3年で9億円ほどの自社株買いを続けた。資本の配分への意識は、少しずつ高まっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オリジンの事業は、それぞれ別の業界に属する。塗料は自動車部品と化粧品の容器、クラッチは事務機と自動車、電源は通信と半導体、炉はパワー半導体の工場が相手だ。
塗料の需要は、自動車の生産台数に連れて動く。世界の自動車の生産は年に9千万台前後で横ばいが続き、日系メーカーは中国で現地のEVメーカーにシェアを奪われている。内装の塗装をやめて素材の色のままにする動きもあり、量は伸びにくい。一方で、インドや東南アジアの日系の部品メーカーは生産を増やしており、オリジンの海外の子会社はそこで稼いでいる。
クラッチの最大の相手である複合機の市場は、紙の印刷が減ることで細っている。リコーやキヤノンなどの事務機メーカーの台数は年に数%ずつ減る。オリジンは電動のバックドアやレジャー用品に用途を広げ、その減りを埋めようとしている。
電源は、通信の局舎の更新と、半導体の工場の投資に左右される。半導体の装置の投資は山と谷を繰り返し、2025年からは谷にある。EV向けの充放電器は、EVの普及が日本で遅れていることもあり、まだ小さい。
真空リフロー炉は、中国のパワー半導体の工場の建設が一巡し、現地の装置メーカーとの価格の競争も厳しい。この事業が10年先に大きく育つとは、筆者は考えていない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、長く同じ額を続けてきた。2026年3月期は赤字で1割強下げたが、2027年3月期は元に戻す予定だ。総額は年に2億円ほどだ。
自社株買いは、赤字の中でも続けてきた。2024年3月期に3.7億円、2025年3月期に4.2億円、2026年5月に1.3億円を買った。2026年の株主総会では、個人の株主が30万株の自社株買いを提案した。会社は改革への資金を優先するとして反対し、提案は通らなかった。
財務の特徴は、持っている上場株の大きさだ。投資有価証券は時価で約95億円あり、今の時価総額を上回る。純現金は10億円ほどで、借入は30億円ほどある。持っている株を売って還元に回す方針は、数字では示されていない。株価が帳簿の3割に満たないので、持ち株の売却や大株主による買収の話が出てもおかしくない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
改革の効果はもう数字に出ている。2027年3月期の第1四半期は、営業利益が4.7億円と黒字に戻った。会社の通期の予想の2億円を、最初の3か月で超えた。朝霞の拠点を閉じ、希望退職で人を減らし、赤字の製品を止めた結果だ。本社の費用が軽くなれば、塗料とクラッチの利益がそのまま残る。
塗料はインドと東南アジアで伸びる。日系の部品メーカーが現地の生産を増やし、オリジンの海外の子会社はその供給を担う。化粧品の容器の塗料も、アジアで需要が増えている。クラッチは電動のバックドアで自動車の用途を広げ、事務機の減りを埋める。
通信の局舎の電源は、5Gの設備の更新で需要が続く。半導体の装置の投資も、いずれ谷を抜ける。EVの電池を融通するPOCHAは、災害の備えとして自治体が補助金で買い始めた。
何より、持っている株が時価総額を上回る。株主の提案が出たように、資本の使い方への圧力は強まっている。売って自社株買いに回せば、株主の取り分は大きく増える。
慎重な見方
3期続けて最終赤字で、ROEは10年近く1%に届いていない。1四半期の黒字は、在庫の評価損が一巡した反動でしかない可能性がある。会社自身が中期計画の目標を取り下げたことが、稼ぐ力の弱さを示している。
塗料は、日系の自動車メーカーの中国での後退をまともに受ける。中国の現地のEVメーカーは自国の塗料メーカーを使い、日系の部品メーカーの仕事は減る。内装の塗装をやめる動きも量を削る。クラッチの最大の相手の複合機は、紙の減りで毎年細る。
電源と炉は、大手との競争に勝てていない。半導体の装置の電源は顧客の投資に振り回され、真空リフロー炉は中国の装置メーカーに価格で負ける。POCHAは補助金頼みで、事業として自立していない。
持っている株は、売らない限り株主のものにならない。会社は自社株買いの提案に反対し、改革に資金を使うと言った。改革の資金が、また当たらない新しい事業に回るなら、持ち株の値打ちも削られていく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。第1四半期の黒字は心強いが、本社の費用の重さと、塗料とクラッチの市場の細りは構造の話で、1四半期では覆らない。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて3割強に置いた。持ち株の値打ちは全ての筋書きで半分だけ数え、売却と還元が数字で約束されるまで上に寄せない。改革の効果が通期で続くか、本社の費用が実際に減ったかを見て見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,584 円133 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 565 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 1,519 円78 億円、今との差 +22.3%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,094 円313 億円 | 1,169 円60 億円 | +484.8% | +19.3% | 508 円26 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,213 円216 億円 | 877 円45 億円 | +309.8% | +15.1% | 1,018 円52 億円 |
| 中立 | 38% | 2,680 円138 億円 | 585 円30 億円 | +162.8% | +10.1% | 1,240 円64 億円 |
| やや悲観 | 23% | 896 円46 億円 | 292 円15 億円 | −4.3% | −0.4% | 273 円14 億円 |
| 悲観 | 12% | 750 円39 億円 | 156 円8 億円 | −27.0% | −3.1% | 109 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,584 円133 億円 | 565 円29 億円 | +153.5% | +9.8% | 3,149 円162 億円 |
今の株価時価総額 1,242 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 改革が実り、塗料とクラッチが海外で伸びてROE 7%に届く 利益 21 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 6,094 円313 億円
改革が実り、会社が取り下げた目標に10年かけて届く筋書きだ。赤字の炉の事業は小さくして黒字に戻し、本社の費用は物価ほどは増えない。塗料はインドと東南アジアの日系の部品メーカーの増産を取り込み、化粧品の容器の用途も広げて、量は2割強増える。
クラッチは電動のバックドアとレジャー用品で自動車の用途を広げ、事務機の減りを補って余る。電源は通信の局舎の更新と半導体の装置の投資の回復で台数を3割以上伸ばし、POCHAも災害の備えとして定着する。営業利益は27億円と、2015年の山を少し下回る水準に戻る。
持ち株の配当も物価とともに増え、純利益は20億円を超える。ROEは7%台に上がるが、資本コストにはまだ届かない。自社株買いは毎年続き、株主の提案のような圧力が経営の背中を押す。
- エレクトロニクス(電源・半導体デバイス):数量 21,000(電源装置の出荷台数(台・推定))× 価格 70(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 147 億円・営業利益 13 億円。21,000台(1.36倍)×70万円(1.40倍)、利益率8.5%
- メカトロニクス(真空リフロー炉・貼合装置):数量 30.0(装置の出荷台数(台・推定))× 価格 7,000(1台あたりの単価(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。30台×7,000万円、黒字化
- ケミトロニクス(塗料):数量 7,500(塗料の販売量(トン・推定))× 価格 232(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 174 億円・営業利益 18 億円。7,500トン(1.25倍)×232万円(1.36倍)、10.5%
- コンポーネント(一方向クラッチ・トルクリミッタ):数量 2,400(部品の出荷数(万個・推定))× 価格 545(1個あたりの単価(円))→ 売上 131 億円・営業利益 16 億円。2,400万個(1.20倍)×単価545(1.36倍)、12%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 12.35 倍、時価総額 313 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ROE 7%は会社が一度掲げて取り下げた目標で、過去12年で届いたのは2015年と2022年の2期だけ。改革と海外の伸びの両方が要るので7%とした。
やや楽観 20% 改革で本社が軽くなり、営業利益が年15億円を超える 利益 14 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,213 円216 億円
緊急の改革が根付き、本社が軽くなる筋書きだ。炉の事業は受注のある分だけに絞って小さな黒字を出し、本社の費用は物価の伸びより遅く増える。塗料はアジアの日系の部品メーカー向けに量を15%増やし、クラッチは自動車の用途で事務機の減りを埋めて1割増える。
電源は通信の局舎の更新が続き、半導体の装置の投資が戻るにつれて台数が2割伸びる。営業利益は17億円ほどになり、持ち株の配当を加えた純利益は14億円前後になる。ROEは5%ほどで、資本コストには届かない。
配当は増え、自社株買いも年に数億円続く。持ち株を一部売って還元に回す動きも出るが、方針として固まるまでは至らない。帳簿の価値は少しずつ増えるが、株主の稼ぎはまだ資本に比べて薄い。
- エレクトロニクス(電源・半導体デバイス):数量 18,500(電源装置の出荷台数(台・推定))× 価格 69(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 128 億円・営業利益 9 億円。18,500台(1.20倍)×69万円(1.38倍)、7%
- メカトロニクス(真空リフロー炉・貼合装置):数量 20.0(装置の出荷台数(台・推定))× 価格 6,900(1台あたりの単価(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。20台×6,900万円、小さな黒字
- ケミトロニクス(塗料):数量 6,900(塗料の販売量(トン・推定))× 価格 230(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 159 億円・営業利益 15 億円。6,900トン(1.15倍)×230万円(1.35倍)、9.5%
- コンポーネント(一方向クラッチ・トルクリミッタ):数量 2,200(部品の出荷数(万個・推定))× 価格 540(1個あたりの単価(円))→ 売上 119 億円・営業利益 13 億円。2,200万個(1.10倍)×単価540(1.35倍)、11%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の第1四半期に営業利益4.7億円と改革の効果が出始めた。この流れが通期で続き、塗料とクラッチが少しずつ伸びる筋として20%とした。
中立 38% 塗料とクラッチが稼ぎ、本社と炉がそれを削り続ける 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,680 円138 億円
改革で赤字は止まるが、稼ぎは薄いままの筋書きだ。塗料はアジアで少し量を増やすが、中国での日系の後退と内装の塗装離れで、全体では5%増にとどまる。クラッチは自動車の用途で事務機の減りを埋め、量は横ばいを保つ。
電源は通信の局舎の更新で底堅いが、半導体の装置の電源は山と谷を繰り返す。炉の事業は受注の分だけ作り、損も益も出さない。営業利益は7億円ほどで、本社の費用が2つの稼ぎ頭の利益の大半を吸い取る構図は変わらない。
持ち株の配当が営業外に入り、純利益は7億円前後になる。ROEは3%弱で、資本コストに遠く届かない。配当は今の水準を保ち、自社株買いは年に1億円ほど続く。持ち株は売られないまま、帳簿の中に残る。
- エレクトロニクス(電源・半導体デバイス):数量 16,200(電源装置の出荷台数(台・推定))× 価格 67(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 5 億円。16,200台(1.05倍)×67万円(物価並み1.34倍)、5%
- メカトロニクス(真空リフロー炉・貼合装置):数量 14.0(装置の出荷台数(台・推定))× 価格 6,700(1台あたりの単価(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。14台×6,700万円、損益ゼロ
- ケミトロニクス(塗料):数量 6,300(塗料の販売量(トン・推定))× 価格 228(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 12 億円。6,300トン(1.05倍)×228万円(1.34倍)、8.5%
- コンポーネント(一方向クラッチ・トルクリミッタ):数量 2,000(部品の出荷数(万個・推定))× 価格 536(1個あたりの単価(円))→ 売上 107 億円・営業利益 11 億円。2,000万個(横ばい)×単価536(1.34倍)、10%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)66 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改革で赤字は止まるが、塗料とクラッチの市場は大きくは伸びず、本社の費用も物価で増える。改革の効果と市場の細りが打ち消し合う落としどころとして38%とした。
やや悲観 23% 改革が息切れし、営業赤字が小さく続く 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 896 円46 億円
改革が息切れし、本業の赤字が小さく続く筋書きだ。塗料は中国で日系の部品メーカーの仕事が減り、量は5%減る。クラッチは複合機の減りを埋めきれず、1割減る。電源は半導体の装置の投資が戻らず、POCHAも補助金が切れて伸びない。
炉の事業は閉じきれずに小さな損を出し続ける。本社の費用は削っても物価で増え、営業損益は小さな赤字にとどまる。持ち株の配当で最終利益はかろうじて黒字を保つが、ROEは1%に届かない。
配当は4分の1ほど減り、自社株買いは止まる。株主にとっての価値は、持ち株と純現金の半分ほどに、工場の土地を少し足した程度に落ちる。
- エレクトロニクス(電源・半導体デバイス):数量 14,000(電源装置の出荷台数(台・推定))× 価格 62(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 87 億円・営業利益 2 億円。14,000台(0.91倍)×62万円(1.24倍、競争で物価に届かない)、2%
- メカトロニクス(真空リフロー炉・貼合装置):数量 5.0(装置の出荷台数(台・推定))× 価格 6,000(1台あたりの単価(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。5台、縮小
- ケミトロニクス(塗料):数量 5,700(塗料の販売量(トン・推定))× 価格 215(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 123 億円・営業利益 9 億円。5,700トン(0.95倍)×215万円(1.26倍)、7%
- コンポーネント(一方向クラッチ・トルクリミッタ):数量 1,800(部品の出荷数(万個・推定))× 価格 500(1個あたりの単価(円))→ 売上 90 億円・営業利益 8 億円。1,800万個(0.90倍)×単価500(1.25倍)、9%
倍率:利益がほぼ無く稼ぐ力(純利益÷k ≒ 14億円)は床にならない。持ち株の税後66億円と純現金11億円に工場の土地の一部を足した約92億円に戻り方0.5を掛けた約46億円を、今の自己資本226.5億円で割った0.203倍。
確率:2024〜26年の3期連続の営業赤字と、取り下げた中期目標が示す稼ぐ力の弱さを重く見て23%とした。
悲観 12% 塗料とクラッチまで細り、赤字が続いて持ち株が削られる 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 750 円39 億円
2つの稼ぎ頭まで細る筋書きだ。中国の現地のEVメーカーが日系の部品メーカーを押しのけ、塗料の量は2割近く減る。複合機の減りが加速し、クラッチの量も2割減る。電源は大手との競争に負け、炉の事業は撤退の費用を残して閉じる。
本社の費用は削りきれず、営業赤字が年に数億円続く。改革の資金と赤字の穴埋めで持ち株の一部が売られ、その代金は株主に戻らない。配当は細り、自社株買いは止まる。
株主に残るのは、持ち株と純現金の半分ほどの値打ちだ。工場の土地は事業を続ける限り売れない。大株主や同業による安い買収が、株主にとってむしろ救いになる。
- エレクトロニクス(電源・半導体デバイス):数量 12,000(電源装置の出荷台数(台・推定))× 価格 60(1台あたりの平均単価(万円))→ 売上 72 億円・営業利益 −2 億円。12,000台(0.78倍)×60万円、赤字
- メカトロニクス(真空リフロー炉・貼合装置):数量 0.0(装置の出荷台数(台・推定))× 価格 6,000(1台あたりの単価(万円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
- ケミトロニクス(塗料):数量 5,000(塗料の販売量(トン・推定))× 価格 210(1トンあたりの単価(万円))→ 売上 105 億円・営業利益 5 億円。5,000トン(0.83倍)×210万円(1.24倍)、5%
- コンポーネント(一方向クラッチ・トルクリミッタ):数量 1,600(部品の出荷数(万個・推定))× 価格 490(1個あたりの単価(円))→ 売上 78 億円・営業利益 6 億円。1,600万個(0.80倍)×単価490(1.23倍)、7%
倍率:赤字なので稼ぐ力は床にならない。持ち株の税後約66億円と純現金約11億円の計77億円に戻り方0.5を掛けた約38.5億円を、今の自己資本226.5億円で割った0.17倍。
確率:2009年以降に7期の最終赤字があり、改革の資金が当たらない新事業に回る恐れもある。構造的に負ける筋として12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エレクトロニクス(電源・半導体デバイス)
通信局舎の整流器、半導体装置・医療機器向け電源、EV用可搬型充放電器POCHA、半導体デバイス(その他)。
| 数量電源装置の出荷台数(台・推定) | 価格1台あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,400 | 50 | 77 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16,200 | 67 | 109 | 5 |
取り方:台数の開示が無いため推定。第3四半期までの売上47.7億円(その他8.6億円を含め56.3億円)を通期に引き延ばした約77億円を、整流器と産業用電源の平均単価50万円で割った。利益はほぼゼロ。
メカトロニクス(真空リフロー炉・貼合装置)
パワー半導体向けのギ酸還元真空リフロー炉(VSM)とディスプレイの貼合装置。
| 数量装置の出荷台数(台・推定) | 価格1台あたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 5,000 | 9 | −7 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 6,700 | 9 | 0 |
取り方:第3四半期までの売上6.0億円・損失5.6億円を通期に引き延ばし、1台5千万円前後の装置として約18台と推定した。
ケミトロニクス(塗料)
自動車部品・化粧品容器・電子機器の樹脂部品向けの特殊塗料。中国・タイ・インド・米国などに子会社。
| 数量塗料の販売量(トン・推定) | 価格1トンあたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 170 | 102 | 8 |
| 10 年後 中立 | 6,300 | 228 | 144 | 12 |
取り方:第3四半期までの売上75.5億円・利益5.7億円を通期に引き延ばし、特殊塗料の単価を1トンあたり170万円とみて約6,000トンと推定した。
コンポーネント(一方向クラッチ・トルクリミッタ)
複合機・プリンターの紙送りの一方向クラッチ、自動車の電動バックドア用トルクリミッタ、金融機器・レジャー用品の部品。
| 数量部品の出荷数(万個・推定) | 価格1個あたりの単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 400 | 80 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 536 | 107 | 11 |
取り方:第3四半期までの売上59.2億円・利益6.0億円を通期に引き延ばし、1個あたり数百円(単価400前後)の機構部品として年約2,000万個と推定した。
リスクと懸念
本社の費用の重さ
4つの事業の利益を足しても、配分されない本社の費用が年に20億円近くあり、営業利益をほぼ消してしまう。改革で削れなければ、稼ぎ頭の利益は株主に届かない。
日系の自動車メーカーの中国での後退
塗料の主な客は日系の自動車部品メーカーだ。中国では現地のEVメーカーが伸び、日系は生産を減らしている。内装の塗装をやめる動きも量を削る。
複合機の市場の細り
クラッチの最大の用途は複合機とプリンターの紙送りだ。紙の印刷が減り、事務機の台数は年に数%ずつ減る。自動車の用途で埋めきれなければ、量は細る。
成長の賭けの失敗
中国のパワー半導体向けの真空リフロー炉は市況が冷えて大きな赤字になり、拠点を閉じた。POCHAも期待した売上に届いていない。次の賭けも外れれば、持ち株と現金が削られる。
持ち株が株主に戻らない
投資有価証券は時価で約95億円あり、時価総額を上回る。売って還元する方針は無く、2026年の自社株買いの株主提案にも反対した。売らなければ配当を生むだけの資産にとどまる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社の予想の2億円を大きく超えて着地したら
- 改革の効果が通期で出た証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 持ち株の売却と、その代金を自社株買いに回す方針を数字で示したら
- 持ち株の戻り方を0.5から引き上げる。株主の価値は大きく増える。
- 真空リフロー炉の事業からの撤退か売却を決めたら
- 赤字の源が消えるので、中立の本社と事業の利益を見直す。
- 営業赤字に戻り、配当を下げたら
- 改革の息切れとして、やや悲観に重みを移す。
- 大株主や同業が買収や資本提携を持ちかけたら
- 持ち株と純現金に値段が付く場面として、時価総額の見方を見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益(改革の効果が続くか)
- 本社の費用(セグメント利益の調整額)
- 塗料の海外子会社の売上
- 複合機の出荷台数とクラッチの売上
- 持ち株の売却と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 8.5%から決めた。中立のROEは3%弱で資本コストを大きく下回るので、PERは1÷kの11.8倍の7.5割に置いた。持ち株は業種の決まりどおり時価の税後7割を余り資産とし、売却の約束が無いので戻り方0.5で数えた。帳簿の3割という今の値段は割安の根拠にしていない。2028年3月期からの新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.35 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 8.8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。