結論
三相電機は、兵庫県姫路市の小型のポンプとモータの会社だ。半導体の製造装置や工作機械、医療機器に組み込む部品を、装置の会社に売る。筆者の結論は、今の値段は本質価値の前後にあり、割安とは言えないというものだ。
2026年3月期は、生成AI向けの半導体の製造装置のポンプが伸び、営業利益が前の期の11倍になった。2027年3月期の会社予想も大きな増益だ。半導体の装置の市場が伸びる限り、ポンプの量は増える。この追い風は本物だと筆者は見る。
だが、部品の会社の取り分には限りがある。客は荏原製作所やSMCのような大手で、毎年値下げを求める。過去12年の営業利益率の最高は5.7%で、ROEの中央値は5.9%と資本コストを下回る。手元の現金は厚いが、配当は少なく株主に戻る額は細い。伸びを織り込んでも、10年の価値は今の値段をわずかに上回るか下回る程度にとどまる。
株価を動かすのは、半導体の装置の波と、厚い現金を株主に戻すかどうかだ。前者は会社が選べず、後者は経営が選べる。筆者は後者の変化を待ちたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い市場の中の、取り分の薄い部品」だ。半導体の装置の市場は10年先も伸びるだろう。三相電機のポンプはその中で採用されている。そこまでは魅力がある。
だが、株主のものになる利益は見た目より少ない。装置の大手は値下げを求め続け、超過利益は長く残らない。景気の谷では利益がほぼ消える。過去10年、資本コストを超えて稼いだ年は数えるほどしかない。
資本の使い方にも課題がある。現金は積み上がるが、配当は年1億円強で、自社株買いは無い。ためた現金が株主に戻らないなら、その価値は帳簿の額より低く見るべきだ。筆者は、半導体の追い風を半分ほど信じつつ、払う値段に安全域は乏しいと考える。持ち続けたい条件は、ROEが資本コストを数年上回り、還元の方針が厚くなることだ。その日が来るまでは、帳簿の安さを理由に買う気にはなれない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は2つある。売上の半分強がポンプで、半導体の製造装置の中で薬液や冷却水を送るポンプ、医療機器や工作機械のポンプなどを作る。残りがモータで、ポンプ用や送風機用の小型の産業用モータを、産業機器の会社に売る。
客は装置と部品の大手だ。2026年3月期は、空気圧の機器の大手のSMCへの売上が全体の11%を占めた。前の期は半導体の装置の荏原製作所も1割を超えていた。三相電機の部品は客の装置に組み込まれ、最後は半導体の工場や工作機械の工場に納められる。
作るのは姫路の本社と、岡山・新宮・加西の子会社の工場、それに中国の上海の工場だ。2026年4月には加西に新しい工場を開き、半導体の装置向けのポンプの量を増やす構えだ。
お金の流れは素直だ。注文を受けて作り、納めて代金を受け取る。在庫と売掛金が運転資金として要るが、借金は少ない。手元の現金は借入を約19億円上回る。新しい工場の投資は、減価償却として10年かけて利益から引かれていく。償却は取得した時の値段のままなので、物価が上がっても増えない。その分、会計の利益は少しふくらんで見えるが、次の更新の投資は建築費の上昇で高くつく。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭く浅い。半導体の装置向けのポンプは、薬液に強い材料や小さく静かな設計が要り、客の装置に合わせて作り込む。一度採用されると、装置の型が変わるまで切り替えは起きにくい。ここは評価できる。
だが値段を決める力は弱い。客は世界の装置の大手で、部品の会社を何社も比べて選ぶ。毎年の値下げの要求に応じなければ、次の型で外される。2026年3月期に価格の改定が進んだのは、需要が強い局面の追い風だ。
資本効率は物足りない。過去10年のROEの中央値は5.9%で、資本コストの8.0%に届かない。景気の谷では利益がほぼ消え、2025年3月期の営業利益率は0.4%だった。経営は安定配当を掲げるが、配当は年1億円強で、自社株買いの実績は無い。手元の現金と投資有価証券は積み上がる一方だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体の製造装置の市場は、AIの計算基盤への投資で伸びている。装置の世界の市場は2020年代の後半も拡大が続くという見方が多い。装置1台の中には多くのポンプが使われ、薬液の供給や冷却、排気の処理を担う。装置の台数が増えれば、ポンプの量も増える。
ただ、装置の市場は山と谷が深い。メモリの値段や半導体の会社の投資の計画で、2〜3年ごとに受注が大きく振れる。部品の会社は、その振れを増幅して受ける。客が在庫を減らす局面では、部品の注文は装置の出荷以上に落ちる。
産業用のモータは、成熟した市場だ。工作機械や送風機の設備投資に連動し、国内の量は伸びない。中国のモータの会社の値下げも続く。省エネの規制で効率の高いモータへの置き換えは進むが、大手のモータの会社が先に取る。
競う相手は、半導体の装置向けのポンプでは国内外の専業の会社、モータでは日本電産のような大手と中国の会社だ。筆者は、ポンプの量は伸びるが、値段は物価をやや下回ってしか上がらないと見る。モータは量が少し減り、値段は物価並みだ。全体の稼ぎは、半導体の装置の波に今より強く結びつく。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本だ。1株あたりの配当を長く据え置き、2026年3月期の配当の総額は約1.1億円、配当性向は2割だった。利益が減った2025年3月期も同じ額を払い、性向は96%に上がった。自社株買いの実績は無い。
手元の現金と預金は約33億円、借入は約15億円で、純現金は約19億円ある。投資有価証券も約8億円持つ。2026年4月に加西の新しい工場を開き、投資は一巡した。今後、現金が積み上がっても、株主に戻す方針は示されていない。
資本コストや株価を意識した経営の目標も、売上高経常利益率を掲げるにとどまり、ROEの目標は無い。株主から見れば、厚い現金の使い道が最大の課題だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
生成AIの計算基盤への投資は10年続く大きな流れだ。半導体の製造装置の市場は伸び、装置の中のポンプの量も増える。三相電機は装置の大手に採用され、2026年3月期の営業利益は前の期の11倍になった。2027年3月期の会社予想の営業利益率は6.9%で、過去の最高を超える。
値段の改定も進んだ。需要が強い局面では、部品の会社でも値段を通せる。加西の新しい工場で量をこなせば、固定費が薄まり利益率はさらに上がる。
財務は堅く、純現金は時価総額の4分の1にあたる。PBRは0.6倍台で、帳簿から見れば安い。半導体の装置向けの比率が上がるほど、会社の性格は成熟したモータの会社から伸びる部品の会社に変わる。手元の現金を還元に回せば、株価は大きく見直される。
装置の大手が採用したポンプは、装置の型が変わるまで使われ続ける。一度入り込んだ部品の会社は、次の型でも声がかかりやすい。医療機器やインフラ向けの製品、養殖や農業向けの気体を水に溶かす装置など、新しい用途の芽もある。
慎重な見方
部品の会社の取り分には限りがある。客は荏原製作所やSMCのような大手で、毎年値下げを求める。2026年3月期の価格の改定は需要が強い局面の追い風で、谷が来れば値段は再び叩かれる。過去12年の営業利益率の最高は5.7%にすぎない。
半導体の装置の市場は山と谷が深い。2025年3月期の営業利益率は0.4%で、利益はほぼ消えた。客が在庫を減らす局面では、部品の注文は装置の出荷以上に落ちる。新しい工場の償却は、谷の年に重くのしかかる。
客へのかたよりも危うい。荏原製作所への売上は1年で1割を割った。主な客が内製や海外の部品に切り替えれば、ポンプの量は一気に減る。産業用のモータは中国の会社との値段の競争で縮む。
現金が厚くても、配当は年1億円強で自社株買いも無い。株主に戻らない現金は、帳簿ほどの価値を持たない。経営は売上高経常利益率を目標に掲げるだけで、資本コストを意識した数字は示していない。株主の声が届く形も見えない。
どちらに重みを置いたか
両方に理があるが、慎重な見方がわずかに強い。半導体の装置向けのポンプの伸びは本物で、確率は楽観をやや厚くした。だが部品の会社の値段の弱さと、過去の利益率の低さは重い。中立の利益率は過去の最高の水準に置き、余った現金は戻り方0.5で数えた。結果は今の値段の前後で、割安とは言えない。還元の方針が変われば、見方は変わりうる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,466 円159 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 372 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,941 円89 億円、今との差 +14.7%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 6,698 円307 億円 | 568 円26 億円 | +329.2% | +15.7% | 1,090 円50 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,489 円206 億円 | 452 円21 億円 | +191.9% | +11.3% | 1,087 円50 億円 |
| 中立 | 33% | 3,345 円153 億円 | 365 円17 億円 | +119.1% | +8.2% | 1,224 円56 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,412 円65 億円 | 249 円11 億円 | −1.9% | −0.2% | 332 円15 億円 |
| 悲観 | 10% | 874 円40 億円 | 175 円8 億円 | −38.1% | −4.7% | 105 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,466 円159 億円 | 372 円17 億円 | +126.7% | +8.5% | 3,838 円176 億円 |
今の株価時価総額 1,693 円77 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 15% 半導体のポンプが主役になる 利益 20 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 6,698 円307 億円
AIの計算基盤への投資が10年続き、半導体の製造装置の市場は大きく伸びる。装置の中で薬液や冷却水を送るポンプの出荷は、今の2倍近くになる。三相電機は荏原製作所やSMCのような装置と部品の大手との取引を広げ、加西の新しい工場で量をこなす。価格の改定も物価並みに通る。産業用のモータは横ばいだが、ポンプの利益が全社を押し上げ、営業利益率は7%台に上がる。ROEは資本コストを少し上回り、株価は利益の11倍ほどで評価される。それでも配当は少なく、手元の現金は積み上がる。医療機器や農業向けの新しい用途も育ち、谷の年の落ち込みは今より浅くなる。
- ポンプ:数量 988(ポンプの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.27(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 267 億円・営業利益 24 億円。ポンプの出荷の量 1.90 倍 × 単価 1.36 倍、営業利益率 9.0%
- モータ:数量 1,050(モータの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.11(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 8 千円))→ 売上 112 億円・営業利益 4 億円。モータの出荷の量 1.05 倍 × 単価 1.34 倍、営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.85 倍、時価総額 307 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIの計算基盤への投資で半導体の製造装置の市場が10年で大きく伸び、装置向けのポンプが会社の稼ぎの柱になる筋書き。2026年3月期にポンプの売上が18%増えた実績はあるが、装置の会社に値段を握られる部品なので確率は15%にとどめた。
やや楽観 22% ポンプが伸び、モータは横ばい 利益 15 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,489 円206 億円
半導体の製造装置の市場は、山と谷を繰り返しながら10年で伸びる。三相電機の装置向けのポンプは、主な客の装置の出荷とともに量が6割増える。新しい工場の償却が重しになるが、量の増加で吸収する。産業用のモータは工作機械や送風機の需要が伸びず、量は横ばいだ。値段の改定は物価をやや下回る。全社の営業利益率は6%台後半に乗り、純利益は今の2倍強になる。配当は据え置きが続き、利益の多くは手元に残る。ROEは7%台で、資本コストにわずかに届かない。株価は利益の11倍ほどだ。半導体の谷の年には利益が半分になるが、山の年に取り戻す形が続く。
- ポンプ:数量 832(ポンプの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.26(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 218 億円・営業利益 17 億円。ポンプの出荷の量 1.60 倍 × 単価 1.32 倍、営業利益率 8.0%
- モータ:数量 1,000(モータの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.11(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 8 千円))→ 売上 105 億円・営業利益 3 億円。モータの出荷の量 1.00 倍 × 単価 1.32 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の装置の市場が平均を少し上回って伸び、ポンプの量が6割増える筋書き。2027年3月期の会社予想の営業利益率6.9%が足場になる。
中立 33% 装置の波に乗るが、取り分は細い 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,345 円153 億円
半導体の製造装置の市場は伸び、ポンプの出荷は10年で3割強増える。ただ、装置の会社は部品の値下げを毎年求め、値段は物価をやや下回ってしか上がらない。新しい工場の償却も増える。産業用のモータは工作機械の設備投資の波に左右され、量は少し減る。全社の営業利益率は5%台半ばで、過去の最高に並ぶ水準だ。純利益は今の2倍弱になる。配当は少なく、手元の現金は積み上がるが、株主に戻る額は細い。ROEは6%前後で資本コストを下回り、株価は利益の11倍ほどで自己資本の7割弱にとどまる。追い風は本物だが、取り分は細いという姿だ。
- ポンプ:数量 702(ポンプの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.26(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 181 億円・営業利益 13 億円。ポンプの出荷の量 1.35 倍 × 単価 1.30 倍、営業利益率 7.0%
- モータ:数量 950(モータの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.10(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 8 千円))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。モータの出荷の量 0.95 倍 × 単価 1.30 倍、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体のポンプの量は伸びるが、装置の会社の値下げの要求で利益率は過去の最高の水準にとどまる筋書きを中心に置いた。過去12年の営業利益率の最高は5.7%で、そこを大きく超える根拠はまだ弱い。
やや悲観 20% 半導体の谷とモータの縮み 利益 6 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,412 円65 億円
半導体の製造装置の投資は、AIの計算基盤の過剰で数年の谷に入る。ポンプの出荷は今とほぼ同じ量に戻り、値段は据え置かれる。産業用のモータは、中国の安いモータとの競争で量が15%減る。加西の新しい工場は稼働が上がらず、償却が利益を削る。全社の営業利益率は3%台に落ち、純利益は今と同じ程度にとどまる。配当は据え置きで、手元の現金はほぼ増えない。ROEは3%台で、株価は自己資本の4割ほどまで下がる。厚い現金は残るが、使い道が見えないまま株価の支えにはならない。半導体の装置の次の山が来るまで、我慢の年が続く。
- ポンプ:数量 546(ポンプの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.25(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 136 億円・営業利益 7 億円。ポンプの出荷の量 1.05 倍 × 単価 1.25 倍、営業利益率 5.0%
- モータ:数量 850(モータの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.10(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 8 千円))→ 売上 85 億円・営業利益 1 億円。モータの出荷の量 0.85 倍 × 単価 1.25 倍、営業利益率 1.0%
倍率:ROE 3.4% と低く、PER の上限 1÷k = 12.5 倍の 7 割 5 分の 9.4 倍。半導体の谷とモータの縮みで稼ぐ力を薄く見た。余った現金は 0.75 倍の額を戻り方 0.5 で足した。
確率:半導体の装置の市場が数年の谷に入り、産業用のモータも縮む筋書き。2025年3月期の営業利益率0.4%のように、谷の年は利益がほぼ消える実績がある。
悲観 10% 装置の大手に切られる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 874 円40 億円
主な客の装置の会社が、ポンプを自社で作るか、中国や台湾の安い部品に切り替える。三相電機のポンプの量は2割減り、値段も下がる。産業用のモータも量が3割減り、赤字になる。新しい工場は重荷になり、減損を出す。全社の営業利益はほぼ消え、配当は細る。株主に残るのは、手元の現金と工場を売って借金を返した後の額だけだ。だが会社は清算されず、現金は事業の立て直しに使われる。株価は自己資本の3割ほどに沈み、純現金を下回る水準で長く放置される。少数の株主には、現金の使い道を変える力が無い。配当も細り、待つ間の取り分も小さい。
- ポンプ:数量 416(ポンプの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.24(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円))→ 売上 99 億円・営業利益 2 億円。ポンプの出荷の量 0.80 倍 × 単価 1.20 倍、営業利益率 2.0%
- モータ:数量 700(モータの出荷台数(千台・年、推定))× 価格 0.10(1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 8 千円))→ 売上 67 億円・営業利益 −1 億円。モータの出荷の量 0.70 倍 × 単価 1.20 倍、営業利益率 -2.0%
倍率:利益はほぼ無く、利益の倍率は使えない。床は純現金と投資有価証券、工場を売って負債を払った後に残る額(floor_assets_oku)。今の自己資本 126.05 億円に 0.3173 倍を掛けて同じ額。
確率:主な客の装置の会社がポンプを内製するか、海外の安い部品に切り替える筋書き。荏原製作所への売上が10%未満に落ちた例もあり、客の離れは起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ポンプ
半導体の製造装置、医療機器、工作機械などに組み込むポンプと、その応用の製品。半導体の装置向けが伸びの中心。
| 数量ポンプの出荷台数(千台・年、推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 2 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 520 | 0.20 | 103 | 7 |
| 10 年後 中立 | 702 | 0.26 | 181 | 13 |
取り方:製品別の売上は有報の値(ポンプ103.4億円)。台数は開示が無いので推定。半導体の装置向けの高い品と工作機械・医療機器向けの小さな品をならし、1台約2万円で割って年約52万台とした。営業利益は製品別の開示が無く、半導体の装置向けの採算が高いとみて全社の7.94億円のうち6.7億円(率6.5%)をポンプに置いた推定。
モータ
ポンプ用・送風機用などの小型の産業用モータを、産業機器の会社に売る。
| 数量モータの出荷台数(千台・年、推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円・名目。1 台約 8 千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.08 | 80 | 1 |
| 10 年後 中立 | 950 | 0.10 | 98 | 2 |
取り方:製品別の売上は有報の値(モータ79.6億円)。台数は開示が無いので推定。小型の産業用モータの1台約8千円で割り、年約100万台とした。営業利益は推定で、設備投資の低調で採算が薄いとみて1.24億円(率1.6%)。本社費は製品に配分済みとみて adjust は 0。
リスクと懸念
半導体の装置の谷
半導体の製造装置の受注は2〜3年ごとに大きく振れる。客が在庫を減らす局面では、部品の注文は装置の出荷以上に落ちる。2025年3月期のように、谷の年は営業利益がほぼ消える。
客へのかたより
SMCへの売上が全体の11%を占め、前の期は荏原製作所も1割を超えていた。主な客がポンプを内製するか、海外の安い部品に切り替えれば、ポンプの量は一気に減る。
値下げの要求
装置の大手は部品の会社を比べて選び、毎年値下げを求める。2026年3月期の価格の改定は需要の強い局面の追い風で、谷が来れば値段は再び叩かれる。
新しい工場の償却
2026年4月に加西の新しい工場を開いた。償却は取得の値段のまま10年ほど続き、稼働が上がらなければ利益を削る。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、現金は細る。
現金の使い道
純現金は約19億円、投資有価証券も約8億円あるが、配当は年1億円強で自社株買いは無い。現金が株主に戻らないまま積み上がれば、資本効率はさらに下がる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて7%を超える
- ポンプの値段の力が定着したとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 半導体の装置の受注が前年の2割以上減る
- 谷に入ったとみて、やや悲観に寄せる。
- 自社株買いか配当性向の目標が出る
- 現金の戻り方を0.5から引き上げる。
- 主な客の売上の比率が大きく下がる
- 客の離れとみて、悲観の確率を上げる。
- 加西の工場の稼働が上がり、ポンプの売上が150億円を超える
- 量の伸びを中立より上に見直す。
見ておくもの
- ポンプとモータの製品別の売上
- 半導体の製造装置の世界の受注
- 主な客の売上の比率
- 売上高経常利益率
- 配当と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROE(余った現金10億円とその利息を除く)と資本コスト7.5%から決めた。中立はROEがkを下回るので、PERの上限は1÷kの12.5倍で、その9割に置いた。今のPBR0.6倍台やPER、過去の株価の山は使っていない。中立の営業利益率は過去12年の最高5.7%の近くに置き、会社の2027年3月期の予想6.9%はやや楽観の目安にした。純利益÷営業利益は過去の中央値0.91より低い0.72にした(営業外の収益が利益の大きさほど増えないため)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.85 倍・やや楽観 PER 11.2→13.33 倍・中立 PER 11.2→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。