結論
日本フェンオールは、火災報知や消火の設備、消防ポンプ、半導体装置の熱部品などを作る小さなメーカーである。筆者の結論は、やや割高だ。財務は強い。自己資本比率は76%で、純現金も37億円ある。ただ、その厚さを稼ぎに回せていない。
2025年12月期の売上は129億円、営業利益は11億円だった。純利益は12.5億円と好調に見えるが、子会社の清算益と株の売却益が入っている。今期の会社予想は純利益8.8億円で、これが実力に近い。
ROEは8.5%と資本コストの8.2%とほぼ並ぶが、会社自身が2028年度の目標を6%に置く。自己資本146億円に対し、稼ぎは薄い。
10年の中立では、物価の分だけ単価が上がり、営業利益は15億円に増える。それでもROEは6%台にとどまる。
2022年には火災報知設備の不正が表に出た。品質の信用は時間をかけて戻すしかない。西華産業が約19%を持つ関係会社で、販路の広がりに期待がかかる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「守りは堅いが、攻める力が見えない」。純現金は37億円で、時価総額の3割ほどある。ただ自己資本146億円に対し、稼ぎは薄い。
オーナー利益、つまり再投資を引いた手取りは、見かけの純利益より少ない。新工場の建設に24億円が出ていき、償却も増える。2025年12月期の営業のお金の流れは3.4億円しかなく、フリーのお金は9億円のマイナスだった。
堀、つまり他社がまねできない強みは、防爆型の感知器など限られた製品にある。ただ売上の大半は、大手2社と競う領域か、1社に依存する受託だ。ブランドで値段を決められる会社ではない。
経営は誠実に見える。配当を方針どおり払い、持ち合い株を売る計画を数字で出している。ただ、資本をどう稼ぎに変えるかの答えは中計のROE6%という低い目標にとどまる。
安全域は、現金と上場株にある。悲観でも58億円ほどの床は見えるが、今の値段の半分ほどだ。払う値段に見合う優良さがあるかと問えば、筆者の答えは否である。
何で稼ぐ会社か
日本フェンオールは、熱の制御を基礎技術とする会社である。2025年12月期の売上129億円は、5つの事業に分かれる。
防消火事業(SSP)が48億円。火災警報、ガス消火、爆発抑制、高感度の煙検知などを作り、施工と保守まで手がける。防爆型の煙感知器など、特殊な分野に強い。
消防ポンプ事業が36億円。子会社のシバウラ防災製作所が、消防ポンプや積載車、全自動消火システムを作る。前期は25%増え、受注残も14億円ある。
温度制御事業(サーマル)が21億円。温度調節器と、半導体製造装置の熱板、高温炉の熱電対を作る。医療事業が14億円で、透析装置を受託製造する。売上の約9割が東レ・メディカル向けだ。残りがプリント基板の実装で10億円。
全社の受注は141億円、受注残は57億円と、どちらも前期を上回る。従業員は連結で271人。長野の工場を建て替え、シバウラも新工場を建てているため、設備投資は2027年までに約24億円と大きい。主な売り先は、ゼネコン、設備工事会社、官公庁、自治体の消防、半導体装置メーカーだ。
優良さと弱いところ
優良さは、普通と見る。強みは、防災の特殊な分野に専門性があること、財務が堅いこと、販路を持つ大株主ができたことだ。
防消火は規制と型式の承認に守られた市場で、一度採用されると保守が続く。ただ売上は大手の能美防災やホーチキに比べ小さく、フェンオールの防消火は約48億円。能美防災の火災報知は約511億円ある。規模で価格を決めるのは難しい。
弱みは3つある。主要顧客への依存、半導体装置の波、そして品質の信用だ。医療は9割が東レ・メディカル向け。2022年に、火災報知設備の4品種約9,700台で型式の承認を満たさない製造があったと公表した。再発防止策は進めているが、規制産業では一度の傷が長く残る。
資本効率は低い。ROEは10年で3〜12%の間を動き、中央値は7.5%。会社の中計も2028年度のROE6%を掲げる。堅い財務を稼ぎに変える手が、まだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
防災設備は、国内の火災報知・消火・特殊防災を合わせて数千億円の市場で、能美防災とホーチキが大手を占める。能美防災の2026年3月期の連結売上は1,397億円。フェンオールの防災は、その一部を担う小さな専門メーカーだ。
数量は実質で緩やかに横ばいから微減。新築の件数は人口減で伸びにくいが、法令の改正、老朽設備の更新、保守が下支えする。消防ポンプは自治体の更新計画に左右され、予算のつき方で年ごとの波がある。
価格は物価に連動するが、自治体の調達は遅れて動く。部材と人件費が先に上がり、転嫁が追いつかない局面が出る。筆者は、防災の価格は10年で物価の1.3倍程度と見る。
温度制御は、半導体装置への投資に左右される。投資が続けば熱板の数量は伸びるが、谷では急に縮む。医療の透析装置は、患者数が頭打ちになり、数量は減る側にある。
循環のどこにいるかといえば、今期は減益の予想だ。ただ受注残は前期より26%増え、防災と消防ポンプは足もとで堅調である。2026年12月期の中間期は、営業利益が12%増えている。
資本政策と M&A
資本政策は、純資産配当率(DOE)3.5%程度を配当の目安にする。2025年12月期の配当総額は約4.3億円。2026年12月期は増配の予想で、純利益の約5割にあたる。
設備投資が重い。長野工場の建替・増設に11億円、シバウラの新工場に13億円、完了は2027年。既に払ったのは合計8億円ほどなので、残りの約16億円は手元の現金から出る。
大株主の西華産業が約19%を持つ(2024年に107万株を取得)。持分法の関係会社で、販路の広がりに期待がある。10年のうちに西華産業が持株を増やす動きもありうるが、本質価値との差は別の問題だ。
日本フェンオールは逆に、西華産業の株33.9万株(帳簿8億円)を持つが、純投資へ変更し、2026年と2027年に半分ずつ売る計画だ。上場株は全体で約22億円あり、その配当は利益に入っているため、価値には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
財務が堅い。自己資本比率は76%、純現金は37億円、借金はない。受注は前期比15%増の141億円、受注残は26%増の57億円で、防災と消防ポンプは足もとで勢いがある。新工場が立ち上がれば、消防ポンプの供給力が増える。
西華産業との提携は、販路を広げる。同社は広い顧客基盤を持ち、消火設備の設置拡大を狙う。約19%を持つ大株主ができたことで、営業の力が補われる。
物価が年3%で上がる世界では、取得済みの設備や上場株の価値が据え置かれ、価格だけが上がる。減価償却は取得時の値段のままなので、利益は名目で伸びやすい。
半導体装置の熱板は、先端の工場投資で数量が増える余地がある。上場株22億円の売却と、西華産業株の整理で、資本は稼ぎに回り始める。中計でPBR1倍を目指す方針も出ている。2026年12月期の中間期は営業利益が12%増え、本業は戻りつつある。防爆型の感知器など、他社が持たない製品が単価を支える。受注残の積み上がりは、ここ数年の売上の底上げを示している。
慎重な見方
稼ぎが薄い。ROEは10年の中央値で7.5%、会社の目標も6%と資本コストを下回る。純利益12.5億円は、子会社の清算益と株の売却益を含み、実力は今期予想の8.8億円に近い。営業のお金の流れは3.4億円で、新工場への投資で現金は減る。
売上の構成も弱い。防災は大手の能美防災やホーチキに規模で劣り、価格を決められない。医療は9割が東レ・メディカル向けで、発注が減れば売上が消える。半導体向けは投資の波に振られる。
品質の傷は残る。2022年に火災報知設備4品種約9,700台の不正が表に出た。再発すれば、型式の承認を失い、売上の柱を失う。
新工場の償却は増え、営業利益率は8%台に抑えられる。配当は純資産配当率の方針で、利益が減っても払い続ける形になり、現金が減る。西華産業が約19%を持つが、買収されるか、持ち続けるかは外から分からず、少数株主は待つしかない。品質問題の後で、自治体や大手ゼネコンが取引を見直す動きも考えられる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、財務の堅さと受注の勢い、販路の広がりを描く。慎重な見方は、資本コストを下回る稼ぎと、顧客への依存、品質の傷を突く。後者のほうが10年の見通しとしては強い。
このため中立は、増益でもROEがkに届かない姿に置いた。確率は、慎重側のやや悲観を厚めに置いた。余った現金は4分の3で数えた。悲観でも現金と上場株が下支えする。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,603 円146 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,011 円57 億円)。 今の値に割り戻すと 1,982 円111 億円、今との差 −1.8%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 7.4%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,193 円291 億円 | 1,427 円80 億円 | +227.9% | +12.6% | 397 円22 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,882 円218 億円 | 1,248 円70 億円 | +154.1% | +9.8% | 924 円52 億円 |
| 中立 | 38% | 3,035 円170 億円 | 1,106 円62 億円 | +105.1% | +7.4% | 1,574 円88 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,204 円68 億円 | 856 円48 億円 | +2.0% | +0.2% | 556 円31 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,041 円58 億円 | 446 円25 億円 | −26.3% | −3.0% | 164 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,603 円146 億円 | 1,011 円57 億円 | +79.0% | +6.0% | 3,614 円203 億円 |
今の株価時価総額 2,019 円113 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.4% を下回るほど割高。
楽観 6% 防災の販路が広がり、半導体向けも伸びる 利益 18 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 5,193 円291 億円
西華産業の顧客網を使って消火設備の設置が広がり、防消火の取扱量は実質で3割増える。新工場で消防ポンプの生産が増え、自治体の更新需要を取り込む。
半導体装置向けの熱板と温度調節器は、先端の工場投資で数量が6割増える。高付加価値の品が増えて利益率は13%に乗る。
医療の受託は東レ・メディカルとの関係が続き、数量は横ばい。全体で営業利益は24億円ほどになり、純利益は18億円を超える。配当は純資産配当率の方針で増え、10年で80億円を返す。ただし、品質問題の再発や顧客の離反を挟まないことが条件になる。西華産業は約19%を持つ株主として、営業面でも支える。
- 防消火事業(SSP):数量 6,500(国内の防災設備(報知・消火・特殊)の市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.38(値段の指数(今を1.00))→ 売上 87 億円・営業利益 10 億円。利益率12.0%
- 消防ポンプ事業:数量 504(消防ポンプ・積載車の納入台数(台・推定))× 価格 1.36(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 69 億円・営業利益 7 億円。利益率10.5%
- 温度制御事業(サーマル):数量 2,400(温度制御機器・熱板の対象市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.35(値段の指数(今を1.00))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。利益率13.0%
- 医療事業(メディカル):数量 560(透析装置の納入台数(台・推定))× 価格 1.30(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。利益率7.0%
- プリント基板事業(PWBA):数量 170(受託する基板案件の件数(件・推定))× 価格 1.32(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。利益率5.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.40% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.9% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 15.65 倍、時価総額 291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:西華産業との販路拡大が実を結び、半導体装置向けの熱部品も伸びる必要がある。2024年に提携したが成果はまだ数字に出ていない。薄めに置いた。
やや楽観 18% 防災の更新需要を取り、新工場が実る 利益 15 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,882 円218 億円
受注残の増えた防災の売上が通年で立ち、防消火の取扱量は実質で2割増える。消防ポンプは新工場が立ち上がり、数量が25%増える。自治体の更新需要が支える。
温度制御は半導体装置向けが堅調で、数量が3割増える。医療と基板は横ばいに近い。
営業利益率は10%台前半に乗り、純利益は15億円ほどに増える。配当は純資産配当率3.5%の方針で、10年で70億円を返す。それでもROEは7%台で、資本コストに届かない。新工場の償却が増える一方、売上も増えるので、利益率は大きくは変わらない。半導体向けの熱部品は、先端の工場投資が続けば追い風になる。
- 防消火事業(SSP):数量 6,000(国内の防災設備(報知・消火・特殊)の市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を1.00))→ 売上 79 億円・営業利益 9 億円。利益率11.3%
- 消防ポンプ事業:数量 450(消防ポンプ・積載車の納入台数(台・推定))× 価格 1.33(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 60 億円・営業利益 6 億円。利益率9.8%
- 温度制御事業(サーマル):数量 1,950(温度制御機器・熱板の対象市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.32(値段の指数(今を1.00))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。利益率12.0%
- 医療事業(メディカル):数量 549(透析装置の納入台数(台・推定))× 価格 1.28(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。利益率6.5%
- プリント基板事業(PWBA):数量 160(受託する基板案件の件数(件・推定))× 価格 1.30(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。利益率4.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.40% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.9% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 14.26 倍、時価総額 218 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が前期比26%増え、新工場の稼働が見える。実現しやすい上振れとして厚めに置いた。
中立 38% 中立:物価分の値上がりで増益、資本効率は低いまま 利益 12 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 3,035 円170 億円
防災は更新と保守が中心で、国内の数量は実質で緩やかに横ばいか微減。西華産業との販路拡大で、防消火の取扱量はシェアが1割増えて、全体で5%ほど増える。価格は物価に近く上がる。
消防ポンプは新工場で生産が増え、数量は15%増える。ただ自治体の予算は物価に遅れて動くので、単価は1.30倍にとどまる。温度制御は半導体向けで実質1.15倍。医療は透析装置の台数が減り、1割弱縮む。
営業利益率は8%台で、営業利益は15億円ほど。純利益は12億円で、配当は純資産配当率の方針どおり10年で62億円を返す。自己資本は厚くなり、ROEは6%台にとどまる。
- 防消火事業(SSP):数量 5,225(国内の防災設備(報知・消火・特殊)の市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 68 億円・営業利益 7 億円。利益率10.5%
- 消防ポンプ事業:数量 414(消防ポンプ・積載車の納入台数(台・推定))× 価格 1.30(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。利益率9.0%
- 温度制御事業(サーマル):数量 1,725(温度制御機器・熱板の対象市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.30(値段の指数(今を1.00))→ 売上 32 億円・営業利益 4 億円。利益率11.0%
- 医療事業(メディカル):数量 532(透析装置の納入台数(台・推定))× 価格 1.25(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。利益率6.0%
- プリント基板事業(PWBA):数量 150(受託する基板案件の件数(件・推定))× 価格 1.30(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。利益率3.5%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.40% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.51 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想は今期が減益、中計2025は2028年度にROE6%を掲げる。目標自体が資本コストより低い。計画どおりの緩やかな回復を中立の中心に置いた。
やや悲観 27% 防災の再編と半導体の谷、顧客の離反で悪化 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,204 円68 億円
防災の更新が一服し、防消火の数量は実質で1割ほど縮む。大手との価格競争で、価格は物価に届かず10年で1.28倍にとどまる。消防ポンプは自治体の予算が伸びず、新工場の稼働率が上がらない。
温度制御は半導体の谷で数量が減り、医療は東レ・メディカルの発注が2割減る。営業利益率は6%台に下がり、営業利益は9億円。
純利益は7億円まで下がる。配当は純資産配当率の方針を守れず、10年で48億円にとどまる。新工場の償却が重荷になる。上場株の配当も細り、営業外の利益が減る。西華産業との提携の効果は限られる。防災の大手に値段で押され、自治体の調達も遅れる。
- 防消火事業(SSP):数量 4,400(国内の防災設備(報知・消火・特殊)の市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.28(値段の指数(今を1.00))→ 売上 55 億円・営業利益 5 億円。利益率8.5%
- 消防ポンプ事業:数量 342(消防ポンプ・積載車の納入台数(台・推定))× 価格 1.22(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。利益率7.0%
- 温度制御事業(サーマル):数量 1,425(温度制御機器・熱板の対象市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.20(値段の指数(今を1.00))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。利益率8.5%
- 医療事業(メディカル):数量 448(透析装置の納入台数(台・推定))× 価格 1.15(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。利益率4.0%
- プリント基板事業(PWBA):数量 130(受託する基板案件の件数(件・推定))× 価格 1.20(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。利益率2.0%
倍率:事業のROEは約4%でkを大きく下回り、上限は1÷k=12.2倍。利益が減る筋書きなので、上限の約6割の7.5倍に置いた。
確率:防災は大手2社に押されやすく、医療は1社依存、温度制御は半導体の波を受ける。慎重な見方を強く見て厚めに置いた。
悲観 11% 品質問題の再発と主要顧客の離反 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,041 円58 億円
品質問題が再発し、防災の受注が止まる。型式の承認を失えば、売上の柱の防消火が急に縮む。自治体や大手のゼネコンは取引を見直し、数量は実質で3割以上減る。
東レ・メディカルが発注先を移し、医療の受託はほぼ消える。半導体の谷で温度制御も2割縮む。新工場の償却と人件費の固定費が重く、営業利益は2億円まで落ちる。
配当は大きく減らし、10年で25億円の返却にとどまる。それでも現金と上場株が下支えとなり、会社は続く。ただ、成長はなく、資産を抱えた会社として見られる。新工場は稼働率が低いままで、償却が重荷になる。上場株も売却して、資金繰りを支える。
- 防消火事業(SSP):数量 3,563(国内の防災設備(報知・消火・特殊)の市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.10(値段の指数(今を1.00))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。利益率5.0%
- 消防ポンプ事業:数量 288(消防ポンプ・積載車の納入台数(台・推定))× 価格 1.10(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。利益率3.5%
- 温度制御事業(サーマル):数量 1,200(温度制御機器・熱板の対象市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.05(値段の指数(今を1.00))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。利益率3.0%
- 医療事業(メディカル):数量 336(透析装置の納入台数(台・推定))× 価格 1.00(1台あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。利益率0.0%
- プリント基板事業(PWBA):数量 100(受託する基板案件の件数(件・推定))× 価格 1.05(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。利益率-2.0%
倍率:床は今の自己資本146億円に掛けるPBR0.40倍(約58億円)。事業の利益は薄いので、売れる資産で値が付く。
確率:2022年に火災報知設備の不正が表に出た会社なので、品質問題の再発はありうる。主要顧客の離反と半導体の谷が重なる必要がある。無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防消火事業(SSP)
火災警報、ガス消火、爆発抑制、高感度煙検知(SAS)、過熱警報の各システムの開発・製造・施工・保守。防爆型の煙感知器など特殊な分野に強い。
| 数量国内の防災設備(報知・消火・特殊)の市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,000 | 1.00 | 48 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5,225 | 1.34 | 68 | 7 |
取り方:国内の防災設備の市場規模は公的統計が見つからず、同業最大手の能美防災の売上(約1,400億円)などから約5,000億円と推定した(市場規模は推定)。売上48.4億円は市場の約1%。セグメント利益は開示がなく、売上比で営業利益を配分した推定(約10%)。
消防ポンプ事業
子会社のシバウラ防災製作所が担当。消防ポンプ、積載車、全自動消火システム。2025年12月期は売上が25%増え、受注残も14億円ある。
| 数量消防ポンプ・積載車の納入台数(台・推定) | 価格1台あたり売上の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 360 | 1.00 | 36 | 3 |
| 10 年後 中立 | 414 | 1.30 | 54 | 5 |
取り方:開示は売上だけなので、1台(1式)あたり約1,000万円と置き、年360台と推定した。セグメント利益は開示がなく、約8.6%で配分した推定。
温度制御事業(サーマル)
温度調節器、半導体製造装置用の熱板、高温炉用の熱電対。半導体装置の投資の波を受ける。
| 数量温度制御機器・熱板の対象市場(億円・実質、推定)× 今のシェアを1とした相対シェア | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 1.00 | 21 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,725 | 1.30 | 32 | 4 |
取り方:市場規模は開示がなく、半導体装置向けの熱部品と温度調節器の国内市場を約1,500億円と推定した。売上21.1億円はその約1.4%。セグメント利益は開示がなく、約12%で配分した推定。
医療事業(メディカル)
透析装置(人工腎臓の監視装置)の受託製造。売上の約9割が東レ・メディカル向け。
| 数量透析装置の納入台数(台・推定) | 価格1台あたり売上の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 560 | 1.00 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 532 | 1.25 | 17 | 1 |
取り方:開示は売上だけなので、1台あたり約250万円と置き、年560台と推定した。セグメント利益は開示がなく、約6.5%で配分した推定。
プリント基板事業(PWBA)
基板の実装、設計、ノイズ対策の受託。小さな事業。
| 数量受託する基板案件の件数(件・推定) | 価格1件あたり売上の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 1.00 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 150 | 1.30 | 12 | 0 |
取り方:開示は売上だけなので、1件あたり約0.06億円と置き、年150件と推定した。セグメント利益は開示がなく、約3%で配分した推定。
リスクと懸念
品質問題の再発と型式承認
2022年に火災報知設備4品種約9,700台で型式の承認を満たさない製造があったと公表した。再発すれば、承認の取り消しや取引の停止で、売上の柱の防消火が急に縮む。規制産業では信用の回復に長い時間がかかる。
主要顧客への依存
医療事業の売上約14億円の約9割は東レ・メディカル向け。全社売上の10.4%を占める。同社が発注先を移したり、透析装置の台数が減ったりすれば、受託の売上が大きく減る。
半導体装置の投資の波
温度制御の熱板は半導体装置への投資に左右される。谷では数量が急に縮む。売上は21億円と全体の16%なので、全体への影響は限られるが、利益率の高い事業でもある。
設備投資の重さと償却
長野工場の建替・増設に11億円、シバウラの新工場に13億円、2027年に完了する。償却は取得時の値段で増え、現金は約16億円減る。新工場の稼働率が上がらなければ、利益率は削られる。
大手との競争と自治体の調達
防災の大手は能美防災とホーチキで、規模で価格を決める。自治体の調達は予算で動き、物価の上昇を転嫁するのが遅れる。消防ポンプは年ごとの波も大きい。
資本効率が上がらないこと
ROEの中計目標は2028年度で6%と、資本コストより低い。堅い財務を稼ぎに変えない限り、利益が増えても1株の価値は増えにくい。西華産業との関係で、持株が動く可能性もある。
今後の分かれ目
- 西華産業との提携で、消火設備の受注が増え始めたら
- 防消火の数量が伸びるので、強気側に確率を寄せる。
- 新工場が稼働し、消防ポンプの売上が通年で増えたら
- 受注残が売上に変わる証拠なので、中立から強気側へ寄せる。
- 上場株や西華産業株の売却を進め、現金を戻す策が出たら
- 資本効率が上がるので、強気側に重みを移す。
- 品質問題が再発したり、型式承認に疑義が出たら
- 売上の柱が揺らぐので、悲観側の確率を大きく上げる。
- 東レ・メディカルの発注が減ったら
- 医療の受託が縮むので、やや悲観側に重みを移す。
見ておくもの
- 防消火・消防ポンプの受注残
- 新工場の稼働時期と償却
- 温度制御の受注(半導体装置向け)
- 東レ・メディカル向けの売上
- 西華産業の持株の動き
- ROEの実績(中計2028年度の6%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業のROEがkに届かない筋書きが多く、上限は1÷k=12.2倍。中立はその約8割の9.5倍で、今の株価と同業の倍率は見ていない。純利益は一過性を除いて8.5億円から流した。悲観の床は過去のPBRでなく、純現金と上場株、工場の資産から置いた。減価償却は取得原価のまま、新工場の分だけ新しい値段で足した。セグメント利益は開示がなく、売上比での配分は推定。10年後の数字は、新リース会計基準を入れず今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.65 倍・やや楽観 PER 10→14.26 倍・中立 PER 9.5→13.51 倍)。
資本コスト 7.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.20% → 7.40%。