結論
日本トリムは、家庭用の電解水素水整水器とその交換カートリッジを売る会社だ。国内首位の整水器に、インドネシアのボトルドウォーターと、さい帯血などの細胞バンクが加わった。売上は242億円、営業利益は29億円、純利益は20億円である。
筆者の結論は、今の値段は割高という見方だ。会社は2028年3月期に売上310億円、営業利益率16%を掲げる。足元は売上が7.5%増えたのに、営業利益は10.5%減った。広告費と人件費が先に増えたためだ。
強みは三つある。整水器は医療機器の承認を受け、国内で長く首位に立つ。使い続ける人が交換カートリッジを買う、積み上げ型の収入がある。純現金は126億円と厚く、自己資本比率は66%だ。
弱みも三つある。売る力が訪問や職域の対面販売に偏る。主力の整水器は、国内では成熟した市場にある。最大株主が4割強を握り、余った現金が株主に届きにくい。
筆者は10年で売上を1.7倍、営業利益率を12%台と置いた。この中立でも、10年後の価値は今の時価総額に届かない。成長は止まらないが、稼ぐ力が資本コストをわずかに上回る程度だからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本トリムは「いい会社だが、安くはない」という評価になる。
事業は守りが強い。整水器は医療機器の承認があり、国内で首位に立つ。カートリッジが積み上がる。財務は堅く、赤字の期がない。10年先も、この事業が消えるとは考えにくい。
一方で、稼ぐ力は並みだ。ROEの中央値は8.6%で、資本コストの8%と大差ない。営業利益率は、ピークの24%から半分になった。成長を取りにいくために、広告費と人件費を先に増やしている。
資本の使い方は、守りに寄っている。現金は積み上がるが、使い道が限られ、株主に届く保証が弱い。
筆者は10年後の価値を5つの筋書きで確率加重した。計画どおりに進む筋書き(確率8%)では今の時価総額を大きく上回るが、中立では、10年後の価値の現在価値が今の時価総額を下回る。割高という結論になる。
安全域は、純現金126億円にある。時価総額約400億円のうち、3割を占める。ただし、そのうち半分しか株主に届かないとみているため、安全域としては小さい。
何で稼ぐ会社か
日本トリムは、水の力を使った健康機器を作り、売る会社だ。事業は大きく二つに分かれる。
一つ目はウォーターヘルスケア事業で、売上の87%を占める。中心は電解水素水整水器だ。水道水を電気分解して、飲用のアルカリ性の水と水素を含む水をつくる家庭用の機器である。国の定める家庭用管理医療機器で、胃腸症状の改善が効能として認められている。2026年3月期の整水器の売上は94億円。本体は数十万円の高額商品で、営業担当が職場や家庭を回って売る。整水器の売上の約8割は、職域販売、取付・紹介販売、店頭の催事、点検時の販売で占められる。
本体を買った人は、浄水カートリッジを定期的に交換する。この売上が59億円で、積み上げ型の収入になる。使っているお客さまは約85万件ある。
もう一つは、インドネシアで売るボトルドウォーターだ。子会社のPTスーパーワハナテクノが「Pristine」の名で、アルカリ水をペットボトルとガロン容器で売る。売上は48億円で、前期比29%増えた。現地のアルカリ水市場で約78%のシェアを持つ、と会社は説明する。新工場を2027年度中に動かす計画だ。
二つ目は医療関連事業で、売上の12%を占める。中心は、さい帯血などを預かる細胞バンク(ステムセル研究所)で売上29億円。国内のさい帯血の保管件数の約99%を占める。ほかに、透析で電解水を使う機器があり、売上は1億円ほどだ。
従業員は連結で777人。会社は2028年3月期に連結売上310億円を目標にしている。
優良さと弱いところ
日本トリムの強みは、国内の整水器で長く首位に立ち、使う人が使い続ける点だ。2012年には国内シェアが5割を超え、2位の倍以上あった。薬機法の承認が必要な医療機器であり、新規参入には手間がかかる。
交換カートリッジの収入は安定している。お客さまは約85万件。本体を一度売れば、毎年のカートリッジ売上が積み上がる。この積み上げが、営業利益率の下支えになる。
ただし、堀は深いとは言えない。営業利益率は2014年3月期の23.7%を頂点に、2026年3月期の12.2%まで下がった。10年間のROEの中央値は8.6%で、資本コストの8%をわずかに上回るだけだ。つまり、首位でも、超過利益を大きく稼いでいない。
販売の仕組みにも弱さがある。整水器は高額で、対面で説明して売る。人件費と広告費の増加が、2026年3月期に営業利益を押し下げた。対面の販売が制限される場面では、営業機会が減る。
整水器は、水素水の効果をめぐって議論もある品物だ。承認の範囲は胃腸症状の改善に限られる。
財務は堅い。純現金126億円で、借金は小さい。赤字の期は10年間で一度もない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本トリムの市場は三つに分かれる。国内の整水器と浄水カートリッジ、インドネシアのボトルドウォーター、日本の細胞保管である。
国内の整水器は成熟した市場だ。人口は減る。一方で、健康志向と高齢化は、家庭用の健康機器の需要を支える。整水器は高額で、買うのは50代以上が中心だ。台数を大きく伸ばすのは難しい。そのため筆者は、中立で10年の台数を5%増と置いた。成長は主に単価と、カートリッジの積み上がりから出る。
競合は、パナソニックなどの家電大手や、浄水器メーカーだ。浄水器市場は広いが、整水器は家庭用管理医療機器で、承認を取った製品に限られる。日本トリムは2012年に国内シェア53.7%(矢野経済研究所)で、2位パナソニックの2倍超だった。直近の市場規模とシェアは、公の統計が見つからなかった。
インドネシアは人口が約2.8億人で、中間層が増えている。ボトルドウォーターの市場は、2009年時点で年10〜20%の伸びと報じられた。日本トリムのPristineは、アルカリ水で約78%を持つが、市場全体では、地場の大手や外資の水に比べて規模が小さい。為替は、ルピアが円に対して下がる傾向があり、円で見た売上を削る。
細胞バンクは、国内の出生数が減る中で、保管件数が積み上がる事業だ。累計11万件を超え、さい帯血の保管で99%を占める。新しい保管が減っても、保管料が積み上がるため、売上は急には落ちない。会社は再生医療や、EPA、iPS細胞の事業も育てようとしている。ただし、まだ売上は小さい。
国内は、売り方の仕組みを守りつつ、物価の上昇を価格に移せるかが問われる。
資本政策と M&A
還元は、配当を中心に行う。方針は、純資産に対する配当(DOE)4%を基準とする。2026年3月期は、DOE 4.1%の配当を予定する。純利益の約5割を配当に回す計算だ。自社株買いは目立たない。2026年6月には、自己株式を譲渡制限付株式の報酬として処分した。
最大株主は森澤紳勝氏で、資産管理会社を含めて41.6%を持つ。プレミアムウォーターグループが合わせて16.6%を持つ。大きな株主が二つあり、持ち合いに近い構造だ。そのため、余った現金が株主に届きにくい。筆者は、純現金126億円のうち、事業に要らない60億円の戻り方を半分とみる。
現金は、この10年で95億円から126億円まで積み上がった。配当で約5割を戻しても、積み上がっている。会社は、インドネシアの新工場や細胞保管センター(11億円など)に投資を進める。設備の投資額は小さく、現金の使い道は限られる。
従業員向けの株式給付信託と、持株会向けの信託が、合わせて60万株ほどを持つ。これらの株は会社の資金で買い済みで、自己資本からも差し引かれる。筆者は、この株を除いた743万株を、経済的な株数とみる。
中期経営計画は、2028年3月期に売上310億円、ROE10%、経常利益率20%を掲げる。営業利益率16%の図は、足元の12%から4ポイント高い。買収される確率は、参考値で19.7%だ。最大株主が4割強を握るため、敵対的な買収は起こりにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
インドネシアの水と、国内の整水器の両方が、会社の計画どおりに伸びる。2028年3月期の計画は、整水器115億円、カートリッジ63億円、ボトルドウォーター78億円、医療関連38億円だ。足元は、ボトルドウォーターが前期比29%伸びた。新工場が2027年度に動けば、供給の制約が外れる。
国内では、ユーザー約85万件を200万件に増やす目標がある。カートリッジは積み上がる収入で、ユーザーが増えるほど利益率が上がる。営業利益率は、計画の16%に向かう。2014年3月期には23.7%だった。同じ事業の収益力が戻れば、利益は大きく伸びる。
細胞バンクは、さい帯血の保管で99%を占める。保管料が積み上がり、再生医療が広がれば、新しい収入が生まれる。
純現金126億円は、新工場と細胞センターの投資に回せる。借金を増やさず、成長の原資を自前で賄える会社は少ない。
これらがそろえば、10年で売上は2.4倍になり、営業利益は3倍に近づく。ROEは15%台に乗る。会社が10%を掲げているのだから、上振れの余地はある。
慎重な見方
まず、計画の伸びは先走りだ。2026年3月期の売上は7.5%増えたのに、営業利益は10.5%減った。広告費が3億円、人件費が2億円増え、売上総利益率も下がった。成長のために使う費用が、成長の利益を食っている。
整水器の本体は、前期比1.5%増にとどまった。計画では、2028年3月期に115億円とする。2年で24%増える計算だが、国内で台数が伸びる材料は乏しい。人口は減り、買う中心の世代は高齢になる。販売員は対面で売るため、人手が要り、人件費が先に増える。
インドネシアの水は伸びているが、利益率が見えない。2023年の資料の目標は、2026年度に売上60億円だった。実績は48億円で、届いていない。新工場は投資額が開示されておらず、減価償却が利益を削る。ルピアは円に対して下がる傾向があり、円で見た売上と利益を削る。
水素水への疑問も残る。承認の範囲は胃腸症状の改善に限られ、効果の主張が強まると、規制や信用の問題になる。
資本の面では、最大株主が4割強を握り、余った現金は半分しか届かないとみる。ROEの中央値は8.6%で、資本コストに近い。成長しても、価値は大きく増えない。
どちらに重みを置いたか
インドネシアの水と、国内のカートリッジの積み上がりは、確かな強みだ。ただ、足元の利益が減っていること、計画が先走りであること、大株主の構造は事実で、慎重な見方が重い。中立を4割、やや楽観を2割強、やや悲観を2割、悲観を1割に置いた。
10年後の価値は、今の時価総額を下回る。成長が続いても、稼ぐ力が資本コストをわずかに上回る程度だからだ。上振れの筋書きでは、計画の水準に届き、割高の評価が縮まる。純現金が下値を支えるため、悲観の確率は1割に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,130 円604 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,803 円134 億円)。 今の値に割り戻すと 5,308 円395 億円、今との差 −1.1%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 16,867 円1,254 億円 | 2,556 円190 億円 | +261.7% | +13.7% | 1,554 円116 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,965 円890 億円 | 2,193 円163 億円 | +163.6% | +10.2% | 3,115 円232 億円 |
| 中立 | 40% | 8,440 円627 億円 | 1,843 円137 億円 | +91.5% | +6.7% | 4,113 円306 億円 |
| やや悲観 | 20% | 3,065 円228 億円 | 1,399 円104 億円 | −16.9% | −1.8% | 893 円66 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,594 円119 億円 | 995 円74 億円 | −51.8% | −7.0% | 259 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,130 円604 億円 | 1,803 円134 億円 | +85.0% | +6.3% | 9,933 円738 億円 |
今の株価時価総額 5,370 円399 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画どおり、水と整水器の両方が伸びる 利益 64 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 16,867 円1,254 億円
インドネシアの新工場が2027年度に動き、Pristineの供給が増える。ジャワ島の外にも広がり、数量は10年で3倍を超える。ルピアの下落は円の単価を削るが、ブランドの値上げで物価並みを保つ。
国内では、ユーザー数が増え、カートリッジの積み上がりが大きくなる。整水器の台数も3割台半ば増える。営業担当の生産性が上がり、広告費の効率も改善する。
細胞バンクは保管の積み上がりで、売上が1.5倍になる。利益率は2割に近づく。
全社の営業利益率は15%台に乗る。会社の計画線(16%)に近い。ROEは15%台まで上がり、配当の性向は5割弱を保つ。
この筋書きの前提は、国内の対面販売の費用が売上に比べて重くならないことだ。足元の営業減益から見ると、条件は厳しい。
水と整水器の両方が伸びる前提は、足元の広告費と人件費の増加が、一時的な先行投資だったという見方だ。会社の目標どおり、ユーザー200万件に近づけば、積み上がる収入が全社の利益を支える。
- 整水器本体:数量 4.5(販売台数(万台、推定))× 価格 38(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 169 億円・営業利益 25 億円。計画どおり115億円に近づき、台数も増える
- カートリッジ・その他国内:数量 136(稼働ユーザー(万件、推定))× 価格 1.10(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 150 億円・営業利益 27 億円。ユーザーが増え、積み上がる収入が膨らむ
- インドネシア・ボトルドウォーター:数量 330(販売量(百万リットル、推定))× 価格 0.64(百万リットルあたりの売上(億円))→ 売上 211 億円・営業利益 32 億円。新工場で供給が増え、ジャワ島外にも広がる
- 医療関連(細胞バンク・透析):数量 16.5(保管検体(万件、累計))× 価格 3.68(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 11 億円。保管が積み上がり、再生医療が広がる
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 19.14 倍、時価総額 1,254 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:整水器・水・細胞バンクの三つが計画線にそろう必要があり、足元の営業減益から見て難しい。8%に置いた。
やや楽観 22% 水が伸び、整水器は微増で利益率が戻る 利益 48 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 11,965 円890 億円
インドネシアの水が、新工場の稼働で伸びる。数量は10年で3倍弱になる。ルピア安のため、円の単価は物価に届かない。
国内の整水器は、台数が2割増える。カートリッジのユーザーは3割増える。細胞バンクは保管の積み上がりで、売上が3割台半ば増える。
全社の営業利益率は13%台に戻る。会社の計画線(16%)には届かないが、足元(12%)より1ポイント強良い。
ROEは13%台で、資本コストの8%を上回る。配当は純資産の4%を基準に維持する。余った現金は、半分だけ株主に届くとみる。
この筋書きは、中立よりも水の伸びが強く、国内の費用が抑えられる点が違う。
足元の営業減益は、投資の先行で、2年で戻る。そのあと、水とカートリッジが利益を引き上げる。国内の整水器の単価が、物価に届かない点が、計画との差になる。
- 整水器本体:数量 4.0(販売台数(万台、推定))× 価格 37(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 148 億円・営業利益 20 億円。台数は2割増、単価は物価並み
- カートリッジ・その他国内:数量 111(稼働ユーザー(万件、推定))× 価格 1.09(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 120 億円・営業利益 20 億円。ユーザーが3割増える
- インドネシア・ボトルドウォーター:数量 290(販売量(百万リットル、推定))× 価格 0.60(百万リットルあたりの売上(億円))→ 売上 173 億円・営業利益 23 億円。数量は2.9倍、ルピア安で円の単価は物価に届かない
- 医療関連(細胞バンク・透析):数量 14.3(保管検体(万件、累計))× 価格 3.57(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 8 億円。保管が積み上がり、単価は物価に届かない
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 18.1 倍、時価総額 890 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:インドネシアの水は前期に29%伸びており、新工場が動けば計画に近づく。国内の整水器は微増にとどまる。2割強に置いた。
中立 40% 成長はするが、利益率は12%台 利益 35 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 8,440 円627 億円
国内の整水器は成熟した市場で、台数は10年で5%増にとどまる。単価は営業の値引きと競争で、物価に届かず1.30倍になる。カートリッジは、ユーザーが15%増える。
インドネシアの水は、新工場の稼働で数量が2.3倍になる。ルピアは円に対して下がる傾向があり、円の単価は1.15倍にとどまる。細胞バンクは保管の積み上がりで、売上が4割強増える。
売上は10年で1.7倍の402億円になる。会社の計画(2028年3月期に310億円)は、このペースより早い。営業利益率は12%台で、足元と同じ水準だ。広告費と人件費の増加を、カートリッジの積み上がりが吸収する。
配当は純資産の4%を基準に、純利益の5割を回す。余った現金は大きく動かない。
ROEは10%台で、資本コストの8%を2ポイント強上回る。
この筋書きで、会社の計画との差は、国内の整水器とボトルドウォーターの伸びの速さだ。計画は2年で整水器が24%、水が63%増える。筆者は、これを10年かけて達成すると見る。
細胞バンクの保管料は契約で決まっていて、物価に連動しにくい。そのため単価は10年で1.25倍にとどまり、物価の1.34倍に届かない。
- 整水器本体:数量 3.5(販売台数(万台、推定))× 価格 37(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 128 億円・営業利益 15 億円。台数は微増、単価は物価に届かない
- カートリッジ・その他国内:数量 97.8(稼働ユーザー(万件、推定))× 価格 1.07(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 105 億円・営業利益 16 億円。ユーザーが15%増える
- インドネシア・ボトルドウォーター:数量 230(販売量(百万リットル、推定))× 価格 0.55(百万リットルあたりの売上(億円))→ 売上 126 億円・営業利益 15 億円。数量は2.3倍、円の単価は1.15倍
- 医療関連(細胞バンク・透析):数量 12.7(保管検体(万件、累計))× 価格 3.43(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 6 億円。保管が積み上がる。保管料は契約で固定的なため、単価は物価に届かず1.25倍
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 17.02 倍、時価総額 618 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は台数微増で単価が物価に届かず、水と細胞バンクが成長を補う。最も蓋然性が高く4割。
やや悲観 20% 対面販売が弱り、利益率が1割を割る 利益 17 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,065 円228 億円
対面販売の人件費が先に増え、整水器の台数は15%減る。単価も営業の値引きで1.2倍にとどまる。カートリッジのユーザーは横ばいで、積み上がりが止まる。
インドネシアの水は伸びるが、競争とルピア安で、円の単価は伸びない。利益率は8%台に下がる。細胞バンクは、出生減で新規の保管が減り、売上の伸びは小さい。
売上は278億円で、会社の計画の9割にも届かない。営業利益は24億円と、足元(29億円)を下回る。
配当は維持しようとするが、純利益の5割を超える。ROEは6%台で、資本コストの8%を下回る。
最大株主が4割強を握るため、余った現金は少しずつ貯まるが、株主には届かない。
最大株主の構造から、余った現金の戻り方を半分とみる前提は、この筋書きでも変えない。営業が増えても、広告に回す費用が増えるだけで、売上が伸びない悪循環が起きる。
- 整水器本体:数量 2.8(販売台数(万台、推定))× 価格 34(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 8 億円。対面販売の制約で台数が減る
- カートリッジ・その他国内:数量 85.0(稼働ユーザー(万件、推定))× 価格 0.99(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 84 億円・営業利益 11 億円。ユーザーは横ばい
- インドネシア・ボトルドウォーター:数量 140(販売量(百万リットル、推定))× 価格 0.48(百万リットルあたりの売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 5 億円。競争とルピア安で単価が伸びない
- 医療関連(細胞バンク・透析):数量 10.5(保管検体(万件、累計))× 価格 3.02(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。出生減で新規が減る
倍率:事業のROE 6.1%はk 7.25%以下なので、正当化PERの上限は1÷k=12.5倍(ためた利益は額面未満)。この筋書きの稼ぐ力の弱さを反映して上限の8.0割の10.0倍に置いた。余った現金は戻り方0.5を掛けて足した。
確率:対面販売の人件費が先に増え、利益率が戻らない筋書き。足元の営業減益から、2割と厚めに置いた。
悲観 10% 構造的に負ける:整水器が縮み、水は赤字になる 利益 4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,594 円119 億円
国内の整水器は、対面販売が弱り、台数が4割減る。高齢の既存ユーザーが減り、カートリッジの買い替えも止まる。水素水の効果をめぐる規制や信用の問題が、新規の販売を直撃する。
インドネシアの水は、地場や外資の水との競争とルピア安で、採算が悪化する。新工場の減価償却が、利益を削る。細胞バンクは出生減と規制で縮む。
売上は188億円に縮み、営業利益は6億円ほどになる。リストラで黒字を保つが、稼ぐ力は資本コストをはるかに下回る。
配当は削られ、純資産の4%の基準も維持できなくなる。それでも純現金は残るが、最大株主の構造で、株主に届くのは半分だ。
売上の縮小と固定費の重さが数年で効き、評価は純現金の半分と、事業の稼ぐ力の合計まで落ちる。
10年のうちに、整水器の累計の販売台数が頭打ちになり、カートリッジも減る。会社は医療関連や再生医療に軸足を移すが、まだ小さく、整水器の落ち込みを補えない。
- 整水器本体:数量 2.0(販売台数(万台、推定))× 価格 31(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。台数が4割減り、単価も物価に届かない
- カートリッジ・その他国内:数量 68.0(稼働ユーザー(万件、推定))× 価格 0.91(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 5 億円。ユーザーが2割減る
- インドネシア・ボトルドウォーター:数量 100(販売量(百万リットル、推定))× 価格 0.43(百万リットルあたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。競争とルピア安で採算が悪化
- 医療関連(細胞バンク・透析):数量 7.7(保管検体(万件、累計))× 価格 2.75(1万件あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。出生減と規制で縮小
倍率:悲観はROEが1%台でPERは当てられない。今の自己資本237億円に掛ける床の倍率として0.5倍に置いた。純現金126億円に戻り方0.5を掛けた63億円と、事業の稼ぐ力(純利益4億円÷8%で約54億円)の合計に近い。10年の縮小で現金が食われる前提。市場の評価は根拠にしていない。
確率:整水器の需要が縮み、水が赤字になる構造的な負け。純現金が下値を支えるため、1割に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
整水器本体
電解水素水整水器の本体。職域・取付紹介・催事などの対面販売が中心。
| 数量販売台数(万台、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.3 | 28 | 94 | 11 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 37 | 128 | 15 |
取り方:売上は有価証券報告書の整水器93.6億円。台数は非開示で、1台約28万円(数十万円の高額品)とみて約3.3万台と推定し、売上を台数で割って単価を逆算した。営業利益は、ウォーターヘルスケア部門の9か月累計の利益率13%と全社29.4億円に合わせた仮置き(約12%)。
カートリッジ・その他国内
浄水カートリッジの交換売上と、卸・OEM・WEBなど。
| 数量稼働ユーザー(万件、推定) | 価格1万件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 0.82 | 70 | 11 |
| 10 年後 中立 | 97.8 | 1.07 | 105 | 16 |
取り方:カートリッジ58.5億円に卸・OEM・WEBなどの約11.5億円を足して70億円。ユーザー約85万件は会社の開示。1件あたり年約8千円で、一部のユーザーは交換しないため、実際の稼働は推定。営業利益は積み上げ型で利益率が高いとみて約16%の仮置き。
インドネシア・ボトルドウォーター
Pristineの名で売る電解アルカリ水(ペットボトルとガロン)。
| 数量販売量(百万リットル、推定) | 価格百万リットルあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.48 | 48 | 6 |
| 10 年後 中立 | 230 | 0.55 | 126 | 15 |
取り方:売上は有価証券報告書の47.8億円。販売量は非開示で、現地の小売価格の6割ほどを卸値とみて、百万リットルあたり約0.48億円と置き、約1億リットルと推定した。営業利益は非開示で、利益率12%の仮置き。
医療関連(細胞バンク・透析)
さい帯血などの保管(ステムセル研究所)と、電解水透析機器。
| 数量保管検体(万件、累計) | 価格1万件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 2.75 | 30 | 4 |
| 10 年後 中立 | 12.7 | 3.43 | 43 | 6 |
取り方:売上は細胞バンク29.2億円と透析1.0億円。累計の保管11万件超は会社の開示で、売上を割った1件あたり年約2.7万円は新規受託料と保管料の合計。営業利益は非開示で、利益率13%の仮置き。
リスクと懸念
広告費・人件費の先行
2026年3月期は売上が7.5%増えたのに、営業利益は10.5%減った。広告費が3億円、人件費が2億円増えた。費用が先に増え、売上が追いつかなければ、利益率はさらに下がる。
対面販売への依存
整水器の売上の約8割は、職域・取付紹介・催事・点検時の対面販売だ。対面が制限されると営業機会が減り、人手不足が販売の壁になる。
国内整水器の成熟
人口が減り、買う世代が高齢になる。本体の売上は前期比1.5%増にとどまった。計画は2年で24%増と、先走りである。
水素水の効果をめぐる議論
承認の範囲は胃腸症状の改善に限られる。効果の主張が強まれば、規制や信用の問題になりうる。
インドネシアの採算と為替
2026年度の売上目標60億円に対し、実績は48億円だった。新工場の投資額は開示されていない。ルピア安は円で見た利益を削り、外資や地場の水との競争も強い。
最大株主の構造
最大株主が資産管理会社を含めて41.6%を持つ。プレミアムウォーターグループも16.6%を持つ。余った現金の戻りや買収の判断が、少数株主に左右されにくい。
原材料の高騰
電気分解に使うプラチナなどの原材料の価格が上がると、本体の利益率を圧迫する。
今後の分かれ目
- 整水器本体の売上が2期連続で前年比5%以上伸びる
- 計画線に近づく材料で、楽観側の確率を上げる。
- 営業利益率が2期連続で12%を割る
- 広告費・人件費の先行が回収されておらず、悲観側へ確率を寄せる。
- インドネシアの新工場が計画どおり稼働し、売上が60億円を超える
- 2023年の目標が遅れて達成され、水の成長の確度が上がる。
- 自社株買いを決議し、現金の一部を戻す
- 余った現金の戻り方が1.0に近づき、価値が上がる。
- プレミアムウォーターグループが保有を積み増す
- 買収や経営参加の可能性が高まり、少数株主の取り分が見直される。
- 効能の表示をめぐる規制の強化
- 整水器の新規販売が落ち、悲観側へ確率を寄せる。
見ておくもの
- 整水器本体の売上と営業利益率(広告費・人件費の増え方)
- インドネシアのボトルドウォーター売上と新工場の稼働
- カートリッジのユーザー数(85万件から200万件の目標)
- 細胞バンクの保管件数と再生医療の事業化
- プレミアムウォーターグループの保有割合と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、四つの事業の数量×価格で10年後の売上と利益を積み上げ、その時点のROEとk 7.25%から正当化PERを決めた。中立は上限の8.5割(12.2倍)に置いた。会社の計画(2028年3月期に売上310億円、営業利益率16%)は根拠にせず、足元の営業減益から10年かけて達成すると置いた。悲観は純現金の半分と稼ぐ力を床にした。市場の倍率は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.8→19.14 倍・やや楽観 PER 13.2→18.1 倍・中立 PER 12.2→17.02 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。