結論
サン電子は、名古屋の小さな通信機器・遊技機部品メーカーだ。ただし値打ちの中心は本業ではない。米ナスダックに上場するCellebrite(捜査機関向けにスマートフォンのデータを取り出すソフトの会社)の株を約4割持っていることにある。筆者の結論は「割高」だ。
本業の売上は100億円ほどで、営業利益はほぼゼロ。2026年3月期の純利益は97億円と大きいが、その半分近くは持分の増減に伴う一度きりの利益だ。続く部分は、持分法利益の約50億円である。
Cellebriteはいい会社だ。定期課金が中心で、現金も厚い。ただ、その利益はサン電子の帳簿に載るだけで、配当では届かない。株主の手元に現金が来るのは、持分を売るか、自社株を買うときだけだ。しかも2026年の4〜6月期には成長に陰りが見え、経営トップも替わる。
10年後の中立では、Cellebriteの売上は今の2.3倍ほどに育つ。それでも、利益で測った本質価値は今の時価総額の半分ほどにとどまる。楽観でも今の値段を大きくは超えない。悲観では持分の価値が細り、時価総額は今の1割台まで縮む。
筆者が見ているのは、事業の質よりも「その質が株主に届く道があるか」だ。道は細い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず払う値段のうち、何が持分で何が本業かを分けて見る。
サン電子の時価総額の大半は、Cellebrite持分の値段で説明がつく。本業にはほとんど値段が付いていない。営業利益がゼロの本業なら、それは筋が通る。
問題は持分の側だ。持分法利益は帳簿の数字であり、現金ではない。10年持ち続けても、それが株主の取り分になるかは、経営の決断次第になる。筆者は、現金で届かない利益に高い倍率を払わない。
Cellebriteという事業そのものは魅力がある。定期課金で、現金が厚く、顧客は公共機関だ。10年後も存在する可能性は高い。ただし、スマートフォンの暗号化と販売先の規制という、外から壊される危険がある。わからない部分も大きい。
安全域の面では、悲観の筋書きでも持分と現金が残るため、元本を失う深さには限度がある。それでも、今の値段は10年の成長を織り込みすぎている。楽観の筋書きでも、今の時価総額を大きくは超えない。
何で稼ぐ会社か
サン電子は三つの小さな本業と、一つの大きな持分でできている。
最大の本業は遊技機向けの部品で、売上の約6割を占める。次が通信機器で約3割。携帯電話の3G停波に伴う置き換え需要が一巡し、いまは5Gとエッジ AI の新製品待ちにある。残りの1割強が、ソフトとデータの定期課金事業だ。2026年にはウェルネス事業(睡眠改善製品の国内展開)も新設した。
この三つを合わせても営業利益はほぼゼロ。事業ごとの利益は出ているが、本社費用がそれを食っている。
会社の値打ちを決めるのは持分のほうだ。サン電子は2007年にイスラエルのCellebriteを傘下に収め、2021年の米国上場を経て、いまは持分法の関連会社として約4割を持つ。Cellebriteは警察など捜査機関に、スマートフォンから証拠データを取り出すソフトを売る会社だ。売上の大半が定期課金で、年間経常収益は5億ドルを超える。
サン電子の連結には、その利益のうち持分の割合が営業外の損益として入る。連結の売上には入らない。だから売上100億円の会社なのに、純利益が100億円近くになるという、ゆがんだ決算が出る。
優良さと弱いところ
堀は本業ではなく、持分の側にある。
Cellebriteは世界の捜査機関に広く入り込み、スマートフォンの抽出ソフトでは標準に近い位置にいる。証拠の扱い方を一度覚えた捜査機関は、乗り換えにくい。定期課金の比率は高く、直近12か月のフリーキャッシュフローは売上の約3割に達する。現金と投資は5億ドルを超える。
弱みも並べる。2026年4〜6月期は、年間経常収益が会社の見通しを下回った。米連邦政府と欧州の官公庁で大型案件が遅れたためだ。通期の見通しは下方修正され、経営トップも交代する。この鈍りが一時的か構造的かは、まだわからない。
外から壊される危険もある。アップルやグーグルが暗号化を強めれば、抽出ソフトは追い続けるしかない。人権侵害に使われたとの批判を受けやすい商品でもあり、販売先の規制が強まれば売上に響く。
本業には、堀と呼べるものが薄い。遊技機の台数は減り、通信機器は価格競争にさらされる。営業利益率は過去10年、ゼロ前後を行き来した。
筆者は、持分の質は高いが、サン電子の株主がその質を受け取る道は細いと見る。堀の価値を現金に変える経営の意思が、いまの経営からは見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
サン電子の10年は、三つの市場の動きで決まる。重い順に書く。
一つ目は、捜査機関向けのデジタル証拠の市場だ。世界のデジタルフォレンジック市場は、調査会社によって75億〜148億ドルと幅が大きい。企業内の調査やクラウドまで含むかどうかの違いである。筆者は捜査機関向けに絞って約50億ドルと置いた。推定だ。犯罪の証拠がスマートフォンとクラウドに移る流れは続く。市場は実質で年4%ほど伸びると見る。
競合は、米国発のMagnet Forensics、スウェーデンのMSAB、Oxygen Forensicsなどだ。Cellebriteは抽出で強く、解析では競合が追う。価格は公共調達で決まるため、値上げの力は強くない。
二つ目は遊技機だ。2025年の販売は約153万台で、前年とほぼ同じだった。ただしパチンコには、70万台を割るとの見方も出ている。台数は先細りで、部品メーカーが取れる単価にも限りがある。
三つ目は通信機器。3G停波の需要が一巡し、次は5Gとエッジ AI 機器になる。市場は大きいが、価格競争が重く、小さな会社が利益を残しにくい。
どの市場も、サン電子が10年で営業利益を2桁億円に乗せる絵は描きにくい。伸びるのは持分だけである。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社でいちばん弱い所だ。
持分の価値は大きいのに、株主に届く現金が少ない。Cellebriteは配当をしない。サン電子は持分を売らない限り、持分法利益を現金にできない。自社株は、2025年9月の約200万株から2026年6月の約250万株へ増えたが、時価総額に比べると小さい。
外からの圧力は強かった。2020年には、投資ファンドのオアシス・マネジメントが臨時株主総会を請求し、取締役の入れ替えを通した。当時は持分が7割を超えており、第三者への株の発行による希薄化と、取締役会の監督が争点だった。いまの持分は4割台だ。
今後の分かれ目は三つある。持分の一部を売って株主に返すのか。持分を使って本体の買収に動くのか。何もせず、帳簿の数字だけ増やすのか。筆者は三つ目の確率がいちばん高いと見る。売れば売却益に税がかかり、手取りは持分の市場価値より減る点も、頭に入れておく必要がある。
点検済み:走査上の超えは基準の違い。Cellebriteは持分法で営業利益に入らず、事業別では持分比で按分した利益と売上を足している。Cellebrite自体の利益率は今の12.5%から20%への規模の効果で、本体の利益率は低いまま。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Cellebriteは、まだ伸び盛りの会社だ。2026年6月末の年間経常収益は約5億ドルで、前年より2割増えた。顧客は公共機関で、一度入れば解約しにくい。フリーキャッシュフローは売上の約3割あり、会社は通期の調整後EBITDA率を28%に引き上げた。経営陣の交代も、次の成長を狙った人事と読める。
AIによる証拠の整理や解析が加われば、顧客あたりの単価が上がる。犯罪の証拠はスマートフォンとクラウドに集まり続け、市場は実質で年5%台まで伸びる。売上が増えれば、会計上の営業利益率は27%まで上がる余地がある。
サン電子の側にも手がある。持分は時価総額の大半を占める。アクティビストが再び動けば、持分の一部売却と自社株買いで、株主の取り分は一気に明確になる。本業も、5G機器とサブスク事業が育てば営業利益が2桁億円に乗る。会社の中計は、2027年3月期の営業利益21億円を掲げている。
これらが重なれば、10年後の純利益は300億円規模になり、倍率も高く付く。
慎重な見方
持分の成長には、息切れの兆しがすでに出ている。2026年4〜6月期は、年間経常収益が会社の見通しを下回り、通期の見通しも下げた。米連邦政府と欧州の官公庁の大型案件が遅れたためだ。経営トップも替わる。新しい経営者のもとで成長が戻る保証はない。
スマートフォンの暗号化は、いたちごっこだ。抽出が難しくなるたびに、開発費がかさむ。公共調達は価格に厳しく、Magnet ForensicsやMSABに案件を取られれば、利益率は伸びない。人権問題を理由に販売が制限されるリスクもある。
サン電子の側の弱みは、もっと深い。持分法利益は現金にならない。本業は営業利益ゼロが続き、遊技機の台数は減る。会社が掲げる21億円の営業利益は、売上が2倍近くに増える前提で、これまでの実績とかけ離れている。
持分の簿価は市場価値より低く、売れば税がかかる。市場価格のままで手取りになるわけではない。10年のうちに持分の成長が鈍り、利益が半分になれば、時価総額は今の3割ほどに縮む。
どちらに重みを置いたか
持分の質は高く、強気の見方にも筋はある。それでも勝つのは慎重な見方だ。成長に陰りが出ていること、利益が現金で届かないこと、今の値段が10年の成長を先取りしていることが、理由である。確率は中立を最大の35%に置き、やや悲観を25%に厚くした。楽観は8%にとどめた。結果として、本質価値は今の時価総額を5割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 10,660 円2,295 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 405 円87 億円)。 今の値に割り戻すと 4,984 円1,073 億円、今との差 −48.5%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 24,077 円5,183 億円 | 697 円150 億円 | +156.2% | +9.9% | 1,982 円427 億円 |
| やや楽観 | 20% | 17,613 円3,792 億円 | 557 円120 億円 | +87.9% | +6.5% | 3,634 円782 億円 |
| 中立 | 35% | 11,816 円2,544 億円 | 465 円100 億円 | +27.0% | +2.4% | 4,298 円925 億円 |
| やや悲観 | 25% | 3,662 円788 億円 | 279 円60 億円 | −59.3% | −8.6% | 985 円212 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,341 円289 億円 | 46 円10 億円 | −85.7% | −17.6% | 166 円36 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,660 円2,295 億円 | 405 円87 億円 | +14.4% | +1.4% | 11,066 円2,382 億円 |
今の株価時価総額 9,670 円2,082 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% Cellebriteが標準になり、持分が現金化される 利益 301 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 24,077 円5,183 億円
Cellebriteが、公共機関向けのデジタル証拠の標準になる筋書きだ。AIによる証拠の整理・要約が追加料金の取れる機能として定着し、契約あたりの単価が物価を上回って上がる。年間経常収益の伸びは今の2割から1割台前半へ落ち着きながら、10年続く。売上の拡大で、会計上の営業利益率も27%まで上がる。
サン電子の本体も動く。5G・エッジ AI 機器とサブスク事業が育ち、営業利益は2桁億円に届く。会社の中計に近づく姿だ。
持分の一部売却と自社株買いが動き、株主に現金が届き始める。持分と本体が別々に評価され、コングロマリットの重しが外れる。持分は4割のまま保たれる前提で、10年後の純利益は300億円規模になる。
- Cellebrite(持分法・持分比で按分):数量 85.0(捜査機関向けデジタル証拠ソフト市場(億ドル・実質・推定))× 価格 9.1%(市場 1 億ドルあたりの持分按分売上(億円)÷150 = シェア × 持分比 × 物価の倍率)→ 売上 1,162 億円・営業利益 314 億円。AI機能で単価上昇・市場も拡大(市場85億ドル × シェア17%)
- エンターテインメント関連(遊技機部品):数量 135(遊技機の年間販売台数(万台))× 価格 0.49(1 万台あたりの当社売上(億円)=部品の単価)→ 売上 66 億円・営業利益 7 億円。台数の減少が緩やか
- IT関連(通信機器):数量 28.0(通信機器の年間出荷台数(万台・推定))× 価格 1.94(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。5G・エッジAI機器が立ち上がる
- グローバルデータインテリジェンス:数量 1,200(契約顧客数(社・推定))× 価格 0.03(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 6 億円。サブスク顧客が倍増
倍率:事業の純利益 301 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.11 倍、時価総額 4,846 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:Cellebriteの成長が続き、売却と還元も動く条件が重なる筋書き。2026年の鈍りと現金化の道の細さを考え、8%にとどめた。
やや楽観 20% Cellebriteの成長が続く 利益 227 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 17,613 円3,792 億円
Cellebriteの成長は続くが、数字の伸びは楽観の筋書きより一段低い。AI機能の追加で単価は物価並みに上がり、市場でのシェアも少しずつ上がる。年間経常収益の伸びは、10年で1割強の平均に落ち着く。営業利益率は23%台に乗る。
本体は縮小が止まり、5G機器とサブスクで営業利益は黒字に戻るが、本社費用が重く、全体の利益には響かない。
持分は売られず、利益は帳簿に積み上がる。自社株買いは今より少し増える程度だ。持分法利益の増加が、そのまま純利益を押し上げる。ただし現金で株主に届く部分は小さく、倍率は中立よりわずかに高い程度にとどまる。市場の伸びも、実質で年4%台に収まる。
- Cellebrite(持分法・持分比で按分):数量 80.0(捜査機関向けデジタル証拠ソフト市場(億ドル・実質・推定))× 価格 8.3%(市場 1 億ドルあたりの持分按分売上(億円)÷150 = シェア × 持分比 × 物価の倍率)→ 売上 997 億円・営業利益 234 億円。成長継続・シェア微増(市場80億ドル × シェア15.5%)
- エンターテインメント関連(遊技機部品):数量 125(遊技機の年間販売台数(万台))× 価格 0.49(1 万台あたりの当社売上(億円)=部品の単価)→ 売上 61 億円・営業利益 6 億円。減少が緩やか
- IT関連(通信機器):数量 26.0(通信機器の年間出荷台数(万台・推定))× 価格 1.86(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 4 億円。5G機器が伸びる
- グローバルデータインテリジェンス:数量 1,000(契約顧客数(社・推定))× 価格 0.03(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 4 億円。顧客増
倍率:事業の純利益 227 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.53 倍、時価総額 3,524 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:持分の成長は続くが、還元はほぼ動かない。強気の見方の筋が通る範囲として20%。
中立 35% 持分は育つが、現金では届かない 利益 160 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 11,816 円2,544 億円
Cellebriteは、公共機関向けの市場で緩やかにシェアを伸ばす。年間経常収益の伸びは今の2割から徐々に下がり、10年の平均で1割ほどになる。単価は物価並みに上がる。営業利益率は20%に届く。今の10%台前半から、規模の効果で改善する姿だ。持分比は、株式報酬による希薄化で40%に下がる。
本体は、遊技機部品の縮小と通信機器の価格競争が続く。通信機器は技術の進歩で単価が値下がりし、物価ほどには上がらない。サブスク事業は育つが小さく、本社費用を吸収するところまでは届かない。会社が掲げる営業利益21億円には届かない。
持分の売却や大型の還元はなく、自社株買いが細々と続く。純利益は今の3倍強に増えるが、現金で株主に届く部分は小さい。
- Cellebrite(持分法・持分比で按分):数量 74.0(捜査機関向けデジタル証拠ソフト市場(億ドル・実質・推定))× 価格 7.5%(市場 1 億ドルあたりの持分按分売上(億円)÷150 = シェア × 持分比 × 物価の倍率)→ 売上 833 億円・営業利益 167 億円。緩やかな拡大(市場74億ドル × シェア14%、持分比40%)
- エンターテインメント関連(遊技機部品):数量 115(遊技機の年間販売台数(万台))× 価格 0.49(1 万台あたりの当社売上(億円)=部品の単価)→ 売上 56 億円・営業利益 5 億円。台数は今の75%
- IT関連(通信機器):数量 24.0(通信機器の年間出荷台数(万台・推定))× 価格 1.86(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 4 億円。緩やかに伸びる(単価は値下がりで物価に届かず)
- グローバルデータインテリジェンス:数量 900(契約顧客数(社・推定))× 価格 0.03(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。顧客が5割増
倍率:事業の純利益 160 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.66 倍、時価総額 2,338 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:持分が緩やかに育ち、本体は赤字前後で足踏みする最も蓋然性の高い筋書き。
やや悲観 25% 成長が鈍り、本体の赤字が重い 利益 63 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,662 円788 億円
Cellebriteの成長が、2026年の鈍りの延長で落ちていく筋書きだ。大型案件の遅れが続き、米国と欧州の公共予算の締め付けで値上げもきかない。物価ほどには単価が上がらず、市場の伸びも実質で1%台にとどまる。競合のMagnet ForensicsやMSABにシェアを譲り、営業利益率は10%台前半に低迷する。
本体は、遊技機部品の台数が3割近く減り、通信機器は価格競争で薄利になる。本社費用を賄えず、営業赤字が続く。
持分法利益は残るが、2倍にも届かない。持分の売却には動かず、帳簿の利益だけが積み上がる。株主に届くものは小さい。
- Cellebrite(持分法・持分比で按分):数量 60.0(捜査機関向けデジタル証拠ソフト市場(億ドル・実質・推定))× 価格 5.5%(市場 1 億ドルあたりの持分按分売上(億円)÷150 = シェア × 持分比 × 物価の倍率)→ 売上 495 億円・営業利益 69 億円。成長鈍化・値上げ不能(市場60億ドル × シェア11%)
- エンターテインメント関連(遊技機部品):数量 95.0(遊技機の年間販売台数(万台))× 価格 0.43(1 万台あたりの当社売上(億円)=部品の単価)→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。台数は今の6割、単価の転嫁も限られる
- IT関連(通信機器):数量 18.0(通信機器の年間出荷台数(万台・推定))× 価格 1.55(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。価格競争で単価が伸びない
- グローバルデータインテリジェンス:数量 450(契約顧客数(社・推定))× 価格 0.02(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。伸び悩み
倍率:ROE 6.5% は資本コスト 8.5% を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので PER は 1÷k=12.5 倍が上限。持分法利益は現金で届かず、本体も赤字のため、その8割の 10.0 倍に置いた。
確率:2026年4〜6月期の鈍りが続く筋書き。経営陣の交代と公共調達の締め付けから、中立に近い25%を置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:暗号化と販売規制で持分が細る 利益 4 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,341 円289 億円
Cellebriteが構造的に負ける筋書きだ。スマートフォン側の暗号化が進み、抽出ソフトの価値が目減りする。あわせて、人権問題を理由に主要市場で販売の制限が広がる。年間経常収益は伸びを失い、公共機関の予算もAI時代の新しい証拠ツールへ回る。営業利益率は3%まで落ち、利益は消える。
本体も、遊技機の台数が半分以下になり、通信機器は赤字に沈む。本社費用だけが残る。
持分の簿価は大きく減損する。それでもCellebriteは現金が厚く、持分の売却で一定の手取りが残る。株価の床は、その売却手取りで決まる。
- Cellebrite(持分法・持分比で按分):数量 40.0(捜査機関向けデジタル証拠ソフト市場(億ドル・実質・推定))× 価格 3.5%(市場 1 億ドルあたりの持分按分売上(億円)÷150 = シェア × 持分比 × 物価の倍率)→ 売上 211 億円・営業利益 6 億円。暗号化と販売規制で縮小(市場40億ドル × シェア8%)
- エンターテインメント関連(遊技機部品):数量 60.0(遊技機の年間販売台数(万台))× 価格 0.39(1 万台あたりの当社売上(億円)=部品の単価)→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。台数は今の4割
- IT関連(通信機器):数量 14.0(通信機器の年間出荷台数(万台・推定))× 価格 1.40(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。価格競争で赤字
- グローバルデータインテリジェンス:数量 300(契約顧客数(社・推定))× 価格 0.02(1 社あたりの年間売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:稼ぐ力は純利益 4 億円でほぼ無く、価値の床は持分の売却手取りで決まる。今の自己資本 481 億円に 0.60 を掛けた(持分簿価の減損を織り込む)。市場の倍率は根拠にしていない。
確率:暗号化・販売規制・競合で持分の事業が構造的に細る筋書き。公共調達の予算と人権批判という外からの危険があるため、5%は下回らせず12%に置いた。悲観の理由は quality の寿命と重ねず、確率側で表した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Cellebrite(持分法・持分比で按分)
捜査機関向けにスマートフォンの証拠データを取り出すソフトを売る米上場の関連会社。持分比の割合で売上・営業利益を按分して置く。
| 数量捜査機関向けデジタル証拠ソフト市場(億ドル・実質・推定) | 価格市場 1 億ドルあたりの持分按分売上(億円)÷150 = シェア × 持分比 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 4.7% | 356 | 45 |
| 10 年後 中立 | 74.0 | 7.5% | 833 | 167 |
取り方:同社の2026年の売上見通し約5.6億ドルを、捜査機関向けに絞った市場約50億ドル(推定。調査会社の75億〜148億ドルは企業向け・クラウドを含む)で割り、シェア約11%、持分比42.5%、為替150円で按分した。営業利益は会計上の営業利益率を12.5%と置いた推定。連結売上には入らない。
エンターテインメント関連(遊技機部品)
遊技機に使う部品の供給。売上の約6割。
| 数量遊技機の年間販売台数(万台) | 価格1 万台あたりの当社売上(億円)=部品の単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 153 | 0.37 | 56 | 6 |
| 10 年後 中立 | 115 | 0.49 | 56 | 5 |
取り方:2025年の遊技機販売は約153万台(パチンコ87万台・パチスロ65.8万台)。当社売上約56億円をこれで割った単価を置いた。利益は3Q累計の実績(4.5億円)からの通期推定。
IT関連(通信機器)
通信モジュール・ルーター。3G停波後の移行期にある。
| 数量通信機器の年間出荷台数(万台・推定) | 価格1 万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 1.55 | 31 | 3 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 1.86 | 45 | 4 |
取り方:売上約31億円を、1台約1.5万円・年20万台と推定して分けた(出荷台数の開示は無い)。利益は3Q累計の実績(2.0億円)からの通期推定。
グローバルデータインテリジェンス
ソフト・データの定期課金事業。
| 数量契約顧客数(社・推定) | 価格1 社あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.02 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 900 | 0.03 | 24 | 4 |
取り方:売上約12億円を、顧客約600社・1社年約200万円と推定して分けた(顧客数の開示は無い)。利益は3Q累計の実績(0.8億円)からの通期推定。
リスクと懸念
Cellebriteの成長の鈍りが続く
2026年4〜6月期は年間経常収益が会社の見通しを下回り、通期の見通しも下げた。大型案件の遅れが一時的でなければ、持分の価値は想定より大きく減る。経営トップの交代で、方針が揺れる可能性もある。
持分法利益が現金で届かない
Cellebriteは配当をしない。持分の利益は帳簿に載るだけで、株主が受け取るには売却か自社株買いが要る。売れば売却益に税がかかり、市場価値のまま手取りにはならない。
スマートフォンの暗号化と販売規制
アップルやグーグルが暗号化を強めれば、抽出ソフトは追い続けるしかない。人権侵害に使われたとの批判もあり、販売先の規制が強まれば、売上と社会的な評価の両方に響く。
本業の収益力の弱さ
遊技機部品は台数が減り、通信機器は価格競争にさらされる。営業利益はゼロ前後が続き、本社費用を事業の利益で賄えていない。会社が目標に置く営業利益21億円は、過去の実績から遠い。
持分の希薄化と持分比の低下
Cellebriteは株式報酬などで株数が増え、サン電子の持分比は2020年の7割超から4割台まで下がった。今後も下がれば、同じ利益でも取り分が減る。
為替と地政学
Cellebriteの利益はドル建てで、イスラエルを拠点とする事業を含む。円高になれば円換算の持分が目減りし、中東情勢の悪化は開発・営業の継続に影を落とす。10年の前提では為替を150円に固定している。
今後の分かれ目
- Cellebriteの年間経常収益の伸びが再び2割前後に戻り、通期の見通しを上回る
- 持分の成長が続く筋書きの確率が上がり、やや楽観に近づく。
- サン電子が持分の一部を売り、自社株買いや配当に回すと決める
- 持分の価値が株主の現金として届く道が開き、倍率を上げる根拠になる。売却益課税後の手取りで見直す。
- Cellebriteで大型案件の遅れが続き、年間経常収益の見通しがもう一段下がる
- 成長の鈍りが構造的と裏づけられ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 主要国で抽出ソフトの販売や使用を制限する規制が決まる
- 売上の一部が失われ、持分の価値が細る。悲観の筋書きに近づく。
- 本体のサブスク事業・5G機器が伸び、本体の営業利益が黒字で定着する
- 本社費用を事業の利益で賄えるようになり、本体を別に評価できる。ただし持分に比べて小さい。
- 大型の買収で本体の規模を広げようとする
- 持分の価値を使った資本配分の巧拙が新しい変数になる。過去の実績が乏しいため、慎重に見る。
見ておくもの
- Cellebriteの年間経常収益の伸びと通期見通しの修正
- Cellebriteの会計上の営業利益率とフリーキャッシュフロー
- サン電子の持分比(株式報酬による希薄化)
- 持分の売却・自社株買い・配当の発表
- 本体の営業利益(中計の2027年3月期目標21億円との差)
- 主要国の抽出ソフトの販売・使用の規制
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や持分の市場価格を見ず、ROE・資本コスト8.5%・成長4%から正当化PERの上限を出し、その85〜90%に置いた。持分法利益は現金で届かない点を、上限の下側に置く理由にした。悲観は持分の売却手取りを床にし、過去のPBRは使っていない。今の時価総額と比べたのは最後で、大半が持分の値段で説明できる点は結果の確認に使っただけだ。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→16.11 倍・やや楽観 PER 13.7→15.53 倍・中立 PER 12.5→14.66 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(寿命)を足して k 8.5%。純現金で借金の負担は無い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.50%。