結論
京三製作所は、鉄道の信号システムを柱とする老舗メーカーだ。売上の約 85% が信号で、残りが半導体・液晶の製造装置向け電源である。筆者の結論は「割高」。信号の需要は堅いが、稼ぐ力が資本コストに届かず、今の値段は中期計画の達成まで織り込んでいる。
信号は、駅の連動装置や列車を守る制御装置をつくる仕事だ。一度入れた設備は数十年使われ、更新と保守の仕事が続く。国内の競合は日本信号と大同信号だけで、鉄道会社との付き合いも長い。受注は過去最高を更新し、海外ではインドの 1,000 駅超に納入した実績がある。
弱いのは収益の厚みだ。過去 10 年の営業利益率は 2〜7% で、自己資本利益率(ROE)は 6% 前後にとどまる。パワーエレクトロニクスは直近で 23 億円の赤字を出し、在庫の廃棄損まで出した。直近の純利益 50 億円には、保有株の売却益が混じっている。
10 年後の中立は、売上 1,400 億円弱・営業利益 90 億円台。利益率は 6〜7% に上がるが、ROE は 7% 台で、資本コスト 7.75% には届かない。ためた利益に額面どおりの価値がつかない会社は、PBR 1 倍割れが正当な値段だ。計画が全部当たる筋書きでも、今の時価総額に対する余裕は大きくない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、京三は「悪くないが、買いたいと思う会社ではない」。国内の信号は 10 年先も残り、数量の落ち込みも小さい。ここは評価できる。だが、全体の稼ぐ力が資本コストを超えていない。
株主のものになる利益、つまりオーナー利益を考えてみる。営業利益から税と、更新・保守のための設備投資を引くと、手元に残るのは年 40 億円前後だ。時価総額 705 億円に対して、利回りは 5〜6% にとどまる。国債が 3% の世界で資本コスト 7.75% を求めるには、足りない。
強いのは安全域のある需要だ。受注残が厚く、公共の仕事なので、需要が急に消えることはない。弱いのは、その需要に乗せられる利益が薄いことだ。人件費が上がっても値段を決めきれず、パワーエレクトロニクスは赤字のまま足を引っ張る。
経営には、政策保有株の縮減と DOE の目標を掲げる姿勢がある。この流れは評価できる。ただし資本を厚く返すより、利益率を上げる仕事のほうが先だ。計画どおり営業利益 78 億円に届けば見方は変わるが、10 年を通して維持できるかが問題である。筆者は、その確信が今の値段ほどには持てない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は信号システム事業で、2026 年 3 月期の売上は約 800 億円、セグメント利益は約 120 億円(利益率 15%)だった。鉄道の駅に置く電子連動装置、列車の速度を自動で抑える ATC・ATS、ホーム柵、踏切、道路の交通信号まで手がける。顧客は JR・私鉄・地下鉄・自治体・警察で、公共性が高い。
強みは「守りの安全設備」であることだ。連動装置は列車どうしがぶつからないよう進路を管理する頭脳で、一度入れば 30 年以上使われる。更新と改修、保守の仕事が途切れにくい。国内の大手は日本信号と京三、それに大同信号の 3 社で、新規参入は難しい。
海外は信号の伸びしろだ。インドでは電子連動装置を 1,000 駅超に納めた。ポーランドでも受注を狙い、中期経営計画「KYOSAN Next Step 2028」は海外信号の受注を大きく増やす方針だ。海外売上は連結で約 14% まで上がった。
もう 1 つの柱がパワーエレクトロニクス事業だ。半導体と液晶パネルの製造装置に組み込む電源をつくる。売上は約 130 億円で、直近は約 23 億円の赤字だった。装置メーカーの投資が先送りされ、滞留した在庫に廃棄損・評価損を計上した。景気の波をもろに受ける事業で、信号と性格がまるで違う。
全社の費用(本社費・研究開発の一部)が年 50 億円ほどかかる。信号の利益の 4 割強がここで消える。固定費の重さが、利益率の低さの正体だ。
優良さと弱いところ
筆者は、信号を「堅いが薄い」事業と見ている。安全が第一で、鉄道会社は実績のない会社に連動装置を任せない。国内 3 社の寡占と更新需要が、需要を支える。ただ値段は鉄道会社との交渉と入札で決まり、強気の値上げはしにくい。
利益率でも差が出る。信号の利益率は直近で 15% まで上がったが、全社では 5% 前後だ。過去 10 年の営業利益率は 2〜7% にすぎない。人件費と本社費が重く、赤字の期も 2021 年 3 月期にあった。
日本信号と比べると、京三は信号の比重が高く、事業はまとまっている。一方、半導体・液晶向けの電源は、装置メーカーの投資計画と中国・台湾の価格競争に左右される。規模が小さく、海外の大手電源メーカーと正面から戦うには苦しい。
資本の使い方は慎重だ。配当は株主資本配当率(DOE)2% 台半ばを目安にし、中計では 3% を掲げる。政策保有株は減らしており、売却益が出ている。大型の買収はなく、財務は自己資本比率 47% と健全だが、純有利子負債は 241 億円ある。工事を先に立て替える事業の性質もあり、純現金の会社ではない。
堀は「普通」と置く。国内信号には寡占と切り替えの難しさがあるが、全社の利益率と ROE を見ると、10 年先まで超過利益が残る強さとは言いにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鉄道信号の国内市場は、約 3,000 億円(信号機を含む推定)で、人口と同じく横ばいから微減だ。需要の中身は新設でなく更新である。昭和から平成に入れた連動装置が寿命を迎え、電子化と無線化への置き換えが進む。この更新の山は 2030 年代前半まで続くと筆者は見る。
新しい波は無線式列車制御(CBTC)と自動運転だ。運転士不足が深刻で、鉄道各社は省力化に動く。地上の設備を減らせる無線方式は、従来の軌道回路方式から置き換わっていく。ここは日立・三菱電機など総合電機との競争になりやすく、京三と日本信号が国内で優位を保てるかが分かれ目になる。
海外の鉄道信号は、世界で 260 億ドルほどの市場とみる。インドは電子連動装置の新設・更新が続く大市場だが、価格が厳しく、日立レール、シーメンス、アルストム、中国通号の大手が席を取り合っている。京三のシェアは 0.3% 程度で、まだ小さい。
半導体・液晶の電源は、世界の製造装置の投資に連動する。AI 向けの先端半導体の投資は長い目で伸びるが、京三が強いのは装置メーカー向けの一部の電源にとどまる。海外の大手電源メーカーとの競争が厳しく、利益が出る期と出ない期の差が大きい。
人件費は物価と賃上げで上がり続ける。公共案件は値上げが遅れやすいため、人件費の上昇を価格に移せるかが、国内信号の利益率を決める。
資本政策と M&A
株主還元は配当が中心だ。DOE 2% 台半ばを目安とし、中期計画では 3% を目標とする。2027 年 3 月期は増配を予定する。自社株買いは方針に出てこない。大株主は日本生命(約 10%)、京王電鉄(約 5%)、JR 東海(約 3%)で、顧客でもある鉄道会社が名を連ねる。
政策保有株は縮減中だ。2026 年 3 月期は売却益が出て、純利益を押し上げた。これは一過性で、翌期の純利益は 42 億円の予想と、減益になる。
大型買収の実績はない。信号会社の再編(国内 3 社の統合など)は可能性としては残るが、公的な話は出ていない。中小型株で、鉄道会社が株主にいるため、敵対的な買収は想定しにくい。
財務は自己資本比率 47% で堅い。ただ純有利子負債は 241 億円で、営業利益の 5 倍を超える。借り換えの金利が上がる分、利益は年 5〜6 億円ほど削られる。筆者は、配当を増やすより、まず借金を抑えて利益率を上げる局面だと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内信号は、更新需要の山が 2030 年代まで続く。無線式の列車制御と自動運転が広がり、地上設備の入れ替えが一斉に発注される。京三は国内 3 社の一角として、そこで取りこぼさない。受注残は過去最高で、足元の利益率 15% はまだ上がる。
海外は、インドで 1,000 駅の実績が評価され、同じ国で次の発注が続く。ポーランドなど欧州の足がかりを得れば、海外信号はいまの 5 倍に育つ可能性がある。海外の実績が国内の入札でも信頼になる。
パワーエレクトロニクスも反転する。AI 向けの半導体投資が装置の数量を押し上げ、在庫の整理が終われば赤字は止まる。新しい顧客を増やせば、利益が出る事業に変わる。
全社の費用は売上が増えても大きくは増えない。営業利益率は 9% に届き、純利益は 120 億円を超える。ROE は 11% 台に上がり、資本コストを大きく上回る。配当も DOE 3% を超えて増える。
この筋書きなら、今の時価総額の 2 倍を超える値段もありうる。ただ、強気がすべて当たる必要があり、確率は低い。
慎重な見方
信号は「堅い」と言われるが、堅いのは数量であって利益ではない。過去 10 年の営業利益率は 2〜7% で、ROE は 6% 前後だ。資本コスト 7.75% を超えた期は、10 年で数えるほどだ。
直近の利益 45 億円のうち、本業の信号は 120 億円を稼いでいるが、全社費用が 51 億円、パワーエレクトロニクスが 23 億円の赤字で消している。純利益 50 億円には、保有株の売却益が混じる。翌期の純利益は 42 億円の予想と、減る。
無線式の列車制御では、日立・三菱電機のような総合電機が強い。大手私鉄・JR の次世代案件を取れなければ、国内のシェアは 10 年で削られる。海外は価格が厳しく、インドの低採算案件が積み上がれば、大型損失も出る。
パワーエレクトロニクスは、規模が小さく、海外の大手電源メーカーに押される。在庫の廃棄損は、需要の読み違いの表れだ。ここを畳むのか続けるのかも決まっていない。
今の値段は、中期計画の営業利益 78 億円をほぼ当然とみている。ただ過去の最高は 61 億円で、それを上回り続けるには、構造が変わる証拠が要る。鉄道会社の値決めは厳しく、人件費の上昇は価格に移りにくい。
どちらに重みを置いたか
強気の指摘では、国内の更新需要と受注残の厚さが説得力を持つ。一方、慎重な見方が突く利益率の低さと全社費用の重さは、10 年の数字に直接効く。中立でも ROE が資本コストに届かず、倍率は 1÷k を下回る。確率は中立を中心にしつつ、パワーエレクトロニクスの失速や国内の無線化で後れを取る側にやや厚く置いた。結果は、中立でも今の時価総額を割り込み、総合では「割高」になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,262 円779 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 402 円248 億円)。 今の値に割り戻すと 875 円540 億円、今との差 −18.7%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,090 円1,907 億円 | 616 円380 億円 | +244.0% | +13.2% | 259 円160 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,098 円1,295 億円 | 535 円330 億円 | +144.5% | +9.4% | 527 円325 億円 |
| 中立 | 36% | 1,379 円851 億円 | 437 円270 億円 | +68.7% | +5.4% | 654 円404 億円 |
| やや悲観 | 25% | 420 円259 億円 | 292 円180 億円 | −33.9% | −4.1% | 178 円110 億円 |
| 悲観 | 12% | 207 円128 億円 | 178 円110 億円 | −64.2% | −9.8% | 46 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,262 円779 億円 | 402 円248 億円 | +54.5% | +4.4% | 1,664 円1,027 億円 |
今の株価時価総額 1,077 円665 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 強気:無線化と海外が当たり、利益率が 9% に乗る 利益 121 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 3,090 円1,907 億円
国内は無線式の列車制御と自動運転の更新を取りこぼさず、シェアを上げる。海外はインドの実績を足がかりに、ポーランドなど欧州でも受注を重ね、世界シェアは 0.8% まで伸びる。パワーエレクトロニクスは AI 向けの半導体投資に乗り、新しい顧客を得て黒字になる。全社の費用は売上ほど増えず、営業利益率は 9% に上がる。純利益は 120 億円を超え、ROE は 11% 台。配当は DOE 3% を超えて増える。受注の質が上がり、入札でも値下げを迫られにくくなる。ただし、国内・海外・電源のすべてで強気が当たる必要があり、確率は低い。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 3,090(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 31.5%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 973 億円・営業利益 165 億円。国内の市場は今の 1.03 倍、シェア 23.5%、営業利益率 17%
- 海外の鉄道信号:数量 351(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.61(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 564 億円・営業利益 56 億円。世界市場は今の 1.35 倍、シェア 0.80%、営業利益率 10%
- パワーエレクトロニクス(半導体・液晶装置向け電源):数量 15,200(半導体・液晶の製造装置向け電源の世界市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.4%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 367 億円・営業利益 44 億円。電源の市場は今の 1.90 倍、シェア 1.80%、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 121 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.76 倍、時価総額 1,907 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内・海外・電源の全部が当たる必要があり、過去 10 年の利益率の低さを考えると確率は低い。
やや楽観 20% やや強気:国内が堅く、海外が育つ 利益 90 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,098 円1,295 億円
国内信号は更新の山に乗り、シェアは今よりわずかに上がる。無線式の案件も一部で取る。海外は、インドの受注が続き、シェアは 0.6% に伸びる。パワーエレクトロニクスは在庫を整理し、利益が小さく出る事業に戻る。営業利益率は 8% 弱で、中期計画の 8% とほぼ同じ水準を 10 年先まで保つ。純利益は 90 億円。ROE は 9% 台に上がり、資本コストを少し上回る。ただし伸びは物価と海外の増収に頼り、国内の数量はほぼ横ばいだ。電源は小さな黒字にとどまり、全社の費用は売上と同じ速さで増える。株主への還元は DOE 3% 前後で、自社株買いは限られる。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 3,030(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 30.8%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 934 億円・営業利益 149 億円。国内の市場は今の 1.01 倍、シェア 23.0%、営業利益率 16%
- 海外の鉄道信号:数量 338(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 120.6%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 408 億円・営業利益 37 億円。世界市場は今の 1.30 倍、シェア 0.60%、営業利益率 9%
- パワーエレクトロニクス(半導体・液晶装置向け電源):数量 13,200(半導体・液晶の製造装置向け電源の世界市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 283 億円・営業利益 26 億円。電源の市場は今の 1.65 倍、シェア 1.60%、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.39 倍、時価総額 1,295 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残の厚さと更新の山は確かな追い風だが、利益率の改善が 10 年続く確証までは持てない。
中立 36% 中立:堅い更新事業のまま、利益率は 6〜7% 利益 66 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,379 円851 億円
国内信号は、数量が微減するなかで更新需要が支える。値段は物価並みに上がり、シェアは 22% 台で守る。無線式の案件では総合電機と競うが、一部は落とす。海外はインドを中心に伸び、世界シェアは 0.45% まで上がる。パワーエレクトロニクスは赤字を脱し、利益率 6% の小さな事業になる。全社費用は物価並みに増える。営業利益率は 6〜7%、純利益は 66 億円。ROE は 7% 台で資本コストに届かない。配当は DOE 3% 弱で、自社株買いは少ない。今の計画(営業利益 78 億円)に届く期もあるが、10 年平均では届かない見立てだ。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 2,910(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 30.2%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 877 億円・営業利益 132 億円。国内の市場は今の 0.97 倍、シェア 22.5%、営業利益率 15%
- 海外の鉄道信号:数量 325(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 90.5%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 294 億円・営業利益 24 億円。世界市場は今の 1.25 倍、シェア 0.45%、営業利益率 8%
- パワーエレクトロニクス(半導体・液晶装置向け電源):数量 11,200(半導体・液晶の製造装置向け電源の世界市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.9%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 218 億円・営業利益 13 億円。電源の市場は今の 1.40 倍、シェア 1.45%、営業利益率 6%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 851 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の受注は強いが、中期計画の営業利益 78 億円を 10 年平均で保つのは難しい。中心に最も厚く置いた。
やや悲観 25% やや弱気:国内の山が去り、電源が足を引っ張る 利益 30 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 420 円259 億円
更新需要が一巡し、国内信号の数量は 1 割弱減る。無線式では大手に押され、シェアは 21% に下がる。値段も入札で圧力を受け、利益率は 12% に下がる。海外は低採算の案件が増え、利益がほぼ出ない。パワーエレクトロニクスは赤字が続いて、整理の判断を迫られる。全社の営業利益率は 3〜4% に戻り、純利益は 30 億円。2015〜2017 年の水準に近い。ROE は 4% を下回り、ためた利益は額面未満の価値になる。配当は維持しにくくなり、DOE は 2% 前後に下がる。信号の更新需要そのものは残るが、収益に変えられない 10 年になる。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 2,790(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 28.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 785 億円・営業利益 94 億円。国内の市場は今の 0.93 倍、シェア 21.0%、営業利益率 12%
- 海外の鉄道信号:数量 312(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 60.3%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 188 億円・営業利益 8 億円。世界市場は今の 1.20 倍、シェア 0.30%、営業利益率 4%
- パワーエレクトロニクス(半導体・液晶装置向け電源):数量 9,600(半導体・液晶の製造装置向け電源の世界市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.5%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 142 億円・営業利益 0 億円。電源の市場は今の 1.20 倍、シェア 1.10%、営業利益率 0%
倍率:ROE 3.7% は資本コスト 7.75% に届かず、ためた利益は額面未満の価値。稼ぐ力(純利益÷k、PER の上限は 12.5 倍)の約 65% を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 240 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:全社費用の重さと電源の不振は構造的な弱さで、2015〜2017 年の薄い利益率に戻る筋書きを厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:無線化に乗り遅れ、電源と海外も不振 利益 16 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 207 円128 億円
無線式の列車制御で、日立や三菱電機のような総合電機に主要な案件を持っていかれる。国内シェアは 19% まで下がり、残るのは更新と保守の仕事だけになる。海外は価格競争で損失案件が出て、利益がなくなる。パワーエレクトロニクスは売上が縮み、赤字が続く。全社費用は削りきれず、営業利益は 26 億円まで細る。ROE は 2% で、資本コストに遠く及ばない。保有株の売却と配当の抑制で食いつなぐ、優良でなくなった会社になる。安全設備の需要は消えないため、深くは落とさない。信号の更新・保守という土台は残り、倒産のような話にはならない。
- 国内の鉄道信号・交通信号:数量 2,700(国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 25.5%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 687 億円・営業利益 76 億円。国内の市場は今の 0.90 倍、シェア 19.0%、営業利益率 11%
- 海外の鉄道信号:数量 286(世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 40.2%(実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 115 億円・営業利益 −3 億円。世界市場は今の 1.10 倍、シェア 0.20%、営業利益率 -3%
- パワーエレクトロニクス(半導体・液晶装置向け電源):数量 8,000(半導体・液晶の製造装置向け電源の世界市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 86 億円・営業利益 −4 億円。電源の市場は今の 1.00 倍、シェア 0.80%、営業利益率 -5%
倍率:ROE 1.9% は資本コストを大きく下回る。優良でなくなったあとの稼ぐ力(純利益÷k、PER の上限は 12.5 倍)の約 65% を置いた。保有株や土地など売れる資産の額は開示で確かめられず、床には足していない。PBR が低く出るのはそのためで、EV÷営業利益でも約 13 倍にとどまり、借金を含めても割安とは言えない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 128 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:無線化の遅れ・海外の損失・電源の撤退の複合。公共の需要で底は浅いため、1 割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の鉄道信号・交通信号
鉄道の電子連動装置・ATC・ATS・踏切・ホーム柵と、道路の交通信号。国内の鉄道会社・自治体・警察向けの更新と保守が中心。
| 数量国内の鉄道信号・交通信号設備の市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 22.9% | 688 | 114 |
| 10 年後 中立 | 2,910 | 30.2% | 877 | 132 |
取り方:信号システム事業(売上 797.8 億円・利益 119.5 億円)のうち、海外を約 110 億円とみて、残る約 688 億円を国内とした。国内市場は同じ領域の日本信号と同じ物差しで約 3,000 億円(信号三社と交通信号機の更新規模からの推定)とし、シェアは約 23%。利益は海外を約 6 億円と按分し、国内を約 114 億円とした推定。
海外の鉄道信号
インドの電子連動装置(1,000 駅超に納入)やポーランドなど、海外の鉄道信号。大型案件が長い工期で売上になる。
| 数量世界の鉄道信号・都市交通の信号市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場 1 億ドルあたりの売上(億円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 260 | 42.3% | 110 | 6 |
| 10 年後 中立 | 325 | 90.5% | 294 | 24 |
取り方:連結の海外売上は 131.95 億円(顧客所在地、14.2%)。うちパワーエレクトロニクスの海外向けを約 20 億円とみて、信号の海外を約 110 億円と推定した。世界市場は同じ領域の日本信号と同じく約 260 億ドル。シェアは約 0.28%。利益は大型案件の採算が薄いため約 6 億円(5〜6%)と推定した。
パワーエレクトロニクス(半導体・液晶装置向け電源)
半導体と液晶パネルの製造装置に組み込む電源装置。装置メーカーの投資計画に左右される。
| 数量半導体・液晶の製造装置向け電源の世界市場(億円・今の値段で測った実質)× シェア | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 1.7% | 133 | −23 |
| 10 年後 中立 | 11,200 | 1.9% | 218 | 13 |
取り方:セグメント売上 133.4 億円・損失 23.4 億円(棚卸資産の廃棄損・評価損を含む)。世界の製造装置向け電源の市場は、海外の大手電源メーカー(売上は合計で数千億円規模)と国内数社の売上から約 8,000 億円と推定し、シェアは約 1.7%。市場の数字は開示が無く推定。
リスクと懸念
無線式列車制御で総合電機に押される
運転士不足を背景に、無線式の列車制御(CBTC)と自動運転が国内でも広がる。ここは日立や三菱電機など総合電機との競争になる。大手私鉄・JR の次世代案件を取り損ねると、国内シェアが 10 年で削られる。
パワーエレクトロニクスの赤字が長引く
直近は約 23 億円の赤字で、在庫の廃棄損も出した。半導体・液晶の装置メーカーの投資計画に左右され、海外の大手電源メーカーにも押される。赤字が続けば、信号で稼いだ利益を食い続ける。
全社費用と人件費が利益を削る
本社費などの全社費用は年約 50 億円で、信号の利益の 4 割強に当たる。賃上げは続き、公共案件は値上げが遅れやすい。利益率の改善を、費用の増加が打ち消す危うさがある。
海外大型案件の採算悪化
インドなどの海外案件は、価格が厳しく工期も長い。為替・現地の調達・遅延で損失が出ると、利益の薄い海外の比重が上がるほど全社が揺れる。受注が増えても、利益が付いてくるとは限らない。
保有株の売却益が一巡する
直近の純利益には、保有株の売却益が混じる。売却は縮減の途中で、いずれ尽きる。一過性の益が消えると、純利益は本業の水準に戻る。翌期の純利益は 42 億円の予想と減る。
借り換えの金利上昇
純有利子負債は 241 億円で、営業利益の 5 倍を超える。借り換えで金利が 3.5% 前後に上がれば、利払いは年に 5〜6 億円ほど増える。営業利益が薄い会社には小さくない負担だ。
今後の分かれ目
- 営業利益が 2028 年 3 月期に 70 億円を超え、全社費用の増加が売上の伸びより小さくなったら
- 強気の筋書きの確率を上げてよい。利益率の改善が構造として定着した証拠になる。
- 無線式列車制御(CBTC)で、大手私鉄や JR の本線案件を受注できたら
- 国内シェアを守る見通しが強まる。国内の数量の弱さを、新方式の更新で補える。
- パワーエレクトロニクスが黒字に戻らず、在庫の廃棄損が続いたら
- 事業の整理や撤退が視野に入る。弱気の筋書きの確率を上げる。撤退で赤字が止まれば、利益率は逆に上がる面もある。
- インド・ポーランドの受注が増え続け、採算も確保されたら
- 海外のシェアが上がる中立〜やや強気の筋書きが近づく。採算が崩れたら、逆に弱気を厚くする。
- 国内信号会社の再編(日本信号・大同信号との統合や提携)が出たら
- 国内の過当な競争が弱まり、利益率の改善につながる。ただ統合の費用と顧客の反応も見る必要がある。
- 配当が DOE 3% を超えて引き上げられ、自社株買いも始まったら
- 資本政策が株主重視に動いた証拠になる。ROE の改善にはなるが、事業の稼ぐ力そのものは変わらない。
見ておくもの
- 信号システムの受注高と受注残(2026 年 3 月期の受注 985 億円が続くか)
- 中期計画の営業利益 78 億円(2028 年 3 月期)への進み具合
- パワーエレクトロニクスの黒字化と在庫の動き
- インド・ポーランドなど海外信号の受注と採算
- 無線式列車制御(CBTC)・自動運転の国内案件の受注
倍率と資本コストの決め方
国内・海外の信号は市場規模(実質)× シェア、価格はシェア × 物価(10 年 1.34 倍)で積み、電源も同じ形にした。資本コストは基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。倍率は利益ベースの正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g) に、ROE から出した RONIC を入れて引き、利益の質で上限の 85% などに置いた。中立の PER は約 10.5 倍で、今の PER(2027 年 3 月期予想で約 17 倍)には寄せていない。悲観は構造的に負けた後の純利益を稼ぐ力(純利益÷k)の約 65% で置き、過去の PBR は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.4→15.76 倍・やや楽観 PER 12→14.39 倍・中立 PER 10.48→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(循環 +0.25・値決め 0・借金 +0.5・寿命 -0.25)を足して k 7.75%。事業は傾いておらず extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。