結論
CGS ホールディングスは、自動車部品などの金型を設計・加工するための CAD/CAM(設計と加工データ作りのソフト)を作って売る会社だ。国内の導入先は約 6,000 事業所で、会社は国内シェアを約 2 割とする。北米では、金型そのものも作っている。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 30 億円を半分ほど下回ると見る。時価総額は純現金 28 億円とほぼ同じで、事業はただで付いてくるように見える。だが、その現金の多くは前受金や運転資金、退職給付の備えとして事業に張り付いている。株主が自由に取り出せるのは 12 億円ほどと推定する。
残る事業の稼ぐ力は小さい。売上は 2026 年に 65 億円へ増える予想だが、純利益は 2 億円前後にとどまる。2025 年に買った NDES は持分が 51% で、利益の一部が外へ出る。
そこに AI が来る。操作する人の数で課金するソフトは、AI が加工データを自動で作れば席が減り、値上げも通しにくい。資本コストが ROE を上回る構造は、10 年先も変わらないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の見どころは「時価総額に対して現金が多い」ことだ。純現金は時価総額の 9 割を超え、事業をほぼ無料で買えるように映る。
だが、筆者が最初に確かめるのは、その現金が本当に株主のものかである。売上 65 億円の会社は、前受けの保守料、賞与、退職給付、仕入れの支払いのために、毎月かなりの現金を持つ必要がある。12 億円ほどは余りと見るが、残りは事業の一部だ。
次に問うのは、事業が現金を増やす力を持つかだ。ROE は資本コストの 9% に届かない年が多く、過去 10 年のうち超えたのは 3 年にとどまる。稼いだ利益を内部にためても、額面を下回る価値にしかならない。
さらに席課金のソフトは AI の影響を直に受ける。わからない事業には高い値を払わない。安全域は現金がくれるが、現金の大半は自由に使えない。結論は「割高」で、差は大きい。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。売上の 83% を占める CAD/CAM システム等と、17% の金型製造だ。
CAD/CAM は、金型の形を設計し、工作機械が削る道筋を作るソフトである。顧客は自動車向けの金型や部品を作る中小の製造業が中心だ。ソフトの販売だけでなく、保守契約と技術サービスが売上の約 55% を占め、毎年の積み上げが効く。ライバルは海外の大手ソフトや国内の同業で、会社は自社を国内 2 位とする。
2025 年 10 月、子会社が NDES の株式 51% を取得した。NDES は NTT データエンジニアリングシステムズの製造向けソリューションとクラウド事業を分けた会社だ。のれんは約 3 億円。2025 年は 3 か月分しか入らず、2026 年から通年で連結される。会社は売上が 65 億円に増えると予想する。
金型製造は、米国イリノイ州の Tritech International が担う。自動車向けの金型は受注の波が大きく、2024 年はほぼ赤字、2025 年は 8 億円の売上で 1 億円弱の利益が出た。2026 年は受注の谷間に入り、1〜3 月期の売上は前年の 8 割減だった。連結の従業員は 299 人。
優良さと弱いところ
堀は弱めから中程度と見る。強みは導入の厚みだ。金型づくりの現場は、一度覚えたソフトを簡単には替えない。操作を覚えた人、過去の加工データ、現場の癖が切り替えの費用になる。売上の約 55% が保守と技術サービスで、毎年の更新が安定を支える。
ただし値決めの力は強くない。顧客は利幅の薄い中小の金型メーカーで、設備投資は自動車産業の景気と EV 戦略の見直しに左右される。会社自身も、2026 年の上期は期初の計画を下回ったとしている。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 7% ほどで、2023 年は 2%、2024 年は 4% まで落ちた。総資産の約 4 割が現金で、これが ROE を押し下げる。財務は堅く、借金はほぼない。
経営は配当を安定させる方針だが、自社株買いはしない。2025 年の配当は総額 1 億円弱で、連結の性向は 36%。中期計画は 2028 年に売上 70 億円、2030 年に 100 億円だ。そのうち NDES などの買収分がどれだけを占めるのかは、見えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は金型用の CAD/CAM で、国内の顧客は縮む。金型の国内生産は、自動車部品の海外移転と少子化で、長期に細ってきた。需要の核は日本の中小の金型メーカーだ。後継者難で廃業する会社も多く、ソフトの契約数は構造的に減る方向にある。
追い風は二つある。一つは製造業の DX で、設計から加工、生産管理までをつなぐ需要だ。NDES の製造向けソリューションとクラウド事業は、この流れに乗る。もう一つは積層造形(金属の 3D プリント)など新しい加工への対応で、売上の中身が広がる余地はある。
逆風も二つある。自動車の EV 化が金型の需要の形を変え、エンジン部品の金型は減る。そして AI だ。加工データの自動生成や、設計の自動化が進めば、操作する席の数が減る。席の数で課金するソフトには、数量と価格の両方に下押しがかかる。
米国の関税政策は、北米の金型製造の受注を不安定にする。会社も有価証券報告書で、2026 年を受注の谷間と書いている。ソフトの側は米国に頼らないが、金型製造は北米の自動車産業の景気にそのまま左右される。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本だ。2025 年の配当は総額 0.97 億円で、連結の性向は 36%。自社株買いは見当たらない。ただし純利益が減る年は性向が上がり、配当が重くなる。
最大の株主は山口クリエイトで、約 17% を持つ。日本生命が約 5%、従業員持株会が約 3% と続く。支配株主はいない。
資本政策の焦点は現金の使い道だ。純現金は時価総額とほぼ同じ。2025 年の NDES の買収では、のれんを約 3 億円積んだ。現金を成長のための買収に回す方針とみられ、株主への還元に回る期待は大きくない。買収が成果を出せるかが、現金の価値を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
CGS は、金型づくりの現場で使われる数少ない国産 CAD/CAM だ。導入は国内 6,000 事業所に及び、保守契約が売上の半分を占める。顧客は一度覚えたソフトを替えにくく、毎年の更新収入は崩れにくい。
NDES の買収で、設計から加工、生産管理までをつなぐ製造 DX の需要を取り込める。2026 年は売上が 65 億円と、前年より 3 割増える。中期計画は 2030 年に売上 100 億円だ。
純現金は 28 億円で、時価総額とほぼ同じ。事業は無料で付いてくる。借金はなく、配当は安定している。AI は加工データの作成を自動にするが、その仕組みを一番速く組み込めるのは、現場のデータと知見を持つソフト会社自身だ。席の数が減っても、自動化の機能で単価を保てる。国内の導入が約 6,000 事業所に及ぶ販売網は、新機能を届ける土台になる。製造業の人手不足は深刻で、設計や加工の省力化を求める顧客は増えている。
慎重な見方
時価総額と純現金が同じに見えるのは、現金の大半が事業の資金だからだ。保守の前受け、賞与、退職給付、買掛の支払いを引けば、自由に使える現金は半分以下だ。残りを成長の買収に使う会社が、少数株主に現金を戻す保証はない。
事業の稼ぐ力は弱い。2026 年の純利益の予想は 2 億円強で、上期の経常利益は予想の 6 割しか出なかった。NDES は持分が 51% で、利益の半分近くは外に出る。金型製造は受注の谷間で、1〜3 月期の売上は 8 割減った。
何より AI だ。席の数で課金するソフトは、AI が操作を肩代わりすれば席が減り、値下げ圧力もかかる。国内の金型メーカーは廃業が続き、顧客の母数も縮む。配当は毎年 1 億円で止まり、ためた利益は ROE 5% 台で眠る。買収に使った現金が成果を出す保証もない。上期の遅れが通期に響けば、期初の予想も崩れる。金型製造と国内の自動車向け需要は、EV 戦略の見直しで読みにくい。
どちらに重みを置いたか
現金が時価総額と並ぶ点は強気の言い分が正しい。だが、自由に使える現金は 12 億円ほどで、事業の稼ぐ力は小さく、AI が席の数と単価を押す。そのため中立に厚く置き、やや悲観と悲観で 35% とした。強気の言い分は現金の大きさでは筋が通るが、現金を株主が引き出せる形にする方針は示されていない。楽観は 5%。差は大きく割高と出た。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 321 円31 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 93 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 216 円21 億円、今との差 −28.8%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 629 円61 億円 | 124 円12 億円 | +148.6% | +9.5% | 38 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 433 円42 億円 | 108 円11 億円 | +78.5% | +6.0% | 108 円10 億円 |
| 中立 | 40% | 361 円35 億円 | 100 円10 億円 | +52.2% | +4.3% | 184 円18 億円 |
| やや悲観 | 25% | 184 円18 億円 | 82 円8 億円 | −12.0% | −1.3% | 67 円6 億円 |
| 悲観 | 10% | 123 円12 億円 | 41 円4 億円 | −45.9% | −6.0% | 16 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 321 円31 億円 | 93 円9 億円 | +36.4% | +3.2% | 413 円40 億円 |
今の株価時価総額 303 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 5% NDES が効き、席の減りを新機能の単価で補う 利益 4 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 629 円61 億円
NDES の通年連結で売上が一段上がり、製造 DX の需要をつかむ。設計から加工、生産管理までをつなぐ提案が通り、ソフトの単価は上がる。AI は加工データの自動生成に使われるが、会社がそれを機能として組み込み、席の減りを新しい課金で補う。数量は通年化の分を除いて 1.0 倍にとどまるが、価格は物価に近い 1.44 倍まで届く。
金型製造は北米の受注が戻り、利益率は 9% に乗る。CAD/CAM の営業利益率は 8% と、過去の山の 10.6% の下に収まる。純利益は 3.6 億円、ROE は 9% に乗る。
それでも、顧客の母数が縮む構造は変わらない。この筋書きでも、配当は利益の 2 割弱にとどまり、現金はたまり続ける。
- CAD/CAM システム等(NDES を含む):数量 293(期中平均の人員(人、推定))× 価格 2,312(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。数量 1.14 倍(通年化)・価格 1.44 倍・営業利益率 8%
- 金型製造(北米):数量 85.0(受注した金型のセット数(推定))× 価格 1,340(1 セット当たりの単価(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 14.57 倍、時価総額 59 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI を自社の売り物にして売上が出ている開示は無く、楽観でも席は減らない水準までとした。NDES の通年化と金型製造の回復が重なる筋書きなので 5% に絞った。
やや楽観 20% 保守の粘りで席の減りが小幅にとどまる 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 433 円42 億円
保守契約の粘りが効く。操作する席は 1 割弱減るが、保守と技術サービスの収入は崩れず、単価の物価への遅れも小さい。数量は通年化を除いて 0.92 倍、価格は 1.40 倍。NDES は通年で寄与する。
金型製造は北米の受注が戻りかけるが、自動車の EV 戦略の見直しで山は低い。営業利益率は 7%。
全社の営業利益は 4 億円強、純利益は 2.6 億円。非支配株主に利益の一部が出るため、純利益は営業利益の 6 割にとどまる。配当は 1 億円ほどで続き、ROE は 7% と資本コストに届かない。この筋書きでも、席型のソフトという性格は変わらない。保守の更新が堅く、AI の影響が穏やかにとどまる姿だ。
- CAD/CAM システム等(NDES を含む):数量 270(期中平均の人員(人、推定))× 価格 2,251(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。数量 1.05 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 6%
- 金型製造(北米):数量 76.0(受注した金型のセット数(推定))× 価格 1,340(1 セット当たりの単価(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保守契約の粘りが効き、席の減りが小さい筋書き。NDES の通年化は確かなので、中立の一段上として 20% を置いた。
中立 40% 席は 15% 減り、単価は物価に届かない 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 361 円35 億円
AI エージェントが加工データの作成を肩代わりし、操作する席は 15% 減る。国内の金型メーカーの廃業も続く。それでも保守の更新が売上の半分を支え、NDES が通年で入るため、売上は 2025 年より 3 割ほど大きい 64 億円になる。ただしこれは物価で膨らんだ名目の数字だ。
CAD/CAM の価格は物価に届かない 1.10 倍で、人件費の上昇を転嫁しきれない。営業利益率は 5% と、2025 年の 5.9% を下回る。金型製造は 2025 年の山の 8 割で、利益率は 5%。
営業利益は 3.2 億円、純利益は 2 億円。配当は毎年 1 億円で、ROE は 5% 台にとどまる。ためた現金は事業で使われるが、稼ぐ力は上がらない。
- CAD/CAM システム等(NDES を含む):数量 249(期中平均の人員(人、推定))× 価格 2,211(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。数量 0.97 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 5%
- 金型製造(北米):数量 68.0(受注した金型のセット数(推定))× 価格 1,340(1 セット当たりの単価(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 33 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェント代替で席が減り、単価も物価に届かないが、保守の粘りと NDES の通年化が下支えする流れの中心の筋書きとして 40% を置いた。数量と価格に入れた分を、確率でさらに重ねて引いていない。
やや悲観 25% AI で席が 3 割減り、金型製造も縮む 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 184 円18 億円
AI による加工データの自動生成が広がり、席が 3 割減る。価格は物価に届かず、値上げは通らない。国内の金型メーカーの廃業も進み、顧客の母数が縮む。CAD/CAM の売上は 41 億円と、NDES の通年化を入れても今の水準に戻り、営業利益率は 3% に落ちる。
金型製造は関税と EV の見直しで受注が細り、数量は 4 割減る。
営業利益は 1.4 億円、純利益は 1 億円。配当は 0.8 億円ほどに抑えられる。稼ぐ力では値が付かず、現金の床が価値を決める形になる。人員を絞って固定費を落とす余地はあるが、保守契約の解約が増えれば、それも間に合わない。
- CAD/CAM システム等(NDES を含む):数量 205(期中平均の人員(人、推定))× 価格 2,010(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 3%
- 金型製造(北米):数量 51.0(受注した金型のセット数(推定))× 価格 1,250(1 セット当たりの単価(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 2%
倍率:稼ぐ力は ROE 3% で資本コストを大きく下回り、事業の純利益 1 億円の PER で測ると現金の床を下回る。そこで床の側で値を置いた。今の自己資本 34 億円に対する PBR 0.40 倍。現金から前受けや退職給付の約定を引いた分が支える。
確率:AI による加工データの自動生成が進み、席の減りが早まる筋書き。自動車の設備投資の弱さが重なる。やや悲観と悲観で 35% とした。
悲観 10% 席が半分以下に減り、赤字が続く 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 123 円12 億円
AI エージェントが設計と加工データの作成の大半を自動化し、席は半分以下に減る。ソフトの値段は物価の逆風で下がり、NDES の製造向けサービスも伸びず、買収の成果は出ない。国内の金型メーカーの廃業が続き、保守契約も解約が増える。CAD/CAM の売上は 24 億円まで縮み、赤字になる。
金型製造も北米の関税と EV の見直しで 6 割減り、赤字が続く。
こうなると稼ぐ力では値が付かない。床は現金から前受けや退職給付の約定を引いた分で置く。事業は小さくなっても続く形で、清算にはならない。配当は 0.4 億円ほどまで削られ、のれんは減損で目減りする。それでも現金は残り、床を支える。
- CAD/CAM システム等(NDES を含む):数量 132(期中平均の人員(人、推定))× 価格 1,809(1 人当たりの年間売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。数量 0.51 倍・価格 1.13 倍・営業利益率 −2%
- 金型製造(北米):数量 34.0(受注した金型のセット数(推定))× 価格 1,100(1 セット当たりの単価(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 0.40 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 −3%
倍率:稼ぐ力は崩れ、赤字になる。床は今の自己資本 34 億円に対する PBR 0.35 倍。現金から前受けや退職給付の約定を引いた分の戻り方 0.75 を掛けた額が支える。
確率:AI で席が半分以下に減り、国内の金型メーカーの廃業も続いて、単価が下がる筋書き。保守の粘りがあるので起こりにくいとみて 10% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
CAD/CAM システム等(NDES を含む)
金型の設計・加工用ソフトの開発・販売と保守、技術サービス。
| 数量期中平均の人員(人、推定) | 価格1 人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 257 | 1,608 | 41 | 2 |
| 10 年後 中立 | 249 | 2,211 | 55 | 3 |
取り方:2025 年 12 月期のセグメント売上 41.3 億円、利益 2.44 億円。人員は期末 292 人だが、NDES の分が 3 か月しか入らないため、期中の平均を約 257 人と推定して売上を割った(人員の分け方は推定)。2026 年の会社予想(売上 65.5 億円)は NDES の通年化を含む。先の数量は通年化 1.14 倍、価格は NDES の高い単価の混ざりを 1.25 倍と置き、その上に AI エージェント代替の型を重ねた。型は席・操作画面が価値の中心のソフトで、中立の数量 0.85 倍、価格 1.10 倍(物価を下回る)。保守が売上の約 55% で粘りがあるため、決まりの範囲の中央寄りにした。AI エージェントを売り物にした売上の開示は確認できない。
金型製造(北米)
米国イリノイ州の Tritech International が自動車向けなどの金型を製造する。
| 数量受注した金型のセット数(推定) | 価格1 セット当たりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 85.0 | 1,000 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 68.0 | 1,340 | 9 | 0 |
取り方:北米の Tritech International の金型製造。2025 年 12 月期の売上 8.49 億円、利益 0.98 億円(前期は 0.03 億円の損失)。金型 1 セットの平均単価を 1,000 万円と仮定し、受注は約 85 セットと推定した(セット数と単価は推定)。実物の製造として見るので、AI エージェント代替は置かず、受注の波と関税、EV 戦略の見直しを数量に入れた。中立は 2025 年の山の 8 割、価格は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
AI エージェント代替
加工データの自動生成や設計の自動化が進めば、操作する人の数で課金するソフトは席が減り、値上げも通しにくい。中立では数量 0.85 倍、価格 1.10 倍、資本コストに 1.0% を上乗せして入れた。AI を売り物にした売上の開示は確認できない。
金型の需要の縮み
自動車の EV 化と国内生産の海外移転、金型メーカーの後継者難で、顧客の母数が減る。ソフトの契約数は構造的に細る方向にあり、保守の粘りだけでは補いきれない。
現金は自由に使えない
純現金は時価総額とほぼ同じ 28 億円だが、前受けの保守料、賞与、退職給付、仕入れの支払いなど運転資金が大きい。自由に取り出せる余り分は約 12 億円と推定した。内訳の確認が限られ、この推定が外れる余地がある。
NDES の買収が実らない
持分 51% で取得し、のれんは約 3 億円。非支配株主に利益の一部が出る。通年連結の効果が計画に届かなければ、中期計画の売上 70 億円は遠のく。
北米の金型製造の波
米国の関税、EV 戦略の見直し、受注の谷間で、2026 年 1〜3 月期の売上は前年の 8 割減だった。会社は 2026 年を受注の谷間と書く。
小規模さ
連結 299 人の小さな会社で、時価総額は 30 億円。売買が細く、悪い知らせが出た時の下げが大きい。上期は予想を下回り、通期の修正の有無も確かめられていない。
今後の分かれ目
- 会社が AI を組み込んだ新製品で売上を出し始める
- 席の減りを新しい課金で補えるかが見えてくる。楽観の確率を引き上げる材料になる。
- NDES の通年連結で営業利益が計画の 4.4 億円を超える
- 買収の成果が確認でき、中立の営業利益率 5% を上へ見直す余地が出る。
- 会社が自社株買いか配当性向 50% 以上の方針を示す
- 余った現金の戻り方を 1.0 へ上げる余地が出る。
- 保守契約の解約が増える、または保守収入が減る
- 堀の弱さが確認され、やや悲観の確率を引き上げる。
- 通期の業績予想が下方修正される
- 上期の遅れが通期の利益に及んだことになり、現金の取り崩し(買収)の観点でも確認が要る。
見ておくもの
- 保守契約・技術サービスの売上の増減
- NDES の通年の売上と利益
- 北米の金型製造の受注
- 現金の使い道(買収・還元)
- 営業利益率(5% 超が続くか)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。基本の k 7.5% に quality +1.5% を足して 9.0%。ROE が k に届かない筋書きでは PER の上限は 1÷k = 11.1 倍で、そこから ROE の低さに応じて 6〜7 割へ下げた。今の PER や同業の倍率は使っていない。時価総額が純現金とほぼ同じ点には引きずられず、現金は事業に要る分と余る分を分け、余る分にだけ戻り方を掛けた。2028 年度から新リース会計基準で BS が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→14.57 倍・やや楽観 PER 7.5→12.9 倍・中立 PER 7→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。