結論
サクサは、中小企業向けのビジネスホンやUTM(ネットの出入口を守る装置)、防犯機器を作る東京の通信機器メーカーだ。ほかに、他社の製品を受託生産する事業、有機ELの表示部品、監視カメラの映像システムを持つ。2026年3月期は売上441億円、営業利益21億円で、営業利益は前の期から4割近く減った。筆者の結論は「割高」である。
今期の焦点は、相模原の土地だ。三菱地所に貸していた5万3千平方メートルを売り、2026年4月に引き渡した。売却益は約232億円で、税を引いた手取りは200億円前後とみる。これで手元の現金は、時価総額362億円の6割を超える。借入金の返済と新工場、買収のための枠を除いても、約140億円は事業に要らない現金だ。
現金の戻り方は、他社よりはっきりしている。特別配当を含む今期の配当は、利益の1.3倍だった。2028年3月期からは、自己資本に対する配当率4%と総還元性向100%の高い方を払うと決めた。それでも、本業の稼ぎが弱い。賃貸収入約2億円はなくなり、会社は今期の営業利益を10億円と見ている。本業の自己資本利益率は、10年の中立でも資本コストを下回る。
確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を3割ほど下回る。現金を現金として数えても、本業の価値を足して届かない。上振れの鍵は、中期計画の営業利益50億円が現実になるかどうかだ。達成すれば、現金とあわせて値段は今を超える。ただ、過去10年で営業利益が30億円を超えたのは2期にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サクサは「安い現金」と「普通の本業」の組み合わせだ。現金の部分は分かりやすい。会社が還元の約束を文章にしたことは、前向きに評価できる。一方で、本業は資本コストを下回る稼ぎで、現金を事業に再投資しても資本コストは稼げない。現金は戻すのが正しい使い方だ。
気がかりは、買収と、規模を保つための投資への傾きだ。借入金を使ってレバレッジを効かせる意向を示し、M&Aの枠を設ける。ニューテックのような買収が資本コストを上回る稼ぎに結びつくかは、まだ見えない。現金が事業に変わる時、その現金は評価を落とすことが多い。
安全域は、現金の一部にある。現金のうち、時価総額の4割は事業に要らない。ただ、10年で見ると、戻る時期の遅れと本業の薄さが、今の値段を支えられない。確信度は中くらいで、割高の方向は動きにくいと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
売上は4つに分かれる。サクサブランド事業が148億円で、中小企業向けのビジネスホン、UTM、サーバー、防犯防災機器を自社ブランドで売る。顧客は約25万社に及び、販売会社と保守網を持つ。OEM事業は177億円で、他社製品の設計・受託生産を引き受ける。システム事業は63億円で、監視カメラの映像システムを手がける。有機EL・その他は53億円で、子会社ソアーの小型有機ELが中心だ。
2026年3月期は、自社ブランドが7億円増え、OEMが31億円減った。会社が低収益の受託を意図して減らしたためだ。ソアーを期首から含めた効果もあり、有機ELは27億円増えた。営業利益は21億円に減り、成長投資と人件費・材料費の上昇が重かった。事業別の利益は開示がなく、全社で見るしかない。
2025年から2026年に、買収を重ねた。ソアー(有機EL、2024年)、システム・ケイ(映像)に続き、2026年3月にニューテックを完全子会社にした。ストレージの会社で、公開買い付けは約52億円。借入金で払い、のれん25億円を計上した。売上は2027年3月期から入り、会社は売上475億円を見込む。
会社は人員の見直し(ネクストキャリア支援)を実施する。本社は白金から三田に移し、新横浜に拠点を新設する。米沢の生産は、規模を縮めた形で八幡原の新工場に集約する。
優良さと弱いところ
強みは、約25万社の中小企業とつながる販売網と、保守・工事の体制だ。小さな会社の電話・ネット機器は、入れ替えのたびに同じ販売会社から買う習慣が強い。UTMや防犯機器は、電話に比べて需要が伸びている。有機ELは、小型の高付加価値品に絞れば、価格競争を避けられる。
弱みは、利益の水準が低いことだ。営業利益率は10年で最も良い年でも8%台で、中央値は4%台にとどまる。2009年、2014年、2021年の3期が赤字だった。自己資本利益率の中央値も4.3%と、資本コストを下回る。OEM事業は売上の4割を占めるが、薄利で、会社自身が見直しを始めた。
堀、つまり他社がまねできない強みは、深くない。ビジネスホンはクラウド電話に押されて長期では縮む。UTMの競合は、海外の大手と国内の通信会社だ。サクサの値決めの力は強くない。販売網の古さは、守りにはなっても、攻めの武器にはなりにくい。
経営は構造改革の途中にある。前の中期計画の目標は未達で、2026年2月に委員会を作って計画を見直した。人員の削減、事業の選択、コスト削減(今年度約12億円、最終年度約20億円)を掲げる。実行は始まったばかりで、成果はまだ数字に表れていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビジネスホンは、国内で長く縮んできた市場だ。スマートフォンとクラウド電話が普及し、オフィスの固定電話の台数は減り続ける。ただし中小企業では、停電や回線障害に強い自前の交換機を使い続ける会社も多い。入れ替えの需要が、市場を細く保っている。市場全体の規模を示す公的な統計は確認できなかった。
UTMとネットワーク機器は、増える分野だ。サイバー攻撃が中小企業にも及び、守る機器を入れる動きが強まった。世界の市場は年10%前後で伸びるとの民間推計がある。サクサは国内の中小企業向けに絞っており、世界の大手と同じ土俵ではない。
受託生産(EMS)は、大手の価格競争が厳しい。会社は産業機器、医療、計器、フードテックの4分野に絞り、大手の土俵からは降りる方針だ。有機ELは小型のニッチ市場で、量より用途で稼ぐ形になる。映像システムは、クラウド連携の競争が激しく、セーフィーとの提携が鍵になる。
この領域に、業種のノートはない。同じ分野で分析の済んだ会社もなかった。そこで、ほかの電気機器や中食の分析と同じ枠組みを使い、売上と利益率は各事業の方針と過去の数字から置いた。物価が年3%で上がる世界で、数量は10年で実質2割前後減る事業を含めた。
資本政策と M&A
土地の売却が、資本の姿を変えた。譲渡益は約232億円で、2027年3月期の特別利益になる。会社の予想では、純利益は165億円に跳ねる。ただし一回限りの利益で、稼ぐ力ではない。手取りの現金は約200億円とみる。税を後回しにする特例の利用も会社は検討しており、納税額次第で手取りは変わる。
還元の約束は明確だ。2026年3月期は配当性向129%。2027年3月期は普通配当に特別配当を載せ、約22億円を払う。特別配当の総額約30億円は、2028年3月期の中間までに終える。2028年3月期以降は、自己資本に対する配当率4%と総還元性向100%の高い方とする。ただし2031年3月期以降は見直す。
使い道も決めている。M&Aの資金枠、工場とサーバーの更新・BCPの投資枠を設け、借入金も使って資本効率を上げる考えだ。前年にニューテックの買収を借入金で払った。短期借入金は約59億円あり、土地の代金で返す見込みだ。退職給付に係る資産も45億円まで増えたが、現金ではない。
優待は、プレミアム優待倶楽部のポイントで、500株以上が対象。株式分割で、最低株数の優待の価値は3分の2に下がる。費用は小さく、数えない。新リース会計は2028年3月期から強制だが、賃借の約束の額は確認できず、影響は読めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
土地の売却で、サクサは別の会社になった。手元に200億円前後の現金があり、約140億円は事業に要らない。会社は2028年3月期から、自己資本の4%を配当に回し、足りなければ総還元性向100%まで引き上げると約束した。時価総額362億円のうち、かなりの部分が現金で支えられている。
本業も、構造改革で変わる。コスト削減は今年度約12億円、最終年度で約20億円を見込む。低収益の受託と防犯・プロバイダー事業を縮め、UTM、有機EL、映像に集中する。2030年3月期に営業利益50億円、自己資本利益率8%を目標に掲げた。2024年3月期に営業利益34億円を出した実績があり、届かない数字ではない。
買収も追い風だ。ニューテックのストレージと、映像のAI、UTMをつなげたセット販売が成功すれば、システム事業が伸びる。有機ELのソアーは、累計2.2億台の出荷を持ち、高付加価値の用途で稼ぐ。物価が年3%で上がる世界では、売上の名目が自然に膨らみ、固定費を吸収しやすい。
慎重な見方
2026年3月期は、営業利益が37%減った。前の期の純利益は、事業譲渡益や投資有価証券の売却益で膨らんだ。今期も営業利益は10億円の予想で、さらに半分になる。これが本業の姿だと見るべきだ。賃貸収入約2億円もなくなる。
目標の営業利益50億円は、過去10年で一度も届かない水準だ。最高でも34億円。前の中期計画も、材料費と人件費の上昇を理由に未達となった。構造改革の効果が出ると言っても、人員削減には費用がかかり、顧客が離れる危険もある。
現金も、思うほど株主に回らないかもしれない。会社は借入金を使った成長と、M&Aの枠を並べている。買収は、のれんを積み、現金を食う。2031年3月期以降の配当方針は、見直すと明記されている。約束の期間は3年にすぎない。
市場も向かい風だ。ビジネスホンは縮み、受託生産は大手との価格競争にさらされる。UTMの競合は海外の大手と通信会社で、サクサの値決め力は強くない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、現金と還元の約束を根拠にする。慎重な見方は、本業の稼ぎの低さと、約束が3年で切れることを突く。筆者は、現金の価値は認めたうえで、慎重な見方がやや強いと考える。現金が戻っても、本業の価値が資本コストに届かないからだ。
確率は中立に厚く置き、悲観側もやや厚くした。楽観は7%、やや楽観は18%、中立は38%、やや悲観は25%、悲観は12%。構造改革が実を結ぶ筋書きは、楽観側に入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,945 円340 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 891 円156 億円)。 今の値に割り戻すと 1,453 円254 億円、今との差 −27.9%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,288 円575 億円 | 1,315 円230 億円 | +128.5% | +8.6% | 322 円56 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,645 円463 億円 | 1,143 円200 億円 | +88.0% | +6.5% | 682 円119 億円 |
| 中立 | 38% | 2,263 円396 億円 | 1,029 円180 億円 | +63.4% | +5.0% | 1,251 円219 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,102 円193 億円 | 657 円115 億円 | −12.7% | −1.3% | 440 円77 億円 |
| 悲観 | 12% | 861 円151 億円 | 314 円55 億円 | −41.7% | −5.2% | 141 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,945 円340 億円 | 891 円156 億円 | +40.7% | +3.5% | 2,836 円496 億円 |
今の株価時価総額 2,015 円352 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 構造改革が実り、営業利益が50億円台に乗る 利益 39 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,288 円575 億円
コスト削減が約20億円の規模で定着し、OEMは高付加価値の4分野に絞られる。UTM、有機EL、映像が伸び、システム事業はニューテックの取り込みで1.6倍になる。営業利益率は8%に乗る。
現金は、約束どおり株主に戻る。2028年3月期から3年は配当率4%と総還元性向100%の高い方で払い、その後も大きく変えない。10年の還元は230億円に達する。一部の現金は、買収と新工場に使われる。
自己資本利益率は9%台に上がり、資本コストを少し超える。ここまで来れば、小さな通信機器メーカーとしては出来すぎである。
- サクサブランド事業:数量 110(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.05(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 225 億円・営業利益 21 億円。営業利益率9.5%
- OEM事業:数量 95.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.44(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 232 億円・営業利益 9 億円。営業利益率4.0%
- システム事業(映像・ストレージ):数量 160(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.87(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 138 億円・営業利益 10 億円。営業利益率7.0%
- 有機EL・その他(賃貸を含む):数量 140(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.73(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 12 億円。営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 12.1 倍、時価総額 575 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の営業利益50億円を、10年後も保つ筋書きだ。過去10年で最高が34億円、2期しか30億円を超えていない。構造改革の成功とニューテックの相乗効果が重なる必要があり、7%にとどめた。
やや楽観 18% 改革の効果が出て、利益率が6%台に定着する 利益 30 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,645 円463 億円
OEMの見直しが進み、低収益の受託が減る。コスト削減は約15億円ほどが残る。UTMと映像が伸び、有機ELは高付加価値の用途に絞って堅調に推移する。営業利益率は6%台で、中期計画の目標には届かない。
現金は、約束の期間は計画どおりに戻る。その後は、配当率を3%台に落とす。買収は1件か2件が実り、現金の一部は事業に変わる。10年の還元は200億円。
自己資本利益率は6%前後で、資本コストには届かない。時価総額は、現金を含めて今の水準に近づくが、超えるには至らない。
この筋書きでは、構造改革は成功と呼べる水準に近い。それでも資本コストを超えられないところが、この会社の難しさである。現金を戻し、本業を絞る方針は正しく、足りないのは稼ぐ力の厚みだ。
- サクサブランド事業:数量 105(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.02(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 212 億円・営業利益 16 億円。営業利益率7.5%
- OEM事業:数量 88.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.40(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 212 億円・営業利益 7 億円。営業利益率3.2%
- システム事業(映像・ストレージ):数量 145(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.85(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 124 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5.5%
- 有機EL・その他(賃貸を含む):数量 130(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.72(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 9 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 463 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造改革は計画の半分以上が実る筋書きだ。実績の最高水準(8%台)には届かず、中央値(4%台)は上回る。足元の改善は事実ではなく計画なので、18%に置いた。
中立 38% 改革は半ばで止まり、利益率は5%に届かない 利益 23 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,263 円396 億円
ビジネスホンの縮小と、受託の絞り込みで、数量は実質で目減りする。UTMとニューテックの上積みが、それを一部埋める。営業利益率は5%弱に収まり、利益は28億円前後となる。土地の賃貸収入は戻らず、現金の利息が代わりに入る。
2028年3月期から3年は、自己資本の4%の配当を払う。2031年3月期以降は見直され、配当率を3%台に落とす。10年の還元は180億円となる。現金のうち、買収と新工場に使う分を除いて約150億円が残る。
自己資本利益率は4%台で、資本コストを下回る。現金の戻りが遅いぶん、値段は今より下がる。
- サクサブランド事業:数量 97.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.99(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 193 億円・営業利益 12 億円。営業利益率6.0%
- OEM事業:数量 80.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.37(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 190 億円・営業利益 5 億円。営業利益率2.5%
- システム事業(映像・ストレージ):数量 150(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.84(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 126 億円・営業利益 6 億円。営業利益率4.5%
- 有機EL・その他(賃貸を含む):数量 110(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.71(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 6 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率は直近の12年の中央値が4%台。コスト削減と買収の効果を一部認めて5%弱に置いた。構造改革は始まったばかりで、会社の目標より低く、直近の山より低い。中立は38%と、他の筋書きより厚くした。
やや悲観 25% 改革が不発で、受託の薄利に沈む 利益 13 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,102 円193 億円
UTMと映像の伸びが、ビジネスホンの縮小と防犯の撤退で相殺される。OEMは大手との価格競争に負け、数量が3割減る。営業利益率は3%まで下がり、10年後の営業利益は15億円にとどまる。
買収が失敗し、のれんを減損する。現金のうち、事業に使って戻らない分が出る。還元は約束の期間が終わると、配当率が下がる。10年の還元は115億円。
自己資本利益率は3%前後。値段は、純利益の7.5倍と、残った現金で付く。
物言う株主が現れても、稼ぐ力が弱い会社に、買い手は高い値段を付けない。現金が戻る約束があるぶん、悲観の中では下値が硬い筋書きと言える。
- サクサブランド事業:数量 88.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.90(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 167 億円・営業利益 7 億円。営業利益率4.0%
- OEM事業:数量 70.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.26(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 158 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.2%
- システム事業(映像・ストレージ):数量 130(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.80(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。営業利益率3.0%
- 有機EL・その他(賃貸を含む):数量 90.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.68(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の自己資本利益率は3%台で資本コストを大きく下回る。上限の1÷k(11.1倍)から、稼ぐ力の低さを引いて約3分の2の7.5倍に置いた。
確率:OEMの見直しが進んでも、代わりの柱が育たない筋書きだ。過去10年に赤字は3期あり、足元の営業利益は半減する予想である。25%と厚めに置いた。
悲観 12% 構造改革の失敗と大型買収の損で、赤字に沈む 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 861 円151 億円
ビジネスホンはクラウド電話に押されて急速に縮み、受託は価格競争で赤字になる。ニューテックの買収は想定の相乗効果を生まず、のれんは減損される。営業利益は赤字に落ちる。
現金は、赤字の穴埋めと買収の失敗に使われ、半分が消える。還元は約束の期間の半ばで見直され、10年の還元は55億円にとどまる。自己資本は減損で430億円まで減る。
値段は、純現金と売れる資産の価値で支えられ、土地売却前の自己資本の約46%まで下がる。会社が本業を畳むような事態でも、現金と退職給付の資産が株主に残る点が、下値の支えになる。
それでも、10年のうちに大型の買収で現金が減り、本業が赤字を垂れ流す形は、小さな通信機器メーカーでは起こりうる。過去の赤字の期(2009年、2014年、2021年)がそれを示している。
- サクサブランド事業:数量 75.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.78(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 134 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.5%
- OEM事業:数量 55.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.12(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 117 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-2.0%
- システム事業(映像・ストレージ):数量 105(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.75(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 79 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-1.0%
- 有機EL・その他(賃貸を含む):数量 70.0(数量の指数(2026年3月期=100))× 価格 0.64(指数1点あたりの売上(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.5%
倍率:稼ぐ力(赤字に近い事業)が小さいため、売れる資産と現金の価値で値を付ける。2026年3月末の自己資本327億円(土地売却前)に対する倍率で置いた。売却後の現金を含む430億円に対しては約35%にあたる。
確率:改革が失敗し、買収の損が出る筋書きだ。受託と防犯の縮小が痛みだけを残し、顧客も離れる。過去に3期の赤字があり、足元は営業利益が半減しているため、12%と厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サクサブランド事業
ビジネスホン、UTM、サーバー、防犯防災機器を自社ブランドで中小企業に売る。販売会社と保守網を持つ。
| 数量数量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.48 | 148 | 10 |
| 10 年後 中立 | 97.0 | 1.99 | 193 | 12 |
取り方:短信の事業別売上148.45億円(前期比+7.4億円)。出荷台数の開示は無いため、2026年3月期を100とする指数で数量を置き、1点あたりの売上を価格とした。事業別の利益は開示が無く、全社の営業利益20.9億円を、自社ブランドの利益率が最も高いとみて、売上比と利益率の見立てで9.6億円(6.5%)、OEM4.4億円、システム1.4億円、有機EL・その他5.5億円(賃貸約1.9億円を含む)に割った。数量は、ビジネスホンの縮小とUTMの増加の差で、10年0.97倍を中立に置く。価格は物価並みの1.34倍。競合はNTT系、海外のUTM大手、クラウド電話。
OEM事業
他社製品の設計・受託生産。産業機器、医療、計器、フードテックの4分野に絞る方針。
| 数量数量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.77 | 177 | 4 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 2.37 | 190 | 5 |
取り方:短信の事業別売上176.77億円(前期比-30.9億円。低収益の受託を見直した)。利益は開示が無く、全社の営業利益から割った推定値で4.4億円(2.5%)。受託を絞る方針と、大手との価格競争から降りる方針のため、数量は10年0.80倍を中立に置く。価格は物価並みの1.34倍。競合は国内のEMS各社と、大手の自社生産。
システム事業(映像・ストレージ)
監視カメラの映像システム(システム・ケイ)と、2026年3月に加わったストレージ(ニューテック)。
| 数量数量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.63 | 63 | 1 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.84 | 126 | 6 |
取り方:短信の事業別売上62.69億円(前期比-3.6億円)。ニューテックは2026年3月に加わったため、損益はまだ入っていない。同社の売上は開示を確認できず、2027年3月期の会社予想(売上475億円)の増収から推定して、数量の指数に約5割の上積みを織り込んだ。利益は開示が無く、全社から割った1.4億円(2.2%)。映像のクラウド化と音声SIの縮小が重なり、10年1.50倍(ニューテック込み)を中立に置く。価格は物価並み。
有機EL・その他(賃貸を含む)
子会社ソアーの小型有機ELデバイスが中心。相模原の土地の賃貸収入も、売却までこの区分に入っていた。
| 数量数量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.53 | 53 | 6 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.71 | 78 | 6 |
取り方:短信の有機ELデバイス事業ほかの売上53.06億円(前期比+27.5億円。ソアーが期首から入った効果)。不動産賃貸収入1.98億円は2026年4月の売却で消えるため、10年の数量に織り込んだ。利益は開示が無く、全社の営業利益から割った5.5億円(賃貸約1.9億円を含み、デバイスだけなら約7%)。高付加価値の用途に絞る方針で、10年1.10倍を中立に置く。価格は物価並み。競合は国内外の表示部品メーカー。
リスクと懸念
構造改革が実らない
中期計画の営業利益50億円は、過去10年で一度も届かない水準だ。2027年3月期の営業利益は10億円の予想で、まず半減する。人員削減の費用と顧客離れが重なれば、目標はさらに遠のく。
買収と投資への現金の流出
会社は借入金を使った成長と、M&Aの資金枠を掲げる。ニューテックは公開買い付けで約52億円を払い、のれん25億円を計上した。買収が稼ぎに変わらなければ、現金が減損で消える。
配当方針の見直し
2028年3月期から3年の約束だが、2031年3月期以降は見直す。災害や環境変化の場合も見直す可能性があると明記している。約束の期間が終わると、現金の戻りが遅れる。
ビジネスホンの縮小
クラウド電話への移行で、固定電話の台数は長く減ってきた。売上の3分の1を占める自社ブランド事業の土台が細る。UTMなど新しい柱が間に合わなければ、数量が落ちる。
受託生産の価格競争
OEMは売上の4割を占めるが利益率が薄く、大手との競争も厳しい。会社は低収益の案件を減らしているが、売上の減少を利益の改善が上回る保証はない。
税と特別利益の読み違い
土地の譲渡益は2027年3月期に約232億円の特別利益として入る。この利益は一回限りで、稼ぐ力ではない。譲渡価額は非開示で、手取りの推定には幅がある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が10億円を大きく上回り、2028年3月期に22億円以上に戻ったら
- 構造改革が効いた証拠。やや楽観以上の確率を上げる。
- 借入金を使ったM&Aが発表され、買収額が余った現金の半分を超えたら
- 現金の戻りが遅れ、のれんの減損の危険も増す。余った現金の戻り方と、やや悲観の確率を見直す。
- 配当方針(配当率4%または総還元性向100%)が、2030年3月期より前に引き下げられたら
- 約束が崩れたことになる。余った現金の戻り方を0.5に下げ、悲観側の確率を上げる。
- 自己株式の取得や、特別配当の追加が発表されたら
- 余った現金の戻りが早まる。還元の額を見直す。本業の稼ぎが変わらなければ、倍率は変えない。
- 他社が公開買い付けを提案したら
- 買い取り価格が、現金と事業の価値の合計を超えるかを確かめる。超えるなら楽観側を見直す。
- OEM事業の売上減少が続き、全社の営業利益率が4%を下回ったら
- 受託の見直しが痛みだけを残している。やや悲観と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益と営業利益率(2027年3月期は10億円の予想)
- 土地の手取りと納税の額、借入金の返済
- 配当率4%または総還元性向100%の履行(2028年3月期から)
- ニューテック、ソアーなど買収会社の利益とのれんの減損
- OEMの売上と、コスト削減の進み(今年度約12億円)
倍率と資本コストの決め方
4つの事業をそれぞれ数量と価格で積み、利益率は直近12年の中央値(4%台)と、会社の改善計画の中間に置いた。倍率は事業の自己資本利益率と資本コスト8.5%の関係から決めた。余った現金は、事業に要る分を除き、戻り方1.0で別に足した。今の株価や会社の目標(営業利益50億円)は参考にせず、目標の達成は楽観の確率7%で表した。土地の手取りは非開示の譲渡価額からの推定で、納税額により上下する。新リース会計基準でBSの形が変わるが、10年後の数字は賃借料を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.1 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.5%を足して9.0%。上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。