結論
日置電機は、電気を正確に測る道具の専業メーカーである。テスター、電力計、電池の試験機、データの記録装置、基板の検査機まで、電気の「はかる」を広く手がける。本社は長野県上田市だ。
筆者の結論は、本質価値が今の時価総額を 2 割余り下回る、というものだ。事業はよい。割高と見るいちばんの理由は、今の利益が景気の山に近いことにある。
追い風は本物である。電気自動車の電池、電力網向けの蓄電、データセンターの電源と、需要は電気の増える場所に集まっている。2026 年 12 月期は売上が 2 割近く伸び、営業利益は 4 割増える見通しだ。
強みは、電力と電池の測定で積んだ精度と信頼にある。開発現場で標準機になれば、顧客は過去のデータと比べられなくなる乗り換えを嫌う。借金はなく、自己資本比率は 85% を超える。
弱みは三つある。需要が自動車や電子部品の設備投資に連動して振れること。台湾や中国の測定器メーカーが、中級品から値段を崩してくること。事業が一本で逃げ場が少ないことだ。
10 年では、数量は年 3〜4% 伸び、営業利益率は 18% 前後に落ち着くとみる。そこから出る価値は今の値段に届かない。ただ、FA 機器の同業ほどの割高ではない。事業の質が高く、純現金もあるからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を 10 年持ちたいかと問えば、答えは「事業はよいが、値段が先を食っている」である。
事業の質は高い。電気を測る仕事は、電化が進むほど増える。借金はなく、無理な買収もない。開発の現場で標準になる強みは、数十年かけて築くもので、一夜では崩れない。
ただ、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、今の山の水準では測れない。営業利益率は 17% から 20% の間を行き来してきた。この事業の平均的な姿は 18% 前後だ。そこから出る利益に、事業の質に見合う倍率をかけて、10 年後の時価総額と途中の還元を足しても、今の値段で買った人の利回りは年 4% 弱にとどまる。要求する 7〜8% には届かない。
安全域はどうか。悪い筋書きでも純現金があり、赤字には落ちにくい。この点は、FA 機器の同業各社より守りが厚い。それでも、払う値段に余裕があるとは言えない。
気になるのは資本の配分だ。内部に現金がたまり、ROE は自己資本の厚さで薄まっている。還元が目標どおり厚くなるなら、見方は上向く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。電気の性質を測る機器を作って売る。顧客は自動車、電池、電子部品、電機の開発部門と製造ラインである。
売上の半分は電子測定器だ。部品の特性を測る LCR メータ、電力を測るパワーアナライザ、電池の状態を調べる試験機が中心になる。電池や電子部品の開発では、測定値が物差しになる。精度が落ちれば、開発の判断そのものが狂う。だから顧客は値段より信頼を見る。
次が現場測定器である。テスター、クランプメータ、絶縁抵抗計といった、電気工事や保守の現場で使う手持ちの機器だ。数は多く、単価は低い。国内の設備保守と、海外の電化の進みが支えになる。
記録装置は、電圧や温度を長時間記録するデータロガーなどだ。電池の試験や自動車の走行評価で出番が増えている。自動試験装置は、基板を検査する機械である。1 台が大きく、売上は期ごとの波が大きい。
地域別では、日本が 3 分の 1 強、中国が 3 割弱、そのほかのアジアが 2 割弱を占める。海外売上は 63% を超え、中期経営計画は 70% 以上を掲げる。2026 年は中国と台湾の受注が大きく伸びた。
事業は一本で、開示は製品別の売上だけだ。利益は製品別に出ない。電子測定器の利益率がいちばん高く、基板検査がいちばん低いと筆者はみる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、精度と実績の積み重ねにある。ただ、値段を自分で決める力は、キーエンスほど強くはない。
強い点から見る。第一に、電池と電力の測定で、開発の現場に深く入っている。高耐圧の電池試験機や、細かい波形まで測る電力計は、自動車や部品メーカーの標準機として使われる。測定器は一度標準になると、過去のデータとの連続性が乗り換えの壁になる。第二に、財務が硬い。借金はなく、自己資本比率は 85% を超える。谷でも開発費を削らずに済む。第三に、資本の使い方が改善している。株主資本コストを 10% 前後とみて、ROE 15% 以上を目標に置いた。
弱い点もはっきりしている。営業利益率は 2020 年の 11% から 2022 年の 20% へ上がり、2025 年は 17% に戻った。山と谷で数ポイント動く事業だ。
競合も多い。電力計には横河計測、電池の評価にはキーサイトや台湾のクローマ、手持ち測定器には共立電気計器や三和電気計器が並ぶ。台湾や中国の安い機器は、中級品から広がる。
単一事業で、顧客が自動車・電池・電子部品に偏る点も、筆者は気にしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の中心は、電気を作り、運び、使う機器の開発と製造に移っている。電気自動車の電池、電力網につなぐ蓄電システム、データセンターの電源、再生可能エネルギーの電力変換装置である。どれも電気を扱うので、測る機器が要る。
短期の流れはよい。2026 年は中間期までに売上が 23% 増え、営業利益は 54% 増えた。データセンター向けの基板検査装置は、自動試験装置全体の受注が前年の 2 倍を超えた。蓄電システム向けの電池試験も強い。電気自動車はハイブリッド車への移りで勢いが鈍ったが、評価試験の売上は伸びている。
ただ、ここは景気の山に近い。測定器は、顧客の開発と設備の投資に先行して動く。電池の増設が止まれば、受注が先に減る。2025 年には関税の混乱で、自動車向けの基板検査機が落ち込んだ。同じことが別の市場で起きうる。
構造では、長く伸びる側にいる。電力の使い方が複雑になるほど、測る点と測る項目は増える。インバータの高速化、電池の高電圧化、半導体の消費電力の増加が、測定器の数と精度を押し上げる。筆者は、数量が実質で年 3〜4% 伸びるとみる。
価格には逆風がある。台湾や中国の測定器メーカーが育ち、中級品で値段を崩す。精度が命の高級機は守られるが、電子測定器の価格は 10 年で物価(1.34 倍)に届かず、1.3 倍にとどまるとみる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、変わりつつある。2024 年に株主資本コストを 10% 前後と見直し、ROE 15% 以上を目標に置いた。配当は、純資産に対する割合(DOE)2% 以上を基準にしている。
ただ、実績はまだ厚くない。自己資本は 10 年で 193 億円から 440 億円へ、純現金は 55 億円から 167 億円へ積み上がった。利益の相当部分が社内に残っている。自己資本比率が 85% を超える会社としては、現金が余っている。筆者は、そのうち 100 億円余りは事業に要らないとみる。
買収は大きくない。本業は電池や電力の測定で、補強の買収はありうるが、大型買収で資本を傷める心配は小さい。
株主は分散している。信託銀行の口座と社員持株会が大きく、八十二銀行や個人の大株主も上位に並ぶ。TOB(株式の公開買い付け)の可能性は、kabufu の推定で 10 年以内に 18% だ。
中期経営計画は、海外売上比率 70% 以上と ROE 15% 以上を掲げる。利益が山にいる今は、ROE は達成しやすい。谷でも還元を保てるかが試金石になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電気の増える所に、測る機器の需要が集まる。電気自動車の電池、電力網の蓄電、データセンターの電源、再エネの電力変換。どれも 10 年単位で伸びる市場で、日置電機はその中心に測る機器を持つ。2026 年は中間期までに売上が 23% 増え、営業利益は 54% 増えた。これは一時の山ではなく、事業の水準が上がった証拠だ。
稼ぐ力も上がった。2020 年に 11% だった営業利益率は 2022 年に 20% へ上がり、3 年続いた。2025 年に 17% へ下がったのは関税による自動車向けの乱れで、今期の予想は 20% 近くに戻る。基板検査装置は受注が前年の 2 倍を超え、売上の遅れは時間の問題だ。
台湾や中国勢の値下げは、精度と信頼が命の領域には届かない。電池の開発では測定値が物差しになるので、顧客は安さでは選ばない。借金がなく、自己資本比率は 85% を超える。谷でも攻め続けられるのが、この会社の強みである。
資本の使い方も変わった。ROE 15% 以上を掲げ、配当の基準も置いた。たまった現金が戻り始めれば、ROE と配当の両方が上がる。10 年後に売上 900 億円、営業利益 180 億円は十分に見える。
慎重な見方
今の利益は景気の山である。2026 年の営業利益予想は 95 億円で、前の年より 4 割増える。これが 10 年続く水準だと考えるのは危ない。測定器は、顧客の開発費と設備投資に先行して動く。電池の増設やデータセンター向けの投資が一巡すれば、受注が先に落ちる。2025 年に営業利益が 1 割減ったことが、その振れの大きさを示している。
競合は多く、手ごわい。電力計には横河計測、電池には計測機大手と台湾のクローマが並ぶ。台湾や中国の測定器メーカーは、安い価格で中級品から市場を取っていく。電池の評価は、電池メーカー自身が機器を作ることもある。日置電機は事業が一本なので、ひとつの市場が崩れれば他で穴を埋めにくい。
値段にも注意がいる。今の時価総額は 2025 年の純利益の 22 倍にあたる。売上が 10 年で 900 億円近くへ、年 8% で伸びる筋書きでようやく見合う値段だ。
現金も、見かけほど株主のものではない。自己資本の厚さで ROE は薄まり、還元の実績は厚くない。ROE 15% の目標は、利益が山にいるうちは達成できても、谷では守れない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分には根拠がある。電気化の需要は構造的で、事業の質も高い。ただ、慎重な見方が突く点も重い。今の利益は山にあり、10 年で見れば、売上は年 6% 程度、利益率は 18% 前後に落ち着くと考えるのが自然だ。強気側(楽観・やや楽観)は 34%、慎重側(やや悲観・悲観)は 32% で、ほぼ釣り合うとみて中立に 34% を置いた。今の値段は強気が当たって初めて見合うため、確率は中立の周りに寄せた。悲観は 10% にとどめた。純現金と電池測定の地位が、構造的な負けを遠ざけるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 14,503 円1,944 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,326 円446 億円)。 今の値に割り戻すと 9,744 円1,306 億円、今との差 +13.7%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 24,194 円3,243 億円 | 4,207 円564 億円 | +231.4% | +12.7% | 2,840 円381 億円 |
| やや楽観 | 24% | 20,323 円2,724 億円 | 3,737 円501 億円 | +180.7% | +10.9% | 5,774 円774 億円 |
| 中立 | 34% | 16,581 円2,223 億円 | 3,282 円440 億円 | +131.8% | +8.8% | 6,754 円905 億円 |
| やや悲観 | 22% | 6,011 円806 億円 | 2,865 円384 億円 | +3.6% | +0.4% | 1,953 円262 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,460 円330 億円 | 2,626 円352 億円 | −40.7% | −5.1% | 509 円68 億円 |
| 加重平均 | 100% | 14,503 円1,944 億円 | 3,326 円446 億円 | +108.0% | +7.6% | 17,829 円2,390 億円 |
今の株価時価総額 8,570 円1,149 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 電気化の波に乗り、電力・電池測定の標準になる 利益 150 億円 · PER 21.1 倍 · 株価時価総額 24,194 円3,243 億円
電池、蓄電、データセンターの電源、再エネの電力変換と、測る場所が電気の増える所に集まり続ける 10 年になる。日置電機は、高耐圧の電池試験機と電力計で、開発現場の標準機の地位を海外でも固める。台湾や中国勢の値下げは、精度と信頼が要る高級機には届かない。
基板検査装置も、データセンター向けの受注が一過性で終わらず定着する。売上は 900 億円近く、営業利益は 180 億円台に乗り、営業利益率は 20% を超える。海外売上比率は 75% 近くまで上がる。
稼いだ現金は、配当と自社株買いで厚く戻る。ROE は 16% 台となり、中期経営計画の目標を超える。測定器の需要の底上げと、日置電機の取りこぼしの少なさが、両方当たった姿だ。
- 電子測定器:数量 7.2(出荷台数(万台、推定))× 価格 76(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 545 億円・営業利益 125 億円。7.175×75.9(数量 1.75 倍・価格 1.38 倍)、営業利益率 23.0%
- 現場測定器:数量 16.1(出荷台数(万台、推定))× 価格 8.30(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 134 億円・営業利益 23 億円。16.1×8.3(数量 1.15 倍・価格 1.38 倍)、営業利益率 17.0%
- 記録装置:数量 3.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 48(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 143 億円・営業利益 27 億円。3.009×47.6(数量 1.70 倍・価格 1.36 倍)、営業利益率 19.0%
- 自動試験装置:数量 160(出荷台数(台、推定))× 価格 4,690(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 75 億円・営業利益 9 億円。160.0×4690.0(数量 1.60 倍・価格 1.34 倍)、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 149 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 21.14 倍、時価総額 3,219 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電池・蓄電・データセンターの需要が 10 年続き、高級機の標準の地位も守る、という当たりがそろう必要がある。事業の質は高いが、全部が当たる確率は低い。
やや楽観 24% 電池・電源・データセンターの需要が長く続く 利益 127 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 20,323 円2,724 億円
電池、蓄電、データセンターの需要は、10 年の前半に勢いが強く、後半も大きくは崩れない。電子測定器と記録装置の数量は、ともに 6 割ほど増える。台湾や中国勢の値下げはあるが、高級機には届かず、価格は物価並みに上がる。
売上は 800 億円、営業利益は 150 億円台に乗り、営業利益率は 19% 台で定着する。ROE は 15% となり、中期経営計画の目標が現実になる。
基板検査装置は、データセンター向けの受注が続き、売上の波は残るが水準は上がる。大型の買収はせず、本業を補う小さな買収を足す。余った現金は、中間の水準で配当と自社株買いに回る。会社の計画がほぼ実現する、素直な上振れである。
- 電子測定器:数量 6.6(出荷台数(万台、推定))× 価格 73(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 480 億円・営業利益 106 億円。6.56×73.2(数量 1.60 倍・価格 1.33 倍)、営業利益率 22.0%
- 現場測定器:数量 15.7(出荷台数(万台、推定))× 価格 8.20(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 129 億円・営業利益 21 億円。15.7×8.2(数量 1.12 倍・価格 1.36 倍)、営業利益率 16.0%
- 記録装置:数量 2.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 47(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 130 億円・営業利益 23 億円。2.779×46.6(数量 1.57 倍・価格 1.33 倍)、営業利益率 18.0%
- 自動試験装置:数量 145(出荷台数(台、推定))× 価格 4,550(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 7 億円。145.0×4550.0(数量 1.45 倍・価格 1.30 倍)、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 126 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 20.79 倍、時価総額 2,688 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電気化の需要は構造的で、日置電機が電池・電力測定の地位を保つ筋書きは十分にありうる。強気の中心として厚めに置いた。
中立 34% 電気化の需要は伸びるが、利益率は 18% 前後に落ち着く 利益 105 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 16,581 円2,223 億円
電気化の需要は伸びるが、今の山の利益率は続かない。数量は実質で年 3〜4% 増え、電子測定器と記録装置が牽引する。現場測定器は成熟していて 1 割ほどの増加にとどまる。価格は台湾や中国勢との競争で、物価にやや届かない。
売上は 720 億円、営業利益は 130 億円となり、営業利益率は 18% で落ち着く。2020 年代前半の 20% は景気の山で、17〜19% が事業の平均的な姿とみる。
海外売上比率は 70% 台に乗る。基板検査装置は、データセンター向けの受注が一巡したあと平常に戻る。ROE は 13% で、資本コストを上回るが、薄れていく。還元は純利益の半分強で、配当の基準 2% は楽に守る。電池や電力の測定という本業を、堅実に守り広げる 10 年になる。
- 電子測定器:数量 5.9(出荷台数(万台、推定))× 価格 72(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 425 億円・営業利益 87 億円。5.945×71.5(数量 1.45 倍・価格 1.30 倍)、営業利益率 20.5%
- 現場測定器:数量 15.4(出荷台数(万台、推定))× 価格 8.00(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 123 億円・営業利益 18 億円。15.4×8.0(数量 1.10 倍・価格 1.34 倍)、営業利益率 15.0%
- 記録装置:数量 2.6(出荷台数(万台、推定))× 価格 46(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 117 億円・営業利益 20 億円。2.567×45.5(数量 1.45 倍・価格 1.30 倍)、営業利益率 17.0%
- 自動試験装置:数量 130(出荷台数(台、推定))× 価格 4,375(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 57 億円・営業利益 5 億円。130.0×4375.0(数量 1.30 倍・価格 1.25 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 20.27 倍、時価総額 2,177 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は電気化で年 3〜4%、価格は競争で物価にやや届かず、利益率は山と谷の間に落ち着く。強気と慎重の言い分の落としどころなので、最も厚く置いた。
やや悲観 22% 台湾・中国勢の値下げで中級品が削られる 利益 73 億円 · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 6,011 円806 億円
電池の増設が一巡し、自動車の開発投資も落ち着く。台湾や中国の測定器メーカーが中級品で値段を崩し、日置電機は価格を物価ほど上げられない。電子測定器の数量は 25% の増加にとどまり、現場測定器はほぼ横ばいになる。
売上は 600 億円、営業利益は 90 億円で、営業利益率は 15% に下がる。2025 年の 17% を下回る年が増える。基板検査は、データセンターの特需が去って赤字すれすれになる。
電池メーカーが試験機器を自作する動きも一部で出る。経営は研究開発を守るが、利益率は戻らない。ROE は 10% 台に下がり、資本コストの手前で止まる。配当は守り、余った現金は戻りにくくなる。
- 電子測定器:数量 5.1(出荷台数(万台、推定))× 価格 69(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 353 億円・営業利益 60 億円。5.125×68.8(数量 1.25 倍・価格 1.25 倍)、営業利益率 17.0%
- 現場測定器:数量 14.3(出荷台数(万台、推定))× 価格 7.80(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 112 億円・営業利益 15 億円。14.3×7.8(数量 1.02 倍・価格 1.30 倍)、営業利益率 13.0%
- 記録装置:数量 2.1(出荷台数(万台、推定))× 価格 44(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 93 億円・営業利益 13 億円。2.124×43.8(数量 1.20 倍・価格 1.25 倍)、営業利益率 14.0%
- 自動試験装置:数量 110(出荷台数(台、推定))× 価格 4,130(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。110.0×4130.0(数量 1.10 倍・価格 1.18 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:ROE 10.5%(事業の純利益÷自己資本)、k 7%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じる資金の稼ぎだけとみて、RONIC=k+1/2×(ROE−k)=9.1%、g 4% の正当化 PER は (1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.0 倍。測定器の需要の振れと利益の質を見て、その 65% の 9.8 倍に置いた。事業の純利益(現金の利息を除く)にこの PER を当て、余った現金は帳簿の額に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:電池の増設が一巡し、台湾・中国勢が中級品で値段を崩す筋書き。測定器は設備投資に先行して動くため、無視できない確率がある。
悲観 10% 電池測定の主戦場を取られ、ニッチの専業に戻る 利益 33 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,460 円330 億円
電池測定の主戦場を取られる 10 年になる。電池メーカーや自動車メーカーは、試験機器を内製するか、台湾や中国の安い機器へ移る。日置電機の標準機としての地位は、一部の高級機だけに縮む。
電子測定器の数量は横ばい、価格は物価の半分ほどしか上がらない。現場測定器と記録装置も同じ圧力を受ける。基板検査は価格競争で利益が出なくなる。
売上は 440 億円で、今の水準にとどまる。営業利益は 40 億円足らず、営業利益率は 9% まで落ちる。ROE は 6% で資本コストを下回る。それでも借金がなく、純現金が土台になり、赤字には転落しない。優良な専業から、普通の測定器メーカーに戻る姿だ。
- 電子測定器:数量 4.1(出荷台数(万台、推定))× 価格 61(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 248 億円・営業利益 25 億円。4.1×60.5(数量 1.00 倍・価格 1.10 倍)、営業利益率 10.0%
- 現場測定器:数量 13.3(出荷台数(万台、推定))× 価格 6.90(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 92 億円・営業利益 8 億円。13.3×6.9(数量 0.95 倍・価格 1.15 倍)、営業利益率 9.0%
- 記録装置:数量 1.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 39(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 68 億円・営業利益 6 億円。1.77×38.5(数量 1.00 倍・価格 1.10 倍)、営業利益率 9.0%
- 自動試験装置:数量 90.0(出荷台数(台、推定))× 価格 3,500(1 台あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。90.0×3500.0(数量 0.90 倍・価格 1.00 倍)、営業利益率 0.0%
倍率:ROE 6.2% は k 7% を下回り、長期 g 4% からの正当化 PBR=(ROE−g)÷(k−g)=0.60 倍、PER に直すと 9.6 倍が上限。稼ぐ力に近い 9.0 倍に置いた。余った現金は、悲観では今の半分の額に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:電池測定で構造的に負ける筋書き。悲観が 10% なのは、純現金と標準機としての実績が負けを遠ざけるため。5% を超えるのは、単一事業で逃げ場が少ないため。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子測定器
LCR メータ・パワーアナライザ・電池試験機・電力計など、電子部品や電池の開発で使う高精度の測定器(製品区分の電子測定器と周辺装置ほか)。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.1 | 55 | 225 | 43 |
| 10 年後 中立 | 5.9 | 72 | 425 | 87 |
取り方:2025/12 期の売上は電子測定器 202 億円に周辺装置ほか 23 億円を足した 225 億円。開示は金額だけなので、高精度機の平均単価を 55 万円と推定して約 4.1 万台に分けた。台数は実質、価格は物価で上がる名目。営業利益は開示が無く、全社の営業利益 67.9 億円を、電子測定器が最も高い利益率(19%)になるよう配った推定。
現場測定器
テスター・クランプメータ・絶縁抵抗計など、電気工事と保守の現場で使う手持ちの測定器。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 14.0 | 6.00 | 84 | 13 |
| 10 年後 中立 | 15.4 | 8.00 | 123 | 18 |
取り方:現場測定器の売上 84 億円。手持ち機器の平均単価を 6 万円と推定して約 14 万台に分けた。営業利益は推定で利益率 15%。
記録装置
電圧・温度などを長時間記録するデータロガーやメモリハイコーダ。電池試験・自動車評価で使う。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.8 | 35 | 62 | 11 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 46 | 117 | 20 |
取り方:記録装置の売上 62 億円。データロガー中心に平均単価を 35 万円と推定し、約 1.8 万台に分けた。営業利益は推定で利益率 17%。
自動試験装置
基板の電気検査をするフライングプローブ型などの試験装置。データセンター向けの伸びが大きいが、1 台が大きく売上の波が大きい。
| 数量出荷台数(台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 3,500 | 35 | 2 |
| 10 年後 中立 | 130 | 4,375 | 57 | 5 |
取り方:自動試験装置の売上 35 億円。1 台 3,500 万円と推定して約 100 台に分けた(1 台 = 万円×0.0001 億円)。営業利益は推定で利益率 7%。景気と納期で波が大きい。
リスクと懸念
設備投資の山と谷
電池の増設、データセンター、自動車の開発投資が同時に高いのが今だ。どれかが止まれば受注が先に落ちる。2025 年は関税で自動車向けの基板検査機が低迷し、営業利益が 1 割減った。山の利益率を平常とみるのは危ない。
台湾・中国の測定器メーカー
台湾や中国のメーカーは、電池や電力の測定器で、安い価格から中級品に入ってくる。精度が命の高級機は守られるが、価格は物価に届かなくなる。電子測定器の価格が 10 年で 1.3 倍を割ると、利益率は 15% を下回る。
単一事業と顧客の偏り
事業は電気測定器の一本で、需要は自動車・電池・電子部品に偏る。ひとつの市場が崩れたとき、ほかで穴を埋めにくい。主要顧客は売上の 1 割に満たないが、同じ業界の景気で動くので分散は効きにくい。
電池評価の内製化と技術の変化
電池メーカーや自動車メーカーが試験機器を自作したり、試験を請け負う会社に集約したりすれば、買い手の数が減る。全固体電池など電池の仕組みが変われば、測定の仕様も変わり、積んだ標準機の地位がずれる。
基板検査装置の納期と波
自動試験装置は 1 台が大きく、納期のずれで売上が期をまたぐ。2026 年は受注が前年の 2 倍を超えたのに、売上は減った。データセンター向けの特需が続くか、一巡するかを見極める必要がある。
為替と海外比率
海外売上は 63% を超え、中期経営計画は 70% 以上を目指す。円高に振れれば、売上と利益が円ベースで目減りする。この分析はドル円 150 円で固定したので、為替の振れは筋書きに入っていない。
今後の分かれ目
- 受注が売上を上回る状態が通期で続き、受注残が積み上がったら
- 山ではなく水準が上がった可能性が高まる。強気の筋書きの確率を少し上げてよい。
- 電池・蓄電の設備投資が減速し、電池試験機の受注が前年を割ったら
- 山を越えた合図とみる。営業利益率が 15% 台へ戻る、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 営業利益率が 3 年続けて 20% を超えたら
- 利益率の平均が上がった可能性がある。中立の利益率 18% を見直し、強気寄りに修正する。
- 台湾・中国勢が電池試験機や電力計で日置電機の顧客を奪い始めたら
- 価格を決める力が削られ始めたとみる。電子測定器の価格を 1.3 倍から下げ、悲観の確率を上げる。
- 自社株買いや増配が、純利益の 6 割を超える水準で定着したら
- 余った現金の戻り方を 0.5 から上げる材料になる。事業の価値は変わらないが、現金の分の価値が増える。
- 大型の買収を発表したら
- 本業と離れた買収なら、資本配分の評価を下げ、悲観の確率を少し上げる。
見ておくもの
- 電子測定器・記録装置の受注と売上の伸び(電池・蓄電・データセンター向け)
- 営業利益率の水準(20% 近くが続くか、17〜18% に戻るか)
- 自動試験装置の受注と売上のずれ(データセンター向けの特需が続くか)
- 台湾・中国の測定器メーカーの価格と、日置電機の海外売上比率(70% 以上の目標)
- 配当と自社株買いの厚み、純現金(167 億円)の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、今の株価・過去の PER・同業の倍率から置かず、事業の稼ぐ力と資本コストから式で出した。k は基本 7.5% に、循環 +0.5% と値決め力 −0.25% を入れた 7.75%。中立の倍率は、g 4%、新しく投じる資金の稼ぎは k を超える分の半分が残るとした正当化 PER の約 8 割に置いた。余った現金 105 億円は事業と分け、戻り方 0.5 を掛けて足した。悪い筋書きは稼ぐ力から出した。今の株価が倍でも半分でも、この数字は動かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→21.14 倍・やや楽観 PER 13.8→20.79 倍・中立 PER 12.6→20.27 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。