結論
多摩川ホールディングスは、高周波の電子部品と通信機器を作る小さなメーカーだ。もう一つの柱は、小形風力や太陽光の発電所を持って電気を売る再生可能エネルギー事業である。売上は約 56 億円で、9 割が電子・通信用機器だ。
筆者の結論は、今の値段は割高、というものだ。社会インフラ向けの主力品が量産に入り、2026 年 10 月期は大幅な増益になる。ただし純利益 18 億円の大半は、保有する海外株の評価益という一回限りの上積みだ。
強みは、官公庁や通信インフラ向けのカスタム品を手がけられる技術にある。弱みは、日本電気と東芝の 2 社に売上が集まる点と、赤字が長かった歴史だ。2023 年 3 月期から二期続けて赤字で、有利子負債も重い。
売上の規模が小さく、少しの受注で利益が大きく動く会社でもある。
10 年で見る中立は、防衛・通信インフラ需要で売上が 1.5 倍ほどに増え、営業利益は 6 億円台になる姿だ。この利益に、資本コストを超える稼ぎ力はまだ見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「注文次第で利益が大きく振れる小さな部品メーカー」だ。
事業の核はカスタムの高周波技術で、顧客の囲い込みは一定程度ある。ただ、売上の 4 割が 2 社に集まる構造は、価格の主導権を顧客に渡す。筆者はここを最も気にしている。
2026 年 10 月期の純利益 18 億円は、評価益を含む。評価益は、株式市場の値動きで生まれて消える利益だ。筆者は、これを事業の稼ぐ力に数えない。
資本の使い方は、風力の建設で借入を増やし、蓄電所へ広げる動きだ。収益の安定には役立つが、固定価格で単価が伸びず、自己資本利益率は低いままになりやすい。
払う値段に安全域があるかを問えば、10 年の中立の価値は今の時価総額の 3〜4 割にとどまる。足元の期待が、10 年かけて実現する以上の利益を織り込んでいるとみる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。一つは電子・通信用機器で、売上の 9 割を占める。アッテネータ、スプリッタ、フィルタなどの高周波部品と、光伝送装置や周波数変換器のような機器を、顧客の注文に合わせて作る。納め先は官公庁、公共インフラ、移動通信の基地局、工場の計測機器の四つの分野だ。
主な顧客は日本電気と東芝で、前期は合わせて売上の約 4 割を占めた。大口の受注が入る年に伸び、抜ける年に落ちる。
もう一つは再生可能エネルギーで、売上の 1 割だ。小形風力発電所 30 基が 2024 年 2 月に全基つながり、太陽光とあわせて電気を売る。国の固定価格で買い取られるため、売電の単価は物価で上がらない。2025 年 10 月には系統用蓄電所の用地を取得し、2026 年 8 月に福岡県みやま市で出力約 2 メガワットの蓄電所が動き出した。インドネシアでは小水力発電所の計画も進む。
決算期を 3 月から 10 月へ変えた経緯があり、2024 年 10 月期は 7 か月の変則期だった。従業員は連結で数百人規模で、製造は国内の拠点が中心だ。
優良さと弱いところ
優良さは、技術と顧客に支えられた小さな特色にとどまる。
強みは、ミリ波など高い周波数の部品をカスタムで作る技術だ。社会インフラ向けは認定や実績が要り、顧客は簡単に乗り換えにくい。2026 年 10 月期は主力品が量産に入り、通信インフラの大口受注も重なった。
弱みは三つある。一つは顧客の偏りで、上位 2 社で売上の約 4 割を占める。二つは利益の振れで、2023 年 3 月期は営業利益率がマイナス 13%、2020 年 3 月期は 13% だった。三つは資本の効率で、自己資本利益率は 10 年の中央値で 1.6% にとどまる。
再生可能エネルギーは安定収益だが、固定価格で単価は伸びず、設備の償却と借入の利息が残る。蓄電所は新しい収益源の候補だが、規模はまだ小さい。
経営は、足元の好調に合わせて配当を前期の倍へ引き上げた。ただ長い赤字を経ており、還元を続ける力は証明の途中だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
高周波部品の需要は、通信の高速化と防衛・防災の投資に支えられている。
日本では防衛費の増額が続き、レーダー、通信、電子戦の装置に使う高周波部品の需要が増える。5G の基地局整備、衛星通信、鉄道や防災の無線にも使われる。ただ、日本の通信インフラの投資は波がある。基地局の整備が一巡すると、大口の注文が急に細る。
競合は、大手の電機メーカーが内製する部分と、アンリツ、村田製作所、専業の中堅メーカーだ。多摩川は小口のカスタムに強みを置き、大手がやらない領域を取る。ただ、規模が小さいため、大手が価格を下げて攻めてきた時の防御力は弱い。
再生可能エネルギーでは、固定価格の買い取りが終われば市場価格での売電になり、収入が不安定になる。一方で蓄電所は、再エネの出力を調整する需要を取り込める。ただ大手の電力会社や商社の参入も増え、競争は厳しい。官公庁向けは予算の年度ごとに発注の時期がずれやすく、売上が期をまたいで動く。
10 年を通じて、数量は防衛と通信の需要で緩やかに伸びる。価格は物価に連れて上がるが、大手の顧客が値下げを求める力は強い。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、好調を配当に回しつつ、蓄電所に投資することだ。
2026 年 10 月期の配当は前期の倍に引き上げた。純利益が大きく見えるのは評価益のためで、配当はそれに比べて控えめだ。自社株買いの実績は目立たない。
海外現地法人が、シンガポール上場のアドバリュー・テクノロジーズ株を持つ。2026 年 10 月期から国際会計基準へ移り、この株の評価益を金融収益に入れるようになった。評価益は現金ではなく、株価が下がれば逆に損が出る。
借入は、小形風力の建設で組んだシンジケートローンが中心で、純有利子負債は 24 億円ある。蓄電所への投資で増える可能性が高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛と通信インフラの投資が 10 年続けば、多摩川は想像以上に化ける。2026 年 10 月期は売上が 24% 増え、主力品が量産に入った。社会インフラ向けの量産は、数年にわたって続くのが普通だ。営業利益率は 10% を超え、2027 年 10 月期は営業利益 10 億円の予想もある。小さな会社は、利益が出始めると固定費の負担が薄まり、利益率が急に上がる。
社会インフラ向けは認定と実績が要る。一度採用されると次の世代の機種にも使われ、数量と単価が積み上がる。ミリ波は 6G や衛星通信でも使われ、引き合いが増える。
再生可能エネルギーは固定価格で安定収益を生み、蓄電所は新しい収益の柱になる。評価益で資本も増えた。借入を返す余力が生まれ、金利が上がる局面にも耐えやすくなる。
小さな会社なので、大手の防衛関連企業から部品の調達先として資本提携を受ける可能性もある。10 年後に売上が 2 倍を超え、営業利益が 17 億円に届けば、今の値段にも見合う。
慎重な見方
利益の質は低く、赤字の歴史は長い。2023 年 3 月期と 2024 年 3 月期は営業赤字で、10 年の売上は年率マイナス 3% で縮んできた。2026 年 10 月期の純利益 18 億円は、シンガポール株の評価益が大半だ。株価が下がれば逆に損に変わる。
日本電気と東芝で売上の約 4 割を占める。大手が内製に戻したり、調達先を変えたりすれば、売上は急に細る。防衛や通信の大口は一度きりの案件も多い。
再生可能エネルギーは固定価格で、物価に連れて上がらない。償却と借入利息が重く、利益は小さい。蓄電所への投資で借入はさらに増える。
自己資本利益率の 10 年の中央値は 1.6% で、資本コストを大きく下回る。簿価は価値の床にならない。決算期の変更や過去の希薄化も、株主への配慮が弱かった証拠と読める。株価が評価益と期待で上がった分は、事業の稼ぐ力では説明できない。売上の規模が小さく、一つの案件の失注で利益が消える点も軽く見られない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、量産に入った主力品と防衛需要に支えられ、足元の数字が裏づける。慎重な言い分は、顧客の偏り、赤字の歴史、評価益という一回限りの利益に支えられる。
どちらも一理あるが、利益が資本コストを超えて続く証拠はまだ 1〜2 期分しかない。中立は営業利益 6 億円台にとどまり、悲観の確率を厚めに置いた。
結論は、今の値段は 10 年の稼ぐ力に比べて高い、というものだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 587 円52 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 91 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 301 円27 億円、今との差 −73.8%、 期待の年率 −5.1%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,617 円143 億円 | 215 円19 億円 | +59.5% | +4.8% | 128 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 856 円76 億円 | 147 円13 億円 | −12.6% | −1.3% | 201 円18 億円 |
| 中立 | 37% | 588 円52 億円 | 102 円9 億円 | −40.0% | −5.0% | 255 円23 億円 |
| やや悲観 | 23% | 249 円22 億円 | 34 円3 億円 | −75.4% | −13.1% | 65 円6 億円 |
| 悲観 | 13% | 217 円19 億円 | 11 円1 億円 | −80.1% | −14.9% | 30 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 587 円52 億円 | 91 円8 億円 | −40.9% | −5.1% | 679 円60 億円 |
今の株価時価総額 1,148 円102 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 防衛と通信の投資が続き、売上は 2 倍を超える 利益 12 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,617 円143 億円
防衛と通信インフラの投資が長く続き、主力品は次の世代の機種にも採用される。出荷規模は実質で 2.3 倍になり、価格は物価に連れて 1.34 倍に上がる。
営業利益率は 14% まで上がる。2020 年 3 月期の 12.7% を超えるのは、量産の定着で固定費が薄まるためだ。蓄電所も加わり、再エネ事業は規模が 1.8 倍になる。
売上は 165 億円、営業利益は 17 億円、純利益は 11.7 億円。配当は純利益の 3 割で、借入も返せる。
大手の防衛関連企業との提携が進めば、さらに上振れる余地がある。それでも固定価格の売電は物価に連れて上がらず、再エネの利益は小さいままだ。
- 電子・通信用機器:数量 116(出荷規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.34(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 155 億円・営業利益 22 億円。規模 2.3 倍、価格 1.34 倍
- 再生可能エネルギー:数量 10.1(売電・蓄電の規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(固定価格の売電は今 = 1.0 のまま))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。規模 1.8 倍、価格 1.0 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.68 倍、時価総額 143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:主力品の量産が定着し、防衛予算の増額が 10 年続く姿。顧客の偏りと赤字の歴史があるので 1 割に届かない 7% に置いた。
やや楽観 20% 売上は 1.6 倍、営業利益率は 12% 台 利益 6 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 856 円76 億円
防衛と通信の需要は続き、出荷規模は実質で 1.6 倍に増える。価格は 1.34 倍。
営業利益率は 12.5% で、2020 年 3 月期の山にほぼ並ぶ。主力品の量産が定着する裏づけとして、2026 年 10 月期の営業利益率が 10% を超える見通しがある。
売上は 123 億円、営業利益は 10 億円、純利益は 6.4 億円。配当は 3 割を保つ。
蓄電所は安定した収益を足すが、規模は小さい。大口顧客の発注の波が、年ごとの利益を揺らす。固定価格の売電は物価に連れて上がらず、再エネの利益は横ばいが続く。
- 電子・通信用機器:数量 80.5(出荷規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.34(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 108 億円・営業利益 14 億円。規模 1.6 倍、価格 1.34 倍
- 再生可能エネルギー:数量 8.4(売電・蓄電の規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(固定価格の売電は今 = 1.0 のまま))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。規模 1.5 倍、価格 1.0 倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 10.81 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量産と受注は続くが、大口案件の波があり、案件ごとに利益率が揺れる姿。
中立 37% 中立:売上は 1.5 倍、営業利益は 6 億円台 利益 4 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 588 円52 億円
防衛と通信の需要で、出荷規模は実質で 1.3 倍になる。価格は 1.34 倍に上がるが、大手の顧客が値下げを求め、物価をわずかに下回る 1.30 倍にとどまる。
営業利益率は 12% で、過去 12 年の山(2020 年 3 月期の 12.7%)の手前に置く。主力品の量産が根拠だ。
本社費は物価で 1.34 倍に増え、5 億円ほどかかる。再エネは固定価格で単価が動かず、風力の償却は取得時の値段のまま続く。蓄電所の新しい償却が足される。
売上は 87 億円、営業利益は 6.2 億円、純利益は 4.2 億円。配当は 3 割で、借入は少しずつ返す。
- 電子・通信用機器:数量 65.4(出荷規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.30(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 85 億円・営業利益 10 億円。規模 1.3 倍、価格 1.30 倍
- 再生可能エネルギー:数量 7.8(売電・蓄電の規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(固定価格の売電は今 = 1.0 のまま))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。規模 1.4 倍、価格 1.0 倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 10.81 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量産は続くが、大口の波と顧客の偏りで利益率が山の水準に届かない形。最も起こりやすい形として最も厚く置いた。
やや悲観 23% 大口顧客の発注が減り、利益率は 6% に下がる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 249 円22 億円
2026 年 10 月期の大口が一巡し、出荷規模は実質で 1.0 倍にとどまる。大手の顧客が値下げを求め、価格は 1.20 倍に抑えられる。
営業利益率は 6% に落ちる。再エネは固定価格で、償却と借入利息が重く、赤字に近づく。
売上は 66 億円、営業利益は 0.4 億円、純利益は赤字に近い 0.1 億円。評価益を含む資本は残るが、稼ぎは薄い。
配当は下限の 1 割ほどに縮み、借入の返済は進まない。拠点を絞り、人員を減らす局面に入る。再エネの売電だけが細い収入として残り、蓄電所の稼働は計画より遅れる。蓄電所への投資は凍結され、新しい収益源は育たない。
- 電子・通信用機器:数量 50.3(出荷規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.20(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。規模 1.0 倍、価格 1.20 倍
- 再生可能エネルギー:数量 5.6(売電・蓄電の規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(固定価格の売電は今 = 1.0 のまま))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。規模 1.0 倍、価格 1.0 倍
倍率:稼ぐ力(0.1 億円 ÷ k)は小さく、純現金は無いため、売れる資産の税後に近い値を今の自己資本 55 億円に掛けた(PBR 0.4 倍)。ROE が k に届かず、簿価は床にならない。
確率:防衛・通信の大口が一巡し、顧客の内製化や値下げ圧力で利益が削られる姿。
悲観 13% 主力顧客を失い、赤字に戻る 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 217 円19 億円
日本電気や東芝が調達先を変え、主力品の発注が止まる。大手の防衛関連が自社で部品を作る流れも強まる。出荷規模は実質で 0.6 倍まで縮み、価格は 1.0 倍と値下げで物価に届かない。
営業利益は赤字になり、本社費だけが残る。再エネは固定価格で細い黒字を保つが、蓄電所の借入が重い。
純利益は赤字になり、保有株の評価益も消える。配当は止まり、借入の返済のために発電所の売却が進む。
株主の取り分は、売れる資産と借入の差に近づく。同業への売却や、資本提携の話も出る。再建には、風力と太陽光の発電所を手放して借入を返す選択が現実味を帯びる。
- 電子・通信用機器:数量 30.2(出荷規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。規模 0.6 倍、価格 1.0 倍
- 再生可能エネルギー:数量 5.0(売電・蓄電の規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(固定価格の売電は今 = 1.0 のまま))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。規模 0.9 倍、価格 1.0 倍
倍率:床の資産で値を付けた。赤字で稼ぐ力は測れない。売れる資産の税後 19 億円を、減損後の自己資本 48 億円に掛けた(PBR 0.4 倍)。
確率:日本電気・東芝向けの大口を失う、または内製に戻される構造的な負け筋。長い赤字の歴史と顧客の偏りから 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子・通信用機器
高周波部品(アッテネータ・フィルタ等)と光伝送・周波数変換などの機器を、官公庁・通信・計測向けにカスタムで作る。売上の約 9 割。
| 数量出荷規模(今の値段で換算した売上・億円) | 価格値段の指数(今 = 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 50.3 | 1.00 | 50 | 6 |
| 10 年後 中立 | 65.4 | 1.30 | 85 | 10 |
取り方:売上 50.3 億円・セグメント利益 5.7 億円は有価証券報告書の開示。個別の数量は開示がなく、今の売上を実質の規模とし、物価を価格の指数とした推定。
再生可能エネルギー
小形風力 30 基と太陽光の売電、系統用蓄電所。売上の約 1 割。
| 数量売電・蓄電の規模(今の値段で換算した売上・億円) | 価格値段の指数(固定価格の売電は今 = 1.0 のまま) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 5.6 | 1.00 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 1.00 | 8 | 1 |
取り方:売上 5.6 億円・セグメント利益 0.75 億円は有価証券報告書の開示。売電は固定価格で、規模は売上からの推定。
リスクと懸念
顧客の偏り
日本電気と東芝で売上の約 4 割を占める。調達先の変更や内製化で、主力品の売上が急に細る。前期は東芝の比率が 25% から 15% に下がり、日本電気が 5% から 24% に上がるなど、構成が激しく動いた。
評価益の一回限り
2026 年 10 月期の純利益 18 億円の大半は、シンガポール株の評価益だ。株価が下がれば損に変わり、純利益と自己資本が減る。事業の稼ぐ力とは別に見る必要がある。
大口案件の波
社会インフラ向けや通信基地局向けは、整備が一巡すると注文が急に細る。2023 年 3 月期の営業利益率はマイナス 13% で、山と谷の差が大きい。
借入と蓄電所の投資
純有利子負債は 24 億円で、小形風力の借入が中心。蓄電所の投資で増える可能性があり、借り換えで金利は上がる。電力市場の価格が下がれば、蓄電所の収益が計画を割る。
固定価格の売電と償却
風力・太陽光は固定価格で、売電の単価は物価に連れて上がらない。設備の償却は取得時の値段のまま続く一方、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
長い赤字の歴史
決算期は 3 月から 10 月へ変わり、過去 20 年に赤字の期が 9 回あった。希薄化の期もあり、株主への還元を続ける実力は証明の途中だ。
今後の分かれ目
- 日本電気や東芝向けの発注が大きく減る
- 悲観の確率を上げる。売上の 4 割が動くので、利益は赤字に戻る。
- 営業利益率が 10% 超を 3 期以上続ける
- 量産の定着と確かめられる。楽観側の確率を上げる。
- シンガポール株の株価が大きく下がる
- 自己資本が減り、評価損が純利益に出る。事業の価値には影響しない。
- 防衛関連の大手が出資や提携を発表する
- 提示される価格は本質価値と別の話になる。10 年の中立の価値との差で判断する。
- 蓄電所が計画どおりに稼働して収益を出す
- 再エネの利益が安定し、固定価格の穴を埋める。倍率を少し上げる。
見ておくもの
- 電子・通信用機器の売上と営業利益率
- 日本電気・東芝向けの売上比率
- シンガポール株の時価と評価損益
- 蓄電所の稼働状況と借入の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k 9.25%(quality +1.5)、g 4%。中立の ROE は 4.8% で k 以下なので PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。顧客が偏り案件で振れる利益なので 9.0 倍とした。今の株価や PER は見ていない。2026 年 10 月期の純利益は評価益を含むため、10 年の起点にしていない。店舗の賃借は少なく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.68 倍・やや楽観 PER 9.5→10.81 倍・中立 PER 9→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。