結論
遠藤照明は、店舗・オフィス・ホテル向けの施設照明を設計から作るメーカーである。国内で売上の半分を稼ぎ、英国とアジアにも拠点を持つ。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に比べて低く、やや割安というものだ。ただし安全域は厚くない。
稼ぐ力は上がった。営業利益率は 5 年で 5% 台から 10% 台に倍増した。調光調色、つまり明るさと色味を無線で自在に変える制御システムが、高い単価と利益率の源になっている。
この会社は財務も堅い。自己資本比率は 65% で、現預金は借金を大きく上回る。2025 年に転換社債 50 億円を発行し、投資と還元の原資を厚くした。ただ、転換社債は現金決済の条項付きで、既存株主の取り分は小さく目減りする。
弱みは、利益が国内の建築・店舗の投資に左右されることと、英国の低成長だ。営業利益率は過去の最高水準に並んでおり、さらに上げる余地は限られる。ROE は 8〜9% で、積み上がる自己資本が足を引く。
10 年先の価値は今の時価総額を上回るが、大きな差ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益率の高い、よい中堅メーカーが、資本の使い方を試される局面にいる」と見える。事業は堅く、財務は厚い。
持ち主の手元に残る利益で考えると、現預金の厚さは一長一短である。純現金は 84 億円と時価総額の 2 割あるが、中計で投資・還元の使い道がほぼ決まっている。投資が資本コストを上回る稼ぎを生むなら価値は増え、生まなければ現金は目減りする。ROE が 8% 台にとどまるのは、その成否がまだ見えていない証拠だ。
堀は中程度だ。意匠性と制御システムの囲い込みは評価できる。ただ、LED は汎用品に近づき、10 年先も今の利益率が続くと言い切る自信は半分ほどである。
安全域は薄い。営業利益率は過去の最高水準で、10 年の中立の価値も今の時価総額を大きくは超えない。転換社債の希薄化と、価格競争の可能性が重しになる。
筆者は、強気の見方が当たれば大きく報われるが、外れても大きくは崩れない銘柄だと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、自社で設計・開発した施設用の LED 照明を、建築主や店舗、電設資材の卸に売る販売益である。2026 年 3 月期の売上は 555 億円、営業利益は 57 億円、営業利益率は 10.4%。従業員は連結で約 1,650 人。
照明器具関連事業が売上の 78% で、利益のほとんどを稼ぐ。国内の売上は 234 億円で、商業・流通の店舗向けが中心。ほかにオフィス、ホテルなどの市場がある。海外は 197 億円で、うち英国・欧州が 166 億円、アジアが 31 億円だ。
国内の主力は、無線で照明を個別に調光調色できる SmartLEDZ である。累計の採用は 4.5 万件を超え、国内既製品の売上の 61% を占める。この製品を使った案件は、単価が全体の平均より 3 割高い。
環境関連事業は売上の 20% を占める。大型スーパーやドラッグストアに LED 照明を貸すレンタルが柱で、契約の残高は 150 億円まで積み上がった。営業利益率は 8〜9% と安定している。
インテリア家具事業は売上の 2% で、利益はほぼゼロだ。
中国の昆山に自社工場を持ち、基板実装と電源も内製を進める。為替は 1 ドル 150 円で置くので、会社の想定する円安は織り込まない。
優良さと弱いところ
堀は中程度で、源泉は 3 つある。1 つは設計力と製品の幅だ。店舗や高級建築の細かい要求に応える意匠性の高い器具を、多品種で出す。2 つ目は制御システムの囲い込みで、SmartLEDZ を入れた現場は、追加や更新でも同じ系統を使いやすい。3 つ目は、全国の電設・設計とのつながりである。
強みは利益率の高さだ。営業利益率は 5 年前の 5% 台から 10% 台へ上がった。原価の改善と、売れ残り品の積極販売で損失を減らしたことが効いた。2027 年 3 月期は平均 10% の定価改定を予定しており、値上げを通せるかが試される。
弱みは、LED が汎用品に近づいていることだ。パナソニックや大光電機など同業が多く、中国の低価格品も入る。さらに、売上の約 35% を占める海外のうち英国は景気が悪く、為替の換算でも減収になった。
財務は堅い。自己資本比率は 65%、現預金は 240 億円。転換社債を除いても現金が借金を上回る。
経営の課題は、この現金の使い方だ。中計は成長投資・追加投資・人的資本・株主還元を合わせて大きく計画するが、買収の実績はこれから問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は、省エネと店舗・オフィスの改装である。電気代と建築資材の高騰を背景に、高効率の LED への切り替えや、内装のイメージを変えるリニューアルの提案が通りやすい。人手不足で、遠隔で一括操作できる照明の価値も高まっている。
向かい風は、LED の普及がほぼ一巡したことだ。国内の新設・更新の数量は実質で横ばい圏にあり、需要を押し上げるのは単価の高い調光調色への入れ替えに限られる。住宅の減少で国内の建築量は人口減とともに細る。
構造の変化は 2 つある。1 つ目は、照明が制御システムと一体になることだ。無線制御や建物のデータと結びつけば、器具だけで売る会社は取り分を削られる。2 つ目は、中国メーカーの台頭だ。汎用の LED 器具は価格競争になり、差別化の効くプロ向けに事業を絞る会社が残る。
競合は、国内はパナソニックや大光電機、オーデリック、コイズミ照明などで、施設向けに強い会社が多い。海外では英国の電材卸ルートを押さえることが勝負になる。
景気の位置は、国内の設備投資が堅調な局面にある。大きな不況が来れば、新設の延期で器具の数量が落ちる。
資本政策と M&A
資本政策は、投資を厚くしつつ還元も増やす形だ。配当性向 30% を目安とし、2026 年 3 月期は年間配当を 5 期連続で増やした。自社株買いは直近でほぼ無いが、中計の資金配分では株主還元に約 40 億円を充てる。
2025 年 10 月にアドバンテッジパートナーズと事業提携し、11 月に転換社債 50 億円を発行した。利率は 0%、満期は 5 年、転換価額は今の株価より 1 割ほど低い水準だ。現金決済の条項により、転換のたびに額面は現金で返し、超過分だけ株で渡す。希薄化は普通の転換社債の半分以下にとどまる。
資金配分は、成長投資が約 105 億円、追加投資が約 100 億円、人的資本が約 20 億円。中国・昆山の第 3 工場と英国の第 2 倉庫棟、DX、研究開発、M&A 検討を含む。
大株主は、AAGS Investment が 13%(大量保有報告書。転換社債が全額株になった場合の割合に近い)、三井住友 DS アセットマネジメントが 6% だ。TOB で買われる側の可能性は、時価総額が 370 億円と小さく、財務が厚いため、低くはない。
10 年の還元は、配当性向 30% に追加の自社株買いを足し、純利益の 5 割ほどで置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
調光調色は、照明の価値を器具から体験に変える流れの先頭にある。オフィスで光の色味が集中力や睡眠に与える効果が認められ、ホテルや医療・福祉でも導入が広がる。SmartLEDZ は累計 4.5 万件を超え、先行者の強みがある。案件単価が全体より 3 割高いので、利益率が上がる。
定価改定は 10% を計画している。値上げが通るのは、ブランドと機能への信頼の証拠だ。2026 年 3 月期は営業利益が計画を 8% 上回り、期初計画を超える実績が続いている。
海外の取り分も伸びる余地がある。英国は卸売りとの物件ビジネスに参入し、新倉庫でデリバリーを強化した。インドでは体験型ショールームが 9 か所に増えた。昆山の第 3 工場が動けば、内製化で原価が下がる。
資本の面でも、アドバンテッジパートナーズが入り、経営の高度化が進む。現金 240 億円を成長と還元に回せば、ROE は 10% に届く。会社が長期に掲げる営業利益 120 億円は、決して遠くない。
慎重な見方
今の高い利益率は、ほぼ天井にある。営業利益率は過去 10 年で最高の 10% 台に乗り、これ以上の上積みは難しい。原価率の改善は一度きりの効果で、2027 年 3 月期は為替が円安に振れる前提を置いても営業利益率が 0.3 ポイント下がる。
LED は汎用品化が進む。調光調色の無線制御も、大手電機や中国メーカーが追いつけば、案件単価の優位は消える。定価 10% の改定は、実際に通るかどうかが不透明で、通らなければ数量を失う。
英国と欧州は、売上の約 3 割を占めるのに低迷が続く。現地通貨の売上は、円換算で減収になった。
現金の使い方にも不安が残る。成長投資・追加投資の計 200 億円超を、経験の浅い M&A に回すリスクがある。転換社債は現金決済でも、株価が上がれば株を渡す。5 年の転換社債は、返済の期限を持つ負債でもある。
ROE は過去 10 年の中央値で 9%、直近の 9.2% も営業利益率の上昇に助けられたにすぎない。自己資本が積み上がれば、ROE は 8% を割りかねない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、調光調色の先行者の強みと、財務の余力を正しく捉えている。慎重な見方は、営業利益率が天井にあることと、汎用品化の流れを冷静に見ている。
勝つのは慎重な見方で、差はわずかである。事業は強いが、10 年の中立は利益率が今より下がると見て、確率は中立を中心に置いた。悲観の厚みは 12%、やや悲観は 24% とした。10 年は、中国勢との価格競争と英国の低迷が重なる構造的な負けを意識して、悲観側をやや厚めにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,646 円686 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,641 円242 億円)。 今の値に割り戻すと 3,332 円492 億円、今との差 +34.4%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,037 円1,187 億円 | 2,209 円326 億円 | +313.3% | +15.2% | 820 円121 億円 |
| やや楽観 | 21% | 6,695 円989 億円 | 1,932 円285 億円 | +248.0% | +13.3% | 1,812 円268 億円 |
| 中立 | 35% | 5,385 円796 億円 | 1,767 円261 億円 | +188.5% | +11.2% | 2,503 円370 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,453 円362 億円 | 1,375 円203 億円 | +54.4% | +4.4% | 919 円136 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,031 円152 億円 | 916 円135 億円 | −21.4% | −2.4% | 234 円35 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,646 円686 億円 | 1,641 円242 億円 | +153.6% | +9.8% | 6,287 円929 億円 |
今の株価時価総額 2,479 円366 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 調光調色が広がり、利益率が 11% 台に 利益 85 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 8,037 円1,187 億円
10 年後の遠藤照明は、調光調色の無線制御で世界の高級施設に入り込んだ会社になっている。SmartLEDZ は国内のオフィスとホテルで標準の一つになり、定価改定も受け入れられる。英国では電材卸との物件ビジネスが当たり、DIY の 4Lite がシェアを広げ、インドと東南アジアのショールームが売上に結びつく。環境関連事業は店舗向けレンタルのストックが積み上がる。営業利益率は 11% 台に上がり、営業利益は 115 億円ほどと今の 2 倍になる。M&A は施工と制御ソフトに絞って成功する。ROE は 10% を超え、中計が掲げる長期の姿に近づく。
- 照明器具関連事業:数量 560(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 751 億円・営業利益 113 億円。取扱高の実質 560 億円、営業利益率 15.0%(施設照明(国内・英国・アジア))
- 環境関連事業:数量 168(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 225 億円・営業利益 21 億円。取扱高の実質 168 億円、営業利益率 9.5%(店舗向けレンタルなど)
- インテリア家具事業:数量 14.4(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。取扱高の実質 14 億円、営業利益率 4.0%(家具)
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.15 倍、時価総額 1,288 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:調光調色が標準になり、定価改定も通り、英国とアジアで取り分が増える強気の道。ただ建築・店舗の投資は景気で動き、価格競争もあるので確率は 1 割に届かない。
やや楽観 21% 国内の高付加価値化と店舗レンタルが伸びる 利益 74 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,695 円989 億円
国内の高付加価値化が計画に近い形で進む筋書きだ。SmartLEDZ の構成比は 7 割に達し、案件単価が全体より 3 割高い効果が利益率を支える。英国は卸との協業で緩やかにシェアを取る。環境関連事業は店舗のレンタルが毎年伸びる。営業利益は 100 億円ほどで、利益率は 11% 前後。厚い自己資本の一部が自社株買いに回り、ROE は 9% 台になる。大きな成功ではないが、会社の計画を 10 年かけて少し上回る道である。転換社債は、株価が上がるので超過分の株を渡すが、希薄化は小さく抑えられる。現金は計画どおり成長投資と還元に回る。
- 照明器具関連事業:数量 517(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 693 億円・営業利益 100 億円。取扱高の実質 517 億円、営業利益率 14.4%(施設照明(国内・英国・アジア))
- 環境関連事業:数量 151(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 203 億円・営業利益 18 億円。取扱高の実質 151 億円、営業利益率 9.0%(店舗向けレンタルなど)
- インテリア家具事業:数量 13.2(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。取扱高の実質 13 億円、営業利益率 3.0%(家具)
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.28 倍、時価総額 1,057 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の高付加価値化が計画に近い形で進み、店舗レンタルも伸びる。中計の水準を 10 年かけて超える道として 2 割強を置く。
中立 35% 利益は物価並みに伸び、ROE は 8% 台 利益 62 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,385 円796 億円
手堅く伸びる中立の道である。国内は調光調色の構成比が上がり、数量は 1 割ほど増える。主力の店舗向けは出店の勢いが鈍り、改装需要が中心になる。価格は物価並みに上がり、営業利益率は今より少し低い 10% 前後に落ち着く。英国は低成長で、為替の換算を除けば伸びは小さい。環境関連事業のレンタル残高は積み上がる。人件費の上昇は本社費に響き、全社の営業利益は 85 億円ほど。還元は配当性向 30% に追加の自社株買いを足して純利益の 5 割ほど。自己資本が厚いまま残り、ROE は 8% 前後にとどまる。堅実だが、驚きはない。値上げは通るが、競合も追随するので、利益率を上げ続けるのは難しい。
- 照明器具関連事業:数量 474(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 635 億円・営業利益 87 億円。取扱高の実質 474 億円、営業利益率 13.7%(施設照明(国内・英国・アジア))
- 環境関連事業:数量 140(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 188 億円・営業利益 16 億円。取扱高の実質 140 億円、営業利益率 8.5%(店舗向けレンタルなど)
- インテリア家具事業:数量 12.0(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。取扱高の実質 12 億円、営業利益率 2.5%(家具)
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.26 倍、時価総額 822 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は調光調色で単価が上がり、数量は 1 割増にとどまる。英国は低成長。最も起こりやすい道として 35% を置く。
やや悲観 24% LED の値下がりと英国の低迷で利益が止まる 利益 43 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,453 円362 億円
LED が汎用品に近づき、国内の定価改定が続かなくなる。調光調色の差別化が薄れ、案件単価の優位が縮む。英国は低迷が長引き、電材卸の統合でチャネルの力が弱まる。営業利益率は 9% 台に下がり、営業利益は 60 億円と今の水準を少し上回るだけだ。自己資本は積み上がり、ROE は 6% ほどで資本コストを下回る。会社は新工場と倉庫の投資を回収できず、減価償却だけが重くなる。転換社債は株価が転換価額に届かず、満期に現金で返す。現金は減り、追加の投資余力も細る。市場は、利益率が頭打ちの普通のメーカーとして値を付ける。
- 照明器具関連事業:数量 422(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 566 億円・営業利益 68 億円。取扱高の実質 422 億円、営業利益率 12.0%(施設照明(国内・英国・アジア))
- 環境関連事業:数量 112(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 150 億円・営業利益 11 億円。取扱高の実質 112 億円、営業利益率 7.5%(店舗向けレンタルなど)
- インテリア家具事業:数量 10.8(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。取扱高の実質 11 億円、営業利益率 1.0%(家具)
倍率:事業の純利益 約 44 億円・事業 ROE 約 6.0% は k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=12.1 倍。新しく投じる資本の稼ぎが資本コスト未満になる筋書きのため、上限の約 6.6 割の 8.0 倍に置いた。
確率:LED は汎用品に近づき、国内の定価改定が続かない。英国の低迷が長引く。慎重な見方がやや強いと見て 24% を置く。
悲観 12% 中国勢と価格競争になり、稼ぐ力が細る 利益 25 億円 · PER 6.3 倍 · 株価時価総額 1,031 円152 億円
構造的に負ける筋書きである。中国メーカーの低価格 LED と、パナソニックなど大手電機の施設向け攻勢で、価格が崩れる。調光調色も標準品に追いつかれ、SmartLEDZ の囲い込みは効かなくなる。英国の電材卸が大手に集約され、取引条件が厳しくなる。営業利益率は 6% 台に落ち、本社費を含めた営業利益は 34 億円と、今の 6 割に届かない。昆山の新工場と英国の倉庫に減損が出る。配当性向 30% は守るが、自社株買いは止まる。転換社債は転換されず、満期に現金で返す。経営は不採算の整理と原価の削減に追われ、成長に回せる資金は細る。AP との協業も成果が出ず、現金は積み上がるだけになる。
- 照明器具関連事業:数量 366(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 491 億円・営業利益 47 億円。取扱高の実質 366 億円、営業利益率 9.5%(施設照明(国内・英国・アジア))
- 環境関連事業:数量 101(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 135 億円・営業利益 7 億円。取扱高の実質 101 億円、営業利益率 5.0%(店舗向けレンタルなど)
- インテリア家具事業:数量 9.6(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。取扱高の実質 10 億円、営業利益率 -2.0%(家具)
倍率:事業の純利益 約 24 億円・事業 ROE 約 3.7% は k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=12.1 倍。構造的に負け、利益も薄いので上限の約 5.2 割の 6.3 倍に置いた。
確率:中国メーカーの低価格 LED と大手電機の攻勢で価格が崩れ、英国の卸チャネルも失う。10 年は何が起きてもおかしくないので 1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
照明器具関連事業
業務用の施設照明(店舗・オフィス・ホテル)。国内は調光調色の SmartLEDZ、海外は英国の電材卸向けと広域アジア。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 431 | 100.0% | 431 | 62 |
| 10 年後 中立 | 474 | 134.0% | 635 | 87 |
取り方:推定。取扱高 431 億円(実質・セグメント間消去後)。国内 234 億円、英国・欧州 166 億円、アジア 31 億円。開示は金額だけで数量は無いので、国内の LED 切り替えとリニューアルの需要を実質の取扱高で置く。
環境関連事業
店舗向けの LED 照明のレンタル・販売、リモート管理、太陽光。大型スーパーやドラッグストアが主な顧客。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 112 | 100.0% | 112 | 10 |
| 10 年後 中立 | 140 | 134.0% | 188 | 16 |
取り方:推定。取扱高 112 億円(実質)。レンタル契約の期末残高は 150 億円まで積み上がり、ストック収入が増えている。
インテリア家具事業
高級建築向けの家具とアウトドア家具の独占販売。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 100.0% | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 134.0% | 16 | 0 |
取り方:推定。取扱高 12 億円(実質)。小さく、利益はほぼゼロ。
リスクと懸念
LED の汎用品化と価格競争
LED 器具は技術の差が縮み、中国メーカーの低価格品が入る。調光調色の無線制御も、大手電機が追いつけば単価の優位が薄れる。定価の 10% 改定が通らなければ、利益率は上がらない。
英国・欧州の低迷
海外売上の大半は英国で、景気が弱く、為替の換算でも減収になった。電材卸のチャネルが集約されれば、取引条件が厳しくなる。新倉庫への投資が回収できるかは、需要の戻り次第である。
建築・店舗投資の循環
商業・流通の店舗が国内の売上の約 6 割を占める。店舗の出店・改装が減る不況期には、器具の数量が落ちる。ただし環境事業のレンタルのストックが下支えになる。
現金の使い方(投資と M&A)
中計は成長投資・追加投資で 200 億円超を計画する。経験の浅い M&A や工場の過剰投資で資本効率が下がれば、現金は価値を失う。昆山の第 3 工場の稼働と、英国の倉庫が回収の試金石になる。
転換社債の希薄化と返済
転換社債 50 億円は 5 年後に満期を迎える。株価が転換価額を超えれば超過分の株が渡り、既存株主の取り分が減る。下回れば現金で返す。現金決済条項で希薄化は半分以下だが、ゼロではない。
原価と為替
仕入の多くはドル建てで、円安は原価を押し上げる。2026 年 3 月期は為替の原価影響がプラスだったが、2027 年 3 月期の想定レートは、本分析の置き方より 5% ほど円安だ。為替を固定した本分析でも、原材料高は利益率を圧迫する。
今後の分かれ目
- 国内照明の定価改定(平均 10%)を実施しても数量が落ちなかったら
- 値決め力の証拠であり、国内の利益率は上がる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 営業利益率が 9% を割ったら
- 原価改善の効果が一巡し、価格競争が利益を削り始めた証拠である。やや悲観の確率を上げる。
- SmartLEDZ の構成比が 7 割を超え、案件単価の優位が保たれたら
- 制御システムの囲い込みが効いている証拠で、中立から楽観に寄せる材料になる。
- 成長投資で買収した事業の減損が出たら
- 現金の使い方への信頼が揺らぐ。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる材料である。
- アドバンテッジパートナーズなど大株主による TOB・非公開化の提案が出たら
- 一時的に株価が上がる可能性がある。ただし本質価値は提示価格でなく、稼ぐ力で決める。
- 英国の売上が円換算でなく現地通貨で前年を下回り続けたら
- 海外の成長が止まり、10 年の数量を下げる。やや悲観の確率を上げる材料になる。
見ておくもの
- 国内照明の定価改定の通り具合と営業利益率
- SmartLEDZ の構成比と案件単価
- 英国・アジアの現地通貨ベースの売上
- 昆山の第 3 工場の稼働と成長投資の成果
- 転換社債の転換・現金決済の動きと自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE・資本コスト 7.75%・長期の成長率 4.0% から利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g))か、ROE が k 以下なら上限の 1÷k を出し、その 5〜9.3 割に置いた。今の PER や PBR、同業の倍率には寄せていない。同じ領域の会社が無いため、領域のノートは使えず、電気機器の共通前提だけを使った。純現金 84 億円は時価総額の 2 割だが、中計で使い道が決まっているので余剰として分けていない(excess_cash_none_why)。セグメントは開示が金額だけなので「取扱高(実質)× 値段の指数」で置き、売上と数量が同じ値になる注意が出る。セグメント利益の合計と連結営業利益の差 14 億円は本社費と内部利益の消去で、物価で増やして置いた。転換社債の希薄化は holder_share で、株価が転換価額を超える筋書きにだけ掛けた。リース債務は 3 億円と小さく、新リース会計基準(2028/03 期から)は今と同じ形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスク(価格競争・英国の低迷)は筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。