結論
北陸電気工業は、富山に本拠を置く電子部品の中堅メーカーだ。抵抗器、センサ、これらを組み込んだモジュールを作り、売上の 6 割超が自動車向けとみられる。
筆者の結論は、やや割安。理由は、利益が谷にある今の決算に対して、10 年後の稼ぐ力は物価の分だけでも大きく伸びる一方、時価総額は純資産の 7 割に満たないからだ。
2027 年 3 月期の会社予想は、営業利益が 18 億円と前期より 2 割減る。原因は、銀やパラジウムなど貴金属の高騰だ。材料費が先に上がり、顧客への価格転嫁が遅れている。この遅れは永遠には続かない。値上げが通れば、利益は元の水準に戻る。
ただ、強い堀がある会社ではない。村田製作所やデンソーが競合に並び、最大顧客のシャープ系の中国法人は売上の 15% を占める。営業利益率は過去 12 年で 6.5% が最高だ。筆者は中立の利益率を今と同じ 5.4% に置いた。それでも、自己資本利益率が資本コストにわずかに届かず、倍率は 10 倍ほどにとどまる。今の値段が示すのは、ほぼ中立の筋書きから少し悲観を引いた水準である。上ぶれの余地はあるが、大きくはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見たとき、持ちたい会社かと問えば、半分だけ「はい」と答える。
良い点は、車載の部品で食べる事業が分かりやすいこと、財務が堅く倒れにくいこと、配当の方針がはっきりしていることだ。悪い点は、堀が浅いこと、原料の価格を自社で決められないこと、資本効率が資本コストを少し下回ることだ。
稼いだ利益を事業に再投資して、資本コストを超える稼ぎを出せているかが、価値の分かれ目になる。直近の自己資本利益率は 7.7%、中期計画の目標は 10% だ。目標を満たせば価値は大きく増える。満たせなくても、純資産の 7 割という値段には、一定の安全域がある。
筆者が気にするのは、貴金属高を価格に転嫁できるかだ。2027 年 3 月期の決算で営業利益が 18 億円を割り込むなら、見立ては悲観寄りに変わる。逆に、期の後半に利益率が戻れば、楽観の確率を上げる。
何で稼ぐ会社か
北陸電気工業の事業は、ほぼ電子部品の 1 本だ。売上の 97% を電子部品が占める。残りは金型・機械設備などで、利益も小さい。
主力は抵抗器と、センサを含む電子デバイスだ。チップ抵抗器、電流を測る金属板抵抗器、可変抵抗器に加え、圧力・湿度・3 軸加速度のセンサを持つ。3 軸加速度センサは 2004 年に世界で初めて半導体式で商品化した。これらの部品を基板に載せ、混成集積回路やユニットにまとめたモジュールも売る。
出口は自動車が 6 割超とみられる。電子制御ユニット(ECU)、電流検出、バックソナーなどだ。残りが産業機器と民生機器で、シャープ系の中国法人が最大の顧客となる。
拠点は富山のほか、マレーシア、タイ、中国、フィリピンに広がる。地域別の売上は日本が 5 割強、アジアが 4 割強だ。中期経営計画では、ASEAN での生産比率を 30% から 40% に引き上げ、インドに販売拠点を作る。米国向けは売上の 1% ほどで、関税の影響は小さい。
稼ぎ方の特徴は、材料の貴金属を顧客に転嫁する構造にある。銀・パラジウムは価格が先に動き、売値の改定が数か月遅れる。この時間差が、利益の振れを生む。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、中堅の部品屋としては堅実だが、堀は浅い。
強みは 3 つある。第一に、車載の信頼性が求められる分野で長く使われている点だ。ECU 向けの抵抗器やセンサは、認証を通すと数年は替わりにくい。第二に、3 軸加速度センサのように、他社が後から追った製品を持つことだ。第三に、自己資本比率が 56% で、純現金を持つことだ。
弱みも多い。村田製作所や KOA の抵抗器は規模が大きく、三菱電機やデンソーは車載センサで資金力が上だ。単価の交渉力は限られ、営業利益率は 12 年で 6.5% が最高だった。最大顧客のシャープ系の中国法人は売上の 15% を占め、依存の高さが不安だ。
経営は慎重で、配当は純資産配当率 3% 以上と配当性向 35% の両方を目安とする。直近の自己資本利益率は 7.7% で、中期経営計画の 10% には届かない。目標の営業利益 34 億円は、足元の予想 18 億円から遠い。計画の達成実績は乏しい。
筆者は資本コストを 8% と、基本より 1 ポイント高く置いた。景気と貴金属の価格の振れで利益が動く点と、価格を市場に決められる点が理由だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界を動かす力は 3 つある。車の電子化、貴金属の価格、顧客の工場の稼働だ。
需要の側では、車の電動化と運転支援の広がりが追い風になる。車 1 台に載るセンサと電流検出の抵抗器は増え続けている。世界の車載センサ市場は、2030 年にかけて年 6% 前後の名目の伸びが見込まれている。実質では年 3% ほどで、数量が 10 年で 3 割強増える計算だ。北陸電気工業は、そのうち ADAS や電動化向けを狙う。
逆風は貴金属だ。銀とパラジウムは、厚膜の抵抗体や接点に使われる。2026 年は中東情勢もあって高止まりし、材料費が売上の伸び以上に増えた。2026 年 4〜6 月期は、売上が 14% 増えたのに営業利益が 35% 減った。同業も同じ材料を使うが、価格の改定に向けた交渉力は大手のほうが強い。
競合は、チップ抵抗器で村田製作所・KOA・ローム、車載センサで三菱電機・デンソー・パナソニックなどが挙がる。日本の電子部品は、中国の部品メーカーが低価格品から追い上げている。高信頼の車載品に絞るのが、日本勢の生き残り方だ。
10 年の見通しでは、数量は車載が 2 割強増え、産業・民生は横ばいと見る。価格は物価並みに上がり、貴金属高の一部が定着する。
資本政策と M&A
資本政策は安定した配当型だ。配当は純資産配当率 3% 以上と配当性向 35% を目安とし、2026 年 3 月期の性向は 37.5% だった。業績が落ち込む 2027 年 3 月期も、配当は据え置く方針だ。
自社株買いは小さく、2026 年 3 月期は 1 億円ほどにとどまる。純現金は 12 億円で、時価総額の 7% ほどにあたる。事業に必要な運転資金を考えると、余り現金として分ける額はない。
設備投資は 3 年で 58 億円と、年に 20 億円ほどだ。償却は年 19 億円前後と推定するが、開示は取得していない。タイとマレーシアの工場に投資が進む。
買収で成長してきた会社ではない。株主の構成と持ち合いの詳しい状況は確かめられておらず、余り資産としては数えない。小型株で純現金があり、財務が軽いため、事業会社に買われる余地は残る。外部の推計では 10 年以内に約 3 割だが、確かな根拠がなく、筋書きの確率には織り込んでいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車の電動化と運転支援で、1 台あたりに載るセンサと電流検出の抵抗器は増え続ける。北陸電気工業は 3 軸加速度センサで世界初の実績を持ち、ECU 向けの認証も通っている。ASEAN の生産比率を 4 割に上げれば、コストが下がり、顧客に近い生産で受注が取りやすい。インドの販売拠点も加わる。
貴金属高は、一時の逆風に過ぎない。材料費の上昇は顧客にとっても同じで、価格改定の交渉が進めば、利益率は戻る。会社は調達先の開拓と値上げ交渉を進めており、4〜6 月期の経常利益の進捗は 30% と、5 年平均を上回った。
中期計画の営業利益率 7% は、過去の最高 6.5% より高い。ただ、新製品の比率 20% を達成すれば、付加価値の高い品が増え、粗利が上がる。自己資本利益率 10% を満たせば、倍率の上限は 14 倍を超える。純資産の 7 割という今の値段は、その可能性をほとんど織り込んでいない。
純現金があり、財務が軽い。事業会社による買収も考えられ、その場合は割増しの買収価格が付く。
慎重な見方
貴金属高は一時の話ではなく、構造的な問題になりうる。銀とパラジウムの需要は産業全体で増えており、供給は限られる。顧客は車載の大手で、値上げ交渉は長引く。最大顧客のシャープ系の中国法人は売上の 15% を占め、価格交渉で押し込まれやすい。
営業利益率は、過去 12 年で 6.5% を超えたことがない。中期計画の 7% は、前の計画でも届かなかった水準である。2027 年 3 月期の営業利益は 18 億円と、足元から 2 割減る。会社自身が「収益環境は非常に厳しい」と認めている。
競合は村田製作所、KOA、デンソー、三菱電機と、規模で上回る。中国の部品メーカーは低価格品から車載に入り込んでいる。EV の失速で、車載の数量が伸びない可能性もある。
自己資本利益率は 12 年の中央値で 6.9% と、資本コストを下回り続けた。純資産が帳簿どおりの価値を持たない会社に、純資産の 7 割という値段は妥当である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。貴金属高は転嫁の時間差が主因で、構造的な利益率の低下とは言い切れないためだ。
ただ、堀が浅く、利益率の最高が 6.5% にとどまる点は、慎重な見方のほうが正しい。そのため、中立の利益率は今と同じ 5.4% に置いた。確率は、楽観とやや楽観に 3 割強、悲観側に 3 割弱を置いた。数量の伸びは、車載の電子化という構造要因が支える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,871 円382 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,049 円82 億円)。 今の値に割り戻すと 2,970 円233 億円、今との差 +34.3%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,788 円690 億円 | 1,415 円111 億円 | +361.5% | +16.5% | 1,020 円80 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,110 円558 億円 | 1,279 円100 億円 | +279.4% | +14.3% | 1,846 円145 億円 |
| 中立 | 40% | 5,117 円402 億円 | 1,116 円88 億円 | +181.9% | +10.9% | 2,493 円196 億円 |
| やや悲観 | 18% | 1,516 円119 億円 | 911 円72 億円 | +9.8% | +0.9% | 437 円34 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,083 円85 億円 | 159 円13 億円 | −43.8% | −5.6% | 124 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,871 円382 億円 | 1,049 円82 億円 | +167.8% | +10.4% | 5,920 円465 億円 |
今の株価時価総額 2,211 円174 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 車載の電子化に乗り、値上げが通って利益率が7%近くへ 利益 48 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 8,788 円690 億円
車の電動化と運転支援の広がりで、センサと電流検出の抵抗器は 1 台あたりの搭載数が増える。北陸電気工業は ECU 向けの認証を足がかりに、ADAS 向けの新製品を量産に乗せる。
車載の出荷個数は 10 年で 1.5 倍になり、貴金属高の価格転嫁が定着して、単価は物価を 1 割上回る。新製品の比率は 3 割に達し、車載の利益率は 8.5% まで上がる。
ASEAN の生産比率は 4 割を超え、人件費と物流のコストが下がる。産業・民生向けも新製品で 2 割増える。
全社の営業利益は 55 億円、利益率は 6.3% となり、中期計画の 7% には届かないが、過去の最高 6.5% に並ぶ。純資産は 10 年で 1.8 倍に増える。
- 自動車向け(抵抗器・センサ・モジュール):数量 134(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 442(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 590 億円・営業利益 50 億円。ADAS・電動化向けが主力に、新製品比率が上がる
- 産業・民生向け(ほか金型・機械設備):数量 84.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 339(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 285 億円・営業利益 23 億円。産業向けも新製品で伸びる
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.34 倍、時価総額 690 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新製品の量産、値上げの定着、ASEAN の効率化の全部が重なる必要があり、堀の浅さを考えて 1 割にとどめる。
やや楽観 22% 貴金属の転嫁が進み、利益率が6%台に戻る 利益 41 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 7,110 円558 億円
貴金属高は 2027 年に最も重くなり、その後は価格改定が追いついて利益率が戻る。車載の出荷個数は 3 割台の増加で、単価は物価を 7% 上回る。
産業・民生は 1 割増にとどまるが、利益率は 8.2% を保つ。全社の営業利益は 47 億円、利益率は 6.1% と、過去の最高 6.5% に近づく。
配当は純資産配当率 3% 以上の方針で増え、純現金も積み上がる。ただ、最大顧客の 15% は残り、依存の高さは変わらない。
自己資本利益率は 9% を超え、資本コストをわずかに上回る水準で落ち着く。
車載の電子化という数量の追い風は、10 年を通じて続く。ただし、貴金属の転嫁には時間差が残り、利益率が過去の最高を超えるほどの上ぶれは見込まない。
- 自動車向け(抵抗器・センサ・モジュール):数量 120(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 430(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 517 億円・営業利益 44 億円。車載の数量が 3 割台の増加
- 産業・民生向け(ほか金型・機械設備):数量 77.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 328(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 252 億円・営業利益 21 億円。産業・民生は 1 割増
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.68 倍、時価総額 558 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の利益率の落ち込みは貴金属の転嫁遅れが主因で、戻る可能性が高い。車載の数量も構造的に伸びるため 22%。
中立 40% 車載が2割増え、利益率は今と同じ5%台で定着する 利益 32 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 5,117 円402 億円
車載の電子化は着実に進み、出荷個数は 10 年で 22% 増える。貴金属高は一部が価格に定着し、単価は物価を 5% 上回る。
産業・民生向けは、人口の減る国内と成熟した家電に引かれて横ばいにとどまる。営業利益率は車載 8.0%、産業・民生 7.8% と、今とほぼ同じだ。
本社費などは物価で 1.34 倍に増える。償却は年 19 億円から 25 億円前後に増えるが、物価の伸びよりは低い。全社の営業利益は 37 億円、利益率は 5.4% で、今と変わらない。
自己資本利益率は 8% 弱と資本コストに届かず、成熟した部品屋として落ち着く。
- 自動車向け(抵抗器・センサ・モジュール):数量 109(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 422(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 458 億円・営業利益 37 億円。車載が 2 割増。貴金属高の一部が単価に定着
- 産業・民生向け(ほか金型・機械設備):数量 70.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 329(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 231 億円・営業利益 18 億円。産業・民生は横ばい
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.63 倍、時価総額 402 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の伸びは構造要因で支えられるが、利益率は過去の山を超えない、という最もありそうな展開。4 割。
やや悲観 18% 貴金属高の未転嫁と中国勢で、利益率が3%に下がる 利益 14 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,516 円119 億円
貴金属高の転嫁が遅れる構造は変わらず、価格改定は物価並みにとどまる。顧客は車載の大手と中国の大手で、値引きの圧力が続く。
車載の出荷個数は 5% しか増えず、EV の失速と中国勢の低価格品が影を落とす。産業・民生は 1 割減る。
営業利益率は車載 6.2%、産業・民生 5.8% に下がり、全社では 3.0% と、過去の底の水準に近づく。全社の営業利益は 17 億円で、本社費の増加が利益を食う。
配当は方針を守るため、純利益の 55% に高まり、純資産は伸びない。
財務は堅いため倒れないが、成長の投資は絞られ、新製品の比率も計画に届かない。会社としては、守りの経営が続く。
- 自動車向け(抵抗器・センサ・モジュール):数量 93.5(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 402(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 376 億円・営業利益 23 億円。EV の失速と中国勢で数量の伸びが鈍る
- 産業・民生向け(ほか金型・機械設備):数量 63.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 314(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 198 億円・営業利益 12 億円。産業・民生は 1 割減
倍率:ROE 約 4% は資本コスト 8% を大きく下回り、稼ぐ力が落ちる筋書き。倍率は上限 11.8 倍に引き上げず、8.5 倍とした。
確率:2026 年 3 月期も 2027 年 3 月期の予想も営業利益が減っている実績があり、価格転嫁が遅れる展開は十分にある。18%。
悲観 10% 価格競争で赤字化し、設備を整理する 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,083 円85 億円
大手と中国勢の価格競争が車載の抵抗器・センサにも及び、単価が物価を下回る。最大顧客の中国法人が内製化を進め、売上の 15% が消える。
車載の出荷個数は 15% 減り、産業・民生は 3 割減る。営業利益率は車載 3.5%、産業・民生 2.5% に下がる。固定費の本社費は物価で膨らみ、全社は赤字になる。
会社は工場の統廃合と減損を迫られ、純資産は 40 億円削られる。配当は純資産配当率の方針を守れず、大きく減る。
清算に近い価値が下値になる。純現金と売れる資産で、純資産の 3 割強が残る。
この筋書きでは、買収の提案が出ても条件は低い。少数株主は、会社の使い道に口を出せない立場に置かれる。
- 自動車向け(抵抗器・センサ・モジュール):数量 75.6(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 360(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 272 億円・営業利益 8 億円。価格競争と貴金属高の未転嫁で単価も数量も落ちる
- 産業・民生向け(ほか金型・機械設備):数量 49.0(出荷個数(百万個/年・推定))× 価格 281(1 個あたり平均単価(円))→ 売上 138 億円・営業利益 3 億円。顧客の内製化で 3 割減
倍率:赤字で稼ぐ力では測れないため、清算に近い価値で測る。今の自己資本 258 億円に約 0.33 倍を掛けた額が、純現金と売れる資産の税後の合計と一致する。
確率:大手や中国勢との価格競争で赤字になる構造的な負け。売上の 15% を占める顧客の離脱も含め、1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車向け(抵抗器・センサ・モジュール)
ECU 向けの抵抗器、電流検出用の金属板抵抗器、加速度・圧力・湿度のセンサ、バックソナーなどの車載部品。
| 数量出荷個数(百万個/年・推定) | 価格1 個あたり平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 89.0 | 300 | 267 | 23 |
| 10 年後 中立 | 109 | 422 | 458 | 37 |
取り方:開示は事業別でなく、自動車向けは 6 割超というアナリストの分析を使って、売上の 62% を割り当てた。個数と単価は推定で、1 個およそ 3 百円の部品として割った。利益は電子部品の利益率 8.2% に近い 8.4% とし、全社営業利益 23.1 億円に合うよう産業・民生の利益と合わせた。
産業・民生向け(ほか金型・機械設備)
産業機器、家電、OA 機器向けの抵抗器・モジュール・回路基板。金型と機械設備の事業 1.8% を含む。
| 数量出荷個数(百万個/年・推定) | 価格1 個あたり平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 234 | 164 | 14 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 329 | 231 | 18 |
取り方:売上 431.3 億円から自動車向けを引いた残り 38% に、金型・機械設備とその他を足した。個数と単価は推定で、1 個およそ 2 百円台として割った。全社の営業利益 23.1 億円は、セグメント利益の合計 36.3 億円から本社費 13.2 億円を引いた数字。
リスクと懸念
貴金属(銀・パラジウム)の価格と転嫁の遅れ
抵抗体や接点に使う貴金属が高止まりし、2027 年 3 月期の営業利益は 2 割減の予想になった。価格改定が数か月遅れる構造は変わらず、貴金属が再び急騰すれば利益はさらに削られる。
最大顧客への依存
シャープ系の中国法人が売上の 15% を占める。この顧客の調達方針の変更や、中国での内製化が進むと、数量と価格の両方に響く。前期は 18% から低下したが、集中は残る。
自動車の需要と EV の失速
売上の 6 割超が車載とみられ、景気と自動車の生産台数の影響を直接受ける。電動化の遅れは、電流検出用の抵抗器などの成長を鈍らせる。
規模で上回る競合
村田製作所や KOA、車載ではデンソー・三菱電機が競合となる。大手は研究開発費と交渉力で上回り、中国勢の低価格品の追い上げも続く。堀が深くないため、価格競争に巻き込まれやすい。
中期経営計画の未達
営業利益 34 億円・自己資本利益率 10% の目標は、足元の予想 18 億円から遠い。達成できなければ、資本効率の改善への期待が剥げ、倍率が縮む。前の計画も目標に届かなかった。
設備の更新負担
ASEAN の工場への投資と、国内設備の更新は、建築費や機械価格の上昇で膨らむ。償却を上回る投資が続けば、現金の余裕が細り、配当の余地を狭める。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の通期営業利益が 18 億円を上回って着地する
- 貴金属の転嫁が想定より進んだ証拠。楽観とやや楽観の確率を上げ、割安の度合いが増す。
- 貴金属が再び急騰し、2027 年 3 月期の営業利益が 15 億円を割る
- 転嫁の遅れが構造化する懸念が強まり、中立から悲観側へ確率を移す。
- 車載 ADAS 向けのセンサが、新製品として量産に入る
- 新製品の比率 20% の達成に近づき、数量と利益率の上ぶれ要因になる。
- 最大顧客の購買が大きく減る
- 売上と稼働が落ち、やや悲観の確率を上げる。
- 他社による買収の提案が出る
- 買収価格が割増しとなり、短期の価値は上ぶれする。10 年の本質価値の見立ては変えない。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率(貴金属の価格改定が進むか)
- 貴金属(銀・パラジウム)の国際価格
- 車載向けセンサの新製品の量産と、新製品比率 20% の進捗
- 最大顧客(シャープ系の中国法人)の売上比率
- 配当(純資産配当率 3% 以上)の維持と、自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の PER から置かず、事業の自己資本利益率と資本コストから決めた。中立の自己資本利益率は約 8% で資本コスト 8% を下回るため、倍率の上限は 1÷k の 11.8 倍、置いた値はその 9 割だ。新リース会計(2028 年 3 月期から)は工場の賃借が小さいため影響は小さい。数字は今と同じ形で置いた。償却は年 19 億円前後と推定した(開示は取得していない)。既存設備の分は物価で増やさず、更新分だけ新しい値段で上乗せし、10 年後は 25 億円前後とみた。本社費などは物価で 1.34 倍に増やしている。償却より大きい更新投資は現金と還元を削る形で反映した。今の株価は計算に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.15→14.34 倍・やや楽観 PER 12.6→13.68 倍・中立 PER 10.59→12.63 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足して 8.5%。強い堀ではなく、下げる理由はない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。