結論
ウシオ電機は「光」の道具をつくる会社だ。半導体や液晶の工場で使う特殊ランプと露光装置、映画館用プロジェクター(子会社クリスティ)が柱になる。売上の半分近くがプロジェクター、4 割強が産業用の光源と装置だ。
筆者の結論は、今の値段は 10 年先の利益に対して高い、というものだ。10 年後の営業利益率は中立で 9% 弱と見る。過去 10 年の利益率は 1 桁前半で、最高でも 9% 台だった。薄利の事業を抱える構造は、10 年ではそう変わらない。
夢の中身は ICパッケージ基板向けの露光装置にある。AI チップの基板が大きく細かくなるほど、同社の装置が要る。主力のステッパ(縮小投影型の露光装置)は先端基板向けで世界シェア 9 割と会社は言う。次の柱の DLT 装置は、2028 年度ごろの量産立ち上がりを狙う。
一方で、ランプの需要は半導体と液晶に引きずられ、プロジェクターは映画館の数に縛られる。米国アプライドとの提携も、他社の追い上げを防ぐ保証ではない。
楽観の筋書きでも、今の値段で買った人の年率の収益は 6% ほどで、資本コストの 8% に届かない。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 5 割以上下回り、評価は「割高」だ。ただし事業は健全で、自己資本比率は 6 割ある。割高と言うのは、会社が悪いからではなく、値段が先を見すぎているからだ。
バリュー投資の観点から
この事業を長く持ちたいかと問えば、答えは「条件つきの YES」だ。
光源の技術と、先端基板の露光で首位の座は本物だ。顧客は装置を一度決めると替えにくい。ここは持ち続けたい部分だ。
だが、会社全体の稼ぐ力は弱い。売上の半分近いプロジェクター事業は、薄利で数量も伸びない。残りも半導体の波に左右される。10 年の平均で、株主に残る利益は多くない。
資本の使い方には好感が持てる。無駄な持ち合い株を売り、自社株を買う。ただし、買うなら安く買うべきで、自社株が割高なら、買うほど損になる。筆者は、経営が今の値段をどう見ているかに注意を払いたい。
払う値段に安全域があるかが、いちばん大事だ。中立の筋書きの 10 年後の価値は、今の時価総額の半分ほどだ。楽観でも、年率の収益は資本コストに届かない。AI 基板の夢が全部かなっても、今の値段は高い。
買うなら、会社の価値を大きく下回る値段で買う。今の値段は、そのはるか上にある。
結局、筆者が見ているのは、露光装置が伸びたあとに、会社全体の稼ぐ力がどこまで上がるかだ。そこが 10 年で劇的に変わらないなら、割安とは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 4 つに分かれる。いちばん大きいのが映像、つまりクリスティが売る映画館用の高輝度プロジェクターと業務用の映像機器だ。売上は 840 億円ほどで全体の 47% を占めるが、利益率は 6% 弱にとどまる。
次が産業用の光源と装置だ。半導体の露光に使う水銀ランプ、液晶パネル用のランプ、半導体の熱処理に使うサーマル装置、紫外線のエキシマ光源、そして露光装置が入る。売上は 770 億円ほどで、利益の中心はここだ。筆者の推定では露光装置が 250 億円、ランプと光プロセスが 520 億円ほどある。
露光装置では、ICパッケージ基板向けステッパ UX-5 が看板だ。2023 年から米アプライドマテリアルズと組み、マスクを使わない DLT 装置も開発している。国内の DI(レーザー直接描画)露光は、子会社の ADTEC が担う。
残りはフォトニクス(光を使った計測・制御機器)とライフサイエンス(医療・環境向けの新事業)で、合わせて 180 億円ほどだ。両方とも赤字か薄利で、会社も「見極め」の対象としている。
2025 年には、オーストリアの ams-OSRAM から産業・エンタメ用ランプ事業を 150 億円ほどで買った。従業員 500 人ほどと、年 250 億円以上と報じられた売上が加わる。
なお、売上の外部向けの割合は、映像が 47%、産業用が 43% で、地域では海外が過半を占める。為替は 150 円で変わらないと置くので、円高・円安では動かさない。
優良さと弱いところ
強みは光源の技術と、先端基板向け露光装置の実績だ。UX-5 は先端基板向けで世界シェア 9 割と会社は言う。顧客が一度採用した装置を替えにくい点が、堀、つまり他社がまねしにくい強みになっている。
ただ、堀の幅は思うほど広くない。先端基板の大型化では、ステッパのほかにレーザー直接描画方式も検討されている。会社自身も、競合が増えていることを認めている。これまでステッパでほぼ独占してきた市場が、方式の違う競争に変わる可能性がある。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 4.5% で、資本コストを下回り続けた。自己資本は 2,000 億円ほどあるのに、稼ぐ利益は 100 億円に届かない年が多い。
経営の資本の使い方は評価が分かれる。2024 年度に政策保有株などを 160 億円売り、自社株買いを 300 億円進めたのは、資本を無駄に寝かせない動きだ。筆者はこの方向を支持する。だが、ams-OSRAM のランプ事業を買う一方で、映像事業の整理には評価損が出ている。事業を入れ替えるたびに一時費用が出る体質は、まだ抜けていない。
利益の質が低い点も気になる。直近の純利益は営業利益の 7 割弱で、税負担が重い期もあった。実力の利益は、決算の数字より低いと見るのが安全だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ウシオの事業は、半導体の工場投資と映画館の設備投資という、別々の波に乗っている。
半導体では、AI 向けの先端チップが追い風だ。チップを複数並べるチップレット構成が広がり、基板が大きく細かくなる。基板に回路を焼き付ける露光装置の需要は、2027 年度から本格的に動くと会社は見ている。ガラスコア基板の試作も複数社で始まり、量産は 2028 年ごろと言われる。ただし、立ち上がりの遅れは繰り返されてきた。会社の中期計画は、2025 年の見直しで売上の見通しを引き下げた。
先端パッケージ向け露光装置の市場は、会社の推計で 2025 年度に 2.5 億ドル超、2030 年度に 8 億ドル超とされる。会社は、そこで 5 割のシェアを狙う。筆者はこの目標を強気すぎるとみる。成長市場に新規参入が相次ぐのは、半導体装置の常だからだ。
光源では、液晶向けの需要が伸び悩む一方、半導体向けの i 線ランプは安定している。EUV(極端紫外線)関連の開発は、会社が投資を絞った。大企業の寡占が強く、小さな会社が追う理由が薄いと判断したのだ。
映像では、映画館のレーザー映写機への更新が一巡した。以後は買い替え中心で、数量は増えにくい。欧州の Barco など強い競合もある。ウシオは映画館向けの高い機種に絞る方針だ。
共通の前提として、業界のノートにある半導体装置市場の 10 年の見通し(世界の半導体装置市場は 2,600 億ドル前後)を使う。ウシオの製品はその市場の一部で、売上は半導体投資の波の影響を受ける。
資本政策と M&A
資本の使い方は、この会社のいちばんの見どころだ。
自社株買いは、2024 年度に 300 億円、2025 年度に約 200 億円と大きい。配当と合わせた還元は、直近の純利益の数倍になった。原資は政策保有株の売却と、新たに借りた 300 億円超の長期借入だ。借金で自社株を買う形だが、自己資本比率は 6 割ある。
M&A では、ams-OSRAM のランプ事業が大きい。買収額は約 152 億円で、半導体装置向けの特殊ランプを持つ。ウシオの光源事業と重なる部分が多く、重複の整理で採算は上がりうる。ただ、取得初年度は費用がかさむと会社も言う。
事業の整理も進む。クリスティは映像処理技術の事業を売る契約を結んだ。新規事業の半数以上を終えたライフサイエンスや、赤字のフォトニクスには、あらゆる選択肢を検討するとある。
大株主は信託銀行と海外の運用会社で、M&G が 8% 台を持つ。TOB(株式公開買い付け)やアクティビスト(物言う株主)の報道は確認できなかった。会社を買う側に回る余力は大きくないが、株価が下がれば、買われる側の候補にもなりうる。
10年の還元は利益の範囲(中立で純利益の合計の約9割)に置いた。直近2年の、借入と持ち合い株の売却を原資にした大型の自社株買いは、繰り返さない前提で入れていない。会社が開示する数値の方針は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI チップの基板が大きく、細かくなる流れは止まらない。基板の面積が増えるほど、露光の回数と装置の数が増える。UX-5 は先端基板向けで世界シェア 9 割を持ち、大型基板向けの DLT 装置は、アプライドとの提携で販売網と技術を得た。引き合いは強く、案件数も増えている。
映像は再建が進み、利益率は 5.6% まで戻った。構造改革で固定費を 70 億円以上減らす計画で、拠点の統廃合も進む。ams-OSRAM のランプ事業が加われば、半導体装置向け特殊ランプの顧客の幅が広がり、重複コストの削減でランプの利益率も上がる。
会社の 2030 年度目標は営業利益率 12% 以上だ。DLT が先端パッケージ露光市場で 5 割を取れば、露光装置だけで売上は今の 3 倍になる。ROE も 12% に届く。自社株買いで資本効率を高め続ければ、株価は大きく見直される。
半導体の後工程は、もともと装置の更新が遅い。一度採用された装置は 10 年使われ、消耗品のランプが安定した収益を生む。この「装置を売って、ランプで稼ぐ」構造が、先端基板でも再現されれば、利益のぶれは小さくなり、評価は変わってよい。
慎重な見方
会社は 2024 年に中期計画を出して以来、売上の見通しを下げてきた。2026 年度の営業利益 200 億円の目標に対し、実績は 120 億円で、利益率は 6.7% だ。ROE も 4% で、目標の 8% は遠い。DLT 装置は初受注こそあったものの、売上への貢献は 2027 年度以降にずれ込んだ。大型基板の量産が 2028 年度という計画は、ガラスコアの導入延期の動きもあって、さらに遅れかねない。
ステッパで築いた 9 割のシェアは、方式が変われば意味がない。レーザー直接描画方式を検討する顧客が増え、DLT でも競合が増えている。新市場の 5 割という目標は、競争のある市場で取れる数字ではない。
しかも売上の半分近くは、プロジェクターという薄利で数量の伸びない事業だ。M&A も事業整理も、一時費用を生んで利益を削る。AI の夢を追う前に、普通の年に稼げる利益が小さすぎる。
加えて、買収した ams-OSRAM のランプ事業は、半導体装置向けが主とはいえ、エンタメ用ランプは LED への置き換えで縮む市場だ。のれんが減損になれば、せっかくの利益が消える。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。会社の計画は繰り返し見直され、実際の利益は目標の 6 割にとどまる。DLT の伸びは確かな可能性だが、その時期は 2028 年度以降で、競争も増える。
確率は、楽観を 8%、やや楽観を 20% に抑え、やや悲観と悲観に合わせて 4 割を置いた。映像事業の薄利と、新市場の方式競争の不確実さが理由だ。強気の人の言う通りになっても、今の値段では資本コストを稼げない点は動かない。
どちらの意見にも真実はあるが、確かな数字は慎重な側にある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,683 円2,129 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,231 円977 億円)。 今の値に割り戻すと 2,120 円1,682 億円、今との差 −37.0%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,057 円5,600 億円 | 2,190 円1,738 億円 | +174.8% | +10.6% | 740 円587 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,822 円3,826 億円 | 1,814 円1,439 億円 | +97.2% | +7.0% | 1,327 円1,053 億円 |
| 中立 | 32% | 2,824 円2,241 億円 | 1,419 円1,126 億円 | +26.1% | +2.3% | 1,358 円1,077 億円 |
| やや悲観 | 26% | 726 円576 億円 | 818 円649 億円 | −54.1% | −7.5% | 401 円319 億円 |
| 悲観 | 14% | 441 円350 億円 | 189 円150 億円 | −81.3% | −15.4% | 88 円70 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,683 円2,129 億円 | 1,231 円977 億円 | +16.3% | +1.5% | 3,914 円3,106 億円 |
今の株価時価総額 3,365 円2,670 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% DLT が標準になり、先端基板の露光で 5 割を握る 利益 329 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 7,057 円5,600 億円
DLT 装置が大型基板の標準になり、2030 年代にかけて先端パッケージ向け露光装置で半数のシェアを取る。ガラスコア基板も 2028 年に立ち上がり、露光装置の売上は今の 4 倍に伸びる。ステッパ UX-5 も、新しい大型機の採用でシェアを保つ。
ams-OSRAM のランプ事業との重複は整理され、ランプの利益率は 12% に上がる。映像は高価格機に絞って 8% 台の利益率に届き、会社の目標をほぼ満たす。
10 年後の営業利益は 450 億円ほどで、利益率は 13% に近い。事業の中身は今と大きく変わる。それでも、今の値段から見た年率の収益は 6% ほどで、資本コストに届かない。会社が半導体装置会社として評価されても、利益が足りないからだ。
自社株買いは続き、配当と合わせた還元は 10 年で純利益の 8 割を超える。
- 露光装置(ICパッケージ基板向けステッパ・DLT・DI):数量 150(年間の出荷台数(台))× 価格 6.70(1 台あたり売上(億円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,005 億円・営業利益 221 億円。出荷 150 台 × 1 台 6.7 億円、営業利益率 22%
- 光源・光プロセス(露光用ランプ・エキシマ・サーマル):数量 76.0(ランプ・光源機器の出荷(万本・万台相当の加重))× 価格 13(1 本・1 台相当あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,018 億円・営業利益 122 億円。OSRAM 分を含めて 76、利益率 12%
- 映像(クリスティのプロジェクター・映像機器):数量 1.3(プロジェクター・映像機器の出荷(万台相当))× 価格 874(1 台相当あたり売上(万円)。競争とハードの値下がりで物価より上がりにくい(10 年 1.2 倍))→ 売上 1,101 億円・営業利益 94 億円。1.26 万台相当、価格 1.25 倍、利益率 8.5%
- フォトニクス・ライフサイエンス他:数量 2,730(販売の件数相当(件))× 価格 1,340(1 件あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 366 億円・営業利益 26 億円。件数 1.5 倍、利益率 7%
倍率:事業の純利益 329 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.02 倍、時価総額 5,600 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の目標どおりに DLT が育つ筋書きで、これまで計画は見直しが続いたので 8% に抑える。
やや楽観 20% DLT は育つが、方式の競争で取れるのは 3 割 利益 247 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 4,822 円3,826 億円
DLT 装置は大型基板で一定の採用を得るが、レーザー直接描画方式や他社の装置も並行して使われる。シェアは 3 割ほどに落ち着く。露光装置の売上は今の 3 倍になる。
ランプは OSRAM の統合が進み、利益率は 11% 台に上がる。映像は 7% 台で安定する。会社の 2030 年度の目標(12%)には届かず、10 年後の営業利益率は 11% になる。
事業は今より良くなるが、飛び抜けて強い会社にはならない。ROE は 11% ほどで、資本コストを少し上回る程度だ。
半導体の波に乗る露光装置と、安定したランプで、利益は今の 3 倍ほどになる。それでも、AI の投資が少し弱まる年には、受注が 2 割ほど振れる。会社の稼ぐ力は上がるが、評価が高くなる事業ではない。
- 露光装置(ICパッケージ基板向けステッパ・DLT・DI):数量 115(年間の出荷台数(台))× 価格 6.70(1 台あたり売上(億円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 770 億円・営業利益 146 億円。出荷 115 台 × 6.7 億円、利益率 19%
- 光源・光プロセス(露光用ランプ・エキシマ・サーマル):数量 74.0(ランプ・光源機器の出荷(万本・万台相当の加重))× 価格 13(1 本・1 台相当あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 992 億円・営業利益 114 億円。74、利益率 11.5%
- 映像(クリスティのプロジェクター・映像機器):数量 1.2(プロジェクター・映像機器の出荷(万台相当))× 価格 853(1 台相当あたり売上(万円)。競争とハードの値下がりで物価より上がりにくい(10 年 1.2 倍))→ 売上 1,024 億円・営業利益 77 億円。価格 1.22 倍、利益率 7.5%
- フォトニクス・ライフサイエンス他:数量 2,366(販売の件数相当(件))× 価格 1,340(1 件あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 317 億円・営業利益 16 億円。件数 1.3 倍、利益率 5%
倍率:事業の純利益 247 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.49 倍、時価総額 3,826 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:DLT が伸びても、方式の競争と顧客の分散で会社の目標には届かない筋書き。20% は楽観に次ぐ。
中立 32% 露光装置は伸びるが、会社全体は薄利のまま 利益 170 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 2,824 円2,241 億円
ICパッケージ基板向けの露光装置は、2027 年度から立ち上がり、10 年後の売上は今の 2.3 倍になる。DLT とステッパ UX-5 が並び、取れるシェアは 2 割強だ。利益率は 15% まで戻る。
ランプは、OSRAM の事業が加わって売上が伸びるが、数量は半導体と液晶に連動して横ばいに近い。映画用ランプは縮み、全体で利益率は 10% にとどまる。映像は 6% 台で、数量は少し減る。
10 年後の営業利益は 240 億円、利益率は 9% 弱だ。名目の成長で、過去最高の水準に戻るにすぎない。ROE は 8% で、資本コストにほぼ並ぶ。
この筋書きでは、会社の強みと弱みが釣り合う。強みは露光装置と光源の技術で、弱みは映像の薄利と、新事業の赤字だ。
映像の価格が物価ほど上がらない(10 年で 1.2 倍)のは、映画館のレーザー映写機の更新が一巡し、競合との値下げ競争が続くからだ。
- 露光装置(ICパッケージ基板向けステッパ・DLT・DI):数量 85.0(年間の出荷台数(台))× 価格 6.70(1 台あたり売上(億円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 570 億円・営業利益 85 億円。出荷 85 台 × 6.7 億円、利益率 15%
- 光源・光プロセス(露光用ランプ・エキシマ・サーマル):数量 71.9(ランプ・光源機器の出荷(万本・万台相当の加重))× 価格 13(1 本・1 台相当あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 963 億円・営業利益 96 億円。OSRAM 分を含め 72、利益率 10%
- 映像(クリスティのプロジェクター・映像機器):数量 1.1(プロジェクター・映像機器の出荷(万台相当))× 価格 839(1 台相当あたり売上(万円)。競争とハードの値下がりで物価より上がりにくい(10 年 1.2 倍))→ 売上 956 億円・営業利益 62 億円。1.14 万台相当、価格 1.2 倍、利益率 6.5%
- フォトニクス・ライフサイエンス他:数量 2,002(販売の件数相当(件))× 価格 1,340(1 件あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 268 億円・営業利益 9 億円。件数 1.1 倍、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.18 倍、時価総額 2,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も起こりやすいのは、露光装置は伸びるが映像の薄利が全体の利益率を押さえる筋書き。32% を最大にした。
やや悲観 26% DI 方式との競争で露光装置は伸びず、映像は薄利のまま 利益 64 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 726 円576 億円
大型基板の露光はレーザー直接描画が主流になり、ステッパも DLT も採用は限られる。露光装置の売上は 10 年で 1 割ほど増えるだけだ。新しい市場が立ち上がっても、ウシオのシェアは 1 割台に下がる。
ランプは液晶向けが縮み、半導体向けも他社が値下げで追い、価格は物価に追いつかない。OSRAM の統合効果も限られ、利益率は 7% 台に低下する。映像は競争で 4% に落ち、フォトニクスとライフサイエンスは赤字が続く。
10 年後の営業利益は 100 億円ほどで、今とほぼ同じだ。物価の分だけ売上は増えても、利益は増えない。
会社は構造改革を続け、赤字事業の整理で一時費用が出る。配当は保つが、自社株買いは細る。
- 露光装置(ICパッケージ基板向けステッパ・DLT・DI):数量 50.0(年間の出荷台数(台))× 価格 5.75(1 台あたり売上(億円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 288 億円・営業利益 20 億円。出荷 50 台、価格 1.15 倍、利益率 7%
- 光源・光プロセス(露光用ランプ・エキシマ・サーマル):数量 62.0(ランプ・光源機器の出荷(万本・万台相当の加重))× 価格 12(1 本・1 台相当あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 744 億円・営業利益 56 億円。62、価格 1.2 倍、利益率 7.5%
- 映像(クリスティのプロジェクター・映像機器):数量 1.0(プロジェクター・映像機器の出荷(万台相当))× 価格 769(1 台相当あたり売上(万円)。競争とハードの値下がりで物価より上がりにくい(10 年 1.2 倍))→ 売上 784 億円・営業利益 31 億円。数量 0.85 倍、価格 1.1 倍、利益率 4%
- フォトニクス・ライフサイエンス他:数量 1,820(販売の件数相当(件))× 価格 1,200(1 件あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 218 億円・営業利益 0 億円。件数 1.0 倍、利益率 0%
倍率:ROE 3.1% は k 7.75% 以下なので、伸びても残る価値は小さく、正当化 PER は 1÷k の 12.1 倍が上限。構造の負けに近いので上限の 7.5 割の 9.0 倍に置いた(悲観側なので 7 割へ引き上げない)。
確率:会社の計画が繰り返し未達だった実績が示す筋書き。26% と厚めにした。
悲観 14% 新市場で負け、映像と光源も細る 10 年 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 441 円350 億円
DLT は大型基板で採用されず、ステッパも方式の変化で売れなくなる。露光装置は 10 年で売上が 100 億円ほどに縮み、赤字になる。開発に使った 150 億円ほどの投資は回収できない。
ランプは LED とレーザー光源に置き換えられ、数量は減って値下げが続く。OSRAM の買収で得たランプ事業も、のれんの減損が出る。映像はレーザー映写機の競争とシネコンの縮小で利益が出ない。
営業利益は赤字で、整理のための特別損失も重なる。自己資本は減損で減る。配当は縮小し、自社株買いは止まる。自己資本は 1,800 億円ほどになる。
配当に充てる 150 億円ほどは、手元の現金と資産の売却でまかなう。
- 露光装置(ICパッケージ基板向けステッパ・DLT・DI):数量 20.0(年間の出荷台数(台))× 価格 5.00(1 台あたり売上(億円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 100 億円・営業利益 −5 億円。出荷 20 台、価格 1.0 倍、利益率 −5%
- 光源・光プロセス(露光用ランプ・エキシマ・サーマル):数量 48.0(ランプ・光源機器の出荷(万本・万台相当の加重))× 価格 11(1 本・1 台相当あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 528 億円・営業利益 16 億円。48、価格 1.1 倍、利益率 3%
- 映像(クリスティのプロジェクター・映像機器):数量 1.1(プロジェクター・映像機器の出荷(万台相当))× 価格 699(1 台相当あたり売上(万円)。競争とハードの値下がりで物価より上がりにくい(10 年 1.2 倍))→ 売上 755 億円・営業利益 0 億円。数量 0.9 倍、価格 1.0 倍、利益率 0%
- フォトニクス・ライフサイエンス他:数量 1,456(販売の件数相当(件))× 価格 1,000(1 件あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍))→ 売上 146 億円・営業利益 −4 億円。件数 0.8 倍、利益率 −3%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、ためた利益では価値を測れない。純現金と売れる資産の税引き後 350 億円を価値の床とし、今の自己資本 1,983 億円に対する PBR で 0.18 倍になる(悲観の PBR は中立より低く、床の資産で置いた)。
確率:露光装置が新市場で負け、LED やレーザーへの置き換えとプロジェクターの縮小が重なる筋書き。会社が数年おきに構造改革を繰り返す体質も考え、14% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
露光装置(ICパッケージ基板向けステッパ・DLT・DI)
ICパッケージ基板向けステッパ UX-5、DLT 装置、ADTEC の DI 露光装置、半導体 i 線露光装置。
| 数量年間の出荷台数(台) | 価格1 台あたり売上(億円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 5.00 | 250 | 15 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 6.70 | 570 | 85 |
取り方:開示が無いので推定。産業用セグメント(771 億円)から、ランプと光プロセス(推定 520 億円)を引いた約 250 億円を露光装置とした。出荷台数は 1 台 5 億円の平均で 50 台と置いた。営業利益 15 億円は、需要が谷の年で稼働が低いとみた推定(セグメント全体の 65 億円から割り振り)。
光源・光プロセス(露光用ランプ・エキシマ・サーマル)
半導体・液晶の露光用ランプ、OA 用ランプ、エキシマ光源、サーマル装置。ams-OSRAM から買ったランプ事業を含む。
| 数量ランプ・光源機器の出荷(万本・万台相当の加重) | 価格1 本・1 台相当あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.1 | 10 | 521 | 50 |
| 10 年後 中立 | 71.9 | 13 | 963 | 96 |
取り方:開示が無いので推定。産業用セグメントの 771 億円から露光装置の約 250 億円を引いた 521 億円。ランプは 1 本数万〜数百万円と幅が広いので、加重の「相当」の数で置いた。ams-OSRAM のランプ事業(売上 250 億円超と報道)は、取得が期末ごろなので今の数字に入れず、10 年の数量に足した。
映像(クリスティのプロジェクター・映像機器)
映画館用の高輝度プロジェクターと、業務用の映像機器。保守部品とサービスを含む。
| 数量プロジェクター・映像機器の出荷(万台相当) | 価格1 台相当あたり売上(万円)。競争とハードの値下がりで物価より上がりにくい(10 年 1.2 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 699 | 839 | 47 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 839 | 956 | 62 |
取り方:セグメントの外部売上 839 億円(第三者の集計)。平均 1 台相当 700 万円で 1.2 万台相当と置いた。営業利益 47 億円は同じ集計。価格は今 699 万円で、中立の 10 年の上がり方は物価ほどではなく 1.2 倍(理由は映写機のレーザー化が一巡し、Barco など競合との値下げ競争が続くため)。
フォトニクス・ライフサイエンス他
光を使った計測・制御機器(フォトニクス)、医療・環境向けの新事業(ライフサイエンス)、その他。
| 数量販売の件数相当(件) | 価格1 件あたり売上(万円)。物価の分を乗せる(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,820 | 1,000 | 182 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2,002 | 1,340 | 268 | 9 |
取り方:第三者の集計でフォトニクス 106 億円、ライフサイエンス 63 億円、その他 14 億円の合計 182 億円。1 件 1,000 万円で 1,820 件相当と置いた。営業利益は合計 9 億円(フォトニクスが黒字、ライフサイエンスはほぼゼロ)。
リスクと懸念
計画の未達が続く
2024 年度に出した中期計画は、2025 年の見直しで売上の見通しが下がった。2026 年度の営業利益 200 億円の目標に対し、実績は 120 億円、ROE の目標 8% に対し 4% にとどまる。2030 年度の目標は、これまでの未達の延長で見ると、達成の信用が低い。
露光の方式が変わる
大型基板の露光は、ステッパだけでなくレーザー直接描画方式も検討されている。ウシオは DLT 装置とステッパで両方に備えるが、どちらかが主流になれば片方は不要になる。UX-5 の 9 割というシェアも、方式が変われば価値が下がる。
AI 投資の巻き戻し
露光装置と先端基板の需要は、AI の設備投資に強く連動している。AI 向けの投資が止まれば、基板の増設が止まり、装置の受注も落ちる。会社は本格回復を 2027 年度としており、これまでも立ち上がりの先送りが起きてきた。
映像事業の薄利と競争
売上の半分近いクリスティは、利益率が 5% 台と低い。映画館のレーザー映写機への更新が一巡し、数量は増えにくい。Barco など欧州の強い競合もあり、値下げ圧力が続く。事業整理の評価損も毎年のように出ている。
光源の置き換え
ランプ事業は LED やレーザー光源への置き換えが長期的に進む。半導体向けの水銀ランプは当面強いが、露光方式の変化で需要が細る可能性がある。ams-OSRAM の事業を買った効果も、市場が縮めば薄まる。
M&A の統合と減損
ams-OSRAM のランプ事業を約 150 億円で買い、のれんが増えた。500 人ほどの従業員の統合と、工場の重複整理には時間がかかる。思うように収益が出なければ、減損が自己資本を削る。
借入の増加と利払い
自社株買いの原資に、300 億円超の長期借入を使った。今は純現金に近いが、借り換えで金利が 3.5% 前後になると、利払いが増える。投資と還元を続ければ、財務の余裕は小さくなる。
今後の分かれ目
- DLT 装置の量産ライン向け受注が、2027 年度に複数の顧客で本格化する
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし競合の採用状況と、装置 1 台あたりの利益率を確かめる。
- ステッパ UX-5 の新型機が、大型基板向けで主要顧客に採用される
- 露光装置の売上が計画に近づく筋書きが強まる。方式の競争でステッパが残る証拠になる。
- 映像事業の営業利益率が 8% に届く年が続く
- 会社全体の利益率の底上げが現実的になる。中立の利益率を 1 ポイント上げて見直す根拠になる。
- AI 向け基板の増設投資が先送りされ、露光装置の受注が 2 年続けて落ちる
- やや悲観・悲観の確率を上げる。半導体装置の波が、事業全体の利益を押し下げる。
- ams-OSRAM のランプ事業の統合後も、ランプ部門の利益率が 8% を超えない
- 買収の効果は小さいと判断する。ランプの利益率を中立から下げて見る。
- 経営が自社株買いを止め、株主還元が配当に絞られる
- 資本の使い方の前提が変わる。還元と成長投資のどちらを優先するかを確かめ直す。
見ておくもの
- DLT 装置の受注と出荷台数の開示
- 先端パッケージ基板向け露光の他社の採用状況
- 映像事業の営業利益率(8% の目標)
- ランプ部門の利益率とのれんの動き
- 自社株買いの規模と、借入の増減
倍率と資本コストの決め方
今の株価(時価総額 3,045 億円)は見ずに、セグメントごとの数量と価格で 10 年後の利益を積んだ。中立の純利益は 170 億円で、今の 2 倍強。PER は ROE 8% と資本コスト 7.75% から正当化 PER を出し、利益の質を見て上限の 7.5 割に置いた。今の株価が半分でも倍でも倍率は変わらない。リース(主にオフィスと拠点)は 2028 年に開示の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→17.02 倍・やや楽観 PER 10.4→15.49 倍・中立 PER 10.67→13.18 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75%。同じ領域のアルバック(+0.75%)と同じ。ウシオは映像や医療など景気に強い事業があり循環はやや小さいが、ランプの寿命の不安が上回る。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。