結論
菊水ホールディングスは、電気製品の安全を調べる試験器と、電池や半導体の評価に使う電源を作る独立系の計測メーカーだ。売上は約 147 億円、営業利益率は 14.5% と、この規模の機器メーカーとしては高い。無借金で、現金は純資産の 3 分の 1 に迫る。
筆者の結論は、10 年先の価値は今の時価総額に届かず、やや割高というものだ。会社の質は悪くない。ただ、利益を生む力に対して、値段が先の成長を先取りしている。
追い風は確かにある。電気自動車、蓄電池、パワー半導体、データセンターはどれも電力を大きく扱う分野で、電源と試験器の需要を押し上げる。中期計画の売上目標は 2026 年 3 月期にすでに達成され、今期の会社予想はさらに上だ。
一方で、この市場には世界の大手と台湾・中国の新興勢がいる。売上 150 億円の会社が、10 年ずっと価格決定力を保てるかは分からない。営業利益率が上がったのは 2022 年 3 月期からで、それ以前の 10 年は 5〜8% だった。
余った現金は 37 億円ほどとみる。ただ、配当性向は 3 割台で自社株買いの実績がなく、現金は積み上がる一方だ。株主にどれだけ戻るかは半分と見て評価した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、菊水は悪い会社ではないが、持ち続けたい会社と言い切るには決め手が足りない。
良い点は三つある。借金がなく、現金が厚い。規格に根ざした安全試験器は、景気が悪くても売れ続ける。回生型電源という高単価の製品で、利益率が一段上がった。
気になる点も三つある。ひとつは、10 年先を見通す力が要る事業であることだ。電池や半導体の試験装置は、技術の標準が変わると設計をやり直す必要がある。ふたつめは、稼ぐ力の割に資本が使われていないことだ。現金が増えても、買収も自社株買いもせず、株主に戻る道筋が見えない。みっつめは、経営の資本配分が株主を向いているか確かめにくいことで、取引先持株会が筆頭の株主構成では、外から規律が働きにくい。
株主のものになる利益、つまり設備投資や運転資金を引いた後の利益は、営業利益の 5 割強とみる。年 10 億円前後だ。これを 8% の資本コストで割り戻し、成長を足しても、今の時価総額に届かない。
払う値段に安全域があるかと問えば、今はそれが薄い。10 年かけて利益が 1.6 倍になる中立の筋書きでも、価値は今の値段をやや下回る。強気の筋書きが実現してようやく釣り合う。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つの製品群だ。ひとつは電源機器で、売上の 7 割強を占める。工場や研究所で電気製品の試験をするとき、決まった電圧・電流を安定して流す装置が要る。菊水は小型の安定化電源から、電気自動車の電池やモーターを試す大型の回生型電源まで幅広くそろえる。回生型とは、試験で使った電気を捨てずに電力網へ戻せる電源のことだ。
もうひとつは電子計測器で、売上の 2 割強になる。柱は耐電圧試験器と絶縁抵抗試験器だ。家電や電池が、感電や発火の危険なく作られているかを出荷前に調べる。規格で検査が義務づけられるので、景気が悪くても一定の需要が残る。株式情報サイトは、耐電圧試験器と据え置き型の直流安定化電源で国内トップと紹介している。
残りの 4% 弱は、納めた機器の修理と校正だ。台数が積み上がるほど安定して増える収益で、利益率も高いとみられる。
グループは、開発と販売を担う菊水電子工業、生産の菊水エムズ、物流のフジテック、そして独・米・上海の販売会社で成り立つ。海外の売上比率は約 35% で、前の中期計画では 2023 年 3 月期に 48% まで上がった後、国内の伸びで 34% に下がった。顧客は自動車・電機・電池・半導体・航空宇宙の開発部門と生産ラインだ。数は多いが、1 社あたりの買い方は小さい。従業員は約 350 人の小所帯である。
優良さと弱いところ
菊水の強みは、国内の試験現場に深く根を張った営業と、長年磨いた安全試験の技術にある。耐電圧試験器は、規格の細部まで理解して作った装置が信頼される世界だ。顧客は一度使い慣れた装置と操作を替えたがらない。修理と校正の収益がそれを裏づける。
数字にも堀の跡は出ている。営業利益率は 2022 年 3 月期の 10% から 3 年で 15% 近くへ上がり、単なる景気の追い風では説明しにくい。電池や電気自動車向けの回生型電源という高い単価の製品に重心が移ったことが、利益率を押し上げた。財務は強く、自己資本比率は 82%、有利子負債はなく、金利が上がっても利払いの傷は無い。
弱点は三つある。ひとつは規模だ。売上 150 億円では、世界の計測大手や台湾・中国の新興勢と研究開発費で勝負できない。ふたつめは収益の歴史の短さだ。営業利益率は 2021 年 3 月期まで 5〜8% にとどまり、今の 14% は 5 年に満たない実績になる。みっつめは大株主の構成で、取引先持株会と事業会社が筆頭にいて、資本効率を強く迫る株主が見当たらない。経営陣は ROE 11% を目標に掲げるが、目標そのものが控えめだ。
筆者は、堀はあるが深くはない会社と見る。国内の安全試験と中堅向けの電源では強く、世界の大型市場では挑戦者にすぎない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電源と試験器の需要は、顧客の研究開発と設備投資で決まる。景気には中程度に左右され、リーマン・ショックの 2009 年 3 月期には最終赤字に沈んだ。ただし今は、需要の質が変わりつつある。
電気自動車の電池は耐電圧・絶縁の試験が欠かせず、蓄電池やパワー半導体、データセンターの電源設備も、評価の装置が要る。中期計画はこの 4 分野を重点に置き、直近の決算でも、電池向けの安全試験器、米国の宇宙・データセンター向けの直流電源が好調と説明された。
市場の大きさは調査会社で幅がある。プログラマブル電源の世界市場は年 5〜8% の成長という推計が多く、これは名目だ。物価を除くと実質 2〜5% 程度になる。日本電気計測器工業会は、電気計測器全体の市場を 2029 年度に 1.13 兆円、年 1.0% 増と見る。計測器全体は成熟し、電力まわりだけが伸びる構図だ。
競争は厳しい。電源では台湾のチェロマが、700〜1000V の高電圧電池の試験を SiC 素子で押さえにきている。米国のキーサイト、日本の TDK ラムダや高砂製作所、中国の新興勢もいる。電池試験の電源は設計が標準化しやすく、中国勢の価格攻勢が最も効きやすい分野だ。電気自動車の販売が伸び悩む局面では、試験の設備投資が先送りされる。
菊水が取れる市場は、世界の電源・試験器のうち数% 程度とみられる。売上 150 億円の会社が目指せる姿は、ニッチの首位であって大手ではない。
資本政策と M&A
還元の方針は、DOE(純資産配当率)2% 以上、連結配当性向 30% 以上だ。2026 年 3 月期の性向は記念配当を含めて 35.7% で、今期の予想は 30.3% に下がる。自社株買いは確認できず、2026 年 6 月に社員向けの株式報酬で自己株を渡しただけだ。
利益の約 65% を内部に残すので、現金は年に 10 億円規模で積み上がる。会社は資本コストを 6% 前後、PBR が 1 倍を割る現状を認識していると書くが、積み上がる現金の使い道は示していない。筆者は、現金の半分程度しか株主に戻らないとみる。
投資有価証券は約 25 億円ある。取引先との関係維持を目的とした保有で、配当は利益に入っているので、価値として足さない。大株主は取引先持株会、ケーティーエム、みずほ銀行などで、持ち合いと安定株主が厚い。買収を仕掛ける側にも、仕掛けられる側にも回りにくい構造だ。
M&A の実績はほぼ無く、2025 年にアジアの拠点を設けた程度だ。小さな会社が新しい販路を買うことは考えられるが、大型の買収をする力も意思も見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
菊水は、いま追い風の真ん中にいる。電気自動車、蓄電池、パワー半導体、データセンターは、どれも 10 年単位で電力の取り扱いが増える分野だ。試験の装置は新しい電池や素子が出るたびに買い替えと買い増しが起き、回生型の双方向電源のような高単価の製品が売れる。
数字が示している。営業利益率は 2022 年 3 月期の 10% から 15% 近くへ上がり、売上は 4 年で 1.45 倍になった。中期計画の 2028 年 3 月期の売上目標 147 億円は 2 年早く達成し、今期の会社予想は売上 157 億円、営業利益 25 億円だ。しかも第 1 四半期で経常利益の予想を引き上げた。計画が実績に追い越される会社は、計画が控えめなのだ。
海外はまだ伸びしろが大きい。海外比率は 35% で、米国では宇宙とデータセンター向けが立ち上がり、アジアの拠点も 2025 年に作ったばかりだ。国内の安全試験器は規格に守られ、修理・校正が収益を下支えする。
さらに、現金 57 億円は事業の成長のために使える。資本効率を上げる局面に入れば、自社株買いや買収で ROE を押し上げる余地がある。市場が 2 倍に伸び、シェアが保てるなら、利益は 10 年で 2 倍近くになる。
慎重な見方
利益率の急上昇は、本当に構造の変化だろうか。2021 年 3 月期まで営業利益率は 5〜8% にとどまっていた。電池・電気自動車向けの設備投資が一巡すれば、数量も価格も元に戻りうる。電気自動車の販売は各地で伸びが鈍っており、試験の設備投資は真っ先に先送りされる。
競合の顔ぶれも厳しい。台湾のチェロマは高電圧の電池試験で SiC 素子を使った製品を出し、中国の電源メーカーは同じ回生型を低い価格で売り込む。電池試験の電源は仕様がそろいやすく、価格で選ばれやすい。売上 150 億円の会社が研究開発費で勝てる相手ではない。
売上の中で、新しい製品がどれだけ成長に効いているか、外からは分からない。製品別の利益も開示されない。
資本の使い方にも不安が残る。配当性向は 3 割台で、利益の 6 割強が内部に残る。自社株買いは無く、PBR が低いことを認めながら、使い道を示さない。取引先持株会と事業会社が筆頭株主で、外から資本効率を迫る力が弱い。
数字の面でも、今の株価は 10 年の中立の筋書きを織り込んでいる。時価総額の 6 分の 1 は現金だが、それは事業の価値ではない。利益 1 に対して払っている値段は、稼ぐ力の割に軽くない。
どちらに重みを置いたか
追い風と実績では強気の見方が上回る。数量が伸びる分野に立ち、利益率が 5 年近く高い。ただ、10 年という長さでは、慎重な見方の指摘が重い。規模が小さく、価格競争の相手が大きく、利益率の高さは歴史が短い。
確率は中立に 35% を置き、強気側(楽観とやや楽観)の合計を 34% とした。悲観側(やや悲観と悲観)は 31% で、利益率が 11% に戻るやや悲観を 21% と厚めに置いた。会社に借金が無いことと、安全試験という規格に支えられた需要の底があることで、悲観に偏らせすぎてもいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,301 円442 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 913 円76 億円)。 今の値に割り戻すと 3,276 円273 億円、今との差 +15.1%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,939 円746 億円 | 1,307 円109 億円 | +260.1% | +13.7% | 1,025 円85 億円 |
| やや楽観 | 24% | 7,095 円592 億円 | 1,055 円88 億円 | +186.5% | +11.1% | 1,956 円163 億円 |
| 中立 | 35% | 5,908 円493 億円 | 947 円79 億円 | +141.0% | +9.2% | 2,399 円200 億円 |
| やや悲観 | 21% | 2,521 円210 億円 | 695 円58 億円 | +13.0% | +1.2% | 675 円56 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,066 円89 億円 | 516 円43 億円 | −44.4% | −5.7% | 158 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,301 円442 億円 | 913 円76 億円 | +118.4% | +8.1% | 6,213 円518 億円 |
今の株価時価総額 2,845 円237 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 電池・データセンター向けが伸び続け、世界で戦える電源メーカーになる 利益 38 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 8,939 円746 億円
電気自動車、蓄電池、パワー半導体、データセンターの試験需要が 10 年にわたり実質で伸び続ける。回生型の双方向電源の品ぞろえで国内のシェアを守り、米国・アジアで電源の販売が育つ。海外比率は 45% を超える。値段は物価並みに上がり、高単価の製品への移行で営業利益率は 16% に乗る。売上は 320 億円、営業利益は 51 億円になる。
現金は増えるが、会社が資本効率を意識して配当性向を 4 割まで引き上げ、自社株買いも織り交ぜる。電子計測器も、電池の安全試験の裾野が広がって台数が増える。台湾・中国勢は低価格帯で伸びるものの、品質と国内の販路を持つ菊水が上位の領域を守る。
- 電源機器:数量 3.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 67(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 252 億円・営業利益 40 億円。3.77 万 × 67.0 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 16.0%
- 電子計測器:数量 1.1(出荷台数(万台、推定))× 価格 54(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 9 億円。1.09 万 × 53.6 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 16.0%
- 修理・校正:数量 1.3(受付件数(万件、推定))× 価格 6.70(1 件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。1.33 万 × 6.7 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 18.67 倍、時価総額 735 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電気自動車・蓄電池・データセンターの需要が 10 年続き、価格競争も避けるという両方がそろう必要があり、確率は高くない。
やや楽観 24% 電池向けの伸びが定着し、利益率 15% を保つ 利益 31 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 7,095 円592 億円
電池や電気自動車向けの試験需要がなだらかに伸び、電源の数量は 10 年で 1.45 倍になる。電子計測器は安全試験の規格が追い風だが、国内の成熟で伸びは緩い。値段は物価並みに上がり、営業利益率は 15% で安定する。売上は 270 億円、営業利益は 41 億円。
海外は米国の宇宙・データセンター向けとアジアの拠点が支え、比率は 40% 前後になる。配当性向は 38% 前後を保ち、現金は積み上がるが、一部は新しい工場と研究開発に回る。大型の買収はせず、組織は今の延長でゆっくり大きくなる。
競合との関係は今と変わらない。台湾のチェロマや中国の新興勢が高電圧の電池試験で値段を下げても、国内の安全試験と中小口の電源では、規格の理解と修理・校正の手厚さで顧客をつなぎとめる。会社の位置づけは、堅実なニッチの首位のままだ。
- 電源機器:数量 3.1(出荷台数(万台、推定))× 価格 67(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 209 億円・営業利益 31 億円。3.12 万 × 67.0 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 15.0%
- 電子計測器:数量 1.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 54(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 8 億円。1.01 万 × 53.6 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 15.0%
- 修理・校正:数量 1.2(受付件数(万件、推定))× 価格 6.70(1 件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。1.22 万 × 6.7 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 18.13 倍、時価総額 571 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の成長の延長で、5 年ほど高い利益率が続いた実績を 10 年に伸ばすだけの筋書き。
中立 35% 堅実に伸びるが、利益率は 14% 前後に落ち着く 利益 26 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 5,908 円493 億円
電源は市場の実質の伸びに合わせて 10 年で 1.3 倍、電子計測器は成熟して 1.15 倍、修理・校正は納入台数に連動して 1.1 倍になる。値段は物価並みの 1.34 倍で、売上は 248 億円。営業利益率は 14% で、直近 4 期の 14.5% から少し下がる。電池向けの高単価品は続くが、台湾・中国勢の追い上げで超過分は削られるとみる。
営業利益は約 35 億円、純利益は 26 億円になる。10 年のあいだ、現金は 130 億円近く積み上がるが、配当性向 38% で配当しても自社株買いは行われない。会社は「優良な中堅の計測器メーカー」の位置に収まり、国内の安全試験と中小口の電源で堅く稼ぐ。
- 電源機器:数量 2.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 67(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 188 億円・営業利益 26 億円。2.80 万 × 67.0 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
- 電子計測器:数量 1.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 54(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 7 億円。0.97 万 × 53.6 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
- 修理・校正:数量 1.2(受付件数(万件、推定))× 価格 6.70(1 件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。1.22 万 × 6.7 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 17.51 倍、時価総額 469 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の実質成長と菊水のシェアの維持、利益率は直近 4 期の水準から少し下という、実績に最も近い筋書き。
やや悲観 21% 電池向けの設備投資が一巡し、中国・台湾勢との値下げ競争が強まる 利益 17 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,521 円210 億円
電気自動車と電池の設備投資が一巡し、試験の新規需要が鈍る。台湾・中国の電源メーカーが回生型の低価格品を広げ、菊水は値引き対応を迫られる。価格の伸びは 10 年で 1.28 倍にとどまり、物価を下回る。人件費と部材は物価並みに上がるので、営業利益率は 11% まで下がる。売上は 209 億円、営業利益は 23 億円。
国内の安全試験は規格に守られ、修理・校正も下支えするため、赤字には落ちない。配当は性向 35% を保ち、現金は積み上がるが、新しい技術への投資に一部を使う。優良な計測器メーカーという評価から、普通の機器メーカーへと一段後退する。
- 電源機器:数量 2.5(出荷台数(万台、推定))× 価格 64(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 17 億円。2.48 万 × 64.0 万円(物価並みの伸び 1.28 倍)、営業利益率 11.0%
- 電子計測器:数量 0.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 51(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 5 億円。0.84 万 × 51.2 万円(物価並みの伸び 1.28 倍)、営業利益率 11.0%
- 修理・校正:数量 1.2(受付件数(万件、推定))× 価格 6.70(1 件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。1.17 万 × 6.7 万円(物価並みの伸び 1.34 倍)、営業利益率 11.0%
倍率:ROE 事業分は 7% 台で k 7.25% を下回る。k 以下の会社の PER 上限は 1÷k=12.5 倍。値下げで利益率が落ちる構造の負けなので、上限の 8 割の 10.0 倍に置いた。余った現金は谷で食うとみて 0.75 倍の 28 億円に減らし、戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:利益率の歴史の短さ、電気自動車の失速、中国・台湾勢の価格攻勢という具体的な懸念が重なる筋書き。確率は低くない。
悲観 10% 価格破壊とシェア流出で、利益率が 1 桁に落ちる 利益 9 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,066 円89 億円
中国・台湾勢が回生型電源と電池試験の主要な規格を取り、菊水は国内の小口に押し込まれる。電源の数量は 10 年で 1 割減り、値段は物価の半分ほどしか上がらない。コストは物価で増えるため、営業利益率は 8% まで落ちる。売上は 150 億円で横ばい、営業利益は 12 億円。
在庫の評価損と生産拠点の減損が重なり、自己資本は 15 億円ほど目減りする。それでも国内の安全試験と修理・校正は残り、無借金で現金も保つ。配当は性向 35% で続けるが、成長の話は消え、小さな専業メーカーとして静かに利益を出す姿になる。
- 電源機器:数量 1.9(出荷台数(万台、推定))× 価格 58(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 9 億円。1.94 万 × 57.5 万円(物価並みの伸び 1.15 倍)、営業利益率 8.0%
- 電子計測器:数量 0.7(出荷台数(万台、推定))× 価格 46(1 台あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。0.72 万 × 46.0 万円(物価並みの伸び 1.15 倍)、営業利益率 8.0%
- 修理・校正:数量 1.0(受付件数(万件、推定))× 価格 6.00(1 件あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。1.00 万 × 6.0 万円(物価並みの伸び 1.20 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:ROE 事業分は 4% 前後で k 7.25% を大きく下回る。k 以下の会社の PER 上限は 12.5 倍。稼ぐ力の弱った会社なので上限の 7 割強の 9.0 倍に置いた。余った現金は 0.5 倍の約 19 億円に減らし、戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:中国・台湾勢の価格破壊に加え、電池・半導体の技術標準が変わって設計をやり直す複合の筋書き。実現すれば深いが、国内の安全試験の底があるので確率は 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電源機器
直流・交流の安定化電源、回生型の双方向電源、電子負荷など。電気自動車・蓄電池・パワー半導体・データセンターの評価に使う。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.2 | 50 | 108 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2.8 | 67 | 188 | 26 |
取り方:2026/03 期の電源機器の売上 107.6 億円を、小型の安定化電源(十数万円)から回生型の大型電源(数百万円)までの平均で約 50 万円とみて、約 2.15 万台に分けた(台数は推定。開示は無い)。台数は実質の数量で、物価の 3% と高機能品への移行は単価に入れる。営業利益は開示が無く、全社の営業利益率 14.5% を売上比で配分した。
電子計測器
耐電圧・絶縁抵抗の安全試験器、EMC(電磁ノイズ)試験器、自動車電装の評価装置。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 40 | 34 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 54 | 52 | 7 |
取り方:電子計測器の売上 33.7 億円を、耐電圧試験器(数十万円)から EMC 試験器(数百万円)までの平均で約 40 万円とみて、約 0.84 万台に分けた(推定)。台数は実質、物価と製品の高度化は単価に入れる。営業利益は全社の営業利益率を売上比で配分した。
修理・校正
納入した電源・計測器の修理と校正(精度の定期確認)。
| 数量受付件数(万件、推定) | 価格1 件あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 5.00 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 6.70 | 8 | 1 |
取り方:修理・校正の売上 5.6 億円を、1 件あたり約 5 万円とみて約 1.1 万件に分けた(推定)。件数は納入した機器の台数に連動して増える。営業利益は全社の営業利益率を売上比で配分した。
リスクと懸念
電気自動車・電池の設備投資の先送り
電池・電気自動車向けの試験は、直近の利益率を押し上げた分野だ。電気自動車の販売が各地で伸び悩めば、試験の設備投資は先送りされやすい。過去の景気後退では、2009 年 3 月期に最終赤字を出した。需要が止まれば、固定費の重い国内の生産拠点で利益が大きく削られる。
中国・台湾勢の価格攻勢
台湾のチェロマは高電圧の電池試験に SiC 素子を使った電源を出し、中国の新興メーカーは同じ回生型を低い値段で売り込む。電池試験の電源は仕様がそろいやすく、値段で選ばれやすい。売上 150 億円の菊水は、研究開発費で大手に及ばず、汎用に近い領域から値崩れが進む恐れがある。
利益率の水準が定着したかが未確認
営業利益率は 2021 年 3 月期まで 5〜8% で、2022 年 3 月期から急に 10% を超えた。実績は 5 年に満たない。製品の高単価化や値上げが定着したのか、好況の一時的な押し上げなのかは、まだ判断できない。
資本効率の改善が進まない
配当性向は 3 割台、自社株買いはなく、利益の 6 割強が内部に残る。現金は 57 億円あり、会社自身も PBR が 1 倍を割る状況を認めるが、使い道は示していない。取引先持株会と事業会社が筆頭株主で、資本効率を求める圧力が弱い。現金が積み上がるだけなら、株主に戻る価値は半分程度にとどまる。
海外展開の遅れと地域の偏り
海外比率は 2023 年 3 月期の 48% から 34% へ下がり、計画の 35% でも国内依存が強い。国内の製造業が弱れば、試験器・電源の需要の土台が細る。欧州は直近でも低調だった。アジア拠点は 2025 年に作ったばかりで、成果はこれからだ。
製品別の利益が見えない
単一セグメントのため、電源と計測器のどちらがどれだけ稼いでいるかが外から分からない。成長の担い手が変調しても、決算に表れるまで気づきにくい。
株式の流動性と安定株主
時価総額が 240 億円ほどで、取引先持株会・事業会社・銀行が筆頭株主に並ぶ。売買が薄く、株価は需給で振れやすい。買収の可能性は推定で 10 年に 2 割ほどあるが、安定株主が多く、実現しにくい。
今後の分かれ目
- 電池・電気自動車向けの試験器・電源の受注が 2 期続けて伸びたら
- 利益率 15% 近辺が定着したとみて、強気側の筋書きに確率を移す。
- 電気自動車の販売や電池工場の新設が各地で止まり、受注が前年を割ったら
- やや悲観側へ寄せる。営業利益率は 10% 前後まで戻る前提で見直す。
- 中国・台湾勢が日本の電池試験の電源で値引き提案を広げ、菊水の単価が下がり始めたら
- 価格決定力の侵食が始まったと見て、悲観側の確率を上げる。
- 会社が自社株買いか配当性向の引き上げを具体的に出したら
- 現金の戻り方を 0.5 から引き上げる方向で見直す。価値の上乗せは最大でも現金の半分ほどだ。
- 海外比率が 40% を超え、米国やアジアで電源が伸び続けたら
- 地域の偏りが薄れ、成長の確度が上がったとみる。やや楽観に寄せる。
- 買収の提案が出たら(推定確率は 10 年で 2 割)
- 持ち合い株主が応じるかを見て、価値の上積みを別に考える。
見ておくもの
- 電子計測器と電源の受注(決算説明の定性コメント)と第 2 四半期(2026 年 10 月 29 日予定)の進捗
- 営業利益率が 15% 近辺を保てるか(会社予想は今期 16%)
- 海外比率の推移(計画は 35%)
- 自社株買い・配当性向の変更など、現金の使い道の発表
- 電気自動車の販売と電池工場の設備投資の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER や過去の PBR に寄せず、利益で測った。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で、k は基本 7.5% に循環+0.5%・値決め力-0.25%・寿命+0.25% を入れた 8.0%、g は 4%、RONIC は k を超える ROE の半分が残るとして置き、上限の 8 割台に置いた。事業に要らない現金 37 億円は分けて足し、戻り方 0.5 を掛けた。今の株価を見て筋書きを変えていない。減価償却は開示が無く推定 4 億円前後で、今ある設備の分は物価で増やさず、新設備の分だけ新しい値段で足される前提とした。10 年後は 6 億円前後で、費用の物価上昇より少し軽く、利益率を 0.3 ポイントほど支える一方、更新投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を超える分は現金が出る。借入は使わず内部の現金で賄う。新リース会計の影響は小さく、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→18.67 倍・やや楽観 PER 13.2→18.13 倍・中立 PER 12→17.51 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。