結論
鈴木は、長野県須坂市に本社を置く、コネクタ(電気の接続部品)と、その金型・自動機器を手がける部品メーカーだ。売上 404.5 億円(2026 年 6 月期)の内訳は、電子部品コネクタ 6 割強、自動車電装部品コネクタ 1 割強、機械器具(自動機器・医療組立)と金型が残り。連結で営業利益 55.6 億円(営業利益率 13.7%)、従業員は 1,127 人。
筆者の結論は、10 年の価値が今の時価総額(488 億円)を下回る(差は 3 割ほどの割高)というものだ。2026/06 期は売上が 21.4% 増え、営業利益が 29.5% 増えて、会社が掲げた中期目標(売上 400 億円・営業利益 50 億円・ROE 10%)を達成した。一方、過去 10 年の ROE の中央値は 8.8% で、資本コストの 8.5% とほぼ同じ。
強みは、須坂の本社工場を中心とした金型から成形・組立までの一貫生産と、自己資本比率 66.4%、現金・投資有価証券が有利子負債を大きく上回る財務だ。弱みは、売上の 24% を住友電装 1 社に頼る顧客集中と、スマートフォン・半導体・車載に連動する循環、そして 2027/06 期に減価償却の 2 倍を超える 66.8 億円まで増やす設備投資だ。
中立では、10 年で売上が 568 億円(今の 1.4 倍)、営業利益率が 11.6%、営業利益が 66 億円になる。資本コストは 7.5%。この水準で、事業の値打ちは純利益の 11 倍ほどだ。
いちばん気にしているのは、設備投資の回収だ。2027/06 期の会社予想(売上 431.5 億円・営業利益 60.3 億円)は増収増益だが、投資が減価償却と固定費に変わるため、需要が一巡したとき利益率が下がりやすい。第 2 次中計(2027 年 2 月ごろ)の目標を見たい。
バリュー投資の観点から
価値投資の観点では、鈴木は「財務は健全だが、利益が一時的に高い可能性がある」会社だ。
よい点は 4 つある。自己資本比率 66.4%、有利子負債 15.1 億円と軽い。金型から組立までの一貫生産がある。営業利益率が 13.7% で、部品メーカーの中でも悪くない。配当方針が明確(DOE 4% か性向 50%)。
気になる点は、顧客集中(住友電装 24%)と、需要の循環、設備投資が減価償却の 2 倍を超える点だ。過去 10 年の ROE の中央値は 8.8% で、資本コストの 8.5% とほぼ同じ。2026/06 期の営業利益率 13.7% は、過去より高い山の年とみる。
筆者は、中立で営業利益率が 11.6% に戻ると見る。ROE は 8% 台で、資本コストと同じ水準。事業の価値は純利益の 11 倍ほどで、自己資本(318.9 億円)の 1.0 倍あまりにとどまる。今の時価総額(488 億円)は自己資本の 1.5 倍で、この差が「割高」の理由になる。
市場は、2026/06 期の増益の勢いと、増産投資の成果を織り込んでいるとみられる(kabufu の推計で 10 年以内の TOB・買収の確率は 20.3%)。筆者の中立には、買収の期待は入れていない。
何で稼ぐ会社か
鈴木は、長野県須坂市に本社工場を置き、コネクタを中心とした電子部品、自動車の電装部品、金型、自動機器、医療機器の組立を手がける。東証プライム、6 月決算で、2026 年 6 月末の連結従業員は 1,127 人。国内のほか、中国(鈴木東新電子(中山)、香港)、タイ(S&S 系の会社)、インドネシア(PT Sugindo Indonesia)に子会社があり、非支配株主持分が純資産に 12.8 億円ある。
売上は 404.5 億円(2026 年 6 月期、前期比 +21.4%)。セグメント別(取引消去前)は、電子部品コネクタ 260.8 億円(利益 51.2)、自動車電装部品コネクタ 58.3 億円(7.9)、機械器具 70.5 億円(8.7、うち自動機器 41.5・医療組立 29.0)、金型 14.8 億円(3.4)、賃貸 0.1 億円。セグメント利益の合計 72.0 億円から、全社費用などの調整 −16.5 億円を引いて、営業利益 55.6 億円。
地域別の売上は、日本 265.8 億円、中国 85.1 億円、タイ 41.1 億円、その他 12.5 億円。顧客別では、住友電装 97.0 億円(売上の 24.0%)、Fujikura Conec(THAILAND)41.1 億円、テルモ 35.9 億円。原材料は銅合金(伸銅品)が中心。
財務は、現金 83.0 億円、投資有価証券 57.2 億円に対し、有利子負債 15.1 億円と軽い。営業 CF 69.1 億円、設備投資 27.8 億円で、フリーキャッシュフローは 34.7 億円。
大株主は、須坂市の有価証券投資運用会社クリンゲル(その他の関係会社、15.83%)、日本マスタートラスト信託(10.19%)、日本カストディ銀行(7.11%)、従業員持株会(3.57%)、社長の鈴木教義氏(2.66%)で、上位 10 名で約 48.5%。
優良さと弱いところ
堀は、金型から成形・組立までの一貫生産と、顧客との長い取引関係。ただし値決め力は弱く、顧客集中が深い。
コネクタは、顧客の機器ごとに仕様が決まる部品で、一度採用されると同じ機種の間は取引が続く。金型・成形・組立を本社工場で内製し、金型を自社で作れる強みがある。自動車向けは、293 品目を年 2.93 億個出荷し、1 個あたりの単価は小さい。小さい部品を大量に作る工程の管理が競争力になる。
弱いのは、価格を決める力と顧客集中だ。売上の 24% を住友電装 1 社が占め、上位 3 社(住友電装・Fujikura Conec・テルモ)で約 4 割に達する。顧客の値下げ要請を受けやすく、原材料の銅合金の価格変動は転嫁に時間差がある。
財務は健全。自己資本比率 66.4%、現金 83.0 億円と投資有価証券 57.2 億円に対し、有利子負債は 15.1 億円。ただし 2027/06 期の設備投資計画は 66.8 億円と、2026/06 期(27.8 億円)の 2.4 倍で、減価償却(計画 32.6 億円)の 2 倍を超える。生産が須坂市に集中している点は災害リスクでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コネクタ業界は、スマートフォン、パソコン、通信機器、産業機器、自動車、医療機器など、あらゆる電子機器に使われる部品の市場で、世界の売上は数兆円規模とみられる。需要は、機器の販売台数と、1 台あたりの接続点数の増加(機器の高機能化・電動化・高速通信化)の掛け算で決まる。
上位は、ヒロセ電機、日本航空電子工業、TE コネクティビティ、アンフェノールなど。車載は、住友電装、矢崎総業などの電装大手とその系列が占め、鈴木のような中堅は、特定の用途や顧客に深く入る形で食い込む。
参入の壁は、顧客の認定(採用審査)と、金型・成形・めっきの精度。一度採用されると機種の間は取引が続くが、次の機種で他社に変わる可能性は残る。需要は、スマートフォン・半導体製造・設備投資・車載電池の各サイクルで、年ごとの振れが大きい。
分かれ目は、車載電池や半導体製造装置のような成長用途にどれだけ入れるか、金型の内製力で納期とコストをどこまで守れるか、そして生産の海外展開(中国・タイ・インドネシア)と国内の増産をどう配分するか。ここで見るのは、設備投資を回収できる需要が、10 年のうちどれだけ続くかだ。
資本政策と M&A
配当は、2026/06 期が総額 15.1 億円で、配当性向 40.2%。2027/06 期は増配の計画(総額 16 億円ほど)。方針は DOE(純資産配当率)4% か、配当性向 50% の高いほう。自己株は少なく、自社株買いは大きくない。
営業 CF は 69.1 億円、設備投資は 27.8 億円(減価償却 27.2 億円)で、フリーキャッシュフローは 34.7 億円。2027/06 期は設備投資計画が 66.8 億円に増える。営業 CF が同じ水準でも、フリーキャッシュフローはほぼゼロになり、配当 16 億円ほどは現金の取り崩しで賄う形になる。
現金 83.0 億円は前期末の 68.1 億円から 14.9 億円増えた。投資有価証券は 25.7 億円から 57.2 億円に増え、含み益が自己資本を押し上げている(その他有価証券評価差額金 36.8 億円、繰延税金負債 12.8 億円)。
筆者の見方では、余った資産は現金・投資有価証券の合計 140.2 億円から有利子負債と運転に要る現金(約 67 億円)を引いた約 58 億円。大きな設備投資が続く間は、余った資産が株主に戻る割合は半分とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
数字が示す勢いは強い。2026/06 期は売上 +21.4%、営業利益 +29.5%(利益率 13.7%)、純利益 37.5 億円。前の中期目標(売上 400 億円・営業利益 50 億円・ROE 10%)を達成し、会社は 2027/06 期も増収増益(売上 431.5 億円・営業利益 60.3 億円・純利益 39.8 億円)を見込む。第 2 次中計は 2027 年 2 月ごろに示される予定。
需要の追い風も重なる。電子部品コネクタは、スマートフォン・半導体製造・産業機器の回復が続き、自動車電装部品コネクタはリチウムイオン電池まわりの部品が伸びている(顧客は A 社、B 社、D 社)。機械器具は、医療組立(テルモ向け)と自動機器が堅調。
2027/06 期の設備投資 66.8 億円は、需要の読みに自信がなければ出せない額で、会社は先に生産能力を作って受注に備えている。生産は須坂の本社工場に加え、中国・タイ・インドネシアに広がり、顧客の海外生産に近い場所で供給できる。
財務の余裕も大きい。自己資本比率 66.4%、有利子負債 15.1 億円。投資が空振りしても、借金で苦しくなる会社ではない。強気側は、設備投資が量産に結びつき、売上が 760 億円、営業利益率が 16% 台に乗る筋書きだ。
慎重な見方
2026/06 期の増益は、需要の回復が重なった一時的な山である可能性がある。過去 10 年の純利益と営業利益の比の中央値は 0.65 で、ROE の中央値は 8.8% と資本コストの 8.5% 並み。山の年の営業利益率 13.7% が続くとみるのは、実績の裏づけが薄い。
顧客集中は構造的だ。住友電装向けが売上の 24%、上位 3 社で約 4 割を占める。顧客が内製化や値下げを求めれば、利益の大部分が動く。車載電池の部品需要が落ちれば、車載の出荷(年 2.93 億個)が減って固定費が重くなる。
2027/06 期の設備投資 66.8 億円は、減価償却(32.6 億円)の 2 倍を超え、2026/06 期(27.8 億円)の 2.4 倍。稼働が上がらないと、償却費が利益率を 3〜4 ポイント削る。営業 CF が同じ水準なら、フリーキャッシュフローはほぼゼロになる。
生産が須坂市に集中している点は、災害に弱い。為替も効く。2026/06 期は為替差益 1.6 億円が営業外に出たが、円高に振れれば海外売上の円換算が減る。時価総額 488 億円は、自己資本の 1.5 倍。山の利益に対して高い値段を払うことになる。
どちらに重みを置いたか
2026/06 期の業績は強く、財務も軽いので、強気の見方には実がある。ただし顧客集中、需要の循環、設備投資が償却の 2 倍を超える点を踏まえ、中立では営業利益率が 11.6% に落ち着き、ROE は資本コストと同じ 8% 台にとどまる、と筆者は見る。時価総額は、山の利益を前提にしているとみる。第 2 次中計で営業利益の水準が示され、設備投資の回収が見えれば、この見方は見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 4,716 円677 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,189 円171 億円)。 今の値に割り戻すと 3,116 円448 億円、今との差 −3.8%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,866 円1,417 億円 | 2,131 円306 億円 | +270.3% | +14.0% | 960 円138 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,555 円1,085 億円 | 1,588 円228 億円 | +182.2% | +10.9% | 1,829 円263 億円 |
| 中立 | 36% | 5,292 円760 億円 | 1,274 円183 億円 | +102.7% | +7.3% | 2,364 円339 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,675 円241 億円 | 801 円115 億円 | −23.6% | −2.7% | 619 円89 億円 |
| 悲観 | 11% | 835 円120 億円 | 383 円55 億円 | −62.4% | −9.3% | 134 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,716 円677 億円 | 1,189 円171 億円 | +82.3% | +6.2% | 5,905 円848 億円 |
今の株価時価総額 3,240 円465 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 電池・半導体・医療の需要が重なり、売上が 1.9 倍の 760 億円、営業利益率が 16% に乗る 利益 81 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 9,866 円1,417 億円
電子部品コネクタが、スマートフォン・半導体製造装置・産業機器・車載の各方面で伸びる。2027/06 期に 66.8 億円まで増やす設備投資が、高精度の多極コネクタと車載電池向け部品の量産を支え、電子部品の実質売上は 1.4 倍になる。
自動車電装部品コネクタは、リチウムイオン電池まわりの部品が中心で、出荷が 5 億個を超える。機械器具(自動機器と医療組立)も、テルモ向けの医療組立と自動機器の受注が増え、実質で 1.3 倍になる。
価格は、材料費や賃金の上昇を転嫁し、仕様の高度化で名目 1.3 倍前後まで上がる。営業利益率は 16% 台に乗り、営業利益は 120 億円ほどになる。配当は純利益の 5 割で、ROE は 13% に届く。ただし内部に積み上がる余った資産は 10 年で 130 億円を超え、全部は株主に戻らない。
- 電子部品コネクタ:数量 140(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 3.39(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 475 億円・営業利益 104 億円。数量 1.40 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 22.0%
- 自動車電装部品コネクタ:数量 527(出荷個数(百万個))× 価格 26(1 個あたり価格(円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 20 億円。数量 1.80 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 15.0%
- 機械器具(自動機器・医療組立):数量 130(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.95(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 16 億円。数量 1.30 倍・価格 1.35 倍・営業利益率 13.0%
- 金型・賃貸:数量 120(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.19(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 7 億円。数量 1.20 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)102 億円。全体の PER 16.6 倍、時価総額 1,417 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/06 期に営業利益が 29.5% 増え、会社は 2027/06 期も増益を見込み、設備投資を 2.4 倍の 66.8 億円に増やす。この投資が車載電池や半導体向けの大型案件に結びつけば、10 年で売上が倍近くになる。ただし顧客の需要は景気に左右され、利益率 16% は高い水準なので、確率は 1 割弱に置いた。
やや楽観 20% 電子部品と車載の増産投資が実り、売上が 660 億円、営業利益率が 14% 台を保つ 利益 62 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 7,555 円1,085 億円
増産投資が計画どおりに稼働し、新規案件が加わる。電子部品コネクタの実質売上は 1.28 倍、車載は出荷が 4.4 億個まで増える。第 2 次中計で示される売上・利益の目標を、おおむね達成する形になる。
名目の価格は 1.24〜1.32 倍で、物価並みか少し下。為替の円安が追い風になるが、顧客の値下げ要請と材料費の変動があり、全部は上がらない。営業利益率は 14% 台前半で、営業利益は 93 億円ほど。
配当は純利益の 45% を保ち、年 20 億円台後半で推移する。10 年の純利益は 62 億円ほど、ROE は 10% 台。資本コスト 7.5% を上回るが、増産投資で自己資本が増え、余った資産が 170 億円を超える点は差し引いて見る。
- 電子部品コネクタ:数量 128(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 3.23(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 414 億円・営業利益 81 億円。数量 1.28 倍・価格 1.24 倍・営業利益率 19.5%
- 自動車電装部品コネクタ:数量 440(出荷個数(百万個))× 価格 25(1 個あたり価格(円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 16 億円。数量 1.50 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 14.0%
- 機械器具(自動機器・医療組立):数量 120(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.93(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 14 億円。数量 1.20 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 12.5%
- 金型・賃貸:数量 110(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.19(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 6 億円。数量 1.10 倍・価格 1.27 倍・営業利益率 28.0%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 16.03 倍、時価総額 1,085 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が 2026/06 期に達成した中期目標(売上 400 億円・営業利益 50 億円・ROE 10%)に続く第 2 次中計が、2027 年 2 月ごろに示される予定。増産投資と新規案件で売上が 1.6 倍まで伸び、利益率が今の水準(13.7%)に近い 14% 台を保つ筋書き。強気側の中心として 2 割に置いた。
中立 36% 増産投資は回収されるが、利益率は 11% 台に落ち着き、営業利益は 66 億円 利益 44 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 5,292 円760 億円
売上は 2026/06 期の 404 億円から 568 億円へ、10 年で 1.4 倍。電子部品コネクタは実質で 1.15 倍、価格は物価(1.34 倍)より低い 1.18 倍。車載は出荷が 3.8 億個に増え、1 個あたりの価格は 1.25 倍。機械器具は 1.1 倍で、金型は横ばい。
営業利益率は 11.6% で、2026/06 期の 13.7% より 2 ポイントほど低い。需要が正常化し、増産投資の減価償却(2027/06 期の計画 32.6 億円)が重くなり、顧客の値下げ要請もある。営業利益は 66 億円、純利益は 44 億円。
配当は純利益の 45% ほど(会社の方針は DOE 4% か性向 50%)。ROE は 8% 台で、資本コスト 7.5% とほぼ同じ。事業の価値は純利益の 11 倍ほどで、自己資本の厚みは積み上がるが、その分が株主の取り分に変わるのは半分とみた。
- 電子部品コネクタ:数量 115(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 3.08(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 354 億円・営業利益 60 億円。数量 1.15 倍・価格 1.18 倍・営業利益率 17.0%
- 自動車電装部品コネクタ:数量 381(出荷個数(百万個))× 価格 25(1 個あたり価格(円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 11 億円。数量 1.30 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 12.0%
- 機械器具(自動機器・医療組立):数量 110(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.92(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 101 億円・営業利益 11 億円。数量 1.10 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 11.0%
- 金型・賃貸:数量 100(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.19(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 26.0%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)133 億円。全体の PER 15.14 倍、時価総額 760 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027/06 期の会社予想(売上 431.5 億円・営業利益 60.3 億円)を土台に、10 年で売上が 1.4 倍(実質 1.1〜1.3 倍と物価)に伸びる筋書き。2026/06 期の営業利益率 13.7% が山の年とみて、利益率は 11% 台に戻る形に置いた。最もありそうな筋書きとして 36% を置いた。
やや悲観 25% 需要の山が過ぎ、増産投資が重荷になり、営業利益率が 5% 台に落ちる 利益 16 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 1,675 円241 億円
2026/06 期の増益は、スマートフォン・半導体・産業機器向けの回復が主因だった。この需要が一巡し、顧客の在庫調整が入る。電子部品コネクタの実質売上は 0.95 倍、価格は 1.08 倍に抑えられる。
2027/06 期に 66.8 億円まで増やした設備投資の減価償却が重くなり、稼働率が上がらないと固定費が利益を削る。営業利益率は 5% 台に落ち、営業利益は 25 億円ほど。純利益は 16 億円。
配当は DOE 4% を守って年 13〜15 億円を払い、純利益の 5 割近くになる。ROE は 3% 台で資本コスト 7.5% を大きく下回る。余った資産が 180 億円を超えるが、事業に再投資できず、株主の取り分に変わる分は半分にとどまる。
- 電子部品コネクタ:数量 95.0(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 2.82(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 268 億円・営業利益 32 億円。数量 0.95 倍・価格 1.08 倍・営業利益率 12.0%
- 自動車電装部品コネクタ:数量 322(出荷個数(百万個))× 価格 23(1 個あたり価格(円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 6 億円。数量 1.10 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 8.0%
- 機械器具(自動機器・医療組立):数量 95.0(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.86(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 6 億円。数量 0.95 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 7.0%
- 金型・賃貸:数量 90.0(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.16(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。数量 0.90 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 20.0%
倍率:純利益は 16 億円(ROE 3% 台)と資本コストを下回り、倍率の式は成り立たない。稼ぐ力(事業の純利益 約 14 億円 ÷ k 7.5% = 約 165 億円)に、余った資産の一部を加えた約 240 億円に合わせ、今の自己資本 318.9 億円に PBR 0.754 倍を掛けた 240 億円とした。
確率:スマートフォン・半導体・産業機器向けの回復は 2026/06 期の増益の主因で、この需要は循環する。2027/06 期の設備投資が減価償却の 2 倍を超え、稼働が上がらなければ固定費が重い。このとき売上は横ばいで利益率が 6% 台に落ちる。循環業種の実績に近い筋書きとして 25% を置いた。
悲観 11% 主要顧客の需要が崩れ、設備が余り、営業赤字になる 利益 −11 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 835 円120 億円
住友電装向けが売上の 24%、上位 3 社で約 4 割を占める構造が、需要の落ち込みを増幅する。主要顧客の車載電池部品の需要が落ちる、もしくは顧客が内製や他社に切り替える。車載の出荷は 2.5 億個に減り、電子部品コネクタの実質売上は 0.65 倍まで縮む。
拡張した設備が余り、減価償却と人件費の固定費が利益を食う。営業利益率はマイナスになり、営業利益は −11 億円ほど。減損も出る。本社費は売上が減っても減らない。
配当は DOE 4% を目安に下げて 6 億円ほどに抑える。自己資本は余った資産(現金・投資有価証券)を含めて 400 億円ほどあり、赤字でも財務は持つ。ただし事業の稼ぐ力は市場に評価されず、売れる資産と余った現金が価値を決める。
- 電子部品コネクタ:数量 65.0(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 2.48(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 8 億円。数量 0.65 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 5.0%
- 自動車電装部品コネクタ:数量 249(出荷個数(百万個))× 価格 20(1 個あたり価格(円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 2.0%
- 機械器具(自動機器・医療組立):数量 80.0(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.78(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 2.0%
- 金型・賃貸:数量 70.0(実質売上の指数(今 = 100))× 価格 0.15(指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量 0.70 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 10.0%
倍率:営業赤字が続き、稼ぐ力は値を支えない。事業の価値は小さく、10 年後に積み上がる余った資産の半分(約 94 億円)と事業の残存価値(約 25 億円)に合わせ、今の自己資本 318.9 億円に PBR 0.376 倍を掛けた 120 億円とした。
確率:住友電装向けが売上の 24% を占め、上位 3 社で売上の約 4 割を占める。主要顧客の車載電池部品の需要が崩れる、または顧客が内製や他社に移すと、設備と人員が余って赤字になる。確率は低いが、顧客集中は実際のリスクなので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子部品コネクタ
スマートフォン、半導体製造装置、産業機器、通信機器などに使う小型のコネクタとその周辺部品。長野県須坂市の本社工場のほか、中国(鈴木東新電子(中山)など)、タイなどで生産する。2026/06 期の売上は 260.8 億円で、会社全体の 6 割強。
| 数量実質売上の指数(今 = 100) | 価格指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 2.61 | 261 | 51 |
| 10 年後 中立 | 115 | 3.08 | 354 | 60 |
取り方:2026/06 期の電子部品コネクタ売上 260.81 億円(セグメント間の取引消去前)を、実質売上の指数 100(今)と価格 2.6081 億円で割った。この事業の出荷個数は開示がなく、数量は実質売上の指数で置いた。営業利益 51.17 億円(セグメント利益)。10 年の中立は、実質 1.15 倍(スマートフォン・半導体・産業機器向けの需要が、2026/06 期の回復後に正常化する)、価格 1.18 倍(物価の 1.34 倍より低い。顧客の値下げ要請と製品ミックスの変化を見込む)。 【数量・率の点検】数量は実質の指数、価格は名目で、二重がけなし。
自動車電装部品コネクタ
自動車の電装系に使うコネクタ。特にリチウムイオン電池まわりの部品が成長を支えてきた。顧客は電装の大手メーカーで、住友電装向けの売上が会社全体の 24% を占める。年間の出荷は 2.93 億個、品目は 293 種類。
| 数量出荷個数(百万個) | 価格1 個あたり価格(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 293 | 20 | 58 | 8 |
| 10 年後 中立 | 381 | 25 | 95 | 11 |
取り方:2026/06 期の自動車電装部品コネクタ売上 58.25 億円。出荷 293 百万個、1 個あたり 19.88 円(売上÷出荷個数、名目)。売上=個数×価格×0.01(単位換算)。営業利益 7.85 億円(セグメント利益、利益率 13.5%)。10 年の中立は、出荷 1.3 倍(リチウムイオン電池まわりの部品の拡大)、1 個あたり価格 1.25 倍(物価より低い。部品点数の多いコネクタは単価が下がりやすく、顧客の値下げ要請を見込む)。 【数量・率の点検】数量は個数(実物)、価格は名目で、二重がけなし。
機械器具(自動機器・医療組立)
自動機器(組立・検査などの自動化設備)41.5 億円と、医療組立(医療機器の組立受託、テルモ向けが中心)29.0 億円。ねじ・プレス・樹脂成形から組立までの内製力を生かす。
| 数量実質売上の指数(今 = 100) | 価格指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 0.71 | 71 | 9 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.92 | 101 | 11 |
取り方:2026/06 期の機械器具売上 70.50 億円(自動機器 41.51 億円・医療組立 28.99 億円)。数量は実質売上の指数 100、価格は 0.7050 億円。営業利益 8.74 億円(セグメント利益、利益率 12.4%)。10 年の中立は、実質 1.1 倍(自動機器は設備投資の景気に連動し、医療組立はテルモ向けが中心)、価格 1.30 倍。 【数量・率の点検】数量は実質の指数、価格は名目で、二重がけなし。
金型・賃貸
自社のコネクタ生産に使う金型の製造・外販が中心。賃貸は 0.08 億円の売上で小さく、一緒にした。
| 数量実質売上の指数(今 = 100) | 価格指数 1 ポイントあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 0.15 | 15 | 4 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.19 | 19 | 5 |
取り方:2026/06 期の金型売上 14.82 億円と賃貸 0.08 億円の合計 14.90 億円。営業利益は金型のセグメント利益 3.40 億円に賃貸 0.89 億円を足した 4.29 億円。金型は自社コネクタの生産に使う分が大きく、外部売上は小さい。10 年の中立は、実質横ばい(1.0 倍)、価格 1.25 倍。 【数量・率の点検】数量は実質の指数、価格は名目で、二重がけなし。
リスクと懸念
顧客集中
住友電装向けが売上の 24.0%(97.0 億円)、Fujikura Conec(THAILAND)が 41.1 億円、テルモが 35.9 億円。上位 3 社で約 4 割。1 社の需要変動や調達方針の変更が、売上と利益に大きく響く。
需要の循環
2026/06 期の増益は、スマートフォン・半導体・産業機器向けの回復が主因。この需要は循環し、顧客の在庫調整が入ると売上が急に落ちる。営業利益率 13.7% は過去より高い。
設備投資の回収
2027/06 期の設備投資計画は 66.8 億円(前期 27.8 億円)で、減価償却(計画 32.6 億円)の 2 倍を超える。稼働が上がらなければ、減価償却の増加が利益率を下げ、フリーキャッシュフローがほぼゼロになる。
銅合金の価格と為替
原材料は銅合金(伸銅品)が中心で、相場の変動を価格に転嫁するまでに時間差がある。為替は、2026/06 期に為替差益 1.6 億円が出たが、円高に振れると海外売上の円換算が減る。
生産拠点の集中と災害
生産が長野県須坂市の本社工場に集中している。地震や水害で止まると、供給責任と売上に直接響く。中国・タイ・インドネシアにも拠点があるが、金型と主要工程は須坂に集まる。
大株主と買収
須坂市の有価証券投資運用会社クリンゲル(15.83%)が筆頭株主。その他の関係会社で、資本の動きに影響しうる。kabufu の推計で 10 年以内の TOB・買収の確率は 20.3%。時期も条件も読めない。
今後の分かれ目
- 2027/06 期の営業利益が会社予想(60.3 億円)を上回り、第 2 次中計で営業利益 70 億円超を掲げる
- 利益率が山でなく水準である証拠になり、中立を 12% 台に引き上げる。強気側の筋書きに寄る。
- 2027/06 期の第 2 四半期以降に、電子部品コネクタの売上が前年を割る
- 需要の山が過ぎた兆しで、中立を 10% 台に下げる。慎重側の筋書きに寄る。
- 住友電装向けの売上比率が 30% を超える、または 20% を割る
- 顧客集中が深まるか、分散が進むかを示す。リスクの重さの見直しが必要。
- 設備投資 66.8 億円の実行後、営業 CF が設備投資を下回る状態が続く
- 投資の回収が遅れる形で、配当の原資が現金の取り崩しになる。慎重側の筋書きに寄る。
- 会社が余った現金・投資有価証券の活用(自社株買い、配当方針の引き上げ)を発表する
- 約 58 億円の余った資産の戻り方を見直す。戻りを半分から 1.0 に引き上げる。
- 銅合金の価格が急騰し、営業利益率が 2 ポイント以上低下する
- 価格転嫁の弱さを示す。値決めの評価を見直す。
見ておくもの
- 営業利益(2027/06 期の会社予想は 60.3 億円)と、第 2 四半期の進捗
- 第 2 次中期経営計画(2027 年 2 月ごろ)の売上・利益・ROE の目標
- 電子部品コネクタの売上と、車載の出荷個数(2026/06 期は 2.93 億個)
- 住友電装向けの売上比率(2026/06 期は 24.0%)と、上位 3 社の比率
- 設備投資(2027/06 期の計画は 66.8 億円)の実行額と、営業 CF・現金(83.0 億円)
- 配当(2027/06 期は増配の計画、総額 16 億円ほど)と、自社株の扱い
倍率と資本コストの決め方
電子部品・車載・機械器具・金型の 4 つのセグメントを、実質の数量(出荷個数、または実質売上の指数)と名目の価格に分けて積んだ。価格は 10 年 1.18〜1.30 倍で、物価の 1.34 倍より低い(顧客の値下げ要請を見込む)。営業利益率は、2026/06 期の 13.7% と過去の水準の間の 11.6% に置いた。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0%(循環 +0.5・値決め +0.25・寿命 +0.25)で k は 7.5%。倍率は、事業の ROE から RONIC と g 3.0% の式で出し、今の PER や PBR からは置かなかった。余った資産 58 億円は戻りを半分とし、悲観の 2 つは売れる資産と事業の PER ベースで置いた。結果、価値は時価総額 488 億円を下回った。市場は 2026/06 期の増益の勢いと、増産投資の成果を織り込んでいるとみられるが、中立には入れていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。