結論
ニチコンは、電気をためて整えるコンデンサと、家庭用蓄電池・V2H(EVから家へ給電する装置)・急速充電器の会社だ。AIサーバーの電源に使う大型コンデンサが足りなくなり、会社は全製品を値上げし、この秋に生産能力を約2.5倍へ引き上げる。
筆者は、この利益の回復を本物と見る。会社予想の営業利益は2027年3月期で87億円、前期より3割強増える。2026年4〜6月期はすでに通期の3割を稼いだ。ただし10年の物差しで測ると、顔つきが変わる。過去17年のうち赤字の期が6回ある。営業利益率は10年で最高でも7%に届かない。
だから値上げ後の利益をそのまま10年先へ伸ばさない。AI向けの需要は長く続くが、中国・韓国の追い上げで値段は元へ戻りやすい。家庭用蓄電池は補助金で売れ行きが振れる。中立の筋書きでは、営業利益を10年後に190億円前後、営業利益率を6%で置いた。
結論はほぼ適正だ。強気の筋書きがすべて当たれば今の数倍になるが、確率はそこまで高くない。9月に出した220億円の転換社債は、設備投資の資金を手当てする一方で、株の希薄化という代償を伴う。割安と言い切れる材料はなく、買い増す理由は、利益の山が思ったより長く続くと確信できた時だけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ニチコンを「市況に乗る部品会社」と見る。10年先もこの事業が残ることは確かだ。コンデンサは電気を使う限り要り、AIと電動車とエネルギー管理で需要の土台は広がる。問題は、10年先にこの会社が超過利益を出し続けているかどうかだ。
堀は、AI向けの大型アルミ電解とV2Hに限られる。前者は日本勢の寡占に近いが、中国勢の参入で崩れうる。後者は国内の小さな市場で、補助金に依存する。会社全体を「強い堀」とは言えず、新しい投資で稼ぎが残る割合は、普通の半分で置く。
オーナー利益、つまり設備投資を引いたあとに株主に残る利益は、今は薄い。毎年約100億円の設備投資と、これから加わる170億円の投資が、利益の伸びに見合うかが勝負になる。経営の資本配分は、まだ検証の途中だ。この会社は、過去に何度も利益を出せずにきた。
安全域は小さい。10年の中立でも、今の時価総額に対して本質価値は同じ程度で、割安の余地はほとんどない。強気の筋書きでは価値が大きく上に振れる一方、悲観では半分以下に落ちる。見込みの幅が広く、読み切れない部分が大きいので、決め打ちはしない。
何で稼ぐ会社か
ニチコンの稼ぎは2本柱だ。コンデンサ事業が売上の6割(2026年3月期で約1,030億円)、NECST事業が4割(約670億円)を占める。
コンデンサ事業は、アルミ電解コンデンサ、導電性高分子の固体コンデンサ、フィルムコンデンサを作る。アルミ電解は電圧を安定させる部品で、AIサーバーの電源には1台に数千個が載る。導電性高分子品は通信基地局や車載の基板に使う。フィルムコンデンサは、電動車のインバータ(モーターを回す電力変換器)に入る。売る先はサーバー・通信機器・自動車・産業機器のメーカーだ。
NECST事業は、同社が国内で先頭を走る家庭用蓄電システムとV2H、EV用の急速充電器、医療機器などに使う電源を作る。V2Hは2012年に世界で初めて製品化した会社で、国内シェアは自社発表で約9割にのぼる。買い手は住宅メーカーや販売店、充電設備の設置事業者で、国の補助金の有無で需要が動く。
同社は2021年に「2026年3月期に売上2,000億円・営業利益率10%以上」を掲げたが、実績は売上1,697億円・営業利益率3.8%にとどまった。2030年度に売上5,000億円とする構想はあるが、数字の根拠は公開されていない。筆者は、会社の計画より、足元の値上げと増産という確かな動きを重く見る。
優良さと弱いところ
優良さは「部分的にある」と筆者は見る。すべてを持っているわけではない。
堀(他社がまねできない強み)は2つある。1つはAIサーバー向けの大型アルミ電解コンデンサだ。この分野は日本勢がほぼ独占し、日本ケミコン、ルビコン、ニチコンが供給の中心にいる。壊れにくさと長い寿命が問われる部品で、顧客は実績のある相手を替えにくい。もう1つはV2Hで、先に市場を作った分、販売店との関係と施工の実績が厚い。
弱い所も多い。コンデンサでは日本ケミコンが規模で上で、アルミ電解の世界首位とされる。ニチコンは2番手だ。値段は需給で決まる面が強く、供給不足が解ければ値上げ分は削られやすい。NECST事業は国の補助金に左右され、2026年3月期は新製品の投入遅れで減益になった。
資本効率は低い。自己資本利益率は10年の中央値が4.5%で、資本コストに届かない年が多い。毎年約100億円を設備に投じても、利益がそれに見合って増えない時期が長かった。自己資本比率は61%と厚いが、これは稼ぐ力ではなく、使い切れていないお金の厚みだ。
2026年9月には約50億円の自社株買いを実施し、配当は連結配当性向30%を目安にした累進方針を掲げる。資本を意識した動きだが、同時に出した転換社債(220億円)は、希薄化を許してでも設備を増やす賭けでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の主役は、AIデータセンターと電動車、そして家庭・住宅のエネルギー管理だ。
AIサーバーでは、GPUの電源を安定させるために大型のアルミ電解コンデンサが大量に要る。1台に数千個載るとされ、供給できるのはほぼ日系メーカーのみだという。需要が供給能力を上回り、ニチコンは全製品を10〜15%値上げし、日本ケミコンも追随した。ニチコンは長L形アルミ電解コンデンサの能力を、2026年秋に前期比で約2.5倍へ上げる。日本ケミコンは「需要の伸びはあと5年続く」と述べている。
ただし、これは設備投資の山だ。コンデンサは過去に何度も、不足、増産、過剰、値崩れの順で一巡している。今回は中国のアルミ電解メーカーが追う立場にあり、AI向けの認定を取って参入すれば、値段はそこから崩れやすい。
車載では、電動車用のフィルムコンデンサが伸び筋だが、電動車の販売は鈍り、2026年3月期の中間決算では一部顧客の減産で売上が振れた。パナソニック、TDK、ケメット、中国勢が競合で、ニチコンが突出した地位にあるとは言いにくい。
家庭用蓄電池とV2Hは、電気料金の上昇、災害への備え、太陽光の余剰電力の活用が追い風だ。ただし補助金の予算は短期間で埋まり、受付が止まる。三菱電機・パナソニック・デンソー・東光高岳といった競合も、V2Hでシェアを狙っている。
資本政策と M&A
資本政策は、この半年で大きく動いた。
2026年9月、同社は2031年満期の転換社債(ユーロ円建て)を220億円発行し、同時に約50億円の自社株買いを実施した。転換価額は自社株買いの取得価格より約3割高い水準で、すべて株になれば発行済み株式の約9.5%が増える。資金のうち約170億円は生産能力の増強に使う。自社株買いは、社債発行に伴う株式の需給の悪化を和らげる役目を持つ。
筆者が気にするのは、設備を増やす判断の正しさだ。AI向けの需要が3年で終われば、2.5倍の能力はそのまま重荷になる。転換社債は、株価が転換価額を上回れば株に変わり、下回れば借金として返す。どちらに転んでも、株主にとって割に合うかは、利益の山の高さで決まる。
配当は連結配当性向30%を目安とし、2026年3月期は前期から増配した。政策保有株は2020〜2023年度に19銘柄・約50億円を減らし、2026年度までに連結純資産の20%未満へ下げる方針だ。買収の話は目立たず、TOBの対象になる可能性は、kabufuの推計で10年以内に16%程度だ。代表取締役会長は武田一平氏、社長は森克彦氏。
2026年9月の自己株式取得(約50億円)は実行済みで、株数に反映した。この分は10年の還元に入れていない。転換社債の発行(220億円)は別で、自社株買いはその需給対策。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIサーバー向けの需要は、一時の特需では終わらない。生成AIの学習用だけでなく、推論用の設備が世界中に広がり、データセンターの電力は10年にわたって増え続ける。サーバー1台に載るコンデンサの数も、電源の大電力化で増える。日本ケミコンが「あと5年伸びる」と言うのは、そのためだ。ニチコンが2.5倍に増やす能力は、早い段階で埋まる。
価格も強気に見てよい。アルミ箔や電力のコストが上がり、新規参入の壁は高い。AI向けは認定に時間がかかり、中国勢が入る頃には、次の世代の製品へ移っている。値上げは一度きりでなく、製品の高付加価値化と合わせて定着する。営業利益率が2桁に乗るのは、供給が締まった時の同業の姿だ。
NECSTも追い風を受ける。電気料金の上昇と災害への備えで、家庭用蓄電池とV2Hは普及の初期にある。データセンター向けの無停電電源や急速充電器も加わる。政府が補助金を続け、国内シェアの高さが効けば、利益率は7%台に乗る。
この見方では、2036年3月期の営業利益は470億円前後になる。会社が描く2030年度売上5,000億円の構想に近づく姿で、今の時価総額を数倍に押し上げる力がある。
慎重な見方
今回の利益回復は、供給不足による値上げが主因で、需要の伸びだけが原因ではない。値上げは一巡すれば止まり、競合の増産が追いつけば、値段は戻る。ニチコンが能力を2.5倍にする頃、同業の日本ケミコンやルビコン、そして中国勢も増産している。能力が出そろう2028年前後に、供給過剰が来るおそれがある。
自社の力にも不安がある。2021年に掲げた売上2,000億円・営業利益率10%は、5年たっても届いていない。毎年約100億円の設備投資を続けたのに、自己資本利益率は10年の中央値で4.5%。資本コストを下回る年が多い。ここに170億円の設備投資を加えれば、需要が外れた時の傷は深くなる。
NECSTも安定しない。2026年3月期は新製品の遅れで減益だった。補助金は予算が尽きれば止まる。中国の蓄電池メーカーが国内に入り、V2Hでも大手の電機メーカーが攻めれば、国内シェアの高さは守りにならない。
転換社債は、株価が上がれば希薄化し、下がれば借金として残る。どちらでも、株主にとって楽な形ではない。今の株価は、すでに回復と成長を相当に織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
強気の論は、AI向けの大型コンデンサという足元の事実に強く支えられている。一方で慎重な論は、過去の波の形と、資本効率の低い実績に支えられている。10年で見ると、後者のほうが重い。
確率は、楽観を12%、やや楽観を22%に抑え、中立を36%、やや悲観を20%、悲観を10%に置いた。悲観を10%にしたのは、構造的に負けた場合の損失が大きいためだ。AI向けの追い風の強さは認めて、中立にも反映した。それでも、利益の山が10年続く前提は置かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,255 円2,776 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 856 円558 億円)。 今の値に割り戻すと 2,502 円1,632 億円、今との差 +14.2%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 10,733 円7,002 億円 | 1,679 円1,095 億円 | +466.5% | +18.9% | 1,489 円972 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,464 円4,217 億円 | 1,133 円739 億円 | +246.7% | +13.2% | 1,671 円1,090 億円 |
| 中立 | 36% | 3,585 円2,339 億円 | 750 円489 億円 | +97.8% | +7.1% | 1,560 円1,018 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,059 円691 億円 | 480 円313 億円 | −29.8% | −3.5% | 308 円201 億円 |
| 悲観 | 10% | 429 円280 億円 | 394 円257 億円 | −62.4% | −9.3% | 82 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,255 円2,776 億円 | 856 円558 億円 | +133.3% | +8.8% | 5,111 円3,334 億円 |
今の株価時価総額 2,191 円1,429 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 12% AI電源の需要が10年続き、値段も高止まり 利益 444 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 10,733 円7,002 億円
AIサーバーの電源に使う大型アルミ電解コンデンサの需要が、10年にわたって伸び続ける。生成AIの推論設備が世界に広がり、1台あたりのコンデンサ数も増える。中国勢の参入は認定の壁と品質の差に阻まれ、値段は高止まりする。ニチコンは増やした生産能力を使い切り、製品の大型化・高付加価値化も進めて、コンデンサ事業の営業利益率は11%に乗る。
NECSTでは、V2Hと家庭用蓄電池が普及の第2段階に入り、データセンター向けの無停電電源と急速充電器も加わる。国内シェアの高さは保たれ、利益率は7〜8%に届く。
全社の営業利益は470億円に近づき、会社が描く2030年度売上5,000億円の姿に重なる。自己資本利益率は16%に上がり、優良な電子部品会社として評価される10年になる。
- コンデンサ事業:数量 75.0(出荷個数(億個、推定))× 価格 41(1 個あたり平均売上(円・名目))→ 売上 3,082 億円・営業利益 339 億円。75 億個 × 1 個あたりの値段は今の 1.60 倍、利益率 11.0%
- NECST事業:数量 17.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 100(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 1,706 億円・営業利益 128 億円。17 万台 × 1 台あたりの値段は今の 1.50 倍、利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 444 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.77 倍、時価総額 7,002 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの需要が10年続き、値段も高止まりする必要があり、連続して当たる確度は高くない。12%に抑えた。
やや楽観 22% AIの追い風が長く続き、値上げ分は緩やかに削られる 利益 290 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 6,464 円4,217 億円
AI向けの追い風は長く続くが、価格は少しずつ緩む。会社が描く増強は順調に進み、電源向けの大型品が売上の中心に育つ。ニチコンは能力増強を順調に生かし、AIと車載の比率が上がって、コンデンサ事業の営業利益率は9%に乗る。電動車の販売は鈍るものの、インバータ用のフィルムコンデンサは堅調だ。
NECSTは、補助金が続く間に家庭用蓄電池とV2Hの設置が積み上がる。急速充電器も着実に伸び、利益率は6%に届く。
全社の営業利益は300億円強になる。ニチコンは「波はあるが、長い目で稼げる部品会社」へ変わり、2桁近い営業利益率を何年か保つ。ただし資本の使い方は平凡で、配当と自社株買いに回す割合も4割ほどにとどまり、自己資本利益率は13%で止まる。
- コンデンサ事業:数量 66.0(出荷個数(億個、推定))× 価格 37(1 個あたり平均売上(円・名目))→ 売上 2,458 億円・営業利益 221 億円。66 億個 × 1 個あたりの値段は今の 1.45 倍、利益率 9.0%
- NECST事業:数量 15.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 94(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 1,405 億円・営業利益 84 億円。15 万台 × 1 台あたりの値段は今の 1.40 倍、利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 290 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.54 倍、時価総額 4,217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの追い風は長く続く見込みが強く、会社の増産と値上げという足元の事実にも支えられる。22%とした。
中立 36% 中立:AI向けの利益が一段上がり、波も残る 利益 182 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,585 円2,339 億円
AI向けの需要は強いまま、値段は物価並みに上がり続ける。ただし値上げ後の高い利益率は定着せず、コンデンサ事業の営業利益率は7%で落ち着く。増強した能力はおおむね埋まるが、中国勢の参入で、2020年代の末から値段の上がり方が鈍る。
NECSTは、国内のV2Hと蓄電池で首位を保ちつつ、補助金の増減に左右される。台数は1.3倍に増え、利益率は4.5%で定着する。
全社の営業利益は190億円前後、営業利益率は6%になる。過去10年の最高(7%)に近く、AI向けの利益が会社の水準を一段引き上げた姿だが、資本効率は資本コストを少し上回る程度にとどまる。
- コンデンサ事業:数量 58.0(出荷個数(億個、推定))× 価格 34(1 個あたり平均売上(円・名目))→ 売上 1,996 億円・営業利益 140 億円。58 億個 × 1 個あたりの値段は今の 1.34 倍、利益率 7.0%
- NECST事業:数量 13.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 90(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 1,165 億円・営業利益 52 億円。13 万台 × 1 台あたりの値段は今の 1.34 倍、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 182 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.85 倍、時価総額 2,339 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げ後の利益率は定着せず、需要は強いまま値段が物価並みに上がる、最も標準的な形。36%とした。
やや悲観 20% 供給過剰で値上げ分が削られ、足元の稼ぎに戻る 利益 95 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 1,059 円691 億円
供給過剰が2028年前後に表面化し、AI向けのコンデンサの値上げ分が2年かけて削られる。中国勢が認定を取って参入し、ニチコンは数量こそ維持するが、値段は物価に追いつけない。コンデンサ事業の営業利益率は4.5%に戻る。
NECSTは補助金の縮小で国内の販売が伸びず、V2Hや蓄電池の値引き競争も強まって、利益率は3%に下がる。
全社の営業利益は100億円で、足元の水準を物価で伸ばした程度に終わる。170億円を投じた工場の稼働率が低く、自己資本利益率は6%にとどまる。配当は維持されるが、成長の物語は色あせる。AI向けの需要そのものは残るので、会社は赤字には沈まない。ただし、値上げで一度上がった利益率は、2〜3年かけて半分近くまで戻る。
- コンデンサ事業:数量 50.0(出荷個数(億個、推定))× 価格 32(1 個あたり平均売上(円・名目))→ 売上 1,605 億円・営業利益 72 億円。50 億個 × 1 個あたりの値段は今の 1.25 倍、利益率 4.5%
- NECST事業:数量 11.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 86(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 942 億円・営業利益 28 億円。11 万台 × 1 台あたりの値段は今の 1.28 倍、利益率 3.0%
倍率:ROE 5.8% は資本コスト 8.25% を下回るので、正当化 PER は 1÷k=12.1 倍が上限。構造的に稼ぐ力が落ちた筋書きなので、その 60% を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.27 倍・時価総額 691 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:コンデンサは過去に増産のあと値崩れが何度も起きており、2028年前後の供給過剰を警戒する。20%とした。
悲観 10% 中国勢が参入し、増設が重荷になる 利益 42 億円 · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 429 円280 億円
中国と韓国のメーカーがAI向けの大型アルミ電解コンデンサの認定を相次いで取り、日系の寡占が崩れる。値段は物価が上がっても上がらず、数量も伸びない。2.5倍に増やした工場は稼働率が低く、減損を迎える。
NECSTでは、補助金が縮み、中国の蓄電池メーカーと大手電機メーカーの攻勢でV2Hのシェアが下がる。
全社の営業利益は40億円台に落ち、資本効率は資本コストの半分以下になる。2000年代後半や2018〜2019年に起きたように、赤字と減損で自己資本が目減りし、株価は低い評価に張り付く。配当は累進の方針を守れず、減らされる。
- コンデンサ事業:数量 42.0(出荷個数(億個、推定))× 価格 26(1 個あたり平均売上(円・名目))→ 売上 1,079 億円・営業利益 32 億円。42 億個 × 1 個あたりの値段は今の 1.00 倍、利益率 3.0%
- NECST事業:数量 8.0(出荷台数相当(万台、推定))× 価格 74(1 台あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 589 億円・営業利益 12 億円。8 万台 × 1 台あたりの値段は今の 1.10 倍、利益率 2.0%
倍率:ROE 3.2% は資本コスト 8.25% を大きく下回る。ためた利益は額面未満の価値で、稼ぐ力(純利益÷k、PER は 1÷k=12.1 倍が上限)の 55% を置いた。優良でなくなった後の利益で、自己資本の厚さは根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 6.67 倍・時価総額 280 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国勢の参入で寡占が崩れ、新工場が減損になる構造的な負けの確率。業界の過去の波を見て10%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンデンサ事業
アルミ電解・導電性高分子・フィルムの各コンデンサ。AIサーバー電源、通信基地局、電動車のインバータ、産業機器向け。
| 数量出荷個数(億個、推定) | 価格1 個あたり平均売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 26 | 1,027 | 46 |
| 10 年後 中立 | 58.0 | 34 | 1,996 | 140 |
取り方:開示は売上 1,027 億円・営業利益 46 億円のみで、個数は非開示。大型のAIサーバー用から小型の基板用まで混ざった平均単価を大型から小型まで混ざった値と置き、出荷個数を約 40 億個と推定した。個数は実質の数量で、物価 3% と値上げ・大型化は 1 個あたりの値段に入れる。
NECST事業
家庭用蓄電システム、V2H(EVパワー・ステーション)、EV用急速充電器、医療機器などの電源。
| 数量出荷台数相当(万台、推定) | 価格1 台あたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 67 | 669 | 18 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 90 | 1,165 | 52 |
取り方:開示は売上 669 億円・営業利益 18 億円のみ。蓄電システム・V2H・急速充電器・産業用電源を合わせて約 10 万台相当、1 台あたり約 67 万円と推定した。台数は実質の数量で、物価 3% は 1 台あたりの値段に入れる。
リスクと懸念
AI向け需要の一巡と供給過剰
AIサーバー向けの需要は強いが、同業と中国勢も増産している。能力が出そろう時期に需要が足踏みすれば、2.5倍に増やす工場は稼働率が下がり、値上げ分も削られる。コンデンサは過去に何度も、不足のあとに過剰を迎えた。
中国・韓国勢の参入
AI向けの大型アルミ電解コンデンサは、今は日系の独壇場だが、中国メーカーが認定を取れば値段が崩れる。車載のフィルムコンデンサでも、すでに中国勢が競合に入っている。
転換社債による希薄化と投資の失敗
220億円の転換社債は、転換価額を上回れば発行済み株式の約9.5%が増える。資金のうち170億円を使う増設が外れれば、希薄化と減損が同時に来る。
補助金に左右されるNECST事業
家庭用蓄電池とV2Hは、国や自治体の補助金の予算で需要が動く。国の補助金は短期間で埋まり、受付が止まる例が続いた。2026年3月期は新製品の投入遅れも重なり、減収減益だった。
利益の変動が大きい体質
17年のうち6期が赤字で、営業利益率は-9%から7%まで動いた。主力のコンデンサは、需給が緩むとすぐ利益が消える。配当の累進方針も、赤字の期には守りにくい。
資本効率の低さ
自己資本利益率の10年の中央値は4.5%で、資本コストを下回る年が多い。自己資本比率は61%と厚いが、毎年の設備投資が利益に結びつかなければ、その厚みは価値を生まない。
今後の分かれ目
- AI向けコンデンサの値上げが2027年まで定着し、会社予想を上回る営業利益が続く
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし値上げが続く期間と、競合の増産の進み方を同時に確認する。
- 中国メーカーのAI向け認定取得や、大型アルミ電解コンデンサの値下げが報じられる
- やや悲観・悲観の確率を上げ、新工場の稼働率の前提を見直す。
- 四半期の営業利益率が8%を超えて3期以上続く
- コンデンサ事業の中立の利益率(7%)を上げる材料になる。持続性は在庫と受注残で確かめる。
- 国のV2H・蓄電池の補助金が打ち切られる、または大幅に縮小する
- NECST事業の台数と利益率を下方修正する。国内シェアが高くても需要が減る点を重く見る。
- 転換社債の転換価額を株価が大きく上回り、株式への転換が進む
- 希薄化を織り込んで価値を見直す。本質価値は会社の稼ぎで決まるが、株数が増える分、既存の株主の取り分は薄まる。
- 新工場の稼働が始まったあとも、営業利益率が上がらない
- 設備投資が利益に結びついていない兆しで、資本配分への評価を下げる。
見ておくもの
- コンデンサ事業の四半期の営業利益率と受注残(AI向け・車載向けの別)
- 長L形アルミ電解コンデンサの増強の進み方と稼働率
- 中国メーカーのAI向け認定・価格の動き
- 国のV2H・蓄電池補助金の予算と受付状況
- 転換社債の転換の進み方と、配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに、数量(コンデンサは出荷個数、NECSTは台数)と価格(物価3%で10年1.34倍を基本)から売上を積み、営業利益率を置いて利益を出した。倍率は資本コスト8.25%(基本7.5%に品質の加点0.75%)と、10年後のROEから正当化PERを計算し、中立は、ROEが資本コストを超えるので下限の1÷kすれすれ(上限の約95%)に置いた。今のPER(約24倍)にも、直近の予想PER(約16倍)にも寄せていない。悲観は、構造的に負けた後の利益を、資本コスト以下のROEなので1÷kの約55%で置いた。10年後の数字は、リース(家賃)を営業費用に入れた今と同じ形でそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.19→15.77 倍・やや楽観 PER 12.36→14.54 倍・中立 PER 12.21→12.85 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。事業で決める:基本 7.5% に quality +0.75%(循環 +0.5・値決め +0.25)を足して k 8.25%。純現金に近く extra は置かない。