結論
NKKスイッチズは、機械や装置に付ける小さなスイッチの専門メーカーだ。押しボタン、トグル、ロッカなど種類は数万に及ぶ。売上の6割は海外で、とくに米国の放送・音響の機器では名が通っている。
筆者の結論は「やや割高」だ。時価総額は自己資本の4割に満たず、手元の現金と投資有価証券だけで時価総額を上回る。それでも割安と言えないのは、資本がほとんど稼いでいないからだ。過去10年のROEの中央値は1%台にとどまる。
10年の見立ては、少量多品種の強みを利益率に変えられるかにかかる。今の中期計画が狙うのは、放送・音響や特殊車両のような、品質と品ぞろえで選ばれる市場の深掘りだ。営業利益率が昔の山の9%近くに戻れば価値は大きく上がる。だが会社自身の目標は2%台で、筆者は中立を4%台と置く。現金も長く眠ってきた。安全域は、帳簿の厚さではなく、稼ぐ力の回復の分しかない。
裏を返せば、利益率と現金の使い方のどちらかが動けば、この会社の見え方は大きく変わる。筆者が見ておきたいのはその2点だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「良い製品を持つが、資本が眠っている会社」だ。手元の現金と株式は時価総額より多い。だが、少数株主がその現金を受け取れるかは経営次第だ。10年間、現金はほとんど動かず、資本はほとんど稼がなかった。
製品の評判は本物だ。放送卓のボタンのように、設計者に名前で選ばれる部品は、長く売れ続ける。ただ、それが利益率に結びつかない限り、評判は株主の価値にならない。
筆者は、オーナーとして長く持ちたいかと問われれば、今のままでは迷う。利益率を上げる道筋と、余った現金の使い方がはっきりすれば、見方は変わる。安全域は帳簿の安さではない。
逆に、製品の評判が利益率という形で数字に出てくれば、今の値段は安い買い物になりうる。その兆しは、海外の利益率と、親会社の単体の赤字が縮むかどうかに最初に出る。待つ価値はあるが、急ぐ理由はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、少量多品種の部品売りだ。放送局の調整卓、音響のミキサー、建設機械や消防車の操作盤、鉄道の運転台、医療機器などに、指で押す小さなスイッチを売る。1つの装置に何十個も使われ、1つ数百円から数千円の部品である。
客は装置メーカーで、数は多く、1社への依存は小さい。装置を設計する段階で型番が決まり、その装置が作られる間は同じスイッチが買われ続ける。放送卓や特殊車両は10年以上作られる機種も多く、一度採用されると長く売れる。
売る先は欧米が4割強、アジアが1割強、日本が4割弱だ。米国には販売会社があり、カタログと短い納期で中小の装置メーカーに売り込む。作るのは川崎と横浜の工場、中国の東莞、フィリピンのセブである。横浜では新しい工場を建てており、中国への生産の偏りを減らす狙いだ。
中期計画では、放送・音響や特殊車両のような特定の市場の深掘りと、生産と販売を一体にして納期を縮めることを重点に掲げる。親会社だけでは営業赤字で、利益は海外の販売と生産の子会社が出している。
為替の影響も大きい。売上の6割がドルなどの外貨なので、円安の年は利益が膨らみ、円高の年は縮む。
優良さと弱いところ
強みは品ぞろえと評判だ。数万の型番を持ち、照光の押しボタンや非常停止のスイッチまで一通りそろう。放送・音響の機器では、押した時の感触と長く壊れないことが評価され、設計者に名前で指名される。採用されれば、その装置の寿命の間は売れ続ける。
ただし、その強みが利益に表れていない。営業利益率は過去12年で最高でも9%弱、赤字の年が3回ある。スイッチそのものは技術の差がつきにくく、米国のC&K、E-Switch、欧州のAPEM(IDEC系)、国内のオムロンなど競合も多い。品ぞろえの多さは在庫と生産の手間の多さでもあり、それが利益を削っている。
資本効率は低い。自己資本は時価総額の2倍半あり、その4割ほどが現金と株式だ。過去10年のROEの中央値は1%台で、資本コストに届いた年は無い。会社も経営の指標にROICとROEを挙げ始めたが、まだ数字は出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業用の小さなスイッチの市場は、装置の生産量とともに動く。工作機械や半導体装置、建設機械、放送機器の投資が増える年は伸び、在庫の調整の年は落ちる。2022〜23年は部品不足で客が在庫を積み、2025年はその反動で落ちた。今はその調整がおおむね終わり、回復の途中にある。
10年の数量は、世界の装置の生産に沿って実質で年1%台の伸びが基本線だ。工場の自動化、医療機器、特殊車両の電動化は追い風になる。一方で、操作の画面化は逆風だ。タッチパネルが物理的なスイッチを置き換える流れは、民生品ではほぼ終わった。産業用でも、手袋で押す・確実に止めるといった用途以外では画面に移る。
価格は物価並みに上がるのが基本だ。少量多品種で客ごとの注文が多いので、汎用品ほど値下げの圧力は強くない。ただし中国の部品会社が安い互換品で入ってくる分野では、値上げは通りにくい。米国の関税も、中国での生産の比率が高い会社には重荷になる。
同業との差は規模にある。オムロンやIDECは制御機器の一部としてスイッチを売り、販路も広い。NKKは単品の専業として、品ぞろえと特殊な用途で勝負する立場だ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期は1株あたりの配当を大きく増やし、配当性向は3割弱になった。自社株買いの実績は乏しい。借入は無く、2026年3月には15億円の融資枠を結んだ。
大株主は資産管理会社のビッグブリッヂが16%、TNNアドバイザーズが5%、三井住友銀行が5%だ。株式の持ち合いは13銘柄・約17億円ある。現金は10年余り50億円前後で動かず、株主に戻されてこなかった。今は横浜の新工場に使っている。
時価総額が50億円ほどと小さく、帳簿の自己資本の半分にも満たない。資本の使い方を問う株主や、買収の対象になる余地はある。ただし、筆頭株主の意向が分からない限り、その筋を価値に織り込むことはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
まず製品の寿命は長い。押しボタンは装置の設計の段階で選ばれ、その装置が作られる限り買われ続ける。放送・音響、鉄道、特殊車両の機器は10年以上同じ型で作られるものも多い。NKKの名は米国の設計者の間で通っており、この粘り強い需要が土台になる。
次に利益率の伸びしろだ。2022〜23年には9%近くまで上がった。在庫の調整が終わり、横浜の新工場で納期と原価が改善すれば、その水準に戻るのは無理な話ではない。会社は1Q(2026年4〜6月)で通期の予想を上方修正しており、流れは良い方に向いている。
最後に値段だ。時価総額は手元の現金と株式の合計より小さい。利益率が少し戻るだけで、今の値段は明らかに安すぎる。帳簿の厚さは、少なくとも大きな損の防波堤になる。
経営も変わり始めている。ROICとROEを指標に掲げ、配当を大きく増やした。資本の使い方を問われる時代に、この流れは止まりにくい。
為替も味方しうる。売上の6割が外貨なので、円が弱い限り利益は膨らみやすい。
慎重な見方
利益率は戻らないかもしれない。過去12年の中央値は3%台で、9%近くまで上がったのは部品不足で客が在庫を積んだ一時の山だった。会社自身の中期計画の目標も2%台にすぎない。品ぞろえの多さは在庫と手間の多さでもあり、規模の小さい会社にはそれが重い。
需要の形も変わる。操作の画面化は産業用にも及び、物理的なスイッチの数は1台あたりで減る。中国の部品会社は安い互換品で迫る。米国の関税は、中国で作る比率の高いこの会社に不利に働く。
現金も当てにならない。10年余り50億円前後で眠り、株主には戻らなかった。今は新工場に使われている。資本が稼がない限り、帳簿の厚さは価値ではない。清算されない限り、少数株主の手には届かない。
関税と画面化は、どちらも10年かけてじわじわ効く。気づいた時には数量の土台が細っている、という形の負け方になりやすい。
為替の追い風も、裏返せば円高の年の逆風だ。親会社の単体は2年続けて営業赤字で、利益の土台は細い。
どちらに重みを置いたか
製品の評判と粘り強い需要は確かだが、それが利益率に結びついた期間は短く、会社の目標も低い。資本が稼がないという慎重な見方のほうが、過去10年の数字に裏づけられている。確率は中立を軸に、やや慎重側に寄せた。上振れの証拠は、利益率が2年続けて5%を超えることだ。それが見えるまでは、帳簿の厚さを価値として数えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,951 円65 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,510 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 4,614 円38 億円、今との差 −22.2%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 16,325 円134 億円 | 2,774 円23 億円 | +222.1% | +12.4% | 1,910 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,536 円95 億円 | 2,082 円17 億円 | +129.7% | +8.7% | 2,724 円22 億円 |
| 中立 | 35% | 8,023 円66 億円 | 1,577 円13 億円 | +61.9% | +4.9% | 3,360 円28 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,806 円31 億円 | 1,058 円9 億円 | −18.0% | −2.0% | 1,070 円9 億円 |
| 悲観 | 13% | 2,813 円23 億円 | 243 円2 億円 | −48.5% | −6.4% | 397 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,951 円65 億円 | 1,510 円12 億円 | +59.5% | +4.8% | 9,461 円78 億円 |
今の株価時価総額 5,930 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 特定の市場で選ばれ、利益率が昔の山を超える 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 16,325 円134 億円
放送・音響、特殊車両、医療の機器で採用が広がる。工場の自動化と特殊車両の電動化で、確実に押せて壊れないスイッチの需要が伸びる。米国の設計者の間での名が効き、海外の数量は10年で3割強増える。
横浜の新工場で納期が縮み、原価も下がる。中国への偏りが減り、関税の重荷も軽くなる。値上げは物価よりやや速く通り、営業利益率は9%台に乗る。
それでも自己資本が厚いので、ROEは6%前後で資本コストには届かない。余った現金の一部が還元に回り、株主の受け取りは今より増える。
株式の持ち合いも少しずつ売られ、資本は今より軽くなる。
- 海外(欧米・アジア):数量 1,150(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 840(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 10 億円。1,150万個×840(物価よりやや速い)、利益率10%
- 国内:数量 600(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 830(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。600万個×830、利益率7%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:放送・音響や特殊車両で採用が広がり、利益率が過去12年の山を超える筋書き。9%近くまで上がったのは部品不足の一時だけなので1割。
やや楽観 20% 在庫の調整が明け、利益率が6%台に戻る 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 11,536 円95 億円
客の在庫の調整が終わり、装置の投資の回復とともに数量が戻る。放送・音響や特殊車両で採用が少しずつ広がり、海外の数量は10年で2割強増える。国内は横ばいに近い。
値上げは物価並みに通り、新工場で原価も少し下がる。営業利益率は6%台に戻り、2022〜23年の水準に近づく。本社の費用も物価で膨らむが、売上の伸びがそれを吸収する。
ROEは4%台にとどまり、資本はなお十分に稼がない。それでも利益は今の3倍近くになり、配当も増える。
親会社の単体の赤字も縮み、利益の土台が国内にも戻る。
持ち合いの株式は持ったままで、資本の重さは変わらない。
- 海外(欧米・アジア):数量 1,040(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 815(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 6 億円。1,040万個×815、利益率7.5%
- 国内:数量 560(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 805(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。560万個×805、利益率5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:装置の投資の回復と特定の市場の深掘りで、利益率が過去の中央値を大きく上回る6%台に戻る筋書き。2022〜23年に実績があるので2割。
中立 35% 数量は少し伸び、利益率は4%台 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,023 円66 億円
世界の装置の生産に沿って、海外の数量は10年で1割強増える。国内は人手不足の自動化が支えるが、画面化もあって横ばいよりやや減る。値段は物価並みに上がる。
営業利益率は4%台だ。会社の今の計画の目標よりは高いが、昔の山には届かない。新工場の減価償却が新しい値段で加わり、品ぞろえの多さからくる在庫と手間の重さも残る。
純利益は4億円台半ばで、ROEは3%弱にとどまる。現金は新工場に一部使われた後も20億円ほど余り、配当は細く続く。帳簿の厚さは変わらず、それが稼がない構図も変わらない。
株主にとっては、可もなく不可もない10年だ。
- 海外(欧米・アジア):数量 950(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 804(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 4 億円。950万個×804(物価並み)、利益率5%
- 国内:数量 530(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 804(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。530万個×804、利益率3.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 66 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の数量が1割強伸び、利益率は過去の中央値を少し上回る4%台に落ち着く筋書き。最も起こりやすい。
やや悲観 22% 画面化と互換品に押され、利益率は2%台 利益 2 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 3,806 円31 億円
産業用の装置でも画面の操作が広がり、1台あたりのスイッチの数が減る。汎用に近い型番では中国の互換品に客を取られる。海外の数量は今より少し減り、国内は1割強減る。
値上げは物価に届かない。本社の費用と人件費は物価で上がるので、営業利益率は2%台に沈む。米国の関税も重荷になる。
純利益は2億円ほどで、ROEは1%台だ。余った現金は谷の年の穴埋めに少しずつ使われる。帳簿の厚さに比べ、株主の手に残る価値は小さい。
配当は細り、増配の流れは止まる。親会社の単体の赤字も続く。
時価総額は現金と株式の合計を下回ったままになる。
- 海外(欧米・アジア):数量 810(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 770(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。810万個×770(物価に届かない)、利益率2.5%
- 国内:数量 480(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 770(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円。480万個×770、利益率1%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)で置く。ROEはkの2割以下なのでPERは1÷k(12.1倍)の9割。余った現金は谷で食う分を見て今の0.75倍(15億)を0.75で足した。帳簿の自己資本は床にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.9 倍・時価総額 31 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:操作の画面化と中国の互換品で数量が細り、利益率が2%台に沈む筋書き。過去12年の半分ほどがこの水準なので2割強。
悲観 13% スイッチの数が減り、赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 2,813 円23 億円
画面化が産業用にも本格的に広がり、物理的なスイッチは非常停止などの用途に限られていく。中国の部品会社が安い互換品で汎用の型番を取り、海外も国内も数量は2割前後減る。
品ぞろえの多さは固定費として残り、値上げも通らない。営業赤字が続き、余った現金は谷の穴埋めと工場の維持に削られる。
配当は大きく減る。帳簿の自己資本は厚いが、稼がない資産は清算されない限り株主に戻らない。価値は、手元の現金と持ち合いの株式を戻り方で割り引いた分ほどにとどまる。
事業の売却や再編が話題になる。
持ち合いの株式を売って穴を埋める年も出る。
- 海外(欧米・アジア):数量 680(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 735(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 −2 億円。680万個×735、赤字
- 国内:数量 410(スイッチの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 735(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。410万個×735、赤字
倍率:赤字なので今の自己資本136億に掛けるPBR。稼ぐ力は床にならず、純現金と政策保有株の税後を戻り方0.5で割り引いた約23億を床とし、0.17倍。
確率:画面化と互換品で数量が2割前後減り、赤字が続く筋書き。過去12年で赤字が3回あり、品ぞろえの固定費も重いので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
海外(欧米・アジア)
米国の販売会社を通じた放送・音響・特殊車両・医療向けの産業用スイッチ。アジアは装置メーカー向け。
| 数量スイッチの出荷個数(万個・年。推定) | 価格1個あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 850 | 599 | 51 | 2 |
| 10 年後 中立 | 950 | 804 | 76 | 4 |
取り方:個数の開示は無いので推定。売上83.7億を2025/03期の地域の比(欧米49%・アジア12%)で分け、海外を約50.9億とした。平均単価を約600とみて年850万個。利益の地域の開示は無く、親会社の単体が営業赤字−3.36億なので、利益の多くは海外の子会社とみて2.4億と推定した。
国内
国内の装置メーカー(建設機械・鉄道・工作機械・放送機器など)向けの産業用スイッチ。
| 数量スイッチの出荷個数(万個・年。推定) | 価格1個あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 545 | 602 | 33 | 0 |
| 10 年後 中立 | 530 | 804 | 43 | 1 |
取り方:個数は推定。国内の売上約32.8億を平均単価約600で割り年545万個。利益は全社の営業利益2.80億から海外の推定を引いた0.4億。
リスクと懸念
利益率が上がらない
過去12年の営業利益率の中央値は3%台で、会社の中期計画の目標も2%台だ。品ぞろえの多さが在庫と手間の重さになり、物価の上がる10年でも利益率が上がらなければ、資本は稼がないままになる。
操作の画面化
タッチパネルや画面の操作が、産業用の装置にも広がる。物理的なスイッチは非常停止や手袋の操作などに残るが、1台あたりの数は減りうる。数量の伸びの前提を崩す一番の要因だ。
中国の互換品と米国の関税
汎用に近い型番では、中国の部品会社が安い互換品で入ってくる。米国の関税は中国で作る比率の高いこの会社に不利で、横浜の新工場への移管が間に合うかが問われる。
眠る現金
現金は10年余り50億前後で動かず、株主に戻されなかった。新工場に使った後も、余った現金が還元されず低い利回りで眠り続けると、帳簿の厚さは株主の価値にならない。
装置の投資の循環
売上は工作機械や半導体装置、建設機械の投資と、客の在庫の調整で大きく振れる。2025年3月期のように、在庫の調整の年には赤字になりうる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2年続けて5%を超える
- 少量多品種の強みが利益に結びつき始めた証拠になる。やや楽観の筋に寄り、今の値段は安いと見てよい。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、余った現金の還元の方針が出る
- 眠る現金の戻り方が上がり、価値は数億円上がる。時価総額が現金を下回る状態は続きにくくなる。
- 横浜の新工場で納期と原価が改善する
- 中国への偏りが減り、関税の重荷も軽くなる。利益率の回復の筋が太くなる。
- 在庫の調整で再び赤字になる
- 利益率の回復の筋が遠のく。やや悲観の筋に寄せる。
- 筆頭株主の動きや買収の提案が出る
- 帳簿の自己資本に近い値段での買収もありうる。ただし起きるかは読めないので価値には織り込まない。
見ておくもの
- 営業利益率と親会社単体の損益
- 欧米の受注と売上
- 横浜の新工場の稼働と中国生産の比率
- 配当と自社株買いの方針
- 政策保有株の売却
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROE(中立3%前後)がk 8.25%を大きく下回るので、1÷k(12.1倍)を上限に、中立は9割の10.9倍とした。余った現金20億は事業の利益から利息を外し、戻り方0.75で足した。政策保有株は配当が利益に入るので足さず、悲観の床にだけ使った。PBR0.37倍という今の値付けも過去の倍率も使っていない。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.12 倍・やや楽観 PER 11.3→12.12 倍・中立 PER 10.9→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 0.75%。赤字の年はあるが財務は堅く上乗せなし。