結論
エレコムはマウスやキーボード、充電器、ルーター、NASなどを企画して量販店とネットで売る、国内最大級のPC・スマホ周辺機器メーカーだ。筆者の結論は、事業は堅いが10年で測る本質価値は今の時価総額を1割半ほど下回る、というものだ。
2026年3月期は売上1,321億円、営業利益155億円で、利益は創業以来の最高だった。純利益が200億円を超えたのは、日本アンテナを買収した際の負ののれん発生益という一度きりの利益による。ならした稼ぐ力は純利益で110億円前後と見る。
強みは売り場と調達だ。全国の量販店とネット通販に網を張り、数千点の品を回す。法人向けは利益率が高く、GIGAスクールや自治体の案件で伸びている。手元の資金は純現金で580億円あり、財務は盤石だ。
弱みは、参入が容易で値段を自分で決めにくいことだ。Ankerのような海外勢と価格を競い、仕入れの大半はドル建てで円安が原価を直撃する。筆者がもっとも気にしているのは、この値決めの弱さが10年たっても変わらない点だ。
成長の材料は、日本アンテナ・多摩電子工業の買収と法人向けの積み上げだ。ただし周辺機器の国内市場は人口減で実質では伸びにくい。物価の分は価格に乗るが、売上の伸びは年4%台にとどまる。
10年後の中立は、営業利益が240億円弱、純利益が170億円強。そこから出る本質価値は、今の時価総額に10年分の金利を乗せても届かない。余った現金の250億円を足しても、結論は変わらない。筆者は、事業の質と値段の釣り合いを「やや割高」と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エレコムは「堅いが、わくわくしない」会社だ。台所は強い。純現金があり、借金に頼らず、設備投資も軽い。10年たっても事業が消える心配は小さい。
ただし、長く持ちたい会社かと問われると迷う。理由は、価格を決める力が弱いからだ。強い堀を持つ会社は、物価が上がれば値段に転嫁して、そのまま利益を守る。エレコムは円安や競争のたびに値上げと値引きを繰り返す。利益率が10%台前半で止まるのは、その表れだ。
資本配分の腕前も評価が割れる。負ののれんを得た日本アンテナの買収は、見事な買い物だった。一方、使い道の決まらない現金が250億円ほどあり、オーナー支配のもとで株主に戻るかどうかは読みにくい。
安全域を見ると、悲観でも純現金が床になる。この点は心強い。ただし、中立や楽観の値段が今の時価総額を大きく上回るほどではない。筆者は、確信度を中程度に置く。事業は理解しやすいが、10年先の価格競争の行方は読み切れない。
何で稼ぐ会社か
エレコムの稼ぎは3本柱だ。いちばん大きいのが、量販店とネット通販向けのコンシューマー商品である。マウス、キーボード、ケーブル、モバイルバッテリー、スマホケース、ゲーミング用品などで、売上の6割強を占める。
次が法人向けだ。NAS、ネットワーク機器、学校向けの端末周辺機器、自治体向けの案件が中心で、売上の4割近くまで育った。量販店向けより利益率が高いと会社が説明している。直近の期はGIGAスクール需要を除いても堅調だった。
3本目が2025年に買収した日本アンテナだ。テレビの受信アンテナや共聴設備、通信機器を手がける。下期だけで売上63億円、営業利益8億円を連結に取り込んだ。2026年10月にはDXアンテナとの営業部隊の統合を予定している。
ほかに調理家電のテスコム、監視カメラ、海外事業がある。海外は2027年3月期に約40億円と小さいが、会社は3年後に200億〜300億円を狙う。
売り方の軸はネット通販の自社サイトとECモールだ。構成比は18%近くに上がった。量販店には在庫を持たせず、ネットと店頭を組み合わせる売り方に切り替える途上にある。
仕入れの大半は中国などの工場に委託する。つまり工場を持たず、商品企画と販路で稼ぐモデルだ。設備投資が軽く、資産の回転は速い。その分、ドル建て仕入れの為替に利益が揺さぶられる。
優良さと弱いところ
エレコムの強みは販路と品ぞろえの厚みにある。ただし「堀」、つまり他社がまねできない強みとしては弱い。
いちばんの武器は、全国の量販店の棚とネット通販の両方に商品を並べる力だ。1つ1つの商品は単価が安く、売り場を確保する力そのものが参入障壁になる。この点は評価できる。
一方、商品そのものは差別化が難しい。マウスも充電器も、中国製の廉価品や海外ブランドが同じ棚に並ぶ。会社自身が、高付加価値の充電器ではシェアが低いと認めている。値段を自分で決められる事業ではない。
利益率を見ると、営業利益率は10〜15%で動き、直近は11.8%だった。過去10年のROEの中央値は15%近いが、これは使わない現金が増えるにつれて下がってきた。現金を除いた事業のROEは11%前後と見る。
財務は強い。自己資本比率は74%、純現金は580億円ある。ただし会社の説明では、必要運転資金が約350億円あり、自由に使える余力は250億円前後だ。
経営の癖にも触れておく。創業者の葉田順治会長が筆頭株主で、有限会社サンズと合わせて3割台半ばを握る。オーナーの意思が強く、買収で成長を取りにいく。外部の目が届きにくい点は、資本の使い方の不安材料だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の周辺機器市場は、PCの買い替えが落ち着いて成熟している。一方でスマホ周辺、充電、ネットワーク、ゲーミングのような伸びる領域もあり、全体では実質でほぼ横ばいと見る。
価格の面では、円安と物価高で値上げが通りやすい時期にある。しかし競争相手は多い。バッファロー、ロジクール、Anker、サンワサプライ、そして中国の廉価ブランドだ。楽天ではSALONIAが勢いを見せている。
エレコムの仕入れはドル建てが中心だ。ドルが1円上がるたびに原価が約1億円増え、会社は2027年3月期に為替で44億円の逆風を見込む。それを値上げと値引き管理で23億円、調達の見直しで13億円、新製品で11億円打ち返す計画だ。
法人向けは別の力学で動く。学校のIT機器、自治体のシステム、中小企業のネットワークは、更新の波で需要が動く。GIGAスクールの更新需要は一過性の山を作りやすい。
放送アンテナの市場は縮小気味だ。地上波の視聴は減り、ネット配信が広がる。ただ共聴設備の更新や4K・8K対応の需要は残る。業界3社のうち2社の統合で最大手になる点は、価格競争の緩和につながりうる。
分かれ目は、ネット通販での価格競争に巻き込まれずに粗利を守れるか、法人向けをどこまで積み上げられるかだ。ここで勝てば、周辺機器の「売り場の会社」から「顧客に直接届く会社」へ変われる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、増配と買収の組み合わせだ。配当は17期連続の増配を目指しており、2026年3月期は記念配当も出した。2024年には約77億円の自己株式の公開買付けも行った。
一方で、自社株買いの継続には消極的だ。会社は「将来の投資に充てる」と説明している。手元の実質資金は約700億円、必要運転資金が約350億円で、投資に回せるのは約250億円という整理だ。
買収は積極的だ。日本アンテナを株式交換で完全子会社にして、負ののれんの益を得た。2026年4月にはコンビニ向けの商流に強い多摩電子工業を傘下に入れた。M&Aの候補はまだあると語っている。
買収は安く買えれば強力な武器だが、割高な買収が続けば資本効率が下がる。筆者は、オーナー支配の強い会社が現金を寝かせたまま買収に走る点に注意している。株主への戻り方は、半分程度の評価にとどめた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
法人向けが中期経営計画どおりに育ち、会社の言う「3年でBtoB売上1,000億円」に近づく。GIGAスクールの更新、自治体のシステム刷新、中小企業のネットワーク更新が続き、NASやセキュリティ関連の粗利が厚くなる。ネットワーク関連の粗利率はすでに前期の約17%から約30%へ改善しており、この改善が定着する。
日本アンテナは、DXアンテナとの営業の統合が進む。営業1人あたりの売上は現状の9,000万円から、エレコム本体の2億3,000万円に近づく。ここだけで営業利益に十分効く。放送アンテナの市場は縮むが、共聴設備の更新と通信機器で補える。
コンシューマーは、多摩電子工業のコンビニ商流と自社ECで取りこぼしていた層を取り込む。セブンイレブンでAnkerを置き換えた実績が示すとおり、売り場を確保する力は強い。海外も40億円から200億円超へ伸びる。
買収は割安で買えるうちに積み上げ、のれんの減損は出ない。営業利益率は13%台へ上がり、過去の最良の水準に並ぶ。この道が開けるなら、純利益は10年で2倍以上になる。
慎重な見方
筆者が心配するのは、値決め力の弱さがじわじわ効くことだ。周辺機器は参入が容易で、Ankerやサンワサプライ、中国の廉価ブランドが同じ棚に並ぶ。ネット通販では価格が一瞬で比べられ、販促費でシェアを買う戦いになる。会社自身がEC販促費を13億円積み、ECの利益率が一時下がると認めている。
為替は構造的な重しだ。仕入れの大半がドル建てで、ドルが1円上がるたびに原価が約1億円押し上げられる。値上げは量販店との交渉と競争で思うように通らず、今期も44億円の逆風を打ち返せるかは未知数だ。
2026年3月期の純利益200億円は、負ののれんという一度きりの益で膨らんだ。ならせば110億円前後で、ROEも10%台前半に戻る。創業来最高益の営業利益155億円も、もとは日本アンテナの下期分8億円を含む。
買収の統合も重い。日本アンテナ、多摩電子工業、DXアンテナの営業統合で、人員とシステムの摩擦が出れば、販管費率が上がる。この会社は販管費の管理がいつも課題だと自ら認めている。成長を買収で補う会社は、買収が止まった時に伸びが止まる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の強さは認めるが、値決めの弱さと価格競争の重さを強く見て、確率を慎重な側に寄せた。強気の見方の中心は、法人向けの積み上げとアンテナの統合効果で、実現の筋は通っている。ただし周辺機器の本業は、物価の分を価格に乗せて何とか横ばいを守る事業だ。
10年の中立では、営業利益は今の1.5倍ほどに育つが、それでも今の時価総額に10年分の金利を乗せた線には届かない。純現金が下値を支えるため、悲観でも時価総額は大きく崩れない。楽観の確率は小さめに置き、慎重な見方が一段強いと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,585 円2,887 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 832 円670 億円)。 今の値に割り戻すと 2,367 円1,906 億円、今との差 +19.1%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,431 円5,179 億円 | 1,165 円938 億円 | +282.3% | +14.3% | 608 円489 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,205 円4,192 億円 | 1,018 円820 億円 | +213.2% | +12.1% | 1,245 円1,002 億円 |
| 中立 | 35% | 4,135 円3,331 億円 | 879 円708 億円 | +152.4% | +9.7% | 1,755 円1,414 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,957 円1,576 億円 | 730 円588 億円 | +35.2% | +3.1% | 672 円541 億円 |
| 悲観 | 12% | 774 円623 億円 | 372 円300 億円 | −42.3% | −5.4% | 138 円111 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,585 円2,887 億円 | 832 円670 億円 | +122.3% | +8.3% | 4,417 円3,557 億円 |
今の株価時価総額 1,987 円1,600 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 法人1,000億円と統合効果が実現 利益 265 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 6,431 円5,179 億円
法人向けが会社の言う3年1,000億円の線に近づき、NASやネットワーク関連の粗利が厚く積み上がる。日本アンテナはDXアンテナとの営業統合で、営業1人あたりの売上がエレコム本体に近づく。コンシューマーは多摩電子工業のコンビニ商流と自社ECで取りこぼしを回収し、海外も数百億円規模へ伸びる。
為替は物価並みの値上げで打ち返し、営業利益率は13%台と過去の最良に並ぶ。買収の統合は順調で、減損は出ない。ここまでは筋が通るが、周辺機器の本業は競争が激しく、全部がそろうと考えるのは楽観的だ。
配当と自社株買いも厚くなり、純利益のおよそ半分が株主に戻る。使い道のなかった現金は、割安な買収か株主還元のどちらかで消化され、資本効率は一段上がる。
- コンシューマー(PC・スマホ周辺、パワー、家電):数量 10,800(国内の PC・スマホ周辺機器・パワー関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 14.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,563 億円・営業利益 188 億円。多摩電子・EC・海外で取りこぼしを回収
- 法人(BtoBソリューション・ネットワーク):数量 7,200(国内の法人向け周辺機器・ネットワーク・NAS・学校IT機器の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 13.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 965 億円・営業利益 150 億円。法人1,000億円に迫る。粗利率改善が定着
- 日本アンテナ(放送・通信アンテナ):数量 1,500(国内の放送受信・通信アンテナ関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 14.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 221 億円・営業利益 29 億円。営業統合が効き利益率が上がる
倍率:事業の純利益 262 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 18.85 倍、時価総額 5,179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:法人向けの積み上げと統合効果がほぼ会社の計画どおりに進む筋書き。値決め力が弱い事業なので、成功の確率は小さめの8%とした。
やや楽観 20% 買収と法人向けが着実に積み上がる 利益 218 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 5,205 円4,192 億円
法人向けとアンテナが計画に近い形で伸び、コンシューマーはECとコンビニ商流で少しずつシェアを上げる。営業利益率は12%台に乗る。売上は10年で1.8倍ほどになる。
ただし海外は数十億円から百億円台にとどまり、1,000億円の法人目標も届かない。M&Aは続くが、割安で買えるのは日本アンテナ級の案件ばかりではない。統合の摩擦で販管費が膨らむ年も出る。
為替は物価並みの値上げでおおむね打ち返せるが、打ち返しに1〜2年かかる局面があり、その間は利益率が横ばいに近い。配当は増やし続けるが、自社株買いは限られる。
- コンシューマー(PC・スマホ周辺、パワー、家電):数量 10,400(国内の PC・スマホ周辺機器・パワー関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 13.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,394 億円・営業利益 156 億円。EC・コンビニ商流で緩やかにシェアを上げる
- 法人(BtoBソリューション・ネットワーク):数量 6,900(国内の法人向け周辺機器・ネットワーク・NAS・学校IT機器の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 12.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 832 億円・営業利益 121 億円。更新需要で積み上げ
- 日本アンテナ(放送・通信アンテナ):数量 1,400(国内の放送受信・通信アンテナ関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 13.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 191 億円・営業利益 23 億円。市場は縮むが統合効果で補う
倍率:事業の純利益 214 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 18.19 倍、時価総額 4,152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収の統合が進み、法人向けと通信が伸びる蓋然性のある上振れ。20%。
中立 35% 年4%台の増収が続くが値決めは弱いまま 利益 173 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 4,135 円3,331 億円
物価の分は価格に乗るが、国内市場の数量は人口減で実質横ばいにとどまる。コンシューマーはシェアを守り、多摩電子工業の分が上乗せになる。法人向けは更新需要を拾って緩やかに伸びる。
日本アンテナは通年で連結され、売上が今の2倍規模になる。放送市場は縮むが、統合で営業の生産性を上げて利益率は10%台前半を保つ。営業利益率は11%台で、過去10年の中央値並みに落ち着く。
会社の計画する営業利益の年10%成長は届かず、年4%台の成長にとどまる。為替の逆風と販促費が利益を削り、規模の割に利益が伸びない構図が続く。
- コンシューマー(PC・スマホ周辺、パワー、家電):数量 10,000(国内の PC・スマホ周辺機器・パワー関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 12.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,233 億円・営業利益 123 億円。シェアはほぼ維持、多摩電子の分が上乗せ
- 法人(BtoBソリューション・ネットワーク):数量 6,600(国内の法人向け周辺機器・ネットワーク・NAS・学校IT機器の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 10.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 708 億円・営業利益 96 億円。緩やかに積み上げ
- 日本アンテナ(放送・通信アンテナ):数量 1,350(国内の放送受信・通信アンテナ関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 12.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 172 億円・営業利益 18 億円。通年連結で今の2倍規模、市場は縮小気味
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 17.49 倍、時価総額 3,215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと値引き管理で為替を打ち返し、買収も加わって、物価並みの成長を保つ最も蓋然性の高い筋書き。35%。
やや悲観 25% 価格競争と市場縮小で利益率が一段下がる 利益 125 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,957 円1,576 億円
PC周辺機器の国内市場が実質で1割弱縮み、ネット通販の価格競争で粗利が削られる。法人向けはGIGAスクール更新の反動で停滞する。コンシューマーの営業利益率は8%台に下がる。
日本アンテナの放送市場は縮み、統合の効果も出にくい。買収で得たのれん益は一度きりで、10年の利益は今の時点から2割ほど細る水準で止まる。手元の現金は、買収の失敗で一部が減る。
量販店向けの売り場は守るが、売れ筋が入れ替わるたびに在庫の処分が出て、粗利が目減りする。法人向けも、更新が一巡した後は競合との価格の取り合いになり、利益率の改善が止まる。
- コンシューマー(PC・スマホ周辺、パワー、家電):数量 9,300(国内の PC・スマホ周辺機器・パワー関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 11.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,071 億円・営業利益 91 億円。PC周辺が縮み、価格競争で利益率が低下
- 法人(BtoBソリューション・ネットワーク):数量 6,000(国内の法人向け周辺機器・ネットワーク・NAS・学校IT機器の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 9.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 579 億円・営業利益 67 億円。GIGA後の反動で停滞
- 日本アンテナ(放送・通信アンテナ):数量 1,200(国内の放送受信・通信アンテナ関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 12.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 145 億円・営業利益 12 億円。放送市場の縮小が進む
倍率:事業の ROE 8.3% は k 7.25% とほぼ同じで、ためた利益は額面並みまで。PER の上限 1÷k=12.1 倍の 8 割強を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10 倍・時価総額 1,411 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:EC価格競争とPC周辺の縮小で利益率が下がる筋書き。値決めが弱い事業なので、中立に近い25%まで寄せた。
悲観 12% 構造的に負ける:廉価ブランドとEC価格競争で利益が細る 利益 53 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 774 円623 億円
廉価な海外ブランドと自社ECの価格競争で、コンシューマーの粗利が薄くなる。量販店の棚は残るが、利益は流通に吸い取られる。法人向けは案件の取り合いで単価が下がり、営業利益率は7%まで低下する。
日本アンテナは放送受信の需要が細り、DXアンテナとの統合でも利益が戻らない。買収で積んだのれんの一部を減損する。営業利益は70億円まで細る。それでも純現金が下値を支え、稼ぐ力と手元資産が床になる。
配当は維持するが、増配は止まる。買収に使った現金は戻らず、会社は縮小均衡に入る。今の事業の売り場の力が、長く利益を生む源泉にならなかった、という筋書きだ。
- コンシューマー(PC・スマホ周辺、パワー、家電):数量 8,000(国内の PC・スマホ周辺機器・パワー関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 9.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 794 億円・営業利益 36 億円。廉価ブランドとECの価格競争に負け、利益率が薄くなる
- 法人(BtoBソリューション・ネットワーク):数量 5,200(国内の法人向け周辺機器・ネットワーク・NAS・学校IT機器の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 8.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 418 億円・営業利益 29 億円。価格競争と案件の取り合いで利益率低下
- 日本アンテナ(放送・通信アンテナ):数量 900(国内の放送受信・通信アンテナ関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 10.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 96 億円・営業利益 5 億円。放送受信の需要が細り、統合効果も出ない
倍率:悲観の純利益 53 億円は ROE 3.8% で、ためた利益は額面未満の価値しかない。やや悲観の時価総額÷純利益 10.5 倍より悲観ほど低く置くので、その約 100% の 10.5 倍(時価総額 558.6 億円)とした(稼ぐ力 純利益÷k も超えない)。自己資本の厚さや市場の倍率は根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.72 倍・時価総額 623 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:10年で廉価ブランドとECの価格競争に構造的に負ける筋書き。純現金が床になる事業なので12%。値決め力の弱さは quality に入れているので、確率はそれ以上に上げていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンシューマー(PC・スマホ周辺、パワー、家電)
量販店とネット通販向けのマウス・キーボード・充電器・ケーブル・スマホ用品・家電・カメラ。多摩電子工業(コンビニ商流)を2026年4月に取得。
| 数量国内の PC・スマホ周辺機器・パワー関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 8.3% | 828 | 87 |
| 10 年後 中立 | 10,000 | 12.3% | 1,233 | 123 |
取り方:国内市場を約1兆円と推定(開示なし)。売上は全体からアンテナと法人を引いた約830億円、シェアは約8.3%。物価 3% は価格(シェア × 物価の倍率)に入れ、数量は実質の市場。営業利益はセグメント別の開示がなく、法人を14%と置いた残りで推定。
法人(BtoBソリューション・ネットワーク)
NAS・ネットワーク機器・学校向け機器・自治体案件。会社は利益率が量販より高いと説明。
| 数量国内の法人向け周辺機器・ネットワーク・NAS・学校IT機器の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 7.2% | 430 | 60 |
| 10 年後 中立 | 6,600 | 10.7% | 708 | 96 |
取り方:国内市場を約6,000億円と推定(開示なし)。BtoB構成比37.6%(約497億円)から日本アンテナ分を除いた約430億円がシェア約7.2%。営業利益率は14%と推定(会社説明で量販より高い)。
日本アンテナ(放送・通信アンテナ)
2025年11月に子会社化した放送受信アンテナ・共聴設備・通信機器。DXアンテナと営業統合中。
| 数量国内の放送受信・通信アンテナ関連の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 4.2% | 63 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 12.7% | 172 | 18 |
取り方:国内市場を約1,500億円と推定(開示なし)。今期は下期の半年分(売上62.8億円・営業利益8.1億円)だけ連結なので、今のシェア相当4.2%は通年の半分。先の価格(シェア × 物価)が今の2倍を超えるのは、通年連結と営業統合の分。
リスクと懸念
値決め力の弱さと価格競争
周辺機器は参入が容易で、Anker・サンワサプライ・中国の廉価ブランドが同じ棚とECに並ぶ。ネットでは価格が一瞬で比べられ、販促費でシェアを買う戦いになる。値上げが通らなければ、利益率は10%台前半から下がる。
ドル建て仕入れと円安
仕入れの大半がドル建てで、ドルが1円上がるたびに原価が約1億円増える。2027年3月期は為替で44億円の逆風を見込み、値上げ・値引き管理・調達・新製品で打ち返す計画だ。打ち返しが遅れれば、計画の営業利益165億円を割る。
買収の統合と販管費
日本アンテナ、DXアンテナ、多摩電子工業の統合は、人員とシステムの摩擦を伴う。会社は販管費の管理が課題と認めている。統合の遅れや人件費の増加は、増収でも利益が伸びない形で現れる。
一度きりの益で膨らんだ利益
2026年3月期の純利益200億円超は、負ののれん発生益を含む。ならした純利益は110億円前後で、2027年3月期の会社予想は114億円だ。ROEも一時的に高く見えるだけで、10%台前半が実力だ。
法人向けの山と反動
GIGAスクール、自治体の更新、半導体関連の法人向けは、時期によって大きく動く。法人向けは高利益率を支えているため、更新需要が一巡すると全社の利益率に響く。会社も半導体関連の売上で30億円の減を見込む。
オーナー支配と現金の使い道
創業者の会長と資産管理会社で3割台半ばを握る。自社株買いの継続に消極的で、約250億円の自由な資金の使い道は買収中心だ。割高な買収があれば、現金が価値を生まないまま減る。
放送アンテナ市場の縮小
地上波の視聴減とネット配信の拡大で、放送受信アンテナの需要は長期に細る。統合で最大手になっても、市場全体が縮めば売上は伸びにくい。のれんの減損も論点になる。
今後の分かれ目
- ネット通販の価格競争が強まり、ECの利益率の低下が来期以降も続く
- コンシューマーの利益率が10%を割り込み、やや悲観の筋書きに近づく。
- 法人向けの売上が、中期計画のとおり3年でBtoB1,000億円に近づく
- 高利益率の売上比率が上がり、営業利益率が12%台に乗る。楽観側の確率が上がる。
- 円安が1ドル160円を超えて続き、値上げが通らない
- 原価の増加が利益を直撃し、計画の営業利益を割る。利益率が一段下がる。
- 日本アンテナとDXアンテナの営業統合で、営業1人あたりの売上が目標に近づく
- アンテナ事業の利益率が上がり、買収の成功が裏づけられる。
- 大型のM&Aで、のれんが大きく積み上がる
- 資本効率が下がり、現金の使い道への不安が強まる。買収の価格次第で評価が分かれる。
- 自社株買いや特別配当で、余った現金を大きく株主に戻す
- 余った現金の戻り方の評価が上がり、本質価値が少し上がる。
見ておくもの
- 営業利益率(特に法人向けとコンシューマーの差)
- ネットワーク関連の粗利率(約30%を保てるか)
- ECの売上構成比と販促費
- 円ドルの水準と値上げ・値引き管理の効果
- 日本アンテナの営業統合の進み具合(営業1人あたりの売上)
- BtoB売上の積み上げ(1,000億円目標)
- 手元資金の使い道(M&A・自社株買い・配当)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価・PER を見ず、セグメントごとの市場(実質)× シェア × 物価で積んだ利益と、事業の ROE(余った現金を除く)・資本コスト 7.25%(基本 7.5% + 値決め・循環の +0.75%)・g 4% から正当化 PER を計算し、その 8〜9 割に置いた。ROE が k を超える中立は 1÷k を床にした。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、倍率をやや悲観の約100%に置いた。過去の倍率や自己資本の厚さは根拠にしていない。メーカー・卸でリースの約束は小さく、新リース会計の影響は軽い。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.3→18.85 倍・やや楽観 PER 12.9→18.19 倍・中立 PER 12.5→17.49 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75%(循環 +0.25・値決め +0.5)を足して k 7.25%。純現金で extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。