結論
東洋電機製造は、電車を動かすモーターと制御装置を作る、鉄道向け電機品の老舗である。売上の約7割が鉄道で、残りは自動車の試験装置や発電設備などの産業向けだ。2026年5月期の営業利益は31億円と、前期より3割増えた。筆者の結論は、事業は良くなったが、株価が急に上がった今、10年の本質価値は今の時価総額をやや下回るというものだ。
稼ぎの源は、鉄道会社との長い付き合いにある。電機品は車両の型式ごとに決まり、いったん採用されると、保守部品の需要が数十年続く。国内の省エネ車両への更新が進み、鉄道事業の営業利益率は2割近くまで上がった。
2026年7月には、東日本旅客鉄道(JR東日本)が筆頭株主となり、持株は2割になる見込みだ。10月には、第1四半期の好調を受けて通期の営業利益を26億円から38億円に上方修正し、配当を大きく引き上げ、自社株買いも決めた。
問題は、この水準が続くかである。会社は2026年5月期まで、営業利益率が2〜3%の年が長く続いた。いまは価格の見直しで稼ぎが上がったが、案件ごとのばらつきが大きい。財務は、政策保有株が自己資本の4割もあり、稼ぎに結びつかない資産が重い。10年後の中立は、売上が600億円強、営業利益が47億円、純利益が36億円。倍率は11倍とみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業と重い資産を同時に買う」ことになる。鉄道向け電機品は、採用されれば長く続き、不況に強い。2026年5月期の営業利益率は7.7%と、同社としては歴史的な高さだ。
気になるのは、資本の使い方だ。純資産の4割が上場株で、事業の稼ぎには結びつかない。自己資本利益率は10年の中央値で4%に満たず、資本コストを超えた年は少ない。経営はようやく政策保有株の縮減と自社株買い、配当性向40%以上に動き始めたが、実績はこれからだ。
株価は短期間に5割上がった。市場は、価格見直しと配当を評価している。しかし、案件ごとの利益のぶれが大きい業種で、直近の高い利益率を10年の前提にするのは危うい。中立は、直近の利益率を維持するところまでにとどめる。
安全域は、ほとんど無い。厚い自己資本が下値を支えるが、それは稼ぐ力ではなく、売れる資産の力だ。事業は評価できるが、今の値段に余裕はない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。交通事業は、鉄道車両用の主電動機、制御装置、駅の改札機などを作る。売上の約7割を占め、2026年5月期の売上は約274億円、セグメント利益は53億円だった。新幹線用パンタグラフでは国内で首位とされる。産業事業は、自動車の試験装置、発電・インフラのシステム、工場の駆動装置で、売上は120億円、利益は14億円。ICTソリューション事業は、駅務機器と遠隔監視で、売上は11億円と小さく、2026年6月に交通事業へ統合した。
顧客は鉄道会社と車両メーカーだ。前期はインドネシアの車両メーカーPT Industri Kereta Apiが売上の13%を占めた。大口の案件で、売上が年によって大きく振れる原因でもある。中国の高速鉄道向けには、保守部品を供給している。
生産は、交通が横浜製作所、産業が滋賀竜王製作所に集まる。連結の従業員は約1,200人。研究開発費は年に約11億円で、非電化区間向けの電気式気動車の駆動システムや、小型の車両試験用ダイナモなどを開発している。受注残は463億円あり、売上の1年分を超える。
優良さと弱いところ
堀は、採用された型式に縛られる性質にある。電機品は車両の設計の段階から入り込み、いったん採用されると、保守・更新まで同じ会社が担う。新幹線のパンタグラフのように、国内首位とされる品もある。筆者は、この堀を「普通」と見る。三菱電機、日立、東芝などの大手が競合で、単品売りでは中国勢も迫る。
収益の質は急に改善した。営業利益率は、2018年5月期から2024年5月期まで、0.6〜2.9%の低空飛行だった。2025年5月期に5.9%、2026年5月期に7.7%と上がり、中期計画2026の目標(営業利益率5%)を前倒しで達成した。背景は、価格の見直しと原価の低減だ。
気になる点は三つある。第一に、利益の山が高く、過去に長く続いたことがない。2006年5月期の8.0%が、25年来の最高だ。第二に、資産の重さだ。上場株の政策保有が約125億円あり、自己資本の4割を占める。配当は利益に入るが、事業の稼ぎには数えにくい。第三に、営業キャッシュフローだ。2026年5月期は仕入債務の減少で8億円のマイナスだった。
経営は、政策保有株の縮減、配当性向40%以上、自社株買いと、資本効率に動き始めた。ただ、10年かけて資本の使い方を見る必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鉄道車両は、老朽車両を省エネ車両に置き換える更新需要が中心だ。JR東日本、JR東海、大手私鉄が、順に新しい車両へ入れ替える。新しい路線は少なく、人口の減る国内では、車両の台数は大きく伸びない。中立では、国内の数量は実質でほぼ横ばいと置く。
海外は、インドネシア、中国、東南アジアなどだ。インドネシアは都市鉄道の投資が続くが、大口案件の入る年と入らない年が交互に来る。中国は、高速鉄道の保守部品が主で、現地メーカーへの置き換えが進めば細る。米国には子会社があり、新規の需要を探している。
産業事業は、自動車の電動化に向けた試験装置が柱だ。車両の評価試験が高度になる一方、エンジンの試験は縮み、モーターの試験が増える。非常用発電設備は、データセンターの増設で需要が増えている。ただし、中国のレアアース輸出規制は、モーター用磁石の調達に響く。
競合は大手の三菱電機、日立、東芝。国内の鉄道電機品は、鉄道会社との関係が強く、新規参入は難しい。成長は小さいが、悲観の下落も浅い構造だ。不況の時は、鉄道会社の投資が遅れ、受注が1〜2年ずれる。
資本政策と M&A
資本政策は、2026年に大きく変わった。2027年5月期から、配当性向40%以上と、株主資本配当率3.0%を下限とする方針にし、中間配当も始める。10月には配当の大幅な引き上げと、上限15万株(3億円)の自社株買いを決めた。2026年5月期の配当性向は約3割だった。
最大の変化は、JR東日本との関係だ。2026年8月に、JR東日本に自己株式578,000株を第三者割当で処分し、約11.6億円を受け取った。使途は研究開発だ。JR東日本は市場でも買い増し、持株は2割になる見込みだ。「その他の関係会社」に当たる。鉄道車両用電機品の安定した調達を狙う、資本提携の布石とみられる。
政策保有株は、上場18銘柄で約125億円ある。JR東日本、JR東海、月島ホールディングス、京成電鉄が上位だ。2026年5月期は東急、名古屋鉄道などを全株売り、売却益を4.3億円出した。縮減の数値目標は確かめられなかった。
買収を受ける側では、kabufuの推定で10年以内のTOBの確率は29%だ。JR東日本が2割を持つため、他社が買うのは難しいが、JR東日本が買い増す道はある。株主優待は実施していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の構造が変わった。営業利益率は2024年5月期の2.9%から、2026年5月期の7.7%へ、2年で急上昇した。背景は、価格の見直しという構造的な改善で、一時的な案件の寄与ではない。中期計画2026の目標は、1年前倒しで達成した。
2027年5月期の第1四半期は、営業利益が10.7億円と前年の2.9倍になり、通期を38億円に上方修正した。受注残は463億円あり、売上の1年分を超える。国内の車両更新、インドネシアの車両投資、データセンター向けの発電設備、自動車の電動化試験と、需要の柱が四つ並ぶ。
資本の使い方も変わった。配当性向40%以上、株主資本配当率3.0%の下限、自社株買い、政策保有株の縮減。JR東日本が2割の筆頭株主になり、鉄道車両用電機品の安定した調達を求める。この提携が受注の安定を生み、営業利益率が9%に乗れば、純利益は10年で2倍に近づく。
営業キャッシュフローがマイナスだったのは、仕入債務の支払いが一時的に重なったためで、受注が積み上がっている裏返しでもある。借入は増えたが、営業利益は支払利息の20倍を超え、財務に余裕がある。
慎重な見方
高い利益率が続いた試しがない。営業利益率は、2018年5月期から2024年5月期まで、0.6〜2.9%の間にあった。今の7.7%は、25年来の最高にほぼ並ぶ。2027年5月期の当初予想は、営業利益が前期より16%減る内容だった。大口案件の売上計上が、利益を持ち上げたに過ぎない可能性がある。
案件の波も大きい。2026年5月期は、インドネシアの大口案件の反動で、海外の交通事業の売上が減った。ICTソリューション事業は赤字になった。営業キャッシュフローも8億円のマイナスだ。
資産効率も低い。自己資本利益率は10年の中央値で3.8%。純資産の4割が政策保有株で、稼ぎに結びつかない。中国のレアアース輸出規制は、モーターの調達に響く。中国向けの保守部品は、現地メーカーに置き換わる恐れがある。
株価は7月から5割ほど上がった。好材料を織り込んだ今、利益が会社予想に届かない年が来れば、反動は大きい。
配当を増やしても、事業の稼ぐ力が上がったわけではない。新しい方針は性向40%以上の下限で、利益が落ちる年は、配当も同じ割合で落ちる。
どちらに重みを置いたか
足元の勢いと価格の見直しは本物で、強気の見方に分がある。しかし、2018年5月期から2024年5月期まで利益率が低かった事実と、案件のぶれの大きさを考えると、高い利益率が10年続く確率は低くしたい。このため、中立は営業利益率を過去の山とほぼ並ぶ7.6%にとどめた。
確率は、慎重な側にやや寄せた。やや悲観を27%、悲観を11%に置き、中立を38%とした。強気側は合わせて24%である。事業の質は評価するが、資本効率が低く、今の値段には余裕が少ないため、本質価値は今の時価総額をやや下回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 4,327 円416 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,444 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 3,045 円293 億円、今との差 −1.9%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 8,677 円834 億円 | 2,300 円221 億円 | +253.5% | +13.5% | 659 円63 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,405 円616 億円 | 1,946 円187 億円 | +169.0% | +10.4% | 1,503 円144 億円 |
| 中立 | 38% | 4,913 円472 億円 | 1,738 円167 億円 | +114.2% | +7.9% | 2,527 円243 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,276 円219 億円 | 1,009 円97 億円 | +5.8% | +0.6% | 887 円85 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,561 円150 億円 | 208 円20 億円 | −43.0% | −5.5% | 195 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,327 円416 億円 | 1,444 円139 億円 | +85.9% | +6.4% | 5,771 円555 億円 |
今の株価時価総額 3,105 円298 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 価格の見直しが定着し、利益率が9%台に乗る10年 利益 55 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 8,677 円834 億円
国内の車両更新が続くうえ、インドネシアなど海外の大口案件も継続して入る。JR東日本との提携が受注の安定につながり、交通事業の数量は3割ほど増える。価格の見直しも続き、電機品の値段は物価を少し上回る。
産業事業は、自動車の電動化試験とデータセンター向けの発電設備が伸び、数量は4割以上増える。レアアースの調達も解決する。
営業利益率は9%台後半まで上がり、中期計画の目標を超える。政策保有株の縮減が進み、自社株買いが続くため、自己資本利益率は10%を超える。配当は性向40%台後半を保つ。
鉄道会社が複数年の長期契約で電機品を発注する流れも強まり、受注の見通しが立てやすくなる。ICTと統合した駅務機器も、省人化の投資に乗って利益を出す。
- 交通事業(鉄道車両用電機品・駅務機器):数量 2,015(電機品の納入車両数の換算(両。国内の新造・更新、海外、保守部品を車両数に直した当社推定))× 価格 0.26(1両相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 518 億円・営業利益 101 億円。数量1.3倍。価格は価格適正化の継続で物価を少し上回る
- 産業事業(自動車試験・発電・駆動システム):数量 5,800(出荷数の換算(台。システムと機器を台数に直した当社推定))× 価格 0.04(1台相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 233 億円・営業利益 30 億円。数量1.45倍。電動化試験とデータセンター向けが伸びる
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.05 倍、時価総額 834 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の営業利益率9%という目標に届く姿。第1四半期の営業利益が2.9倍になり、通期予想を大きく上方修正した実績が裏づけになる。ただし案件の波が大きいため、上振れの確率は1割に届かない。
やや楽観 18% 更新需要を着実に取り、利益率が8%台に乗る10年 利益 45 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,405 円616 億円
国内の車両更新を着実に取り、海外の大口案件も2年に1回は入る。交通事業の数量は2割ほど増え、価格は物価並みに少し上乗せされる。産業事業はデータセンター向けと電動化試験が伸び、数量は3割増える。
営業利益率は8%台に乗り、2027年5月期の会社予想に近い水準を保つ。政策保有株の縮減が進み、売却代金が自社株買いと設備に回る。
配当は性向40%台で、株主資本配当率の下限を超えて増える。JR東日本との関係は安定し、技術の共同開発も進む。
産業事業では、非常用発電設備の需要が底堅く、自動車メーカーの試験投資も続く。レアアースの調達は、代替の磁石への切り替えで落ち着く。
- 交通事業(鉄道車両用電機品・駅務機器):数量 1,860(電機品の納入車両数の換算(両。国内の新造・更新、海外、保守部品を車両数に直した当社推定))× 価格 0.25(1両相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 465 億円・営業利益 88 億円。数量1.2倍。価格は物価をやや上回る
- 産業事業(自動車試験・発電・駆動システム):数量 5,200(出荷数の換算(台。システムと機器を台数に直した当社推定))× 価格 0.04(1台相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 209 億円・営業利益 26 億円。数量1.3倍
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.8 倍、時価総額 616 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年5月期の会社予想(営業利益38億円、率8.9%)に近い姿。価格適正化が定着すれば現実的な上振れだが、利益率が過去の山を超える点で、確率は2割弱に置く。
中立 38% 直近の利益率を維持するが、山は超えない10年 利益 37 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,913 円472 億円
国内の車両更新は続くが、台数は大きく増えない。交通事業の数量は実質で1割ほど増え、価格は物価並みに上がる。海外は大口案件が2〜3年に1回入り、均すとわずかに増える程度だ。
産業事業は、データセンター向けの発電設備と電動化試験が伸び、数量は2割ほど増える。一方、エンジンの試験は縮む。
本社費と研究開発費は物価で上がり、営業利益率は7.6%と過去の山の手前で止まる。純利益は36億円ほどで、今より2割増える。配当は性向40%以上、自社株買いを時々行う。政策保有株は少しずつ売り、配当の収入は減る。
JR東日本が2割の株主になり、取引は安定するが、受注が大きく増えるわけではない。政策保有株の売却代金は、自社株買いと配当に回る。
- 交通事業(鉄道車両用電機品・駅務機器):数量 1,736(電機品の納入車両数の換算(両。国内の新造・更新、海外、保守部品を車両数に直した当社推定))× 価格 0.25(1両相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 427 億円・営業利益 79 億円。数量1.12倍。価格は物価並み
- 産業事業(自動車試験・発電・駆動システム):数量 4,800(出荷数の換算(台。システムと機器を台数に直した当社推定))× 価格 0.04(1台相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 193 億円・営業利益 22 億円。数量1.2倍。価格は物価並み
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 472 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要は続くが、人件費と原材料の上昇、案件の波で、利益率は過去の山の手前にとどまる。価格適正化は残るが、さらに上がる根拠は薄く、最も起こりやすい姿である。
やや悲観 27% 更新需要が一巡し、利益率が3%台に戻る10年 利益 16 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,276 円219 億円
JR東日本など大手の車両更新が一巡し、国内の数量は縮む。インドネシアの大口案件は途切れ、中国向けの保守部品も現地メーカーに置き換わる。交通事業の数量は5%減り、価格の見直しも続かず、物価に届かない。
産業事業は、エンジン試験の縮小がモーター試験の伸びを上回り、レアアースの調達制約も重なる。数量は5%減る。
営業利益率は3%台に戻り、純利益は今の半分ほどになる。配当性向40%の方針は保つが、額は減る。政策保有株の売却は進むが、利益の押し上げは小さい。
価格の見直しで一度上がった利益率は、人件費と原材料の上昇で削られる。鉄道会社は価格を交渉で抑え、中国勢との競争も海外で強まる。
- 交通事業(鉄道車両用電機品・駅務機器):数量 1,472(電機品の納入車両数の換算(両。国内の新造・更新、海外、保守部品を車両数に直した当社推定))× 価格 0.24(1両相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 346 億円・営業利益 52 億円。数量0.95倍。価格は物価に届かず1.28倍
- 産業事業(自動車試験・発電・駆動システム):数量 3,800(出荷数の換算(台。システムと機器を台数に直した当社推定))× 価格 0.04(1台相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 146 億円・営業利益 13 億円。数量0.95倍。エンジン試験が縮む
倍率:利益が小さくなる構造的な負けの途中。稼ぐ力(純利益16億円÷k)は約200億円に届かないため、売れる資産で測る。床は上場株の税後約87億円、工場の簿価約42億円などで、今の自己資本306億円の約0.62倍(約190億円)。
確率:2018年5月期から2024年5月期は、営業利益率が7年続けて3%以下だった。大口案件の波と、買い手の価格交渉力は構造として残るため、過去の水準に戻る筋書きは重く置く。
悲観 11% 受注を失い、固定費だけが残る10年 利益 −14 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,561 円150 億円
国内の鉄道会社が電機品の調達先を三菱電機や日立などに分散し、同社の数量は2割減る。海外では、中国メーカーが価格で勝ち、保守部品もインドネシアの案件も失う。
産業事業は、エンジンの試験装置が急速に縮み、電動化試験は競合に取られる。数量は3割減る。レアアースの調達も止まり、納期が遅れる。
営業利益は赤字に近づき、純利益は赤字になる。配当は方針を保てず、減らす。政策保有株を売って耐えるが、売却益は一度きりだ。
受注が落ち込んでも、横浜と滋賀の工場の固定費は残る。熟練技術者の退職が重なり、納期と品質の問題が信用を傷つける。
- 交通事業(鉄道車両用電機品・駅務機器):数量 1,240(電機品の納入車両数の換算(両。国内の新造・更新、海外、保守部品を車両数に直した当社推定))× 価格 0.21(1両相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 262 億円・営業利益 21 億円。数量0.8倍。価格は物価を大きく下回る
- 産業事業(自動車試験・発電・駆動システム):数量 2,800(出荷数の換算(台。システムと機器を台数に直した当社推定))× 価格 0.03(1台相当あたりの売上(億円。物価込み))→ 売上 97 億円・営業利益 3 億円。数量0.7倍。エンジン試験が急速に縮む
倍率:赤字になる筋書きなので PBR で測る。床は上場株の税後約 87 億円、工場の簿価約 42 億円などの売れる資産だが、損失で運転資金が減り、借入が残るため、今の自己資本 306 億円の約 0.49 倍(約 150 億円)に置いた。
確率:鉄道会社が複数社に調達を分散し、中国勢が海外で伸び、エンジン試験が急に縮む構造的な負け。2022年5月期は赤字で、確度は低いが、1割強は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
交通事業(鉄道車両用電機品・駅務機器)
鉄道車両の主電動機・制御装置・パンタグラフ、駅務機器、遠隔監視。2026年6月にICTソリューション事業を統合した。
| 数量電機品の納入車両数の換算(両。国内の新造・更新、海外、保守部品を車両数に直した当社推定) | 価格1両相当あたりの売上(億円。物価込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,550 | 0.18 | 285 | 53 |
| 10 年後 中立 | 1,736 | 0.25 | 427 | 79 |
取り方:交通事業の売上274.0億円とICTソリューション事業の10.7億円(2026年6月に統合)を合わせた284.7億円を、納入車両数に換算して約1,550両相当、1両相当あたり約0.184億円と置いた。台数は開示が無く、新造・更新・海外・保守部品を車両数に直した当社の推定である。将来の数量は、国内の更新需要(実質で横ばい)に、インドネシアなど海外の大口案件を加減して動かし、価格は物価の指数で動かす。営業利益は両セグメントの利益の合計53.2億円−0.3億円=52.9億円。
産業事業(自動車試験・発電・駆動システム)
自動車の評価試験システム(ダイナモ)、非常用発電などの発電・インフラシステム、工場の駆動装置、車載用電機品。
| 数量出荷数の換算(台。システムと機器を台数に直した当社推定) | 価格1台相当あたりの売上(億円。物価込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 4,000 | 0.03 | 120 | 14 |
| 10 年後 中立 | 4,800 | 0.04 | 193 | 22 |
取り方:産業事業の売上120.1億円を、出荷数に換算して約4,000台相当、1台相当あたり約0.03億円(約3,000万円)と置いた。台数は開示が無く、当社の推定である。数量は、自動車の電動化試験とデータセンター向けの発電設備の伸びから動かし、レアアースの調達制約を悲観側で引く。営業利益はセグメント利益13.9億円。全社の営業利益31.1億円との差−35.7億円(本社費と全社共通の研究開発費)は調整額に置いた。
リスクと懸念
利益率の反動
営業利益率は2018年5月期から2024年5月期まで0.6〜2.9%だった。今の7.7%は25年来の最高にほぼ並ぶ。案件の波が大きく、利益率が反動で落ちる年が来る恐れがある。
大口案件への依存
前期はインドネシアの車両メーカーが売上の13%を占めた。大口案件が入らない年は、売上と利益が大きく落ちる。受注残463億円は多いが、案件ごとの利益率は差がある。
レアアースの調達
中国のレアアース輸出規制は、モーター用の磁石の調達に響く。会社は産業事業で費用が増えると見ている。調達が止まれば、納期が遅れる。
政策保有株と資本効率
上場株約125億円が自己資本の4割を占める。配当は入るが、事業の稼ぎには数えにくい。売却の数値目標は確かめられず、縮減が遅れれば、自己資本利益率は低いままだ。
海外の保守部品の置き換え
中国向けの保守部品は、現地メーカーへの置き換えが進めば細る。インドネシアなど新興国の車両投資も、案件ごとに入る年と入らない年が交互に来る。
支配権の変化
JR東日本が2割を持つ筆頭株主になる。鉄道会社が株主になることは受注の安定につながるが、他の顧客が競合の大手に流れる恐れもある。買い増し(TOB)の可能性もある。
今後の分かれ目
- 価格適正化が定着し、営業利益率が9%に乗れば
- 会社の中期計画(2030年5月期の営業利益率9%)に届き、本質価値は楽観〜やや楽観の筋書きに近づく。
- 大口案件が入らない年が続き、売上が落ちれば
- 営業利益率が3%台に戻り、やや悲観の筋書きに近づく。
- 政策保有株の売却が進み、自社株買いに回れば
- 自己資本が減り、自己資本利益率が上がって、倍率が資本コストを超える水準に近づく。
- レアアースの調達が止まり、産業事業の納期が遅れれば
- 産業事業の利益が落ち、全体の利益率が下がる。
- JR東日本がさらに買い増し、TOBに動けば
- プレミアム付きの価格が付く可能性があるが、本質価値の計算にはTOBを入れていない。
- 中国の高速鉄道向け保守部品が、現地メーカーに置き換わり始めれば
- 交通事業の海外売上が細り、利益率が下がる。
見ておくもの
- 受注高と受注残、大口案件の入り方
- 交通事業と産業事業の営業利益率(交通で2割近くを保てるか)
- 政策保有株の売却額と、自社株買いの実行額
- JR東日本の持株比率と、取引の変化
- 中国のレアアース規制と、産業事業の費用
倍率と資本コストの決め方
今の株価(7月から5割ほど急騰)や PER(約10倍)を見て筋書きを作ってはいない。先に交通の納入車両数換算 × 1両相当の売上、産業の出荷数換算 × 1台相当の売上で積み、営業利益率は過去25年の山(8.0%)に近い7.6%を中立に置いた。ROE は約7%で資本コスト7.75%に届かないので、PER の上限は1÷k(約12.9倍)、その約85%の11倍とした。結果が今の時価総額をやや下回るのは、自己資本の4割が稼ぎに結びつかない政策保有株で、ROE が資本コストに届かないためで、今の株価に寄せた結果ではない。会社の予想(2027年5月期 営業利益38億円)は、初めの数字が大きく修正された経緯もあり、10年の前提には使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→15.05 倍・やや楽観 PER 11.7→13.8 倍・中立 PER 11→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の 7.5% に 0.25% を足す。同じ領域の日本信号(−0.2%)より、大口案件への依存が高く、京三製作所(+0.5%)より、保守と更新の需要が厚い。