結論
メイコーは、電子機器の土台になるプリント基板をつくる会社だ。主力は車載向けで、衛星通信とスマホ、AI サーバーへ広げている。
筆者の結論は「割高」だ。基板は景気と顧客の設備投資に振られやすく、堀も深くない。それなのに今の値段は、3 年で売上が 1.6 倍になり、利益率も 10% を超えたまま続く未来まで織り込んでいる。
成長そのものは疑っていない。2026 年 3 月期は売上 2,406 億円で過去最高、今期は 3,200 億円を計画する。衛星通信は 7 割増、AI サーバーも 7 割増と、伸びている先は新しい。
問題は、その伸びを買うお金だ。新しい中期経営計画は 3 年で 2,100 億円を設備に投じる。今の自己資本は 1,363 億円だから、借金が積み上がる。利益が計画どおり出ても、手元に残る株主のお金は薄い。
中立の見方では、10 年後の売上は 6,100 億円前後、営業利益は 620 億円前後で、ROE は 11% まで下がる。資本コスト 8.75%(基本 7.5% に quality +1.5%)で測ると、この水準の会社に今の時価総額を支える理由は見当たらない。
計算上、中立の 10 年後でも時価総額は今の 9 割弱、確率を掛けた総合の本質価値は今を 3 分の 2 ほど下回る。会社計画を達成する楽観の筋書きでは今の 1.4 倍まで届くが、その確率は 8% にすぎない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、メイコーは「よい事業の入口に立っているが、まだ財布は薄い会社」だ。見たいのは、株主が自由に使えるお金、つまり稼ぎから設備投資を引いた残りだ。この会社は、稼ぎの何倍もの設備投資を 3 年続ける。株主のものになる利益は、数年間ほとんど残らない。
堀を見ると、車載の認定という切り替えの難しさはある。ただ、基板は他社でも作れる製品で、顧客が値下げを求めれば逆らいにくい。10 年後に今より強い立場にいると確信できる材料は少ない。筆者は、堀を「弱い」と置いている。
経営の資本の使い方は、成長が確かなうちは評価できる。衛星通信と AI に早く動いたことは、数字でも結果が出ている。しかし、借金で工場を増やす経営は、需要が崩れたときの傷が深い。2016 年に赤字へ沈み、株価が純資産の 0.2 倍を割った過去は、この会社の歴史に残っている。
安全域は、ほぼない。上振れの筋書きは確率が 8% で、確率を掛けた本質価値は今の時価総額を大きく下回るからだ。持ち続けたいと思う会社になるには、投資が回収された後、つまり数年後の姿を見てから判断すれば遅くない。今の値段では、うまくいく未来にしか払えない会社だ。
何で稼ぐ会社か
メイコーは、電子回路基板(プリント基板)と、その上に部品を載せる受託生産(EMS)の 2 本で稼ぐ。2026 年 3 月期の売上 2,406 億円のうち、基板が 1,980 億円、EMS が 426 億円だ。
基板の最大の顧客は自動車で、売上は 975 億円。ブレーキや運転支援、電動化の制御に使う信頼性の高い基板が中心になる。車で使う基板は、顧客の認定を取るまでに何年もかかり、一度通れば長く使われる。これが車載の安定した稼ぎを支える。
伸びているのは衛星通信向けで、282 億円と前の期の 1.7 倍になった。スマホ・タブレット向けも 294 億円と 3 割増えた。AI サーバー向けはまだ 73 億円だが、7 割以上伸びている。直近の四半期では、AI サーバーが 26 億円と、前の期の年間の 3 分の 1 を 1 四半期で売った。
工場は日本・中国・ベトナムにある。成長の舞台はベトナムだ。ハノイ近郊の第 4 工場が動き出し、ホアビンの新工場は 2026 年度に稼働する。台湾の基板大手との合弁で、AI 向けの高多層基板も量産する構えだ。
基板は、顧客ごとの仕様で作る受注生産で、工場を建てても注文が付かなければ稼働率が下がり、固定費が利益を削る。メイコーの利益率が 10 年間 5〜9% に収まってきたのは、この構造のためだ。
優良さと弱いところ
メイコーの強みは、車載で顧客の信頼を積み上げたことと、試作から量産、実装まで一社で受ける柔軟さだ。筆者は、これを「優れた職人の工場」とは見るが、「他社が入れない堀」とまでは見ていない。
車載基板の世界市場は約 100 億ドルで、メイコーの車載売上は約 6.5 億ドルにあたる。会社は車載で世界首位級を名乗るが、市場全体の 1 割にも届かない。市場は日本メクトロン、イビデン、AT&S、TTM、ユニミクロンなど数十社に分かれ、中国・台湾勢の価格圧力も強い。つまり価格を自分で決められる立場ではない。
数字にもそれが出ている。営業利益率は、過去 10 年のほとんどが 5〜9% で、今期の計画 11.9% は 2000 年代半ば以来の高さだ。新しい工場の立ち上げ費用で、四半期の利益率が計画を下回る場面もすでに出ている。
資本の面は、成長のために借金を増やしている。自己資本比率は 40% 台に下がり、純有利子負債は 948 億円(時価総額の 17%)。過去 20 年の間にも、赤字の期が 4 回あり、増資で株が増えた期が 4 回ある。
弱点は、利益を出す力が顧客の投資の波と為替に左右される点だ。強みは、売上を伸ばす力が実際にあることだ。この 2 つを並べると、成長の質は悪くないが、儲けの安定度は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プリント基板は、電子機器が増えるほど需要が伸びる一方、価格競争が激しい業界だ。車載は電動化と運転支援で、1 台あたりの基板が増え続けている。車載基板の世界市場は 2024 年の約 100 億ドルから、2030 年に約 150 億ドルへ、年 6〜8% で伸びる見通しがある。
伸びの内訳が変わってきた。スマホ向けは台数が伸びず、基板の値段も下がる。車載は台数も 1 台あたりの基板の量も増える。AI サーバーは、高多層・高速伝送の基板が必要で、1 枚の値段が桁違いに高い。衛星通信は、地上端末向けに新しい需要が立ち上がった。メイコーの今の成長は、この 3 つの新しい需要で説明できる。
競合は層が分かれる。AI サーバー向けの最先端はイビデン、ユニミクロン、AT&S、台湾・中国の大手が先行し、メイコーはこれから追う側だ。車載・民生の量産は、日本メクトロンや中国の大手メーカーとの競争になる。中国メーカーは補助金と低い人件費で、汎用の多層基板の値段を押し下げ続けている。
循環のどこにいるかといえば、上向きの途中だ。AI サーバーの設備投資が続く間は、基板の需要は強い。ただ、AI の設備投資が一服したときの落ち方は急で、新しい工場の固定費が重くなる。ベトナムは人件費と関税で有利だが、同じ土地に台湾・中国メーカーも工場を建てている。
資本政策と M&A
資本の使い方は「借りて、建てて、伸ばす」に振り切っている。3 年間の設備投資は 2,100 億円で、前の 3 年間の 2 倍以上だ。ベトナム第 4 工場に約 250 億円、ホアビンの新工場に約 500 億円を入れる。
株主への還元は、配当性向 15% 前後を目安に、投資を優先する。1 株の配当は 2023 年度から 2025 年度にかけて 3 割ほど増えたが、利益の 85% は事業に残す設計だ。筆者は、この資本配分が成長に見合う利益を生むかどうかを、いちばん厳しく見る。
2026 年 8 月には、政府系の銀行が持つ優先株を約 71 億円で買い戻す予定だ。配当の負担を減らす狙いで、利益が戻ったことを示す一方、借入への依存はさらに進む。ベトナムの子会社には 2,000 万ドルを増資した。
M&A で大きく買う側に回ることは考えにくい。買われる側としても、時価総額が 5,000 億円を超えた今は買い手が限られ、TOB の確率は高くないと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
車載で積み上げた顧客の信頼を、衛星通信と AI サーバーへ広げる流れは、すでに数字になっている。衛星通信は 1 年で 7 割増え、直近の四半期で 122 億円になった。AI サーバー向けは 73 億円から、四半期ベースで 26 億円に達した。
会社の計画は、2029 年 3 月期に売上 4,600 億円・営業利益 650 億円だ。営業利益率は 14% で、いま 10% の会社が高付加価値の基板へ重心を移せば届かない水準ではない。AI 向けの基板は 1 枚あたりの値段が高く、少ない数でも売上と利益を大きく押し上げる。
ベトナムは人件費と関税で優位に立つ。第 4 工場とホアビン工場が稼働すれば、AI や衛星の注文を受けられる器ができる。台湾の基板大手との合弁は、技術の足りない部分を補う。
財務も悪くない。自己資本比率は 40% を保ち、営業利益は支払利息の 12 倍ある。営業利益が計画に近づけば、借金は 3 年のうちに利益で支えられる。また、AI 向けの設備投資は数年は続くという見方が強く、メイコーは日本の基板メーカーでは数少ない、AI の追い風を直接受ける会社だ。
慎重な見方
今の時価総額は、3 年で売上が 1.6 倍になり、利益率が 10% を超えたまま続くことを前提にした値段だ。会社が営業利益率 10% を超えたのは、2000 年代半ばと今期だけだ。
決算の質にも陰りが出た。今期の第 1 四半期は、売上が 38% 増えたのに営業利益は 9% しか増えなかった。新しい工場の立ち上げ費用と材料高が重なったためで、市場の期待を大きく下回り、翌日の株価は 2 割下がった。成長を買うほど利益率が下がる形が、すでに表れている。
3 年で 2,100 億円の設備投資は、今の自己資本の 1.5 倍にあたる。稼いだ利益のほとんどを新しい工場に注ぎ、足りない分は借りる。この間、株主に渡るお金は薄く、金利が 3.5% に上がれば利払いも重くなる。
基板は、顧客の都合で値段が決まる製品だ。AI サーバーが一服したとき、車載の生産が落ちたとき、新しい工場の固定費が一気に利益を食う。過去にも、2009 年と 2016 年に PBR が 0.3 倍前後以下まで下がった。中国勢の低価格も、車載・民生の量産品の値段を押し下げ続ける。
堀の薄い会社に、成長が続く前提の値段を払うのは、安全域が足りない。
どちらに重みを置いたか
強い見方の成長は事実で、会社計画を達成する筋書きにも 8% の確率を置いた。しかし、慎重な見方の指摘は、利益率の歴史・借金・堀の薄さと、数字に裏づけがある。
確率は、中立に最も厚く置いたうえで、慎重な側へ寄せた。AI 向けの需要が崩れたとき、車載が落ちたときの傷が深いためだ。10 年後は構造的な負けに 11%、やや悲観に 27% を置いた。結果として、中立でも今の時価総額の 9 割弱、総合では大きく下回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 16,799 円4,312 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,185 円561 億円)。 今の値に割り戻すと 8,698 円2,232 億円、今との差 −54.0%、 期待の年率 +0.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 37,156 円9,537 億円 | 4,516 円1,159 億円 | +120.5% | +8.2% | 3,334 円856 億円 |
| やや楽観 | 20% | 28,329 円7,271 億円 | 3,312 円850 億円 | +67.4% | +5.3% | 6,328 円1,624 億円 |
| 中立 | 34% | 20,211 円5,187 億円 | 2,610 円670 億円 | +20.7% | +1.9% | 7,759 円1,992 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,909 円1,003 億円 | 857 円220 億円 | −74.8% | −12.9% | 1,287 円330 億円 |
| 悲観 | 11% | 2,124 円545 億円 | 390 円100 億円 | −86.7% | −18.3% | 276 円71 億円 |
| 加重平均 | 100% | 16,799 円4,312 億円 | 2,185 円561 億円 | +0.4% | +0.0% | 18,985 円4,873 億円 |
今の株価時価総額 18,900 円4,851 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 3 本柱がそろい高付加価値の基板メーカーへ 利益 737 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 37,156 円9,537 億円
10 年後、メイコーは車載・衛星通信・AI の 3 本柱を持つ、高付加価値の基板メーカーになっている。AI サーバー向けは売上の 2 割近くを占め、最先端の基板でも合弁の技術で先行勢に並ぶ。売上は 8,400 億円に達する。
利益率は 12% 前後で安定する。ベトナムを中心に量産の規模が効き、中国勢の価格競争にも耐える。借入は返済に回り、自己資本が厚くなって ROE は 14% 近くを保つ。
堀は広がったとは言えない。それでも成長が長く続いた果ての、理想に近い結果だ。倍率は上限の 8.5 割に置く。
- 車載基板:数量 252(車載基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 11(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 2,662 億円・営業利益 359 億円。電動化と運転支援が拡大
- 通信・民生基板:数量 174(通信・民生基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 19(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 3,306 億円・営業利益 430 億円。衛星通信が定着
- AI サーバー・半導体パッケージ基板:数量 30.0(AI・パッケージ向け基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 48(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 1,442 億円・営業利益 202 億円。AI 向けが第 2 の柱に
- 電子機器の受託生産(EMS・ODM):数量 72.0(受託生産の処理量(百万枚相当、推定))× 価格 1,427(1 枚相当あたり平均単価(円、名目))→ 売上 1,028 億円・営業利益 72 億円。顧客の囲い込みが進む
倍率:事業の純利益 737 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.94 倍、時価総額 9,537 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:3 本柱がそろって成功し、10 年のあいだ中国勢にも負けない筋書き。基板業界で長く高い利益率を保てた会社は少なく、確率は低く置く。
やや楽観 20% 市場並み以上の成長が続く 利益 578 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 28,329 円7,271 億円
車載・衛星・AI のいずれも市場並みか、少し上回る伸びを続ける。AI サーバーは売上の 15% ほどまで育つが、先行勢に追いつくまでは至らない。売上は 7,300 億円になる。
利益率は 11% 前後。工場の増強が一巡し、稼働率が安定して、借入は着実に減っていく。顧客の偏りは残る。
ROE は 12% 前後で、資本コストを少し上回る。ただ、中国勢との価格競争は続き、単価は物価ほどには上がらない。堀が深まらない以上、強い成長が続いても、評価は「安定した優良メーカー」より上には行かない。倍率は上限の 8 割に置く。
- 車載基板:数量 228(車載基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 10(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 2,371 億円・営業利益 296 億円。市場並みに伸びる
- 通信・民生基板:数量 150(通信・民生基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 19(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 2,782 億円・営業利益 348 億円。新しい端末需要を取り込む
- AI サーバー・半導体パッケージ基板:数量 25.5(AI・パッケージ向け基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 47(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 1,186 億円・営業利益 148 億円。AI 向けが主要な柱の一つに
- 電子機器の受託生産(EMS・ODM):数量 64.0(受託生産の処理量(百万枚相当、推定))× 価格 1,427(1 枚相当あたり平均単価(円、名目))→ 売上 913 億円・営業利益 59 億円。堅調
倍率:事業の純利益 578 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.58 倍、時価総額 7,271 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場並みか少し上回る成長が続く筋書き。AI 向けは立ち上がるが、先行勢に追いつくまでは至らない。
中立 34% 普通に強い基板メーカーに落ち着く 利益 428 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 20,211 円5,187 億円
10 年後、メイコーは「そこそこ強い、普通の基板メーカー」に落ち着く。成長の勢いは緩み、売上は 6,100 億円前後、営業利益率は 10% 前後になる。
車載は電動化で堅調に伸びるが、世界の車載基板市場は年 6〜8% の成長で、メイコーが大きくシェアを取れるとは見ない。衛星通信は成熟し、AI 向けは一定の規模に育つが、最先端では先行勢に及ばない。中国・台湾の大手が値段を押し下げ続け、物価ほどには単価が上がらない。
借入は少しずつ返せる。ROE は 11% 前後で、資本コストを少し上回るだけだ。倍率は上限の 7.5 割に置く。
- 車載基板:数量 204(車載基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 10(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 2,072 億円・営業利益 238 億円。市場の拡大に沿って成熟。値下げ圧力で単価は物価の 1.34 倍に届かない
- 通信・民生基板:数量 126(通信・民生基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 18(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 2,298 億円・営業利益 264 億円。成長が緩み安定。スマホの値下がりで単価は物価並みに届かない
- AI サーバー・半導体パッケージ基板:数量 21.0(AI・パッケージ向け基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 45(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 944 億円・営業利益 104 億円。AI 向けが一定の規模に育つ
- 電子機器の受託生産(EMS・ODM):数量 58.0(受託生産の処理量(百万枚相当、推定))× 価格 1,427(1 枚相当あたり平均単価(円、名目))→ 売上 828 億円・営業利益 50 億円。緩やかに増える
倍率:事業の純利益 428 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 5,187 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:成長は緩み、利益率は 10% 前後、ROE は資本コストを少し上回る程度で落ち着く、最も重みの置ける筋書き。
やや悲観 27% 先端でも車載でもじわじわ負ける 利益 148 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 3,909 円1,003 億円
AI 向けの最先端基板で先行勢に追いつけず、車載でも中国勢がじわじわとシェアを削る。売上は 4,200 億円にとどまり、営業利益率は 6% 台へ下がる。
新しく建てた工場の稼働率が上がらず、固定費が重い。借入の返済が進まないまま、金利が 3.5% で効き続ける。配当は続けるが、増やせない。
ROE は 6% 前後と資本コストを下回り、成長の期待も消える。顧客からは値下げを求められ、取引先の分散も進めにくい。優良企業という評価は外れ、市場は「普通の電子部品メーカー」として値付けする。倍率は低く置く。
- 車載基板:数量 174(車載基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 9.34(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 1,626 億円・営業利益 130 億円。中国勢にシェアを削られる
- 通信・民生基板:数量 90.0(通信・民生基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 17(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 1,505 億円・営業利益 105 億円。価格競争で単価が伸びない
- AI サーバー・半導体パッケージ基板:数量 12.0(AI・パッケージ向け基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 39(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 465 億円・営業利益 33 億円。先行勢に追いつけない
- 電子機器の受託生産(EMS・ODM):数量 48.0(受託生産の処理量(百万枚相当、推定))× 価格 1,278(1 枚相当あたり平均単価(円、名目))→ 売上 613 億円・営業利益 25 億円。停滞
倍率:ROE 5.8%・資本コスト 8.75% から正当化 PER 11.1 倍(ROE が k 以下なので 1÷k)を計算し、その 61% をやや悲観の倍率に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 6.78 倍・時価総額 1,003 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:先端で追いつけず、車載でも中国勢にシェアを削られる筋書き。業界の歴史では、価格競争の負け方は少しずつ進む。
悲観 11% 構造的に負け、もう優良ではなくなる 利益 −72 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,124 円545 億円
構造的に負ける 10 年だ。AI 向けは最先端で脱落し、車載・民生の量産品でも中国勢の低価格に値段が決められ、顧客を失う。新しい工場は稼働が上がらず、一部は減損する。
配当は借入と手元資金で続ける(資産の売却は要らない)。売上は 2,700 億円前後で伸びなくなり、営業利益はほぼゼロ、金利を払うと赤字になる。借入の返済が重く、設備の更新も絞らざるをえない。もう優良な会社とは呼べない。
ただし事業そのものは続き、顧客との取引と工場の設備が残る。借入は資産を売らずに返せる範囲にとどまり、配当は小さくしながら続ける。純資産の 0.4 倍が株価の底を支える。
- 車載基板:数量 144(車載基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 8.13(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 1,170 億円・営業利益 23 億円。車載でも価格決定力を失う
- 通信・民生基板:数量 60.0(通信・民生基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 14(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 866 億円・営業利益 0 億円。量産品で中国勢に押される
- AI サーバー・半導体パッケージ基板:数量 7.5(AI・パッケージ向け基板の年間出荷面積(万㎡、推定))× 価格 31(1 ㎡あたり平均単価(万円、名目))→ 売上 232 億円・営業利益 −7 億円。最先端の競争から脱落
- 電子機器の受託生産(EMS・ODM):数量 40.0(受託生産の処理量(百万枚相当、推定))× 価格 1,172(1 枚相当あたり平均単価(円、名目))→ 売上 469 億円・営業利益 9 億円。採算が悪く縮小
倍率:赤字で稼ぐ力に値が付かないため床は資産で見る(今の自己資本 1,363 億円の約 40%=545 億円)。EV(時価総額+純有利子負債 948 億円)でも見ると、営業利益がほぼ 0 で EV÷営業利益は倍率として意味を持たない。借入は資産を売らずに返せる範囲に限る。
確率:構造的に負け、もう優良な会社ではなくなる筋書き。借金で工場を増やす会社は、需要が崩れたときに戻れなくなる確率が高い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
車載基板
自動車の運転支援・電動化・車体制御に使う基板。顧客の認定を通すと長く使われる、会社の安定した稼ぎ頭。
| 数量車載基板の年間出荷面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 8.13 | 975 | 117 |
| 10 年後 中立 | 204 | 10 | 2,072 | 238 |
取り方:会社の公表は売上 975 億円のみ。車載基板の 1 ㎡あたりの値段を 8 万円前後(多層・HDI の混合)と見て、出荷面積を約 120 万㎡と推定した。世界の車載基板市場は約 100 億ドルで、メイコーの売上は約 6.5 億ドル(市場の約 6%)にあたる。数量は実質の面積で、車の生産台数と 1 台あたりの基板の量で増える。物価 3% と高多層化は単価に入れ、中国勢の値下げ圧力と差し引きして、中立は 3 年 1.04 倍・10 年 1.25 倍(物価の 1.34 倍に届かない)と置いた。利益率は全社の 10.2% をもとに、車載を 12% と推定。
通信・民生基板
衛星通信・スマホ・タブレット・モジュール・産業機器向けの基板。今いちばん伸びが速く、顧客の偏りと価格競争も強い領域。
| 数量通信・民生基板の年間出荷面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 15 | 912 | 105 |
| 10 年後 中立 | 126 | 18 | 2,298 | 264 |
取り方:衛星通信 282 億円・スマホ/タブレット 294 億円・モジュール 92 億円・その他 244 億円の合計 912 億円。HDI などの高い単価の基板が多く、1 ㎡あたり約 15 万円、出荷面積約 60 万㎡と推定した。数量は実質の面積。衛星通信は地上端末の普及で伸びるが、スマホは台数が伸びず値下がりが続くため、物価 3% は価格に入れつつ単価の上がりを抑え、中立は 3 年 1.05 倍・10 年 1.20 倍とした。利益率は 11.5% と推定。
AI サーバー・半導体パッケージ基板
AI サーバーの高多層基板と、半導体パッケージ向けの基板。立ち上がったばかりで規模は小さいが、1 枚の単価が高く、伸びしろが大きい。
| 数量AI・パッケージ向け基板の年間出荷面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 31 | 93 | 7 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 45 | 944 | 104 |
取り方:AI サーバー 73 億円と半導体パッケージ基板 20 億円の合計 93 億円。高多層で 1 ㎡あたり約 31 万円と見て、出荷面積を約 3 万㎡と推定した。数量は実質の面積で、第 4 工場・ホアビン工場・合弁で能力が増える。高多層化の進展で単価は物価より上がるが、競合が増えるため中立は 3 年 1.15 倍・10 年 1.45 倍にとどめた。立ち上げ期の利益率は 8% と推定。
電子機器の受託生産(EMS・ODM)
基板に部品を載せ、機器に組み上げて顧客へ納める受託生産。利益率は低いが、基板との相乗りで顧客を囲い込む。
| 数量受託生産の処理量(百万枚相当、推定) | 価格1 枚相当あたり平均単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 1,065 | 426 | 26 |
| 10 年後 中立 | 58.0 | 1,427 | 828 | 50 |
取り方:売上 426 億円。年間の処理量を 4,000 万枚相当と置き、売上を処理量で割って単価を出した。数量は実質(処理量)で、顧客の機器の生産に連動して伸びる。価格は物価並みの 3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍が中立。営業利益率は組立が中心で 6% と推定。
リスクと懸念
設備投資の回収が遅れる
3 年で 2,100 億円は、今の自己資本の 1.5 倍にあたる。新工場の稼働率が上がらない期間が長引けば、減価償却が利益を食い、借入が増え続ける。第 1 四半期に売上 38% 増で営業利益は 9% 増にとどまった点が、その先触れだ。
AI サーバーの設備投資の一服
AI 向けの基板は、顧客の投資が続く間は強いが、一服した時の落ち方が急だ。メイコーは今、AI 向けの能力を先回りして増やしており、需要が止まれば稼働が下がって固定費が重くなる。AI 向けはまだ売上の 3% 台で、成功しても全社の利益への効きは数年先になる。
顧客の偏りと価格交渉力の弱さ
基板は少数の大口顧客への依存が強い業種で、衛星通信やスマホ向けも例外とは考えにくい。大口の顧客が調達先を変えたり、値下げを求めたりすれば、基板は代わりの作り手がいるため、メイコーは拒みにくい。1 社を失うだけで、新工場の稼働が大きく落ちる。
中国・台湾勢の価格攻勢
汎用の多層基板では、中国メーカーが補助金と低い人件費で値段を押し下げている。ベトナムに工場を持つ強みも、同じ土地に台湾・中国勢が進出して薄れていく。車載・民生の量産品では、値段で負けると数量も失う。会社の利益率の天井は低くなる。
金利と借入の重さ
純有利子負債は 948 億円(時価総額の 17%)だが、3 年の投資で 2,000 億円近くまで増える可能性がある。借入の金利が 3.5% まで上がれば、営業利益の 1 割前後が利払いに消え、不況時の余裕が小さい。借り換えのたびに金利が上がる点も重い。
為替と原材料
売上の大半が海外で、円高は円換算の利益を削る。銅箔・樹脂・ガラスクロスなどの材料高は、第 1 四半期のように価格に転嫁しきれず、利益率を下げる。円高と材料高が同時に来れば、利益の落ち方が大きい。為替は筋書きでは 150 円に固定したが、現実には振れる。
過去の赤字と増資の履歴
過去 20 年で赤字の期が 4 回、増資で株が増えた期が 4 回ある。2016 年は株価が PBR 0.16 倍まで下がった。今は需要が強いが、投資を借入で進める点は、当時と構造が似てきている。需要が崩れた時の戻りの遅さを、会社の歴史が示している。
今後の分かれ目
- ベトナム第 4 工場とホアビン工場が計画どおり稼働し、営業利益率が 12% を超えたら
- 上振れ側の確率を上げる。倍率の上限は変えないが、利益の水準が上がる。
- AI サーバー向けの売上が 2027 年度に 500 億円を超えたら
- AI・パッケージの数量と利益率を上方修正し、10 年の上振れ側の確率を上げる。
- 新工場の稼働率が上がらず、営業利益率が 2 期続けて 9% を下回ったら
- やや悲観側の確率を上げる。借入の返済計画も見直す。
- AI 向けの設備投資が一服し、衛星通信の需要も鈍ったら
- 3 年後の悲観・やや悲観の確率を上げ、新工場の固定費を重く置く。
- 主要顧客が調達先を分散した、または値下げを要求したと開示されたら
- 通信・民生基板の単価と利益率を下方修正する。
- 資金調達で増資や転換社債が出たら
- 株数の増加を織り込んで時価総額の見通しを見直す。自己資本の増加は ROE を下げる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)と新工場の立ち上げ費用の吸収ペース
- AI サーバー・衛星通信向けの四半期売上
- 純有利子負債と自己資本比率
- ベトナム第 4 工場・ホアビン工場の稼働率
- 中期経営計画の営業利益 650 億円(利益率 14%)との差
倍率と資本コストの決め方
先に 4 つのセグメントを面積 × 単価で積み、そのあとで ROE と k 8.75%(基本 7.5% に quality +1.5%:循環 +0.5・値決め +0.5・借金 +0.25・寿命 +0.25)から倍率を決めた。倍率は借入が重く堀が弱い(残る割合 1/3)前提の正当化 PER の上限の 7.5〜9.5 割(中立は式の下限 1÷k に置いた)。今の PER 28 倍・PBR 4.1 倍には寄せていない。悲観は赤字のため資産の床(今の自己資本の約 4 割)で置いた。純有利子負債は時価総額の 17% で、純現金ではないため余った現金は立てない。10 年後の自己資本は、今の 1,363 億円に期間の純利益と優先株の買い戻し 71 億円・配当を反映した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.55→12.94 倍・やや楽観 PER 9.67→12.58 倍・中立 PER 11.08→12.12 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。事業で決める:基本 7.5% に quality +1.5%(循環 +0.5・値決め +0.5・借金 +0.25・寿命 +0.25)を足して k 8.75%。赤字の期が続く状態ではないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。