結論
岡谷電機産業は、電源の雑音や雷のサージから電子機器を守る部品の老舗だ。エアコンや産業機器の電源に入るコンデンサ、ノイズフィルタ、サージアブソーバを作る。筆者の結論は「割高」だ。売上100億円の会社が2期続けて17億円の営業赤字を出し、立て直しの道筋もまだ数字で見えない。
赤字の理由は一つではない。原材料が上がり、新製品の立ち上げと生産ラインの組み替えで費用が先に出た。産業機器の在庫調整も長引いた。会社は有価証券報告書で、継続企業の前提に疑義を生じさせる状況があると自ら書いた。注記が付くほどではないが、黒字に戻るのは2027年度以降の見込みだ。
部品そのものの信頼は高い。ただ、アジアのメーカーの技術が上がり、値段で押されている。立て直しが成功しても、営業利益率は過去の実績どおり3〜5%に戻る程度だろう。その稼ぎでは資本コストに届かない。今の時価総額は、立て直しの成功をかなり前払いしている。
持ち合い株を売って借入を返す余力はあるが、それは株主に戻るお金ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の芯は悪くない。電源の雑音と雷から機器を守る部品は、どの時代にも要る。一度設計に入れば替えられにくく、客はばらけている。
しかし、オーナーとして持ちたい会社かと問われれば、答えは否だ。値段を決める力が無く、利益率は20年かけて削られた。計画は二度続けて大きく外れた。今は持ち合い株と借入で赤字の穴を埋めている。資本を生み出す事業ではなく、資本を食う事業になっている。
値段にも安全域は無い。立て直しが成功し、利益率が過去の実績の上限まで戻っても、稼ぎは資本コストに届かない。今の時価総額は自己資本の7割ほどだが、帳簿の資産は稼がない限り株主の価値にならない。筆者が見方を変えるのは、2期以上続けて営業利益率5%を超え、借入を減らし始めた時だ。
それまでは、遠くから眺めておく会社だ。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに分かれる。2026年3月期の売上102億円のうち、コンデンサが47億円、ノイズ・サージ対策が35億円、表示・照明が18億円、センサが3億円だった。
コンデンサは、家電や産業機器の電源の入り口で雑音を吸い取るフィルムコンデンサが主力だ。エアコンのインバーターなど、電源の雑音を外へ出さないための規格に合わせて使われる。ノイズ・サージ対策は、雷や電源の急な電圧の跳ね上がりを逃がすサージアブソーバと、雑音を遮るノイズフィルタだ。どちらも、一度機器の設計に組み込まれると、その機種の生産が続く間は使われ続ける。
表示・照明は、特定の客向けに作るLEDの表示部品で、今は唯一の黒字の事業だ。センサは工場のエンコーダや時計の針の位置合わせに使う赤外の光源で、規模は小さい。
売る先は日本が半分弱で、残りはタイ、香港、中国などアジアが中心だ。1割を超える大口の客はいない。工場は国内のほか中国とスリランカにある。受注生産で在庫を抑えるやり方だが、そのぶん受注の波がそのまま操業度に響く。
費用の面では、原材料の金属や樹脂の値段と人件費が重い。
優良さと弱いところ
優良さは部品の信頼にある。電源の安全規格に合わせて認定を受けた部品は、客がたやすく替えない。創業から70年以上、空調と産業機器の電源で使われてきた実績は本物だ。
ただし、利益の面では長く弱い。過去10年で営業利益率が5%を超えた年は一度しかない。2000年代半ばには10%を超えていたが、その後はアジア勢との価格競争で削られてきた。過去10年のROEの中央値はマイナスだ。
経営の資本の使い方にも課題がある。第11次中期経営計画は2024年度に営業利益7億円を掲げたが、実際は17億円の赤字だった。2025年度を構造改革の年と位置づけた目標にも届かなかった。計画と実績の差が大きく、立て直しの数字をそのまま信じにくい。持ち合い株を少しずつ売り、借入で資金をつないでいるのが今の姿だ。
強みと弱みを差し引けば、平凡な部品会社と見るのが妥当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ノイズ・サージ対策の部品は、電子機器が増えるほど数が要る地味だが手堅い市場だ。インバーターで動くエアコン、工場のモーター、電気自動車の充電器は、どれも電源の雑音を規格内に収めなければ売れない。機器のデジタル化と高速化が進むほど、雑音の対策は難しくなる。
ただ、市場の伸びと価格は別の話だ。フィルムコンデンサやサージアブソーバは、中国や台湾のメーカーが同じ規格の品を安く出せる。会社自身も、アジアのメーカーの技術向上で競争が激しくなったと認めている。村田製作所やTDKのような大手は品ぞろえと規模で、アジア勢は値段で攻める。その間に挟まれた中堅は苦しい。
景気の波も大きい。2022〜2023年は部品不足で客が先回りして買い、売上は171億円まで膨らんだ。その反動で在庫調整が起き、売上は96億円まで落ちた。今は空調向けが戻り、車載向けも増えているが、産業機器の回復は遅れている。10年の中立では、数量は年1〜2%伸び、値段は競争で物価をやや下回ると見る。
数量が伸びても、値段の弱さがそれを打ち消す構図は変わらない。
資本政策と M&A
配当の方針は配当性向30%だが、2期続けて無配だ。黒字に戻るまで再開は難しい。
財務は細くなった。現金26億円に対し借入は42億円あり、短期の借入を増やしてしのいでいる。一方で、投資有価証券が25億円ある。すべて持ち合いの株で、会社は合理性のないものを段階的に売ると定めている。2026年3月期には一部を売って2億円の売却益を出した。この株は資金繰りの支えとして売られていくだろう。
大株主は沖電気の退職給付信託が16%、明治安田生命が9%、TPRが6%だ。親会社はいない。業績が戻らなければ、同業による買収や事業の切り売りが選択肢に上る可能性はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
底は過ぎた。2026年3月期は売上が7%増え、受注も前の年より増えた。赤字の大きな原因は新製品の立ち上げと生産ラインの組み替えで、これは一度きりの費用だ。会社は2026年度に営業赤字を5億円まで縮め、2027年度に黒字に戻すと言う。
製品の需要は確かだ。インバーターのエアコン、電気自動車の充電器、工場の機器は、雑音の規格を満たさなければ売れない。耐熱・耐湿の新しいコンデンサで、これまで入れなかった業界にも入れる。車載向けはすでに増えている。
資産もある。持ち合い株25億円は売れば借入の半分以上を返せる。時価総額は自己資本の7割ほどで、立て直しが成功すれば帳簿まで戻るだけでも上値はある。2023年3月期には売上171億円、営業利益7億円を出した実績もある。固定費を削れば、売上130億円で利益率5%は無理な数字ではない。
赤字の会社を立て直す時は、最初の2〜3年で利益が一気に戻ることが多い。固定費を削った後の売上の回復は、ほぼそのまま利益に乗るからだ。
慎重な見方
立て直しの計画は二度外れた。第11次中期経営計画の営業利益7億円は17億円の赤字に化け、構造改革の年の目標にも届かなかった。三度目の計画をそのまま信じる理由は無い。
問題は一時の費用ではなく、値段だ。アジアのメーカーが同じ規格の部品を安く出し、原材料の値上がりを客に転嫁しきれない。過去10年で営業利益率が5%を超えたのは一度だけで、ROEの中央値はマイナスだ。立て直しが成功しても、稼ぎは資本コストに届かない。
財務も細っている。借入は42億円で現金を上回り、短期の借入を増やしてしのいでいる。持ち合い株の売却は資金繰りのためで、株主に戻るお金ではない。赤字があと2年続けば自己資本は50億円を割り、金利の上昇で利払いも重くなる。会社自身が継続企業の前提に疑義を生じさせる状況と書いたことを軽く見てはいけない。
立て直しの成功を前提に今の値段を払うのは、安全域を自分から捨てるのに等しい。黒字に戻るまでの2年の赤字だけで、自己資本はさらに1割削られる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がはっきり強い。需要の確かさと立て直しの意志は認めるが、計画が二度外れたこと、値段を決める力が無いことは数字に出ている。立て直しが成功する筋書きでも、稼ぎは資本コストに届かない。確率は中立に4割を置き、楽観側を2.5割、悲観側を3.5割とした。持ち合い株と部品の需要があるので、会社が消える筋書きは厚くしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 125 円28 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 22 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 62 円14 億円、今との差 −67.7%、 期待の年率 −2.6%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 366 円82 億円 | 71 円16 億円 | +129.2% | +8.6% | 31 円7 億円 |
| やや楽観 | 18% | 241 円54 億円 | 45 円10 億円 | +49.7% | +4.1% | 51 円12 億円 |
| 中立 | 40% | 125 円28 億円 | 22 円5 億円 | −22.8% | −2.6% | 59 円13 億円 |
| やや悲観 | 22% | 17 円4 億円 | 0 円0 億円 | −91.1% | −21.5% | 4 円1 億円 |
| 悲観 | 13% | 13 円3 億円 | 0 円0 億円 | −93.1% | −23.4% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 125 円28 億円 | 22 円5 億円 | −23.3% | −2.6% | 147 円33 億円 |
今の株価時価総額 191 円43 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 新製品が車載と空調で広がる 利益 8 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 366 円82 億円
耐熱・耐湿の新しいコンデンサが、電気自動車の充電器や車載の電源、新興国のインバーターエアコンで採用を広げる。ノイズ・サージ対策では、コンデンサと組み合わせた雑音対策の提案が当たり、客の設計の初期から呼ばれる。出荷は今の1.4倍になる。
値上げも少しずつ通り、原材料高を取り戻す。固定費の削減で本社の費用は今より軽い。営業利益率は6%に戻り、営業利益は11億円台に乗る。借入は持ち合い株の売却と利益で減り、配当は配当性向3割で再開する。
それでもROEは資本コストにわずかに届かない。部品の値段をアジア勢が抑えるので、利益率が過去の山の10%まで戻ることはない。
- コンデンサ製品:数量 140(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.67(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 9 億円。1.4億個×単価1.34倍、利益率10%
- ノイズ・サージ対策製品:数量 160(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.40(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 64 億円・営業利益 6 億円。1.6億個×単価1.33倍、利益率10%
- 表示・照明製品:数量 9.5(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2.76(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。単価1.38倍、利益率12%
- センサ製品:数量 8.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.68(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。単価1.36倍、利益率6%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新製品の拡販、固定費の削減、値上げの定着がそろう必要があり、過去の計画が二度外れたので1割未満。
やや楽観 18% 計画どおり黒字に戻る 利益 5 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 241 円54 億円
2027年度に黒字に戻り、その後は売上が年3〜4%ずつ伸びる。空調向けの回復が続き、産業機器の在庫調整も終わる。新しいコンデンサが車載で少しずつ採用され、出荷は今の1.3倍になる。
値段は物価をやや下回るが、品種の入れ替えで1個あたりの売上は上がる。営業利益率は4%台後半で、過去10年の良い年の水準だ。持ち合い株の売却で短期の借入は返し、配当も再開する。
ただしROEは7%前後で、資本コストには届かない。会社は存続し、配当も払うが、ためた利益は資本コストほどは稼がない。
株主にとっては、帳簿の価値を少し下回る値段が付く姿だ。
- コンデンサ製品:数量 125(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.65(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 81 億円・営業利益 7 億円。1.25億個×単価1.3倍、利益率9%
- ノイズ・サージ対策製品:数量 145(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.39(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 5 億円。1.45億個×単価1.3倍、利益率9%
- 表示・照明製品:数量 9.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2.68(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。単価1.34倍、利益率12%
- センサ製品:数量 7.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.67(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。単価1.34倍、利益率5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 54 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第12次中期経営計画が少し遅れて実を結ぶ姿。受注は増えているが計画の外れが続いたので2割弱。
中立 40% 黒字には戻るが薄利が続く 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 125 円28 億円
2028年度ごろに黒字に戻る。空調と車載向けは伸びるが、産業機器は波を繰り返す。出荷は10年で15%ほど増える。値段はアジア勢との競争で物価に届かず、10年で1.25倍にとどまる。
固定費の削減は進むが、人件費の上昇で一部は戻る。本社の費用は今より実質で4割軽くなり、それでも物価で膨らむ。営業利益率は3%弱で、過去10年の平均に近い。借入の金利は3.5%に上がり、利払いが純利益を削る。配当は配当性向3割で再開するが、額は小さい。
会社は生き残るが、ROEは4%台で資本コストの半分に届かない。ためた利益は帳簿に積もるだけで、株主の価値はあまり増えない。
- コンデンサ製品:数量 110(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.63(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 6 億円。1.1億個×単価1.25倍(アジア勢との競争で物価を下回る)、利益率8%
- ノイズ・サージ対策製品:数量 130(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.38(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 4 億円。1.3億個×単価1.25倍、利益率8%
- 表示・照明製品:数量 8.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2.60(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。数量は細り、単価1.3倍、利益率11%
- センサ製品:数量 6.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.65(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。単価1.3倍、利益率4%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:黒字化は計画より1年ほど遅れ、利益率は過去10年の平均並みに戻る姿を中心に置いた。
やや悲観 22% 赤字すれすれが続く 利益 0 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 17 円4 億円
黒字化は2029年度までずれ込み、その後も営業利益はゼロ近辺を行き来する。アジア勢が同じ規格の品を安く出し、値段は10年で1.15倍ほどしか上がらない。新製品は採用されるが、古い品種の落ち込みを埋めるのがやっとだ。
会社は本社の縮小と拠点の統合で固定費を大きく削り、何とか赤字を止める。持ち合い株は資金繰りのためにほぼ売り切る。配当は出せない。
赤字の年の損失で自己資本は今より1割以上減る。借入の金利が上がり、利払いが小さな営業利益を食う。株主に残る稼ぎはほとんど無い。
少数株主にとっては、配当も値上がりも期待しにくい10年になる。
- コンデンサ製品:数量 100(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.60(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。1億個×単価1.2倍、利益率4.5%
- ノイズ・サージ対策製品:数量 110(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.35(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。1.1億個×単価1.15倍、利益率4.5%
- 表示・照明製品:数量 7.5(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2.40(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。単価1.2倍、利益率9%
- センサ製品:数量 5.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.55(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。単価1.1倍、収支とんとん
倍率:ROE1%未満で資本コストに遠く届かない。帳簿は床にならないので稼ぐ力(純利益÷k)で置き、PERは1÷kに近い9.5倍。純負債の会社で、持ち合い株の税後は借入の返済に消えるので売れる資産の床も無い。EVで見ても営業利益が小さすぎ、倍率は意味を持たない。稼ぎの小ささそのものが価値の低さだ。
確率:計画が二度外れ、値段の力も無いので、黒字が定着しない姿を2割余り置いた。
悲観 13% 赤字が続き、借入と増資でしのぐ 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 13 円3 億円
アジア勢の値下げと原材料高が続き、コンデンサとノイズ・サージ対策は赤字から抜け出せない。新製品の設備は減損し、再び構造改革の費用が出る。銀行は追加の融資に担保と高い金利を求める。
会社は持ち合い株を売り切り、工場を閉じ、表示・照明やセンサの事業を他社に売って資金をつなぐ。それでも足りず、第三者割当の増資で株主の取り分は薄まる。同業への身売りも検討されるが、赤字の会社に高い値段は付かない。
10年後、会社は小さくなって残るが、少数株主の手元に残る価値はわずかだ。
継続企業の前提の注記が付く恐れもある。
- コンデンサ製品:数量 80.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.55(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 −1 億円。0.8億個×単価1.1倍、赤字
- ノイズ・サージ対策製品:数量 90.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.32(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。0.9億個×単価1.07倍、赤字
- 表示・照明製品:数量 6.5(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 2.30(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。単価1.15倍、利益率6%
- センサ製品:数量 4.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 0.50(1百万個あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、持ち合い株の税後は借入の返済で消えるので売れる資産の床も無い。今の自己資本59億円に0.05倍を掛けた(増資の希薄化と身売りの安値を見込む)。
確率:2期続けた大きな赤字と重要事象の記載があるので1割強を置いた。部品の需要自体は残るので厚くはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンデンサ製品
電源の雑音を吸い取るフィルムコンデンサ。空調・産業機器・車載向け。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1百万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 94.0 | 0.50 | 47 | −5 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.63 | 69 | 6 |
取り方:個数の開示は無い。売上47.1億円を、1億個あたり約50億円の平均単価と置いて約9,400万個と推定。
ノイズ・サージ対策製品
サージアブソーバとノイズフィルタ。雷や電源の異常電圧、雑音から機器を守る。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1百万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 115 | 0.30 | 35 | −4 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.38 | 49 | 4 |
取り方:個数の開示は無い。売上34.5億円を、1億個あたり約30億円の平均単価と置いて約1億1,500万個と推定。
表示・照明製品
特定の客向けのLED表示部品などのカスタム品。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1百万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.8 | 2.00 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 2.60 | 21 | 2 |
取り方:個数の開示は無い。売上17.5億円を、1億個あたり約200億円の平均単価(モジュール品)と置いて約875万個と推定。
センサ製品
エンコーダや時計の針の補正に使う赤外LEDの光源。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1百万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.2 | 0.50 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.65 | 4 | 0 |
取り方:個数の開示は無い。売上3.1億円を、1億個あたり約50億円の平均単価と置いて約620万個と推定。
リスクと懸念
立て直し計画の未達
第11次中期経営計画は2024年度に営業利益7億円を掲げたが、実際は17億円の赤字だった。2025年度の目標にも届かなかった。第12次の計画でも黒字化は2027年度以降で、さらにずれれば自己資本と借入の余力が一段と細る。
アジア勢との価格競争
フィルムコンデンサやサージアブソーバは、中国や台湾のメーカーが同じ規格の品を安く出せる。会社自身が競争の激化を認めている。値上げが通らなければ、原材料の上昇がそのまま利益を削る。
資金繰りと金利
現金26億円に対し借入は42億円で、短期の借入を増やしてしのいでいる。金利が上がれば利払いが増え、銀行が融資の条件を厳しくすれば、持ち合い株の売却や増資を迫られる。
受注の波
受注生産のため、客の在庫調整がそのまま操業度に響く。2022〜2023年の部品不足の先回りの買いと、その後の反動で売上は171億円から96億円まで振れた。産業機器の回復が遅れれば赤字が長引く。
持ち合い株の値下がり
投資有価証券25億円は時価総額の半分を超える。株式市場が下がれば、資金繰りの支えとして売れる額が減り、自己資本も目減りする。
今後の分かれ目
- 2027年度に営業黒字に戻り、2期続ける
- やや楽観の筋書きに近づく。ただし利益率が5%を超えなければ、資本コストには届かない。
- 2026年度の営業赤字が計画の5億円を大きく超える
- やや悲観から悲観の筋書きに寄る。増資や事業の売却が現実味を帯びる。
- 持ち合い株を売り、借入を大きく減らす
- 利払いと資金繰りの不安が薄れ、悲観の筋書きの確率が下がる。
- 同業や投資ファンドが買収を提案する
- 少数株主は上乗せを受け取れる可能性がある。条件は赤字の続き方しだいだ。
- 新しいコンデンサが車載や充電器で大きく採用される
- 楽観の筋書きに近づき、出荷の伸びが値段の弱さを補う。
見ておくもの
- 営業損益と第12次中期経営計画の進み具合
- 受注高と産業機器向けの回復
- 短期借入金と現金の残高
- 持ち合い株の売却額
- コンデンサとノイズ・サージ対策の利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPER・PBRから置いていない。中立の10年ROEは4%台でk10%に遠く届かないので、PERの上限は1÷kの10.5倍で、その85%の9倍に置いた。楽観でもROEはkをわずかに下回る。悲観側は稼ぐ力(純利益÷k)と、赤字の悲観は今の自己資本に掛けたPBRで置いた。持ち合い株25億円は配当を利益に残し、売却代金は借入の返済に回るとみて余った資産には足していない。新リース会計基準の影響は小さい。自己資本は年ごとの純利益の道筋(2026年度−5億円、2027年度ごろ収支とんとん、その後3〜4年で終点の水準へ)で積んだので、起点と終点の平均で見る検査の流れより厚い。悲観の自己資本20億円は赤字の累積を第三者割当の増資で一部埋めた額。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:やや楽観 PER 9.5→10 倍・中立 PER 9→10 倍・やや悲観 PER 10→9.5 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。基本7.5%に質の上乗せ1.5%と、事業が傾いている分の0.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 10.00%。