結論
小野測器は、回転・音・振動を測る計測器と、自動車の開発に使う試験装置の専門メーカーだ。筆者の結論は割高寄りである。測る技術は本物だが、自己資本利益率(ROE)は長く 2% 前後にとどまり、資本コストの半分にも届かない。
売上の 3 分の 2 は、自動車メーカーと部品メーカーが開発で使う特注の試験装置だ。エンジンの試験台で育った会社で、電動車への移りでその芯が細る。会社はモーターや電池の評価、騒音と振動の評価、模型で開発する手法(モデルベース開発)で埋めようとしている。豊田市に新しい拠点を建て、2027 年に動かす。
筆者は 10 年後の営業利益を 11 億円ほどと見る。中期経営計画の目標とほぼ同じだが、前の計画は同じ目標に届かなかった。ROE は 4% 台までしか上がらない。純現金と投資有価証券は厚いが、現金は新拠点に使われる。帳簿より安い株価でも、稼がない資本に安全域はない。オーナーとして持つなら、新拠点の受託が利益に変わり、計画を一度でも守る姿を確かめたい。それまでは、測る腕の確かさと、株主の稼ぎの薄さを分けて見るべき会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、小野測器は「腕は確かだが、儲けの薄い職人」だ。回転と音を測る技術は本物で、自動車の開発現場に信頼されている。ただ、その信頼を値段に換えられていない。特注の装置は、顧客の要望に合わせるほど手間が増え、利益は薄くなる。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の使い方である。旧本社を売った現金は、新しい拠点の建物と開発に回る。新拠点がモーターや電池の評価、音と振動の受託で稼げば正しい投資だが、これまでの計画は利益の目標に届かなかった。稼がない事業に資本を積み増すと、株主の取り分は増えない。
安全域は、今の時価総額では取れない。帳簿の価値は時価総額の倍近くあるが、ROE が 4% 前後の会社では、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を持たない。新拠点が利益を生む姿を見てから評価を上げても遅くない。
何で稼ぐ会社か
小野測器の事業は 2 つに分かれる。1 つは「特注試験装置及びサービス」で、売上 90 億円と全体の 3 分の 2 を占める。自動車メーカーや部品メーカーの開発部門に、エンジンやモーター、変速機を回して性能を測る試験台を、注文に応じて作って納める。騒音や振動を測る無響室の評価の受託や、装置の保守もここに入る。
試験台は 1 台ずつ設計が違い、数千万円から億円単位の案件になる。
2 つ目は「計測機器」で、売上 47 億円。回転計、エンジンの回転を測る検出器、騒音計、振動計、音響の解析装置などを売る。研究所や工場の品質検査で使われ、一台あたりは数十万円の世界だ。この部門は 2025 年 12 月期に小さな赤字だった。
顧客は自動車に偏る。トヨタをはじめとする中部地方の自動車産業が最大の得意先で、新しい拠点も豊田市に置く。海外は中国、米国、タイなどに販売と保守の拠点を持つが、売上の芯は国内だ。
稼ぎの形は受注生産である。開発の予算が増える年は試験台がまとまって売れ、減る年は落ちる。自動車メーカーの開発費の波が、そのまま会社の利益の波になる。装置を納めたあとの保守と校正は、波を少しならす安定した稼ぎだ。
優良さと弱いところ
強みは、回転と音を正確に測る技術の積み重ねだ。回転計と騒音・振動の解析では国内の老舗で、自動車の開発現場に深く入り込んでいる。試験台は顧客の開発の手順と一体で使われ、入れ替えには手間がかかる。
弱さは資本の稼ぐ力にある。過去 10 年の ROE の中央値は 2.1% で、資本コストの 8.5% に遠い。営業利益率が 10% を超えたのは 2013 年が最後だ。特注の装置は案件ごとに設計し、手間の割に値段を取りにくい。計測機器はリオンや、海外の HBK(ブリュエル・ケアー)と競い、赤字に落ちた。
経営は計画を掲げるが、届かない。前の中期経営計画は営業利益 10 億円を目標にして未達に終わり、今の計画も同じ水準を掲げる。堀、つまり他社がまねしにくい強みはあるが、狭く、それを利益に換える力が弱い。投資有価証券と現金を厚く抱え、資本の多くが事業の外で眠っていることも、ROE を押し下げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
計測と試験の装置は、自動車の開発投資に連れて動く業界だ。エンジンの試験台では、堀場製作所やオーストリアの AVL が大手で、小野測器は国内の中堅に当たる。騒音と振動の計測では、リオン、HBK、独シーメンスのソフトと競う。
構造の変化は 2 つある。1 つは電動化だ。エンジンの開発が減ると、エンジンの試験台と回転の検出器の需要は細る。代わりにモーターと電池、インバーターの評価が増え、エンジンが消えた車では小さな騒音が目立つので、音と振動の評価はむしろ増える。
もう 1 つは開発の手法の変化だ。実物を作る前に模型の計算で性能を詰めるモデルベース開発が広がり、試験台は計算と組み合わせて使う形に変わる。試験台の台数は減っても、計算と測定をつなぐ仕組みに値段が付く。
10 年の流れでは、筆者は試験の案件数は 1 割弱の増加、計測機器の台数は横ばいからやや減ると見る。値段は物価並みに上がるが、中国勢の安い計測器が下から押す。
自動車メーカーの開発費は、関税や中国勢との競争で利益が細ると真っ先に削られる。電動車の開発の遅れや計画の見直しも、試験台の発注を先送りさせる。この業界の受注は、景気より自動車メーカーの懐具合に従って振れる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2024 年の配当は自己資本に対する比率(DOE)で 2% だった。2025 年は 1.4% に減らし、2026 年は 2% 強に戻す予想である。自己株は発行済みの 15% にあたる 183 万株を持つが、消却の方針は示していない。
財務は堅い。現預金 38 億円に対し借入は 10 億円で、投資有価証券も 28 億円ある。2024 年には旧本社ビルを売って 15 億円の売却益を出した。ただ、その現金は豊田市の新拠点と開発投資に回る。中期経営計画は 3 年で設備投資 40 億円、開発投資 35〜40 億円を見込む。
M&A は目立った動きがない。時価総額が小さく、自動車の開発に深く入った会社なので、計測機器の大手や商社に買われる道は考えられる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電動化は逆風だけではない。エンジンが消えた車では、モーターの高い音やタイヤの音が目立つ。音と振動を測る技術は、電動車の開発でむしろ出番が増える。小野測器は無響室での評価を受託し、その実績を持つ。
豊田市の新拠点は、中部の自動車産業の真ん中に置かれる。モデルベース開発の設備を備え、自動車メーカーと部品メーカーの評価を引き受ける。受託の稼ぎは装置の売り切りより安定する。評価を通じて顧客の開発の初めから関われば、試験台の受注にもつながる。会社は 2026 年 12 月期に営業利益 11 億円を見込み、上期も計画どおり進んでいる。
財務の余裕も大きい。投資有価証券と純現金を合わせると時価総額の 6 割を超える。新拠点が軌道に乗れば ROE は 5〜7% に上がり、帳簿の半分という今の値段はその回復を見ていない。時価総額が小さく、計測の大手に買われる筋もある。自動車の開発現場に深く入った顧客の基盤は、買い手にとって手に入れにくい資産だ。どちらに転んでも、今の値段には下支えがある。
慎重な見方
電動化で試験台の芯が細る。エンジンの開発費は世界の自動車メーカーで削られ、試験台の大きな案件は減っていく。モーターや電池の評価は、堀場製作所や AVL、中国の装置メーカーも狙う競争の場で、小野測器が取れる値段は高くない。
計測機器は 2025 年に赤字だった。安い中国製の計測器と、海外大手の総合的なソフトに挟まれている。前の中期経営計画は営業利益 10 億円に届かず、今の計画も同じ数字を掲げる。過去 10 年の ROE の中央値は 2.1% で、目標の 9.9% は遠い。
新拠点に 40 億円を投じれば、純現金はほぼ消える。受託の稼ぎが計画に届かなければ、建物の償却が利益を削る。投資有価証券は政策保有の色が濃く、株主に戻る見込みは薄い。帳簿より安い値段は、資本が稼がないことへの値付けだ。自動車メーカーが開発費を絞る局面では、受注がまとめて消える。2020〜21 年の営業赤字は、その脆さの表れである。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。電動車で音と振動の評価が増えるのは確かだが、エンジン試験の縮みを埋めて資本コストを稼ぐ姿は見えない。計画の未達が続いた実績を重く見て、中立を厚くし、楽観は 1 割未満にした。財務が堅く、投資有価証券も厚いので、悲観の確率は 1 割強にとどめた。新拠点が稼ぐかどうかは数年で見えるので、その時に重みを見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 806 円84 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 330 円34 億円)。 今の値に割り戻すと 576 円60 億円、今との差 −27.9%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,732 円180 億円 | 531 円55 億円 | +183.1% | +11.0% | 158 円16 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,243 円129 億円 | 434 円45 億円 | +109.9% | +7.7% | 302 円31 億円 |
| 中立 | 40% | 966 円100 億円 | 338 円35 億円 | +63.1% | +5.0% | 521 円54 億円 |
| やや悲観 | 23% | 235 円24 億円 | 270 円28 億円 | −36.7% | −4.5% | 116 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 174 円18 億円 | 145 円15 億円 | −60.2% | −8.8% | 38 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 806 円84 億円 | 330 円34 億円 | +42.2% | +3.6% | 1,136 円118 億円 |
今の株価時価総額 799 円83 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 電動車の音と振動の評価で稼ぎ、計画を大きく超える 利益 15 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,732 円180 億円
電動車の開発で、音と振動の評価が主役の一つになる筋書きだ。エンジンが消えた車の小さな音を消す仕事が増え、豊田市の新拠点には評価の依頼が集まる。モデルベース開発の設備と測定を組み合わせた受託が、売り切りの試験台に代わる柱になる。
試験の案件数は 3 割近く増え、受託の比率が上がって利益率は 10% に届く。計測機器も電動車向けの検出器と解析ソフトで立て直し、黒字が定着する。営業利益は 20 億円を超え、ROE は 7% 台に上がる。それでも資本コストにはわずかに届かない。配当は利益に連れて増え、厚い財務を背景に自社株買いも加わる。
- 特注試験装置及びサービス:数量 380(試験装置・受託の案件数(件・推定))× 価格 4,100(1 件あたりの売上(万円。保守・受託の按分と物価を含む))→ 売上 156 億円・営業利益 16 億円。380 件(1.27 倍)× 4,100 万円(1.37 倍)、営業利益率 10%
- 計測機器:数量 17,000(計測器の出荷台数(台・推定))× 価格 42(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 71 億円・営業利益 5 億円。17,000 台(1.08 倍)× 42 万円(1.40 倍)、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が 10% を超えたのは 2013 年が最後で、試験と計測の両方で稼ぎが戻る必要がある。7% とした。
やや楽観 18% 新拠点が軌道に乗り、中計の目標を超える 利益 11 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,243 円129 億円
新しい拠点が軌道に乗り、中期経営計画の目標をやや超える筋書きだ。モーターと電池の評価、無響室での騒音の受託が増え、エンジン試験の縮みを埋めて余る。試験の案件数は 1 割強増え、利益率は 8.5% に上がる。
計測機器は汎用品で中国勢に押されるが、自動車向けの検出器と解析装置で小さな黒字を保つ。保守と校正の稼ぎも積み上がる。営業利益は 15 億円ほどで、ROE は 5% 台に上がる。配当は DOE 2% 強の水準から利益に連れて増え、自己資本はゆっくり積み上がる。自動車の開発に深く入った基盤が、ようやく利益の形で見えてくる。
- 特注試験装置及びサービス:数量 340(試験装置・受託の案件数(件・推定))× 価格 4,050(1 件あたりの売上(万円。保守・受託の按分と物価を含む))→ 売上 138 億円・営業利益 12 億円。340 件(1.13 倍)× 4,050 万円(1.35 倍)、営業利益率 8.5%
- 計測機器:数量 16,000(計測器の出荷台数(台・推定))× 価格 41(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。16,000 台(1.02 倍)× 41 万円(1.37 倍)、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は 2026/12 期に営業利益 11 億円を見込み、上期も計画どおり。新拠点の受託が上乗せになる筋として 18% とした。
中立 40% 電動化の評価がエンジンの縮みを埋め、ROE は 4% 台 利益 9 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 966 円100 億円
電動車の評価の伸びが、エンジン試験の縮みをちょうど埋める筋書きだ。試験の案件数は 1 割弱増え、値段は物価並みに上がる。新拠点の受託は稼ぎを生むが、建物の償却がその一部を食う。利益率は 7.5% と今とほぼ同じで、中期経営計画の目標の水準に数年遅れで届く。
計測機器は台数がやや減り、利益は小さな黒字にとどまる。営業利益は 11 億円ほどで、ROE は 4% 台だ。配当は DOE 2% 前後で続き、投資有価証券からの配当も利益を支える。資本コストには届かず、株主の価値はゆっくりとしか増えない。投資有価証券はそのまま持ち続け、資本の効率は大きく変わらない。
- 特注試験装置及びサービス:数量 320(試験装置・受託の案件数(件・推定))× 価格 4,020(1 件あたりの売上(万円。保守・受託の按分と物価を含む))→ 売上 129 億円・営業利益 10 億円。320 件(1.07 倍)× 4,020 万円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 7.5%
- 計測機器:数量 15,000(計測器の出荷台数(台・推定))× 価格 40(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。15,000 台(0.96 倍)× 40.2 万円(1.34 倍)、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動車の評価の伸びとエンジン試験の縮みが打ち消し合う落としどころ。計画の未達が続いた実績も入れ、最も起こりやすい筋として 40% とした。
やや悲観 23% エンジン試験の縮みが勝ち、新拠点も稼ぎきれない 利益 3 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 235 円24 億円
エンジン試験の縮みが、電動車の評価の伸びを上回る筋書きだ。自動車メーカーはエンジンの開発を絞り、大きな試験台の案件が減る。モーターと電池の評価は堀場製作所や AVL、中国の装置メーカーとの競争で値段が上がらない。新拠点の受託は計画を下回り、建物の償却が利益を削る。
計測機器は中国製の安い品に押されて赤字が続く。営業利益は 3 億円ほどに沈み、ROE は 2% 弱に戻る。配当は細り、純現金は新拠点で使い切る。株主の価値を支えるのは、投資有価証券と稼ぐ力の小さな残りだ。保守と校正の稼ぎは残るが、会社を支えるには小さい。
- 特注試験装置及びサービス:数量 280(試験装置・受託の案件数(件・推定))× 価格 3,800(1 件あたりの売上(万円。保守・受託の按分と物価を含む))→ 売上 106 億円・営業利益 4 億円。280 件(0.93 倍)× 3,800 万円(1.27 倍、値段が物価に届かない)、営業利益率 4%
- 計測機器:数量 13,500(計測器の出荷台数(台・推定))× 価格 37(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 −1 億円。13,500 台(0.86 倍)× 37 万円(1.23 倍)、営業利益率 −2%
倍率:ROE 1.7% は k 8.5% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k ≒ 35 億円)で見て、1÷k の 11.8 倍の 7 割の 8.2 倍。投資有価証券の税後を足した床とほぼ同じ水準。
確率:エンジンの開発費は世界で削られ、前の計画も未達だった。新拠点の受託が計画を下回る筋として 23% とした。
悲観 12% 電動化で試験台の芯を失い、赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 174 円18 億円
電動化で試験台の芯を失う筋書きだ。エンジンの試験台の需要は半分以下になり、モーターと電池の評価は堀場製作所や AVL、中国勢に取られる。新拠点は稼働率が上がらず、建物の償却が重荷になる。
計測機器も中国製と海外大手のソフトに挟まれて赤字が続く。会社は人員と拠点の縮小に追い込まれ、配当は大きく減る。株主の価値は投資有価証券と、運転資金を回収して残る額に近づく。自動車の開発に入り込んだ顧客の基盤を目当てに、計測の大手に安く買われる道も現実味を帯びる。測る技術そのものは残るが、それに値段が付く場面は限られる。
- 特注試験装置及びサービス:数量 240(試験装置・受託の案件数(件・推定))× 価格 3,500(1 件あたりの売上(万円。保守・受託の按分と物価を含む))→ 売上 84 億円・営業利益 0 億円。240 件(0.80 倍)× 3,500 万円(1.17 倍)、営業利益率 0%
- 計測機器:数量 11,000(計測器の出荷台数(台・推定))× 価格 34(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 −2 億円。11,000 台(0.70 倍)× 34 万円(1.13 倍)、営業利益率 −6%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は投資有価証券の税後と運転資金の回収から縮小の費用を引いた約 18 億円で、今の自己資本 162 億円の 0.111 倍。
確率:2020〜21 年に営業赤字があり、エンジン試験の縮みは構造の話。電動車の評価でも大手と中国勢に負ける筋として 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
特注試験装置及びサービス
自動車の開発部門向けのエンジン・モーター・変速機の試験台、音と振動の評価の受託、保守。
| 数量試験装置・受託の案件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(万円。保守・受託の按分と物価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 3,000 | 90 | 7 |
| 10 年後 中立 | 320 | 4,020 | 129 | 10 |
取り方:案件数の開示がないため推定。セグメント売上 90 億円を、試験台と受託・保守をならした 1 件あたり約 3,000 万円で割った約 300 件。営業利益はセグメントの 6.5 億円(利益率 7.2%)。
計測機器
回転計・回転検出器・騒音計・振動計・音響解析装置などの汎用の計測器。
| 数量計測器の出荷台数(台・推定) | 価格1 台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15,700 | 30 | 47 | −1 |
| 10 年後 中立 | 15,000 | 40 | 60 | 2 |
取り方:台数の開示がないため推定。セグメント売上 47 億円を、検出器から解析装置までならした 1 台あたり約 30 万円で割った約 15,700 台。営業利益はセグメントの −0.5 億円。
リスクと懸念
電動化でエンジン試験が縮む
試験台の芯はエンジンの開発だ。世界の自動車メーカーはエンジンの開発費を絞り、電動車に移している。モーターと電池の評価で埋めるには、堀場製作所や AVL、中国の装置メーカーとの競争に勝つ必要がある。
新拠点の投資が稼がない
豊田市の新拠点に設備投資 40 億円を投じる。受託と評価の依頼が計画どおり集まらなければ、建物の償却が利益を削り、純現金も消える。前の中期経営計画は利益の目標に届かなかった。
計測機器の赤字
計測機器は 2025 年 12 月期に営業赤字だった。安い中国製の計測器と、海外大手の総合的な解析ソフトに挟まれている。汎用品の値下がりが続けば、立て直しは難しい。
自動車の開発費への依存
顧客は自動車産業に偏り、開発費の波がそのまま受注の波になる。2020〜21 年には営業赤字に落ちた。米国の関税や中国勢との競争で自動車メーカーの利益が細れば、開発費も削られる。
資本の稼ぐ力の低さ
過去 10 年の ROE の中央値は 2.1% だ。投資有価証券と現金を厚く持ち、稼がない資本が多い。中期経営計画は ROE 9.9% を掲げるが、届く道筋は見えにくい。
今後の分かれ目
- 2027 年度に中期経営計画の営業利益 10 億円を達成し、翌年も保ったら
- 計画を守れる会社になった証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 新拠点が稼働後 2 年で受託の売上を伸ばし、試験の利益率が 9% を超えたら
- 受託が柱に育ったとみて、中立の利益率と倍率の質を見直す。
- 計測機器の赤字が 3 期以上続いたら
- 汎用品で負けたとみて、やや悲観に重みを移す。
- 政策保有の投資有価証券を売り、自社株買いや増配に回したら
- 資本の使い方が変わった証拠として、余った資産の戻り方を見直す。
- 計測の大手や商社から資本提携や買収の提案があったら
- 自動車の開発に入り込んだ顧客の基盤に値段が付く。帳簿に近い値段での再編がありうる。
見ておくもの
- 特注試験装置の受注高と受注残
- 豊田市の新拠点の稼働と受託の売上
- 計測機器セグメントの損益
- 自動車メーカーの開発費の計画
- 投資有価証券の縮減と還元の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR を見ずに、ROE と k 8.5% から決めた。中立の ROE は 4% 台で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍になり、その 8 割を使った。利益率は過去 12 年の山(8.7%)より下の 5.9% に置いた。純現金は新拠点の投資に充たるので分けず、投資有価証券は配当を利益に残すので足していない。PBR 0.5 倍は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→11.76 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。