結論
オプトエレクトロニクスは、埼玉県蕨市に本社を置くバーコードの読み取り機の会社だ。機器に組み込む小さな読み取りの部品と、手に持つ業務用の端末を、日本と米国、欧州に売る。筆者の結論は割高である。理由は、4期続けて赤字が見込まれ、稼ぐ力が自己資本に遠く見合わないことだ。
2026年1月、台湾のパソコン大手エイサーの日本法人ともう1社が増資を引き受け、合わせて約6割を持つ大株主になった。取締役の過半も入れ替わり、新しい経営陣が事業の計画を作り直している。手元の現金は増資で厚くなり、すぐに資金が尽きる心配は小さい。
ただ、本業の立て直しは見えていない。業界は米国のゼブラやハネウェル、中国の新しい会社に押され、売上は10年で2割近く減った。今期も営業赤字が5億円を超える見込みだ。
エイサーの販売網に乗れば利益が戻る道はある。それでも10年をならした稼ぎは、自己資本76億円に対して年に1〜2億円がせいぜいと筆者は見る。今の時価総額は、その立て直しがかなりうまくいく前提に立っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、今は持ちたい事業ではない。10年後もこの事業が今より強いと確信できる理由が乏しいからだ。世界の大手と中国の会社に挟まれ、技術の優位は狭まった。
株主のものになる利益は、この数年マイナスだった。黒字に戻っても、売上に対して数%の利益しか残らない事業で、自己資本76億円に見合う稼ぎにはならない。ROEが資本コストに届かない会社では、帳簿の自己資本は値打ちの上限にしかならない。
経営の資本の使い方は、新しい大株主のもとで変わるかもしれない。エイサーの販路と調達の力を借りれば、海外の赤字が止まる道はある。だが、その道筋はまだ数字になっていない。
安全域、つまり値段と価値の差の余裕は、今の値段には見当たらない。今の時価総額は自己資本の半分ほどで安く見えるが、稼がない資本は安くても安全ではない。
何で稼ぐ会社か
主な製品は二つある。一つは、レジや物流の機器、医療機器などに組み込む小さな読み取りの部品で、スキャンエンジンと呼ばれる。もう一つは、倉庫や店で手に持って使う読み取り機と、データを集める小さな端末だ。どちらも、1次元のバーコードと2次元のQRコードなどを読む。
売上の約半分が日本、2割が米国、3割が欧州とアジアだ。日本では、物流や小売の大口の顧客の注文に左右される。2025年11月期は国内の大口の受注で日本の売上が15%増えたが、今期は納入の延期で再び減った。米国と欧州は業界の在庫調整が長引き、赤字が続く。
利益の形は、日本がわずかな黒字、海外が赤字だ。2025年11月期は全社で2.5億円の営業赤字だった。米国での特許の訴訟は和解で決着し、引当金を取り崩した。
2026年1月の増資で24億円を集め、日本エイサーとEsquarre Visionが大株主になった。新しい経営陣は、人員と経費の削減、原価を下げた新製品、値上げで採算を戻すと掲げる。エイサーのパソコンや業務用の端末と組み合わせて売る道も考えられる。
優良さと弱いところ
優良さの物差しで見ると、堀、つまり他社がまねできない強みは細っている。読み取りの部品は、光学と読み取りの計算の技術が要る分野で、かつては小さく速いエンジンで評価を得た。だが世界の市場はゼブラ、ハネウェル、データロジックの3社が大きく、中国のニューランドなどが安い製品で追い上げる。スマートフォンのカメラで読む方法も広がった。
値段を決める力は弱い。部品の値段が上がっても、大口の顧客には値上げを通しにくい。過去10年で営業利益率が10%を超えたのは、コロナ後の特需の2021年11月期だけだ。
資本の使い方にも課題があった。3期続けて赤字を出し、一部の借入は財務制限条項に触れた。訴訟の和解金も重かった。
一方で、エイサーが大株主になったことは、販路と調達の力を借りられる点で前向きだ。ただし、親会社に近い大株主のもとで、少数株主の取り分がどう扱われるかは見ておく必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
バーコードの読み取りの市場は、物流と小売、医療の現場の自動化とともに、ゆっくり大きくなってきた。ネット通販の荷物の仕分け、店の無人のレジ、薬や検体の管理など、読む場面は増えている。2次元のコードは決済や在庫の管理にも広がった。物価の分を除いた台数で見ると、市場は年に数%伸びる。
ただ、この数年は在庫調整が業界全体を冷やした。コロナの時期に顧客が端末を多めに買い、その在庫を使い切るまで新しい注文が止まった。米国と欧州の需要は、2024年から2026年にかけて弱いままだ。
競争の形も変わった。ゼブラとハネウェルは端末と読み取りとソフトを一体で売り、大口の顧客を囲い込む。中国の会社は部品を安く作り、組み込み用の市場で値段を下げている。スマートフォンのカメラで読むソフトも、簡単な用途では専用の機器を置き換え始めた。
小さな専業の会社が生き残るには、特定の用途に強い部品か、大手に部品を供給する立場が要る。オプトは日本の顧客には根強いが、海外では規模の差が大きい。エイサーとの組み合わせが、その差を埋められるかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
配当は2025年11月期も今期も無配で、利益を事業の立て直しに回す方針だ。自社株買いは、増資の際に自己株を割当先に渡し、残りを消却した。
2026年1月の第三者割当で、日本エイサーが38.8%、Esquarre Visionが20%を持つ株主になった。1株の値段は増資の直前の株価とほぼ同じで、既存の株主の持ち分は半分以下に薄まった。割当先は取締役7名を指名し、経営の主導権は大株主の側に移った。
この形は、いずれエイサーが残りの株を買い取る道もありうる。そうなれば少数株主に上乗せが入るかもしれない。ただし、エイサーが急ぐ理由は無く、買い取りの値段も相手しだいだ。
手元の現金は増資で57億円まで増えたが、借入も46億円ある。財務制限条項に触れた借入の返済を求められれば、現金はそこに回る。株主に戻る現金は当面無いと見るべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大株主がエイサーに替わったことで、会社は別物になりうる。エイサーは世界中にパソコンと業務用の端末を売る販路を持つ。オプトの読み取りの部品をエイサーの業務用のタブレットや端末に載せれば、海外の売上は一気に増える。部品の調達でもエイサーの規模を使え、原価は下がる。
新しい経営陣は人員と経費を絞り、原価を下げた新製品と値上げで採算を戻すと決めた。2025年11月期には販管費を3億円近く減らし、赤字を半分に縮めた実績もある。業界の在庫調整も、いずれ終わる。コロナ後の2021年11月期には営業利益率14%を出した。需要が戻れば、利益は大きく振れる。
手元の現金は57億円まで厚くなり、財務の心配は消えた。自己資本は時価総額の2倍あり、増資の値段も今の株価より高かった。エイサーがいずれ残りの株を買い取るなら、少数株主には上乗せが入る。今の値段は、悲観が行き過ぎている。
読み取りの部品は、地味でも物流と医療の現場に欠かせない。一度機器に組み込まれれば、機種が替わるまで注文は続く。
慎重な見方
4期続けて赤字が見込まれる。今期の予想は営業赤字5億円を超え、前期より悪い。業界の在庫調整のせいにしてきたが、売上は10年で2割近く減っており、問題は景気ではなく競争力だ。米国のゼブラとハネウェルは端末とソフトを一体で売り、中国のニューランドは部品を安く作る。小さな専業の会社が入り込む余地は狭まっている。
スマートフォンのカメラで読むソフトも、簡単な用途では専用の機器を要らなくした。読み取りの部品の値段は下がり続ける。
エイサーとの組み合わせは、まだ絵に描いた餅だ。パソコンの会社が業務用の読み取りで成功した例は少ない。増資で既存の株主の持ち分は半分以下に薄まり、経営の主導権も大株主に移った。現金が厚くなっても、それは少数株主のものではない。
財務制限条項に触れた借入が46億円ある。赤字が続けば、現金は返済と赤字の穴埋めに消える。自己資本が時価総額の2倍あっても、稼がない資本に値打ちは無い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。エイサーの販路は確かに魅力だが、まだ数字に表れていない。一方、売上の長い減少と4期続く赤字は、競争力の問題を示している。中立はエイサーの支えで小さな黒字に戻る筋に置いたが、ROEは資本コストに遠い。確率はやや悲観の側を厚くし、楽観は1割にとどめた。
海外の赤字が2期続けて止まり、エイサーとの取引が開示の数字に出てくるまで、強気の見方に重みを移す理由は無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 135 円20 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 6 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 58 円9 億円、今との差 −76.1%、 期待の年率 −5.3%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 393 円59 億円 | 33 円5 億円 | +76.3% | +5.8% | 43 円6 億円 |
| やや楽観 | 22% | 197 円30 億円 | 10 円2 億円 | −14.6% | −1.6% | 45 円7 億円 |
| 中立 | 33% | 112 円17 億円 | 0 円0 億円 | −53.7% | −7.4% | 37 円6 億円 |
| やや悲観 | 22% | 53 円8 億円 | 0 円0 億円 | −78.0% | −14.0% | 12 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 27 円4 億円 | 0 円0 億円 | −89.0% | −19.8% | 3 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 135 円20 億円 | 6 円1 億円 | −42.0% | −5.3% | 140 円21 億円 |
今の株価時価総額 242 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 10% エイサーの販路で海外が立ち直る 利益 6 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 393 円59 億円
エイサーは自社の業務用のタブレットと端末にオプトの読み取りの部品を載せ、世界の販路で売る。物流と小売の自動化の需要も戻り、海外の台数は10年で1.7倍に増える。部品の調達をエイサーとまとめ、原価が下がる。
日本では大口の顧客との関係を保ち、医療や無人のレジの用途で台数を2割伸ばす。値上げも少しずつ通り、1台あたりの売上は物価に近く上がる。
人員を絞った体制のまま売上が増え、営業利益は9億円近くに戻る。それでもROEは資本コストに届かない。配当は後半に再開する。
少数株主にとっては、利益の回復に加え、エイサーが残りの株を買い取る話が現実味を帯びる筋書きでもある。
- 日本(読み取りの部品・業務用の端末):数量 26.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 2.10(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。26万台×1台あたり1.4倍、利益率8%
- 海外(米国・欧州・アジア):数量 40.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 2.00(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 5 億円。40万台×1台あたり1.33倍、利益率6%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 59 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:エイサーの業務用の端末に読み取りの部品が載り、海外の販売が大きく伸びる姿。新しい大株主の力が数字に表れる必要があり、過去10年の営業利益率の山が一度だけなので1割。
やや楽観 22% 海外の赤字が止まり、小さな黒字 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 197 円30 億円
業界の在庫調整が終わり、米国と欧州の注文が戻る。エイサーとの取引は一部の端末に限られるが、海外の台数は1.25倍になる。原価を下げた新製品と値上げで、海外は小さな黒字になる。
日本は大口の顧客の注文の波を受けながらも、台数を少し伸ばす。1台あたりの売上は物価に少し遅れて上がる。
経費は物価で増えるが、削った人員の分で吸収する。営業利益は4億円台に戻り、配当は後半に少しだけ再開する。ROEは3%台にとどまり、自己資本の厚さに見合う稼ぎにはならない。
会社は残り、業界の中で小さな専業の位置を保つ。エイサーとの関係は、販路よりも部品の調達で効く。
- 日本(読み取りの部品・業務用の端末):数量 23.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.95(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。23万台×1台あたり1.3倍、利益率6%
- 海外(米国・欧州・アジア):数量 30.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.90(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 2 億円。30万台×1台あたり1.27倍(値段の競争で物価に少し届かない)、利益率3.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経費の削減と新製品で海外の赤字が止まり、エイサーとの取引も少し増える姿。2025年11月期に赤字を半分に縮めた実績があるので2割強。
中立 33% 黒字には戻るが、稼ぎは薄い 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 112 円17 億円
人員と経費の削減が効き、数年で営業の赤字は止まる。業界の台数は伸びるが、オプトは大手と中国の会社に押され、日本も海外も台数は横ばいだ。1台あたりの売上は、部品の値上がりを一部しか転嫁できず、物価より遅れて上がる。海外は中国の会社との値段の競争が厳しく、10年で2割ほどしか上がらない。
日本は大口の顧客との関係で小さな黒字を保ち、海外はとんとん近くで止まる。エイサーとの取引は限られた品目にとどまる。
営業利益は2億円台、純利益は1億円台で、配当は出ない。自己資本は増資後の水準からほとんど動かず、ROEは2%台にとどまる。
事業は続くが、10年たっても自己資本に見合う稼ぎにはならない。読み取りの専業として、規模の差を埋められないまま静かに続く会社になる。
- 日本(読み取りの部品・業務用の端末):数量 21.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.90(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。21万台×1台あたり1.27倍、利益率5%
- 海外(米国・欧州・アジア):数量 24.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.80(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。24万台×1台あたり1.2倍(中国の会社との値段の競争で物価ほど上がらない)、利益率2%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経費の削減で黒字に戻るが、競争で値段が上がらず利益が薄い姿。過去10年の営業利益率の中央値が2%台なので、その延長をいちばん厚くした。
やや悲観 22% 海外の赤字が続き、現金が減る 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 53 円8 億円
米国と欧州では、大手と中国の会社に大口の顧客を奪われ、台数は2割以上減る。値段の競争で1台あたりの売上も伸びず、海外は赤字のままだ。日本も大口の顧客の注文が細り、利益はとんとんになる。
全社の赤字は年2億円ほど続き、手元の現金は赤字の穴埋めと借入の返済で減っていく。エイサーは追加の資金を出すが、条件は大株主に有利に決まる。少数株主に残る値打ちは、手元の現金のうち借入を返した残りのわずかな分だけになる。
事業の計画は何度も作り直され、そのたびに人員が減る。読み取りの技術は残るが、それを稼ぎに変える規模が無い。
- 日本(読み取りの部品・業務用の端末):数量 18.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.70(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。18万台×1台あたり1.13倍、収支とんとん
- 海外(米国・欧州・アジア):数量 18.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.60(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。18万台×1台あたり1.07倍、赤字
倍率:赤字が続き稼ぐ力はマイナス。床は手元の純現金に戻り方0.5を掛けた8億円で、帳簿の自己資本(増資前の52億円)の0.15倍ほどに当たる。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.154 倍・時価総額 8 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:経費を削っても海外の赤字が止まらず、全社の赤字が続く姿。今期も前期より赤字が膨らむ見込みなので2割強。
悲観 13% 読み取りの専業として負ける 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 27 円4 億円
簡単な用途はスマートフォンのカメラで読むソフトに置き換わり、組み込み用の部品は中国の会社の値段に負ける。台数は半分近くに減り、海外の子会社は整理される。整理の費用と在庫の評価の引き下げも重なる。日本の顧客との関係だけが残るが、そこでも値段の競争が続く。
赤字は年4億円を超え、手元の現金は借入の返済と赤字で消えていく。エイサーが事業を自社の部門に組み込む形で残りの株を安く買い取ることもありうる。少数株主に残るものはわずかだ。
日本の顧客向けの小さな事業だけが残り、上場を続ける意味も薄れる。整理の費用と在庫の評価の引き下げも重なり、損はさらに膨らむ。
- 日本(読み取りの部品・業務用の端末):数量 14.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.60(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 −1 億円。14万台×1台あたり1.07倍、赤字
- 海外(米国・欧州・アジア):数量 12.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 1.50(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 −3 億円。12万台、値下がりで赤字
倍率:赤字で稼ぐ力が消える筋書き。床は赤字と返済の後に残るわずかな現金に戻り方0.5を掛けた4億円で、帳簿の自己資本(増資前の52億円)の0.08倍ほどに当たる。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.077 倍・時価総額 4 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:スマートフォンのカメラと中国の安い部品に置き換えられ、事業が縮む構造的な負け。売上が10年で2割近く減ってきた流れの延長で1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(読み取りの部品・業務用の端末)
日本の物流・小売・医療の顧客に、組み込み用の読み取りの部品と、手に持つ読み取り機・端末を売る。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 21.3 | 1.50 | 32 | 0 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 1.90 | 40 | 2 |
取り方:台数の開示が無いので推定。日本の外部向け売上31.9億円を、部品と端末をならした1台あたり約1.5万円で割った。利益はセグメント利益0.49億円。
海外(米国・欧州・アジア)
米国と欧州・アジアの子会社が、読み取りの部品と読み取り機を販売する。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 23.9 | 1.50 | 36 | −3 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 1.80 | 43 | 1 |
取り方:台数の開示が無いので推定。米国14.1億円と欧州・アジア他21.7億円の合計を1台あたり約1.5万円で割った。利益は米国-2.0億円と欧州・アジア-1.0億円の合計。
リスクと懸念
大手と中国の会社との競争
世界の市場はゼブラ、ハネウェル、データロジックが大きく、中国のニューランドなどが安い部品で追い上げる。大口の顧客を奪われれば、台数と値段の両方が下がる。売上は10年で2割近く減った。
スマートフォンでの置き換え
スマートフォンのカメラで読むソフトが進み、簡単な用途では専用の読み取り機が要らなくなりつつある。組み込み用の部品の需要も、カメラの部品に置き換わる恐れがある。
財務制限条項
一部の借入は財務制限条項に触れている。銀行は今のところ返済を求めていないが、赤字が続けば求められうる。手元の現金は厚いが、借入も46億円ある。
大株主の支配
日本エイサーとEsquarre Visionで約6割を持ち、取締役の過半を指名した。事業の組み替えや残りの株の買い取りが、大株主の都合で決まる恐れがある。
為替と海外の子会社
売上の半分が海外で、自己資本には為替の換算の差額が16億円以上含まれる。円高に振れれば、自己資本と海外の利益の両方が目減りする。
今後の分かれ目
- エイサーの端末にオプトの読み取りの部品が載り、海外の売上が伸びる
- やや楽観から楽観の筋書きに近づく。大株主の販路が数字に表れた証拠だ。
- 営業利益が2期続けて黒字になる
- 中立からやや楽観の側に寄る。経費の削減と値上げが効いている。
- 今期の赤字が予想を超えて膨らむ
- やや悲観の側に重みを移す。現金の減り方を見る。
- 銀行が財務制限条項を理由に返済を求める
- 悲観の筋書きに近い。現金が返済に回る。
- エイサーが残りの株の買い取りを打ち出す
- 少数株主に上乗せが入る可能性がある。値段は大株主の条件しだいだ。
見ておくもの
- 日本・米国・欧州アジアの売上とセグメント利益
- エイサーとの取引の開示
- 業務予想の再開と事業計画の中身
- 現金と借入の残高、財務制限条項の状況
- 配当の再開
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPER・PBR、増資の値段から置いていない。中立はROE2%台でkに遠く届かないので、PERは1÷kの11.1倍以下の9.5倍に置いた。楽観でもROEはkを下回るので上限以下。悲観側は赤字で稼ぐ力がマイナスなので、純現金に戻り方0.5を掛けた床で、今の自己資本に掛けた。自己資本が時価総額の2倍あることは、稼がない資本なので価値の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.53 倍・やや楽観 PER 9.5→10.53 倍・中立 PER 9.5→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.5%。同じ領域の会社はまだ無い。赤字は続くが増資で財務の存続の疑いは薄れたので上乗せ(extra)は置かず、赤字は筋書きの利益に入れた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 9.50%。