結論
戸上電機製作所は、電柱に付ける高圧の開閉器で国内首位とされる、佐賀の電機メーカーだ。工場やビルの構内で起きた事故が近所の停電に広がるのを食い止める「SOG開閉器」が看板で、中部電力パワーグリッドなど電力会社向けの自動開閉器も手がける。2026年3月期は売上307億円、営業利益37億円と、2期続けて過去最高に並んだ。
筆者の結論は「やや割安」だ。10年後の中立でも純利益は今の1.3倍にとどまり、物価を除けばほぼ横ばいに見ている。それでも時価総額は250億円弱と小さく、現預金だけで70億円を超える。事業が壊れない限り、払う値段に安全域が残る。
強みは、需要が景気でなく設備の寿命で動くことだ。屋外の開閉器と制御装置は、10年ほどでの取り替えが業界の目安になっている。古い機器は毎年積み上がり、更新が途切れにくい。
弱みは、売り先と製品の狭さだ。売上の約1割が中部電力パワーグリッド1社で、利益の大半を配電機器が稼ぐ。電力会社が値下げを迫れば、利益率は一気に下がる。会社自身も今期は営業利益12%減を予想している。この慎重さは、確率に織り込んだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を一言で言えば「寿命で売れ続ける、地味で小さな道具屋」だ。派手な成長はないが、更新で買い替えが必ず来る商品を持つ。事業は10年後も残る。予測もしやすい。
気になるのは、株主に回る利益の質だ。設備投資は年8〜9億円で、減価償却の8.7億円と同じ水準にとどまり、成長のための再投資は小さい。稼いだ利益の大半を株主に戻せる体質だが、これまでは現金をためる傾向が強かった。ここ2年で自社株買いを始めたことは、正しい方向だと見る。
堀は中ほどだ。電力会社との取引実績は強みだが、値段を握っているのは電力会社の側だ。物価が10年で3割上がる世界では、値上げが物価に追いつくかが最大の分かれ目になる。
安全域は、現預金と有価証券が時価総額の4割ほどあることに表れる。事業が崩れても、床は厚い。ただ、経営者が現金を使って新事業に乗り出す可能性もあり、資本の使い方は注視が必要だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、配電線につなぐ高圧の開閉器だ。売上の47%を占める配電用自動開閉器は、柱の上で電気を入り切りする装置で、故障した区間だけを切り離す役目を持つ。売り先は大きく二つある。一つは電力会社で、センサを内蔵した次世代型への切り替えが進む。もう一つは工場やビルの持ち主で、構内の事故が配電線に波及するのを防ぐSOG開閉器を買う。
ほかの柱は二つある。電子制御器は、工場の制御盤に使う電磁開閉器と、電力会社の配電線を遠隔で監視する子局で、売上の22%だ。配電盤とシステム機器は、高圧の受電盤や水処理施設の電気設備で、売上の15%を占める。この三つを合わせた産業用配電機器が売上の83%、営業利益では全社費用を引く前の大半を稼ぐ。残りは自動車向けの樹脂成形と産業機械向けの金属加工で、利益は薄い。
会社は1925年に佐賀で生まれ、2025年に創業100年を迎えた。2006年に中国の蘇州に現地法人を置き、2019年に米国の電力会社向けに配電保護用のリクローザーを納め始めた。海外の売上はまだ1割に届かない。連結の従業員は約1,100人、研究開発費は年1.6億円と小さい。大手重電のような総合力はなく、狭い分野に絞って深く掘る会社だ。
優良さと弱いところ
優良さの核は、国内の配電用開閉器で首位を持つことと、電力会社が使う仕様に合わせて長年納めてきた実績だ。電力会社の機器は、品質の信頼と安定した納期が選ぶ理由になる。新規の参入者がすぐに入れる世界ではない。筆者は、これを強い堀とまでは見ていない。同じ分野に東光高岳のような競合がいて、電力会社は複数社から買えるからだ。
財務は文句なしに堅い。自己資本比率は72%、営業利益は支払利息の300倍を超える。現預金は72億円あり、借入は6億円しかない。最近は自社株買いも始め、2026年3月期は9億円を買い、配当と合わせて利益の6割近くを株主に戻した。
弱みは三つある。まず、利益の幅が大きいことだ。営業利益率は2002年に赤字、2010年にゼロ近辺まで落ちたあと、2016年に13.9%、足元で12.2%まで戻った。次に、売り先が電力会社に偏ること。最後に、退職給付の負債が26億円あり、見た目ほど現金は余っていないことだ。資本効率は自己資本利益率11%と悪くないが、厚い自己資本が足を引っ張っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の配電機器は、人口が減るため台数は伸びにくい。それでも需要が消えない理由は、機器の寿命にある。日本電機工業会は、屋外用の高圧開閉器とSOG制御装置の更新を使い始めて10年としている。高圧の受電設備は全国に数十万件あり、古い機器が毎年積み上がる。需要は景気でなく、築年数が決める。
電力会社の側でも、配電線の自動化が進む。事故区間を自動で切り離し、停電を短くするため、センサ内蔵の開閉器と遠隔の子局を入れ替えている。戸上電機の最近の増収も、この次世代型への更新が支えた。データセンターや工場の新設も、配電盤の追い風になる。
競争は、電力会社向けでは東光高岳との勝負になる。需要家向けのSOG開閉器は、同じ用途の機器を作る電機各社が並ぶ。価格を決めるのは電力会社の調達部門で、材料費の上昇を転嫁できるかが毎年の勝負だ。2008〜09年の重電受注は3〜4割落ちた。配電の更新は崩れにくいが、設備投資の先送りが起きれば数年は止まる。
海外では、米国が約300の電力会社を抱える大きな市場だ。現地の大手が強く、戸上電機は上位10社に入る電力会社2社への納入から始めた。伸びれば利益を上乗せするが、筆者は数年で会社の形を変えるほどにはならないと見ている。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから還元へ寄ってきた。2026年3月期は、利益の約25%を配当にし、9億円の自社株買いを足した。5月にも8万株強の自己株式を消却すると決めた。配当の数値目標はなく、2027年3月期の配当性向は約25%になる予想だ。
ためた現預金は72億円で、純現金は63億円ある。退職給付の負債26億円や賞与の引当金10億円を差し引くと、事業に要らない余剰は見えない。このため、余った現金としては切り分けなかった。
投資有価証券は29億円で、時価総額の1割強にあたる。九州電力などの取引先株が中心で、配当は利益に入っているので、価値として二重には足していない。筆頭株主は戸上ビル(10.3%)、取引先持株会、三井住友銀行、佐賀銀行などが続く。社長の戸上信一氏の持ち分は4.3%だ。取引先と銀行の安定株主が厚く、買収されにくい。M&Aは近年なく、米国向けは自前の営業で広げている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
更新需要は、数字が裏付ける強い追い風だ。屋外の高圧開閉器は10年が更新の目安で、国内の高圧設備は数十万件に及ぶ。2026年3月期の電子制御器は11%、開閉器は8%、配電盤とシステムは16%と、全部の製品が増収だった。電力会社の次世代型への切り替えは始まったばかりで、あと数年は続く。
価格の面でも風向きは良い。会社は材料費の上昇を受けて「適正価格への転換」を進め、これが浸透したと説明している。営業利益率は2023年3月期の7.1%から12.2%へ、3年で5ポイント上がった。値上げが定着すれば、10年かけて物価並みに上げ続けられる。
米国は未開拓の市場だ。約300の電力会社のうち、上位10社に入る2社がすでに採用した。有価証券報告書は「米国市場への参入を本格化」と書いている。育てば、国内で伸びない台数を補える。
株価の割安さも見逃せない。現預金と有価証券だけで時価総額の4割ほどあり、事業そのものはその残りで手に入る。自社株買いを始め、還元は利益の6割近くまで上がった。利益が横ばいでも、株主の取り分は増える。
慎重な見方
足元の増益は、値上げと更新の山が重なった結果で、これが続く保証はない。会社自身が、2027年3月期は営業利益12%減、営業利益率10.6%への低下を予想している。理由は中東情勢による部材調達の不安と、人件費の上昇だ。利益率が12%台に定着したと見るのは早い。
売り先の偏りは深刻だ。中部電力パワーグリッドだけで売上の約1割、電力会社向けを合わせるとさらに大きい。電力会社は調達費の削減を毎年求め、複数のメーカーを競わせる。東光高岳のような競合が値下げに応じれば、戸上電機も追随せざるを得ない。
成長の余地も限られる。国内は人口減で台数が伸びず、物価の上昇を価格に転嫁できなければ、実質では縮む。米国は現地大手がひしめき、2019年に目標としていた年300台規模の実績はいまだ見えない。研究開発費は年1.6億円と小さく、技術で差をつける力も細い。
現金の厚さも、見た目ほど自由ではない。退職給付の負債が26億円あり、自己資本の厚さが利益率を押し下げている。経営者が、使い道の乏しい現金を、新規事業や投資につぎ込む危険は消えない。
どちらに重みを置いたか
更新需要の堅さと現金の厚さでは強気の見方が勝つが、利益率の天井と売り先の偏りでは慎重な見方の指摘が正しい。そこで、中立の営業利益率を足元の12.2%より低い11.4%に置いた。
確率は、中立に4割を置き、やや楽観よりやや悲観を少し厚くした。会社自身の今期予想が減益で、電力会社の値下げ圧力が現実的だからだ。それでも、10年後の期待値は今の時価総額を2割ほど上回る。事業の水準というより、時価総額が現金と事業の稼ぎに比べて小さい点が効いている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 10,480 円486 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,448 円160 億円)。 今の値に割り戻すと 7,635 円354 億円、今との差 +48.5%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 20,241 円939 億円 | 4,335 円201 億円 | +378.1% | +16.9% | 1,720 円80 億円 |
| やや楽観 | 19% | 15,827 円734 億円 | 3,968 円184 億円 | +285.1% | +14.4% | 3,761 円174 億円 |
| 中立 | 40% | 12,190 円565 億円 | 3,710 円172 億円 | +209.3% | +12.0% | 6,360 円295 億円 |
| やや悲観 | 24% | 4,400 円204 億円 | 2,890 円134 億円 | +41.8% | +3.6% | 1,750 円81 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,236 円57 億円 | 2,135 円99 億円 | −34.4% | −4.1% | 337 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,480 円486 億円 | 3,448 円160 億円 | +171.0% | +10.5% | 13,928 円646 億円 |
今の株価時価総額 5,140 円238 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 米国と国内の更新が重なり、開閉器が一段高くなる 利益 54 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 20,241 円939 億円
米国の電力会社が、配電線の事故を自動で切り離すリクローザーの採用を広げる。2019年に採用された大手2社の実績が横に伝わり、戸上電機の米国向けは年数千台の規模になる。国内でも、10年前後で取り替える屋外開閉器と制御装置の更新が続き、電力会社の次世代型への切り替えも進む。
値上げは定着し、開閉器は台数が3割増え、1台あたりの値段も物価を上回って上がる。センサ内蔵やデジタル機能で値段の高い品に移るためだ。営業利益率は13.8%と過去最高の13.9%に迫る。
資本の使い方も変わらず堅い。配当と自社株買いを合わせて利益の5割を戻し、自己資本利益率は12%に届く。
- 配電用自動開閉器(SOG開閉器・電力会社向け):数量 6.6(開閉器の出荷台数(万台、推定))× 価格 39(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 260 億円・営業利益 57 億円。台数×単価 6.63万台 × 39.26万円(今の1.40倍)、利益率 22.0%
- 電子制御器(電磁開閉器・配電自動化用子局):数量 75.0(制御機器の出荷台数(標準品換算・万台、推定))× 価格 1.53(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 20 億円。台数×単価 75万台 × 1.53万円(今の1.36倍)、利益率 17.0%
- 配電盤・システム機器:数量 2,280(納入件数(件、推定))× 価格 326(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 10 億円。件数×単価 2280件 × 326.4万円(今の1.36倍)、利益率 13.0%
- 樹脂成形・金属加工・その他(受託部品):数量 330(受託加工の従事者数(人、推定))× 価格 2,287(1人あたり売上(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 5 億円。人数×1人売上 330人 × 2287.38万円(今の1.34倍)、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.51 倍、時価総額 938 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国での採用拡大と国内の更新需要、値上げの定着が同時に起きる必要があり、売り先が電力会社に偏る会社では連続して当たりにくい。
やや楽観 19% 更新需要が続き、米国が小さな柱に育つ 利益 44 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 15,827 円734 億円
国内の更新需要が途切れず、電力会社の配電自動化も着実に進む。開閉器の台数は1割台半ばの伸びで、データセンターや工場の電気設備更新が配電盤を押し上げる。米国は年数百台から数千台の規模にとどまるが、利益の足しにはなる。
価格は物価並みに上げられ、営業利益率は12.9%と、足元の12.2%を少し超える。電力会社向けの値段交渉は厳しいが、品質と納期で選ばれる立場は保てる。
還元は利益の5割強で、自己資本利益率は10%台後半になる。
米国向けのリクローザーは、年数百台から千台台の規模で、会社が掲げてきた年300台を超える。国内の増収が主役で、海外は上乗せの位置づけにとどまり、会社の姿は変わらない。
- 配電用自動開閉器(SOG開閉器・電力会社向け):数量 5.9(開閉器の出荷台数(万台、推定))× 価格 38(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 224 億円・営業利益 48 億円。台数×単価 5.86万台 × 38.13万円(今の1.36倍)、利益率 21.5%
- 電子制御器(電磁開閉器・配電自動化用子局):数量 67.2(制御機器の出荷台数(標準品換算・万台、推定))× 価格 1.51(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 17 億円。台数×単価 67.2万台 × 1.51万円(今の1.34倍)、利益率 16.5%
- 配電盤・システム機器:数量 2,052(納入件数(件、推定))× 価格 322(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 9 億円。件数×単価 2052件 × 321.6万円(今の1.34倍)、利益率 13.0%
- 樹脂成形・金属加工・その他(受託部品):数量 315(受託加工の従事者数(人、推定))× 価格 2,287(1人あたり売上(万円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 5 億円。人数×1人売上 315人 × 2287.38万円(今の1.34倍)、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.64 倍、時価総額 734 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要は寿命で決まるので堅く、直近の2期連続の増益と値上げの定着を踏まえると、中立より上に傾く余地は十分ある。
中立 40% 国内首位を保ち、物価並みに稼ぐ地味な10年 利益 36 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 12,190 円565 億円
国内の高圧配電は人口減で台数が伸びにくい。それでも更新目安の10年が来る機器は毎年積み上がり、開閉器と電子制御器の台数は5%ほど増える。米国は育つが、全体を動かすほど大きくはならない。配電盤と受託加工の台数は横ばいだ。
価格は物価並みに上がるが、人件費と部材も同じ速さで上がる。営業利益率は11.4%と、足元より0.8ポイント低い。会社の今期予想(10.6%)を踏まえ、2期続けた過去最高の水準が続くとは置かなかった。
売上は今の1.4倍の426億円、純利益は36億円になる。物価を除けばほぼ横ばいだ。還元は利益の5割強で、自己資本利益率は9%台にとどまる。
- 配電用自動開閉器(SOG開閉器・電力会社向け):数量 5.4(開閉器の出荷台数(万台、推定))× 価格 38(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 201 億円・営業利益 40 億円。台数×単価 5.35万台 × 37.57万円(今の1.34倍)、利益率 20.0%
- 電子制御器(電磁開閉器・配電自動化用子局):数量 63.0(制御機器の出荷台数(標準品換算・万台、推定))× 価格 1.51(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 15 億円。台数×単価 63万台 × 1.51万円(今の1.34倍)、利益率 16.0%
- 配電盤・システム機器:数量 1,900(納入件数(件、推定))× 価格 322(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 7 億円。件数×単価 1900件 × 321.6万円(今の1.34倍)、利益率 12.0%
- 樹脂成形・金属加工・その他(受託部品):数量 300(受託加工の従事者数(人、推定))× 価格 2,287(1人あたり売上(万円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。人数×1人売上 300人 × 2287.38万円(今の1.34倍)、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.7 倍、時価総額 565 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要が景気に左右されにくく、国内首位の位置も安定しているため、中立に最も厚く置いた。
やや悲観 24% 電力会社の値下げ圧力と台数減で、利益率が1割を割る 利益 22 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 4,400 円204 億円
電力会社が調達費の抑制を強め、開閉器の値上げが物価に追いつかなくなる。東光高岳などとの入札で値引きに応じる場面が増え、価格は10年で1.28倍にとどまる。台数も人口減と更新の先送りで5%ほど減る。
配電盤は工事案件が細り、受託加工も自動車向けの受注が鈍る。営業利益率は8.2%に下がる。事業が壊れるわけではなく、配当は保つが、成長は止まる。
自己資本は厚いままだが、稼ぐ力が資本コストに届かない。自己資本利益率は6%台になる。
米国は納入が数件にとどまり、赤字を出さずに足踏みする。会社は海外展開の旗を降ろさないが、国内の減速を埋めるには足りない。還元は利益の5割強を保つが、利益そのものが細るため、金額は減る。
- 配電用自動開閉器(SOG開閉器・電力会社向け):数量 4.8(開閉器の出荷台数(万台、推定))× 価格 36(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 174 億円・営業利益 30 億円。台数×単価 4.84万台 × 35.89万円(今の1.28倍)、利益率 17.0%
- 電子制御器(電磁開閉器・配電自動化用子局):数量 57.0(制御機器の出荷台数(標準品換算・万台、推定))× 価格 1.47(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 11 億円。台数×単価 57万台 × 1.47万円(今の1.30倍)、利益率 13.0%
- 配電盤・システム機器:数量 1,710(納入件数(件、推定))× 価格 312(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 5 億円。件数×単価 1710件 × 312万円(今の1.30倍)、利益率 9.0%
- 樹脂成形・金属加工・その他(受託部品):数量 285(受託加工の従事者数(人、推定))× 価格 2,219(1人あたり売上(万円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 3 億円。人数×1人売上 285人 × 2219.1万円(今の1.30倍)、利益率 4.5%
倍率:ROE 6.3% は k 7.25% に届かず、ためた利益は額面未満の価値。PER の上限 1÷k(12.5 倍)の 72% を置いた。市場の倍率は根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9 倍・時価総額 198 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:会社自身が今期を12%の営業減益と予想し、売上の1割が中部電力パワーグリッド1社、同業に東光高岳があり、値下げ圧力が現実的なため厚めに置いた。
悲観 10% 主力の開閉器で値崩れとシェア流出が起き、利益がほぼ消える 利益 6 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,236 円57 億円
電力会社が仕様を統一し、安い海外製や他社品に切り替える。主力の開閉器の台数は3割減り、値段も物価の上がりにまったく追いつかない。中部電力パワーグリッドのような大口の取引が減り、固定費だけが残る。
配電盤と制御機器も道連れになり、営業利益率は3%台まで落ちる。構造的に優良さを失い、値付けは稼ぐ力と手元の資産の大きい方で決まる。
それでも、現預金と有価証券で純資産の5分の1ほどは残り、倒れることはない。
米国向けは立ち上がらず、新規事業にも成果が出ない。経営は還元を絞って現金を守る道を選び、配当と自社株買いの合計は利益の6割を保っても、金額は小さくなる。
- 配電用自動開閉器(SOG開閉器・電力会社向け):数量 3.6(開閉器の出荷台数(万台、推定))× 価格 32(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 15 億円。台数×単価 3.57万台 × 32.25万円(今の1.15倍)、利益率 13.0%
- 電子制御器(電磁開閉器・配電自動化用子局):数量 48.0(制御機器の出荷台数(標準品換算・万台、推定))× 価格 1.35(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 6 億円。台数×単価 48万台 × 1.35万円(今の1.20倍)、利益率 9.0%
- 配電盤・システム機器:数量 1,520(納入件数(件、推定))× 価格 288(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。件数×単価 1520件 × 288万円(今の1.20倍)、利益率 5.0%
- 樹脂成形・金属加工・その他(受託部品):数量 255(受託加工の従事者数(人、推定))× 価格 2,134(1人あたり売上(万円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。人数×1人売上 255人 × 2133.75万円(今の1.25倍)、利益率 2.0%
倍率:ROE 2% で k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)の 72% が約 58 億円で、現預金と有価証券から退職給付負債などを引いた床 50 億円をわずかに上回る。床は今の資産の内訳から置いた。
確率:主力製品が電力会社の仕様と調達に左右され、単一の製品群に利益が偏る。構造的な負けは起こりにくいが、起これば深いので1割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
配電用自動開閉器(SOG開閉器・電力会社向け)
SOG開閉器と電力会社向けの柱上用自動開閉器。高圧の配電線を入り切りし、事故の波及を止める主力製品。
| 数量開閉器の出荷台数(万台、推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.1 | 28 | 143 | 30 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 38 | 201 | 40 |
取り方:配電用自動開閉器の売上143億円を、SOG開閉器と電力向け自動開閉器の平均単価約28万円で割り、年約5.1万台と推定した(出荷台数は非開示)。高圧受電設備は全国に数十万件あり、屋外の開閉器と制御装置は更新目安が約10年。数量は実質の台数、物価の分は1台あたりの値段に入れた。利益は産業用配電機器の部門利益47.7億円(利益率18.6%)を、開閉器30.0・電子制御器11.5・配電盤6.2億円に推定で割り振った。
電子制御器(電磁開閉器・配電自動化用子局)
工場の制御盤に使う電磁開閉器と、電力会社の配電線を遠隔で監視・制御する子局。
| 数量制御機器の出荷台数(標準品換算・万台、推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1.13 | 68 | 12 |
| 10 年後 中立 | 63.0 | 1.51 | 95 | 15 |
取り方:電子制御器の売上68億円を、電磁開閉器(1万円前後)と配電自動化用子局(数十万円)を混ぜた標準品換算の平均単価約1.1万円で割り、年約60万台とした(非開示のため推定)。物価は1台あたり売上に入れる。
配電盤・システム機器
高圧受電盤などの配電盤と、水処理施設向けなどの電気設備・システム。
| 数量納入件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,900 | 240 | 46 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 322 | 61 | 7 |
取り方:配電盤とシステム機器の売上46億円を、1件約240万円・年約1,900件とした(受注件数は非開示のため推定)。数量は案件数、物価と大型化の分は1件あたり売上に入れる。
樹脂成形・金属加工・その他(受託部品)
自動車向けの樹脂成形部品、産業機械向けの金属加工部品、付随する金型・ソフト開発。
| 数量受託加工の従事者数(人、推定) | 価格1人あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1,707 | 51 | 3 |
| 10 年後 中立 | 300 | 2,287 | 69 | 4 |
取り方:樹脂成形38億円・金属加工12億円・その他1億円を合わせた51億円を、従事者約300人(連結従業員約1,080人のうち推定)で割った。人数は実質の数量、物価は1人あたり売上に入れる。
リスクと懸念
電力会社の値下げ圧力
売上の約1割が中部電力パワーグリッド1社で、電力会社向け全体はさらに大きい。調達部門が材料費の上昇を認めず、複数メーカーで競わせれば、値上げが物価に追いつかず、利益率が下がる。有価証券報告書も価格競争を主要なリスクに挙げている。
配電機器への利益の集中
産業用配電機器が売上の83%を占め、全社費用を引く前の利益はほぼすべてを稼ぐ。受託加工は利益率が数%と薄く、助けにならない。電力会社の設備投資が一服する年には、利益が一気に減る。2002年と2010年に赤字や利益ゼロ近辺まで落ちた前例がある。
中東情勢と部材の調達
会社は2027年3月期の営業利益を12%減と予想し、理由に中東情勢による部材調達の不安を挙げた。材料費が急に上がれば、値上げの交渉は後手に回り、数期は利益が削られる。
製品の改修費用
2025年3月期に3.1億円、2026年3月期に2.0億円の製品改修費用を特別損失に計上した。品質の問題が大きくなれば、電力会社との信頼が傷つく。電力会社が仕様と品質を厳しく見る商売では、数億円の損失より取引の縮小のほうが重い。
米国展開の遅れ
2019年の参入時に掲げた年300台の目標は、実績が見えない。現地の大手が強く、電力会社の採用は時間がかかる。会社が海外展開を急ぐ中で、赤字の投資や買収に踏み出せば、現金の使い道として裏目に出る。
自然災害と事業の集中
主要拠点の佐賀は風水害が多い地域だ。会社も有価証券報告書で災害リスクを挙げている。主力工場が止まれば、電力会社への納入が遅れ、復旧の費用も重なる。
今後の分かれ目
- 電力会社が配電機器の仕様を統一し、競合や海外メーカーとの価格競争が強まったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。開閉器の価格が物価に届かない状態が3年続くかを見る。
- 営業利益率が会社予想の10.6%を超えて12%台を保ち続けたら
- 値上げの定着が確認できたとして、やや楽観に確率を寄せる。
- 米国向けのリクローザーが年数百台の規模に乗り、新たな電力会社が採用したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。国内の台数減を補えるかを見る。
- 会社が余った現金を、配当や自社株買いでなく、大型の買収や新工場に使ったら
- 資本の使い方を厳しく見直し、還元が減る筋書きに確率を寄せる。
- 自社株買いが毎年続き、総還元性向が5割を超えて安定したら
- 中立の還元の前提を上方に直し、戻り方の評価を高める。
- 製品の品質問題や大きな改修費用が再び出たら
- 電力会社との信頼低下として、悲観側の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 電力会社向けの配電用自動開閉器と子局の売上(決算短信の製品別)
- 営業利益率が会社予想の10.6%を上回るか(中間・通期の決算)
- 米国向けリクローザーの採用先と納入台数
- 自社株買いと配当を合わせた総還元性向
- 製品改修費用など特別損失の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k は基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。中立は ROE 9.4%・g 4% から正当化 PER 約 13.5 倍を出し、その 93% を置いた。ROE が k を超えるため下限の 1÷k(12.5 倍)の上に出ている。同じ領域では愛知電機(10.4 倍)と東光高岳(13.5 倍)の間に入る。利益率は足元より低い 11.4% にし、今の好調を延ばさなかった。今の株価は PER 9 倍台だが、倍率の根拠には使っていない。悲観は稼ぐ力と今の資産の床の大きい方で置いた。なお新リース会計の影響は小さく、10 年後の数字も今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.6→17.51 倍・やや楽観 PER 13.6→16.64 倍・中立 PER 12.6→15.7 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(循環 +0.25・値決め力 +0.25)を足して k 7.25%。純現金で借金の上乗せはなく、extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。