結論
中央製作所は、めっきやアルマイトに使う整流器と表面処理装置、溶接の制御装置を作る名古屋の老舗メーカーだ。1936年創業で、顧客は自動車、電池、電子部品、半導体の工場だ。筆者の結論は、資産に比べて時価総額は安いが、稼ぐ力が薄く、見た目ほど割安ではない、というものだ。
2026年3月期の売上は40億円で、前期から2割近く減った。前期に大型の物件が重なった反動で、表面処理装置が4割減った。営業利益は1.3億円、営業利益率は3%だった。
明るい材料は受注だ。受注高は45億円と1割近く伸び、受注残は31億円へ2割近く増えた。特に表面処理装置の残高が3割伸びており、売上の戻りを先取りしている。
弱点は、利益が景気と大型物件に振れやすいことだ。過去10年の営業利益率は赤字から5%台まで動き、安定して稼ぐ水準には届いていない。経営者自身も、次の受注環境は厳しくなると見ている。
10年の見立てでは、売上は名目で50億円台に乗せるが、営業利益率は3%台にとどまる。ROEは4%前後で資本コストに届かない。筆者は、帳簿の純資産ではなく、この稼ぐ力で値打ちを測る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買いたい種類の事業ではない。堀は弱く、利益は年ごとに大きく振れ、10年後に今より強いとは言いにくい。オーナー利益(株主が自由にできる利益)は、設備と運転資金に食われ、営業キャッシュフローは赤字の年もある。
時価総額は純資産の4割強にすぎず、安全域のように見える。ただ、純資産の中身は工場、在庫、持ち合い株で、稼ぐ力に結びついていない。ROEが資本コストに届かない会社では、ためた利益は帳簿の額面を下回る値打ちしかない。
経営は堅実だが、資本の使い方が守りに偏る。配当性向は15%ほどで、持ち合い株を多く持つ。株主から見ると、稼ぎを内部に積み上げて低い収益で回している形だ。
筆者は、この会社を稼ぐ力で測る。資産の売値は悲観の床にだけ使う。今の値段が安く見えるのは、資産が厚い一方で、それが利益に変わっていない現実を市場が見ているからだ。
何で稼ぐ会社か
事業は電源機器、表面処理装置、電気溶接機、その他の四つだ。2026年3月期の売上は、電源機器が15億円、表面処理装置が15億円、電気溶接機が6億円、その他が4億円だ。
電源機器は、インバータや小型・汎用の電源を作る。電池、電子部品、自動車の工場が顧客で、台数を数えて売る比較的安定した事業だ。1936年の創業は整流器づくりで、この分野が会社の原点になる。
表面処理装置は、めっきとアルマイトの装置を設計して納める。予防保全システム「CCCS-M」のような保守の仕組みも付ける。1件の金額が大きい受注生産で、自動車と半導体関連の設備投資に売上が左右される。
電気溶接機は、溶接制御装置「CK5」とコンデンサ式溶接機が中心だ。自動車の車体部品の溶接に使われる。電気自動車への移行で、部品の作り方が変わることが長い目での焦点になる。
その他に、電解加工機、試験機、計測器がある。研究開発費は年0.6億円、特許は17件と、技術にかける資金は小さい。2025年9月に南工場が完成し、設備投資は5億円に達した。減価償却が増えるため、今後の利益率の重しになる。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社に強い堀はないと見る。整流器と溶接制御で長年の実績があり、自動車や電池の工場とは長い付き合いだが、取引先を縛る仕組みは弱い。受注競争で価格を下げざるを得ない、と有価証券報告書も認めている。
良い点は三つある。一つは、1936年から続く整流器の技術と、名古屋の製造業との距離の近さだ。二つ目は、受注残が31億円と、年売上の8割近くあることだ。三つ目は、保守の仕組みを付けた予防保全システムで、納めた後の関係を作れることだ。
悪い点は、利益の安定感の乏しさだ。過去10年の営業利益率は、赤字から5%台まで動いた。2023年3月期は営業損失が3億円近くに膨らんだ。粗利率は27%にとどまり、売値を自分で決める力は限られる。
資本の使い方にも課題がある。配当性向は15%ほどで、自社株買いはない。上場103銘柄で3.4億円、非上場250銘柄を持ち合う体質は、稼ぎの割に資本が重くなる原因だ。
営業のキャッシュフローは、2026年3月期に3億円の支出になった。大型物件の前払いと在庫が先行する構造で、成長するほど運転資金が膨らむ。筆者は、この点を倍率の低さの理由にする。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
めっきとアルマイトの装置は、自動車の部品、電池、半導体、電子部品の工場で使われる。電気自動車の電池やパワー半導体の工場が増えれば、新しい需要が生まれる。ただ、工場の新設は少数の大型案件に偏り、売上は年によって大きく動く。
競合は、日本では上村工業のような薬品と装置を一体で売る会社や、中堅の装置メーカー、海外では欧州や中国の専業だ。ダイヘンや山洋電気は、電源の分野で近い位置にある。中央製作所は、薬品を持たない装置と電源の専業で、大手の規模には及ばない。
溶接の分野では、自動車の車体は電気自動車で部品点数が減り、スポット溶接の台数が減る可能性がある。一方で、電池や電子部品の溶接は新しい需要になる。数量は微減とみて、10年で0.85倍に置く。
この領域に属する同業の物差しとして、電気機器の「FA・ロボット・計測制御機器」を参考にした。ダイヘンは同じ電源・溶接の分野で、PER 12倍台、確率は楽観10%・中立32%・悲観12%程度だ。中央製作所は ROE が低いため、倍率を低めに置く。
価格は物価並みの1.34倍を基本とした。人件費と材料は同じ速さで上がるので、利益率は自然には上がらない。南工場の償却は取得価格のままで、物価では増えない。ただ、将来の更新投資は建築費の上昇で膨らむ。
資本政策と M&A
配当は年1回の期末配当を基本とし、2026年3月期は総額0.3億円だった。配当性向は15%ほどで、自社株買いは行っていない。株主優待は実施していない。
政策保有株は、上場103銘柄で3.4億円、非上場250銘柄だ。大同メタル工業、マキタ、日本電計などを持つ。2026年3月期は投資有価証券の売却益を0.5億円計上しており、売却は進めている。
借入は11億円、現金は9.5億円で、純借入は2億円弱だ。南工場の建設で借入を3億円増やした。M&Aの実績はほとんどない。中期経営方針は2027年3月期が最終年度で、数値目標は示されておらず、資本効率の目標も見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残が31億円に達し、表面処理装置の残高が3割増えている。売上は来期以降、大型物件の完成とともに戻る。電池と半導体の新しい工場が増え、めっき装置の需要は10年を通じて強い。
電源機器は、電池・電子部品・自動車向けに台数が伸びる。インバータや小型電源は、省エネと自動化の流れで需要が底堅い。溶接制御は、電池の溶接という新しい用途で数量の減りを補える。
過去には営業利益率が5%台に乗った年がある。南工場の完成で生産能力が上がり、受注の山でも納期を守れる。粗利率が27%から30%台に上がれば、固定費の重さを薄められる。
さらに、時価総額は純資産の半分に満たない。持ち合い株の売却を進め、資本効率を上げる方針が示されれば、評価は大きく変わる。中期経営方針の次の期で、数値目標が出る可能性もある。
加えて、名古屋は自動車と電池の集積地で、顧客との距離の近さは新しい案件の情報が早く届く利点になる。保守の仕組みを付けた予防保全システムは、納めたあとの定期収入を生む。装置の台数が増えるほど、この保守の収益が積み上がる。
慎重な見方
売上は10年前の54億円から縮み、過去10年の年率で1.6%減っている。2026年3月期の売上は大型物件の反動で2割近く減り、営業利益は4割以上減った。次の受注環境は厳しくなると、経営者自身が見ている。
自動車の電動化で溶接の数量が減り、めっき装置の需要も中国や欧州の専業に取られる。受注競争で価格が下がり、粗利率は27%にとどまる。2023年3月期のように、営業損失が3億円近くに膨らむ年が再び来る恐れがある。
営業のキャッシュフローは2026年3月期に3億円の支出で、借入が3億円増えた。南工場の償却が増えるうえ、将来の更新投資は建築費の上昇で膨らむ。利払いも借り換えで上がる。
最後に、資本の使い方が見えない。持ち合い株を多く抱え、配当性向は15%ほどで、資本効率の目標もない。純資産が厚くても、少数株主に戻る保証はない。
受注残が厚いことは需要の強さを示すが、大型物件は原価の見積もりを誤ると利益が一気に飛ぶ。品質不適合を撲滅すると中期方針に掲げるのは、現場にその問題があるからだろう。不良の手戻りが出れば、粗利は27%からさらに下がる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が優勢だ。受注残の厚みは本物だが、利益の安定感の乏しさと資本の使い方が、倍率を押し下げる。強気の見方は大型物件の戻りと電池の需要に頼るが、過去10年の実績がそれを支えない。
そこで確率は、小さな黒字にとどまる中立を最も厚く置いた。やや悲観と悲観を合わせて3割とした。近い領域のダイヘンなどとおおむね揃えたが、ROEの低さで倍率は低めにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,158 円17 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 317 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 1,190 円9 億円、今との差 −18.2%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,789 円37 億円 | 647 円5 億円 | +273.6% | +14.1% | 544 円4 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,226 円25 億円 | 453 円4 億円 | +152.9% | +9.7% | 809 円6 億円 |
| 中立 | 38% | 2,176 円17 億円 | 337 円3 億円 | +72.7% | +5.6% | 955 円7 億円 |
| やや悲観 | 20% | 582 円5 億円 | 104 円1 億円 | −52.9% | −7.2% | 137 円1 億円 |
| 悲観 | 10% | 259 円2 億円 | 39 円0 億円 | −79.5% | −14.7% | 30 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,158 円17 億円 | 317 円2 億円 | +70.1% | +5.5% | 2,475 円19 億円 |
今の株価時価総額 1,455 円11 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 電池・半導体の需要を取り込み利益率が上がる 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,789 円37 億円
電池と半導体向けのめっき装置、電池の溶接制御が伸び、売上は60億円台に乗る。受注残の厚みが生産を平準化し、大型物件が重なっても納期を守れる。粗利率は30%台まで上がり、営業利益率は6%近くに届く。
電源機器は、電池・電子部品・自動車向けに台数が1割以上増える。表面処理装置は、大型の新工場案件を複数取り、数量が3割以上増える。価格は物価を少し上回る。
持ち合い株の売却を進め、配当性向を上げる方針が示される。利益の4分の1を株主に返し、資本効率の目標も数字で示される。過去の最高水準を超えるため、複数の条件が揃う必要があり、確率は1割にとどまる。
- 電源機器:数量 3,450(年間販売台数(台、推定))× 価格 69(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。3450×1単位69.4万円、営業利益率 6.5%
- 表面処理装置:数量 29.7(年間の納入件数(件、推定))× 価格 9,672(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。29.7×1単位9672.4万円、営業利益率 5.5%
- 電気溶接機:数量 600(年間販売台数(台、推定))× 価格 132(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。600×1単位132.1万円、営業利益率 5.0%
- その他:数量 440(年間の納入件数(件、推定))× 価格 136(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。440×1単位135.7万円、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電池・半導体の工場需要が10年続き、利益率が過去の山を超える必要がある。過去10年の実績が乏しく、1割とした。
やや楽観 22% 受注の山が戻り小さな黒字が定着 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,226 円25 億円
受注残が売上に変わり、表面処理装置は数量が2割増える。電源機器も小幅に伸び、溶接は電動化の影響で1割弱減る。価格は物価並みで、売上は57億円ほどになる。
営業利益率は4%台まで上がる。固定費の重さを売上の戻りが薄め、南工場の償却を吸収する。利益は過去の山の水準に近づくが、超えない。
配当性向は2割台に上がり、持ち合い株の売却益が時々出る。小さな黒字が安定して出る会社に戻るが、資本コストを上回る稼ぎにはならない。
電源機器は電池・電子部品の需要で小幅に伸びる一方、溶接制御は自動車の電動化で数量が1割弱減る。受注は山と谷を繰り返すが、谷でも赤字には沈まない水準で踏みとどまる。
- 電源機器:数量 3,150(年間販売台数(台、推定))× 価格 68(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。3150×1単位68.4万円、営業利益率 5.0%
- 表面処理装置:数量 26.4(年間の納入件数(件、推定))× 価格 9,532(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。26.4×1単位9532.2万円、営業利益率 4.5%
- 電気溶接機:数量 552(年間販売台数(台、推定))× 価格 130(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。552×1単位130.2万円、営業利益率 3.5%
- その他:数量 400(年間の納入件数(件、推定))× 価格 134(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。400×1単位133.7万円、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が売上に変わり、利益率が過去の山に近づく筋書き。受注残の厚みを踏まえ、2割強とした。
中立 38% 売上は物価並みに戻るが利益率は3%台 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,176 円17 億円
売上は物価並みの1.34倍に数量の増減を掛けて、50億円台になる。電源機器と電気溶接機は数量が減り、表面処理装置は大型物件の戻りで小幅に増える。
営業利益率は3%台で、営業利益は1.7億円ほどだ。粗利率は27%前後で動かず、人件費と材料の上昇を売値に移すだけで精いっぱいだ。南工場の償却は取得価格のままで、物価では増えない。ただ、将来の更新投資は建築費の上昇で膨らみ、借入の利払いが増える。
純利益は1.3億円ほどで、ROEは4%前後にとどまる。配当は利益の2割ほどで、持ち合い株の売却益が時々出る。過去10年の延長線上にある、変わらない会社の姿だ。
- 電源機器:数量 2,760(年間販売台数(台、推定))× 価格 67(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。2760×1単位67.4万円、営業利益率 4.0%
- 表面処理装置:数量 23.1(年間の納入件数(件、推定))× 価格 9,392(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。23.1×1単位9392.1万円、営業利益率 3.0%
- 電気溶接機:数量 510(年間販売台数(台、推定))× 価格 128(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。510×1単位128.2万円、営業利益率 2.5%
- その他:数量 380(年間の納入件数(件、推定))× 価格 132(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。380×1単位131.7万円、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 15 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の延長線上の落としどころ。強気・慎重の中間として最も厚く置いた。
やや悲観 20% 価格競争で利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 582 円5 億円
自動車の電動化で溶接の数量が3割減り、表面処理装置と電源機器も中国や欧州の専業に押される。価格は物価に届かず1.3倍にとどまり、売上は44億円ほどに縮む。
営業利益率は1%前後で、利益はほぼ消える。受注競争で粗利率が下がり、南工場の償却が重くのしかかる。借入の利払いも利益を削る。
配当は小さく続くが、純資産の厚さは利益に結びつかない。事業の価値は小さく、売れる資産の値打ちを見ざるを得ない。
経営は品質不適合の撲滅と稼ぐ力の向上を掲げるが、価格競争の圧力が強く、成果は小さい。持ち合い株の売却益で一時的に純利益が膨らむ年があっても、本業の利益は戻らない。
- 電源機器:数量 2,550(年間販売台数(台、推定))× 価格 65(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。2550×1単位65.4万円、営業利益率 1.5%
- 表面処理装置:数量 19.8(年間の納入件数(件、推定))× 価格 9,112(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。19.8×1単位9111.7万円、営業利益率 1.0%
- 電気溶接機:数量 420(年間販売台数(台、推定))× 価格 124(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。420×1単位124.4万円、営業利益率 -2.0%
- その他:数量 340(年間の納入件数(件、推定))× 価格 128(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。340×1単位127.8万円、営業利益率 1.0%
倍率:利益がほぼ出ないため PER は使えず、売れる資産の税後を今の自己資本(25.5億円)に対する比(約2割)で表した。
確率:電動化と価格競争で利益がほぼ消える筋書き。過去10年に営業赤字が5期あり、2割とした。
悲観 10% 自動車の電動化と中国勢で赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 259 円2 億円
自動車の電動化と中国勢の台頭で、溶接と電源の数量が大きく減る。表面処理装置は大型案件を取れず、数量は7割に縮む。価格は競争で物価に届かず、1.2倍にとどまる。
営業利益は赤字が続く。2023年3月期に見たような営業損失が、再び数年続く。営業のキャッシュフローは赤字で、借入に頼る。
配当はほとんど出せず、持ち合い株の売却で資金を作る。この筋書きでは、事業の価値は小さく、残る株主価値は売れる資産から負債を引いた残りが中心になる。清算されない限り、その使い方は少数株主には決められない。
名古屋の主力工場を稼働させ続けるには人手と更新投資が要り、固定費が重く残る。売上が3割以上落ちれば、損益分岐点を割り込む幅は大きい。
- 電源機器:数量 2,100(年間販売台数(台、推定))× 価格 60(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。2100×1単位60.4万円、営業利益率 -2.0%
- 表面処理装置:数量 15.4(年間の納入件数(件、推定))× 価格 8,411(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。15.4×1単位8410.8万円、営業利益率 -4.0%
- 電気溶接機:数量 300(年間販売台数(台、推定))× 価格 115(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。300×1単位114.8万円、営業利益率 -8.0%
- その他:数量 280(年間の納入件数(件、推定))× 価格 118(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。280×1単位118.0万円、営業利益率 -2.0%
倍率:赤字で PER は使えない。売れる資産から負債を引いた残りを、今の自己資本に対する比(約1割)で表した。
確率:自動車の電動化と中国勢で構造的に負ける筋書き。過去最悪の営業利益率は赤字の1割超で、1割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電源機器
インバータ・小型・汎用の電源。電池・電子部品・自動車の工場向け。
| 数量年間販売台数(台、推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 50 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,760 | 67 | 19 | 1 |
取り方:売上は開示(電源15.09億・表面処理15.42億・溶接5.74億・その他3.93億)。台数・件数は開示がなく、売上を平均単価で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業利益1.3億円を推定で配分。
表面処理装置
めっき・アルマイトの装置と予防保全システム。自動車・半導体関連の大型の受注生産。
| 数量年間の納入件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 7,009 | 15 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.1 | 9,392 | 22 | 1 |
取り方:売上は開示(電源15.09億・表面処理15.42億・溶接5.74億・その他3.93億)。台数・件数は開示がなく、売上を平均単価で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業利益1.3億円を推定で配分。
電気溶接機
溶接制御装置・コンデンサ式溶接機。自動車の車体部品の溶接向け。
| 数量年間販売台数(台、推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 96 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 510 | 128 | 7 | 0 |
取り方:売上は開示(電源15.09億・表面処理15.42億・溶接5.74億・その他3.93億)。台数・件数は開示がなく、売上を平均単価で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業利益1.3億円を推定で配分。
その他
電解加工機・試験機・計測器。
| 数量年間の納入件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 98 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 380 | 132 | 5 | 0 |
取り方:売上は開示(電源15.09億・表面処理15.42億・溶接5.74億・その他3.93億)。台数・件数は開示がなく、売上を平均単価で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業利益1.3億円を推定で配分。
リスクと懸念
大型物件に振れる利益
表面処理装置は1件の金額が大きく、前期の大型物件の反動で2026年3月期は売上が2割近く減った。受注が谷に入ると利益は簡単に赤字へ沈む。
自動車の電動化で溶接の数量が減る
電気自動車では車体部品の点数が減り、スポット溶接の台数が減りうる。電池の溶接など新しい用途で埋められるかが焦点になる。
受注競争による価格の下落
有価証券報告書が認めるとおり、受注競争で価格を下げざるを得ない。粗利率は27%で、売値を自分で決める力は弱い。
営業キャッシュフローの赤字と借入の増加
2026年3月期は営業キャッシュフローが3億円の支出で、借入が3億円増えた。大型物件は前払いと在庫が先行し、成長するほど運転資金が膨らむ。
南工場の償却と更新投資
南工場の完成で償却が増える。償却は取得価格のままだが、将来の更新投資は建築費の上昇で膨らみ、借入の利払いも増える。
持ち合い株と資本効率
上場103銘柄・非上場250銘柄を持つ。資本が稼ぎに結びつかず、資本効率の目標も示されないため、株主への戻りが小さくなる恐れがある。
名古屋の本社・主力工場の災害
本社と主力工場は名古屋市にあり、大規模地震などで生産が止まる恐れがある。
今後の分かれ目
- 受注残が35億円を超え、表面処理の大型物件の売上が立ったら
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げる。固定費が薄まり、営業利益率が4%台に近づく。
- 営業利益率が2期連続で2%を割ったら
- やや悲観・悲観に重みを移す。価格競争の影響が定着したかを見る。
- 持ち合い株の売却と配当性向の引き上げが数字で示されたら
- 資本の戻り方の評価を引き上げる。純資産の厚さが株主の取り分に変わる。
- 電池・半導体向けの新しい工場案件を複数取ったら
- 数量の置き方を上方に直す。表面処理装置の需要が構造的に伸びるか確かめる。
- 営業キャッシュフローの赤字が続いたら
- 借入への依存が強まり、財務の余裕が薄れる。悲観側の確率を見直す。
見ておくもの
- 四半期の受注高と受注残
- 粗利率と営業利益率
- 営業キャッシュフローと借入の残高
- 自動車向け溶接機の受注
- 持ち合い株の売却と配当方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(ROE が k 以下なので上限 1÷k)から置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。時価総額が純資産の4割強という事実は結果であり、筋書きの出発点にしていない。近い領域のダイヘンなどと確率・k を揃え、ROE の低さで倍率を下げた。新リース会計基準の影響は小さく、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 8.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。