結論
リオンは、音と微粒子を測る機械の会社だ。補聴器、半導体工場で使う粒子計測器、騒音計・地震計の3本柱で、売上は285億円、営業利益は44億円。5期続けて最高を更新している。
筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当という見方だ。10年後の本質価値は今の時価総額を数%下回る程度で、割高とも割安とも言い切れない。
利益の主役は粒子計測器だ。売上は3分の1だが、利益の7割近くを稼ぐ。AI向けの半導体工場が増えるほど、薬液や純水の中の粒子を測る需要は膨らむ。
一方、最大の売上を持つ補聴器は伸び悩む。国内で2割のシェアを持つが、外資の大手が台頭し、4年で売上がほぼ横ばいだ。難聴対策への社会の関心は追い風なので、ここは筆者が最も読みにくい部分である。
財務は固い。自己資本比率は83%で、純現金は84億円ある。ただ、貯め込む傾向が強く、株主への戻し方は控えめだ。この点を割り引いた。
粒子計測が計画どおり伸び、補聴器が持ち直せば、今の値段を上回る道もある。逆に半導体投資が失速し、中国勢が粒子計測に入り込めば、下振れは深い。この両方を確率に織り込んだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、リオンは「良い会社だが、飛び抜けて安くはない」という評価になる。
まず事業の質を見る。粒子計測器は認定という切り替えの壁に守られ、営業利益率は2割を超える。10年後も半導体と製薬が粒子を測り続けるのは確実で、事業は残る。ただし堀は、強いというより中程度だ。独占ではなく、世界大手と中国勢の間で戦うニッチである。
次に資本の使い方を見る。ここは物足りない。純現金が84億円あり、時価総額の2割を占めるのに、株主への戻しは配当が中心だ。余った現金は2%でしか回らず、ROEを下げる。経営がこの現金を成長投資か自社株買いで生かせるかが、安全域の分かれ目になる。
そして安全域である。10年後の価値を確率で加重すると、今の時価総額を少し下回る。割安というほどの余裕はない。
筆者が最も気にしているのは、利益の7割を握る粒子計測に、半導体の設備投資が直結する点だ。需要の山が過ぎた時に、増設した工場が重荷になる。予測のしやすい補聴器の利益が薄いことも、この偏りを補えていない。わからない部分が大きいので、確信度は低めに置いた。
何で稼ぐ会社か
リオンの事業は3つに分かれる。いずれも「音」と「粒子」を測り、聞こえを助ける技術から出発した会社だ。
医療機器事業は売上の45%を占める大黒柱である。主力は補聴器の「リオネット」。国内で約2割のシェアを持つ。個人が自費で買うため、販売は全国の専門店が支える。耳鼻科向けの聴力検査機器(オージオメータ)も持つ。検査で難聴を見つけ、補聴器へつなぐ流れが狙いだ。営業利益率は9.7%と、3本柱の中で最も低い。
微粒子計測器事業は売上の34%だが、営業利益の約7割を稼ぐ。空気中や液体中の細かな粒子を数える装置だ。半導体工場では、洗浄に使う薬液や超純水に混じる粒子を測る。製薬では注射剤の異物検査に使う。台湾・韓国・米国の半導体メーカーが主な顧客で、営業利益率は24.6%と高い。
環境機器事業は売上の21%。騒音計、振動計、地震計を、自治体、建設現場、鉄道、工場などへ売る。更新需要が中心だ。2026年3月期は価格を見直して営業利益率が2.8%から12.2%に跳ねた。
この3つは顧客がまるで違う。個人、半導体工場、官公庁と分散しており、一つが不調でも他が支える設計になっている。ただし利益の過半が半導体の設備投資に左右される点は、はっきり頭に入れておく必要がある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、事業ごとに濃さが違う。
粒子計測器の強みは「認定」だ。半導体メーカーや製薬会社は、一度採用した計測器を工程の標準に組み込む。切り替えにはデータの取り直しと再認定が要るので、簡単には替えない。液中の粒子では1984年に国産初の装置を出した実績があり、アジアで評価が高い。ただ世界にはパーティクル・メジャリング・システムズなど大手がいる。独占ではなく、強いニッチ企業というのが筆者の見立てだ。
補聴器の強みはブランドと販売網だ。リオネットは国内で長い歴史がある。だが、世界の補聴器は上位5社で9割を握る。ソノバ、デマント、GN、WSオーディオロジー、スターキーである。規模で劣るリオンは、国内でシェアを守る戦いを続けている。
資本効率は平凡だ。ROEは9.6%で、資本コストをわずかに上回る程度。自己資本が厚く、現金を多く持つことが利回りを押し下げている。
経営は堅実で、賃上げと新製品への投資を続けている。筆頭株主は創業の母体である財団法人(25%)で、友好的な長期株主だ。これは経営の安定には働くが、買収の圧力が働きにくいことも意味する。
弱点は二つある。利益が粒子計測に偏ること。補聴器の利益率が1割に届かないことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
リオンの3事業は、それぞれ別の業界で戦っている。
補聴器の世界市場は金額で約90〜105億ドル。調査会社によって差があるが、OTC(処方不要の補聴器)を除く部分は年3〜5%の成長とされる。国内の出荷は年約60万台で、2022年は前年比1.7%増だった。日本は難聴者のうち補聴器を使う人の割合が欧州より低く、伸びしろが大きい。難聴と認知症の関連が知られ、自治体の購入助成も広がっている。需要は増える見込みだ。問題は、その増加分を誰が取るかである。外資は低価格のオンライン販売にも進出しており、リオンの取り分は守勢にある。
粒子計測の市場は、調査会社によって5億〜17億ドルと幅が大きい。定義が違うためだ。年6〜10%で伸びるという見方が多い。半導体の微細化とAI向けの工場増設で、薬液や純水の粒子管理は厳しくなる一方だ。製薬でも無菌製造の基準が厳しくなり、監視の対象が広がった。競合は米英の大手に加え、中国の新興メーカーが育ちつつある。
環境機器は、騒音計・振動計・地震計の市場だ。鉄道や河川のインフラ更新が中心で、成長は緩やかである。競合はブリュエル・ケアー(HBK)や国内の計測器メーカーだ。
3つに共通するのは、人口と半導体という二つの大きな流れだ。高齢化は補聴器を、AIは粒子計測を押し上げる。ただし、どちらも外資や中国勢の参入が、取り分の上限を決める。
資本政策と M&A
還元の方針は明確で、累進配当を掲げ、配当性向は30%以上を保つ。配当は5年で2倍近くに増え、2026年3月期の性向は31.3%、次期も増配の予定だ。
一方で、自社株買いの実績はほとんどない。現金は85億円まで積み上がった。決算説明資料の資金計画では、2026〜2028年度の3年間に、将来投資へ90億円、運転資金に50億円を充てる。残る約40億円は、M&Aや自社株買いの「機動投資」枠とされている。
筆者は、この約35億円を事業に不要な余剰とみなし、半分だけ株主に戻ると見る。実績が乏しく、財団が筆頭株主で、M&Aに使う可能性も残るからだ。
投資の中心は粒子計測の生産増強だ。クリーンルームの新設で原価は増え、2026年3月期は粒子計測の利益が一時的に14%減った。需要が後ろ倒しになった時に設備が余るリスクは、小さくない。
M&Aは中計に「活用」と書かれているが、大型の買収実績はない。外資大手との規模の差を埋める手段として使う可能性はあるが、過去の経営は慎重である。株式の持ち合いは目立たず、取引先持株会が4%ある程度だ。
中計は、2031年3月期に売上350億円以上、営業利益率15%以上、ROE10%以上を掲げる。ROEの目標は、貯め込んだ現金をどう使うかにかかっている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
粒子計測は、AIの半導体需要を取り込む絶好の位置にある。半導体の薬液・超純水を測る装置は、微細化が進むほど、測る粒子の小ささと頻度が増す。生産能力を増やしたので、納期の遅れという取りこぼしも解消できる。次世代の液中粒子計を開発しており、世界初の装置も2026年に出した。市場は実質で年6%以上伸び、リオンの取り分も広がる。粒子計測の営業利益率は27%に戻り、売上は今の2.5倍になる。
補聴器は、ようやく追い風が吹く。難聴と認知症の関連が知られ、自治体の購入助成も拡充している。耳鼻科の検査から補聴器の販売店へ流す導線は、リオンだけが両方を持つ強みだ。国内の台数が3割増え、利益率は13%に上がる。
環境機器は、価格の適正化に成功した。利益率が2%台から12%に跳ねたのは、構造の変化だ。クラウドと測定器を組み合わせた事業で、付加価値が乗る。
財務は固く、現金は積み上がる。経営が累進配当に加えて自社株買いに踏み出せば、ROEは12%に届く。資本コストを大きく上回る会社として、評価が変わる。
慎重な見方
粒子計測の利益は、半導体投資の波に飲まれる。2025年度も、米国・韓国の顧客が投資を後ろ倒しにした。増設した設備は、需要が一服すると固定費の重荷に変わる。しかも粒子計測は、中国の新興メーカーが技術を磨いている。半導体の国産化政策が進めば、中国の工場から先に締め出される。価格は物価に追いつかない。
補聴器は、4年で売上がほぼ動かなかった。外資の上位5社が市場の9割を握り、オンライン販売や低価格品が広がる。難聴者が増えても、増えた分は外資に流れる。新製品を出すたびに販促費がかさみ、利益率は1割に届かない。
環境機器の利益率が12%になったのは1年だけの話だ。会社自身が、次期は投資で利益が減ると見ている。公共のインフラ予算は景気と財政に左右され、安定しない。
自己資本に対する利益は、資本コストをわずかに超える程度だ。現金を貯め込む姿勢が続けば、ROEは10%に届かない。目標の達成を前提に今の値段を正当化するのは、危うい。
どちらに重みを置いたか
粒子計測の伸びと現金の厚さは確かだが、利益が半導体に偏る点と、補聴器の伸び悩みは、慎重な見方が重い。中立を4割に置き、楽観よりも悲観の確率をやや厚くした。
会社の計画が達成されても、10年の価値は今の時価総額とほぼ同じ水準にとどまる。悲観の確率を12%に置いたのは、構造的な負けの根拠が、粒子計測の中国勢参入と補聴器の外資の攻勢と、二つあるためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,536 円806 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,265 円156 億円)。 今の値に割り戻すと 4,225 円521 億円、今との差 +28.6%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,612 円1,556 億円 | 1,775 円219 億円 | +338.0% | +15.9% | 1,151 円142 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,995 円1,233 億円 | 1,540 円190 億円 | +251.1% | +13.4% | 2,307 円285 億円 |
| 中立 | 40% | 7,253 円895 億円 | 1,354 円167 億円 | +162.0% | +10.1% | 3,443 円425 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,773 円342 億円 | 973 円120 億円 | +14.0% | +1.3% | 749 円92 億円 |
| 悲観 | 12% | 606 円75 億円 | 657 円81 億円 | −61.6% | −9.1% | 152 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,536 円806 億円 | 1,265 円156 億円 | +137.5% | +9.0% | 7,801 円962 億円 |
今の株価時価総額 3,285 円405 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% AI半導体と聞こえの普及が重なる 利益 82 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 12,612 円1,556 億円
AI向けの半導体工場の増設が10年続き、薬液や超純水の粒子管理が全工程で厳しくなる。リオンは増やした生産能力で受注を取り切り、次世代の液中粒子計も採用される。粒子計測の売上は今の2.5倍に近づく。
補聴器は、難聴と認知症の関連への認識が広がり、自治体の助成も増えて国内の台数が3割増える。耳鼻科の検査から専門店への導線がうまく回り、利益率は13%に上がる。
環境機器は、価格の適正化が定着する。クラウドとIoTを組み合わせたサービスが乗り、利益率が1割を超えて維持される。
この筋書きでは、利益の伸びに加えて現金の一部を自社株買いに回し、ROEは12%に達する。全社の営業利益率は19%と、過去の最高を上回る。
- 微粒子計測器:数量 1.2(世界の粒子計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約5.4%))× 価格 1.34(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 241 億円・営業利益 65 億円。AI向け半導体の増設が続き市場が実質で年6%超伸び、取り分も広がる
- 医療機器(補聴器・聴力検査):数量 15.6(補聴器の出荷台数相当(万台、検査機器の売上を台数換算に含む))× 価格 14(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 222 億円・営業利益 29 億円。難聴の早期発見と補助制度で補聴器が普及、国内で台数が3割増
- 環境機器(騒音計・振動計・地震計):数量 0.5(世界の音響・振動計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約3.7%))× 価格 1.34(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 97 億円・営業利益 13 億円。価格適正化が定着しクラウド・IoTの付加価値が乗る
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 18.51 倍、時価総額 1,535 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI半導体の増設と補聴器の普及が10年重なる必要があり、条件が厳しいので8%に置いた。
やや楽観 20% 粒子計測が計画線を上回る 利益 67 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 9,995 円1,233 億円
粒子計測は中計の線(2031年3月期に140億円)をそのまま延ばした形で伸びる。半導体と製薬の両方が需要を支え、取り分も少し広がる。利益率は25%台で安定する。
補聴器は、新製品の効果と助成制度で台数が2割弱増える。外資の攻勢は続くが、販売網と検査機器との組み合わせで取り分を守る。
環境機器は、鉄道・地震計の更新案件を確実に取り込み、利益率は1割を超えて推移する。
全社の営業利益率は17%で、ROEは10%台に乗る。経営は配当を累進で上げ続け、現金の積み上がりも抑える。この筋書きでは、会社の計画が大きな遅れなく進み、外部環境も大崩れしない。筆者はこれを、実現の見込みが十分にある上振れと見ている。
- 微粒子計測器:数量 1.1(世界の粒子計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約5.4%))× 価格 1.32(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 212 億円・営業利益 53 億円。半導体・製薬の需要拡大を取り込み計画線を上回る
- 医療機器(補聴器・聴力検査):数量 14.2(補聴器の出荷台数相当(万台、検査機器の売上を台数換算に含む))× 価格 14(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 202 億円・営業利益 23 億円。補聴器の普及が緩やかに進み台数が2割弱増
- 環境機器(騒音計・振動計・地震計):数量 0.4(世界の音響・振動計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約3.7%))× 価格 1.34(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 89 億円・営業利益 10 億円。インフラ更新を取り込み利益率が1割超で安定
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 17.82 倍、時価総額 1,202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:粒子計測が中計どおりに伸び、補聴器が持ち直す筋書き。経営の実績は計画達成を重ねており、2割に置いた。
中立 40% 粒子計測が牽引、補聴器は横ばい圏 利益 50 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 7,253 円895 億円
粒子計測は、半導体と製薬の需要に乗って実質で年4%ほど伸びる。リオンの取り分は横ばいで、単価は競争があって物価に少し届かない。利益率は22%台に落ち着き、投資で増えた減価償却費が重しになる。
補聴器は、市場自体は伸びるが、増えた分の多くは外資に流れる。リオンの台数は微増にとどまる。利益率は1割前後で、新製品の発売時期で上下する。
環境機器は、インフラ更新が続くが、数量は横ばいだ。利益率は1割弱で、足元の跳ね上がりの一部が戻る。
全社の営業利益率は15%で、会社の目標をなぞる形だ。配当は累進を保ち、自社株買いも一部加わる。現金は積み上がり、ROEは9%弱にとどまる。
- 微粒子計測器:数量 0.9(世界の粒子計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約5.4%))× 価格 1.30(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 183 億円・営業利益 41 億円。市場は実質で年4%、取り分は横ばい、単価は競争で物価より少し低い
- 医療機器(補聴器・聴力検査):数量 12.6(補聴器の出荷台数相当(万台、検査機器の売上を台数換算に含む))× 価格 14(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 174 億円・営業利益 17 億円。市場は伸びるが取り分は外資に削られ台数は微増
- 環境機器(騒音計・振動計・地震計):数量 0.4(世界の音響・振動計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約3.7%))× 価格 1.30(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 78 億円・営業利益 7 億円。更新需要は続くが数量は横ばい、利益率は1割弱
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 16.77 倍、時価総額 855 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:粒子計測は市場並みに伸び、補聴器と環境機器は物価並みに推移する。最も蓋然性が高く4割。
やや悲観 20% 半導体の失速と外資の攻勢 利益 26 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 2,773 円342 億円
半導体の設備投資が一巡し、粒子計測は伸び悩む。増設した設備の減価償却が重く、中国の新興メーカーが中価格帯に入って単価を下げる。数量は1割強しか増えず、単価も物価に追いつかない。利益率は17%台に下がる。
補聴器は、外資の低価格品とオンライン販売に押され、台数が1割減る。新製品の販促費は減らせず、利益率は7%まで落ちる。
環境機器は、インフラ予算の縮小で数量が減り、価格の適正化も戻されて利益率は5%になる。
全社の営業利益率は1割程度に下がる。ROEは資本コストを割る。配当は維持されるが、現金の積み上がりは続き、資本効率の低い会社になる。
- 微粒子計測器:数量 0.7(世界の粒子計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約5.4%))× 価格 1.15(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 128 億円・営業利益 23 億円。半導体投資の失速と中国勢の参入で数量・単価とも伸びない
- 医療機器(補聴器・聴力検査):数量 10.8(補聴器の出荷台数相当(万台、検査機器の売上を台数換算に含む))× 価格 13(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 138 億円・営業利益 10 億円。外資と低価格品に押され台数が1割減、販促費がかさむ
- 環境機器(騒音計・振動計・地震計):数量 0.4(世界の音響・振動計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約3.7%))× 価格 1.20(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。インフラ予算の縮小で数量減、利益率は5%に戻る
倍率:事業のROE 5.2%はk 7%以下なので、正当化PERの上限は1÷k=12.9倍(ためた利益は額面未満)。この筋書きの稼ぐ力の弱さを反映して上限の8.0割の10.3倍に置いた。余った現金は戻り方0.5を掛けて足した。
確率:半導体投資の失速、中国勢の参入、補聴器の外資の攻勢が一部で起きる筋書き。粒子計測に利益が偏る構造から、2割と厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:中国勢と外資に挟まれる 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 606 円75 億円
中国勢が液中粒子計の中価格帯から高価格帯まで追い付き、半導体工場の国産化政策で中国向けが閉じる。米国・韓国の顧客も、価格の安い選択肢を試す。リオンは増設した工場の稼働率が下がり、粒子計測の利益率は8%に落ちる。
補聴器は、外資上位5社の攻勢と低価格のオンライン販売で価格が崩れる。リオンは台数を3割失い、全国の販売網の固定費を吸収できなくなる。利益率は3%だ。
環境機器は、受注が減って固定費がまかなえず、収益はほぼゼロになる。
全社の営業利益は10億円ほどに縮み、優良企業ではなくなる。それでも純現金と無借金の財務は残り、倒産には至らない。ただし株主が現金を自由に使えるわけではなく、評価は純現金を下回る。
- 微粒子計測器:数量 0.6(世界の粒子計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約5.4%))× 価格 0.95(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。中国勢と海外大手に主力の半導体向けを奪われ単価が崩れる
- 医療機器(補聴器・聴力検査):数量 8.4(補聴器の出荷台数相当(万台、検査機器の売上を台数換算に含む))× 価格 11(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 3 億円。補聴器が価格競争と海外大手に押され、固定費の販売網が重い
- 環境機器(騒音計・振動計・地震計):数量 0.3(世界の音響・振動計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約3.7%))× 価格 1.05(価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。受注が減り固定費を吸収できず収益ほぼゼロ
倍率:悲観の純利益7億円はROE 1.5%で、ためた利益は額面未満の価値。やや悲観より低い9.0倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)を超えない。市場の評価は根拠にしていない。
確率:粒子計測の中国勢参入と補聴器の外資の攻勢が同時に起き、固定費の重い販売網が重荷になる構造的な負け。補聴器は4年横ばい、粒子計測の増設投資は回収が前提で、1割強の12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
微粒子計測器
空気中・液体中の粒子を数える装置。半導体工場の薬液・超純水、製薬の注射剤検査などに使う。
| 数量世界の粒子計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約5.4%) | 価格価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 1.00 | 97 | 24 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1.30 | 183 | 41 |
取り方:世界の半導体・製薬向け粒子計測器の市場を約12億ドルと仮置きし、取り分を約5.4%と推定した(開示なし。市場調査の幅は5億〜17億ドル)。取り分の売上97億円を為替150円で割って数量とした。
医療機器(補聴器・聴力検査)
補聴器リオネットと、耳鼻科向けの聴力検査機器。専門店と病院を通じて売る。
| 数量補聴器の出荷台数相当(万台、検査機器の売上を台数換算に含む) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 11 | 128 | 12 |
| 10 年後 中立 | 12.6 | 14 | 174 | 17 |
取り方:国内の補聴器出荷は年約60万台、リオンの取り分は約2割で12万台相当と推定。聴力検査機器の売上も合算し、売上を台数で割って1万台あたり約10.6億円とした(単価の中に検査機器を含む)。
環境機器(騒音計・振動計・地震計)
騒音計、振動計、地震計。自治体、建設、鉄道、工場に売る。
| 数量世界の音響・振動計測器市場(億ドル、実質)× リオンの取り分(約3.7%) | 価格価格の指数(今を1.0、為替150円は rev_factor) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1.00 | 60 | 7 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 1.30 | 78 | 7 |
取り方:世界の騒音・振動・地震計測器の市場を約11億ドルと仮置きし、取り分を約3.7%と推定した(開示なし)。売上60億円を為替150円で割って数量とした。
リスクと懸念
半導体設備投資の失速
粒子計測は利益の約7割を稼ぐ。主要顧客の米国・韓国で投資が後ろ倒しになった実績があり、増設した生産設備は需要が弱いと固定費になる。AI投資の巻き戻しは全社の利益を直撃する。
中国メーカーの参入
粒子計測では中国の新興メーカーが育っている。半導体の国産化政策が進めば、中国向けから先に締め出される。中価格帯の単価が下がり、リオンの利益率を削る恐れがある。
補聴器での外資の攻勢
世界の上位5社が市場の9割を握る。ソノバやデマントなどがオンラインや低価格品にも広げており、国内の2割という取り分が削られうる。売上は4年でほぼ横ばいだ。
環境機器の利益率の反動
2026年3月期の利益率12.2%は、価格見直しが効いた1年の姿だ。会社自身が次期は投資で利益が減るとみている。公共予算に左右され、更新需要の山が過ぎる可能性もある。
現金の使い道
純現金が時価総額の2割に達するが、自社株買いの実績はほとんどない。M&Aに使う場合、大型の買収経験が乏しく、失敗すれば価値を壊す。貯め込めばROEが下がる。
筆頭株主の財団
小林理学研究所が25%を持つ。友好的な長期株主だが、経営への圧力が弱く、資本効率の改善や買収の機会が生まれにくい。流動性にも影響する。
賃上げと原価の増加
人件費の増加と新製品の減価償却で、売上総利益率は50.4%から49.3%に下がった。価格に転嫁できなければ、利益率は上がらない。
今後の分かれ目
- 粒子計測の受注が、後ろ倒しになった米国・韓国の案件を取り込んで過去最高を更新する
- 半導体の増設が続く証拠になり、楽観側の確率を上げる。
- 中国メーカーの液中粒子計が、台湾・韓国の半導体メーカーの標準に採用される
- 粒子計測の単価と取り分が崩れる兆しで、悲観側へ確率を寄せる。
- 補聴器の売上が、助成制度の拡大にもかかわらず2期連続で前年を下回る
- 外資への流出が続いており、医療機器事業の利益率の回復は難しくなる。
- 自社株買いを決議し、余剰の現金を戻す
- 資本効率が改善し、現金の戻り方が1.0に近づく。価値が上がる。
- 大型のM&Aを発表し、現金の大半を使う
- 買収先の質が分かれ目。うまくいけば成長を加速するが、高値づかみなら価値を損なう。
- 環境機器の営業利益率が1割を割り込む
- 価格見直しの効果が一過性だったことになり、中立の利益率を引き下げる。
見ておくもの
- 粒子計測の四半期の受注と、主要顧客の増設時期
- 補聴器の国内出荷台数(日本補聴器工業会)と、リオネットの売上
- 環境機器の営業利益率(1割を維持できるか)
- 自社株買いとM&Aの発表
- 中国メーカーの液中粒子計の採用事例
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、3事業の数量×価格で10年後の売上と利益を積み上げ、その時点のROEとk 7%から正当化PERを決めた。中立は上限の8.5割(11.7倍)。粒子計測は半導体の波で利益が振れ、補聴器は外資に押されるため、上限いっぱいには置かなかった。悲観は稼ぐ力を超えない倍率で、純現金の半分を床として添えた。10年後の数字は、家賃を費用に入れた今と同じ形で置いている。市場の倍率は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.4→18.51 倍・やや楽観 PER 12.8→17.82 倍・中立 PER 11.7→16.77 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。